(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065019
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】液体水素用途のためのバルブ作動機構、バルブ装備、パイプ設備、および、その使用方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/53 20060101AFI20240507BHJP
F17C 7/00 20060101ALI20240507BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20240507BHJP
B64F 1/36 20240101ALI20240507BHJP
B64D 37/30 20060101ALI20240507BHJP
F16K 41/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F16K31/53
F17C7/00 Z
F02M21/02 G
F02M21/02 301A
B64F1/36
B64D37/30
F16K41/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177394
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】22204327
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】311014956
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Airbus Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,21129 Hamburg,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】508305926
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ラマート,ニルス
【テーマコード(参考)】
3E172
3H063
3H066
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA04
3E172BD10
3H063AA06
3H063BB50
3H063DA14
3H063DB31
3H063GG08
3H066AA06
3H066BA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液体水素(LH
2)用途にて、高い耐漏れ要件での使用のために、バルブの回転可能な閉鎖要素を作動させるためのバルブ作動機構を改良する。
【解決手段】外側領域34から、シール膜24によって密閉される内側領域32を画定するハウジング22と、外側領域34に配置され回転運動を受け止める入力シャフト26と、内側領域32に配置され閉鎖要素16に接続される出力シャフト28と、入力シャフト26と出力シャフト28を接続する波動歯車装置30とを含む。波動歯車装置30は、入力シャフト26及び出力シャフト28の一方に接続された波動発生器38と、入力シャフト26及び出力シャフト28の他方に接続された回転可能な外歯車40と、波動発生器38によって変形される外歯44を備え、外歯車40の内歯46と噛み合い、シール膜24の一部48として備えられる固定の可撓性リングギア42を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温・低温用途および/または水素(H2)用途のためのバルブ(12)の回転可能な閉鎖要素(16)を作動させるためのバルブ作動機構(10)であって、
外側領域(34)からシール膜(24)によって密閉される、内側領域(32)を画定するハウジング(22)と、
回転運動を受け止める入力シャフト(26)であって、外側領域(34)に配置されるものと、
閉鎖要素(16)に接続される出力シャフト(28)であって、内側領域(32)に配置されるものと、
入力シャフト(26)と出力シャフト(28)を接続する波動歯車装置(30)とを備え、
波動歯車装置(30)は、
入力シャフトと出力シャフト(26, 28)の一方に接続された波動発生器(38)と、
入力シャフトおよび出力シャフト(26, 28)の他方に接続された回転可能な外歯車(40)と、
波動発生器(38)によって変形されて外歯車(40)の内歯(46)と噛み合う外歯(44)を備えた位置固定の可撓性リングギア(42)であって、シール膜(24)の一部(48)として備えられるものとを備えたバルブ作動機構(10)。
【請求項2】
前記入力シャフト(26)が、手動レバーのシャフト(50)、電動アクチュエータ(52)の駆動シャフト(52)、電動アクチュエータの駆動シャフト、空気圧アクチュエータの駆動シャフト、クランクのシャフト、クランクレバーのシャフト、及び、ハンドホイールのシャフトから選択された、請求項1のバルブ作動機構(10)。
【請求項3】
前記ハウジング(22)は、
3.1 真空断熱のキャニスタ化ハウジングである、および/または、
3.2 内側領域(32)について、第1密閉チャンバ(56)として取り囲んで画定し、さらに、第1の密封チャンバ(56)から密封膜(24)によって密閉された第2密閉チャンバ(58)を取り囲んで画定するのであり、入力シャフト(26)の少なくとも一部分と、これに接続された波動発生器(38)および外歯車(40)の一方とは、第2密閉チャンバ(58)内に配置される、および/または、
3.3 作動されるバルブ(12)のバルブハウジング(60)に接続される接続手段を有する、および/または、
3.4 固定シールを備えた、ボルト留めされた取り外し可能なキャップ(92)を備える、請求項1または2のバルブ作動機構(10)。
【請求項4】
前記シール膜(24)が、下記4.1~4.3の少なくとも1つまたはいくつかを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のバルブ作動機構(10)。
4.1 環状壁を有するポット形の中央領域(70)であって、環状壁の少なくともリング部分(48)は、可撓性リングギア(42)の外歯(44)を含むもの。
4.2 実質的に放射状に延びる、蛇腹状またはその他の、変形可能な環状中間領域(72)。
4.3 ハウジング(22)に固定的に接続された外側リム部分(64)またはフランジ部分。
【請求項5】
回転運動(36)によって閉鎖位置と開放位置との間で移動可能な閉鎖要素(16)を備えたバルブ(12)と、
請求項1~4のいずれかに記載のバルブ作動機構(10)とを備える、液体水素(LH2)用途のためのバルブ装備(14)。
【請求項6】
前記バルブ(12)が、ボールバルブまたはバタフライバルブであることを特徴とする、請求項5に記載のバルブ装備(14)。
【請求項7】
真空カプセル(80)境界を備え、前記ハウジング(22)が前記カプセル(80)に溶接される、請求項5または6に記載のバルブ装備(14)。
【請求項8】
請求項5~7のいずれかに記載のバルブ装備(14)を含む、液体水素を導くための極低温・低温パイプ設備(18)。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載のバルブ作動機構(10)、請求項5~7のいずれかに記載のバルブ装備(14)、および/または請求項8に記載の極低温・低温パイプ設備(18)を備え、少なくとも1つの、水素消費機器または液体水素(LH2)タンク乗り物(98)を含む航空機(94)またはその他の乗り物。
【請求項10】
請求項8に記載の極低温・低温パイプ設備(18)を備える空港(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温・低温用途および/または水素(H2)用途のためのバルブを作動させるためのバルブ作動機構に関する。さらに、本発明は、そのようなバルブ作動機構を備えたバルブ装備に関する。さらに、本発明は、そのようなバルブ装備の可能な用途としての、液体水素を導く極低温・低温パイプ設備、乗り物(貨物または人員のための車両、船舶、航空機を含む)、および空港に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的な背景については、下記[1]~[3](特許文献1~3)及び下記[4](非特許文献1)を参照されたい。
[1] DE 10 2014 107 316 A1
[2] US 2021/0 078 702A1
[3] WO 2021/148 335A1
[4] Wikipedia, Strain wave gearing, download on 25.10.2022 from https://en.wikipedia.org/wiki/Strain_wave_gearing
【0003】
上記[1]~[3](特許文献1~3)は航空機内の水素設備に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許公開10 2014 107 316 A1
【特許文献2】米国特許公開2021/0 078 702A1
【特許文献3】国際公開WO 2021/148 335A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Wikipedia, 波動歯車装置(Strain wave gearing) https://en.wikipedia.org/wiki/Strain_wave_gearing https://ja.wikipedia.org/wiki/波動歯車装置
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の好ましい実施形態は、航空機上、乗り物・車両上、または地上における水素システムの設備の一部に関する。航空機が、少なくとも部分的に水素で駆動される、燃料電池やエンジンなどの、少なくとも1つの水素消費機器を備えている場合、航空機上に水素分配システムが必要である。水素分配システムは、特には、液体水素(liquid hydrogen; LH2、特に極低温)またはガス状水素(gaseous hydrogen; GH2)の水素を分配するためのパイプ、継手、分岐管、装具(equipment)などを備えた水素ダクトシステムを含む。さらに、水素を動力とする航空機に燃料を供給するために、空港、さらにはタンク乗り物・車両にも水素システムが必要となる。特に、バルブは、水素の流れを制御し、可能にし、または停止するために必要である。
【0007】
本発明の目的は、特に水素(H2)用途、より具体的には液体水素(LH2)用途において、高い耐漏れ出し要件での使用のために、バルブ作動機構を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載のバルブ作動機構を提供する。水素(H2)用途、特に液体水素(LH2)用途のためのバルブ装置、および、その有利な使用は、他の独立請求項の対象事項である。
【0009】
有利な実施形態は、従属請求項の対象事項である。
【0010】
本発明は、極低温・低温用途、および/または、水素(H2)用途のためのバルブの回転可能な閉鎖要素を作動させるためのバルブ作動機構であって、
外側領域からシール膜によって密閉されて分離される、内側領域を取り囲んで画定するハウジングと、
外側領域に配置され、回転運動を受け止める入力シャフトと、
内側領域に配置され、閉鎖要素に接続される出力シャフトと、
入力シャフトと出力シャフトとを接続する波動歯車装置とを備えるものを提供するのであって、
波動歯車装置は、
入力シャフトおよび出力シャフトの一方に接続された波動発生器(ウエーブ・ジェネレータ;wave generator)と、
入力シャフトおよび出力シャフトの他方に接続された回転可能な外歯車(サーキュラスプライン;circular spline)と、
波動発生器によって変形されて外歯車の内歯と係合する外歯を備えた位置固定の可撓性リングギア(フレクスプライン;flex spline)であって、シール膜の一部分として備えられるものと、を備える。
【0011】
好ましくは、入力シャフトは、手動レバーのシャフト、電動アクチュエータの駆動シャフト、電動アクチュエータの駆動シャフト、空気圧アクチュエータの駆動シャフト、クランクのシャフト、アクチュエータの駆動シャフト、クランクレバーのシャフト、ハンドホイール(handwheel)のシャフトからなる群から選択される。
【0012】
好ましくは、ハウジングは、真空(減圧)断熱部を備えたキャニスタ化ハウジング(canisterized housing)、すなわちガス漏れが防止された筒状などのハウジングであって、外筒の内側などに真空断熱部を備えたものである。
【0013】
好ましくは、ハウジングは、内側領域を第1の密閉チャンバとして取り囲んで画定し、さらに、第1の密閉チャンバからシール膜によって分離・密閉された第2の密閉チャンバを取り囲んで画定するのであり、波動発生器および外歯車のうちの1つに接続される、入力シャフトの少なくとも一部(一の小部分)が、第2の密閉チャンバの内側に配置される。
【0014】
好ましくは、ハウジングは、作動されるバルブのバルブハウジングに接続される接続手段を有する。
【0015】
好ましくは、ハウジングは、固定シールを備えた、ボルト留めされた取り外し可能なキャップを有する。
【0016】
好ましくは、シール膜は、環状壁を備えたポット形の中央領域を備え、環状壁の少なくとも環状部分が可撓性リングギアの外歯を備える。
【0017】
好ましくは、シール膜は、波状の拡張部分(特には蛇腹(ベロー)状の部分)を備えた、本質的に放射状に延びる環状の中間領域を備える。
【0018】
好ましくは、シール膜は、ハウジングに固定されて接続された、外側リム部分またはフランジ部分を備える。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、回転運動によって閉鎖位置と開放位置との間で移動可能な閉鎖要素を備えたバルブと、前述の実施形態のいずれかによるバルブ作動機構とを備える、液体水素(LH2)用途のためのバルブ装置を提供する。
【0020】
好ましくは、バルブは、ボールバルブまたはバタフライバルブである。
【0021】
好ましくは、バルブ装備は、ハウジングがカプセルに溶接された、真空(減圧)カプセル境界を備える。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、前述の実施形態のいずれかによるバルブ装備を備える、液体水素を導くための極低温パイプ設備を提供する。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、前述の実施形態のいずれかによるバルブ作動機構、バルブ装備、及び/又は、極低温パイプ設備を備えた乗り物・車両を提供するのであり、特には、少なくとも1つの水素消費機器を備えた、航空機、又は、液体水素(LH2)タンク乗り物を提供する。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、前述の実施形態のいずれかによるバルブ作動機構を備えた極低温・低温パイプ設備を備える空港を提供する。
【0025】
好ましい実施形態は、非常に高い気密性要件を受けるバルブを介して制御される、小分子ガス(水素、ヘリウムなどの分子量の小さい分子のガス)輸送の技術分野で使用することができる。
【0026】
好ましい実施形態は、回転伝達用の気密膜シールに関する。好ましい実施形態は、気密回転シールに関する。好ましい実施形態は、水素を制御および分配する装具(equipment)に関する。
【0027】
本発明は、特には、水素動力の航空機およびそれに関連する設備の技術分野に関する。これに関連する課題の1つは、水素を制御および供給する装置の統合である。遮断ボールバルブ及び分配ボールバルブは、ピストンバルブやポペットバルブよりも、好ましい選択肢である。ボールバルブの使用で経験する課題は、回転シールが必要であることである。液体水素の使用に対して気密性を保つような回転シールを提供することは非常に困難である。したがって、何らかの動的な動きがあれば漏れが増加する。さまざまな理由から、大量の水素(H2)の漏洩は避けるべきである。この現象は、膜密封のピストンポペットバルブ(Poppet Valve)では、その閉鎖要素の並進動作に起因して、存在しない。
【0028】
本発明の実施形態は、上記文献[4](非特許文献1)から知られる波動歯車装置(「ハーモニックドライブ」(登録商標)とも呼ばれる)と同様のコンセプトを利用する。本発明の実施形態では、膜は、バルブ作動機構に関与する互いに別個の構成要素にトルクモーメントを伝達する。
【0029】
上記文献[4](非特許文献1)で知られる通常のハーモニックドライブであると、外歯車は、通常、固定されている。これにより、内側の楕円歯車と、歯付き膜とが回転しうるようになる。遊星歯車と同様に、1つの固定部材の周囲に2つの可動部材を配置することで、シンプルなメンテナンスが可能になる。
【0030】
本発明の実施形態によれば、可撓性ギアはシール膜の一部によって形成される。シール膜は固定されているため、ハウジング内にしっかりと固定することができ、ハウジングの内側領域を外側領域から確実にシールすることができる。その他、通常のハーモニックドライブ(登録商標)と同様に、可撓性リングギア(フレクスプライン)は、シール膜の一部として固定されており、一方、外歯車(サーキュラスプライン)は、ハウジングに対して回転可能である。波動発生器(ウエーブジェネレータ)は、その外歯の一部が外歯車(サーキュラスプライン)の内歯の一部と噛み合うように可撓性リングギア(フレクスプライン)を変形させるのに適した、楕円体歯車またはその他の偏心歯車などの回転可能要素を備える。したがって、回転運動は、気密性の固定シールを介して伝達される。
【0031】
波動発生器(ウエーブジェネレータ)または外歯車(サーキュラスプライン)のいずれかを入力として使用し、もう一方を、バルブを作動させるための出力として使用することができる。好ましい実施形態では、波動発生器の回転可能要素は、回転運動の入力として使用され、外歯車は、ボールバルブなどのバルブの回転閉鎖要素に接続されうる出力として使用される。
【0032】
ボールバルブ遮断バルブは、液体水素(LH2)用途、特には、非電動・非原動機駆動の用途の場合、ピストンバルブに比べていくつかの利点がある。課題は、ボールバルブの作動に、シャフトの回転が必要なことである。このようなボールバルブの遮断バルブは、知られている限りであると、今日では、ピストンバルブの長手方向の作動でもって膜により密閉されることで可能なのと同様の具合には、非常に小さな分子のガスに対して漏れを防止するように設計できない。
【発明の効果】
【0033】
本発明の実施形態は、バルブを作動させるための回転運動を伝達するために、上記文献[4](非特許文献1)から知られるような、ハーモニックドライブ(登録商標)のギアボックスの原理を利用する。これは、ボールバルブに特に有用であるが、もちろん、回転運動によって直接的または間接的に作動させうる他のすべてのバルブにも有用である。
【0034】
欠点の1つは、ハーモニックドライブ(登録商標)ギアボックスの変速比が通常1:25を超えるため、90°の動きでもってボールバルブを閉じるには6回転以上必要なことである。したがって、クランク、ハンドホイール、クランクレバーなど、簡単に何回も回すことができる手動操作要素が好ましい。もちろん、ステッピングモーター、電気アクチュエータ、油圧モーター、空気圧モーターなどの自動回転駆動アクチュエータを入力シャフトに接続することもできる。
【0035】
シールには相対的な動きがなく、シール膜がその弾性変形挙動を利用するため、達成可能な漏れ率は非常に低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態にしたがうバルブ作動機構についての模式的な断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にしたがうバルブ作動機構を備えるバルブ装備についての模式的な断面図である。
【
図4】
図3のバルブ装備を備えた航空機についての模式的な斜視図である。
【
図5】
図3のバルブ装備を備えたタンク乗り物・車両についての模式図である。
【
図6】
図3のバルブ装備を備えた空港についての模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態について、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0038】
図1は、極低温・低温用途および/または水素(H
2)用途のために、バルブ12を作動させるためのバルブ作動機構10を示す。
図2は、
図1の線II-IIに沿ったバルブ作動機構10の部分・部材の断面図を示す。
図3は、バルブ12と、バルブ12を作動させるためのバルブ作動機構10とを含むバルブ装備14を示す。
【0039】
バルブ作動機構10は、極低温・低温用途および/または水素(H2)用途において、バルブ12の回転可能な閉鎖要素16を作動させるように構成されている。特には、バルブ12およびバルブ作動機構10を備えるバルブ装備14は、水素分配システム20などの極低温・低温パイプ設備18内における液体水素の流れを制御するように構成される。
【0040】
図1および
図2を参照すると、バルブ作動機構10は、ハウジング22、シール膜24、入力シャフト26、出力シャフト28、および波動歯車装置30を備える。
【0041】
ハウジング22は、封止膜24によって外側領域34から封止された内側領域32を取り囲んで画定する。
【0042】
入力シャフト26は、特には、ハンドル、クランクまたはハンドホイール(図示せず)などの手動操作要素から回転運動を受け取るように構成されている。入力シャフト26は、外側領域34に配置されている。
【0043】
出力シャフト28は、閉鎖要素16に接続されるように構成され、内側領域32に配置される。
【0044】
波動歯車装置30は、入力シャフト26と出力シャフト28とを接続するのであり、入力シャフト26から出力シャフト28に回転運動36を伝達する。
【0045】
波動歯車装置30は、入力シャフト26および出力シャフト28の一方に接続された波動発生器38と、入力シャフト26および出力シャフト28の他方に接続された回転可能な外歯車40と、固定の可撓性リングギア42とを備える。可撓性リングギア42は、波動発生器38によって変形されて、外歯車40の内歯46と噛み合う。本発明の実施形態によれば、可撓性リングギア42は、シール膜の一部によって提供される。換言すれば、シール膜24のリング部分48は、外歯44が備えられ、波動歯車装置30の可撓性リングギア42として機能する。
【0046】
入力シャフト26は、例えば、手動レバーのシャフト50、電動アクチュエータ52の駆動シャフト、電気アクチュエータの駆動シャフト、空気圧アクチュエータの駆動シャフト、クランクのシャフト、クランクレバーのシャフト、または、ハンドホイールのシャフトであり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、ハウジング22は、断熱性・断熱材(特には真空断熱54)を備えた密閉キャニスタとして構成される。いくつかの実施形態において、ハウジング22は、第1密閉チャンバ56および第2密閉チャンバ58を備える。これらの密閉チャンバ56及び58は、膜24によって、相互から密閉・封止(シール)されている。第1密閉チャンバ56は、内側領域32の少なくとも一部分を構成し、出力シャフト28を取り囲む。第2密閉チャンバ58は外側領域34の部分を形成するのであり、波動発生器38または外歯車40に接続された入力シャフト26の少なくとも一部分は、第2密閉チャンバ58内に配置されている。
【0048】
図3を参照すると、ハウジング22は、バルブ12のバルブハウジング60の一部分であり得る。いくつかの実施形態によれば、ハウジング22は、バルブハウジング60の取り外し可能なねじ込みセクションであるか、またはこのねじ込みセクションを備えるものであり、このようなねじ接続箇所は、固定シールによりシールされる。このようなねじ接続がなされると、第1密閉チャンバ56は、閉鎖要素16の被駆動端62を受け入れる。いくつかの実施形態において、バルブ12は、ボールバルブまたはバタフライバルブであり、閉鎖要素16は、回転ボール要素またはバタフライを備える。被駆動端62は、出力シャフト28に共回転するように接続されている。
【0049】
図1~3を参照すると、膜24は、ハウジング22に固定的に接続された、外側リム部分64またはフランジ部分を備える。特に、リム部分64は、ハウジング22の内部の内フランジ66とクランプリング68との間に、シール方式でクランプされる。
【0050】
さらに、膜24は、環状壁を有するドーム形またはポット形の中央領域70を備え、環状壁における少なくとも、一の環状部分が、可撓性リングギア42としての、外歯44を有するリング部分48を構成する。
【0051】
いくつかの実施形態において、膜24は、実質的に放射状に延びるとともに波形の拡張部分を備えた環状の中間領域72を備える。中間領域72は、蛇腹(ベロー)74として形成されるか、または少なくとも、一の蛇腹部分を有する。中間領域72は、ポット型中央領域70をリム部分64に接続し、波動発生器38によって引き起こされる変形の最中に、ポット型部分70の偏心運動のための良好な可撓性を提供する。いくつかの実施形態において、膜24は金属で作られる。
【0052】
図示しない実施形態において、波動発生器38は出力シャフト28に接続され、外歯車40は入力シャフト26に接続される。図示の好ましい実施形態において、波動発生器38は入力シャフト26に接続されており、外歯車40は、出力シャフトに接続され、したがってバルブ12の閉鎖要素16に接続される。
【0053】
波動歯車装置30(ハーモニックドライブ(登録商標)とも呼ばれる)は、外歯44を備えた可撓性リングギア42(フレックススプラインとも呼ばれる)を使用する機械式歯車システムの一種であり、外歯44を有する可撓性リングギア42は、回転する楕円形の波動発生器プラグ76によって変形されて、外歯車40(サーキュラスプラインとも呼ばれる)の内歯46と噛み合う。
【0054】
波動発生器38は、波動発生器プラグ76と呼ばれる楕円形ディスクと、外側のボールベアリング78とを備える。楕円形の波動発生器プラグ76は、ボールベアリング78に挿入されて、ボールベアリング78を楕円形に適合させるにもかかわらず、外側のボールベアリング78内における楕円形の波動発生器プラグ76の回転を可能にする。
【0055】
シールおよび可撓性スプラインとして機能する膜24は、浅いカップのような形状である。膜24の形状に起因して、リング部分48の膜壁は非常に柔軟であるが、膜24は、ハウジング内に誘発されるトルクに耐えるべく、ハウジング22に堅固に固定・保持されるのに十分な剛性を有する。可撓性リングギア42の外歯44は、可撓性リング部分48の外側の周囲に放射状に配置されている。可撓性リング部分48は、波動発生器38に堅固に嵌め合わされ、その結果、波動発生器プラグ76が回転すると、可撓性リング部分48は、回転する楕円の形状に変形する。ボールベアリング78は、可撓性リング部分48内における波動発生器38のスムーズな回転を可能にする。
【0056】
図3は、バルブ12としてボールバルブを備えたバルブ装備14を示す。バルブ12は、真空カプセル80の境界(範囲)内に封入されている。バルブ12の動的シール82は、互いに対して回転するバルブ12の要素同士の間をシールする。動的シール82を通って漏れる液体水素(LH
2)などの媒体は、内側領域32にのみ、例えば第1密閉チャンバ56にのみ漏れ出しうるが、シール膜24によって、第2の密閉チャンバ58への漏れ、または、外側領域34の他の部分への漏れは防止される。
【0057】
バルブ12は、極低温・低温パイプ設備18内の遮断弁として構成される。バルブ12は、パイプ設備18におけるホース86またはその他のダクトに接続されたパイプセクション84を備える。バルブ12は、例えばバルブサポート88によって、真空カプセル80の壁から離間されている。
【0058】
パイプセクション84とバルブハウジング60との間の接続、および、キャニスタ(すなわち、バルブ作動機構10のハウジング22)と、カプセルとの間の接続は、気密溶接接続90でもって行われる。
【0059】
第2密閉チャンバ58は、固定シールを備えたボルト留めされた取り外し可能なキャップ92によって閉じられる。第2密閉チャンバ58内に真空断熱を確立するために、図示されるようにキャップ92に、または第2の密閉チャンバ58を囲むハウジング壁に、真空ポート93が備え付けられる。
【0060】
バルブ作動機構10でもって、カプセル80の真空の完全性を維持することができるのであり、動的シールを必要とせずに回転運動を伝達することができる。したがって、水素(H2)の漏出に対する非常に高い安全性が達成される。
【0061】
図4,5および6に示すように、極低温・低温パイプ設備18、及びそのバルブ装備14は、航空機94中にて、液体水素(LH
2)タンク96からの、及び、液体水素(LH
2)タンク96への、液体水素(LH
2)の流れおよび分配を制御するために用いることができ、空港100にて、例えば航空機への燃料供給のために、タンク車両98上に搭載されて、液体水素(LH
2)タンク96からの、及び、液体水素(LH
2)タンク96への、液体水素(LH
2)の流れおよび分配を制御するために用いることができ、また、空港100にて、例えば、航空機燃料としての液体水素(LH
2)を航空機の駐機位置102に分配するために用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 バルブ作動機構
12 バルブ
14 バルブ装備
16 閉鎖要素
18 極低温・低温パイプ設備
20 水素供給システム
22 ハウジング
24 膜
26 入力シャフト
28 出力シャフト
30 波動歯車装置
32 内側領域
34 外側領域
36 回転運動
38 波動発生器(ウェーブジェネレーター)
40 外歯車(サーキュラスプライン)
42 可撓性リングギア(フレクスプライン)
44 外歯
46 内歯
48 可撓性リング部分
50 手動レバーのシャフト
52 アクチュエータ
54 真空断熱
56 第1密閉チャンバ
58 第2密閉チャンバ
60 バルブハウジング
62 被駆動端
64 リム部
66 内フランジ
68 クランプリング
70 ポット型の中央領域
72 中間領域
74 蛇腹部(ベロー)
76 楕円形の波動発生器プラグ
78 ベアリング
80 真空カプセル
82 ダイナミックシール
84 パイプセクション
86 ホース
88 バルブサポート
90 溶接接続
92 キャップ
93 真空ポート
94 航空機
96 液体水素(Liquid H2)タンク
98 タンク乗り物・車両
100 空港
102 駐機場・駐機位置