(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065028
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ニットシャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 1/12 20060101AFI20240507BHJP
A41D 27/06 20060101ALI20240507BHJP
A41D 27/18 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A41B1/12
A41D27/06 C
A41D27/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179492
(22)【出願日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2022171978
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520172236
【氏名又は名称】株式会社ファーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】西脇 一仁
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA11
3B035AA23
3B035AA25
3B035AB05
3B035AB06
3B035AB17
3B035AC15
3B035AD04
(57)【要約】
【課題】フォーマルな使用も可能にしつつ、首回りにおける着心地をよくすることができるニットシャツを提供する。
【解決手段】身頃及び袖からなるシャツ本体と、身頃の上端に環設されて首回りを覆う帯状の襟台10及び襟台10の上部の縫付部12に縫製されて襟台10の外側に折り返される襟羽20からなる襟1と、を有するニットシャツである。シャツ本体及び襟台10はニットであり、襟羽20は布帛である。襟羽20は、重ね合わされて外周部21a、22aが縫製される同形状の表襟羽21と裏襟羽22とからなり、襟台10の縫付部12の一部又は全部は、表襟羽21及び裏襟羽22の間に挿入されて縫製される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身頃及び袖からなるシャツ本体と、該身頃の上端に環設されて首回りを覆う帯状の襟台及び該襟台の上部の縫付部に縫製されて該襟台の外側に折り返される襟羽からなる襟と、を有するニットシャツにおいて、
該シャツ本体及び該襟台はニットであり、該襟羽は布帛であり、
該襟羽は、重ね合わされて外周部が縫製される同形状の表襟羽と裏襟羽とからなり、
該襟台の該縫付部の一部又は全部は、該表襟羽及び該裏襟羽の間に挿入されて縫製されることを特徴とするニットシャツ。
【請求項2】
前記襟台の前記縫付部において該襟台が折り返される折り返し位置と、前記襟羽との距離は、0mm以上、5mm以下であり、
該襟台と該襟羽とが縫製される襟羽縫製位置と、該襟羽に挿入される該襟台の先端との距離は、5mm以上であることを特徴とする請求項1記載のニットシャツ。
【請求項3】
身頃及び袖からなるシャツ本体と、該身頃の上端に環設されて首回りを覆う帯状の襟台及び該襟台の上部の縫付部に縫製されて該襟台の外側に折り返される襟羽からなる襟と、を有するニットシャツにおいて、
該シャツ本体及び該襟台はニットであり、該襟羽は布帛であり、
該襟台の該縫付部の一部又は全部は、該襟羽の裏面に縫製されることを特徴とするニットシャツ。
【請求項4】
前記襟台の前記縫付部において該襟台が折り返される折り返し位置と、前記襟羽との距離は、0mm以上、5mm以下であることを特徴とする請求項3記載のニットシャツ。
【請求項5】
前記襟台の表面には、布帛の補強布が縫い付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のニットシャツ。
【請求項6】
上前身頃及び下前身頃の前立て部分の表側には、布帛の補強布が縫い付けられていることを特徴とする請求項5記載のニットシャツ。
【請求項7】
前記上前身頃の前記前立て部分の裏側には、布帛の補強布が縫い付けられていることを特徴とする請求項6記載のニットシャツ。
【請求項8】
前記シャツ本体は、プルオーバータイプの無縫製ニットであり、
該シャツ本体に布帛からなる前立てを縫い付けることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項記載のニットシャツ。
【請求項9】
前記襟台の表面には、布帛の補強布が縫い付けられていることを特徴とする請求項8記載のニットシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身頃及び袖からなるシャツ本体と、襟台及び襟羽からなる襟とを有するニットシャツに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、編物技術の発達により、裁断及び縫製が容易なニット素材や種々の編み機が開発され、多種多様なニット製品が販売されるようになった。このニット製品の一つであり全体がニットからなるニットシャツは、伸縮性、フィット感等の着心地の良さや、シワになりにくいことから広く着用されている。しかしながら、このニットシャツは、シャツ全体がニットでできているため型崩れしやすいという欠点を有している。特に、襟が型崩れしたのではフォーマルな用途には不向きである。これに対し、襟部分が布帛でできているニットシャツとして、特許文献1に記載されたニットのワイシャツが提案されている。このワイシャツによれば、襟部分(2)に布帛を使用しているため、襟部分(2)が型崩れし難く、フォーマルな使用も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のワイシャツでは、首筋に直接接触する襟台が布帛でできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感に欠け、着心地の良さの点で問題がある。
【0005】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、フォーマルな使用も可能にしつつ、首回りにおける着心地をよくすることができるニットシャツを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係るニットシャツの特徴は、身頃及び袖からなるシャツ本体と、該身頃の上端に環設されて首回りを覆う帯状の襟台及び該襟台の上部の縫付部に縫製されて該襟台の外側に折り返される襟羽からなる襟と、を有するニットシャツにおいて、該シャツ本体及び該襟台はニットであり、該襟羽は布帛であり、該襟羽は、重ね合わされて外周部が縫製される同形状の表襟羽と裏襟羽とからなり、該襟台の該縫付部の一部又は全部は、該表襟羽及び該裏襟羽の間に挿入されて縫製されることである。
【0007】
請求項2に係るニットシャツの特徴は、請求項1において、前記襟台の前記縫付部において該襟台が折り返される折り返し位置と、前記襟羽との距離は、0mm以上、5mm以下であり、該襟台と該襟羽とが縫製される襟羽縫製位置と、該襟羽に挿入される該襟台の先端との距離は、5mm以上であることである。
【0008】
請求項3に係るニットシャツの特徴は、身頃及び袖からなるシャツ本体と、該身頃の上端に環設されて首回りを覆う帯状の襟台及び該襟台の上部の縫付部に縫製されて該襟台の外側に折り返される襟羽からなる襟と、を有するニットシャツにおいて、該シャツ本体及び該襟台はニットであり、該襟羽は布帛であり、該襟台の該縫付部の一部又は全部は、該襟羽の裏面に縫製されることである。
【0009】
請求項4に係るニットシャツの特徴は、請求項3において、前記襟台の前記縫付部において該襟台が折り返される折り返し位置と、前記襟羽との距離は、0mm以上、5mm以下であることである。
【0010】
請求項5に係るニットシャツの特徴は、請求項1乃至4のうちいずれか1項において、前記襟台の表面には、布帛の補強布が縫い付けられていることである。
【0011】
請求項6に係るニットシャツの特徴は、請求項5において、上前身頃及び下前身頃の前立て部分の表側には、布帛の補強布が縫い付けられていることである。
【0012】
請求項7に係るニットシャツの特徴は、請求項6において、前記上前身頃の前記前立て部分の裏側には、布帛の補強布が縫い付けられていることである。
【0013】
請求項8に係るニットシャツの特徴は、請求項1乃至4のうちいずれか1項において、前記シャツ本体は、プルオーバータイプの無縫製ニットであり、該シャツ本体に布帛からなる前立てを縫い付けることである。
【0014】
請求項9に係るニットシャツの特徴は、請求項8において、前記襟台の表面には、布帛の補強布が縫い付けられていることである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係るニットシャツにおいては、シャツ本体及び襟台はニットであり、襟羽は布帛である。このシャツにおいては、首筋に直接接触する襟台がニットでできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感があり、着心地の良さを確保すことができる。また、襟台の外側に折り返される襟羽が布帛でできているため型崩れし難く、フォーマルな用途にも着用することが可能である。さらに、襟羽は重ね合わされて外周部が縫製される同形状の表襟羽と裏襟羽とからなり、襟台の縫付部の一部又は全部が表襟羽及び裏襟羽の間に挿入されて縫製されている。これにより、外部から襟台の縫付部の先端近傍が露出しないため意匠的にも優れている。したがって、このニットシャツによれば、フォーマルな使用も可能にしつつ、首回りにおける着心地をよくすることができる。なお、襟台は、身頃と一体として編み上げられていてもよく、身頃に縫い付けられていてもよい。
また、本明細書において、「布帛」とは、平織り、綾織り、朱子織に代表される織物をいい、「ニット」に比べ型崩れしないものをいう。そして、「ニット」とは、平編み、ゴム編み、パール編みに代表される編物をいい、「布帛」に比べ伸縮性に富むものをいう。
【0016】
請求項2に係るニットシャツにおいては、襟台の縫付部において襟台が折り返される折り返し位置と、襟羽との距離は、0mm以上、5mm以下である。この距離が0mmより小さい場合は、布帛でできている襟羽が首筋に直接接触するため、首回りにおける伸縮性やフィット感を十分に得ることができない。また、この距離が5mmより大きい場合は、折り返し位置から襟羽までの縫付部の面積が広くなってしまい襟が型崩れし易くなる。したがって、折り返し位置と襟羽との距離を0mm以上、5mm以下とすることにより、首回りにおける着心地のよさを確保するとともに、襟の型崩れを防止することができる。なお、折り返し位置がほどよく首筋にフィットするニットであるため、布帛である場合に比べ、首筋と折り返し位置とがすれ難く汚れが折り返し位置に付着し難い。
【0017】
また、襟台と襟羽とが縫製される襟羽縫製位置と、襟羽に挿入される襟台の先端との距離が5mm以上であるため、襟台と襟羽とを確実に縫い付けることができる。すなわち、襟台の縫付部が表襟羽及び裏襟羽の間に挿入されて縫製されることから、縫製時において表襟羽及び裏襟羽の間に挿入された縫付部を外部から直接見ることができない。そのため、この距離が5mmより小さい場合は、襟台と襟羽とを確実に縫い付けることができない場合が生じ得るからである。
【0018】
請求項3に係るニットシャツにおいては、シャツ本体及び襟台はニットであり、襟羽は布帛である。このシャツにおいては、首筋に直接接触する襟台がニットでできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感があり、着心地の良さを確保すことができる。また、襟台の外側に折り返される襟羽が布帛でできているため型崩れし難く、フォーマルな用途にも着用することが可能である。さらに、襟台の縫付部の一部又は全部が襟羽の裏面に縫製されるため、襟台の縫付部の一部又は全部を確認しつつ容易に縫い合わせることができる。したがって、このニットシャツによれば、フォーマルな使用も可能にしつつ、首回りにおける着心地をよくすることができる。なお、襟台は、身頃と一体として編み上げられていてもよく、身頃に縫い付けられていてもよい。
【0019】
請求項4に係るニットシャツにおいては、襟台の縫付部において襟台が折り返される折り返し位置と、襟羽との距離は、0mm以上、5mm以下である。この距離が0mmより小さい場合は、布帛でできている襟羽が首筋に直接接触するため、首回りにおける伸縮性やフィット感を十分に得ることができない。また、この距離が5mmより大きい場合は、折り返し位置から襟羽までの縫付部の面積が広くなってしまい襟が型崩れし易くなる。したがって、折り返し位置と襟羽との距離を0mm以上、5mm以下とすることにより、首回りにおける着心地のよさを確保するとともに、襟の型崩れを防止することができる。なお、折り返し位置がほどよく首筋にフィットするニットであるため、布帛である場合に比べ、首筋と折り返し位置とがすれ難く汚れが折り返し位置に付着し難い。
【0020】
請求項5に係るニットシャツにおいては、襟台の表面に布帛の補強布が縫い付けられているため、襟台の型崩れを防止するとともに、ネクタイを結び易くすることができる。
【0021】
請求項6に係るニットシャツにおいては、上前身頃及び下前身頃の前立て部分の表側には、布帛の補強布が縫い付けられているため、前立て部分の型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。
【0022】
請求項7に係るニットシャツにおいては、上前身頃の前立て部分の裏側には、布帛の補強布が縫い付けられているため、前立て部分の型崩れをさらに防止することができる。
【0023】
請求項8に係るニットシャツにおいては、シャツ本体がプルオーバータイプの無縫製ニットであり、一本の糸からつなぎ目や縫い目なしで編み上げられ、裁断や縫い合わせ作業が不要である。そのため、肌当たりを優しくすることができるのみならず、迅速な製造を可能にするとともに無駄な廃棄をなくすことができる。また、シャツ本体に縫い付けられる前立ては布帛からなるため、前立ての型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。
【0024】
請求項9に係るニットシャツにおいては、襟台の表面に布帛の補強布が縫い付けられているため、襟台の型崩れを防止するとともに、ネクタイを結び易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】実施形態1、2のニットシャツに係り、ボタンを外した状態の一部拡大正面図。
【
図3】実施形態1のニットシャツに係り、
図2におけるIII―III矢視断面図。
【
図4】実施形態2のニットシャツに係り、
図2におけるIV―IV矢視断面図。
【
図6】実施形態3のニットシャツに係り、ボタンを外した状態の正面図。
【
図7】実施形態3のニットシャツに係り、
図6におけるVII―VII矢視断面図。
【
図9】実施形態4のニットシャツに係り、ボタンを外した状態の一部拡大正面図。
【
図10】実施形態4のニットシャツに係り、シャツ本体の正面図。
【
図11】実施形態4のニットシャツに係り、前立ての概要図。
【
図12】実施形態4のニットシャツに係り、下前立ての縫い付けを示す正面図。
【
図13】実施形態4のニットシャツに係り、
図12におけるA部拡大正面図。
【
図14】実施形態4のニットシャツに係り、上前立ての縫い付けを示す正面図。
【
図15】実施形態4のニットシャツに係り、
図14におけるB部拡大正面図。
【
図16】実施形態4のニットシャツに係り、前立ての縫い付けを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るニットシャツを具体化した実施形態1から4を図面に基づいて以下に説明する。まず、実施形態1のニットシャツを説明する。
図1は実施形態1のニットシャツの正面図である。
図1に示すように、このニットシャツはボタン75aが3個付いたプルオーバータイプのシャツであり、シャツ本体70と襟1とを有している。シャツ本体70は、胴回りを覆う身頃72と袖71とからなっている。そして、身頃72は、胸側の前身頃72aと背側の後身頃72bとからなり、前身頃72aは、ボタン穴74a(
図2参照)が付いている上前身頃74と、ボタン75aが付いている下前身頃75とからなっている。
【0027】
襟1は、襟台10と襟羽20とからなっている。襟台10は帯状をなし、首回りを覆うように身頃72の上端に環状に設けられている。襟羽20は略帯状をなし、外方向に突出した襟先20aが両端に形成されている。そして、襟羽20は、襟台10の上部の縫付部12(
図3参照)に縫い付けられて、襟台10の外側に折り返されている。このニットシャツでは、シャツ本体70及び襟台10がニットでできており、襟羽20が布帛でできている。このように、首筋に直接接触する襟台10がニットでできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感を得ることができる。また、襟羽20が布帛でできているため型崩れし難い。なお、襟台10は、身頃72と一体として編み上げられていてもよく、別体として製造して身頃72に縫い付けるようにしてもよい。
【0028】
また、襟台10の表面には、布帛でできた補強布5aが縫い付けられている。これにより、襟台10の型崩れを防止するとともに、ネクタイを結び易くすることができる。さらに、上前身頃74の前立て部分73の表側には、布帛でできた補強布6aが縫い付けられている。また、
図2に示すように、下前身頃75の前立て部分73の表側には布帛でできた補強布6aが縫い付けられ、上前身頃74の前立て部分73の裏側には布帛でできた補強布7aが縫い付けられている。これにより、前立て部分73の型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。ここで、
図2はボタン75aを外して襟元を開いた状態を示している。なお、下前身頃75の前立て部分73の裏側には補強布7aが縫い付けられていないのは、ニットの持つ着心地の良さを損なわないようにするためである。
【0029】
図3は、襟台10に襟羽20が縫い付けられた状態を詳細に示す断面図である。
図3に示すように、襟台10は首回りを覆う襟台本体11と、襟台本体11の上端の折り返し位置P1で襟台本体11の外側に折り返される縫付部12とからなっている。襟羽20は、表側である表襟羽21と裏側である裏襟羽22とからなり、両者は同形状である。この表襟羽21と裏襟羽22とが重ね合わされるとともに、両者の間に縫付部12の一部又は全部が一端21b、22b側から挿入され、外周部21a、22aにおいて縫い合わされている。これにより、外部から襟台10の縫付部12の先端12a近傍が露出しないため意匠的にも優れている。
【0030】
折り返し位置P1と襟羽20の一端21b、22bとの距離D1は、0mm以上、5mm以下である。ただし、距離D1は、折り返し位置P1を基準として、縫付部12の先端12a方向を正方向として測定される。したがって、距離D1が0mmより大きい場合は、表襟羽21と裏襟羽22との間に縫付部12の一部が挿入されている状態であり、
図3に示すように、襟羽20の一端21b、22bが縫付部12にある状態である。また距離D1が0mmである場合は、表襟羽21と裏襟羽22との間に縫付部12の全部が挿入されている状態であり、襟羽20の一端21b、22bが折り返し位置P1にある状態である。さらに、距離D1が0mmより小さい場合は、表襟羽21と裏襟羽22との間に縫付部12の全部と襟台本体11の一部とが挿入されている状態であり、襟羽20の一端21b、22bが襟台本体11にある状態である。
【0031】
ここで、距離D1が0mmより小さい場合は、布帛でできている襟羽20が首筋に直接接触するため、首回りにおける伸縮性やフィット感を十分に得ることができない。また、距離D1が5mmより大きい場合は、折り返し位置P1から襟羽20の一端21b、22bまでの縫付部12の面積が広くなってしまい襟1が型崩れし易くなる。そのため、折り返し位置P1と襟羽20との距離を0mm以上、5mm以下とすることにより、首回りにおける着心地のよさを確保するとともに、襟1の型崩れを防止することができる。なお、距離D1が0mm以上、3mm以下であると、より効果を発揮することができる。
【0032】
また、襟台10と襟羽20とが縫製される襟羽縫製位置P2と、襟羽20に挿入される縫付部12の先端12aとの距離D2が5mm以上である。縫付部12が表襟羽21と裏襟羽22との間に挿入されて縫製されることから、縫製時において表襟羽21と裏襟羽22との間に挿入された縫付部12を外部から直接見ることができない。そのため、この距離D2が5mmより小さい場合は、襟台10と襟羽20とを確実に縫い付けることができない場合が生じ得るからである。
【0033】
実施形態1のニットシャツにおいては、シャツ本体70及び襟台10はニットであり、襟羽20は布帛である。このシャツにおいては、首筋に直接接触する襟台10がニットでできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感があり、着心地の良さを確保すことができる。また、襟台10の外側に折り返される襟羽20が布帛でできているため型崩れし難く、フォーマルな用途にも着用することが可能である。さらに、襟羽20は重ね合わされて外周部21c、22cが縫製される同形状の表襟羽21と裏襟羽22とからなり、襟台10の縫付部12の一部又は全部が表襟羽21及び裏襟羽22の間に挿入されて縫製されている。これにより、外部から襟台10の縫付部12の一部又は全部が見えることなく意匠的にも優れている。したがって、このニットシャツによれば、フォーマルな使用も可能にしつつ、首回りにおける着心地をよくすることができる。
【0034】
また、このニットシャツにおいては、襟台10の縫付部12において襟台10が折り返される折り返し位置P1と、襟羽20との距離D1は、0mm以上、5mm以下であるため、首回りにおける着心地のよさを確保するとともに、襟1の型崩れを防止することができる。なお、折り返し位置P1がほどよく首筋にフィットするニットであるため、布帛である場合に比べ、首筋と折り返し位置P1とがすれ難く汚れが折り返し位置P1に付着し難い。
【0035】
さらに、このニットシャツにおいては、襟台10と襟羽20とが縫製される襟羽縫製位置P2と、襟羽20に挿入される襟台10の先端12aとの距離D2が5mm以上であるため、襟台10と襟羽20とを確実に縫い付けることができる。
【0036】
また、このニットシャツにおいては、襟台10の表面に布帛の補強布5aが縫い付けられているため、襟台10の型崩れを防止するとともに、ネクタイを結び易くすることができる。
【0037】
さらに、このニットシャツにおいては、上前身頃74及び下前身頃75の前立て部分73の表側には、布帛の補強布6aが縫い付けられているため、前立て部分73の型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。
【0038】
また、このニットシャツにおいては、上前身頃74の前立て部分73の裏側には、布帛の補強布7aが縫い付けられているため、前立て部分73の型崩れをさらに防止することができる。
【0039】
次に、実施形態2のニットシャツを説明する。実施形態2のニットシャツは実施形態1のニットシャツと略同様であり、
図1及び
図2に示される。ただし、実施形態2においては、実施形態1の襟台10、襟1の替わりに、襟台15、襟2が用いられる。そして、襟羽20の襟台15への縫い付け方が実施形態1における襟羽20の襟台10への縫い付け方と異なっている。以下、襟羽20の襟台15への縫い付け方について
図4を用いて説明する。ただし、実施形態1と同様なものには同じ符号を用いるものとする。
図4に示すように、襟台15は首回りを覆う襟台本体11と、襟台本体11の上端の折り返し位置P4で襟台本体11の外側に折り返される縫付部17とからなっている。そして、縫付部17の一部又は全部が襟羽20の一端21b、22b側から挿入され、縫付部17の先端17aが襟羽20の他端21c、22cに達した状態で外周部21a、22aにおいて縫い合わされている。この実施形態2のニットシャツにおいては、表襟羽21及び裏襟羽22全体に縫付部17が挟まれているため、襟羽20の強度を増加させることができる。その他の効果は、実施形態1と同様である。
【0040】
次に、実施形態3のニットシャツを説明する。
図5は実施形態3のニットシャツの正面図である。
図5に示すように、このニットシャツはボタン85aによる前開きタイプのシャツであり、シャツ本体80と襟3とを有している。シャツ本体80は、胴回りを覆う身頃82と袖81とからなっている。そして、身頃82は、胸側の前身頃82aと背側の後身頃82bとからなり、前身頃82aは、ボタン穴84a(
図6参照)が付いている上前身頃84と、ボタン85aが付いている下前身頃85とからなっている。
【0041】
襟3は、襟台30と襟羽40とからなっている。襟台30は帯状をなし、首回りを覆うように身頃82の上端に環状に設けられている。襟羽40は略帯状をなし、外方向に突出した襟先40aが両端に形成されている。そして、襟羽40は、襟台30の上部の縫付部32(
図7参照)に縫い付けられて、襟台30の外側に折り返されている。このニットシャツでは、シャツ本体80及び襟台30がニットでできており、襟羽40が布帛でできている。このように、首筋に直接接触する襟台30がニットでできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感を得ることができる。また、襟羽40が布帛でできているため型崩れし難い。なお、襟台30は、身頃82と一体として編み上げられていてもよく、別体として製造して身頃82に縫い付けるようにしてもよい。
【0042】
また、襟台30の表面には、布帛でできた補強布5bが縫い付けられている。これにより、襟台30の型崩れを防止するとともに、ネクタイを結び易くすることができる。さらに、上前身頃84の前立て部分83の表側には、布帛でできた補強布6bが縫い付けられている。また、
図6に示すように、下前身頃85の前立て部分83の表側には布帛でできた補強布6bが縫い付けられ、上前身頃84の前立て部分83の裏側には布帛でできた補強布7bが縫い付けられている。これにより、前立て部分83の型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。ここで、
図6はボタン85aを外して前立て部分83を開いた状態を示している。なお、下前身頃85の前立て部分83の裏側には補強布7bが縫い付けられていないのは、ニットの持つ着心地の良さを損なわないようにするためである。
【0043】
図7は、襟台30に襟羽40が縫い付けられた状態を詳細に示す断面図である。
図7に示すように、襟台30は首回りを覆う襟台本体31と、襟台本体31の上端の折り返し位置P3で襟台本体31の外側に折り返される縫付部32とからなっている。そして、縫付部32の一部又は全部が襟羽40の裏面40d全体、すなわち襟羽40の一端40bから他端40cまで全てに当接された状態で外周部40aにおいて縫い合わされている。また、縫付部32の先端32aと襟羽40の他端40cとを合わせた状態で縫い合わされているため、簡単に縫い合わせることができる。
【0044】
折り返し位置P3と襟羽40の一端40bとの距離D3は、0mm以上、5mm以下である。ただし、距離D3は、折り返し位置P3を基準として、縫付部32の先端32a方向を正方向として測定される。したがって、距離D3が0mmより大きい場合は、縫付部32の一部に襟羽40が縫い合わされている状態であり、
図7に示すように、襟羽40の一端40bが縫付部32にある状態である。また距離D3が0mmである場合は、縫付部32全体に襟羽40が縫い合わされている状態であり、襟羽40の一端40bが折り返し位置P3にある状態である。さらに、距離D3が0mmより小さい場合は、縫付部32全体と襟台本体31の一部とに襟羽40が縫い合わされている状態であり、襟羽40の一端40bが襟台本体31にある状態である。
【0045】
ここで、距離D3が0mmより小さい場合は、布帛でできている襟羽40が首筋に直接接触するため、首回りにおける伸縮性やフィット感を十分に得ることができない。また、距離D3が5mmより大きい場合は、折り返し位置P3から襟羽40の一端40bまでの縫付部32の面積が広くなってしまい襟3が型崩れし易くなる。そのため、折り返し位置P3と襟羽20との距離を0mm以上、5mm以下とすることにより、首回りにおける着心地のよさを確保するとともに、襟3の型崩れを防止することができる。なお、距離D3が0mm以上、3mm以下であると、より効果を発揮することができる。
【0046】
実施形態3のニットシャツにおいては、シャツ本体80及び襟台30はニットであり、襟羽40は布帛である。このシャツにおいては、首筋に直接接触する襟台30がニットでできているため、首回りにおける伸縮性やフィット感があり、着心地の良さを確保すことができる。また、襟台30の外側に折り返される襟羽40が布帛でできているため型崩れし難く、フォーマルな用途にも着用することが可能である。さらに、襟台30の縫付部32の一部又は全部が襟羽40の裏面40dに縫製されるため、襟台30の縫付部32の一部又は全部を確認しつつ容易に縫い合わせることができる。したがって、このニットシャツによれば、フォーマルな使用も可能にしつつ、首回りにおける着心地をよくすることができる。
【0047】
また、このニットシャツにおいては、襟台30の縫付部32において襟台30が折り返される折り返し位置P3と、襟羽40との距離D3は、0mm以上、5mm以下であるため、首回りにおける着心地のよさを確保するとともに、襟3の型崩れを防止することができる。なお、折り返し位置P3がほどよく首筋にフィットするニットであるため、布帛である場合に比べ、首筋と折り返し位置P3とがすれ難く汚れが折り返し位置P3に付着し難い。その他の効果は実施形態1と同様である。
【0048】
次に、実施形態4のニットシャツを説明する。
図8は実施形態4のニットシャツの正面図であり、
図9はボタンを外した状態の一部拡大正面図である。
図8及び
図9に示すように、ニットシャツはボタン57a、ボタン穴56aが各3個付いたプルオーバータイプのシャツであり、シャツ本体50、襟1、上前立て56、下前立て57を有している。上前立て56、下前立て57は布帛からなり、上前立て56にはボタン穴56aが開けられ、下前立て57にはボタン57aが付けられている。このように、上前立て56、下前立て57が布帛からなっているため、上前立て56、下前立て57の型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。この上前立て56と下前立て57とが「前立て」である。なお、本実施形態のニットシャツは実施形態1のニットシャツと同じ構成部分を含むため、同様の構成部分については同じ符号を用いるものとし、その説明を省略する。
【0049】
シャツ本体50について、
図10を用いて詳細に説明する。シャツ本体50は、胴回りを覆う身頃52と、袖51と、襟1の一部である襟台10とからなり、これらが一本の糸からつなぎ目や縫い目なしで一体として編み上げられる無縫製ニットである。そして、身頃52は、胸側の前身頃52aと背側の後身頃52bとからなり、前身頃52aは、上前身頃54と下前身頃55とからなっている。また、襟台10の上端から前身頃52aの中央上部の底部52dまでスリット52cが縦方向に設けられている。このスリット52c近傍の上前身頃54が上縫付部54aであり、スリット52c近傍の下前身頃55が下縫付部55aである。そして、上縫付部54aに上前立て56が縫い付けられ、下縫付部55aに下前立て57が縫い付けられる。このように、シャツ本体50は、一本の糸からつなぎ目や縫い目なしで編み上げられる無縫製ニットであり、肌当たりを優しくして柔らかな風合いのシャツ本体50とすることができる。また、袖、前身頃、後身頃等の各部分を製造し、それらを縫い合わせる従来のニットシャツの製造方法に比べ、裁断や縫い合わせ作業が不要で迅速な製造が可能であるうえ、カットロスをなくし無駄な廃棄を防止することができる。なお、本実施形態において、(株式会社)島精機製作所製の横編み機MACH2XS153を用いてシャツ本体50を編み上げた。
【0050】
図11に示すように、上前立て56、下前立て57は、一枚の布が折り目56e、57eにより折り返された略長方形状の表面56a、57aと裏面56b、57bとからなり、折り目56e、57eの反対側は解放されている。また、上前立て56の裏面56bであって、折り目56eと反対側の下端には切欠き部56cが形成され、切欠き部56cと折り目56eとの間には下端部56dが形成されている。さらに、下前立て57の表面57bであって、折り目57eと反対側の下端には切欠き部57cが形成され、切欠き部57cと折り目57eとの間には下端部57dが形成されている。なお、上前立て56の裏面56bを下前立て57の表面57bとすることにより、上前立て56と下前立て57とを同一のものとすることもできる。
【0051】
次に、上前立て56、下前立て57の上前身頃54、下前身頃55への縫い付け方について、
図12から
図15を用いて説明する。まず、下前立て57の縫い付け方を説明する。
図12に示すように、下前立て57は、下縫付部55aに縫い付けられることにより下前身頃55に縫い付けられる。詳細には、
図13に示すように、下前立て57を折り目57eと反対側から矢印Cの方向に移動させる。そして、下前立て57の表面57aと裏面57bとにより下縫付部55aを挟み、下前立て57全体がスリット52cと平行になるように配置する。このとき、切欠き部57cと下端部57dとの境目が底部52dに当接するとともに、切欠き部57cが下前身頃55の上側になり、下端部57dが上前身頃54の下側になる。そして、下縫付部55aにおいて下前立て57を縫い目S1で縫い付けることにより、下前立て57が下前身頃55に縫い付けられる。
【0052】
次に、上前立て56の縫い付け方を説明する。
図14に示すように、上前立て56は、上縫付部54aに縫い付けられることにより上前身頃54に縫い付けられる。詳細には、
図15に示すように、上前立て56を折り目56eと反対側から矢印Dの方向に移動させる。そして、上前立て56の表面56aと裏面56bとにより上縫付部54aを挟み、上前立て56全体がスリット52cと平行になるように配置する。このとき、切欠き部56cと下端部56dとの境目が底部52dに当接するとともに、切欠き部56cが上前身頃54の下側になり、下端部56dが上前身頃54の上側になる。そして、上縫付部54aにおいて上前立て56を縫い目S2で縫い付けることにより、上前立て56が上前身頃54に縫い付けられる。
【0053】
以上のように、上前立て56、下前立て57を上前身頃54、下前身頃55へ縫い付けた後、
図16に示すように、上前立て56を下前立て57の上にぴったりと重ね、上前立て56、下前立て57の下端を縫い目S3で縫い付ける。その後、上前立て56にボタン穴56aを開けるとともに、下前立て57にボタン57aを付ける。最後に、襟1を縫い付けると
図8、
図9に示すニットシャツが完成する。
【0054】
実施形態4のニットシャツにおいては、シャツ本体50がプルオーバータイプの無縫製ニットであり、一本の糸からつなぎ目や縫い目なしで編み上げられ、裁断や縫い合わせ作業が不要である。そのため、肌当たりを優しくすることができるのみならず、迅速な製造を可能にするとともに無駄な廃棄をなくすことができる。また、シャツ本体50に縫い付けられる上前立て56、下前立て57は布帛からなるため、上前立て56、下前立て57の型崩れを防止することができるとともに、アクセントをつけて意匠性を向上させることができる。その他の効果は実施形態1と同様である。なお、本実施形態においては、実施形態1の襟1を採用しているが、襟1の替わりに実施形態2、3に示す襟2、3を採用してもよい。
【0055】
以上、本発明のニットシャツを実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、実施形態1、2においてはプルオーバータイプのシャツ、実施形態3においては前開きタイプのシャツを例に説明したが、これらに限定されることはなく、実施形態1、2において前開きタイプのシャツを採用してもよく、実施形態3においてプルオーバータイプのシャツを採用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、2、3…襟、5a、5b、5c、6a、6b、7a、7b…補強布、10、15、30…襟台、12、32…縫付部、12a…先端、20、40…襟羽、21…表襟羽、22…裏襟羽、21a、22a…外周部、40a…裏面、50、70、80…シャツ本体、51、71、81…袖、52、72、82…身頃、56、57…前立て(56…上前立て、57…下前立て)、73、83…前立て部分、54、74、84…上前身頃、55、75、85…下前身頃、D1、D2、D3…距離、P1、P3、P4…折り返し位置、P2…襟羽縫製位置。