(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065053
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】直流開ループ利得を増強した増幅回路及びそれを用いた電流増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/68 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H03F3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183031
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022172837
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】上村 勇仁
(72)【発明者】
【氏名】田守 建
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA47
5J500AC35
5J500AC72
5J500AF15
5J500AH25
5J500AH26
5J500AH29
5J500AH30
5J500AK01
5J500AK03
5J500AK27
5J500AK31
5J500AM08
5J500AM13
5J500AT01
5J500AT03
(57)【要約】
【課題】直流から低周波領域における開ループ利得を増強した増幅回路、及び、その増幅回路を用いた電流増幅回路を提供する。
【解決手段】増幅回路が、主増幅回路と、主増幅回路に接続され、主増幅回路よりも帯域を制限した帯域制限増幅回路と、を備え、帯域制限増幅回路の出力を主増幅回路の出力に積み重ねることによって、直流開ループ利得を増強する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅回路であって、
主増幅回路及び帯域制限増幅回路のいずれか又は両方を、合計で複数個備え、
前記主増幅回路及び前記帯域制限増幅回路の各々が、積み重ねられることによって、直流開ループ利得を増強した、
増幅回路。
【請求項2】
前記増幅回路全体の反転入力から出力までの経路に、反転型が奇数個存在する、請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
前記増幅回路全体としての非反転入力を備える場合、非反転入力から出力までの経路に、反転型が存在しないか又は偶数個存在する、請求項1に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記主増幅回路よりも帯域を制限した前記帯域制限増幅回路が、前記主増幅回路に接続され、前記帯域制限増幅回路の出力を前記主増幅回路の出力に積み重ねた、請求項1に記載の増幅回路。
【請求項5】
前記主増幅回路の(利得制限及び/若しくは利得調整)並びに/又は(帯域制限及び/若しくは帯域調整)を行う、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の増幅回路。
【請求項6】
前記主増幅回路の反転入力に抵抗の一端及び帰還容量の一端を接続し、前記抵抗の他端に利得抵抗の一端及び帰還抵抗の一端を接続し、前記帰還容量の他端に前記帰還抵抗の他端及び前記主増幅回路の出力を接続する、
請求項5に記載の増幅回路。
【請求項7】
前記利得抵抗の一端と前記抵抗の他端との間にバッファアンプを接続する、
請求項6に記載の増幅回路。
【請求項8】
前記帯域制限増幅回路の(利得制限及び/若しくは利得調整)並びに/又は(帯域制限及び/若しくは帯域調整)を行う、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の増幅回路。
【請求項9】
前記帯域制限増幅回路の反転入力に抵抗の一端及び帰還容量の一端を接続し、前記抵抗の他端に利得抵抗の一端及び帰還抵抗の一端を接続し、前記帰還容量の他端に前記帰還抵抗の他端及び前記帯域制限増幅回路の出力を接続する、
請求項8に記載の増幅回路。
【請求項10】
前記利得抵抗の一端と前記抵抗の他端との間にバッファアンプを接続する、
請求項9に記載の増幅回路。
【請求項11】
信号入力から入力信号をバッファアンプの入力に与え、
前記バッファアンプの出力を前記増幅回路の入力に接続する、
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の増幅回路。
【請求項12】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の増幅回路の信号出力と信号入力の間に、少なくとも帰還抵抗を接続する、
電流増幅回路。
【請求項13】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の増幅回路の信号出力と信号入力の間に、少なくとも帰還容量及び帰還抵抗を接続し、
前記増幅回路の直流開ループ利得をAOL、単一利得周波数をfT、前記帰還容量をCf、前記帰還抵抗をRfとするとき、
AOL=2・π・fT・Cf・Rfを満たすように調整又は選択する、
電流増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流から低周波領域における開ループ利得を増強した増幅回路、及び、その増幅回路を用いた電流増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図3には、増幅器G2の反転入力を入力とし、増幅器G2の出力と反転入力の間に帰還抵抗を含み、増幅器G2の演算増幅器の出力を出力とする電流増幅回路が示されている。この電流増幅回路に含まれている増幅器G1は反転増幅回路であり、その入力は電流増幅回路の入力に接続されており、その出力は増幅器G2の非反転入力に接続されている。もし増幅器G1が積分回路のような周波数帯域を制限する回路(以下、「帯域制限増幅回路」と略記する。)を構成していれば、本発明の直流から低周波領域における開ループ利得(以下、「直流開ループ利得」と略記するときがある。)を増強した増幅回路を用いた電流増幅回路の一部と同様の回路になる。しかしG1は明細書最後の文に明記されている通り「増幅器」であり「積分回路」等ではないので、開ループ利得を増強する効果は有さず、本発明とは異なる技術的思想である。また、特許文献1には、本発明のような、直流開ループ利得を増強した増幅回路については記載がなく、その示唆すらない。
【0003】
特許文献2の
図2には、入力信号と電流帰還増幅器A2の出力の間に帰還抵抗を含む、電流増幅回路が示されている。この増幅回路の入力信号はバッファアンプA1と抵抗R3を介して電流帰還増幅器A2の反転入力に与えられ、また、抵抗R、キャパシタCと増幅器A3からなる積分回路の入力に接続されており、積分回路の出力は電流帰還型OPアンプA2の非反転入力に接続されている。もしバッファアンプA1と抵抗R3がなく、入力信号が直接電流帰還型OPアンプA2の反転入力に接続されていた場合には、本発明の直流開ループ利得を増強した増幅回路を用いた電流増幅回路の一部と同様の回路になる。しかし特許文献2の
図2の回路はバッファアンプA1と抵抗R3を含んでいるため、本発明とは回路構成が異なっており、本発明とは異なる技術的思想である。特に、特許文献2の積分回路は、
図2の電流増幅器の入力電圧eを基準電位に近づけるために設けられているものであり、本発明のように直流開ループ利得を増強した増幅回路としては動作していないし、そのような記載や示唆も含まれていない。
【0004】
特許文献3には、個別に負帰還をかけた反転増幅器又は非反転増幅器を直列に接続し、出力側増幅器の出力から入力側増幅器の入力に対して負帰還をかける増幅回路が記載されている。これに対して本発明では、単なる反転増幅器や非反転増幅器ではない、特定の帯域幅に帯域制限することを目的とした帯域制限増幅回路を含んでいる。また、特許文献3はゲインバンド幅積(GBW)が大きい増幅回路の実現を目的としているのに対して、本発明は直流開ループ利得を増強することを目的としているので、技術思想そのものが異なっている。また、特許文献3には、直流開ループ利得を増強することに関する記載はなく、その示唆もない。
【0005】
なお、特許文献3には、等価的に端子間容量をゼロとした抵抗を実現する帰還回路(第6の実施の形態)や、等価的に小容量とすることができ、かつ調整可能な容量を実現する帰還回路(第7の実施の形態)が示されており、本発明と併用すると好適な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭49-6863号公報
【特許文献2】特開2005-64903号公報
【特許文献3】特許第6022262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
増幅回路の直流開ループ利得が十分に大きくないときには、低周波数領域における増幅回路の歪や、直流及び低周波数領域における増幅回路の増幅精度が不足する場合がある。
【0008】
また、直流開ループ利得が十分に大きくないときは、電流増幅回路(電流電圧変換回路)において直流や低周波数領域における入力インピーダンスが高くなってしまい、電流増幅回路の理想から遠くなってしまう場合がある。
【0009】
さらに、電流増幅回路の入力インピーダンスが周波数によって変化するため、その周波数領域における入力インピーダンスが容量やインダクタに見える場合があるという問題も有していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる課題を解決するため、増幅回路であって、主増幅回路及び帯域制限増幅回路のいずれか又は両方を、合計で複数個備え、前記主増幅回路及び前記帯域制限増幅回路の各々が、積み重ねられることによって、直流開ループ利得を増強した、増幅回路を提供する。
【0011】
前記増幅回路では、前記増幅回路全体の反転入力から出力までの経路に、反転型が奇数個存在する、としてもよい。
【0012】
前記増幅回路では、前記増幅回路全体としての非反転入力を備える場合、非反転入力から出力までの経路に、反転型が存在しないか又は偶数個存在する、としてもよい。
【0013】
前記増幅回路では、前記主増幅回路よりも帯域を制限した前記帯域制限増幅回路が、前記主増幅回路に接続され、前記帯域制限増幅回路の出力を前記主増幅回路の出力に積み重ねた、としてもよい。
【0014】
前記増幅回路では、前記主増幅回路の(利得制限及び/若しくは利得調整)並びに/又は(帯域制限及び/若しくは帯域調整)を行う、としてもよい。
【0015】
前記増幅回路では、前記主増幅回路の反転入力に抵抗の一端及び帰還容量の一端を接続し、前記抵抗の他端に利得抵抗の一端及び帰還抵抗の一端を接続し、前記帰還容量の他端に前記帰還抵抗の他端及び前記主増幅回路の出力を接続する、としてもよい。
【0016】
前記増幅回路では、前記利得抵抗の一端と前記抵抗の他端との間にバッファアンプを接続する、としてもよい。
【0017】
前記増幅回路では、前記帯域制限増幅回路の(利得制限及び/若しくは利得調整)並びに/又は(帯域制限及び/若しくは帯域調整)を行う、としてもよい。
【0018】
前記増幅回路では、前記帯域制限増幅回路の反転入力に抵抗の一端及び帰還容量の一端を接続し、前記抵抗の他端に利得抵抗の一端及び帰還抵抗の一端を接続し、前記帰還容量の他端に前記帰還抵抗の他端及び前記帯域制限増幅回路の出力を接続する、としてもよい。
【0019】
前記増幅回路では、前記利得抵抗の一端と前記抵抗の他端との間にバッファアンプを接続する、としてもよい。
【0020】
前記増幅回路では、信号入力から入力信号をバッファアンプの入力に与え、前記バッファアンプの出力を前記増幅回路の入力に接続する、としてもよい。
【0021】
また、本発明は、前記増幅回路の信号出力と信号入力の間に、少なくとも帰還抵抗を接続する、電流増幅回路を提供する。
【0022】
また、本発明は、前記増幅回路の信号出力と信号入力の間に、少なくとも帰還容量及び帰還抵抗を接続し、前記増幅回路の直流開ループ利得をAOL、単一利得周波数をfT、前記帰還容量をCf、前記帰還抵抗をRfとするとき、AOL=2・π・fT・Cf・Rfを満たすように調整又は選択する、電流増幅回路を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明による、直流開ループ利得を増強した増幅回路によれば、直流から低周波数領域における増幅回路の歪を低減することができ、また、直流から低周波数領域において増幅回路の高精度化を図ることができるという効果を有している。
【0024】
また、本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路を電流増幅回路に適用すると、直流や低周波数領域において入力インピーダンスを低くすることができ、電流増幅回路の理想動作に近づけることが可能である。
【0025】
さらに、本発明は、直流開ループ利得を自由に選択及び調整可能であるという本発明の特長を活用することによって、電流増幅回路の入力インピーダンスを周波数によらず一定として、純抵抗に見える入力インピーダンスにできる、という効果も有している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(A)従来の演算増幅器(開ループ状態)を例示する図、(B)従来の演算増幅器の、開ループにおける利得-周波数特性G
OLを例示する図、(C)演算増幅器Uに利得抵抗Rgと帰還抵抗Rfを接続した反転増幅回路の図、(D)演算増幅器Uに帰還抵抗Rfを接続した電流増幅回路の図である。
【
図2】(A)本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路の基本的な回路構成の一つを示す図(基本回路-1)、(B)帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi’を表す図、(C)主増幅器Umの開ループの利得-周波数特性G
OLmを表す図、(D)基本回路-1(
図2(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図3】(A)本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路の基本的な回路構成のもう一つを示す図(基本回路-1’)、(B)帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi”を表す図、(C)主増幅器Um’の開ループの利得-周波数特性G
OLm’を表す図、(D)基本回路-1’(
図3(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図4】(A)本発明による開ループ利得を増強した増幅回路の、別の一つの基本的な回路構成を示す図(基本回路-2)、(B)帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi’を表す図、(C)主増幅器Umの開ループの利得-周波数特性G
OLmを表す図、(D)基本回路-2(
図4(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図5】(A)本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路の基本的な回路構成のもう一つを示す図(基本回路-2’)、(B)帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi”を表す図、(C)主増幅器Um’の開ループの利得-周波数特性G
OLm’を表す図、(D)基本回路-2’(
図5(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図6】(A)本発明による開ループ利得を増強した増幅回路の、さらに別の一つの基本的な回路構成を示す図(基本回路-3)、(B)帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLiを表す図、(C)帯域制限増幅回路がなく、非反転入力が接地されている場合の、主増幅器Um
dの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表す図、(D)基本回路-3(
図6(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図7】(A)本発明による開ループ利得を増強した増幅回路の、もう一つの基本的な回路構成を示す図(基本回路-3’)、(B)主増幅器Umがなく、非反転入力が接地されている場合の、帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi
dを表す図、(C)主増幅器Umの開ループの利得-周波数特性G
OLmを表す図、(D)基本回路-3’(
図7(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図8】(A)反転型主増幅回路を示す図、(B)非反転型主増幅回路を示す図、(C)差動型主増幅回路を示す図である。
【
図9】(A)反転型帯域制限増幅回路を示す図、(B)非反転型帯域制限増幅回路を示す図、(C)反転型帯域制限増幅回路の変形を示す図、(D)差動型帯域制限増幅回路を示す図である。
【
図10】(A)基本回路-1(
図2(A))と基本回路-3(
図6(A))の組み合わせによる開ループ利得を増強した増幅回路を示す図(応用回路-1)、(B)非反転型帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi’を表す図、(C)反転型帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLiを表す図、(D)反転型帯域制限増幅回路がなく、非反転入力が接地されている場合の、差動型主増幅器Um
dの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表す図、(E)応用回路-1(
図10(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図11】(A)基本回路-3(
図6(A))において、反転型帯域制限増幅回路を複数用いて直流開ループ利得を増強した増幅回路を示す図(応用回路-2)、(B)帯域制限増幅回路-2の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi2を表す図、(C)帯域制限増幅回路-1の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi1を表す図、(D)主増幅器Umの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表す図、(E)応用回路-2(
図11(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図12】(A)基本回路-2’と、基本回路-3’の変形の組み合わせによる開ループ利得を増強した増幅回路を示す図(応用回路-3)、(B)反転型帯域制限増幅回路の閉ループの変形における利得-周波数特性G
CLi”を表す図、(C)差動型帯域制限増幅回路の変形の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi
dを表す図、(D)非反転型主増幅器Um’の開ループの利得-周波数特性G
OLm’を表す図、(E)応用回路-3(
図12(A))の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性を表す図である。
【
図13(A)】基本回路-3(
図6(A))の主増幅回路に利得抵抗Rgm
dと帰還抵抗Rfm
dを追加した図である。
【
図13(B)】
図13(A)によって利得制限した場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dの例を示す図である。
【
図13(C)】基本回路-3(
図6(A))の主増幅回路に利得抵抗Rgm
dと帰還容量Cfm
dを追加した図である。
【
図13(D)】
図13(C)によって帯域制限した場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dを示す図である。
【
図13(E)】基本回路-3(
図6(A))の主増幅回路に利得抵抗Rgm
d、帰還抵抗Rfm
dと、帰還容量Cfm
dを追加した図である。
【
図13(F)】
図13(E)の場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dの例を示す図である。
【
図13(G)】基本回路-3(
図6(A))の主増幅回路に利得抵抗Rgm
d、帰還抵抗Rfm
d、抵抗Rfcm
dと、帰還容量Cfm
dを追加した図である。
【
図13(H)】
図13(G)において、利得抵抗Rgm
dの一端と抵抗Rfcm
dの他端との間にバッファアンプBufを追加した図である。
【
図14】(A)基本回路-1(
図2(A))の入力に、バッファアンプBufを追加した例を示す図、(B)基本回路-3(
図6(A))の入力に、バッファアンプBufを追加した例を示す図、(C)演算増幅器Ubの出力と反転入力を接続したバッファアンプの一例を示す図、(D)演算増幅器Ubを用いた非反転増幅器によるバッファアンプの一例を示す図である。
【
図15】基本回路-3(
図6(A))に帰還抵抗Rfを接続して、電流増幅回路とした例を示す図である。
【
図16】(A)演算増幅器Uを用いた一般的な電流増幅回路(IVアンプ)の基本的な回路を示す図、(B)Cfによって帯域制限された利得G
OLの利得-周波数特性を示す図、(C)電流増幅回路の入力インピーダンスZinを示す図である。
【
図17】基本的な回路構成は応用回路-1(
図10(A))としており、帰還抵抗Rfと帰還容量Cfを追加することによって電流増幅器(
図16)を構成した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は、発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。そのような変形や変更もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
<0.増幅器の開ループ利得の利得-周波数特性>
【0029】
図1(A)には、従来の演算増幅器(開ループ状態)を例示している。負帰還をかけるためには反転入力が必要のため、反転入力を増幅器の入力として非反転入力を基準電位に接続する例を示している。しかしこれは、非反転入力を使うことができないということではなく、必要に応じて非反転入力を増幅器の入力として使用することも可能であり、以降も同様である。
【0030】
なお、基準電位は0Vである必要はなく、また、交流的に基準電位に接続されていてもよい。全体に渡り、同様である。
【0031】
図1(B)には、従来の演算増幅器の、開ループにおける利得-周波数特性G
OLを例示している。縦軸(GAIN)は対数で表示した利得であり、数値で表す場合の単位はdB(デシベル)である。入出力の極性が反転する場合は、利得は負の値になるが、慣行に従って、正負は考慮せず増幅率の絶対値で考えることとする。横軸(freq)は対数で表示した周波数であり、数値で表す場合の単位はHz(ヘルツ)である。
【0032】
なお、開ループにおける利得-周波数特性GOLを、名称を省略して記号だけでGOLと表記する場合がある。以降、他の名称と記号についても同様に、名称を省略して記号だけで表記する場合がある。
【0033】
従来の演算増幅器では、カットオフ周波数fcよりも十分に低い周波数において、開ループ利得は一定の直流開ループ利得AOLの増幅率を示す。集積回路による演算増幅器では、AOLは数十dBから百数十dB程度が一般的である。
【0034】
カットオフ周波数fcを超える周波数では、G
OLは周波数に反比例し、周波数が上昇するに従って
図1(B)のように20dB/ディケード(≒6dB/オクターブ)で低下する。開ループ利得が0dBとなる周波数を、単一利得周波数f
Tとする。f
Tはトランジション周波数ともいう。なお、f
Tよりも低い周波数では、20dB/ディケードが保たれていることとする。
【0035】
カットオフ周波数fc付近における開ループ利得は、実際は点線のようになめらかに変化し、fcにおける開ループ利得は、A
OLよりも約3.01dB低くなる。以降は原則として点線を省略し、慣行に従って、
図1(B)の直線のように利得-周波数特性を表すこととする。
【0036】
なお、
図1(C)のように、演算増幅器Uに利得抵抗Rgと帰還抵抗Rfを接続すると、慣用されている反転増幅回路になる。また、
図1(D)のように、演算増幅器Uに帰還抵抗Rfを接続すると、慣用されている電流増幅回路になる。このような点は、以降に示す本発明の回路においても同様である。
【0037】
本発明においては原則として、「増幅器」は増幅機能を有する単独の機能ブロックを指し、「増幅回路」は増幅器や受動素子等の組み合わせによって全体として増幅機能を有する機能ブロックを指すこととする。
【0038】
<1.増幅回路の直流開ループ利得を増強するための基本回路>
【0039】
下記のような条件を満たす回路を本発明における「基本回路」と称することとし、以降にその例を示す。ただし下記の条件は、例示する基本回路の数を制限して代表的な例を示すための仮の制約に過ぎず、本発明が下記の条件に制約されるという意味ではない。
・基本回路全体として、
図1(A)相当の、1つの反転入力と1つの出力を備えることとする。(実際は、非反転入力を備えたり差動入力を備えてもよいし、差動出力であってもよい。)
・主増幅回路と帯域制限増幅回路が各1つ(計2つ)の増幅回路の組み合わせとする。
(実際は、計3つ以上の増幅回路の組み合わせも可能であり、また主増幅回路だけの組み合わせや帯域制限増幅回路だけの組み合わせも可能である。なお、計3つの増幅回路の組み合わせの一例は、応用回路として後述する。)
・主増幅回路のカットオフ周波数は、帯域制限増幅回路のカットオフ周波数よりも高いこととする。(帯域制限増幅回路のカットオフ周波数は、使用する演算増幅器単体のカットオフ周波数よりも大幅に低くなる(一例として千分の1)ことを想定しているので、主増幅回路のカットオフ周波数よりも高くすることは困難だが、不可能ではない。)
【0040】
<1.1 基本回路-1>
【0041】
図2(A)には、本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路の基本的な回路構成の一つを示している。以降、この基本回路を「基本回路-1」と称する。
【0042】
抵抗Rgi’、キャパシタCfi’と演算増幅器Ui’は、積分回路を構成しており、その周波数帯域を制限している。この積分回路のように周波数帯域を制限することを目的としている増幅回路を、本発明では「帯域制限増幅回路」と称することとする。また、演算増幅器Ui’の非反転入力に信号が与えられているタイプの帯域制限増幅回路を、他のタイプの帯域制限増幅回路と区別する必要があるときに、「非反転型帯域制限増幅回路」と称することがある。
【0043】
主増幅器Umは演算増幅器であり、その反転入力には演算増幅器Ui’の出力が接続されており、非反転入力は基準電位に接続されて、主増幅回路を構成している。このタイプの主増幅器を、他のタイプの主増幅器と区別する必要があるときに、「反転型主増幅回路」と称することがある。
【0044】
基本回路-1は、非反転型帯域制限増幅回路と反転型主増幅回路を直列に接続した構成になっている。
【0045】
必要があれば、抵抗Rgi’の基準電位に接続されている点を、増幅回路全体の非反転入力として使用することも可能であるが、-Vinが接続されている増幅回路全体の反転入力とは入力インピーダンスが異なるため、そのまま差動入力として使用できるものではない。
【0046】
図2(B)は、この帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi’を表しており、その単一利得周波数はf
Ti’であり、直流開ループ利得はA
OLi’であり、演算増幅器Ui’単体(抵抗Rgi’やキャパシタCfi’のような外付け素子がない場合)における単一利得周波数はf
T’i’である。カットオフ周波数fci’よりも高く単一利得周波数はf
Ti’より低い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLi’が20dB/ディケードで低下する。単一利得周波数f
Ti’は、抵抗Rgi’とキャパシタCfi’の値によって、式(1)のように表すことができる。G
CLi’が0dBまで20dB/ディケードで低下する場合、カットオフ周波数fci’はf
Ti’とA
OLi’によって式(2)のように表すことができる。
【0047】
【0048】
【0049】
単一利得周波数fTi’よりも高い周波数では、キャパシタCfi’のインピーダンスが抵抗Rgi’のインピーダンスよりも十分に低くなるため、利得-周波数特性GCLi’は0dB(1倍)となる。さらに演算増幅器Ui’単体の単一利得周波数fT’i’ を超えると、利得-周波数特性GCLi’は、再び20dB/ディケードで低下する。
【0050】
図2(C)は、主増幅器Umの開ループの利得-周波数特性G
OLmを表している。直流開ループ利得はA
OLm、カットオフ周波数はfcm、単一利得周波数はf
Tmとなっている。
【0051】
ここで、GCLi’とGOLmの両方が20dB/ディケードで低下する周波数においては、増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は40dB/ディケードで低下する。即ち、fT’i’以上の周波数でありかつfTm以上の周波数では、40dB/ディケードで低下する。増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBになるまで20dB/ディケードを維持するためには、fT’i’がfTmよりも高い周波数であることが必要となる。
【0052】
図2(A)のように、帯域制限増幅回路の出力が主増幅器Umの反転入力に接続されている場合において、fcmとf
Ti’が一致するように抵抗Rgi’とキャパシタCfi’の値が選択されると、
図2(A)の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は、
図2(D)のようになる。即ち、Ui’の出力がUmの出力に加算され、帯域制限増幅回路の利得-周波数特性が主増幅回路の開ループの利得-周波数特性の上に積み重ねられたように動作して、利得の周波数特性が直線的につながるようになる。この結果、
図2(A)の増幅回路全体における直流開ループ利得はA
OLm+A
OLi’に増強される。このように、利得の周波数特性が直線的につながるように、主増幅回路の出力に帯域制限増幅回路の出力を加算することを、本発明では「積み重ねる」と表現することとする。
【0053】
前述した通り、集積回路の演算増幅器では、直流開ループ利得AOLは数十dBから百数十dB程度が一般的である。本発明によれば、AOLが数十dBの安価な演算増幅器を用いても、AOLが百dBを越えるような高精度の演算増幅器を実現できる。また、AOLが百数十dBの演算増幅器を用いると、AOLが二百dBを越えるような、一般的には入手できない、超高精度の演算増幅器を実現できる。
【0054】
図2(A)に示す基本回路-1の増幅回路は、全体として、
図1(A)に示す演算増幅器と同様に機能するので、通常の演算増幅器と同様に使用できる。即ち、-Vinは演算増幅器の反転入力に相当し、Voutは演算増幅器の出力に相当している。この点は、後述の基本回路や応用回路、及びそれらの変形回路の全てについて同様である。
【0055】
図2(A)~(D)について、以下に具体例を示すが、これは一例にすぎず、これに限定するものではない。
図2(C)を参照して、主増幅器Umのf
Tm=100MHz、A
OLm=80dB、fcm=10kHzとする。
図2(B)を参照して、演算増幅器Ui’のA
OLi’=120dBとし、必要な帯域幅を有しているものとする。
【0056】
fTi’をfcmの10kHzに等しくなるように抵抗Rgi’とキャパシタCfi’を選択する。Cfi’を1500pFとして式(1)を適用すると、Rgi’≒10.61kΩとなる。
【0057】
図2(A)の回路における開ループの利得-周波数特性は
図2(D)のようになり、f
Tm=100MHz、f
Ti’=fcm=10kHz、fci’=0.01Hz、A
OLm+A
OLi’=200dBとなる。周知の範囲内において、市販されている演算増幅器のうちA
OLが最大の集積回路は、A
OL=154dBである。即ち、上記の例では、市販品の演算増幅器よりもはるかに大きい直流開ループ利得を実現できていることになる。
【0058】
実際的には、上記の各定数には誤差が含まれるため、Cfi’やRgi’を可変することによって、
図2(D)のように開ループ利得の周波数特性が直線的につながるようにf
Ti’を調整可能とすることが好ましい。Rgi’を可変する方が低コストの場合が多いが、これに限定するものではない。
図2(A)ではRgi’は1本の固定抵抗として図示しているが、1又は複数の固定抵抗と可変抵抗の組み合わせとして、調整可能とすることができる(以下同様)。10.61kΩのRgi’を調整可能とする一例として、Rgi’を10kΩの固定抵抗と0~1kΩの可変抵抗の直列接続とし、10kΩ~11kΩの間を調整可能とすることができる。Cfi’も同様に、1又は複数の固定容量と可変容量(トリマコンデンサ等)の組み合わせとして調整可能とすることができる(以下同様)。
【0059】
<1.2 基本回路-1’>
【0060】
図3(A)には、本発明による開ループ利得を増強した増幅回路の、もう一つの基本的な回路構成を示している。以降、この基本回路を「基本回路-1’」と称する。
【0061】
抵抗Rgi”、抵抗Rfi”、キャパシタCfi”と演算増幅器Ui”は積分回路を構成してその帯域を制限し、帯域制限増幅回路となっている。抵抗Rgi”の一端に信号が与えられ、他端は演算増幅器Ui”の反転入力に接続されている。演算増幅器Ui”の非反転入力は基準電位に接続されている。演算増幅器Ui”の出力と反転入力の間には、抵抗Rfi”とキャパシタCfi”の直列回路が接続されている。(抵抗Rfi”とキャパシタCfi”の接続順序は、
図3(A)と逆でもよい。抵抗とキャパシタの直列回路において、以下同様。)このタイプの帯域制限増幅回路を、他のタイプと区別する必要があるときに、本発明では「反転型帯域制限増幅回路の変形」と称することがある。
【0062】
主増幅器Um’は演算増幅器であり、その非反転入力は演算増幅器Ui”の出力に接続されており、反転入力は基準電位に接続されている。主増幅器Um’は、単独で主増幅回路を構成している。このタイプの主増幅回路を、他のタイプの主増幅回路と区別する必要があるときに、「非反転型主増幅回路」と称することがある。
【0063】
基本回路-1’は、反転型帯域制限増幅回路の変形と非反転型主増幅回路を直列に接続した構成になっている。
【0064】
必要があれば、基準電位に接続されている演算増幅器Ui”の非反転入力を、増幅回路全体の非反転入力として使用することも可能であるが、-Vinが接続されている増幅回路全体の反転入力とは入力インピーダンスが異なるため、そのまま差動入力として使用できるものではない。
【0065】
図3(B)は、この反転型帯域制限増幅回路の変形の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi”を表しており、そのカットオフ周波数はfci”であり、その単一利得周波数はf
Ti”である。また、直流開ループ利得はA
OLi”であり、演算増幅器Ui”の開ループの単一利得周波数はf
T’i”である。
【0066】
抵抗Rgi”と抵抗Rfi”の抵抗値が同じ場合、fTi”からfT’i”の間のGCLi”は0dBとなり、単一利得周波数fTi”はRgi”とCfi”によって式(3)のように表すことができる。
【0067】
【0068】
またカットオフ周波数fci”は、単一利得周波数fTi”と直流開ループ利得AOLi”によって、式(4)のように表すことができる。
【0069】
【0070】
なお抵抗Rgi”と抵抗Rfi”の抵抗値が異なる場合、fTi”やfT’i”の周波数は(Rgi”/Rfi”)倍になる。(Rfi”>Rgi”のときは周波数が下がる。)この結果、単一利得周波数fTi”は、Rfi”とCfi”によって式(5)のように表すことができる。
【0071】
【0072】
またfTi”からfT’i”の間の周波数におけるGCLi”は、0dBの(Rfi”/Rgi”)倍になるので、式(6)のように表すことができる。
【0073】
【0074】
図3(C)は、主増幅器Um’の開ループの利得-周波数特性G
OLm’を表している。直流開ループ利得はA
OLm’、カットオフ周波数はfcm’、開ループ利得が0dBとなる周波数はf
Tm’となっている。
【0075】
増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBになるまで20dB/ディケードを維持するためには、fT’i”がfTmよりも高い周波数であることが必要となる点は、基本回路-1と同様である。
【0076】
図3(A)のように、抵抗Rgi”、抵抗Rfi”とキャパシタCfi”と演算増幅器Ui”からなる帯域制限増幅回路の変形の出力がUm’の非反転入力に接続されている場合において、f
Ti”とfcm’が一致するように抵抗Rfi” 、抵抗Rfi”とキャパシタCfi”が選択されると、
図3(A)の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は、
図3(D)のようになる。即ち、Ui”の出力がUm’の出力に加算され、帯域制限増幅回路の利得-周波数特性が主増幅回路の開ループの利得-周波数特性の上に積み重ねられたように動作する。この結果、
図3(A)の増幅回路全体における直流開ループ利得はA
OLm’+A
OLi”に増強される。
【0077】
図3(A)~
図3(D)については
図2(A)~
図2(D)とほぼ同様なので、具体例は省略する。
【0078】
図3(A)の基本回路-1’を
図2(A)の基本回路-1と比較すると、
図3(A)の入力インピーダンス≒抵抗Rgi”となるのに対して、
図2(A)の入力インピーダンス≒演算増幅器Ui’の非反転入力の入力インピーダンスとなるので、通常、
図2(A)の基本回路-1の入力インピーダンスの方が格段に高い、という特長がある。
【0079】
<1.3 基本回路-2>
【0080】
図4(A)には、本発明による開ループ利得を増強した増幅回路の、もう一つの基本的な回路構成を示している。以降、この基本回路を「基本回路-2」と称する。
【0081】
主増幅器Umは、前述の
図1(A)と同様の演算増幅器であるが、その反転入力には信号が与えられており、非反転入力は基準電位に接続されている。主増幅器Umは、単独で反転型主増幅回路を構成している。
【0082】
抵抗Rgi’、キャパシタCfi’と演算増幅器Ui’は積分回路を構成してその帯域を制限しており、
図2(A)の帯域制限増幅回路と同様の、非反転型帯域制限増幅回路を構成している。
【0083】
即ち、
図4(A)の基本回路-2は、
図2(A)の基本回路-1に対して、主増幅回路と帯域制限増幅回路の接続を前後逆にした構成になっている。
【0084】
このため、基本回路-2に係る
図4(B)、
図4(C)及び
図4(D)は、基本回路-1に係る
図2(B)、
図2(C)及び
図2(D)と同様なので、これらの図の説明や具体例は省略する。
【0085】
必要があれば、基準電位に接続されている演算増幅器Umの非反転入力を、増幅回路全体の非反転入力として使用することも可能であり、増幅回路全体を差動入力として使用することができる。
【0086】
増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBになるまで20dB/ディケードを維持するためには、fT’i’がfTmよりも高い周波数であることが必要となる点も、基本回路-1と同様である。
【0087】
図4(A)の基本回路-2を
図2(A)の基本回路-1と比較すると、
図2(A)の基本回路-1の入力インピーダンス≒演算増幅器Ui’の非反転入力の入力インピーダンスとなるのに対して、
図4(A)の入力インピーダンス≒演算増幅器Umの反転入力の入力インピーダンスとなるので、通常、どちらの入力インピーダンスも高インピーダンスである、という特長がある。ただし、
図4(A)の基本回路-2の演算増幅器Umとして電流帰還型OPアンプを使用する場合、通常、電流帰還型OPアンプの反転入力の入力インピーダンスは低いので、
図4(A)の基本回路-2の入力インピーダンスは低くなる。
【0088】
<1.4 基本回路-2’>
【0089】
図5(A)には、本発明による開ループ利得を増強した増幅回路の、もう一つの基本的な回路構成を示している。以降、この基本回路を「基本回路-2’」と称する。
【0090】
主増幅器Um’は、前述の
図1(A)と同様の演算増幅器であるが、その非反転入力には信号が与えられており、反転入力は基準電位に接続されている。主増幅器Um’は、単独で非反転型主増幅回路を構成している。
【0091】
抵抗Rgi”、抵抗Rfi”、キャパシタCfi”と演算増幅器Ui”は積分回路を構成してその帯域を制限しており、
図3(A)の帯域制限増幅回路と同様の、反転型帯域制限増幅回路の変形を構成している。
【0092】
即ち、
図5(A)の基本回路-2’は、
図3(A)の基本回路-1’に対して、主増幅回路と帯域制限増幅回路の接続を前後逆にした構成になっている。
【0093】
このため、基本回路-2’に係る
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)及び
図5(D)は、基本回路-1’に係る
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)及び
図3(D)と同様なので、これらの図の説明や具体例は省略する。
【0094】
必要があれば、基準電位に接続されている演算増幅器Um’の反転入力を、増幅回路全体の非反転入力として使用することも可能であり、増幅回路全体を差動入力として使用することができる。
【0095】
増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBになるまで20dB/ディケードを維持するためには、fT’i”がfTm’よりも高い周波数であることが必要となる点も、基本回路-1’と同様である。
【0096】
図5(A)の基本回路-2’を
図3(A)の基本回路-1’と比較すると、
図3(A)の入力インピーダンス≒抵抗Rgi”になるのに対して、
図5(A)の入力インピーダンス≒演算増幅器Um’の非反転入力の入力インピーダンスとなるので、通常、
図5(A)の基本回路-2’の入力インピーダンスの方が格段に高い、という特長がある。
【0097】
<1.5 基本回路-3>
【0098】
図6(A)には、本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路のもう一つの基本的な回路構成を示している。以降、この基本回路を「基本回路-3」と称する。
【0099】
主増幅器Um
dは、前述の
図1(A)と同様の演算増幅器であるが、その反転入力には信号が与えられており、非反転入力は別の演算増幅器Uiの出力に接続されている。主増幅器Um
dは、単独で「主増幅回路」を構成している。反転入力と非反転入力のいずれも基準電位に接続されていないタイプの主増幅回路を、他のタイプの主増幅回路と区別する必要があるときに、「差動型主増幅回路」と称することがある。
【0100】
抵抗Rgi、キャパシタCfiと演算増幅器Uiは、積分回路を構成しており、その周波数帯域を制限している。Uiの非反転入力は、基準電位に接続されている。このような、抵抗Rfi”を有さない反転タイプの帯域制限増幅回路を、他の帯域制限増幅回路と区別する必要があるとき、「反転型帯域制限増幅回路」と称することがある。
【0101】
基本回路-3は、反転型帯域制限増幅回路と差動型主増幅回路を接続した構成になっているが、基本回路-1~基本回路-2’に示したような直列接続ではない。基本回路-3のような接続を、便宜上、「並列接続」と称することとする。
【0102】
必要があれば、基準電位に接続されている演算増幅器Uiの非反転入力を、増幅回路全体の非反転入力として使用することも可能であるが、-Vinが接続されている増幅回路全体の反転入力とは入力インピーダンスが異なるため、そのまま差動入力として使用できるものではない。
【0103】
基本回路-3において、反転型帯域制限増幅回路は、反転型帯域制限増幅回路の変形に置き換えることが可能である。ただしこの場合は、基本回路-1等とは異なり、反転型帯域制限増幅回路の変形におけるfT’i”は、fTmdよりも低い周波数であることが必要となる。(さもないと、fT’i”よりも低い周波数で、増幅器全体の利得-周波数特性に平坦部が生じるからである。ただし、意図的に平坦部を設ける場合は、この限りではない。)
【0104】
図6(B)は、基本回路-3の帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLiを表しており、カットオフ周波数はfciであり、単一利得周波数はf
Tiであり、直流開ループ利得はA
OLiである。カットオフ周波数fciよりも高い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLiが20dB/ディケードで低下する。単一利得周波数f
Tiは、抵抗RgiとキャパシタCfiの値によって、式(7)のように表すことができる。G
CLiが0dBまで20dB/ディケードで低下する場合、カットオフ周波数fciはf
TiとA
OLiによって式(8)のように表すことができる。
【0105】
【0106】
【0107】
図6(C)は、帯域制限増幅回路がなく、非反転入力が基準電位に接続されている場合の、主増幅器Um
dの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表している。直流開ループ利得はA
OLm
d、カットオフ周波数はfcm
d、単一利得周波数はf
Tm
dとなっている。
【0108】
図6(A)のように、帯域制限増幅回路の出力が主増幅器Um
dの非反転入力に接続されている場合において、fcm
dとf
Tiが一致するように抵抗RgiとキャパシタCfiの値が選択されると、
図6(A)の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は、
図6(D)のように積み重ねることができる。
【0109】
前述の基本回路-1~基本回路-2’では、GCLi(GCLi’やGCLi”)とGOLm(GOLm’を含む)が共に、周波数が上昇するに従って20dB/ディケードで低下する場合には、増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が40dB/ディケードで低下する構成であった。しかし、この基本回路-3では、GCLiとGOLmdが共に、周波数が上昇するに従って20dB/ディケードで低下する周波数であっても、増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は20dB/ディケードで低下するという特徴を有している。基本回路―3では、fTiを超える周波数においてGCLiが0dBよりも低くなると、主増幅器Umdに接続されている演算増幅器Uiの出力はより基準電位に近づくので、GOLmdには影響しないためである。
【0110】
なお基本回路-3の入力インピーダンスは、入力インピーダンス≒抵抗Rgiと低めである。
【0111】
<1.6 基本回路-3’>
【0112】
図7(A)には、本発明による直流開ループ利得を増強した増幅回路のもう一つの基本的な回路構成を示している。以降、この基本回路を「基本回路-3’」と称する。
【0113】
主増幅器Umの反転入力には信号が与えられており、非反転入力は基準電位に接続されている。主増幅器Umは、単独で「主増幅回路」を構成している。
【0114】
抵抗Rgid、抵抗Rfid、キャパシタCfidと演算増幅器Uidは、積分回路を構成しており、その周波数帯域を制限している。抵抗Rgidの一端には信号が与えられており、他端はUidの反転入力に接続されている。Uidの非反転入力は、演算増幅器Umの出力に接続されている。Uidの出力と反転入力の間には、抵抗Rfid、キャパシタCfidの直列回路が接続されている。このようなタイプの帯域制限増幅回路を他のタイプの帯域制限増幅回路と区別する必要があるときに、「差動型帯域制限増幅回路」と称することがある。この差動型帯域制限増幅回路は、反転型帯域制限増幅回路の変形において基準電位に接続されていた増幅器の非反転入力も使用するものである。
【0115】
基本回路-3’は、反転型主増幅回路と差動型帯域制限増幅回路を接続した構成になっているが、基本回路-1~基本回路2’に示したような直列接続ではなく、並列接続になっている。
【0116】
図7(A)に係る基本回路-3’は、
図6(A)に係る基本回路-3に対して、主増幅回路と帯域制限増幅回路を入替え、さらに帯域制限増幅回路を差動型帯域制限増幅回路に変更した構成となっている。
【0117】
必要があれば、基準電位に接続されている演算増幅器Umの非反転入力を、増幅回路全体の非反転入力として使用することも可能であるが、-Vinが接続されている増幅回路全体の反転入力とは入力インピーダンスが異なるため、そのまま差動入力として使用できるものではない。
【0118】
基本回路-3’の差動型帯域制限増幅回路は、基本的に、反転型帯域制限増幅回路の変形と同様である。
図7(B)は、主増幅回路がなく、非反転入力が基準電位に接続されている場合の、差動型帯域制限増幅回路変形の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi
dを表しており、抵抗Rgi
dと抵抗Rfi
dの抵抗値が同じ場合の単一利得周波数はf
Ti
dであり、演算増幅器Ui
d単体における単一利得周波数はf
T’i
dである。また、直流開ループ利得はA
OLi
dであり、演算増幅器Ui
dの開ループの単一利得周波数はf
T’i
dである。
【0119】
抵抗Rgidと抵抗Rfidの抵抗値が同じ場合、fTidからfT’idの間のGCLidは0dBとなり、単一利得周波数fTidはRgidとCfidによって式(9)のように表すことができる。
【0120】
【0121】
またカットオフ周波数fcidは、単一利得周波数fTidと直流開ループ利得AOLidによって、式(10)のように表すことができる。
【0122】
【0123】
なお抵抗Rgidと抵抗Rfidの抵抗値が異なる場合、fTidやfT’idの周波数は(Rgid/Rfid)倍になる。(Rfid>Rgidのときは周波数が下がる。)この結果、単一利得周波数fTidは、RfidとCfidによって式(11)のように表すことができる。
【0124】
【0125】
またfTidからfT’idの間の周波数におけるGCLidは、0dBの(Rfid/Rgid)倍になるので、式(12)のように表すことができる。
【0126】
【0127】
反転型主増幅回路の利得-周波数特性は、他の基本回路の反転型主増幅回路と同様のため、
図7(C)は
図2(C)や
図4(C)と同様である。また、増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性も、反転型帯域制限増幅回路を有する基本回路と同様のため、
図7(D)は
図2(D)や
図4(D)と、ほぼ同様である。よって、
図7(D)の図の説明や具体例は省略する。
【0128】
増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBになるまで20dB/ディケードを維持するためには、fT’idがfTmよりも高い周波数であることが必要となる点も、基本回路-1などと同様である。
【0129】
<1.7 基本回路要素の組み合わせ>
【0130】
以上に示した基本回路は、各種の主増幅回路と各種の帯域制限増幅回路(総称して「基本回路要素」という)の組み合わせと考えることができるので、まず、基本回路要素を列挙する。
【0131】
図8(A)は反転型主増幅回路を示しており、
図8(B)は非反転型主増幅回路を示しており、
図8(C)は差動型主増幅回路を示している。
【0132】
図9(A)は反転型帯域制限増幅回路を示しており、
図9(B)は非反転型帯域制限増幅回路を示しており、
図9(C)は反転型帯域制限増幅回路の変形を示しており、
図9(D)は差動帯域制限増幅回路を示している。
【0133】
基本回路は前述のように、主増幅回路と帯域制限増幅回路が各1つ(計2つ)の増幅回路(基本回路要素)の組み合わせで構成されている。2つの基本回路要素を入力側と出力側と表現するとき、これらの組み合わせは表1のようになる。
【0134】
【0135】
表1の中、備考欄に◎付きで示されている回路は、前述の各基本回路である。備考欄に○付きで示されている回路は、基本回路の変形回路として組み合わせ可能であることを示している。
【0136】
一方、※1~※3は、各々下記の理由によって、組み合わせ不可能である(全体として、前述の基本回路の条件を満たす増幅回路としては動作できない)ことを示している。
※1:増幅回路全体における反転入力がないので、全体として負帰還をかけることができない。
※2:増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBとなる周波数まで20dB/ディケードを維持できず、途中の周波数以上で40dB/ディケードになってしまう。
※3:出力側が差動型のときは、入力側は反転型であることが必要。
【0137】
<2.増幅回路の直流開ループ利得を増強するための応用回路>
【0138】
基本回路要素が3個の場合は、入力側/中間/出力側について表1のような組み合わせを表にして、一例として前述のような条件や制限などによって使用できない組み合わせを排除すれば、2個の場合と同様に利用可能な回路を抽出することができる。基本回路要素を4個以上とする場合も、同様である。
【0139】
組み合わせ可能な条件をまとめると、下記のようになる。
(1)主増幅回路及び帯域制限増幅回路のいずれか又は両方を、合計で複数個備えており、各々が積み重ねられている。
(2)増幅回路全体の反転入力から出力までの経路には、反転型が奇数個存在する。(一例として基本回路-3について見ると、基本回路-3の増幅回路全体の反転入力は差動型主増幅回路の反転入力に接続されており、その出力が増幅回路全体の出力となっている。即ち、差動型主増幅回路の反転入力→出力の、反転型1個になっている。また基本回路-3の増幅回路全体の反転入力は、反転型帯域増幅回路の入力(抵抗Rgiの一端)に接続されており、その出力は差動型主増幅回路の非反転入力に接続されており、その出力が増幅回路全体の出力となっている。即ち、反転型帯域増幅回路による反転型1個と、差動型主増幅回路の非反転入力→出力による非反転型1個になっている。)
(3)増幅回路全体としての非反転入力を備える場合は、非反転入力から出力までの経路には、反転型が存在しないか偶数個存在する。
(4)非反転型は、いずれの経路にも任意の個数含まれていてよい。
(5)差動型のいずれか一方の入力には反転型の出力が接続され、他方の入力は当該反転型の入力と共通接続される。(基本回路-3は、増幅回路全体として反転のため、差動型の非反転入力には反転型の出力が接続され、反転入力は当該反転型の入力と共通接続されている。一方、増幅回路全体として非反転とする場合は、差動型の非反転入力と反転入力を入れ替えればよい。)
(6)反転型帯域制限増幅回路は、出力側の増幅器が差動型である場合に、出力側の増幅器と並列接続する場合にのみ使用可能である。(基本回路-3参照。)
(7)反転型帯域制限増幅回路は、複数段構成にすることが可能である。(後述の応用回路-2参照。)
(8)増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBとなる周波数まで20dB/ディケードを維持する場合は、最もfcが高い増幅器のfTは、他の増幅器のfT’よりも低いことが必要。(fcはfcm、fcm’、fci、fci’、fci”、fcidのような、fcの後に続く全てのバリエーションを含む。同様に、fTやfT’も、その後に続く全てのバリエーションを含む。)
【0140】
以降に、基本回路要素が3個の特徴的な回路を「応用回路」として、3種類例示するが、これら以外の利用可能な回路が多く存在することはもちろんである。
【0141】
<2.1 応用回路-1>
【0142】
前述の基本回路の応用例のひとつとして、
図10(A)に、基本回路-1と基本回路-3の組み合わせによる開ループ利得を増強した増幅回路を示している。基本回路要素で言うと、入力側から出力側に向けて、非反転型帯域制限増幅回路、反転型帯域制限増幅回路、差動型主増幅回路で構成されている。以降、このような回路を、「応用回路-1」と称する。
【0143】
抵抗Rgi’、キャパシタCfi’と演算増幅器Ui’が積分回路を構成してその帯域を制限し、非反転型帯域制限増幅回路となっており、この帯域制限増幅回路の出力が主増幅回路の反転入力に接続されている。これらの点は、基本回路-1と同様である。
【0144】
主増幅回路の反転入力はまた、抵抗Rgi、キャパシタCfiと演算増幅器Uiからなる、反転型帯域制限増幅回路の入力にも接続されており、この反転型帯域制限増幅回路の出力が主増幅回路の非反転入力に接続されている。これらの点は、基本回路-3と同様である。
【0145】
図10(B)は、非反転型帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi’を表しており、カットオフ周波数はfci’であり、その単一利得周波数はf
Ti’であり、直流開ループ利得はA
OLi’であり、演算増幅器Ui’の開ループにおける単一利得周波数はf
T’i’である。基本回路-3と同様、単一利得周波数f
Ti’よりも低い周波数では、周波数の下降に連れてG
CLi’が20dB/ディケードで上昇するが、A
OLi’に達するとそれ以上は上昇しない。また、f
Ti’よりも高く、f
T’i’よりも低い周波数では、G
CLi’は0dB一定となる。さらに、f
T’i’よりも高い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLi’が20dB/ディケードで下降する。
【0146】
図10(C)は、反転型帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLiを表しており、そのカットオフ周波数はfciであり、単一利得周波数はf
Tiであり、直流開ループ利得はA
OLiである。基本回路-3の反転型帯域制限増幅回路と同様、カットオフ周波数fciよりも高い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLiが20dB/ディケードで低下する。
【0147】
図10(D)は、主増幅器Um
dの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表している。直流開ループ利得はA
OLm
d、カットオフ周波数はfcm
d、単一利得周波数はf
Tm
dとなっている。
【0148】
反転型帯域制限増幅回路のf
Tiと主増幅回路のfcm
dが一致するように抵抗RgiとキャパシタCfiが選択され、かつ、非反転型帯域制限増幅回路のf
Ti’と反転型帯域制限増幅回路のfciが一致するように抵抗Rgi’とキャパシタCfi’が選択されると、
図10(A)の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は、
図10(E)のようになる。即ち、主増幅回路の利得-周波数特性の上に反転型帯域制限増幅回路の利得-周波数特性が積み重ねられ、さらにその上に非反転型帯域制限増幅回路の利得-周波数特性が積み重ねられたように動作する。この結果、
図10(A)の増幅回路全体における直流開ループ利得はA
OLm
d+A
OLi+A
OLi’に増強される。
【0149】
なお、増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性が0dBになるまで20dB/ディケードを維持するためには、
図10(B)や、
図10(D)、
図10(E)のように、f
T’i’>f
Tm
dとすることが必要である。
【0150】
<2.2 応用回路-2>
【0151】
前述の基本回路の別の応用例として、基本回路-3において、反転型帯域制限増幅回路を複数用いて直流開ループ利得を増強した増幅回路を、
図11(A)に示している。基本回路要素で言うと、入力側から出力側に向けて、複数(2個)の反転型帯域制限増幅回路と、差動型主増幅回路で構成されている。以降、この基本回路を「応用回路-2」と称する。
【0152】
主増幅器Umdの反転入力は、抵抗Rgi1、キャパシタCfi1と演算増幅器Ui1からなる反転型帯域制限増幅回路(応用回路-2の説明において、「帯域制限増幅回路-1」と称する)の入力にも接続されており、帯域制限増幅回路-1の出力がUmdの非反転入力に接続されている。これらの点は、基本回路-3と同様である。
【0153】
主増幅器Umdの反転入力は、さらに、抵抗Rgi2、キャパシタCfi2と演算増幅器Ui2からなるもう一つの反転型帯域制限増幅回路(応用回路-2の説明において、「帯域制限増幅回路-2」と称する)の入力にも接続されている。帯域制限増幅回路-2の出力は、Ui1の非反転入力に接続されている。また、Ui2の非反転入力は、基準電位に接続されている。
【0154】
図11(B)は、帯域制限増幅回路-2の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi2を表しており、その単一利得周波数はf
Ti2であり、直流開ループ利得はA
OLi2である。カットオフ周波数fci2よりも高い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLi2が20dB/ディケードで低下する。なお、ここでは、帯域制限増幅回路-2は、最も低い周波数域を担当することとする。
【0155】
図11(C)は、帯域制限増幅回路-1の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi1を表しており、その単一利得周波数はf
Ti1であり、直流開ループ利得はA
OLi1である。カットオフ周波数fci1よりも高い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLi1が20dB/ディケードで低下する。なお、ここでは、帯域制限増幅回路-1は、主増幅回路よりも低く帯域制限増幅回路-2よりも高い周波数域を担当することとする。
【0156】
図11(D)は、主増幅器Um
dの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表している。直流開ループ利得はA
OLm
d、カットオフ周波数はfcm
d、単一利得周波数はf
Tm
dとなっている。
【0157】
帯域制限増幅回路-1のf
Ti1と主増幅回路のfcm
dが一致するように抵抗Rgi1とキャパシタCfi1が選択され、かつ、帯域制限増幅回路-2のf
Ti2と帯域制限増幅回路-1のfci1が一致するように抵抗Rgi2とキャパシタCfi2が選択されると、
図11(A)の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は、
図11(E)のようになる。即ち、主増幅回路の利得-周波数特性の上に帯域制限増幅回路-1の利得-周波数特性が積み重ねられ、さらにその上に帯域制限増幅回路-2の利得-周波数特性が積み重ねられたように動作する。この結果、
図11(A)の増幅回路全体における直流開ループ利得はA
OLm
d+A
OLi1+A
OLi2に増強される。具体的な一例として、Um
d、Ui1及びUi2の直流開ループ利得が各々80dBの場合には、増幅回路全体の直流開ループ利得は240dBに増強される。
【0158】
ここでは、2つの反転型帯域制限増幅回路を使用する例を示したが、さらに直流開ループ利得を積み重ねるために、3つ以上の反転型帯域制限増幅回路を使用することも可能である。
【0159】
また、応用回路-2の複数の反転型帯域制限増幅回路を用いる回路や方法は、基本回路-3に適用できるだけでなく、応用回路-1などの反転型帯域制限増幅回路の部分にも適用することができる。
【0160】
<2.3 応用回路-3>
【0161】
前述の基本回路の別の応用例として、基本回路-2’と、基本回路-3’の変形回路の組み合わせによる回路を、
図12(A)に示している。基本回路要素で言うと、入力側から出力側に向けて、非反転型主増幅回路、反転型帯域制限増幅回路の変形、差動型帯域制限増幅回路で構成されている。以降、この基本回路を「応用回路-3」と称する。
【0162】
主増幅器Um’の出力は、差動型帯域制限増幅回路の入力である抵抗Rgidの一端に接続されており、この点は、基本回路-2’と同様である。
【0163】
主増幅器Um’の出力は、さらに、反転型帯域制限増幅回路の変形の入力である抵抗Rgi”の一端に接続されており、この反転型帯域制限増幅回路の変形の出力は、Uidの非反転入力に接続されている。この点は、基本回路-3’の反転型主増幅回路を反転型帯域制限増幅回路の変形に置き換えたものと考えることができる。
【0164】
図12(B)は、Rgi”=Rfi”のときの反転型帯域制限増幅回路の変形の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi”を表しており、カットオフ周波数はfci”であり、単一利得周波数はf
Ti”であり、直流開ループ利得はA
OLi”であり、演算増幅器Ui”単体(抵抗Rgi”やキャパシタCfi”のような外付け素子がない場合)における単一利得周波数はf
T’i”である。カットオフ周波数fci”よりも高く単一利得周波数はf
Ti”よりも低い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLi”が20dB/ディケードで低下し、f
Ti”よりも高くf
T’i”よりも低い周波数では0dBを維持する。なお、ここでは、反転型帯域制限増幅回路の変形は、最も低い周波数域を担当することとする。
【0165】
図12(C)は、Rgi
d=Rfi
dのときの差動型帯域制限増幅回路の閉ループにおける利得-周波数特性G
CLi
dを表しており、カットオフ周波数はfci
dであり、単一利得周波数はf
Ti
dであり、直流開ループ利得はA
OLi
dであり、演算増幅器Ui
d単体における単一利得周波数はf
T’i
dである。カットオフ周波数fci
dよりも高い周波数では、周波数の上昇に連れてG
CLi
dが20dB/ディケードで低下し、f
Ti
dよりも高くf
T’i
dよりも低い周波数では0dBを維持する。なお、ここでは、差動型帯域制限増幅回路は、主増幅回路よりも低く反転型帯域制限増幅回路の変形よりも高い周波数域を担当することとする。
【0166】
Rgi”≠Rfi”やRgid≠Rfidのときについては、前述の基本回路-1’に係る式(5)、式(6)やそれらの説明の通りなので、説明を省略する。
【0167】
図12(D)は、主増幅器Um’の開ループの利得-周波数特性G
OLm’を表している。直流開ループ利得はA
OLm’、カットオフ周波数はfcm’、単一利得周波数はf
Tm’となっている。
【0168】
差動型帯域制限増幅回路のf
Ti
dと主増幅回路のfcm’が一致するように抵抗Rgi
dとキャパシタCfi
dが選択され、かつ、反転型帯域制限増幅回路の変形のf
Ti”と差動型帯域制限増幅回路のfci
dが一致するように抵抗Rgi”とキャパシタCfi”が選択されると、
図12(A)の増幅回路全体における開ループの利得-周波数特性は、
図12(E)のようになる。即ち、主増幅回路の利得-周波数特性の上に差動型帯域制限増幅回路の利得-周波数特性が積み重ねられ、さらにその上に反転型帯域制限増幅回路の変形の利得-周波数特性が積み重ねられたように動作する。この結果、
図12(A)の増幅回路全体における直流開ループ利得はA
OLm’+A
OLi
d+A
OLi”に増強される。具体的な一例として、Um’、Ui
d及びUi”の直流開ループ利得が各々80dBの場合には、増幅回路全体の直流開ループ利得は240dBに増強される。
【0169】
ここでは、反転型帯域制限増幅回路の変形を使用する例を示したが、さらに直流開ループ利得を積み重ねるために、2つ以上の反転型帯域制限増幅回路の変形を使用することも可能である。(応用回路-2を参照。)
【0170】
<3.増幅回路の直流開ループ利得を増強するための回路の変形等>
【0171】
以下、基本回路や応用回路を含む本発明の回路に共通して適用可能な変形等について記載する。
【0172】
これらの変形等は原則として、適用対象の各回路や他の変形等と、自由に組み合わせて適用できる。
【0173】
<3.1 主増幅回路の直流利得や帯域の制限>
【0174】
前述の基本回路や応用回路の全てにおいて、主増幅回路が開ループである場合を例示していた。ここでは、主増幅回路の直流利得や帯域を制限する変形について説明する。
【0175】
一例として基本回路-3において、
図6(C)に示している主増幅回路の利得-周波数特性を参照する。
図6(C)は、帯域制限増幅回路がなく、非反転入力が基準電位に接続されている場合の、主増幅器Um
dの開ループの利得-周波数特性G
OLm
dを表している。直流開ループ利得はA
OLm
dとなっている。
【0176】
図13(A)は、
図6(A)の主増幅回路に利得抵抗Rgm
dと帰還抵抗Rfm
dを追加したものである。A
OLm
dは、Um
dの個体差による誤差を有する場合があり、さらに温度変化等の影響を受けてその値が変化する場合もある。直流利得をより安定させて一定の値に近づけるためには、主増幅回路にRgm
dとRfm
dを追加することによって、利得を制限することができる。一例として20dB以上直流開ループ利得A
OLm
dを下げて十分な利得制限を行う場合において、直流閉ループ利得をA
CLm
dとすると、式(13)のように表すことができる。(前述の通り、利得の正負は考慮せず、利得の絶対値で考える。)
【0177】
【0178】
ACLmdは抵抗値の比によって決まるため、より安定した直流利得が得られる。通常、半導体素子の性能よりも、抵抗素子の抵抗値の方が、格段に安定している。
【0179】
図13(A)において利得の制限幅を可変(調整)する場合は、Rgm
dとRfm
dのいずれか又は両方の抵抗値を可変とすればよい。一例として、Rgm
dやRfm
dのいずれかを、固定抵抗と可変抵抗の直列回路とすればよい。
【0180】
図13(B)は、
図13(A)によって利得制限した場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dの例を示している。この場合、開ループ時よりもカットオフ周波数fcm
dは上昇するが、単一利得周波数f
Tm
dは変化しない。
【0181】
図13(C)は、
図4(A)の主増幅回路に利得抵抗Rgm
dと帰還容量Cfm
dを追加したものである。主増幅器Um
dの開ループの単一利得周波数f
Tm
dやカットオフ周波数fcm
dも、Um
dの個体差による誤差を有する場合があり、さらに温度変化等の影響を受けてその値が変化する場合もある。f
Tm
dやfcm
dをより安定させて一定の値に近づけるためには、主増幅回路にRgm
dとCfm
dを追加することによって、帯域を制限することができる。帯域制限を行った場合の単一利得周波数f
Tm
dは、Rgm
dとCfm
dの値によって、式(14)のように表すことができる。
【0182】
なお、利得抵抗Rgmdと帰還容量Cfmdを追加した主増幅回路は、回路構成としては反転型帯域制限増幅回路と同様である。fTmdやfcmdをより安定させて一定の値に近づけることを目的とする、比較的少ない帯域制限の場合は主増幅回路と考えればよい。一方、他の増幅回路と積み重ねを行うために比較的大きな帯域制限を行う場合は、反転型帯域制限増幅回路と考えればよい。これらは厳密に区別する必要はなく、設計の都合によって適宜解釈すればよい。
【0183】
【0184】
一例として10倍(1ディケード)以上の帯域制限を行う場合、帯域制限を行った場合のfTmdは、RgmdとCmdによって式(14)のように決まるため、より安定した帯域が得られる。通常、容量素子の容量値も、半導体素子の性能よりもかなり安定している。
【0185】
図13(C)において帯域の制限幅を可変する場合は、Rgm
dとCfm
dのいずれか又は両方の抵抗値を可変とすればよい。一例として、Rgm
dを固定抵抗と可変抵抗の直列回路としたり、Cfm
dを固定容量と可変容量の並列回路とすればよい。
【0186】
図13(D)は、
図13(C)によって帯域制限した場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dを示している。この場合は、開ループ時と比して、カットオフ周波数fcm
dと単一利得周波数f
Tm
dは、共に低くなる。
【0187】
図13(E)は、
図2(A)の主増幅回路に利得抵抗Rgm
d、帰還抵抗Rfm
dと、帰還容量Cfm
dを追加したものであり、利得制限と帯域制限の両方を同時に実現している。主増幅器Um
dの反転入力に利得抵抗Rgm
dの一端、帰還抵抗Rfm
dの一端、及び、帰還容量Cfm
dの一端を接続し、主増幅器Um
dの出力に帰還抵抗Rfm
dの他端及び帰還容量Cfm
dの他端を接続している。直流閉ループ利得A
CLm
dは前述の式(13)、単一利得周波数f
Tm
dは前述の式(14)で表すことができる。
【0188】
図13(E)において、利得抵抗Rgm
dを可変とすると利得と帯域の制限幅の両方が変化し、帰還抵抗Rfm
dを可変とすると利得の制限幅だけが変化し、帰還容量Cfm
dを可変とすると帯域の制限幅だけが変化する。よって、利得の制限幅と帯域の制限幅を独立して可変したい場合は、Rfm
dとCfm
dを可変とすることが好ましいが、これに限定するものではない。一般的に入手容易な可変容量は数十pF以下なので、Cfm
dが一例として千pF以上の場合は、可変幅が不足する場合がある。このような場合は、Rgm
dとRfm
dを可変とし、Rgm
dで所望の帯域制限に調整した後でRfm
dで所望の利得制限に調整することも可能である。
【0189】
図13(F)には、
図13(E)の場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dの例を示している。利得制限と帯域制限の両方を行う場合、開ループ時と比して、カットオフ周波数fcm
dは利得制限によって上昇し帯域制限によって下降するため、fcm
dが上昇する場合も下降する場合も変化しない場合もあるが、単一利得周波数f
Tm
dは下降する。
【0190】
図13(G)は、
図4(A)の主増幅回路に利得抵抗Rgm
d、帰還抵抗Rfm
d、抵抗Rfcm
dと、帰還容量Cfm
dを追加したものであり、
図13(E)と同様、利得制限と帯域制限の両方を同時に実現できる。主増幅器Um
dの反転入力に抵抗Rfcm
dの一端及び帰還容量Cfm
dの一端を接続し、抵抗Rfcm
dの他端に利得抵抗Rgm
dの一端及び帰還抵抗Rfm
dの一端を接続し、帰還容量Cfm
dの他端に帰還抵抗Rfm
dの他端及び主増幅器Um
dの出力を接続している。
【0191】
図13(G)の場合、(Rgm
dとRfm
dの並列抵抗)≪Rfcm
dとする必要がある。又は、
図13(H)のように、利得抵抗Rgm
dの一端と抵抗Rfcm
dの他端との間にバッファアンプBufを追加すれば、このような抵抗値の関係にする必要はない。
図13(H)のBufの利得はBとし、
図13(G)ではB=1とする。このときの直流閉ループ利得A
CLm
dは式(15)のように表すことができ、カットオフ周波数fcm
dは式(16)のように表すことができ、単一利得周波数f
Tm
dは式(17)のように表すことができる。なお、式(16)2行目の簡略化した式はA
CLm
dが1よりも十分に大きいとき、一例としてA
CLm
dが100以上のときである。
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
図13(G)や
図13(H)において、Rgm
dとRfm
dの一方又は両方を可変とすると利得の制限幅だけが変化し、Rfcm
dとCfm
dの一方又は両方を可変とすると帯域の制限幅だけが変化する。一例として、Rgm
dとRfcm
dを可変にすれば、利得の制限幅と帯域の制限幅を、各々独立して可変できる。
【0196】
図13(G)や
図13(H)によって利得制限と帯域制限を行った場合の主増幅器Um
dの閉ループの利得-周波数特性G
CLm
dは、前述の
図13(F)と同様である。
【0197】
式(16)からわかるように、カットオフ周波数fcmdは、抵抗fcmdと帰還容量Cfmdで決まる周波数に対して、直流閉ループ利得ACLmd分の一と低くなる。また、バッファアンプBufの利得Bが1以上の場合は、その分、カットオフ周波数fcmdが高くなると共に、式(17)からわかるように単一利得周波数fTmdも同様に高くなる。
【0198】
ここでは、基本回路-3(
図6(A))の主増幅回路を例として、利得制限や帯域制限を行う場合を例示したが、他の基本回路や、応用回路を含み、全ての主増幅回路に対しても同様に、利得制限や帯域制限を行うことができる。即ち、主増幅回路の利得制限や帯域制限は、主増幅回路を備えている本発明の全ての回路に適用可能である。
【0199】
<3.2 帯域制限増幅回路の直流利得制限や帯域の調整と、総合直流利得の可変や切替>
【0200】
主増幅回路の直流利得の制限や帯域の制限の回路手法は、前述の各種の帯域制限増幅回路についても同様に適用可能である。
【0201】
まず、帯域制限増幅回路の帯域制限について説明する。
【0202】
本発明のように利得-周波数特性を積み重ねる場合は、まず、積み重ねの基本部分となる主増幅回路の帯域を安定させることが必要なので、主増幅回路に帯域制限をかけることが望ましい。さらに、主増幅回路の直流利得が変化するとそれに伴ってカットオフ周波数も変化するので、主増幅回路には、帯域制限だけでなく利得制限をかけて帯域を安定させることも望ましい。
【0203】
帯域制限と利得制限によって主増幅回路の利得と帯域を安定させた上で、さらに帯域制限増幅回路の帯域を調整して利得-周波数特性が全体として直線的になるように積み重ねるためには、帯域制限増幅回路の帯域制限の可変も必要となる。
【0204】
帯域制限増幅回路は帰還容量を含んでいるため、帰還抵抗だけを含む
図13(A)の主増幅回路の回路方式は適用外である。帰還容量を含んでいる
図13(C)の主増幅回路は、基本的に帯域制限増幅回路の回路方式と同様なので、帯域制限の可変も同様の考え方を適用可能である。
【0205】
帰還容量と帰還抵抗を含んでいる
図13(E)の主増幅回路の回路方式や、さらに抵抗Rfcm
dを含んでいる
図13(G)や
図13(H)の主増幅回路の回路方式を、帯域制限増幅回路の回路に適用することも可能であり、帯域制限の可変も同様の考え方も同様に適用可能である。
図13(G)や
図13(H)の主増幅回路は、利得と帯域を独立して可変することが容易なので、より好ましい場合がある。
【0206】
前述の通り、式(16)からわかるように、カットオフ周波数fcm
dは、抵抗fcm
dと帰還容量Cfm
dで決まる周波数に対して、直流閉ループ利得A
CLm
d分の一と低くなる。本発明における帯域制限増幅回路のカットオフ周波数は特に低くなる場合が多く、
図13(E)の主増幅回路の回路方式を帯域制限増幅回路に適用すると、帰還容量Cfiが大きくなりがちである。帰還容量Cfiが大きいときにCfiを可変しようとすると、並列に接続するトリマコンデンサのような可変容量も大きくする必要が生じるが、市販されているトリマコンデンサの最大容量は一般的に数十pFまでのため、十分な可変量が得られない場合がある。このような場合に
図13(G)や
図13(H)の主増幅回路の回路方式を、帯域制限増幅回路の回路に適用すると、直流閉ループ利得A
CLm
dの分、帰還容量Cfiを小さくすることができるので、市販されているトリマコンデンサによって十分な可変量を確保できるという効果がある。
【0207】
次に、利得制限について説明する。
【0208】
帯域制限増幅回路の利得制限や可変を行う場合も、帰還容量と帰還抵抗を含んでいる
図13(E)の主増幅回路や、さらに抵抗Rfcm
dを含んでいる
図13(G)や
図13(H)の主増幅回路を、帯域制限増幅回路の回路に適用することが可能であり、利得制限の可変も同様の考え方も同様に適用可能である。
図13(G)や
図13(H)の主増幅回路は、利得と帯域を独立して可変することが容易なので、より好ましい場合がある。
【0209】
帯域制限増幅回路を一つで構成する場合、主増幅回路の直流利得が一定で安定していれば、帯域制限増幅回路の利得によって全体の直流閉ループ利得が決まる。言い換えると、全体の直流閉ループ利得を可変したい場合は、帯域制限増幅回路の利得制限によって利得を可変することが必要となる。
【0210】
例示した各種の応用回路のように帯域制限増幅回路を複数で構成する場合は、最も低い周波数を担当する帯域制限増幅回路によって全体の直流利得を可変し、他の帯域制限増幅回路の利得や帯域は固定で安定させることによって、安定して増幅回路全体の直流利得を可変できるようにすることが好ましい。一例として、最も低い周波数を担当する帯域制限増幅回路には
図13(G)や
図13(H)の主増幅回路の回路方式を適用して利得をある程度広範囲に可変できるようにし、他の周波数を担当する帯域制限増幅回路には
図13(E)の主増幅回路を適用して主増幅回路に積み重なるように半固定的な可変を行うというような使い分けも考えられる。
【0211】
主増幅回路及び帯域制限増幅回路の利得や帯域は、前述のような様々な可変方式を用いて連続的に可変するだけでなく、要求される性能に合わせて抵抗素子や容量素子をスイッチで切り替えることによって不連続的に可変することもでき、さらに連続的な可変を併用することも有用である。
【0212】
<3.3 入力バッファの追加>
【0213】
図14(A)には、基本回路-1の入力に、バッファアンプBufを追加した例を示している。基本回路-1(
図2(A))の入力はUi’の非反転入力に接続されているため、入力インピーダンスが高いので、入力インピーダンスが低いことが問題になる場合は少ない。しかし、より入力インピーダンスの高いバッファアンプを入力に追加することによって、さらに入力インピーダンスを高くすることも可能である。
【0214】
図14(B)には、基本回路-3の入力に、バッファアンプBufを追加した例を示している。基本回路-3(
図6(A))の入力インピーダンスはRgiが支配的となり、入力インピーダンスが低いことが問題になる場合がある。このような場合は、入力インピーダンスの高いバッファアンプを入力に追加することによって、入力インピーダンスを高くすることができ、効果的である。
【0215】
図14(A)や
図14(B)のようなバッファアンプBufの追加は、基本回路や応用回路を含む本発明の回路に広く適用可能である。さらに、前述のように利得制限や帯域制限のような変形や、後述のその他の変形を追加した場合も同様に、適用可能である。
【0216】
このようなバッファアンプBufの一例として、
図14(C)のように演算増幅器Ubの出力と反転入力を接続した回路が挙げられる。このような回路は、ボルテージフォロアと呼ばれており、Ubの出力と反転入力の間に他の素子を接続する場合もある。Ubの開ループ利得が十分に大きい場合は、Bufの利得は1になる。
【0217】
バッファアンプBufには、1よりも大きい利得を持たせることも可能であり、増幅回路全体の利得をその分増強できる。このようなバッファアンプBufの一例として、
図14(D)のような演算増幅器Ubを用いた非反転増幅器が挙げられる。Ubの開ループ利得が十分に大きい場合は、Bufの利得は{1+(Rfb/Rgb)}となる。
【0218】
必要があれば、バッファアンプBufの出力に図不示のアッテネータを追加することによって、その利得を低減させることも可能である。
【0219】
以上説明した基本回路、応用回路や、例示した変形は、さらに様々な変形が可能である。帯域制限増幅回路の出力を主増幅回路の出力に加算することによって、帯域制限増幅回路の利得-周波数特性や主増幅回路の利得-周波数特性を積み重ねる動作をする回路は全て、本発明の技術的思想の範囲内である。
【0220】
<3.4 その他の回路の変形等>
【0221】
その他、本発明と併用可能な変形の例を下記に列挙する。
【0222】
特許文献3に示されている、等価的に端子間容量をゼロとした抵抗を実現する帰還回路は、本発明における各種の帰還抵抗として自由に適用可能であり、適用すると好適な場合がある。
【0223】
特許文献3に示されている、等価的に小容量とすることができ、かつ調整可能な容量を実現する帰還回路(第7の実施の形態)も、本発明における各種の帰還容量として自由に適用可能であり、適用すると好適な場合がある。
【0224】
増幅器を示す三角記号は、一般的には、集積回路による演算増幅器やバッファアンプを示す場合が多いが、ディスクリート素子で構成された増幅器なども含むものとする。
【0225】
<4.電流増幅回路への適用>
【0226】
<4.1 電流増幅回路への適用>
【0227】
図15には、基本回路-3に帰還抵抗Rfを接続して、電流増幅回路とした例を示している(
図1(D)参照)。この場合、抵抗Rgiは帰還抵抗Rfよりも十分に大きい必要があるが、
図14(B)のようにバッファアンプを用いれば、抵抗Rgiは制約を受けない。
【0228】
帰還回路Rfによる電流増幅回路は、基本回路-3に限定するものではなく、基本回路や応用回路を含む本発明の回路に広く適用可能であり、さらに前述の各種変形を行った場合にも、同様に適用可能である。
【0229】
基本回路-3の-Vinは演算増幅器の反転入力に相当し、Voutから帰還抵抗Rfを介して負帰還をかけることによって、基本回路-3は
図15のように電流増幅器として動作するようになる。この場合、-Vinは電流増幅器の電流入力として機能するようになるので、-Iinに名称が変わっている。
【0230】
括弧内に示している帰還容量Cfは、必要に応じて追加可能な素子である。電流増幅回路の周波数特性は、-Iinと基準電位の間に接続される容量Csの影響を受ける。即ち、Csの値によっては、周波数特性にピークを持ったり、周波数特性の肩特性がなだらかになりすぎたりする場合がある。さらに周波数特性のピークが大きい場合には、回路が発振してしまう場合もある。このようなCsを補償するためには、帰還容量Cfとして意図的に容量素子を接続する場合がある。なお、Csは、電流増幅回路の入力に接続するセンサやケーブルによって異なる場合があるので、Csの違いや変化に合わせてCfを調整したり切り替えたりする必要が生じる場合もある。
【0231】
<4.2 電流増幅回路の入力インピーダンス>
【0232】
図16(A)に、演算増幅器Uを用いた一般的な電流増幅回路(IVアンプ)の基本的な回路を示す。演算増幅器Uの出力と反転入力の間には、帰還抵抗Rfと帰還容量Cfの並列回路が接続されており、Cfによって帯域制限されている。Cfは、意図的に接続する容量素子に加えて、Rfの電極間容量、浮遊容量も含んでいる。
【0233】
図16(B)には、Cfによって帯域制限された利得G
OLの利得-周波数特性を示している。直流から低周波領域において、G
OLはUの直流開ループ利得A
OLとなり、カットオフ周波数fcよりも高い周波数においては20dB/ディケード(≒6dB/オクターブ)で降下し、単一利得周波数はf
Tである。なお、A
OLは1よりも十分に大きいとし、これを前提として下記の式(18)と式(19)を簡略化している。
【0234】
図16(C)には、この電流増幅回路の入力インピーダンスZinを示している。
【0235】
直流から低周波領域(fcよりも低い周波数領域)における入力インピーダンスZinLは、RfとA
OLによって式(18)のように表すことができる。
図16(C)には、「Rfで決まる領域」と表示している。
【0236】
【0237】
理想的な電流増幅回路の入力インピーダンスはゼロである。即ち、式(18)からわかるように、AOLが大きければ大きいほど、直流から低周波領域において理想的な電流増幅回路を実現できることになる。本発明は等価的に大きなAOLの増幅回路を実現するものなので、より理想的に近い電流増幅回路を実現することができるという効果を有している。
【0238】
一方、fcよりも高い周波数領域における入力インピーダンスZinHは、Cfとf
Tによって式(19)のように表すことができる。(
図16(C)には、「Cfで決まる領域」と表示している。)Cfを調整したり切り替えたりすると、ZinHが
図16(C)のように変化する。
【0239】
【0240】
ここで、ZinL=ZinHとなるようにすれば、fTよりも低い周波数においては、電流増幅回路の入力インピーダンスZinは周波数によらず一定となる。より高い周波数でfTに近づくと、Zinは下がり始める。周波数の上昇に従いインピーダンスが上昇する場合はインダクタンス性、周波数の上昇に従いインピーダンスが下降する場合は容量性であり、周波数が変化してもインピーダンスが変化しないのは抵抗性である。即ち、入力インピーダンスZinが周波数によらず一定というのは、Zinが抵抗性に見えるということであり、望ましい特性である。
【0241】
式(18)と式(19)から、ZinL=ZinHとなる条件は式(20)のように表すことができる。
【0242】
【0243】
ここでは、演算増幅器Uを用いた一般的な電流増幅回路の入力インピーダンスについて説明したが、これらの内容は、本発明による増幅回路を用いた電流増幅回路についても同様である。しかし、演算増幅器UのfTやAOLは一般的に固定されており、しかも温度等によって変化してしまう場合が多い。これに対して本発明による増幅回路では前述のように、fTやAOLを可変とすることが容易である。即ち、本発明による増幅回路を用いれば、周波数によらず一定入力インピーダンスZinの電流増幅回路を容易に実現できるという効果を有している。
【0244】
<4.2 入力インピーダンスが純抵抗に見える電流増幅回路>
【0245】
前述のように、Cfを調整したり切り替えたりする場合に、ZinL=ZinHを保ってZinを周波数によらず一定にするためには、式(20)から分かるように、Cfに比例してAOLを変化させればよい。
【0246】
本発明は、直流開ループ利得を増強した増幅回路を実現していると同時に、増幅回路全体の直流開ループ利得A
OLだけを容易に可変できるという効果も有しているので、その具体的な一例を
図17に示す。
【0247】
図17は、基本的な回路構成は応用回路-1(
図10(A))としており、帰還抵抗Rfと帰還容量Cfを追加することによって電流増幅器(
図15)を構成している。差動型主増幅回路には、
図13(E)の利得制限と帯域制限を施しており、反転型帯域制限増幅回路にも主増幅回路と同様の回路方式の利得制限と帯域制限を施している。非反転型帯域制限増幅回路には、
図13(G)における主増幅回路と同様の回路方式の利得制限と帯域制限を施しているので、Rgi’によって利得制限を容易に可変できるようになっている。
【0248】
差動型主増幅回路の利得制限と帯域制限、反転型帯域制限増幅回路の利得制限と帯域制限、及び、非反転型帯域制限増幅回路の帯域制限は、各々、積み重ねが実現されるように調整されているものとする。この場合、増幅回路全体の直流開ループ利得AOLは、非反転型帯域制限増幅回路の利得制限の大小によって可変できる。
【0249】
一例として、-Iinと基準電位の間の容量Csに応じて帰還容量Cfを調整する場合に、Zinを周波数によらず一定にするためには、Rgi’によって増幅回路全体の直流開ループ利得AOLを調整して式(20)を満たすようにすればよい。例えば、接続するセンサによってCsが何種類か異なるような場合には、CfとRgi’を何種類か切替可能としておくことも好ましい。
【符号の説明】
【0250】
Rgmd 利得抵抗
Rfmd 帰還抵抗
Rfcmd 抵抗
Cfmd 帰還容量
Buf バッファアンプ