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特開2024-65033アブソリュートエンコーダ、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正装置、及び、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065033
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正装置、及び、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G01D5/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180248
(22)【出願日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022173379
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】立井 孝則
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA20
2F077AA38
2F077JJ02
2F077JJ07
2F077QQ12
2F077QQ15
(57)【要約】
【課題】起動時の回転体の位置によらず角度偏差の最大値を抑制する。
【解決手段】アブソリュートエンコーダ2は、第1角度情報と、第2角度情報と、第2係数に基づいて、第2回転体が起動時の角度に戻るまで第1回転体を回転させることで生成される第2回転体の磁気干渉により第1回転体に生じる角度偏差を示す第2回転体角度偏差が小さくなるように補正する第2回転体オフセット値を決定する第2回転体オフセット値決定部121qと、起動時の第1角度情報と第1係数とに基づいて、第1角度情報によって示される角度と第1回転体の実際の角度との差を示す第1回転体角度偏差が小さくなるように補正する第1回転体オフセット値、及び、第2回転体オフセット値を合算した総合オフセット値を決定する総合オフセット値決定部121tと、総合オフセット値を用いて第1回転体角度偏差を補正する補正部121rと、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体の絶対角度を示す第1角度情報を生成する角度情報生成部と、
前記第1角度情報と、前記第1回転体とは回転周期の異なる第2回転体の絶対角度を示す第2角度情報と、所定の第2係数と、に基づいて、前記第2回転体が起動時の角度に戻るまで前記第1回転体を回転させることで生成される前記第2回転体の磁気干渉により前記第1回転体に生じる角度偏差を示す第2回転体角度偏差が小さくなるように補正する第2回転体オフセット値を決定する第2回転体オフセット値決定部と、
起動時の前記第1角度情報と所定の第1係数とに基づいて、前記第1角度情報によって示される角度と前記第1回転体の実際の角度との差を示す第1回転体角度偏差が小さくなるように補正する第1回転体オフセット値、及び、前記第2回転体オフセット値を合算した総合オフセット値を決定する総合オフセット値決定部と、
前記総合オフセット値を用いて前記第1回転体角度偏差を補正する補正部と、
を備え、
前記第1係数は、前記第1回転体角度偏差に基づいて決定され、
前記第2係数は、前記第2回転体角度偏差に基づいて決定される、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記第1係数は、所定の周期における前記第1回転体角度偏差に基づいて決定されるフーリエ係数である、
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記第2係数は、所定の周期における前記第2回転体角度偏差に基づいて決定されるフーリエ係数である、
請求項1または2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
前記第1回転体オフセット値は、起動時の前記第1角度情報と前記第1係数とに基づいて前記周期ごとに算出した値の総和により得られる、
請求項2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記第2回転体オフセット値は、
前記第1角度情報と、前記第2角度情報と、前記第2係数とに基づいて前記第2回転体の回転周期ごとに算出した値の総和により得られる、
請求項1または2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
前記第1回転体の回転に応じて変動する所定の物理量の値を示す第1信号を生成する第1センサ部を備え、
前記角度情報生成部は、前記第1信号に基づいて前記第1角度情報を生成する、
請求項3に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項7】
前記第2回転体オフセット値決定部は、前記第1信号、前記第2回転体の回転周期の相違、及び、前記第2回転体の回転数に基づいて前記第2角度情報を生成する、
請求項6に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項8】
前記第2回転体の回転に応じて変動する所定の物理量の値を示す第2信号を生成する第2センサ部を備え、
前記角度情報生成部は、前記第2信号に基づいて前記第2角度情報を生成する、
請求項6に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項9】
複数の前記第2回転体が備えられていて、
前記第2回転体オフセット値決定部は、複数の前記第2回転体それぞれについて、前記第2回転体オフセット値を決定する、
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項10】
複数の前記第2回転体のうち、少なくともいずれか1つは、回転周期が異なるものを含む、
請求項9に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項11】
複数の前記第2回転体は、いずれも回転周期が同一である、
請求項9に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項12】
起動時の第1回転体の絶対角度を示す第1角度情報と、前記第1回転体とは回転周期の異なる第2回転体の絶対角度を示す第2角度情報と、所定の第2係数に基づいて、前記第2回転体が起動時の角度に戻るまで前記第1回転体を回転させることで生成される前記第2回転体の磁気干渉により前記第1回転体に生じる角度偏差を示す第2回転体角度偏差が小さくなるように補正する第2回転体オフセット値を決定する第2回転体オフセット値決定部と、
起動時の前記第1角度情報と所定の第1係数とに基づいて、前記第1角度情報によって示される角度と前記第1回転体の実際の角度との差を示す第1回転体角度偏差が小さくなるように補正する第1回転体オフセット値、及び、前記第2回転体オフセット値を合算した総合オフセット値を決定する総合オフセット値決定部と、
前記総合オフセット値を用いて前記第1回転体角度偏差を補正する補正部と、
を備え、
前記第1係数は、前記第1回転体角度偏差に基づいて決定され、
前記第2係数は、前記第2回転体角度偏差に基づいて決定される、
アブソリュートエンコーダの角度偏差補正装置。
【請求項13】
コンピュータが、起動時の第1回転体の絶対角度を示す第1角度情報と、前記第1回転体とは回転周期の異なる第2回転体の絶対角度を示す第2角度情報と、所定の第2係数に基づいて、前記第2回転体が起動時の角度に戻るまで前記第1回転体を回転させることで生成される前記第2回転体の磁気干渉により前記第1回転体に生じる角度偏差を示す第2回転体角度偏差が小さくなるように補正する第2回転体オフセット値を決定し、
起動時の前記第1角度情報と所定の第1係数とに基づいて、前記第1角度情報によって示される角度と前記第1回転体の実際の角度との差を示す第1回転体角度偏差が小さくなるように補正する第1回転体オフセット値、及び、前記第2回転体オフセット値を合算した総合オフセット値を決定し、
前記総合オフセット値を用いて前記第1回転体角度偏差を補正し、
前記第1係数は、前記第1回転体角度偏差に基づいて決定され、
前記第2係数は、前記第2回転体角度偏差に基づいて決定される、
アブソリュートエンコーダの角度偏差補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダ、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正装置、及び、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の制御装置において、モータなどの回転軸の位置や角度を検出するために用いられるロータリエンコーダが知られている。このようなロータリエンコーダに関する技術としては、例えば、以下のような制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この制御装置は、回転体の回転角度を検出するエンコーダによる角度検出値を、その軸ずれによる検出誤差に相当する補正量を用いて補正する。この制御装置は、補正後の角度検出値と位置指令とを比較して位置偏差を求め、位置偏差をゼロに近づけるようにモータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-148248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータリエンコーダには、相対的な角度を検出するインクリメンタル型のエンコーダと、絶対的な角度を検出するアブソリュート型のエンコーダ(以下「アブソリュートエンコーダ」という。)と、が存在する。アブソリュートエンコーダは、起動時の回転体の角度を基準にして、その基準からの回転量で回転体の角度を検出する。
【0005】
しかしながら、アブソリュートエンコーダは、製造ばらつき等によって、検出される回転体の角度と実際の回転体の角度との間に誤差(以下「角度偏差」という。)が含まれることがある。また、一般に、アブソリュートエンコーダは、起動時の回転体の角度(以下「起動位置」という。)を基準、すなわちゼロ点として、その後の回転体の角度を検出する。このとき、ゼロ点における角度偏差は検出上0[deg]とみなされる。このため、従来のアブソリュートエンコーダにおいて、回転体の起動角度によって回転体の角度偏差の基準が異なるため、全角度範囲における角度偏差のうち、その絶対値が最大のもの(以下「最大角度偏差」という。)が変動する。
【0006】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、起動時の回転体の角度によらず角度偏差の最大値を抑制するアブソリュートエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、第1回転体の絶対角度を示す第1角度情報を生成する角度情報生成部と、前記第1角度情報と、前記第1回転体とは回転周期の異なる第2回転体の絶対角度を示す第2角度情報と、所定の第2係数に基づいて、前記第2回転体が起動時の角度に戻るまで前記第1回転体を回転させることで生成される前記第2回転体の角度偏差を示す第2回転体角度偏差が小さくなるように補正する第2回転体オフセット値を決定する第2回転体オフセット値決定部と、起動時の前記第1角度情報と所定の第1係数とに基づいて、前記第1角度情報によって示される角度と前記第1回転体の実際の角度との差を示す第1回転体角度偏差が小さくなるように補正する第1回転体オフセット値、及び、前記第2回転体オフセット値を合算した総合オフセット値を決定する総合オフセット値決定部と、前記総合オフセット値を用いて前記第1回転体角度偏差を補正する補正部と、を備え、前記第1係数は、前記第1回転体角度偏差に基づいて算出され、前記第2係数は、前記第2回転体角度偏差に基づいて決定される。
【0008】
本発明に係るアブソリュートエンコーダによれば、起動時の回転体の位置によらず角度偏差の最大値を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示すアブソリュートエンコーダの構成を、シールドプレートを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図3図2に示すアブソリュートエンコーダの構成を、ケースを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図4図3に示すアブソリュートエンコーダの構成を、角度センサ支持基板を除いた状態で概略的に示す平面図である。
図5図3に示される角度センサ支持基板を下面側から見た図である。
図6図4に示すアブソリュートエンコーダのA-A断面図である。
図7図4に示すアブソリュートエンコーダのB-B断面図である。
図8図4に示すアブソリュートエンコーダのC-C断面図である。
図9図1に示すアブソリュートエンコーダが備えるマイコンの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図10図1に示すアブソリュートエンコーダにおける主軸の1回転における角度偏差の波形の一例を示すグラフである。
図11図1に示すアブソリュートエンコーダにおいて、主軸の基準が72[deg]である場合における、角度偏差の波形の一例を示すグラフである。
図12図1に示すアブソリュートエンコーダにおける主軸の基準が0[deg]である場合における補正後の角度偏差の波形の一例を示すグラフである。
図13図1に示すアブソリュートエンコーダにおける主軸の基準が72[deg]である場合における補正後の角度偏差の波形の一例を示すグラフである。
図14図1に示すアブソリュートエンコーダにおける多回転角度偏差の波形の一例を示すグラフである。
図15図1に示すアブソリュートエンコーダにおける角度偏差を補正するオフセット値の決定処理の一例を示すフローチャートである。
図16】sin1θの角度偏差成分の変動を示す波形から得られるフーリエ係数の一例を示す図である。
図17】cos1θの角度偏差成分の変動を示す波形から得られるフーリエ係数の一例を示す図である。
図18】sin1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形の一例を示す図である。
図19】cos1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形の一例を示す図である。
図20】sin1θの角度偏差成分の多回転角度偏差を表す波形の一例を示す図である。
図21】cos1θの角度偏差成分の多回転角度偏差を表す波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正装置、及び、アブソリュートエンコーダの角度偏差補正方法について図面を参照しながら説明する。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施の形態、変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、図面において歯車は歯部形状を省略して示す。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2の構成を概略的に示す斜視図である。図2は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、シールドプレート7を除いた状態で概略的に示す斜視図である。図2では、アブソリュートエンコーダ2のケース4及び角度センサ支持基板5が透過されて示される。図3は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、ケース4を除いた状態で概略的に示す斜視図である。図3では、アブソリュートエンコーダ2の角度センサ支持基板5が透過されて示される。図4は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、角度センサ支持基板5を除いた状態で概略的に示す平面図である。
【0013】
図5は、角度センサ支持基板5を下側から見た平面図である。図6は、アブソリュートエンコーダ2のA-A断面図である。図7は、アブソリュートエンコーダ2のB-B断面図である。図8は、アブソリュートエンコーダ2のC-C断面図である。図9は、アブソリュートエンコーダ2が備えるマイコン121の機能的構成を概略的に示すブロック図である。以下、アブソリュートエンコーダ2の構造を具体的に説明する。
【0014】
本実施の形態においては、説明の便宜上、アブソリュートエンコーダ2についてXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向は夫々X軸方向に直交する。本実施の形態において、X軸方向を左側或いは右側と、Y軸方向を前側或いは後側と、Z軸方向を上側或いは下側ともいう。図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、X軸方向における手前側が左側であり、X軸方向における奥側が右側である。また、図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Y軸方向における手前側が前側であり、Y軸方向における奥側が後側である。また、図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Z軸方向における上側が上側であり、Z軸方向における下側が下側である。Z軸方向で上側から視た状態を平面視と、Y軸方向で前側から視た状態を正面視と、X軸方向で左側から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ2は任意の姿勢で使用され得る。
【0015】
アブソリュートエンコーダ2は、例えば、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転角度を特定して出力するアブソリュート型のロータリエンコーダである。本実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2はモータ1のZ軸方向の上側の端部に設けられている。本実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2は、平面視で略矩形状を有しており、正面視及び側面視で主軸1aの延在方向である上下方向に薄い横長の矩形状を有している。つまり、アブソリュートエンコーダ2は上下方向よりも水平方向に長い偏平な直方体形状を有している。
【0016】
アブソリュートエンコーダ2は内部構造を収容する中空角筒状のケース4を備えている。ケース4は、少なくともモータ1の主軸1aの一部、主軸ギア10、第1中間ギア20、第2中間ギア30、第1副軸ギア40、及び第2副軸ギア50などを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部4aを含み、上側の端部が開蓋されている。
【0017】
シールドプレート7は、矩形の板状部材である。シールドプレート7は、ネジによって、外壁部4aの上側の端部に固定されることでケース4を閉蓋する。シールドプレート7は、軸線方向(Z軸方向)において角度センサSp,Sq,Srとアブソリュートエンコーダ2の外部との間に設けられている板状部材である。シールドプレート7は、ケース4の内部に設けられている角度センサSp,Sq,Srがアブソリュートエンコーダ2の外部で発生している磁束によって磁気干渉を受けることを防ぐための磁束遮へい部材である。シールドプレート7は、例えば磁性体で形成されている。
【0018】
モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置等の減速機構を介して産業用等のロボットを駆動する駆動源として適用されるモータであってもよい。モータ1の主軸1aは上下方向の両側がモータのケースから突出している。アブソリュートエンコーダ2はモータ1の主軸1aの回転角度をデジタル信号として出力する。
【0019】
モータ1の形状は、平面視で略矩形状を有し、上下方向においても略矩形状を有している。つまり、モータ1は略立方体形状を有している。平面視においてモータ1の外形を構成する4つの外壁部の夫々の長さは例えば25mmであり、すなわち、モータ1の外形は、平面視で25mm角である。なお、モータ1の外形は、平面視で25mm角であることに限定されない。モータ1の外形は、モータ1の用途に応じて異なる大きさで構成されてもよい。また、モータ1に設けられるアブソリュートエンコーダ2は、例えばモータ1の外形形状に合わせて25mm角である。なお、アブソリュートエンコーダ2は、モータ1の外形形状に合わせた大きさであればよく、25mm角であることに限定されない。
【0020】
図1,2においては、角度センサ支持基板5がケース4及びシールドプレート7とともにアブソリュートエンコーダ2の内部を覆うように設けられている。
【0021】
図3,5に示すように、角度センサ支持基板5は、平面視で略矩形状を有し、上下方向に薄い板状のプリント配線基板である。図2から図4に示すように、コネクタ6は、角度センサ支持基板5に接続されており、アブソリュートエンコーダ2と外部装置(不図示)を接続するためのものである。
【0022】
図2から図4に示すように、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11(第1駆動歯車)を有する主軸ギア10を含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームホイール部21(第1従動歯車)、第2ウォームギア部22(第2駆動歯車)及び第3ウォームギア部28(第3駆動歯車)を有する第1中間ギア20を含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、第3ウォームホイール部31(第3従動歯車)及び第1平歯車部32(第4駆動歯車)を有する第2中間ギア30を含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、第2ウォームホイール部41(第2従動歯車)を有する第1副軸ギア40と、第2平歯車部51(第3従動歯車)を有する第2副軸ギア50とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、マグネットMpと、マグネットMpに対応する角度センサSpと、マグネットMqと、マグネットMqに対応する角度センサSqと、マグネットMrと、マグネットMrに対応する角度センサSrと、マイコン121とを含んでいる。
【0023】
図4、及び図6に示すように、モータ1の主軸1aは、モータ1の出力軸であり、アブソリュートエンコーダ2に回転力を伝達する入力軸である。主軸ギア10は、モータ1の主軸1aに固定されており、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持されている。第1ウォームギア部11は、モータ1の主軸1aの回転に従って回転するように、主軸ギア10の外周に設けられている。主軸ギア10において、第1ウォームギア部11は、その中心軸が主軸1aの中心軸と一致又は略一致するように設けられている。主軸ギア10は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。主軸ギア10は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。
【0024】
図3、及び図4に示すように、第1中間ギア20は、主軸ギア10の回転を、第1副軸ギア40及び第2中間ギア30に伝えるギア部である。第1中間ギア20は、軸23によってギアベース部3に略平行に伸びる回転軸線の周りに軸支されている。第1中間ギア20は、その回転軸線の方向に延伸する略円筒形状の部材である。第1中間ギア20は、第1ウォームホイール部21と、第2ウォームギア部22と、第3ウォームギア部28とを含み、内部に貫通孔が形成され、この貫通孔に軸23が挿通されている。この軸23をギアベース部3に設けられた第1中間ギア軸支部27に挿通することで、第1中間ギア20が軸支されている。第1ウォームホイール部21、第2ウォームギア部22、及び第3ウォームギア部28は、この順で互いに離れた位置に配置される。第1中間ギア20は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1中間ギア20は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0025】
図4、及び図7に示すように、第1ウォームホイール部21は第1中間ギア20の外周に設けられている。第1ウォームホイール部21は、第1ウォームギア部11と噛み合い、第1ウォームギア部11の回転に従って回転するように設けられている。第1ウォームホイール部21と第1ウォームギア部11との軸角は90°又は略90°に設定されている。
【0026】
第1ウォームホイール部21の外径に特別な制限はないが、図示の例では、第1ウォームホイール部21の外径は第1ウォームギア部11の外径より小さく構成されている。これにより、アブソリュートエンコーダ2では、上下方向の寸法の小型化が図られている。
【0027】
第2ウォームギア部22は、第1ウォームホイール部21とともに第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第1中間ギア20において、第2ウォームギア部22は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0028】
図4、及び図8に示すように、第3ウォームギア部28は第1中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第1中間ギア20において、第3ウォームギア部28は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0029】
図4に示すように、第1副軸ギア40は、主軸1aの回転に従い、減速されてマグネットMqと一体となって回転する。第1副軸ギア40は、ギアベース部3から略垂直に突出する軸により軸支され、第2ウォームホイール部41と、マグネットMqを保持する保持部と、を含む平面視で略円形状の部材である。第1副軸ギア40は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1副軸ギア40は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0030】
第2ウォームホイール部41は、第1副軸ギア40の外周に設けられており、第2ウォームギア部22と噛み合い、第2ウォームギア部22の回転に従って回転するように設けられている。第2ウォームホイール部41と第2ウォームギア部22との軸角は90°又は略90°に設定されている。第2ウォームホイール部41の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0031】
図4、及び図8において、第2中間ギア30は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速して第2副軸ギア50に伝える円盤状のギア部である。第2中間ギア30は、第2ウォームギア部22と、第2副軸ギア50に設けられる第2平歯車部51との間に設けられる。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合う。第2中間ギア30は、第1中間ギア20の第3ウォームギア部28と噛み合う第3ウォームホイール部31と、第2平歯車部51を駆動する第1平歯車部32とを有する。第2中間ギア30は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2中間ギア30は、平面視で略円形状の部材である。第2中間ギア30は、ギアベース部3に軸支されている。
【0032】
第2中間ギア30を備えることにより、その分、後述する第2副軸ギア50を第3ウォームギア部28から遠ざけた位置に配置することができる。このため、マグネットMr、Mqとの間の距離を長くして互いの漏れ磁束の影響を減らすことができる。また、第2中間ギア30を備えることにより、その分減速比を設定できる範囲が拡がり設計の自由度が向上する。
【0033】
第3ウォームホイール部31は、第2中間ギア30の外周に設けられており、第3ウォームギア部28と噛み合い、第3ウォームギア部28の回転に従って回転するように設けられている。第1平歯車部32は、第2中間ギア30の外周にその中心軸が第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第1平歯車部32は、第2平歯車部51と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第3ウォームホイール部31及び第1平歯車部32の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0034】
図8において、第2副軸ギア50は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速してマグネットMrに伝える、平面視で円形状のギア部である。第2副軸ギア50は、ギアベース部3から略垂直に伸びる回転軸線周りに軸支されている。第2副軸ギア50は、第2平歯車部51と、マグネットMrを保持する磁石保持部とを含む。
【0035】
第2平歯車部51は、第2副軸ギア50の外周にその中心軸が第1平歯車部32の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第2平歯車部51の回転軸線は、第1平歯車部32の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。第2副軸ギア50は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第2副軸ギア50は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0036】
ここで、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に噛み合うために、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に向かう方向を第1噛み合い方向P1(図4の矢印P1方向)とする。同様に、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に噛み合うために、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に向かう方向を第2噛み合い方向P2(図4の矢印P2方向)とする。さらに、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に噛み合うために、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に向かう方向を第3噛み合い方向P3(図4の矢印P3方向)とする。本実施の形態においては、第1噛み合い方向P1、第2噛み合い方向P2、及び第3噛み合い方向P3は共に水平面(XY平面)に沿う方向となっている。
【0037】
マグネットMpは、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定される。マグネットMpは、ホルダ部16を介して主軸ギア10の中心軸に設けられているマグネット支持部17に支持されている。ホルダ部16は、アルミニウム合金などの非磁性体により形成されている。ホルダ部16の内周面は、マグネットMpの径方向における外周面に接してこの外周面を保持するように、マグネットMpの外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。また、マグネット支持部17の内周面は、ホルダ部16の外周面に接するように、ホルダ部16の外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。マグネットMpは、主軸ギア10の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。
【0038】
図2,3及び図5に示すように、第1センサ部として機能する角度センサSpは、主軸ギア10の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMpの上面に上下方向に対向するように、角度センサ支持基板5の下面5aに設けられる。一例として、角度センサSpは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSpは、マグネットMpの磁極を検知し、第1信号としての検知した情報(以下「検知情報」という。)をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMpの回転角度を特定することにより、主軸ギア10の回転角度、つまり主軸1aの回転角度を特定する。主軸1aの回転角度の分解能は角度センサSpの分解能に対応する。マイコン121は、後述するように、特定された第1副軸ギア40の回転角度及び特定された主軸1aの回転角度に基づいて主軸1aの回転角度を特定し、これを出力する。マイコン121は、一例としてモータ1の主軸1aの回転角度をデジタル信号として出力するようにしてもよい。
【0039】
角度センサSqは、第2センサ部として機能し、第2ウォームホイール部41の回転角度、すなわち第1副軸ギア40の回転角度を検知する。マグネットMqは、第1副軸ギア40の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMqは、第1副軸ギア40の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。図3に示すように、角度センサSqは、第1副軸ギア40の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMqの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0040】
一例として、角度センサSqは、角度センサSpが固定された角度センサ支持基板5に、角度センサSpが固定される面と同一の面において固定されている。角度センサSqは、マグネットMqの磁極を検知し、第2信号としての検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMqの回転角度、つまり第1副軸ギア40の回転角度を特定する。
【0041】
角度センサSrは、第2センサ部として機能し、第2平歯車部51の回転角度、すなわち第2副軸ギア50の回転角度を検知する。マグネットMrは、第2副軸ギア50の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMrは、第2副軸ギア50の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。図3に示すように、角度センサSrは、第2副軸ギア50の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMrの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0042】
一例として、角度センサSrは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSrは、マグネットMrの磁極を検知し、第2信号としての検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMrの回転角度、つまり第2副軸ギア50の回転角度を特定する。
【0043】
各角度センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、例えば、それぞれの回転体の軸方向において、各マグネットの磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置される。アブソリュートエンコーダ2において、角度センサに用いられる磁気式角度センサの構成には限定されない。例えば、磁気式角度センサは、それぞれの回転体の外周方向において、各マグネットの磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置される構成であってもよい。磁気式角度センサは、これらマグネットの磁極の回転に基づいて変動する磁界の強さを物理量として検出することで、対向する回転体の回転角度を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。なお、各角度センサは磁界の向き(ベクトル)を物理量として検出するように構成されてもよい。
【0044】
演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテーブルを用いてテーブル処理によって回転角度を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各角度センサは、不図示の配線部材を介して検知した各回転体の回転角度に対応するデジタル信号である角度信号をマイコン121に出力する。例えば、各角度センサは各回転体の回転角度を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
【0045】
図5に示すように、マイコン121は、角度センサ支持基板5にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。マイコン121は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、角度センサSp,Sq,Srのそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア10の回転角度を演算する。
【0046】
図9に示すマイコン121の各ブロックは、マイコン121としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。図9に示すように、マイコン121は、角度偏差補正方法を実行するために、角度情報生成部121p、係数決定部121s、副軸オフセット値決定部121q、記憶部121b、総合オフセット値決定部121t、及び、補正部121rを備える。つまり、マイコン121は、角度偏差補正方法を実行するための角度偏差補正装置として機能する。マイコン121の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPUやRAM(Random Access Memory)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。従って、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0047】
次に、本実施の形態のアブソリュートエンコーダ2における、回転軸の角度偏差、角度偏差を補正する値であるオフセット値の概要を説明する。
【0048】
図10は、アブソリュートエンコーダ2における主軸1aの1回転における角度偏差の波形の一例を示すグラフである。図10に示す角度偏差の波形Ar1において、横軸が主軸1aの回転角度を示し、縦軸が主軸1aを回転させることで生成された角度によって示される角度と、主軸1aの実際の角度と、の角度偏差を示す。主軸1aは第1回転体の一例である。アブソリュートエンコーダ2において、主軸1aの角度偏差は、主軸1aの1回転(360°)に亘る。
【0049】
アブソリュートエンコーダ2は、モータ1の制御を行う外部制御装置(以下「コントローラC」という。)に対して、角度情報生成部121pが生成したモータ1の主軸1aの回転角度を出力する。コントローラCは、アブソリュートエンコーダ2から出力された回転角度に基づいてモータ1の動作制御を行う。
【0050】
しかしながら、アブソリュートエンコーダ2によって特定される回転角度には、主軸1aの位置(角度)に応じた固有の角度偏差が含まれる。固有の角度偏差は、アブソリュートエンコーダ2毎に異なる。固有の角度偏差はアブソリュートエンコーダ2の製造ばらつきによって生じる。製造ばらつきは、例えば歯車などの部品の組み立て、アブソリュートエンコーダ2において回転軸の位置検出に用いられるマグネットMp、Mq、Mrや角度センサSp、Sq、Srの位置関係等の製造工程で含まれるばらつきである。
【0051】
アブソリュートエンコーダ2は、起動時の主軸1aの起動位置を基準(ゼロ点)として、その後の主軸1aの位置を検出する。図10に示した角度偏差の波形Ar1において、主軸1aの基準は、0[deg]である。図10に示した角度偏差の波形Ar1において、主軸1aの1回転における最大角度偏差は、0.224[deg]である。
【0052】
図11は、アブソリュートエンコーダ2において、主軸1aの基準が72[deg]である場合における、角度偏差の波形Ar2の一例を示すグラフである。図11において、横軸は主軸1aの回転角度を示す。また、図11において、縦軸は主軸1aの回転角度に対応する角度偏差の値を示す。図11には、主軸1aの基準が72[deg]の角度偏差の波形Ar2とともに、比較のために図10に示した基準が0[deg]の角度偏差の波形Ar1を示している。角度偏差の波形Ar2において、最大角度偏差は、0.160[deg]である。最大角度偏差とは、複数の角度偏差の絶対値(-0.224であれば0.224、+0.160であれば0.160)を比較したときにおける最大の値である。図11に示すように、アブソリュートエンコーダ2において、基準が0[deg]の角度偏差の波形Ar1と、基準が72[deg]の角度偏差Ar2とを比較する。起動位置0[deg]と72[deg]とで比較した最大角度偏差の差異は、起動位置の相違により|-0.224|-|0.160|=0.064[deg]の最大角度偏差の差異が生じる。つまり、アブソリュートエンコーダ2において、主軸1aの起動位置によって主軸1aの基準となる角度偏差の値が異なる。このため、アブソリュートエンコーダ2において、主軸1aの起動位置が異なる場合、最大角度偏差が変動することが考えられる。
【0053】
回転式のアブソリュートエンコーダは、主軸1aが1回転することにより生じる角度偏差は、主軸1aが1回転することで元に戻る周期性を有する。従って、主軸1aの角度偏差は、フーリエ変換を行うことにより、角度偏差に含まれる周期成分の大きさ(振幅)を算出することができる。なお、周期成分とは、正弦波または余弦波の形で示される、角度偏差波形の形をなす成分のことである。角度偏差波形は、異なる周期と振幅を有する複数の周期成分の波形が重なることで、固有の波形が形成される。
【0054】
また、アブソリュートエンコーダ2において、第1回転体オフセット値としての主軸1aのオフセット値Ofsmainと、オフセット値Ofssubとを合算した総合オフセット値OfsALLを決定する。主軸1aのオフセット値Ofsmainは、起動時の主軸1aの角度情報Apと、第1回転体角度偏差としての主軸1aの角度偏差に基づいて算出される所定の第1係数(例えば、フーリエ係数)とから決定される。このような処理を行うことにより、アブソリュートエンコーダ2によれば、起動時の主軸1aの位置によらず副軸磁石Mq、Mr(第1副軸ギア40、第2副軸ギア50)からの磁気干渉により主軸1aの角度情報に生じる最大角度偏差を抑制することができる。
【0055】
そこで、アブソリュートエンコーダ2において、マイコン121によって実現される第2回転体オフセット値決定部としての副軸オフセット値決定部121qが、以下の情報に基づいて、最大角度偏差が最小となるように第2回転体オフセット値としてのオフセット値Ofssubを決定する。オフセット値Ofssubの決定に用いられる情報は、起動時の主軸1aの角度情報Ap、主軸1aとは回転周期の異なる第2回転体としての副軸の絶対角度を示す第2角度情報としての副軸の角度情報Aq,Ar、及び、所定の第2係数(例えば、フーリエ係数)とである。所定の第2係数は、第2回転体角度偏差としての副軸の1回転あたり複数回回転する主軸1aにおける、角度偏差(以下「多回転角度偏差」という。)に基づいて算出される。
【0056】
図12は、主軸1aの基準が0[deg]である場合における補正後の角度偏差の波形Ar3の一例を示すグラフである。図12に示すように、補正後の角度偏差の波形Ar3の最大角度偏差は0.137[deg]である。補正後の角度偏差の波形Ar3の最大角度偏差は、図10に示した角度偏差の波形Ar1の最大角度偏差(0.224[deg])と比較して抑制されている。
【0057】
図13は、主軸1aの基準が72[deg]である場合における補正後の角度偏差の波形Ar4を示すグラフである。図13に示すように、補正後の角度偏差の波形Ar4の最大角度偏差は0.137[deg]である。補正後の角度偏差の波形Ar4の最大角度偏差は、図11に示した角度偏差の波形Ar2の最大角度偏差(0.160[deg])と比較して抑制されている。
【0058】
角度情報生成部121pは、角度センサSpから出力される検知情報に基づいて、主軸ギア10、つまり、主軸1aの回転角度を示す情報(以下「角度情報」という。)Apを生成する。角度情報生成部121pは、角度センサSqから出力される検知情報に基づいて、第1副軸ギア40の角度情報Aqを生成する。角度情報生成部121pは、角度センサSrで検知される検知情報に基づいて、第2副軸ギア50の回転角度を示す角度情報である角度情報Arを生成する。なお、本実施の形態において、第1副軸磁石Mqが主軸1aに磁気干渉を及ぼすことで生じる、主軸1aの角度偏差と、アブソリュートエンコーダ2の起動位置によって特定される最大角度偏差が最小となるように角度偏差を補正する値(以下「オフセット値」という。)Ofssub1の決定処理では、マイコン121は角度情報Aqに含まれる偏差を補正するために、マグネットMpと角度センサSpとにより生成される角度情報Apを用いる。つまり、本実施の形態において、マグネットMq,Mr及び角度センサSq,Srを有さないように構成されてもよい。
【0059】
係数決定部121sは、副軸オフセット値決定部121qにおいて副軸オフセット値を決定するのに用いられるフーリエ係数(パラメータ)を決定する。係数決定部121sは、決定したフーリエ係数を記憶部121bに記憶する。フーリエ係数は、主軸1aを複数回転、具体的には副軸の1回転に対する主軸1aの回転数により得られる角度偏差をフーリエ変換することで得られる係数である。
【0060】
図14は、アブソリュートエンコーダ2において、多回転角度偏差の波形の一例を示すグラフである。図14に示す多回転角度偏差の波形において、横軸が主軸1aの回転角度を示し、縦軸が回転体の一例である主軸1aを回転させることで生成された角度によって示される角度と、主軸1aの実際の角度と、の角度偏差を示す。図14では、アブソリュートエンコーダ2の副軸の1回転は、主軸1aの10回転(3600°)に対応している例を示している。なお、アブソリュートエンコーダ2のマイコン121は、係数決定部121sを備えていないものであってもよい。つまり、オフセット値を決定するのに用いられる係数は、マイコン121により算出せず、あらかじめ記憶部121bに記憶させておいてもよい。
【0061】
副軸オフセット値決定部121qは、オフセット値Ofssubを決定する。オフセット値Ofssubは、第2回転体オフセット値に相当する。オフセット値Ofssubは、起動時の主軸1aの角度情報Apと、主軸1aとは回転周期の異なる第2回転体としての副軸の絶対角度を示す第2角度情報としての副軸(第1副軸ギア40及び、または第2副軸ギア50の少なくともいずれか一方)の角度情報Aq、角度情報Arと、副軸の角度偏差に基づいて算出される所定の第2係数(例えば、フーリエ係数)とに基づいて決定される。具体的には、オフセット値Ofssubは、第1角度情報としての主軸1aの角度情報Apと、副軸の角度情報Aq、角度情報Arと、係数決定部121sが決定したフーリエ係数とに基づいて副軸の回転周期ごとに算出された値の総和により得られる。
【0062】
オフセット値を決定するのにあたり、副軸オフセット値決定部121qは、アブソリュートエンコーダ2の起動時に検出された主軸1aの角度情報Apと、角度偏差波形に含まれる任意の周期nにおけるサイン成分のフーリエ係数Fsと、角度偏差波形に含まれる周期nにおけるコサイン成分のフーリエ係数Fcとから主軸1aの角度情報Apにおけるオフセット値Ofssubを特定する。副軸オフセット値決定部121qは、例えば、フーリエ係数Fs及びフーリエ係数Fcが記憶されている記憶部121bの記憶領域から、角度情報Apに対応するフーリエ係数Fs及びフーリエ係数Fcを特定する。特定されたオフセット値Ofssubは、主軸1aの角度情報に加算される。具体的には、特定された第1副軸ギア40からの磁気干渉に由来する主軸1aのオフセット値Ofssub1は、主軸1aの角度情報Apに加算される。また、特定された第2副軸ギア50からの磁気干渉に由来する主軸1aのオフセット値Ofssub2は、主軸1aの角度情報Apに加算される。アブソリュートエンコーダ2において、第1副軸ギア40の回転周期と第2副軸ギア50の回転周期とは異なる。また、第1副軸ギア40の磁気干渉により主軸1aに生じる角度偏差の変動周期と、第2副軸ギア50の磁気干渉により主軸1aに生じる角度偏差の変動周期は異なる。つまり、第1副軸ギア40のオフセット値Ofssub1と第2副軸ギア50のオフセット値Ofssub2とはアブソリュートエンコーダ2の起動位置の変化に対して、異なる変化を示す。
このような処理を行うことにより、アブソリュートエンコーダ2によれば、起動時の主軸1aの位置によらず副軸磁石Mq、Mr(第1副軸ギア40、第2副軸ギア50)からの磁気干渉により主軸1aの角度情報に生じる最大角度偏差を抑制することができる。
【0063】
総合オフセット値決定部121tは、副軸オフセット値決定部121qが決定した副軸のオフセット値Ofssubと、第1回転体オフセット値としての主軸1aのオフセット値Ofsmainとを合算した総合オフセット値OfsALLを決定する。オフセット値Ofsmainは、起動時の主軸1aの角度情報Apと、記憶部121bに記録されている角度偏差に基づいて算出される所定の第1係数(例えば、フーリエ係数)とから決定される値である。オフセット値Ofsmainは、アブソリュートエンコーダ2のマイコン121において下記の手順により決定してもよく、また記憶部121bにオフセット値Ofsmainを記憶していてもよい。
【0064】
具体的には、オフセット値Ofsmainは、以下のように決定される。まず、アブソリュートエンコーダ2の起動時に検出された主軸1aの角度情報Apから、主軸1aの角度情報Apに含まれる角度偏差のサイン成分のフーリエ係数Fs、及び、コサイン成分のフーリエ係数Fcを特定する。
【0065】
次に、特定したフーリエ係数Fs及びフーリエ係数Fcから、周期nの偏差成分のオフセット値(以下「オフセット値Ofs」という。)を算出する。オフセット値Ofsは、式(1)で求めることができる。なお、フーリエ係数Fs,Fcの値は、個々のアブソリュートエンコーダ2によって異なる。
【0066】
【数1】
【0067】
次に、式(2)を用いて算出した各周期(n=1,2,・・・N)の偏差成分のオフセット値の総和、すなわち、主軸1aの1回転に含まれる角度偏差を補正するのに用いるオフセット値Ofsmainを算出する。
【0068】
【数2】
【0069】
記憶部121bは、オフセット値Ofssubの決定処理において用いられる情報を記憶する機能部である。記憶部121bは、例えば、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部121bは、出荷前に測定された主軸1aの全角度範囲における角度偏差の情報を記憶している。また、記憶部121bは、オフセット値Ofssubの決定処理に用いられるフーリエ係数を、周期の数(n=1,2,・・・,N / m=1,2,・・・,M)に応じて記憶していてもよい。また、記憶部121bは、オフセット値Ofsmainの決定処理に用いられるフーリエ係数を、周期の数(n=1,2,・・・,N)に応じて記憶している。なお、記憶部121bには、上述したようにオフセット値Ofsmainを記憶していてもよい。
【0070】
補正部121rは、総合オフセット値決定部121tが決定したオフセット値OfsALLを用いて、角度偏差を補正する。
【0071】
次に、アブソリュートエンコーダ2において実行されるオフセット値Ofssubの決定処理の具体的な例について説明する。
【0072】
図15は、アブソリュートエンコーダ2における角度偏差を補正するオフセット値Ofssubの決定処理の一例を示すフローチャートである。
【0073】
図15を参照しつつ、副軸オフセット値決定部121qが行うオフセット値Ofssubの決定処理の詳細について、副軸の一例である第1副軸ギア40のオフセット値としてのオフセット値Ofssub1を決定する処理を一例として説明する。以下の説明において、第1副軸ギア40を単に副軸と称する。
【0074】
副軸オフセット値決定部121qは、オフセット値Ofssub1を決定するために用いられる副軸の角度の情報(以下「多回転弧度ω(0≦ω<2π)」という。)の算出に用いられる情報を取得する(ステップS101)。アブソリュートエンコーダ2において、副軸が1回転する際に、副軸と回転周期が異なる主軸1aは、回転周期の相違(減速比)に応じた複数回の回転を行う。副軸の回転角度についても、主軸1aとの回転周期の相違に応じた回転角度となる。副軸オフセット値決定部121qは、ステップS101において、係数決定部121sが決定し記憶部121bに記憶されているフーリエ係数、主軸1aの角度情報Ap、及び、副軸の回転数tを取得する。
【0075】
フーリエ係数の値は、アブソリュートエンコーダ2の個体ごとに異なる。フーリエ係数の値は、アブソリュートエンコーダ2から取得した副軸の角度偏差をフーリエ変換することにより求めることができる。
【0076】
フーリエ係数は、主軸1aの弧度θの周期n(n=1,2,3,・・・,N)ごとのサイン成分及びコサイン成分の変動を示す波形について、副軸の弧度ωのサイン成分及びコサイン成分が、周期m(m=1,2,3,・・・,M)ごとに算出される。例えば、フーリエ係数Fsnsm、Fsncm、Fcnsm、Fcncmは、以下の表1及び表2に示すように表わされる。表1は、弧度θのサイン成分についての角度偏差成分の変動を示す波形の副軸の弧度ωの成分量である、フーリエ係数Fsnsm及びフーリエ係数Fsncmを示す。表2は、弧度θのコサイン分についての角度偏差成分の変動を示す波形の副軸の弧度ωの成分量である、フーリエ係数Fcnsm及びフーリエ係数Fcnsmを示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
副軸オフセット値決定部121qは、以下の式(3)に基づいて、ステップS101で取得した情報を用いて、オフセット値Ofssub1を決定するために用いられる多回転弧度ωを算出する(ステップS102)。
【0080】
【数3】
【0081】
式(3)において、θ:主軸1aの弧度(0≦θ<2π)、t:副軸の回転数(t=0,1,・・・T-1)、T:主軸1aの1回転に対する副軸の最大回転数、すなわち主軸1aに対する副軸の減速比、である。
【0082】
図16は、sin1θの角度偏差成分の変動を示す波形から得られるフーリエ係数の一例を示す図である。図16において、sin1θの角度偏差成分の変動を示す波形から得られるフーリエ係数の一例として、表1に示したsin1θの角度偏差成分の変動を示す波形のsin1ω成分量:Fs1s1、cos1ω成分量:Fs1c1、sin2ω成分量:Fs1s2、cos2ω成分量:Fs1c2を示している。図17は、cos1θの角度偏差成分の変動を示す波形から得られるフーリエ係数の一例を示す図である。図17において、cos1θの角度偏差成分の変動を示す波形から得られるフーリエ係数の一例として、表2に示したsin1θの角度偏差成分の変動を示す波形のsin1ω成分量:Fs1s1、cos1ω成分量:Fs1c1、sin2ω成分量:Fs1s2、cos2ω成分量:Fs1c2を示している。
【0083】
図18は、sin1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形の一例を示す図である。図18に示すsin1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形において、横軸が主軸1aの回転角度を示し、縦軸が主軸1aを回転させたときのsin1θの角度偏差成分を示す。図19は、cos1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形の一例を示す図である。図19に示すcos1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形において、横軸が主軸1aの回転角度を示し、縦軸が主軸1aを回転させたときのcos1θの角度偏差成分を示す。
【0084】
副軸オフセット値決定部121qは、図16に示すsinnθ成分の角度偏差の振幅変動を示すフーリエ係数から、図18に示すsinnθ成分の角度偏差の振幅変動を示す波形を復号する。また、副軸オフセット値決定部121qは、図17に示すcosnθ成分の角度偏差の振幅変動を示すフーリエ係数から、図19に示すcosnθ成分の角度偏差の振幅変動を示す波形を復号する(ステップS103)。各角度偏差成分の変動を示すフーリエ係数から、角度偏差成分の変動の振幅変化を表す波形を復号する処理は、以下のように行う。
【0085】
副軸オフセット値決定部121qは、各角度偏差成分の変動を示すフーリエ係数を角度偏差成分ごとに逆フーリエ変換する。副軸オフセット値決定部121qは、フーリエ係数を逆フーリエ変換することで、副軸の1回転に相当する主軸1aの回転量、例えば、主軸1aの10回転(3600deg)に相当する、sinnθ成分、及び、cosnθ成分の角度偏差の振幅変化の値を得ることができる。
【0086】
次に、副軸オフセット値決定部121qは、sinnθ成分、及び、cosnθ成分の角度偏差の振幅変化の値を主軸1aの10回転(3600deg)にわたってプロットすることにより、図18及び図19に示すsinnθ成分、及び、cosnθ成分の角度偏差の振幅変化を示す波形を生成する。
【0087】
図20は、sin1θ成分の角度偏差の多回転角度偏差を表す波形の一例を示す図である。図20に示すsin1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形において、横軸が主軸1aの回転角度を示し、縦軸が主軸1aを回転させたときのsin1θの角度偏差成分を示す。図20における破線は、図18に示したsin1θ成分の角度偏差の振幅変動を示す波形である。図20における実線は、sin1θ成分の多回転角度偏差の振幅変動を示す波形である。図21は、cos1θ成分の角度偏差の多回転角度偏差を表す波形の一例を示す図である。図21に示すcos1θの角度偏差成分の振幅変化の変動を表す波形において、横軸が主軸1aの回転角度を示し、縦軸が主軸1aを回転させたときのcos1θの角度偏差成分を示す。図21における破線は、図19に示したcos1θ成分の角度偏差の振幅変動を示す波形である。図21における実線は、cos1θ成分の多回転角度偏差の振幅変動を示す波形である。
【0088】
副軸オフセット値決定部121qは、図18及び図19に示したsinnθ成分、及び、cosnθ成分の角度偏差の振幅変化を示す値をさらに逆フーリエ変換することにより、図20及び図21に示すsinnθ成分、及び、cosnθ成分の多回転角度偏差を算出(復号)する(ステップS104)。
【0089】
副軸オフセット値決定部121qは、復号されたsinnθ成分、及び、cosnθ成分の角度偏差の多回転角度偏差から、副軸の1回転により得られる角度偏差に含まれる周期n、主軸1aの多回転により得られる角度偏差、つまり、多回転角度偏差に含まれる周期mの偏差成分のオフセット値Ofsnmを決定する(ステップS105)。オフセット値Ofsnmは、式(4)で求めることができる。なお、表1及び表2に示したフーリエ係数Fsnsm、Fsncm、Fcnsm、Fcncmの値は、個々のアブソリュートエンコーダ2によって異なる。
【0090】
【数4】
【0091】
副軸オフセット値決定部121qは、オフセット値Ofsnmの決定が1回転角度偏差及び多回転角度偏差に含まれている周期の数(例えば、n=N、m=M)に到達したか否かを判定する(ステップS106)。オフセット値Ofsnmを決定した周期の数がN及びMに到達していない場合に(S106:NO)、副軸オフセット値決定部121qは、ステップS103に戻り、周期の数N,Mに到達するまでオフセット値Ofsnmの算出を繰り返す。
【0092】
オフセット値Ofsnmを決定した周期の数がN,Mに到達した場合に(S106:YES)、副軸オフセット値決定部121qは、式(4)を用いて算出した各周期(n=1,2,・・・N、m=1,2,・・・M)の偏差成分のオフセット値の総和、すなわち、主軸1aの1回転に含まれる角度偏差を補正するのに用いるオフセット値Ofssub1を、式(5)を用いて決定する(ステップS107)。オフセット値Ofssub1の決定後、副軸オフセット値決定部121qは、オフセット値Ofssub1の決定処理を終了する。
なお、以上説明した副軸オフセット値決定部121qが行うオフセット値Ofssubの決定処理は、第1副軸ギア40のオフセット値Ofssub1を決定する処理に限定されず、副軸の他の一例である第2副軸ギア50のオフセット値Ofssub2を決定する処理に用いることができる。
【0093】
【数5】
【0094】
[総合オフセット値の決定処理]
副軸のオフセット値Ofssub1が決定した後、総合オフセット値決定部121tは、決定したオフセット値Ofssub1と、オフセット値Ofsmainとを合算した総合オフセット値OfsALLを決定する。
【0095】
総合オフセット値決定部121tは、アブソリュートエンコーダ2において総合オフセット値Ofsallの算出を要する軸の構成が、主軸1aと1つの副軸(減速比 N:1)との組み合わせである場合に、総合オフセット値Ofsallを下記の式(6)により算出する。なお、アブソリュートエンコーダ2において、複数の副軸を有する場合であっても、主軸1aに対して、1つの副軸以外の他の副軸からの多回転角度偏差の影響が無視できるほど小さい場合は、式(6)を適用することができる。
【0096】
【数6】
【0097】
総合オフセット値決定部121tは、アブソリュートエンコーダ2において総合オフセット値Ofsallの算出を要する軸の構成が、主軸1aと複数の副軸である場合に、総合オフセット値OfsALLを下記の式(7)により算出する。式(7)において、複数の副軸は、第1副軸(減速比 N:1)と第2副軸(減速比 N:1)との組み合わせである。式(5)は、複数の副軸の回転周期(減速比)が異なる場合、または同一である場合のいずれにも適用することができる。なお、アブソリュートエンコーダ2において、3つ以上の複数の副軸を有する場合であっても、主軸1aに対して、2つの副軸以外の他の副軸からの多回転角度偏差の影響が無視できるほど小さい場合は、式(7)を適用することができる。
【0098】
【数7】
【0099】
総合オフセット値決定部121tは、アブソリュートエンコーダ2において総合オフセット値Ofsallの算出を要する軸の構成が、主軸1aと、第1副軸(減速比 N:1)、第2副軸(減速比 N:1)、・・・第M副軸(減速比 N:1)のM個の副軸との組み合わせである場合に、総合オフセット値OfsALLを下記の式(8)により算出する。
【0100】
【数8】
【0101】
補正部121rは、総合オフセット値決定部121tが決定した総合オフセット値OfsALLを用いて、角度偏差の波形を補正する。
【0102】
[実施の形態の作用効果]
以上説明したように、アブソリュートエンコーダ2によれば、多回転角度偏差の各角度偏差成分の振幅を求めるためのフーリエ係数は、定数で表すことができる。このため、本実施の形態におけるアブソリュートエンコーダ2が実行する角度偏差補正方法によれば、フーリエ係数を記憶部121bに保存することにより、検出した主軸1aの角度情報Apと副軸の回転数tに応じてオフセット値を容易に決定することができる。
【0103】
つまり、以上のように構成されているアブソリュートエンコーダ2の角度偏差補正方法によれば、アブソリュートエンコーダ2の主軸1aの起動位置に対応した副軸の角度偏差を補正するオフセット値を決定することができる。このため、マイコン121又はコントローラCは、図14に示した副軸の1回転に対応する主軸1aの複数回転数(多回転)に角度偏差波形とオフセット値Ofssub1とに基づいて角度偏差の最大値を抑制できる。より具体的には、マイコン121又はコントローラCが、角度偏差波形の各値にオフセット値を加算又は減算することで角度偏差波形の最大値を抑制できる。このようなアブソリュートエンコーダ2によれば、起動時の回転体の位置によらず角度偏差の最大値を抑制することができる。
【0104】
また、アブソリュートエンコーダ2によれば、オフセット値Ofsmainを決定するために必要な係数(フーリエ係数Fs,Fc)は、角度偏差に含まれる周期Nごとに係数を2つ格納すればよい。このため、アブソリュートエンコーダ2によれば、記憶部121bの記憶容量を抑制しつつ起動時の回転体の角度によらず最大角度偏差を抑制することができる。
【0105】
また、アブソリュートエンコーダ2によれば、オフセット値Ofssub1を決定するために必要な係数(フーリエ係数Fsnsm、Fsncm、Fcnsm、Fcncm)は、角度偏差に含まれる周期N及び周期Mの数ごとに係数を4つ格納すればよい。このため、アブソリュートエンコーダ2によれば、記憶部121bの記憶容量を抑制しつつ起動時の回転体の位置によらず最大角度偏差を抑制することができる。
【0106】
また、アブソリュートエンコーダ2によれば、式(4)及び式(5)に示したように、検出角度に対して場合分けや近似のない単純な線形式によってオフセット値Ofsmain、Ofssub1を求めることができるため、安定した精度で角度偏差の最大値を抑制することができる。
【0107】
さらに、アブソリュートエンコーダ2によれば、総合オフセット値決定部121tにより、アブソリュートエンコーダ2における主軸1aと副軸との軸の構成に基づいて、主軸1aの1回転の角度偏差と複数回転数の角度偏差(多回転角度偏差)とによる角度偏差を補正するための総合オフセット値OfsALLを定めることができる。アブソリュートエンコーダ2によれば、主軸の角度偏差、及び、副軸が主軸へ及ぼす磁気干渉により主軸に生じる角度偏差をそれぞれ分離して決定することで、軸の構成に対して簡易な計算処理により総合オフセット値OfsALLを求めることができる。
【0108】
加えて、アブソリュートエンコーダ2によれば、総合オフセット値OfsALLを決定するのに用いられる情報は、主軸1a及び副軸の数とそれらの減速比とであるため、基本的な設計情報により角度偏差の補正に用いるオフセット値を求めることができる。つまり、アブソリュートエンコーダ2において実行される総合オフセット値OfsALLの決定処理によれば、アブソリュートエンコーダにおける様々な軸の構成に対応して適切なオフセット値を提供することができる。
【0109】
従って、マイコン121に副軸オフセット値決定部121qを備えるアブソリュートエンコーダ2によれば、起動時の回転体の位置によらず角度偏差の最大値を抑制することができる。
【0110】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のアブソリュートエンコーダ2を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0111】
例えば、先に説明した実施の形態においては、sin,cos成分それぞれのフーリエ係数を係数として記憶部121bに保存しているが、本発明ではこれに限定されない。例えば、記憶部121bには、sinnθ成分とcosnθ成分とを合算したフーリエ係数と偏角とを所定の第1係数及び第2係数として保存してもよい。
【0112】
以上説明した本実施の形態において、多回転角度偏差のフーリエ係数は、アブソリュートエンコーダ2のマイコン121が有する記憶部121bに記憶されていたが、本発明においてはこれに限定されない。多回転角度偏差のフーリエ係数は、例えばコントローラCの記憶領域などの不図示の外部の記憶領域に記憶させてもよい。
【0113】
以上説明した本実施の形態において、副軸の角度偏差のオフセット値Ofssub1の決定処理は、アブソリュートエンコーダ2のマイコン121により実現される副軸オフセット値決定部121qにより実行されていたが、本発明においてはこれに限定されない。オフセット値Ofsmain、Ofssub1の決定処理は、例えばコントローラCのマイコンなどの不図示の外部のコンピュータにオフセット値決定方法を実行するためのプログラムを実行させてもよい。この場合において、上記外部のコンピュータは、角度偏差補正装置として機能する。
【0114】
例えば、アブソリュートエンコーダ2のマイコン121が、角度情報Apと多回転弧度ωと所定の第1係数及び第2係数とから逆フーリエ変換するような機能が備わっていない、または計算処理能力を有していない場合に、コントローラCなどの上位機器が1回転角度偏差、多回転角度偏差のフーリエ係数を保存し、オフセット値Ofsmain、Ofssub1を決定するのが望ましい。アブソリュートエンコーダ2においてオフセット値の決定処理が可能か否かの判断基準の一例は、例えば、マイコン121により浮動小数点計算が可能か否か、である。
【0115】
以上説明した本実施の形態において、オフセット値は、最大角度偏差が最小となるように角度偏差を補正する値であったが、角度偏差が小さくなるように補正する値であればよい。
【符号の説明】
【0116】
1…モータ、1a…主軸、2…アブソリュートエンコーダ、3…ギアベース部、4…ケース、4a…外壁部、5…角度センサ支持基板、5a…下面、6…コネクタ、7…シールドプレート、10…主軸ギア、11…第1ウォームギア部、16…ホルダ部、17…マグネット支持部、20…第1中間ギア、21…第1ウォームホイール部、22…第2ウォームギア部、23…軸、27…第1中間ギア軸支部、28…第3ウォームギア部、30…第2中間ギア、31…第3ウォームホイール部、32…第1平歯車部、40…第1副軸ギア、41…第2ウォームホイール部、50…第2副軸ギア、51…第2平歯車部、110…基板支柱、121…マイコン、121b…記憶部、121p…角度情報生成部、121q…副軸オフセット値決定部、121r…補正部、121s…係数決定部、121t…総合オフセット値決定部
図1
図2
図3
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図6
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