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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065034
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】吸水性樹脂を用いた植物の生育方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240507BHJP
   A01G 20/00 20180101ALI20240507BHJP
   A01G 24/35 20180101ALI20240507BHJP
   C09K 17/20 20060101ALI20240507BHJP
   C08F 8/40 20060101ALI20240507BHJP
   C08F 16/06 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20240507BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A01G7/00 602C
A01G20/00
A01G24/35
C09K17/20 H
C08F8/40
C08F16/06
C08L29/04 B
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180435
(22)【出願日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2022171932
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】沖田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝司
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2B022AB02
2B022AB04
2B022BA25
2B022BB01
2B022BB02
4H026AA12
4H026AB01
4H026AB03
4J002AA001
4J002BE022
4J002EF056
4J002EF106
4J002EL026
4J002ER006
4J002FD146
4J002GD03
4J100AD02P
4J100BA63H
4J100CA04
4J100CA31
4J100EA09
4J100HA53
4J100HB58
4J100HC57
4J100HE12
4J100JA64
(57)【要約】
【課題】 土壌中、水中又は肥料中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で失活しにくい吸水性樹脂を用いて、植物を生育する方法を提供する。
【解決手段】 土壌に、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を混入して改善土壌とし、改善土壌上で芝等の植物を生育する方法である。吸水性樹脂は、粒状として土壌に混入して改善土壌とする。架橋リン酸化ポリビニルアルコールは、リン酸化ポリビニルアルコールを多官能チタン化合物、ジイソシアネート化合物、ジグリシジル化合物及びジカルボン酸化合物よりなる群から選ばれる架橋剤で架橋させることにより得られる。また、リン酸化ポリビニルアルコールは、部分ケン化型ポリビニルアルコールに、リン酸水素二カリウム及び尿素を反応させることにより得られる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌に、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を混入して改善土壌とし、該改善土壌上で植物を生育する植物の生育方法。
【請求項2】
吸水性樹脂として、質量平均粒子径が50~1000μmである粒状の吸水性樹脂を用いる請求項1記載の植物の生育方法。
【請求項3】
吸水性樹脂を不織布に担持して土壌に混入する請求項1記載の植物の生育方法。
【請求項4】
吸水性樹脂がバインダーにより不織布に担持されている請求項3記載の植物の生育方法。
【請求項5】
架橋リン酸化ポリビニルアルコールの架橋剤が、多官能イソシアネート化合物、多官能チタン化合物、多官能エポキシ化合物及び多官能カルボン酸よりなる群から選ばれた化合物である請求項1記載の植物の生育方法。
【請求項6】
植物が芝生である請求項1記載の植物の生育方法。
【請求項7】
土壌の不存在下、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を不織布に担持した吸水性不織布面上で、植物を生育する植物の生育方法。
【請求項8】
吸水性不織布を建物の屋上又は壁面に敷設する請求項7記載の植物の生育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性及び保水性に優れた吸水性樹脂を用いた植物の生育方法に関し、特に長期に亙って吸水性及び保水性を維持しうる吸水性樹脂を用いて芝生等の植物を生育する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の生育に灌水は欠かせないものである。この灌水を少なくする又は省略したいため、土壌に高吸水性樹脂を入れることが行われている(特許文献1)。すなわち、土壌に水を飽和吸収した高吸水性樹脂を入れておけば、灌水を少なくしても、高吸水性樹脂が保水している水を植物に供給し、植物が枯死するのを防止しうるというものである。特許文献1で用いられている高吸水性樹脂としては、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体ケン化物、澱粉-アクリル酸グラフト物の中和架橋物、架橋アクリル酸塩、架橋ポリエチレンキシサイド又は酢酸ビニル-不飽和カルボン酸(エステル)共重合体ケン化物等が挙げられている(特許文献1、2頁左上欄17行乃至右上欄2行)。
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の高吸水性樹脂を土壌と混合し灌水しながら長期に亙って使用すると、吸水能力及び保水能力が低下するということがあった。この理由は、土壌中、水中(特に硬水中)又は肥料中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で、高吸水性樹脂中のカルボキシイオンが失活するためである(非特許文献1)。
【0004】
一方、高吸水性樹脂として、グルタルアルデヒドで架橋されたリン酸化ポリビニルアルコールが知られており(非特許文献2)、これはカルシウムイオンをよく吸着するものであると記載されている(非特許文献2、2301頁のabsorption of calcium ionsの項)。このため、架橋リン酸化ポリビニルアルコールも、土壌中、水中又は肥料中のカルシウムイオンで失活するのではないかと思われた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-823号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】高橋正通・柴崎一樹・仲摩栄一郎・石塚森吉・太田誠一共著「林業・緑化分野における高吸水性高分子樹脂の利用」、日林誌(2018)100:229-236
【非特許文献2】Ying An, Toshiki Koyama, Kenji Hanabusa, Hirofusa Shirai, Junichi Ikeda, Hajime Yoneno and Takeshi Itoh 「Preparation and properties of highly phosphorylated poly(vinyl alcohol)hydrogels chemically crosslinked by glutaraldehyde」,POLYMER(1995)Volume 36 Number 11:2297-2301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、架橋リン酸化ポリビニルアルコールにカルシウムイオン水を吸水させ、乾燥後に再度カルシウムイオン水を吸水させても、吸水能力が低下しにくいことを、本発明者は発見した。したがって、本発明の課題は、土壌中、水中又は肥料中のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等で失活しにくい吸水性樹脂を用いて、植物を生育する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、土壌に、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を混入して改善土壌とし、該改善土壌上で植物を生育する植物の生育方法に関するものである。また、本発明は、土壌の不存在下、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を不織布に担持した吸水性不織布面上で、植物を生育する植物の生育方法に関するものである。
【0009】
本発明に係る方法で用いる吸水性樹脂は、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなるものである。すなわち、ポリビニルアルコールをリン酸化した後、それを架橋してなるものである。使用するポリビニルアルコールとしては、部分ケン化型のものであるのが好ましく、ケン化度は70~90%程度のものが好ましい。また、重合度は1000~10000程度であるのが好ましい。さらに、このポリビニルアルコールは、カルボキシル化ポリビニルアルコールであってもよい。
【0010】
リン酸化ポリビニルアルコールは、上記したポリビニルアルコールにリン酸基を付加したものである。具体的には、ポリビニルアルコールとリン酸及び/又はその塩を反応させることにより、得られる。リン酸及び/又はその塩としては、リン酸、リン酸塩、リン酸水素塩又はリン酸二水素塩が用いられる。特に、リン酸水素カリウム又はリン酸二水素カリウムが好ましく用いられる。リン酸化ポリビニルアルコールは、水酸基、アセチル基又はカルボキシル基の他に、リン酸基を有するものである。
【0011】
リン酸化ポリビニルアルコールを架橋剤で架橋することにより、架橋リン酸化ポリビニルアルコールが得られる。架橋剤としては、多官能架橋剤、好ましくは水溶性多官能架橋剤が用いられる。多官能化合物としては、多官能イソシアネート化合物、多官能チタン化合物、多官能エポキシ化合物又は多官能カルボン酸等を単独で又は混合して用いればよい。一般的には、ジイソシアネート化合物、ジグリシジル化合物又はジカルボン酸化合物等の二官能化合物が用いられる。
【0012】
架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂は、土壌に混入して使用される。土壌は、天然土壌でも人工土壌でもよい。吸水性樹脂は、土壌を形成する土砂と同様の形状であるのが好ましく、一般的に粒状であるのが好ましい。また、その大きさも土砂で同程度であるのが好ましく、具体的には質量平均粒子径が50~10000μmであるのが好ましい。
【0013】
また、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂は、不織布に担持させて土壌に混入して改善土壌としてもよい。吸水性樹脂を担持させた不織布は、土壌上又は土壌下に敷設して使用したり、土壌表面層下に埋設して使用してもよい。不織布としては、従来公知のものを採用しうるが、土壌中で生分解する生分解性不織布を採用するのが好ましい。生分解性不織布としては、コットン繊維やポリ乳酸繊維を構成繊維とするものを採用しうる。
【0014】
架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を不織布に担持するには、バインダーで不織布に接着させてもよい。たとえば、粒状の吸水性樹脂を不織布の構成繊維表面にバインダーで接着させて担持してもよいし、フィルム状の吸水性樹脂を不織布表面にバインダーで接着させてもよい。バインダーとしては従来公知のものを用いうるが、水溶性バインダーであるのが好ましい。たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸塩等の水溶性バインダーを用いるのが好ましい。さらに、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を不織布の構成繊維相互間の間隙に、バインダーなしで沈積させてもよい。
【0015】
本発明で用いる吸水性樹脂は、たとえば、以下の方法により製造することができる。まず、ポリビニルアルコール、リン酸及び/又はその塩、尿素、並びに水を混合して得られた水溶液を100℃~140℃で加熱乾固し、洗浄してリン酸化ポリビニルアルコールを得る。得られたリン酸化ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの水酸基にリン酸基(第四級アンモニウムリン酸基)が結合されてなるものである。また、第四級アンモニウムイオンをカリウムイオンやナトリウムイオン等に置換すれば、窒素原子を含まないリン酸化ポリビニルアルコールとすることができる。そして、リン酸化ポリビニルアルコール、架橋剤及び水を混合して得られたスラリーを100℃~140℃に加熱することにより、リン酸化ポリビニルアルコールが架橋され三次元網目構造を持つ架橋リン酸化ポリビニルアルコールが得られる。また、100℃~140℃に加熱することにより、水は蒸発し固形の架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂が得られる。
【0016】
リン酸化ポリビニルアルコール、架橋剤及び水を混合して得られたスラリーを、不織布に含浸した後、100℃~140℃に加熱することにより、架橋リン酸化ポリビニルアルコールをバインダーなしで担持させた不織布が得られる。すなわち、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂が、不織布の構成繊維相互間の間隙に、バインダーなしで沈積させた不織布が得られる。
【0017】
また、本発明で用いる架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂を不織布に担持した吸水性不織布の場合、土壌の不存在下でも、植物の生育が可能となる。たとえば、建物の屋上又は壁面に、吸水性不織布を敷設し、当該吸水性不織布面上に植物の種を播き又は植物の苗を植えて、植物を生育することも可能である。かかる植物の生育方法は、建物の屋上緑化工法又は建物の壁面緑化工法として用いることもできる。なお、吸水性不織布に代えて、スポンジ等の多孔質体に吸水性樹脂を担持させたものや、天然繊維、合成繊維又は鉱物繊維等の繊維塊に吸水性樹脂を担持させたものも、吸水性不織布と同様の方法で用いることができる。
【0018】
本発明は、植物の生育に用いられる。植物としては、灌水の量の多い芝生が最も適している。芝生以外にも灌水の多い野菜や果樹等の植物又は観葉植物等の生育にも用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に用いる架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂は、カルシウムイオン水を吸水し乾燥した後、再度、カルシウムイオン水を吸水する場合において、再度の吸水能力が低下しにくい。したがって、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等が多く存在する土壌中に混入しても、長期に亙って高い吸水能力を維持しうる。また、肥料や水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の影響によって、吸水能力が低下しにくい。よって、本発明に係る方法を用いれば、植物への灌水を少なくしても、植物が枯死するのを防止でき、節水しうるという効果を奏する。
【実施例0020】
<リン酸化ポリビニルアルコール(1)の製造>
部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)5質量部を水95質量部に撹拌下に混合し、溶解させた後、リン酸水素二カリウム3.5質量部及び尿素2.5質量部を添加撹拌して水溶液を得た。この水溶液を角バットに移し替え、オーブン中で105℃で120分加熱乾固し、次いで140℃で30分加熱して固形物を得た。この固形物を再度水に溶解させ、透析膜(ケニス株式会社製、透析用セルローズチューブ)で洗浄して、リン酸化ポリビニルアルコール(1)を得た。得られたリン酸化ポリビニルアルコール(1)のICPによるリン定量結果は、0.44wt%であった。
【0021】
<リン酸化ポリビニルアルコール(2)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)の製造の場合と同一の条件で水溶液を得た。この水溶液を角バットに移し替え、オーブン中で140℃で180分加熱乾固して固形物を得た。この固形物を再度水に溶解させ、透析膜(ケニス株式会社製、透析用セルローズチューブ)で洗浄して、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を得た。得られたリン酸化ポリビニルアルコール(2)のICPによるリン定量結果は、1.75wt%であった。
【0022】
<吸水性樹脂(1)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)100質量部を水1900質量部に撹拌下に混合溶解し、そこに水溶性イソシアネート水分散液(第一工業製薬株式会社製、エラストロンBN-69、イソシアネート含有量40wt%)5質量部を添加撹拌しスラリーを得た。スラリーをシャーレ中で120℃の熱風乾燥機で120分加熱乾燥してフィルム状の吸水性樹脂(1)を得た。
【0023】
<吸水性樹脂(2)の製造>
水溶性イソシアネート水分散液の添加量を2.5質量部に変更する他は、吸水性樹脂(1)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(2)を得た。
【0024】
<吸水性樹脂(3)の製造>
水溶性イソシアネート水分散液に代えて、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)(マツモトファインケミカル株式会社製、オルガチックスTC-400、Ti含有量8.2wt%)35質量部を用いる他は、吸水性樹脂(1)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(3)を得た。
【0025】
<吸水性樹脂(4)の製造>
水溶性イソシアネート水分散液に代えて、ポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト400E )100質量部を用い、かつ、熱風乾燥機の温度を110℃に変更した他は、吸水性樹脂(1)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(4)を得た。
【0026】
<吸水性樹脂(5)の製造>
ポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト400E )の使用量を50質量部に変更した他は、吸水性樹脂(4)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(5)を得た。
【0027】
<吸水性樹脂(6)の製造>
ポリエチレングリコール♯400ジグリシジルエーテルに代えて、こはく酸(関東化学株式会社製)30質量部を用いる他は、吸水性樹脂(4)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(6)を得た。
【0028】
<吸水性樹脂(7)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を用いる他は、吸水性樹脂(1)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(7)を得た。
【0029】
<吸水性樹脂(8)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を用いる他は、吸水性樹脂(2)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(8)を得た。
【0030】
<吸水性樹脂(9)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を用いる他は、吸水性樹脂(3)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(9)を得た。
【0031】
<吸水性樹脂(10)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を用いる他は、吸水性樹脂(4)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(10)を得た。
【0032】
<吸水性樹脂(11)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を用いる他は、吸水性樹脂(5)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(11)を得た。
【0033】
<吸水性樹脂(12)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、リン酸化ポリビニルアルコール(2)を用いる他は、吸水性樹脂(6)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(12)を得た。
【0034】
<吸水性樹脂(13)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)を用いる他は、吸水性樹脂(1)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(13)を得た。
【0035】
<吸水性樹脂(14)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)を用いる他は、吸水性樹脂(2)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(14)を得た。
【0036】
<吸水性樹脂(15)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)を用いる他は、吸水性樹脂(3)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(15)を得た。
【0037】
<吸水性樹脂(16)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)を用いる他は、吸水性樹脂(4)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(16)を得た。
【0038】
<吸水性樹脂(17)の製造>
リン酸化ポリビニルアルコール(1)に代えて、部分ケン化型ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製、JP-33)を用いる他は、吸水性樹脂(6)の製造の場合と同一の条件でフィルム状の吸水性樹脂(17)を得た。
【0039】
<吸水性樹脂(18)>
市販の吸水性樹脂(ケニス株式会社製、超吸水性樹脂)を入手した。
【0040】
<吸水性樹脂(19)>
市販の吸水性樹脂(Aquatrols社製、SuperSorb-F)を入手した。
【0041】
架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂(1)~(12)、架橋ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂(13)~(17)、市販品である吸水性樹脂(18)及び(19)の各々の吸水性樹脂の脱イオン水吸水倍率、カルシウムイオン水吸水倍率及びカルシウムイオン水再吸水倍率を、以下の方法で評価した。これらの結果を表1に示した。
【0042】
[脱イオン水吸水倍率]
吸水性樹脂1質量部を500質量部の脱イオン水に浸漬し、1時間室温で静置した。可溶成分を除去した後、脱イオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂の質量(W1)を秤量する。その後、脱イオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を、熱風乾燥機で温度105℃の条件において乾固させ、乾固質量(W2)を秤量する。W1/W2の値を脱イオン水吸水倍率とした。
【0043】
[カルシウムイオン水吸水倍率]
塩化カルシウム二水和物(関東化学株式会社製 試薬特級)1質量部を100質量部の水に溶解させ、カルシウムイオン水を得た。吸水性樹脂1質量部をカルシウムイオン水100質量部に浸漬し、1時間室温で静置した。可溶成分を除去した後、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂の質量(X1)を秤量する。その後、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を、熱風乾燥機で温度105℃の条件において乾固させ、乾固質量(X2)を秤量する。X1/X2の値をカルシウムイオン水吸水倍率とした。
【0044】
[カルシウムイオン水再吸水倍率]
カルシウムイオン水吸水倍率を測定する方法で同一の方法で、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を得た。カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂を、熱風乾燥機で温度70℃の条件において乾燥させて準乾固物を得、この質量(Y1)を秤量する。その後、この準乾固物1質量部をカルシウムイオン水100質量部に浸漬し、1時間室温で静置した。可溶成分を除去した後、カルシウムイオン水で膨潤した状態の吸水性樹脂の質量(Y2)を秤量する。Y2/Y1の値をカルシウムイオン水再吸水倍率とした。
【0045】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
脱イオン水 カルシウムイオ カルシウムイオ
吸水倍率 ン水吸水倍率 ン水再吸水倍率
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
吸水性樹脂(1) 50倍 21倍 21倍
吸水性樹脂(2) 52倍 21倍 22倍
吸水性樹脂(3) 30倍 20倍 20倍
吸水性樹脂(4) 56倍 19倍 22倍
吸水性樹脂(5) 163倍 24倍 34倍
吸水性樹脂(6) 98倍 22倍 27倍
吸水性樹脂(7) 89倍 22倍 26倍
吸水性樹脂(8) 106倍 19倍 29倍
吸水性樹脂(9) 52倍 21倍 22倍
吸水性樹脂(10) 136倍 23倍 31倍
吸水性樹脂(11) 189倍 24倍 37倍
吸水性樹脂(12) 121倍 23倍 29倍
吸水性樹脂(13) 7倍 8倍 6倍
吸水性樹脂(14) 12倍 10倍 9倍
吸水性樹脂(15) 9倍 9倍 8倍
吸水性樹脂(16) 水溶性 水溶性 水溶性
吸水性樹脂(17) 7倍 8倍 6倍
吸水性樹脂(18) 465倍 10倍 4倍
吸水性樹脂(19) 414倍 5倍 3倍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0046】
表1の結果から分かるように、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂(1)~(12)は、脱イオン水吸水倍率、カルシウムイオン吸水倍率及びカルシウムイオン再吸水倍率のいずれの吸水倍率も高く、カルシウムイオンが多く含まれる硬水であっても、良好な吸水性が示すことが分かる。
一方、架橋ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂(13)~(17)は、吸水倍率が低かったり、溶解してしまい、吸水性樹脂として適当なものではなかった。また、市販品である吸水性樹脂(18)及び(19)は、脱イオン水吸水倍率は高いが、カルシウムイオン吸水倍率及びカルシウムイオン再吸水倍率が低く、カルシウムイオンが多く含まれる硬水等のような場合は、吸水性が低下することが分かる。
【0047】
実施例1
土壌表面積が1/5000a(200cm2)のワグネルポットを準備した。一方、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂(9)を粉砕してなる質量平均粒子径500μmの粒状の吸水性樹脂を準備した。このワグネルポットに培地として山砂を敷き、その上に10gの山砂及び0.1gの粒状の吸水性樹脂を混合した改善土壌を敷き詰め、平滑に均した。そして、この上にホールカッター(Φ108mm)で切り出した切り芝(株式会社那須ナーセリー製、品種「ケンタッキーブルーグラス」、商品名「ビバターフ」)を中央に設置して張り、空隙を山砂で充填した。芝が根付くまでの10日間は1回/日灌水し、その後降雨の影響が無い状態で約2ケ月間灌水を停止した。そして、芝の根長を測定したところ、約26cmであり、葉部分の枯死は防がれていた。
【0048】
実施例2
粒状の吸水性樹脂の使用量を0.2gに変更した他は、実施例1と同一の方法で芝の根長を測定したところ、約21cmであり、葉部分の枯死は防がれていた。
【0049】
比較例1
粒状の吸水性樹脂を使用しない他は、実施例1と同一の方法で芝の根長を測定したところ、約8.5cmであり、葉部分は全て枯死していた。
【0050】
比較例2
粒状の吸水性樹脂を、市販品(Aquatrols社製、SuperSorb-F)に変更した他は、実施例1と同一の方法で芝の根長を測定したところ、約8~12cmであった。
【0051】
比較例3
粒状の吸水性樹脂を、市販品(Aquatrols社製、SuperSorb-F)に変更した他は、実施例2と同一の方法で芝の根長を測定したところ、約15~17cmであった。
【0052】
実施例1及び2の結果から、架橋リン酸化ポリビニルアルコールよりなる吸水性樹脂(9)を用いた改善土壌では、芝の根がよく成長しており、芝の生育が良好であることが分かる。一方、比較例1の結果から、吸水性樹脂を用いない場合は、芝の根の成長が悪く、芝の生育が不良であることが分かる。また、比較例2及び3の結果から、市販品の吸水性樹脂を用いた場合、実施例1及び2の場合と対比して芝の根の成長が少なく、芝の生育が不十分であることが分かる。