(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065064
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電気外科システム及びその操作方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183647
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】22204530
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・マイヤー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK19
4C160KK20
4C160KK23
4C160KK26
4C160KK36
4C160KK39
4C160KK63
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】本発明は、供給装置及び電気外科システムに関する。発生器(31)に加えて、供給装置は、交流電圧及び/又は交流電流の形態で測定信号(XM)を供給することができる測定信号源(34)を有し、測定信号(XM)から得られるインピーダンスパラメータ(P)を評価できる。スイッチ装置(51)は、複数のスイッチ状態(C1~C5)の間で切り替えることができ、異なるスイッチ状態では、評価ユニット(50)によって、異なる評価関数を実現することができる。測定信号源(34)は、作用接続部(21)における治療用電流経路(B)及び中性接続部(26、27)の間の中性電流経路(N)に測定信号を印加することができる。
【効果】測定信号(XM)によって、治療される組織(16)を分析することができるとともに、中性電極と患者との間の接触を検査又は監視することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科システム(10)のための供給装置(11)であって、
中性電極(13)のための2つの中性接続部(26、27)と、それぞれが電気外科器具(12)の1つの作用電極(23、24、25)のための少なくとも1つの作用接続部(21、22)と、を備える複数の装置接続部(20)と、
発生器周波数(fg)で発生器電圧(UG)及び/又は発生器電流(IG)を供給するための発生器(31)と、
測定周波数(fm)によって変化する測定信号(XM)を供給するための測定信号源(34)と、
前記測定信号(XM)が供給される2つの装置接続部(20)の間のインピーダンス(Z1、Z2)を示すインピーダンスパラメータ(P)を測定するための測定装置(40)と、
複数のスイッチ状態(C1、C2、C3、C4、C5)の間で切り替えることができるスイッチ装置(51)であって、第1スイッチ状態(C1)において、前記測定信号源(34)を前記2つの中性接続部(26、27)に電気的に接続し、前記測定信号源(34)を前記少なくとも1つの作用接続部(21、22)から電気的に切断し、第2スイッチ状態(C2)において、前記測定信号源(34)を少なくとも1つの前記作用接続部(21、22)と電気的に接続するスイッチ装置(51)と、
前記測定装置(40)と通信可能に接続され、測定された前記インピーダンスパラメータ(P)を評価するように構成される評価ユニット(50)と、を備える、
供給装置。
【請求項2】
単極器具(12a)の作用電極(23)を接続するための第1作用接続部(21)を備える、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項3】
双極器具(12b)の第1作用電極(24)を接続するための第1作用接続部(21)と、
前記双極器具(12b)の第2作用電極(25)を接続するための第2作用接続部(22)と、を備える、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項4】
前記測定信号源(34)が、互いに異なる複数の測定周波数(fm)で前記測定信号(XM)を供給するように構成される、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項5】
前記第1スイッチ状態(C1)において、前記評価ユニット(50)が、測定された前記インピーダンスパラメータ(P)に基づいて、前記2つの中性接続部(26、27)に接続された中性電極(13)と患者との間の電気的接触を検査するように構成される、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項6】
中性電極(13)の導電性の第1電極領域(14)を接続するための第1中性接続部(26)と、
前記中性電極(13)の導電性の第2電極領域(15)を接続するための第2中性接続部(27)と、を備える、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項7】
前記第2スイッチ状態(C2)において、前記評価ユニット(50)が、測定された前記インピーダンスパラメータ(P)に基づいて、少なくとも1つの作用接続部(21、22)に接続された電気外科器具(12)の作用電極(23、24、25)が導電性接触している組織の状態及び/又は組織の種類を決定するように構成される、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項8】
前記スイッチ装置(51)は、前記第1スイッチ状態(C1)及び前記第2スイッチ状態(C2)において、前記発生器(31)を前記測定信号源(34)から電気的に切断する、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項9】
前記発生器(31)は、前記測定信号源(34)が前記第1スイッチ状態及び/又は前記第2スイッチ状態(C2)において前記スイッチ装置(51)に測定信号(XM)を供給する場合、前記発生器(31)が発生器電圧(UG)又は発生器電流(IG)を供給しないように構成又は制御される、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項10】
前記第2スイッチ状態(C2)において、前記スイッチ装置(51)は、前記測定信号源(34)の一方の側を前記少なくとも1つの作用接続部(21、22)と、もう一方の側を前記2つの中性接続部(26、27)と電気的に接続する、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項11】
前記第3スイッチ状態(C3)において、前記スイッチ装置(51)は、前記発生器(31)の一方の側を前記少なくとも1つの作用接続部(21、22)と、もう一方の側を前記中性接続部(26、27)と電気的に接続する、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項12】
前記第3スイッチ状態(C3)において、前記評価ユニット(50)は、前記発生器電流(IG)によって生成される、前記第1中性接続部(26)における第1電流(I1)及び前記第2中性接続部(27)における第2電流(I2)を検査するように構成される、
請求項11に記載の供給装置。
【請求項13】
前記第3スイッチ状態(C3)において、前記スイッチ装置(51)は、周波数依存インピーダンス回路、特に並列発振回路(44)を前記測定信号源(34)に電気的に接続する、
請求項11に記載の供給装置。
【請求項14】
前記第3スイッチ状態(C3)において、前記測定信号源(34)が、前記発生器周波数(fg)とは異なる前記測定周波数(fm)で測定信号(XM)を生成するように構成又は制御される、
請求項11に記載の供給装置。
【請求項15】
前記第3スイッチ状態(C3)において、前記測定信号源(34)は、前記測定信号(XM)の前記測定周波数(fm)が、前記周波数依存インピーダンス回路がインピーダンス最大値(ZPmax)を構成する周波数を決定するための周波数範囲内で変化するように構成又は制御される、
請求項14に記載の供給装置。
【請求項16】
第1作用接続部(21)及び第2作用接続部(22)を備え、
前記スイッチ装置(51)は、第4スイッチ状態(C4)において、前記測定信号源(34)の一方の側を前記作用接続部(21)と、もう一方の側を前記第2作用接続部(22)と電気的に接続する、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項17】
第1作用接続部(21)及び第2作用接続部(22)を備え、
前記スイッチ装置(51)は、第5スイッチ状態(C5)において、前記発生器(31)の一方の側を前記第1作用接続部(21)と、もう一方の側を前記第2作用接続部(22)と電気的に接続し、前記測定信号源(34)を第1作用接続部(21)及び第2作用接続部(22)から電気的に切断する、
請求項1に記載の供給装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の供給装置(11)と、双極器具(12b)又は単極器具(12a)とを備える、
電気外科システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気外科システム及びその操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気外科システムでは、例えば、健康な組織と腫瘍組織とを区別するために、インピーダンス分光法によって組織を分析することが知られている。この目的のために、組織のインピーダンスは2つの電極間の測定電流によって決定及び評価される。
【0003】
このような方法は、例えば、特許文献1から知られている。電気外科システムの器具の複数の電極間に、測定電圧又は測定電圧と比較して高い治療電圧のいずれかを印加することができる。測定電圧によって、組織を識別するためのインピーダンス測定を実行できる。治療電圧によって、組織を治療できる。機器に測定電圧又は治療電圧を供給するための供給装置には、測定電圧用のエネルギー源と治療電圧のためのエネルギー源との間で切り替えることができるようにスイッチ装置が存在しうる。
【0004】
特許文献2には、身体組織を電気外科的に切除するための装置が記載されている。この装置は、複数の電極が接続された供給装置を備える。供給装置の高周波発生器によって、組織を凝固させるための電流の流れが2つの電極間にそれぞれ生成される。測定装置によって、2つの電極間のインピーダンスを決定でき、存在する電極の数から、インピーダンス測定に基づいて少なくとも2つのアクティブ電極を選択できる。
【0005】
特許文献3による電気外科システムは、供給装置と、それに接続された器具とを備える。スイッチによって、組織のインピーダンス分析用の評価装置又は高周波治療電圧を生成する発生器を機器に選択的に接続できる。評価装置によって、インピーダンスを低下させ、したがって組織のコンダクタンスを増加させる周波数が特定される。その後、特定された周波数において治療電圧が機器に印加される。
【0006】
電気外科システムにおけるインピーダンス測定装置は、特許文献4にさらに記載されている。異なる周波数でのインピーダンス測定に基づいて、治療された組織の状態を判定できる。例えば、組織の望ましくない炭化又は電気外科器具の電極への組織の固着は回避されるべきである。
【0007】
特許文献5及び特許文献6は、供給装置に接続された単極器具及び中性電極を有する電気外科システムを記載している。特許文献5では、インピーダンス測定によって中性電極のタイプが決定されるが、特許文献6では、測定された組織インピーダンスに基づいて患者の身体における中性電極の接触を監視することを提案している。どちらの出願においても、組織インピーダンスの測定は複数の周波数で実行される。
【0008】
特許文献7は、測定ユニットを有する電気外科システムを開示している。電気外科システムは、供給装置と、供給装置に接続され、電極間に組織の治療のための交流電圧を印加できる少なくとも2つの電極とを有する。さらに、測定電圧を治療用交流電圧とは異なる周波数で電極間に印加することが可能であり、そこから電極間の組織の組織特性を決定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0813387号明細書
【特許文献2】欧州特許第1511534号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/151493号
【特許文献4】独国特許出願公開第102016220157号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102018114482号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第19714972号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第3496638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術から出発して、本発明の目的は、簡単かつ経済的な構成で、組織分析及び患者への中性電極の接触を可能にする改良された供給装置及び改良された電気外科システムを提供することであると考えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有する供給装置及び請求項15の特徴を有する電気外科システムによって解決される。
【0012】
本発明による供給装置は、電気外科システムで使用するために構成され、提供される。これは、電気外科器具との接続のため及び中性電極との任意の接続のための複数の装置接続部を備える。中性電極を接続するための2つの中性接続部と電気外科器具の1つの作用電極のための少なくとも1つの作用接続部とは、それぞれ装置接続部である。供給装置が少なくとも1つの作用接続部を備える場合、双極(または別の多極)器具を作用接続部に接続できる。単極機器に接続するには、単極機器の作用電極に対する1つの作用接続部で十分である。この場合、中性電極を接続するための中性接続部が使用されるが、双極機器を使用する場合には必要としない。
【0013】
供給装置はさらに、発生器電圧及び/又は発生器電流を供給するための発生器を備える。発生器電圧は高周波電圧であり及び/又は発生器電流は高周波電流である。特に、発生器電圧及び/又は発生器電流の周波数は少なくとも200kHzである。発生器電流又は発生器電圧は、生体組織を治療するために、例えば、生体組織を凝固又は切断するために、電気外科器具の少なくとも1つの作用電極に供給される。
【0014】
供給装置はさらに、測定信号を提供するための測定信号源を備える。測定信号は、好ましくは交流極性を有する交流電圧信号又は交流電流信号である。したがって、測定信号源は電圧源又は電流源でありうる。測定信号は、好ましくは最大100MHzまでの範囲である測定周波数を有する。オプションとして、測定周波数は最小10Hz、最小50Hz、最小100Hzとすることができる。測定周波数は特に変化する。好ましくは、測定信号に対して2つ以上の異なる測定周波数を選択又は設定できる。
【0015】
供給装置はさらに、測定信号が提供される装置接続部のうちの2つの間のインピーダンスをそれぞれ表すインピーダンスパラメータを測定するための測定装置を備える。
【0016】
少なくとも1つの電流及び/又は少なくとも1つの電圧を測定するために、測定装置は1つ又は複数の電流センサー及び/又は電圧センサーを備えることができる。
【0017】
供給装置はさらにスイッチ装置を備える。スイッチ装置は、複数のスイッチ状態の間で、本例によれば、少なくとも第1スイッチ状態と第2スイッチ状態との間で切り替えることができる。
【0018】
第1スイッチ状態では、スイッチ装置は、測定信号源の一方の側を2つの中性接続部のうちの1つ目に接続し、他方の側を2つの中性接続部のうちの2つ目に接続する。したがって、2つの中性接続部間で又は中性電極が接続されている状態で測定電圧を印加でき、第1中性接続部から中性電極を通って第2中性接続部へ又はその逆に測定電流を流すことができる。
【0019】
第1スイッチ状態では、少なくとも1つの作用接続部に接続された作用電極に測定信号が供給されないように、測定信号源が少なくとも1つの作用接続部から分離される。
【0020】
しかしながら、第2スイッチ状態では、測定信号源は少なくとも1つの作用接続部に電気的に接続される。測定信号は、接続された電気外科器具の作用電極に提供される。双極機器の場合、測定信号に基づいて電流は一方の作用電極から組織を経由してもう一方の作用電極に流れ、そこから測定信号源に戻ることができる。一方で、単極機器が接続される場合及び測定信号に基づいて中性電極が接続されている場合、電流は少なくとも1つの作用電極から患者の組織を介して中性電極に流れ、そこから測定信号源に戻ることができる。使用される機器のタイプとは無関係に、測定信号源を含む閉電流回路は、第2スイッチ状態で少なくとも1つの作用電極及び患者の組織を介して提供される。
【0021】
供給装置はさらに、測定装置と通信可能なように接続された評価ユニットを備える。評価ユニットは、測定されたインピーダンスパラメータを評価するように構成されている。評価結果に応じて、供給装置のユーザインタフェースを用いて、供給装置を制御する及び/又はユーザ、例えば外科医に、情報を提供する可能性が存在する。
【0022】
したがって、スイッチ装置を介して、測定信号源の測定信号は、中性電極を通る電流の流れ(第1スイッチ状態)又は作用電極、治療される組織及び追加の作用電極若しくは接続された中性電極を介して測定信号源に戻る電流の流れ(第2スイッチ状態)を生成できる。したがって、測定信号源は、中性電極と患者との間の接触を監視又は検査するため(第1スイッチ状態)並びに患者の治療される組織の状態及び/又はタイプを決定するため(第2スイッチ状態)に使用可能である。
【0023】
そのため、測定信号源によって、治療される組織の状態及び/又はタイプを決定するためのインピーダンス分光法を、発生器電圧及び/又は発生器電流とは無関係に実行することができ、中性電極の患者への正しい接触又は正しい取り付けを検査及び/又は監視することができる。例えば、供給装置の使用中、第1スイッチ状態と第2スイッチ状態との間で繰り返し切り替えることができるため、治療する組織を繰り返し分析することができ、並びに中性電極の正しい接触を検査及び監視することができる。一方でインピーダンス分光法、もう一方で中性電極の接触を監視するために、別々の電圧源又は電流源は必要ではない。
【0024】
好ましい実施形態では、供給装置は、単極機器の接続及び双極機器の接続に適しており、構成されている。
【0025】
供給装置は、単極機器の作用電極を接続するための第1作用接続部を有する。任意に、供給装置は第1作用接続部に加えて第2の作用電極を接続するための第2作用接続部を備えることができる。第1の作用電極及び第2の作用電極を有する双極器具は、第1作用接続部及び第2作用接続部に接続することができる。したがって、供給装置は、単極機器の操作にも双極機器の操作にも適している。
【0026】
好ましい実施形態では、測定信号源は交流電圧源として構成され、負荷に依存しない交流電圧を測定信号として測定電圧の形で提供する。あるいは、交流電流源を測定信号源として使用することもできる。どちらの場合においても、交流電圧又は交流電流を異なる測定周波数で提供できる。
【0027】
第1スイッチ状態では、評価装置は、測定されたインピーダンスパラメータに基づいて、患者と2つの中性接続部に接続された中性電極との間の電気的接触を検査又は監視するように特に構成される。この目的のために、2つの中性接続部間のインピーダンスは、インピーダンスパラメータに基づいて決定される。インピーダンスは、測定信号の単一又は複数の異なる周波数で決定できる。
【0028】
好ましくは、2つの中性接続部に接続された中性電極は、中性電極の内部で互いに直接電気的に接続されていない2つの導電性電極領域を備える。したがって、中性電極の電極領域は異なる電位を有することができる。これらは、中性電極の内部で電気的に短絡する又は低抵抗の方法で接続されることはない。電極領域間の電気的接続は、中性電極の意図された使用中に患者を介して達成される。特に、中性電極は患者の皮膚の適切な位置に取り付けられ、特に粘着的に取り付けられる。
【0029】
2つの中性接続部間のインピーダンスを決定することによって、中性電極と患者との間のコンダクタンスが十分に高い正しい配置を検査及び監視することができる。不十分な接触は、適切なユーザインタフェースによって、供給装置のユーザに示すことができる。さらに又は代わりに、供給装置の使用中に中性電極と患者との間の導電性接触が不十分であると判断された場合、供給装置の動作を中断することができる。どちらの変形例においても、中性電極の領域での電流密度が高すぎることによる組織の損傷を回避できる。
【0030】
評価ユニットが、第2スイッチ状態で測定されたインピーダンスパラメータに基づいて組織の種類を決定するように構成されている場合、さらに有利である。第2スイッチ状態では、特に治療される組織、すなわち特に組織の状態及び/又は種類に依存したインピーダンスの評価を実行することができる。第2スイッチ状態におけるインピーダンス決定は、測定信号の1つ又は複数の測定周波数で実行することができる。そうすることで、器具の少なくとも1つの作用電極が導電性接触している治療される組織の種類及び/又は状態を決定することが可能である。
【0031】
スイッチ装置が、第1スイッチ状態及び第2スイッチ状態において発生器を測定信号源及び/又は装置接続部から電気的に分離した場合、発生器電流が測定信号源及び/又は装置接続部に流れないようにすることが好ましい。
【0032】
好ましい実施形態では、発生器は、第1スイッチ状態及び第2スイッチ状態で発生器電圧及び/又は発生器電流を生成しないように構成又は制御される。少なくとも1つの作用接続部には発生器電圧は印加されず、及び/又は少なくとも1つの作用接続部を介してそれに接続された作用電極への発生器電流の流れは許可されない。そうすることで、発生器電圧及び/又は発生器電流が、第1スイッチ状態及び第2スイッチ状態におけるインピーダンスパラメータの評価に干渉することが回避される。
【0033】
好ましくは、スイッチ装置は、第2スイッチ状態において、測定信号源の一方の側を少なくとも1つの作用接続部に電気的に接続し、他方の側を2つの中性接続部に電気的に接続する。2つの中性接続部は、第2スイッチ状態において、スイッチ装置によって低抵抗で相互に接続される又は供給装置の内部で短絡される。したがって、2つの中性接続部は実質的に同じ電位を有する。
【0034】
好ましい実施形態では、スイッチ装置は、任意の第3スイッチ状態で切り替えることが、でき、スイッチ装置は、一方の側で発生器を少なくとも1つの作用接続部と、他方の側で発生器を中性接続部と、電気的に接続する。単極器具が接続され、中性電極が接続されている場合、この第3スイッチでは、発生器電圧及び/又は発生器電流の条件により、電流の流れは、機器の作用電極に流れ、そこから作用電極と導電的に接触している組織を通って、中性電極を経由して再び供給装置に戻る。この第3スイッチ状態は、特に単極器具による組織の治療、例えば、組織の凝固又は切断に役立つ。
【0035】
評価ユニットは、発生器電圧及び/又は発生器電流による第3のスイッチ状態における2つの中性接続部を通る電流の流れを検査するために、例えば、第1中性接続部からの第1の電流と第2の中性接続部からの第2の電流を互いに比較するために、特に構成されている。この比較では、第1の電流及び第2の電流の1つ又は複数の電流パラメータ、例えば、振幅及び/又は絶対値及び/又は位相位置、を相互に比較することができる。
【0036】
第3スイッチ状態では、測定信号源は、少なくとも期間中、測定信号を提供することができる。特に、評価ユニットは、遷移インピーダンス又は中性電極と患者との間の電気的接触を検査又は監視するために、単極治療用電流の流れ中に、中性接続部で検知されるインピーダンスパラメータも評価できるように構成される。したがって、測定周波数は、発生器電圧又は発生器電流の発生器周波数とは十分に異なる。中性電極と患者の間の電気的接触が不十分である(遷移インピーダンスが高すぎる)、例えば、中性電極が患者から少なくとも部分的に外れることによって引き起こされる、ことも発生器の作動中に認識されうる。
【0037】
好ましい実施形態では、測定装置は、並列発振回路を備えることができる又は並列発振回路であることができる周波数依存インピーダンス回路を備える。例えば、並列発振回路は、並列インダクタンスと2つの直列コンデンサから構成することができる。周波数依存インピーダンス回路(例えば、並列発振回路)は、第1中性接続部を第2中性接続部に接続する。
【0038】
好ましくは、スイッチ装置は、スイッチ装置が第1スイッチ状態及び/又は第2スイッチ状態にある場合、周波数依存インピーダンス回路を第1中性接続部及び/又は第2中性接続部から分離する1つ又は複数の制御可能なスイッチを備える。好ましくは、少なくとも又はもっぱら第3スイッチ状態において、周波数依存インピーダンス回路と第1中性接続部及び/又は第2中性接続部との間の電気的接続が確立される。
【0039】
第3スイッチ状態において、測定信号の測定周波数が所定の周波数範囲内で変化するように測定信号源が構成又は制御される場合、有利である。そうすることで、周波数依存インピーダンス回路が局所的又は全体的なインピーダンス最大値を構成する周波数を決定することが特に可能である。
【0040】
好ましくは、スイッチ装置は、任意の第4スイッチ状態で、測定信号源の一方の側を第1作用接続部に、他方の側を第2動作接続部に電気的に接続できる。第4スイッチ状態は、双極機器の使用のために提供され、いわば、単極機器の使用中の第2スイッチ状態のやり方で使用される。評価ユニットは、第4スイッチ状態で測定されたインピーダンスパラメータに基づいて、接続された機器の作用電極が導電性接触している組織の状態及び/又は種類を決定するように構成される。
【0041】
好ましくは、スイッチ装置は、任意の第5スイッチ状態で発生器を第1及び第2作用接続部に接続でき、測定信号源を作用接続部から分離できる。第5スイッチ状態は、発生器電流での双極機器の使用のために提供される。
【0042】
特に、測定信号源は、第5スイッチ状態では、測定信号を生成しないように構成又は制御される。
【0043】
スイッチ装置並びに任意の測定信号源及び/又は発生器を制御するために、供給装置は制御ユニットを有することができる。制御ユニット及び特に評価ユニットは、1つの単一コンポーネント(特にIC)に統合して実現できる。
【0044】
数字「第1」、「第2」等による機能、特にコンポーネント及びスイッチ状態、の特徴のラベル付けは、もっぱら機能の区別に役立つものであり、順序又は優先順位を暗示するものではない。例えば、第4スイッチ状態が存在しない場合でも、第5スイッチ状態が存在しうる。
【0045】
本発明はまた、上述の実施形態のいずれかによる供給装置を備える電気外科システムにも関する。さらに、電気外科器具と、電気外科器具が単極機器である場合には、任意で中性電極も、電気外科システムの一部である。双極器具が電気外科システムの一部である場合、双極器具は供給装置の第1作用接続部及び第2作用接続部に接続される。単極器具及び中性電極が電気外科システムの一部である場合、単極器具は作用接続部又は存在する作用接続部のうちの1つに接続され、中性電極は第1中性接続部及び第2中性接続部に接続される。
【0046】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項、明細書及び図面から導かれる。以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図面には次のことが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】供給装置、単極器具及び中性電極を備える電気外科システムの一実施形態の原理図である。
【
図2】供給装置及び双極器具を備える電気外科システムの別の実施形態の原理図である。
【
図3】発生器、測定信号源、測定装置、評価ユニット及びスイッチ装置を備える、
図1及び
図2に係る供給装置の動作回路の一実施形態のブロック図である。
【
図4】スイッチ装置の第1スイッチ状態における
図3の動作回路の等価回路図である。
【
図5】スイッチ装置の第2スイッチ状態における
図3の動作回路の等価回路図である。
【
図6】スイッチ装置の第3スイッチ状態における
図3の動作回路の等価回路図である。
【
図7】スイッチ装置の第4スイッチ状態における
図3の動作回路の等価回路図である。
【
図8】スイッチ装置の第5スイッチ状態における
図3の動作回路の等価回路図である。
【
図9】第1及び/又は第2及び/又は第4及び/又は第5スイッチ状態における供給装置の動作回路の発生器電流及び測定電流の時間的経過を概略的に例示する図である。
【
図10】第3スイッチ状態における供給装置の動作回路の発生器電流及び測定電流の時間的経過を概略的に例示する図である。
【
図11】周波数に依存する周波数依存性のインピーダンス回路のインピーダンスの絶対値の推移を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1及び
図2には、電気外科システム10の実施形態が例として示されている。電気外科システム10は、本発明による実施形態に対応する供給装置11を有する。電気外科器具12は供給装置11に接続される。
図1及び
図2に示される電気外科器具は、開腹外科用に構成されている。これに変えて、電気外科器具12は、内視鏡的又は低侵襲的使用のために構成することもできる。
【0049】
電気外科器具12は単極器具12a(
図1)又は双極器具12b(
図2)でありうる。単極器具12aを使用する場合、電気外科システムはさらに中性電極13を備える。
【0050】
ここに示される実施形態では、中性電極13は、導電性の第1電極領域14及び導電性の第2電極領域15を備える。2つの電極領域14、15は、中性電極13内で互いに直接電気的に低い抵抗で接続されていないため、異なる電位を有することができる。使用中、中性電極13は、電極領域14、15が患者に導電的に接続されるように、治療される患者に取り付けられる。例えば、中性電極13は患者の皮膚に粘着的に取り付けることができる。その後、2つの電極領域14、15の間の電気的接続が、患者を介して間接的に確立される。この状態では、患者を介して2つの電極領域14、15の間で電流が間接的に流れることが可能である。
【0051】
電気外科システムは、電気外科器具12によって患者の生体組織16を治療するように構成されている。生体組織16は、患者の臓器組織、筋組織、脂肪組織、皮膚組織、血管又はほかの生体組織16でありうる。例えば、電気外科器具12によって、組織16を凝固及び/又は切断することができる。
【0052】
電気外科器具12(単極器具12a又は双極器具12b)の接続及び中性電極13の接続のために、本実施形態では、供給装置11は複数の電気的装置接続部20を備える。装置接続部20の数は変更することができる。供給装置11は、電気外科器具12を接続するための少なくとも1つの作用接続部を有する。図示の実施形態では、供給装置11は、単極器具12a及び双極器具12bを接続できるように少なくとも2つの作用接続部、すなわち、第1作用接続部21及び第2作用接続部22を備える。単極器具12aの作用電極23は、第1作用接続部21に接続することができる。双極器具12bを使用する場合、第1作用電極24を第1作用接続部21に接続することができ、第2作用電極25を第2作用接続部22に接続することができる。
【0053】
さらに、中性電極13の第1電極領域14との電気的接続のための第1中性接続部26及び中性電極13の第2電極領域15との電気的接続のための第2中性接続部27は、実施の形態における供給装置11の装置接続部20である。
【0054】
供給装置11が双極器具12bとともに使用するためにもっぱら構成されている場合、図示の実施形態の変形形態では単一の作用接続部21で十分である。さらに、電気外科器具12が3つ以上の作用電極を備える場合には、3つ以上の作用接続部21、22を設けることが可能である。
【0055】
供給装置11は、接続された電気外科器具12の少なくとも1つの作用電極23、24又は25に電気エネルギーを供給するように構成されている。組織16の治療中、治療用電流は治療される生体組織16を通って流れる。単極器具12aを使用する場合、治療用電流は作用電極23から組織16を通って中性電極13に流れ、そこから供給装置11に戻ることができる。双極器具12bを使用する場合、治療用電流は2つの作用電極24、25の間で組織16を通って流れる。どちらの場合も閉電流回路が確立される。
【0056】
供給装置11の動作回路30の一実施形態のブロック図が
図3に示されている。
図3によると、動作回路30は、供給装置11の電気回路の重要な構成要素及び部分を示しており、
図3による動作回路30には示されていない追加の部分が存在しうる。
【0057】
動作回路30は、交流電流源又は交流電圧源として構成できる発生器31を備える。この例によると、発生器31によって、交流極性を有する交流電流及び/又は交流電圧が発生器電圧UG及び/又は発生器電流IGとして供給され、周波数は、300kHzから4.0MHzまでの範囲でありうる。供給装置11又は電気外科システム10の動作モード及び用途に応じて、発生器31は、異なる周波数でも発生器電圧UG又は発生器電流IGを供給できる。
【0058】
図3に示すように、発生器31の接続部は、第1配線32を介して第1作用接続部21と電気的に接続され、発生器31は、それの他の端子が第2配線33を介して第2作用接続部22に電気的に接続されている。
【0059】
この例によると、動作回路30は測定信号XMを供給するための測定信号源34を有する。測定信号源は、電流源又は電圧源とすることができ、したがって、測定電圧UM及び/又は測定電流IMを測定信号XMとして供給することができる。測定信号XMは、測定周波数fmを有する、特に交流極性を有する交流電流又は交流電圧信号である。測定周波数は、連続的に又は段階的に、例えば、第1の測定周波数f1、第2の測定周波数f2及び/又は第3の測定周波数F3に、異なる測定周波数fmに設定できる。設定可能な測定周波数fmの数は変更できる。この実施形態では、測定周波数は、1.0Hz又は10Hz又は100Hzから1.0MHzまでの範囲内の1つ又は複数の測定周波数fmに設定できる。
【0060】
測定信号XM(例えば、測定電圧UM)は、最大1.0Vの振幅を有し、実施形態では、約10mVの振幅を有する。
【0061】
測定信号源34は、一方の端子で第3配線35を介して第1中性接続部26に電気的に接続され、他方の端子で第4配線36を介して第2中性接続部27に電気的に接続される。したがって、測定信号源34は、中性接続部26、27に接続された中性電極13を通る測定電流IMの電流の流れを生成することができる。
【0062】
動作回路30は、測定装置40をさらに備える。測定装置40は、測定電圧UMが印加される2つの選択された装置接続部20の間のインピーダンスZを表すインピーダンスパラメータPを測定するように構成される。この実施形態では、インピーダンスパラメータPは、治療用電流経路Bの第1インピーダンスZ1又は中性電流経路Nの第2インピーダンスZ2を表すことができる。治療用電流経路Bは単極器具12a及び組織16を介した第1作用接続部21と中性接続部26、27との間又は双極器具12b及び組織16を介した第1作用接続部21と第2作用接続部22との間の電気的接続である。中性電流経路Nは、中性電極13及び患者を介した中性接続26と27との間の電気的接続である。
【0063】
機器を構成する治療用電流経路Bを通って流れる発生器電流又はその一部は、作用電流又は治療用電流として表すこともできる。
【0064】
測定電圧UMが測定信号XMとして供給される場合、治療用電流経路B又はそれによって生成される中性電流経路Nを通る測定電流IMは、インピーダンスパラメータPとして使用できる。逆に、測定電流IMが測定信号XMとして印加される場合、治療用電流経路B又は中性電流経路Nに印加される測定電圧UMは、インピーダンスパラメータPとして使用できる。
図3に示す例では、測定電流IMは、例えば、測定信号源34に直列に接続された測定装置40の第1測定抵抗器41に生じる電圧に基づいて測定可能なインピーダンスパラメータPとして機能する。
【0065】
この実施形態では、測定装置40は、ここでは並列発振回路44として構成されている周波数依存インピーダンス回路をさらに備える。周波数依存インピーダンス回路及びこの例によれば並列発振回路44は、第3配線35を第4配線36と電気的に接続する。好ましい実施形態では、並列発振回路44は並列インダクタンス42及び2つの直列コンデンサ43を備えることができる。追加の部品は任意であり、必須ではない。並列発振回路44の部品の数値は、例として
図11に示されるように、発振回路が周波数依存インピーダンスプログレスを有するように寸法を設定することができる。インピーダンスプログレスは、周波数fに応じた並列発振回路44のインピーダンスZPの絶対値である。インピーダンスプログレスは、区別するために発振回路周波数f0と表す周波数、この周波数は発生器31が発生器電圧UG又は発生器電流IG(作用電流と表すこともできる)を発生器周波数fgとは大幅に異なる、と表記した周波数においてインピーダンス最大値ZPmax(絶対値)を有する。好ましい実施形態では、発振回路周波数f0は、発生器周波数fgと比べて最大でも約1/3である。並列発振回路44によって形成される周波数依存インピーダンス回路はさらに、発生器周波数fgにおけるインピーダンス最大値ZPmaxと比較してインピーダンスZPの量又は絶対値が著しく低いこと、例えばインピーダンス最大値ZPmaxの最大10%、を特徴とする。
【0066】
並列発振回路の代わりに、周波数依存インピーダンス絶対値を有する少なくとも1つのコンポーネント、特に少なくとも1つのコイル若しくはインピーダンス及び/又は少なくとも1つのコンデンサを有する、1つ又は複数の局所インピーダンス最大値を有する他の周波数依存インピーダンス回路を使用することもできる。
【0067】
測定装置40は、インピーダンスパラメータPに加えて、他のパラメータ、例えば、第3配線35を通る第1電流I1及び/又は第4配線36を通る第2電流I2を測定することができる。この目的のために、測定装置40は、第3配線35に第2測定抵抗器45を及び第4配線36に第3測定抵抗器46を備えることができる。追加のオプションとして、測定装置40は、発生器31が供給する発生器電圧UGによって流れる発生器電流IG測定するように構成することができる。例えば、第4測定抵抗器47をこの目的のために第1配線32に配置することができる。
【0068】
評価ユニット50は、本実施形態では動作回路30の一部である。評価ユニット50には、測定装置40によって測定されるインピーダンスパラメータPが少なくとも提供される。インピーダンスパラメータPは、説明したように、治療用電流経路Bにおける第1インピーダンスZ1及び/又は中性電流経路Nにおける第2インピーダンスZ2を表す。
【0069】
オプションとして、第1電流I1及び/又は第2電流I2及び/又は発生器電流IGといった、測定装置40によって検出できる追加のパラメータ又は変数を評価ユニット50に提供することもできる。
【0070】
さらに、動作回路30は、複数のスイッチ状態の間で切り替え可能なスイッチ装置51を備える。この目的のために、スイッチ装置51は、1つ又は複数の制御可能なスイッチを備えることができ、これらのスイッチは、それぞれ1つの割り当てられた制御信号によって制御することができる。実施形態では、第1制御信号S1によって制御可能な第1スイッチ52、第2制御信号S2によって制御可能な第2スイッチ53、第3制御信号S3によって制御可能な第3スイッチ54、第4制御信号S4によって制御可能な第4スイッチ55、第5制御信号S5によって制御可能な第5スイッチ56及び第6制御信号S6によって制御可能な第6スイッチ57が設けられている。制御信号S1~S6は、動作回路30の制御ユニット58で生成される。
図3に概略的に示されるように、評価ユニット50及び制御ユニット58は、オプションとして1つの共通のコンポーネント又はユニットとすることができる。
【0071】
例えば、スイッチ52~57は、制御可能な半導体スイッチ(例えば、バイポーラトランジスタ又は電界効果トランジスタ)として構成されうる。
図3における実施形態の変形形態において、スイッチ装置51が6つより多い又は少ない制御可能なスイッチ52~57を有することができることも明らかである。この実施形態では、スイッチ装置51のスイッチ52~57は次のように配置される。
【0072】
第1スイッチ52は、第3配線35又は第1中性接続部26と第4配線36又は第2中性接続部27との間の接続経路に配置され、2つの中性接続部26、27を低抵抗で接続する又は短絡することができる。
【0073】
第2スイッチ53は、測定信号源34の一方の端子側に接続されており、この端子側を第4配線36又は第2中性接続部27と電気的に接続することができ、別のスイッチポジションで、測定信号源34のこの端子側を第1配線32又は第1作用接続部21と電気的に接続することができる。第2スイッチ53の反対側の測定信号源34の端子側は、第3配線35又は第1中性接続部26と電気的に接続される。
【0074】
第3スイッチ54は、第1配線35における、第1中性接続部26と並列発振回路44の一方の接続側との間に配置される。第4スイッチ55は、第2配線36における、第2中性接続部27と並列発振回路44のもう一方の側との間に配置される。第3スイッチ54及び第4スイッチ55は、並列発振回路44とそれぞれ割り当てられた中性接続部26又は27及び測定信号源34との間の電気的接続を確立又は遮断することができる。
【0075】
第5スイッチ56は、測定信号源34の第2スイッチ53の反対の側において測定信号源34と直列接続されており、測定信号源34と第2配線33又は第2作用接続部22との間の電気的接続を確立又は遮断することができる。
【0076】
第6スイッチ57は、第4測定抵抗器47と第1作用接続部21との間に配置され、発生器31から第1作用接続部21及び第2スイッチ53への電気的接続を確立又は分離することができる。
【0077】
制御ユニット58は、少なくとも2つの異なるスイッチ状態の間でスイッチ装置51を切り替えることができ、例によれば、第1スイッチ状態C1(
図4)、第2スイッチ状態C2(
図5)、第3スイッチ状態C3(
図6)、第4スイッチ状態C4(
図7)、第5スイッチ状態C5(
図8)の間で切り替えることができる。スイッチ装置51の制御は、とりわけ、供給装置11の実際の動作状態に依存することができ、例えば、供給装置11が単極器具12又は双極器具12と協働しているかどうか及び/又は組織16を治療するために少なくとも1つの作用電極23、24、25に電力が供給されているかどうか又は少なくとも1つの作用電極23、24、25にそのような電力が供給されない治療の休止が存在するかどうかに依存することができる。
【0078】
異なるスイッチ状態C1~C5によって、評価ユニット50は異なる評価タスクを実行することができる。
【0079】
以下、本実施形態に係るスイッチ装置51がとり得るスイッチ状態C1~C5を
図4~
図7に基づいて説明する。なお、
図4~
図7では、動作回路30の重要な部分のみを簡略化して示している。
【0080】
第1スイッチ状態C1は、単極器具12a及び中性電極13の使用のために提供される。第1スイッチ状態C1では、第1スイッチ52、第3スイッチ54、第4スイッチ55及び第5スイッチ56は非電通状態にある。第2スイッチ53は、測定信号源34を第2中性接続部27に接続する。中性電流経路Nは、第1中性接続部26と第2中性接続部27との間の電流経路であり、中性電極13と組織16によって形成され、等価回路図では第2インピーダンスZ2によって示される。中性電流経路Nは、第3配線35及び第4配線36を介して測定信号源34に閉電流回路を形成するように接続される。
【0081】
測定信号源34が測定電圧UMを供給する場合、測定電流IMは、中性電流経路Nを流れ、測定装置40によって測定されることができインピーダンスパラメータPとして評価ユニット50に送信されることができる。評価ユニット50では、第2インピーダンスZ2が中性電極13と患者との間の十分に良好なコンダクタンスを特徴づける試験基準に対応するかどうかを検査又は監視することができる。このようにして、患者の治療に必要な中性電極13と患者との間の電気コンダクタンスを監視することができる。中性電極13が正しく取り付けられていないこと及び/又は治療中に中性電極13が外れていることを認識することができる。それにより、組織の損傷を引き起こしうる、中性電極13に隣接する組織内の電流密度が高くなりすぎることを回避することができる。インピーダンスパラメータP又は測定電流IMに基づいて決定された中性電流経路Nの第2インピーダンスZ2が所定の試験基準を満たさない場合、それぞれのメッセージを電気外科システム10のユーザに出力することができ、及び/又はさらなる動作、例えば少なくとも1つの作用電極23、24、25への電気エネルギーの供給を禁止することができる。
【0082】
第2スイッチ状態C2は、
図5に示されている。第2スイッチ状態C2は、単極器具12a及び中性電極13を有する電気外科システム10でも使用される。第2スイッチ状態C2では、第1スイッチ52は導電状態にあり、2つの中性接続部26、27を低抵抗で導電する。第2スイッチ53は、測定信号源34の一方の側を中性接続部26、27に、他方の側を第1作用接続部21に電気的に接続するスイッチ状態にある。電流回路は、単極器具12a及びその作用電極23、組織16、並びに中性接続部26、27に接続された中性電極13を介して閉じられる(単極器具12aを使用時の治療用電流経路B)。
【0083】
第2スイッチ状態C2では、測定信号源34は、測定電流IMが治療用電流経路Bを流れるように、測定電圧UMを測定信号XMとして供給することができる。治療用電流経路Bは、単極器具12aの作用電極23が導電性接触する組織16の状態及び種類に特に依存する第1インピーダンスZ1によって特徴づけられる。治療用電流経路Bを通る測定電流IMは、第1インピーダンスZ1の特徴であり、評価ユニット50においてインピーダンスパラメータPとして評価することができる。評価ユニット50は、インピーダンスパラメータPとして使用される測定電流IMに基づいて第1インピーダンスZ1を結論付けることができ、そこから治療される組織16の状態及び/又は種類を決定することができる。
【0084】
第1スイッチ状態C1及び/又は第2スイッチ状態C2で作動された測定信号源34を用いて測定する間、発生器31はオフになり、第6スイッチ57は開かれるので、発生器電圧UGも発生器電流IGもどちらも供給されず、発生器31は測定信号源に電気的に接続されない。そうすることで、測定の干渉が回避される。
【0085】
第3スイッチ状態C3が
図6に概略的に示されている。第3スイッチ状態では、第1スイッチ52及び第5スイッチ56は非導電状態にある。第3スイッチ54及び第3スイッチ55はそれぞれ導電状態にある。第2スイッチ53は、測定信号源34を第2中性接続部27に接続する。
【0086】
第3スイッチ状態C3では、患者の組織16が単極器具12aによって治療される。発生器31は作動していて、発生器電圧UG及び/又は発生器電流IGを供給し、組織16を治療するための電力が単極器具12aの作用電極23で利用可能となる。治療の間、電流は、第1作用接続部21と中性接続部26、27との間の治療用電流経路Bを通って流れ、第3配線35の第1電流I1と第4配線36の第2電流I2に分かれる。測定装置51によって、2つの電流I1、I2を、例えば、中性電極13が患者に正しく配置されていないことが原因で、生じうる不等性及び非対称性を認識するために相互に比較することができる。この目的のために、振幅及び/又は絶対値及び/又は位相位置といった、電流I1、I2の1つ又は複数の特徴的な電流パラメータを相互に比較することができる。
【0087】
さらに、第3スイッチ状態C3では、測定信号XM(例えば測定電圧UM)が、組織16へ発生器電流IGを印加する間に測定信号源34によって供給され、それによって測定電流IMが中性電流経路Nを通って流れ、測定装置40によって測定され、評価ユニット50にインピーダンスパラメータPとして送信されることができる。それにより、測定信号XM又は測定電圧UMは、発生器電流IGの発生器周波数fgから十分に区別される測定周波数fmで供給される。好ましくは、測定信号XM又は測定電圧UMの測定周波数fmは、並列発振回路44がそのインピーダンス最大値ZPmaxを有する発振回路周波数f0にほぼ等しい。測定電流IMについて、並列発振回路44は、中性電極13の第2インピーダンスZ2と並列の高いインピーダンスを有する抵抗を表し、それによって、中性電極のインピーダンスを測定されたインピーダンスパラメータPに基づいて非常に正確に決定することができる。発生器電流IGについて、並列発振回路44は、2つの中性接続部26、27の間に低抵抗接続を確立し、したがって、第3配線35及び第4配線36を介して発生器31への電気的接続を確立する。
【0088】
これまでに説明したスイッチ状態C1~C3とは異なり、第4スイッチ状態C4(
図7)は、双極器具12bを有する電気外科システム10に関する。第4スイッチ状態C4では、第1スイッチ52、第3スイッチ54、第4スイッチ55及び第6スイッチ57は非導電状態にある。しかしながら、第5スイッチ56は導電状態にある。第2スイッチ53は、測定信号源34を第1作用接続部21又は第1配線32に接続する。したがって、測定信号源34は、2つの作用接続部21、22の間に接続され、発生器31は、第6スイッチ57の測定から分離されている。したがって、測定電圧UMを治療用電流経路Bに印加することができ、その結果、測定電流が流れ、これを評価ユニット50においてインピーダンスパラメータPとして評価することができる。この場合、インピーダンスパラメータPは、双極器具12bの第1作用電極24及び第2作用電極25が導電性接触している組織16によって実質的に特徴づけられる、治療用電流経路Bの第1インピーダンスZ1を表す。インピーダンスパラメータP又はそれによって特徴づけられる第1インピーダンスZ1に基づいて、組織16の状態及び/又は種類を評価ユニット50において決定することができる。
【0089】
スイッチ状態C4と類似して、第5スイッチ状態C5(
図8)も、双極器具12bを有する電気外科システム10に関する。この第5スイッチ状態C5では、第5スイッチ56は非導電状態にあり、したがって、測定信号源34を第2作用接続部22から分離する。第6スイッチ57は、第5スイッチ状態C5において導電状態にあり、したがって、治療用電流経路Bを介して(第1作用接続部21、双極器具12b、組織16及び第2作用接続部22を通って)、発生器31からの電流回路を閉じる。この第5スイッチ状態C5は、双極の動作での組織16の治療を可能にする。
【0090】
第5スイッチ状態C5では、測定信号源は、測定信号XMを生成しないように構成又は制御されることができる。
【0091】
すべてのスイッチ状態C1~C5において、評価の結果は、供給装置11の動作に自動的に影響を与えるために並びに/又は例えば、光学的及び/若しくは音響的に出力することができる適切なユーザインタフェースによってユーザに情報を提供するために使用することができる。例えば、ユーザは、治療される組織16の状態及び/又は種類について知ることができる。組織の状態及び/又は種類に応じて、発生器31の電力及び/若しくは周波数並びに/又は電気外科システム10及び供給装置11の他の設定も調整又は修正することができる。電気外科システム10が中性電極13を備えた単極器具12aをさらに有する場合、中性電極13の患者への正しい接合は、中性電極13の治療する間、検査及び/又は監視することができる。
【0092】
好ましくは、1つ又は複数のスイッチ状態、特に第1スイッチ状態C1及び/又は第2スイッチ状態C2及び/又は第4スイッチ状態C4及び/又は第5スイッチ状態C5において電気外科システム10が動作する間、交流電流又は交流電圧は、発生器31及び測定信号源34によって同時に生成されない。むしろ、
図9に概略的に示されているように、測定信号XMの生成及びインピーダンスZ1、Z2を特徴づけるインピーダンスパラメータPの測定は、発生器31が作動しておらず、したがって電力(発生器電圧UG及び/又は発生器電流IG)を供給しない一時的な期間に実行される。
図9に示すように、発生器31によって生成される発生器電流IGによって組織16の治療が実行されない場合、測定電流IMの流れは、測定信号源34を作動させることによってのみ引き起こされる。言い換えれば、1つ又は複数のスイッチ状態、特に特に第1スイッチ状態C1及び/又は第2スイッチ状態C2及び/又は第4スイッチ状態C4及び/又は第5スイッチ状態C5において、発生器電流IG又は治療用電流が治療用電流経路Bを流れる治療期間Ptは、測定電流IMが中性電流経路N又は治療用電流経路Bを流れる測定期間Pmと重ならない。
【0093】
また、測定信号XMが生成される測定周波数fmが変化しうることも、
図9から明らかである。
図9には、例示的に異なる測定期間Pm中の3つの異なる測定周波数fm=f1、f2、f3のみが示されている。異なる測定周波数fmの数は変化することができる。
【0094】
さらに、異なる測定周波数fm=f1、f2、f3を有する測定期間Pmが、直接隣接することができる又は治療期間Ptだけ互いに分離することができることは
図9から明らかである。
【0095】
第3スイッチ状態C3では、他のスイッチ状態、この例によれば第1スイッチ状態C1及び/又は第2スイッチ状態C2及び/又は第4スイッチ状態C4及び/又は第5スイッチ状態C5、とは異なり、測定信号源34及び発生器31を同時に作動させることが可能である。この目的のために、測定信号XMは、発生器周波数fgとは著しく区別され、好ましくは発振回路周波数f0にほぼ等しい測定周波数fmで生成される。説明したように、並列発振回路44は、測定電流IMのインピーダンス最大値ZPmaxの範囲内で高いインピーダンスZPの絶対値を有する並列抵抗を表し、一方で、発生器周波数fgでの作用電流IGにとって低抵抗接続を表す。これにより、単極器具12aで組織16を治療する間も、測定周波数fm=f0でのインピーダンスパラメータPを評価することが可能になる。このようにして、中性電極13が外れていることも、例えば、発生器31及び単極器具12aの治療又は作動中に、監視することができる。
【0096】
例として、治療期間Pt及び測定期間Pmが一時的に重なりうること、すなわち発生器31と測定信号源34が同時に動作することが起こることを
図10に示す。測定信号XMが生成される測定周波数fm=f0は、発生器周波数fgとは著しく異なることが認識されうる。発生器31の動作の終了後、測定信号XMは、例えば、スイッチ装置51がスイッチ状態C1又はC2をとる場合、
図10のf3で示されるように、発生器周波数fgと類似又は等しい、別の周波数で再び測定することができる。
【0097】
一実施形態では、測定周波数fmを、発生器31の作動中に、並列発振回路44のインピーダンスZPのインピーダンス最大値ZPmaxの発振回路周波数f0の付近の小さな周波数範囲で変化させることができ、これにより、インピーダンスの最大値ZPmaxが発生する周波数を正確に決定することができる。
【0098】
周波数範囲にわたる並列発振回路44のインピーダンスZPの例示的なインピーダンスプログレスを
図11に見ることができる。並列発振回路44が発振回路周波数f0で高抵抗であり、そこにはそのインピーダンス最大値ZPmaxを含むことは明らかである。インピーダンスZPは、発振回路周波数f0を起点として、周波数fの増加及び減少に伴って減少し、発生器周波数fgでは低抵抗になる。
【0099】
本発明は、電気外科システム10用の供給装置11及び本発明による供給装置を備える電気外科システム10に関する。電気外科システムは、さらに、単極器具12a及び中性電極13又は双極器具12bを備えることができる。供給装置11は、電気外科器具12の1つの作用電極23、24、25それぞれに対する少なくとも1つの作用接続部21並びに中性電極13に対する第1中性接続部26及び第2中性接続部27を有する。供給装置11は、生体組織16の治療のために電気外科器具12に電力を供給することができる発生器31を有する。さらに、供給装置11は、交流電圧及び/又は交流電流の形で測定信号XMを供給する測定信号源34を有する。測定信号XMから生じるインピーダンスZ1、Z2を特徴づけるインピーダンスパラメータPは、供給装置11の測定装置40によって測定することができ、評価のために供給装置11の評価ユニット50に提供されることができる。供給装置11は、さらに、複数のスイッチ状態C1~C5の間で切り替えることができるスイッチ装置51を有する。異なるスイッチ状態C1~C5では、評価ユニット50によって異なる評価関数を実現できる。測定信号源34は、測定信号を、作用接続部21における治療用電流経路B及び中性接続26、27の間の中性電流経路Nに印加することができる。そうすることで、治療される組織16を分析することができ、また中性電極13と患者との間の接触を測定信号XMによって検査及び監視することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 電気外科システム
11 供給装置
12 電気外科器具
12a 単極器具
12b 双極器具
13 中性電極
14 第1電極領域
15 第2電極領域
16 組織
20 装置接続部
21 第1作用接続部
22 第2作用接続部
23 単極器具の作用電極
24 双極器具の第1作用電極
25 双極器具の第2作用電極
26 第1中性接続部
27 第2中性接続部
30 動作回路
31 発生器
32 第1配線
33 第2配線
34 測定信号源
35 第3配線
36 第4配線
40 測定装置
41 第1測定抵抗器
42 並列インダクタンス
43 直列コンデンサ
44 並列発振回路
45 第2測定抵抗器
46 第3測定抵抗器
47 第4測定抵抗器
50 評価ユニット
51 スイッチ装置
52 第1スイッチ
53 第2スイッチ
54 第3スイッチ
55 第4スイッチ
56 第5スイッチ
57 第6スイッチ
58 制御ユニット
B 治療用電流経路
C1 第1スイッチ状態
C2 第2スイッチ状態
C3 第3スイッチ状態
C4 第4スイッチ状態
f 周波数
f0 発振回路周波数
f1 第1測定周波数
f2 第2測定周波数
f3 第3測定周波数
fg 発生器周波数
fm 測定周波数
I1 第1電流
I2 第2電流
IG 発生器電流
IM 測定電流
N 中性電流経路
P インピーダンスパラメータ
Pm 測定期間
Pt 治療期間
S1 第1制御信号
S2 第2制御信号
S3 第3制御信号
S4 第4制御信号
S5 第5制御信号
S6 第6制御信号
t 時間
UG 発生器電圧
UM 測定電圧
XM 測定信号
Z1 第1インピーダンス
Z2 第2インピーダンス
ZP 並列発振回路のインピーダンス
ZPmax 並列発振回路のインピーダンスの最大値
【外国語明細書】