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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006505
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B65D47/08 100
B65D47/08 BRL
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107421
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】欅 真歩
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB01
3E084CB04
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB02
3E084DB13
3E084DC03
3E084FA02
3E084FC07
3E084GA06
3E084GB06
3E084GB08
3E084GB17
3E084HB02
3E084HC03
3E084HD04
3E084LA03
3E084LA07
3E084LA18
3E084LB02
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】打栓時における縦スリットの判断を防止し、分別時のヒンジの破断を防止し、容器の口部に対するキャップの嵌合力を十分に確保できるキャップを提供する。
【解決手段】本体部12はキャップ内側凸部22を有し、ヒンジ5の近傍位置に本体弱化部24を有し、容器2の径方向で本体弱化部24に対応する位置に緩和部25を有し、本体弱化部24は縦スリット26を有し、本体部側壁28の弱化部形成範囲27でキャップ内側凸部22が欠落し、緩和部25は本体部側壁28の緩和部形成範囲31でキャップ内側凸部が欠落し、キャップ内側凸部2の欠落により容器2の径方向内側へ変形して本体部側壁28に生じる周方向の緊張を緩和する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着するキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体と一体をなす上蓋を有し、
キャップ本体は、容器の口部を容器の軸心周りに囲む本体部を有し、
本体部は、本体部側壁に、容器の半径方向内側に突出するキャップ内側凸部と、弱化部および緩和部を有し、
弱化部は、容器の軸心周りでヒンジの近傍位置にあり、本体部側壁の外側面に容器の軸心方向に延びる縦スリットを有し、本体部側壁の内側面に設ける弱化部形成範囲において、弱化部形成範囲内の本体部側壁を弱化部形成範囲外の本体部側壁に比べて薄肉化してなり、
緩和部は、本体部側壁の内側面に設ける緩和部形成範囲において、キャップ内側凸部が欠落し、本体部側壁が容器の径方向内側へ変形可能な形状をなすことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
打栓時に、キャップ内側凸部が口部の外側面上を摺動して、緩和部形成範囲外の本体部側壁が容器の径方向外側へ広がる状態において、緩和部形成範囲内の本体部側壁が容器の径方向内側へ変形して、弱化部形成範囲の本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和することを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
緩和部は、キャップ内側凸部の欠落により緩和部形成範囲外の本体部側壁に比べて周方向の伸張性が大きく、打栓時に緩和部形成範囲内の本体部側壁が応力集中を受けて周方向に伸長し、弱化部形成範囲における本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和することを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項4】
緩和部は、弱化部から本体部側壁の周方向に沿って離隔した単一個所に形成し、緩和部形成範囲が、容器の軸心周りで20°から40°までの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項5】
緩和部は、容器の径方向で弱化部に対応する位置に形成することを特徴とする請求項4に記載のキャップ。
【請求項6】
緩和部は、弱化部から本体部側壁の周方向に沿って離隔した複数個所に形成し、一つの緩和部形成範囲が、容器の軸心周りで20°以上40°以下の範囲を有し、各緩和部の緩和部形成範囲を合わせた総形成範囲が、容器の軸心周りで60°までの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項7】
一方の緩和部が弱化部から本体部側壁の一側周方向に沿って離隔し、他方の緩和部が弱化部から本体部側壁の他側周方向に沿って離隔し、双方の緩和部は弱化部から等距離に離隔することを特徴とする請求項6に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップに関し、キャップの分別回収に貢献する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒンジキャップとしては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、本体及び上蓋を有し、本体は円筒形垂下壁を有しており、垂下壁に環状乃至弧状溝を形成し、垂下壁における溝よりも半径方向外側の部分に軸線方向に延びる軸線方向破断可能ラインを配設している。
【0003】
垂下壁は、周方向に沿って複数の破断領域を有し、各破断領域における環状乃至弧状溝の軸線方向深さを違えている。
【0004】
また、特許文献2のものは、ボトルの口部に嵌着される環状のスカート壁を本体部に有し、スカート壁の内面に突起が形成されており、スカート壁の外面に切込みが形成されている。スカート壁は切込みが形成された部分の内面に、突起が形成されていない間欠部を有し、欠落部はスカート壁の周方向に沿った複数個所に設け、第1の間欠部の周方向に沿った形成範囲に比べて第2および第3の間欠部は周方向に沿った形成範囲が広くなり、第2および第3の間欠部におけるスカート壁の肉厚は減少することなく他の部分の肉厚と同等に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6326472
【特許文献2】特許第6226585
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、容器の口部に打栓するキャップは、使用後の分別回収を目的として破断部を有しており、破断部にキャップの外周面に容器の軸心方向に沿った縦スリットを設けている。また、キャップの内周面にアンダーカット部を有し、アンダーカット部が口部の外周面に形成する凹部に嵌合して抜け止めしている。キャップを口部に打栓する際に、縦スリットが破断することを防止するために、アンダーカット部はキャップの周方向において間欠的に形成している。
【0007】
しかし、縦スリットにおけるキャップの肉厚が大きい場合には、分別時にヒンジが破断して縦スリットで破断させることができず、縦スリットの肉厚が薄すぎるとキャップの打栓時に縦スリットが破断する。
【0008】
また、アンダーカット部の間欠箇所が多すぎると、容器の口部に対するキャップの嵌合力が低下し、縦スリットに続いて周方向に延びる横スリットの破断時に、キャップが回転して横スリットの破断が阻害されることがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、打栓時における縦スリットの破断を防止し、分別時のヒンジの破断を防止し、容器の口部に対するキャップの嵌合力を十分に確保できるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るキャップは、容器の口部に装着するキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体と一体をなす上蓋を有し、キャップ本体は、容器の口部を容器の軸心周りに囲む本体部を有し、本体部は、本体部側壁に、容器の半径方向内側に突出するキャップ内側凸部と、弱化部および緩和部を有し、弱化部は、容器の軸心周りでヒンジの近傍位置にあり、本体部側壁の外側面に容器の軸心方向に延びる縦スリットを有し、本体部側壁の内側面に設ける弱化部形成範囲において、弱化部形成範囲内の本体部側壁を弱化部形成範囲外の本体部側壁に比べて薄肉化してなり、緩和部は、本体部側壁の内側面に設ける緩和部形成範囲において、キャップ内側凸部が欠落し、本体部側壁が容器の径方向内側へ変形可能な形状をなすことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るキャップにおいて、打栓時に、キャップ内側凸部が口部の外側面上を摺動して、緩和部形成範囲外の本体部側壁が容器の径方向外側へ広がる状態において、緩和部形成範囲内の本体部側壁が容器の径方向内側へ変形して、弱化部形成範囲の本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るキャップにおいて、緩和部は、キャップ内側凸部の欠落により緩和部形成範囲外の本体部側壁に比べて周方向の伸張性が大きく、打栓時に緩和部形成範囲内の本体部側壁が応力集中を受けて周方向に伸長し、弱化部形成範囲における本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るキャップにおいて、緩和部は、弱化部から本体部側壁の周方向に沿って離隔した単一個所に形成し、緩和部形成範囲が、容器の軸心周りで20°から40°までの範囲であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るキャップにおいて、緩和部は、容器の径方向で弱化部に対応する位置に形成することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るキャップにおいて、緩和部は、弱化部から本体部側壁の周方向に沿って離隔した複数個所に形成し、一つの緩和部形成範囲が、容器の軸心周りで20°以上40°以下の範囲を有し、各緩和部の緩和部形成範囲を合わせた総形成範囲が、容器の軸心周りで60°までの範囲であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るキャップにおいて、一方の緩和部が弱化部から本体部側壁の一側周方向に沿って離隔し、他方の緩和部が弱化部から本体部側壁の他側周方向に沿って離隔し、双方の緩和部は弱化部から等距離に離隔することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成により、容器にキャップを打栓する際に、キャップ内側凸部が口部の容器外周面上を容器の軸心方向に摺動し、口部の外周径が広がるにつれてキャップ内側凸部および本体部側壁が容器の径方向外側へ広がる。
【0018】
このとき、緩和部は、緩和部形成範囲内の本体部側壁がキャップ内側凸部の欠落により容器の径方向内側へ変形可能な状態にある。
【0019】
このため、緩和部形成範囲外のキャップ内側凸部および本体部側壁が容器の径方向外側へ広がると、緩和部形成範囲を隔てた両側のキャップ内側凸部の端部が相互に離隔し、緩和部形成範囲内の本体部側壁を双方のキャップ内側凸部の端部間で引き合うので、緩和部形成範囲における本体部側壁が径方向内側へ変形する。
【0020】
この結果、緩和部形成範囲外の本体部側壁の広がりに伴って容器の径方向外側へ移動する弱化部に対し、緩和部形成範囲の本体部側壁が径方向内側へ変形することで、弱化部形成範囲の本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和し、打栓時の縦スリットの破断を抑制できる。
【0021】
また、緩和部は、キャップ内側凸部の欠落により緩和部形成範囲外の本体部側壁よりも本体部の周方向の伸張性が大きいので、打栓時に緩和部形成範囲内の本体部側壁が応力集中を受けて周方向に伸長し易く、緩和部形成範囲における本体部側壁が径方向内側へ容易に変形し、弱化部形成範囲における本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和し、打栓時の縦スリットの破断を抑制できる。
【0022】
緩和部は、弱化部から本体部側壁の周方向に沿って離隔した単一個所に形成することができ、容器の径方向で弱化部に対応する位置に形成することもできる。この場合に、緩和部形成範囲は、容器の軸心周りで20°から40°までの範囲である。
【0023】
緩和部は、弱化部から本体部側壁の周方向に沿って離隔した複数個所に形成することもでき、一対の緩和部を弱化部から等距離に離隔することもできる。この場合に、一つの緩和部形成範囲は、容器の軸心周りで20°以上40°以下の範囲を有し、各緩和部の緩和部形成範囲を合わせた総形成範囲が、容器の軸心周りで60°までの範囲である。
【0024】
そして、緩和部を単数または複数の箇所に配置する構造において、容器の口部に対するキャップの嵌合による保持力を十分に確保しつつ、打栓時の縦スリットの破断を抑制できる。よって、縦スリットの本体部側壁のさらなる薄肉化を図ることができ、弱化部の破断が容易となることで、分別時にヒンジが破断することなく、破断始点で破断が生じて縦スリットを容易に破断できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係るキャップの下面図
図2】同実施の形態に係るキャップの上面図
図3】同実施の形態に係るキャップの未開封で上蓋開栓状態の断面図
図4】同実施の形態に係るキャップの未開封で上蓋閉栓状態の断面図
図5】同実施の形態に係るキャップの図2のG-N間断面図
図6】同実施の形態に係るキャップの図2のO位置断面図
図7】同実施の形態に係るキャップの図2のC-F間断面図
図8】同実施の形態に係るキャップの図1のP-D間断面図
図9】同実施の形態に係るキャップの図1のC位置断面図
図10】同実施の形態に係るキャップの図2のH位置およびE-F間断面図
図11】同実施の形態に係るキャップの図1のX-Y間断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例1)
以下、本発明に係るキャップの実施の形態を、図面を参照して説明する。図1図11に示すように、キャップ1は容器2の口部3に装着するキャップ本体4と、ヒンジ5およびバンド6を介してキャップ本体4と一体をなし、ヒンジ廻りに開閉動する上蓋7を有している。キャップ1は全体が樹脂製である。
【0027】
上蓋7は、外側面に容器2の径方向でヒンジ5に対応する位置に指掛かりをなす鍔部8を有し、内側面に上蓋7の内周縁に沿って環状をなして径方向内側に隆起する嵌合突起部9を有している。
【0028】
キャップ本体4は、外周縁に沿って環状の上蓋保持部10を有しており、上蓋保持部10はキャップ本体4の径方向外側の斜め上方に向けて広がる形状をなす。上蓋保持部10は、外周面が円弧状に窪む嵌合面11をなし、嵌合面11において上蓋7の嵌合突起部9に嵌合する。
【0029】
また、キャップ本体は、容器2の口部3を容器2の軸心周りに囲む本体部12と、口部3を覆う中栓13と、中栓開口14を囲む注出筒15を有している。
【0030】
ここでは、図3および図4に示すように、未開封のキャップ1を示しているので、中栓開口14は開口予定部16によって塞がれている。開口予定部16は中栓弱化部17を介して中栓開口14の開口縁に接続しており、プルリング18を有している。
【0031】
中栓13は、容器2の口部3に挿入する中栓インナーシール部19を有し、中栓インナーシール部19と本体部12の間に口部3を挿入する嵌合溝20を形成している。
【0032】
上蓋7は、内側天面に注出筒15に対向する上蓋インナー21を有しており、上蓋インナー21は、上蓋7の軸心周りに環状をなしてインナー先端縁が注出筒9の内面に液密に当接してシール領域を形成している。
【0033】
本体部12は、容器2の半径方向内側に突出するキャップ内側凸部22を有し、キャップ内側凸部22が容器2の口部外周に形成した容器外側凹部23に嵌合する。また、本体部12は、本体弱化部24と緩和部25を有している。
【0034】
本体弱化部24は、図1に示すように、容器2の軸心周りでヒンジ5の近傍位置に形成し、本体部12の外側面に容器2の軸心方向に延びる縦スリット26を有しており、本体部12の内側面に形成する弱化部形成範囲27を有している。弱化部形成範囲27は、ここでは図1に示すP-Q間に相当し、容器の軸心周りで7°の範囲を有している。
【0035】
図6に示すように、本体弱化部24において、キャップ内側凸部22が欠落するとともに、弱化部形成範囲27の範囲内の本体部側壁28を弱化部形成範囲27の範囲外の本体部側壁28に比べて薄肉化しており、縦スリット26の近傍位置において弱化部形成範囲27の本体部側壁28が最小肉厚0.3mmに薄肉化している。
【0036】
本体部12は、本体部側壁28の上蓋7に対向する外周縁に二重壁29を有し、二重壁29はスリット30を介して外側壁29aと内側壁29bが離隔し、二重壁29の外側壁29aにヒンジ5およびバンド6が接続し、縦スリット26において外側壁29aが途切れて本体弱化部24の破断始点を形成している。スリット30の底部には二重壁29と内側壁29bとの間に薄肉部29cを有しており、分別時には縦スリット26に続いて薄肉部29cが周方向に破断する。
【0037】
緩和部25は、本体弱化部24から本体部側壁28の周方向に沿って離隔する単一個所に形成する。ここでは容器2の径方向で本体弱化部24に対応する位置に緩和部25を有しているが、容器2の径方向で本体弱化部24に対応しない位置に緩和部25を形成することも可能である。
【0038】
緩和部25は、本体部12の内側面に緩和部形成範囲31を有し、緩和部形成範囲31においてキャップ内側凸部22が欠落して本体部側壁28が容器2の径方向内側へ変形可能な形状をなしている。
【0039】
緩和部形成範囲31は、ここでは図1に示すX-Y間に相当し、容器2の軸心周りで40°の範囲を有する。緩和部形成範囲31は、容器2の軸心周りで20°から40°までの範囲であれば任意の範囲に設定できる。この形状により、本体部12のキャップ内側凸部22が容器2の容器外側凹部23に嵌合する状態で、キャップ1が容器2の口部3に対して十分な保持力をもって嵌合する構造を実現している。
【0040】
本発明者の知見として、緩和部形成範囲31が容器2の軸心周りで20°未満の範囲であると、本体部側壁28が容器2の径方向内側へ必要とする状態に変形できず、本体弱化部24の緊張の緩和を十分に行えず、また、緩和部形成範囲31が容器2の軸心周りで40°を超える範囲であると、キャップ1が容器2の口部3に対して十分な保持力をもって嵌合する構造を実現できない。
【0041】
また、単一の緩和部25を形成する場合には、容器2の径方向で本体弱化部24に対応する位置に緩和部25を形成することで、本体弱化部24の緊張の緩和に最も有効な構造を実現できる。
【0042】
ここでは、緩和部形成範囲31の範囲内の何れかの部位が容器2の径方向で本体弱化部24に直線的に対向すれば、本体部側壁28の周方向にずれていても本体弱化部24に対応する範囲内の位置にある。
【0043】
また、本体部側壁28の周方向に沿った緩和部25の両側の位置に、容器2の軸心方向に沿った切れ込みを形成することも可能である。
【0044】
この形状により、打栓時に、キャップ内側凸部22が口部3の外側面上を摺動して、緩和部形成範囲31の範囲外の本体部側壁28が容器2の径方向外側へ広がる状態において、緩和部形成範囲31の範囲内の本体部側壁28が容器2の径方向内側へ変形して、弱化部形成範囲27における本体部側壁28に生じる周方向の緊張を緩和する。
【0045】
また、緩和部25は、キャップ内側凸部22の欠落により緩和部形成範囲31の範囲外の本体部側壁28よりも本体部12の周方向の伸張性が大きく、打栓時に緩和部形成範囲31の範囲内の本体部側壁28が応力集中を受けて周方向に伸長し、弱化部形成範囲27の本体部側壁に生じる周方向の緊張を緩和する。
【0046】
以下、上記構成の作用を説明する。図4に示すように、上蓋7を折り畳んだ状態において、上蓋7の嵌合突起部9がキャップ本体4の上蓋保持部10の嵌合面11に嵌合し、上蓋インナー21のインナー先端縁と注出筒15の内面とが液密に当接してシール領域を形成する。
(打栓)
容器にキャップを打栓する際に、キャップ内側凸部22が容器2の口部3の外周面上を容器2の軸心方向に摺動するとともに、容器2の口部3の外周面の形状に倣って口部3の径方向外側に移動し、口部3の外周径が広がるにつれてキャップ内側凸部22および本体部側壁28が容器3の径方向外側へ広がる。
【0047】
このとき、キャップ内側凸部22が欠落した緩和部25では、緩和部形成範囲31の範囲内にある本体部側壁28が容器3の径方向内側へ変形可能な状態にある。
【0048】
このため、緩和部形成範囲31の範囲外のキャップ内側凸部22および本体部側壁28が容器3の径方向外側へ広がると、緩和部形成範囲31を隔てた両側のキャップ内側凸部22の端部が相互に離隔し、緩和部形成範囲31の範囲内の本体部側壁28を双方のキャップ内側凸部22の端部間で引き合い、緩和部形成範囲31の本体部側壁28が径方向内側へ変形する。
【0049】
この結果、緩和部形成範囲31の範囲外の本体部側壁28の広がりに伴って容器2の径方向外側へ移動する弱化部形成範囲27に対し、容器2の径方向で対応する緩和部形成範囲31の本体部側壁28が径方向内側へ変形することで、弱化部形成範囲27の本体部側壁28に生じる周方向の緊張を緩和し、打栓時の縦スリット26の破断を抑制できる。
【0050】
そして、打栓時の縦スリット26の破断が抑制できることで、縦スリット26の本体部側壁28の従来の肉厚(最小肉厚0.4mm)に比べてさらなる薄肉化、ここでは最小肉厚0.3mmに薄肉化することができ、本体弱化部24の縦スリット26での破断が容易となる。よって、分別時にヒンジ5が破断することなく、破断始点で破断が生じて縦スリット26を容易に破断できる。
【0051】
また、緩和部25は、キャップ内側凸部22の欠落により緩和部形成範囲31の範囲外の本体部側壁28よりも本体部12の周方向の伸張性が大きく、打栓時に緩和部形成範囲31の本体部側壁28が応力集中を受けて周方向に伸長し、弱化部形成範囲27の本体部側壁28に生じる周方向の緊張を緩和し、打栓時の縦スリット26の破断を抑制できる。
【0052】
また、本体弱化部24の弱化部形成範囲27が容器2の軸心周りで7°の範囲であるのに対して、緩和部25の緩和部形成範囲31が容器2の軸心周りで40°の範囲の十分に広い範囲を有することで、緩和部形成範囲31の本体部側壁28は、弱化部形成範囲27の本体部側壁28に生じる緊張を緩和するのに十分な容器2の径方向内側への変形量を確保できる。
(分別)
キャップ1の分別時には、開栓した状態の上蓋7を容器2の軸心方向に引っ張り、本体弱化部24の縦スリット26を破断始点から破断させ、縦スリット26に続いて薄肉部29cを周方向に破断させ、本体部12の本体部側壁28を内側壁29bとの間で破断させて、容器2の口部3に対するキャップ1の嵌合を開放し、容器2とキャップ1を分別する。
【0053】
この分別の操作において、本体弱化部24の薄肉化により、ヒンジ5が破断することなく、破断始点から縦スリット26の破断が生じて本体弱化部24を容易に破断できる。
【0054】
また、本体部側壁28の径方向において対向する本体弱化部24と緩和部25においてのみキャップ内側凸部22が欠落するので、容器2の口部3に対するキャップ1の保持力を十分に確保でき、キャップ1が容器2の口部3に対して容易に回転することがなく、縦スリット26に続いて薄肉部29cを周方向に破断させる間においても、キャップ1が容器2の軸心周りに回転して分別操作を阻害することがない。
(実施例2)
先の実施例1では、単一の緩和部25を形成する構造を例示したが、緩和部25は、本体弱化部24から本体部側壁28の周方向に沿って離隔した複数個所に形成することも可能である。
【0055】
この場合に、一つの緩和部形成範囲31は、容器2の軸心周りで20°以上40°以下の範囲を有し、各緩和部25の緩和部形成範囲31を合わせた総形成範囲が、容器2の軸心周りで60°までの範囲である。この条件を満たす複数の緩和部25を形成する。
【0056】
ここでは、一対の緩和部25を形成し、一方の緩和部25が本体弱化部24から本体部側壁28の一側周方向に沿って離隔し、他方の緩和部25が本体弱化部24から本体部側壁28の他側周方向に沿って離隔し、双方の緩和部25は本体弱化部24から等距離に離隔し、双方の緩和部25が容器2の軸心周りで20°の範囲を有する。
【0057】
しかし、双方の緩和部25は本体弱化部24から異なる距離に離隔することも可能であり、一方の緩和部25が容器2の軸心周りで20°の範囲を有し、他方の緩和部25が容器2の軸心周りで40°の範囲を有する構成も可能であり、容器2の軸心周りで20°の範囲を有する緩和部25を3箇所に形成することも可能である。
【0058】
この場合、緩和部形成範囲31が容器2の軸心周りで20°の範囲であっても、緩和部形成範囲31の範囲内の本体部側壁28は、容器2の径方向内側へ変形可能であり、複数の緩和部25に生じる変形量を合わせて弱化部形成範囲27の本体部側壁28に生じる緊張を緩和するのに十分な変形量を確保することが可能となり、緩和部25を複数の箇所に配置する構造においても、容器2の口部3に対するキャップ1の嵌合力を十分に確保できる。
【符号の説明】
【0059】
1 キャップ
2 容器
3 口部
4 キャップ本体
5 ヒンジ
6 バンド
7 上蓋
8 鍔部
9 嵌合突起部
10 上蓋保持部
11 嵌合面
12 本体部
13 中栓
14 中栓開口
15 注出筒
16 開口予定部
17 中栓弱化部
18 プルリング
19 中栓インナーシール部
20 嵌合溝
21 上蓋インナー
22 キャップ内側凸部
23 容器外側凹部
24 本体弱化部
25 緩和部
26 縦スリット
27 弱化部形成範囲
28 本体部側壁
29 二重壁
29a 外側壁
29b 内側壁
29c 薄肉部
30 スリット
31 緩和部形成範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11