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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065071
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】機械的接続の監視
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20240507BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20240507BHJP
   G06F 18/241 20230101ALI20240507BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20240507BHJP
【FI】
G06N20/00
G06N3/02
G06F18/241
G01M13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023183881
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】2216002.2
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】508305926
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ルイス リベラ
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AA02
2G024BA08
2G024CA13
2G024DA03
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】機械的接続を監視する方法、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するシステム、及び第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の特徴を判断する方法を提供する。
【解決手段】第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続を監視する方法が開示される。当該方法は、固定デバイスを使用して第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定することと、第2の航空機部品に対する第1の航空機部品の固定中に発せられる音響信号を示す情報を取得することと、音響信号を示す情報を機械学習モデルに入力することと、を含む。機械学習モデルは、機械的接続の欠陥状態を示す出力を提供するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続を監視する方法であって、前記方法は、
固定デバイスを使用して前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定することと、
前記第2の航空機部品に対する前記第1の航空機部品の前記固定中に発せられる音響信号を示す情報を取得することと、
前記音響信号を示す前記情報を機械学習モデルに入力することと、
を含み、前記機械学習モデルは、前記機械的接続の欠陥状態を示す出力を提供するように構成されている、方法。
【請求項2】
前記機械学習モデルは、分類器を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械学習モデルは、ニューラルネットワークを備える、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
訓練データを使用して前記機械学習モデルを訓練することを含み、前記訓練データは、既知の欠陥状態を伴う複数の音響信号を示す情報を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記機械学習モデルによって提供される前記出力は、前記機械的接続の検査が必要であるかどうかを示す、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記音響信号を示す前記情報は、前記第2の航空機部品に対する前記第1の航空機部品の前記固定中に前記固定デバイスによって発せられる音響信号の音声特徴を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記音声特徴は、前記音響信号のピッチを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記音声特徴は、前記音響信号の持続時間を備える、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記固定デバイスを使用して、前記第1の航空機部品と前記第2の航空機部品との間に締結具を施すことによって前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定することを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の航空機部品は、片側締結具によって前記第2の航空機部品に固定される、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記固定デバイスを使用して、航空機組立プロセス中に前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定することを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するシステムであって、
使用時に機械的接続を用いて前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定するように構成された固定デバイスと、
使用時に前記固定デバイスによって発せられる音響信号を受信するように構成されたマイクと、
前記マイクから入力を受信して、前記機械的接続の欠陥状態を示す情報を出力するように構成された機械学習モデルを記憶するメモリを備える制御モジュールと、
を備える、システム。
【請求項13】
前記固定デバイスは、前記第1の航空機部品と前記第2の航空機部品との間に締結具を施すことによって前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記固定デバイスは、航空機組立プロセス中に前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定するように構成されている、請求項12又は請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記メモリは命令を備え、前記命令は、実行されると、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法を前記システムに実行させる、請求項12から14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の特徴を判断する方法であって、前記方法は、
固定デバイスを使用して前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定することと、
前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定している間に前記固定デバイスの特性を監視することと、
前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定している間に発せられる音響信号を監視することと、
前記固定デバイスの前記特性及び前記音響信号に基づいて、前記機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断することは、特性閾値に対して前記固定デバイスの前記特性を比較することと、音響信号閾値に対して前記音響信号を比較することと、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記音響信号が、前記音響信号閾値から所定量よりも大きくずれている場合に、表示を提供することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記音響信号閾値に対して前記音響信号を比較することは、前記音響信号閾値に対して前記音響信号の音声特徴を比較することを含む、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記音響信号の前記音声特徴は、前記音響信号のピッチ又は前記音響信号の持続時間のうちの少なくとも一方を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断することは、前記音響信号を示す情報を機械学習モデルに入力することを含み、前記機械学習モデルは、欠陥状態を示す出力を提供するように構成されている、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記固定デバイスの前記特性は、前記固定デバイスに提供される電流を備える、請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記固定デバイスの前記特性は、前記固定デバイスによってかけられるトルクを備える、請求項16から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記音響信号は、前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定している間に前記固定デバイスによって発せられる音声を含む、請求項16から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の航空機部品は、締結具によって前記第2の航空機部品に固定され、前記音響信号は、前記第1の航空機部品を前記第2の航空機部品に固定している間に前記締結具によって発せられる音声を含む、請求項16から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記締結具は、片側締結具を備える、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続を監視する方法、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するシステム、及び第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の特徴を判断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機部品は、例えば、締結具を使用することによって互いに固定され得る。一部の状況では、当該締結具は、アクセス困難な領域にあり、これにより、検査が困難で時間を要するものとなり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続を監視する方法であって、当該方法は、固定デバイスを使用して第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定することと、第2の航空機部品に対する第1の航空機部品の固定中に発せられる音響信号を示す情報を取得することと、音響信号を示す情報を機械学習モデルに入力することと、を含み、機械学習モデルは、機械的接続の欠陥状態を示す出力を提供するように構成されている、方法が提供される。
【0004】
本発明の第1の態様に係る方法は、(例えば、視覚的及び/又は物理的な検査を通じて)各機械的接続を手動で検査する必要なく欠陥状態を判断することを可能にし得る。これは、固定プロセス、したがって、組立プロセス全体の速度を上げ得る。これはまた、視覚的な検査が必要でない/必要な頻度が低いため、固定プロセスを自動化することを可能にし得る。欠陥状態は、検査が推奨される/必要であるような機械的接続に関する欠陥が存在するかどうかを示し得る。機械学習モデルは、訓練データのセットに基づいて、例えば、教師あり学習プロセスにおいてグラウンドトゥルース値でラベル付けされた訓練データのセットに基づいて、その出力を提供するように訓練され得る。例えば、既知の欠陥状態を伴う複数の音響信号は、機械学習モデルを訓練するために使用され得る。別の例では、測定されたデータは、訓練データセットを形成し得る。一部の例では、機械学習モデルは、当該方法によって取得されるデータに基づいてリアルタイムに更新され得る。
【0005】
機械学習モデルは、分類器を備え得る。分類器は、欠陥状態についてのバイナリ出力を提供し得る。分類器は、音響信号を示す情報に基づいて、機械的接続が検査を必要とするかどうかを判断するように構成され得る。分類器の出力は、機械的接続の検査が必要であるかどうかであり得る。機械学習モデルは、ニューラルネットワークを備え得る。
【0006】
当該方法は、訓練データを使用して機械学習モデルを訓練することを含み得、訓練データは、既知の欠陥状態を伴う複数の音響信号を示す情報を備える。このように機械学習モデルを訓練することは、所与の音響信号の欠陥状態のより正確な判断を可能にし得る。
【0007】
機械学習モデルによって提供される出力は、機械的接続の検査が必要であるかどうかを示し得る。これは、検査が必要であるかどうかの明確な表示をオペレータに提供することを可能にし得る。これは、機械学習モデルによって検査が必要であると示されるような機械的接続のみが検査されるため、固定プロセスの速度を上げるのに役立ち得る。
【0008】
音響信号を示す情報は、第2の航空機部品に対する第1の航空機部品の固定中に固定デバイスによって発せられる音響信号の音声特徴を備え得る。音声特徴は、周波数、トーン、ピッチ、音量、又は持続時間などの、音響信号を構成する様々な特性を備え得る。第2の航空機部品に対する第1の航空機部品の固定中において固定デバイスによって発せられる音響信号は、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続に欠陥が存在するかどうかを示し得る。例えば、固定デバイスは、第1の航空機部品が第2の航空機部品に正しく固定されている場合に、第1の特徴を有する音声を出し得、第1の航空機部品が第2の航空機部品に間違って固定されている場合に、異なる第2の音声を出し得る。固定デバイスによって発せられる音声は、固定デバイスの特徴も示し得る。例えば、固定デバイスによって発せられる音声は、固定デバイスの一部における摩耗の量を示し得、固定デバイスの点検が必要な場合を示し得る。これは、故障前に固定デバイスを点検することを可能にし得、これは、停止時間を低減し得る。音声特徴は、音響信号のピッチを備え得る。音声特徴は、音響信号の持続時間を備え得る。
【0009】
固定デバイスは、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するツールを備え得る。固定デバイスは、インパクトドライバ、スパナ、ドリル、六角スパナ、スクリュードライバ、又は任意の他の好適なツールを備え得る。
【0010】
当該方法は、固定デバイスを使用して、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間に締結具を施すことによって第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定することを含み得る。締結具は、ナット、ボルト、ねじ、ワイヤ、リベット、釘、又は任意の他の好適な締結具を備え得る。
【0011】
第1の航空機部品は、片側締結具によって第2の航空機部品に固定され得る。これは、締結具の片側から締結具を固定することを可能にし得る。
【0012】
当該方法は、固定デバイスを使用して、航空機組立プロセス中に第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定することを含み得る。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するシステムであって、使用時に機械的接続を用いて第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するように構成された固定デバイスと、使用時に固定デバイスによって発せられる音響信号を受信するように構成されたマイクと、マイクから入力を受信して、機械的接続の欠陥状態を示す情報を出力するように構成された機械学習モデルを記憶するメモリを備える制御モジュールと、を備える、システムが提供される。
【0014】
システムは、機械的接続を手動で検査する必要なく機械的接続の欠陥状態を判断することを可能にする。欠陥状態は、機械的接続が正しい取付けではなく、したがって、検査を必要とすることであり得る。オペレータは、欠陥を有すると判断された機械的接続を検査するだけでよく、これは、固定プロセスの速度を上げ得る。
【0015】
固定デバイスは、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するツールを備え得る。固定デバイスは、インパクトドライバ、スパナ、ドリル、六角スパナ、スクリュードライバ、又は任意の他の好適なツールを備え得る。
【0016】
固定デバイスは、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間に締結具を施すことによって第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するように構成され得る。締結具は、ナット、ボルト、ねじ、ワイヤ、リベット、釘、又は任意の他の好適な締結具を備え得る。
【0017】
固定デバイスは、航空機組立プロセス中に第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するように構成され得る。
【0018】
メモリは命令を備え得、当該命令は、実行されると、システムに本発明の第1の態様に係る方法を実行させる。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の特徴を判断する方法であって、当該方法は、固定デバイスを使用して第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定することと、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定している間に固定デバイスの特性を監視することと、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定している間に発せられる音響信号を監視することと、固定デバイスの特性及び音響信号に基づいて、機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断することと、を含む、方法が提供される。
【0020】
本方法は、物理的又は視覚的な検査を必要とすることなく機械的接続の特徴を判断することを可能にし得る。これは、機械的接続を全て手動で検査する必要があるわけではないため、製造プロセスの速度を上げ得る。固定デバイスの特性は、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の質などの機械的接続の特徴を示し得る。当該方法は、機械的接続の視覚的な検査を行うことなく機械的接続の特徴を判断することを可能にし得るため、視覚的な検査が可能でない場所に機械的接続がある場合(例えば、接続が邪魔されている場合)に機械的接続の特徴を判断することも可能であり得る。
【0021】
機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断することは、特性閾値に対して固定デバイスの特性を比較することと、音響信号閾値に対して音響信号を比較することと、を含み得る。固定デバイスの特性が、特性閾値から所定量よりも小さくずれている場合、これは、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の接続が所望の要件を満たしており、(例えば、物理的及び/又は視覚的な検査による)手動の検査を必要としないことを示し得る。音響信号閾値に対して音響信号を比較することは、固定デバイスの特性と特性閾値との間の比較を検証するのに役立つ場合があって、誤検出が生じる(固定デバイスの特性と特性閾値との間の比較が、接続が所望の要件を満たしていないときに満たしていると間違って示す)可能性を低減し得る。
【0022】
当該方法は、音響信号が、音響信号閾値から所定量よりも大きくずれている場合に、表示を提供することを含み得る。音響信号閾値は、例えば、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の接続が所望の要件を満たしていない場合に、機械的接続を手動で検査することが推奨される閾値であり得る。音響信号が音響信号閾値を超えている場合に表示を提供することは、機械的接続が検査を必要とする場合をオペレータに迅速且つ容易に知らせることを可能にし得る。音響信号閾値は、機械的接続の既知の特徴に関する音響信号のバンクから判断され得る。
【0023】
表示は、可聴信号を備え得る。可聴信号は、機械的接続を検査する必要があることをオペレータに迅速且つ容易に警告することを可能にし得る。可聴信号は、アラームであってもよく、及び/又は行うべき動作を含む話し言葉の命令を備えてもよい。表示は、視覚的なインジケータを備え得る。視覚的なインジケータは、騒がしい環境であってもオペレータが表示を見ることを可能にし得る。視覚的なインジケータは、音響信号閾値を超えたことを示すスクリーン上のディスプレイを備え得る。視覚的なインジケータは、音響信号を示す情報を含み得る。これは、機械的接続の手動の検査が必要であるかどうかをユーザが確認することを可能にし得る。例えば、音響信号が誤差範囲内にある場合、オペレータは、手動の検査が必要でないことを判断し得る。
【0024】
音響信号閾値に対して音響信号を比較することは、音響信号閾値に対して音響信号の音声特徴を比較することを含み得る。音声特徴は、周波数、トーン、ピッチ、音量、又は持続時間などの、音響信号を構成する様々な特性を備え得る。音響信号の音声特徴は、音響信号のピッチ又は音響信号の持続時間のうちの少なくとも一方を備え得る。
【0025】
機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断することは、音響信号を示す情報を機械学習モデルに入力することを含み得、機械学習モデルは、欠陥状態を示す出力を提供するように構成されている。機械学習モデルは、音響信号を示す情報を入力として備え、欠陥状態を出力として備え得る。このような機械学習モデルは、その出力を、訓練データのセットに基づいて、例えば、教師あり学習プロセスにおいてグラウンドトゥルース値でラベル付けされた訓練データのセットに基づいて提供するように訓練され得る。例えば、既知の欠陥状態を伴う複数の音響信号は、機械学習モデルを訓練するために使用され得る。別の例では、測定されたデータは、訓練データセットを形成し得る。一部の例では、機械学習モデルは、当該方法によって取得されるデータに基づいてリアルタイムに更新され得る。一部の例では、機械学習モデルは、ニューラルネットワークを備え得る。
【0026】
固定デバイスの特性は、固定デバイスに提供される電流を備え得る。電流は、固定デバイスに印加されている電力/固定デバイスによって使用されている電力を示し得る。電流の増加又は減少は、第1の部品と第2の部品との間の機械的接続における不具合又は不整合を示し得る。
【0027】
固定デバイスの特性は、固定デバイスによって加えられるトルクを備え得る。トルクの増加又は減少は、第1の部品と第2の部品との間の機械的接続における不具合又は不整合を示し得る。
【0028】
音響信号は、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定している間に固定デバイスによって発せられる音声を含み得る。第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定している間に固定デバイスによって発せられる音声は、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の質を示し得る。例えば、固定デバイスは、第1の航空機部品が第2の航空機部品に正しく固定されている場合に、第1の特徴を有する音声を発してもよく、第1の航空機部品が第2の航空機部品に間違って固定されている場合に、異なる第2の音声を発してもよい。固定デバイスによって発せられる音声は、固定デバイスの特徴も示してもよい。例えば、固定デバイスによって発せられる音声は、固定デバイスの一部における摩耗の量を示してもよく、固定デバイスの点検が必要な場合を示してもよい。これは、故障前に固定デバイスを点検することを可能にすることができ、停止時間を低減し得る。
【0029】
第1の航空機部品は、締結具によって第2の航空機部品に固定され得、音響信号は、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定している間に締結具によって発せられる音声を有してもよい。締結具によって発せられる音声は、締結具が正しく固定されているかどうかに応じて異なる特徴を有してもよい。したがって、締結具によって発せられる音声の監視は、締結具が正しく施されているかどうかを示し得る。音響信号は、第1の航空機部品及び/又は第2の航空機部品によって発せられる音声を含み得る。締結具は、片側締結具を備え得る。これは、締結具の片側から締結具を固定することを可能にし得る。
【0030】
音響信号は、固定デバイスに取り付けられた音響センサによって監視され得る。音響センサを固定デバイスに設けることは、引き続き第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するごとに、同じ位置から音響信号を監視することを保証するのに役立ち得る。これにより、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の特徴に関する判断の一貫性を向上させることができる。
【0031】
固定デバイスは、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するツールを備え得る。固定デバイスは、インパクトドライバ、スパナ、ドリル、六角スパナ、スクリュードライバ、又は任意の他の好適なツールを備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
ここで、本発明の実施形態は、添付の図面を参照して例示としてのみ記載される。
図1図1は、第1の航空機部品を第2の航空機部品に固定するシステムの概略図を示す。
図2図2は、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続を監視する方法のフロー図を示す。
図3図3は、第1の航空機部品と第2の航空機部品との間の機械的接続の特徴を判断する方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示されるように、第1の航空機部品12を第2の航空機部品14に固定するシステム10は、固定デバイス16(この例では、インパクトドライバ)と、マイク18と、制御モジュール20と、ディスプレイ23と、を備える。
【0034】
使用時、固定デバイス16は、締結具22を第1の航空機部品12及び第2の航空機部品14に施して、第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間の機械的接続を形成する。締結具22は、締結具22の片側から(例えば、図1において第1の航空機部品12の左側における締結具22の部分から)締結具22が固定(例えば、締付)されるような片側締結具であり得る。例えば、第1の航空機部品12は、ウイングのカバーであり得、第2の航空機部品14は、ウイングのリブである。他の例では、第2の航空機部品14は、桁フランジである。
【0035】
制御モジュール20は、固定デバイス16、マイク18、及びディスプレイ23と通信する。制御モジュール20は、機械学習モデルが記憶されたメモリ21を備える。機械学習モデルは、固定デバイス16及び/又はマイク18から情報を受信して、機械的接続の検査が必要であるかどうかを示す欠陥状態を出力するように構成されている。
【0036】
本文脈における機械学習モデルは、訓練データセットから学習する機械学習アルゴリズムを主に採用する機械学習訓練プロセスの出力であると考えられ得る。機械学習モデルは主に、データと、入力を処理して出力を生成するためにデータを使用する手順の両方から構成される。
【0037】
本明細書における例で使用される機械学習モデルは、人工ニューラルネットワーク又は単に「ニューラルネットワーク」の形態の分類器である。ニューラルネットワークは、人工ニューロン又はニューロンと称され得る多数の相互接続されたノードを含む。ニューロンの内部状態(ニューロンの「活性化」と称されることもある)は、ニューロンによって受信される入力に依存する。各入力に適用されるデータの値は、重み付けされ合計されて、ニューロンの出力を判断するために重み付き入力を合計する「活性化関数」に適用される。活性化関数は、ニューロンの活性化に閾値を設けることによってニューロンの出力を制御する「バイアス」も有する。そして、ニューロンの出力は、入力、重み、バイアス、及び活性化関数に依存する。一部のニューロンの出力は、他のニューロンの入力に接続されて、グラフの(ニューロンに対応する)頂点又は(接続に対応する)エッジがそれぞれ重みに関連付けられた重み付き有向グラフを形成する。ニューロンは、ある層における所与のニューロンから、ニューラルネットワークの連続する層における1つ以上のニューロンに情報が流れ得るように層状に配置され得る。
【0038】
ニューラルネットワークの訓練は、高度な精度を確実に満たすことが重要である。例えば、ニューラルネットワークの「訓練可能なパラメータ」は、ニューラルネットワーク「訓練」プロセス中に「学習」されるか又は換言すれば訓練可能な、重み、バイアス、及びニューロン接続である。
【0039】
ニューラルネットワークを訓練するプロセスは、ニューラルネットワーク内のニューロンを接続する重み、及びニューロンの出力を制御する活性化関数のバイアスを自動的に調整することを含む。ニューラルネットワークには、既知の分類を有する訓練入力データを含む訓練データセットが提示される。本明細書における例では、入力訓練データは、欠陥状態で分類された(すなわち、検査が必要であるような、機械的接続に関する欠陥が存在するかどうかを示す)、マイク18によって検出される音響信号を含む。訓練データセットは、第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間の以前の接続中に行われた観測から収集される。訓練プロセスは、重み及びバイアスを自動的に調整し、その結果、ニューラルネットワークは、入力データが提示されると、対応する出力を正確に提供する。本明細書に記載される訓練は教師ありであるが、他の例では、訓練は(入力訓練データのみが提供されるような)教師なしであってもよい。
【0040】
ディスプレイ23は、機械的接続の検査が必要であるかどうかに関する視覚的な表示を提供するように、欠陥状態(又は欠陥状態を示す情報)を視覚的に表示するように構成されている。図1では、ディスプレイ23は、固定デバイス16から離れて示されているが、一部の例では、ディスプレイ23は、固定デバイス16の一部である。
【0041】
第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間の良好な機械的接続を保証するために、機械的接続の特徴(例えば、質)を判断することが望ましい。これは、(例えば、締結具22の機械的接続を含む)機械的接続の視覚的及び/又は物理的な検査によって達成され得るが、容易にアクセス可能でない場所に締結具22が施されるとき、そのような検査は難しい場合がある。更に、第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間の全ての機械的接続を視覚的に検査することは困難で時間がかかる場合があって、これにより、不必要な遅延が組立プロセスに追加される場合がある。図1のシステム10は、機械的接続の特徴を判断して、検査が必要であるかどうかを判断するための別の方法を提供する。
【0042】
図2は、例えば、図1のシステム10を使用して、第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間の機械的接続を監視する方法100を示すフロー図を示す。方法100は、上述のような訓練データセットを使用して、制御モジュール20に記憶された機械学習モデルを訓練すること102を含む。一部の例では、例えば、機械学習モデルが既に訓練されている場合、機械学習モデルを訓練するステップは省略され得る。
【0043】
当該方法は、固定デバイス16を使用して片側締結具22を施すことによって、第1の航空機部品12を第2の航空機部品14に固定すること104を含む。締結具22が施されている間、固定デバイス16によって出される音声の(ピッチ及び持続時間を含む)音声特徴などの、固定デバイス16によって発せられる音響信号を示す情報は、マイク18によって取得される(106)。
【0044】
音響信号を示す情報は、制御モジュール20に記憶された機械学習モデルに入力されて(108)、機械学習モデルは、機械的接続の欠陥状態を出力する。欠陥状態は、機械的接続に関する欠陥が存在するかどうか、及び機械的接続の検査が必要であるかどうかを示す。機械学習アルゴリズムの出力は、機械的接続の検査が必要であるかどうかをオペレータが迅速且つ容易に調べることができるように、ディスプレイ23上に示される。一部の例では、ディスプレイ23は省略される。他の例では、ディスプレイ23に加えて、又はディスプレイ23の代わりに、(スピーカから発せられる警告などの)可聴インジケータが提供される。
【0045】
図2の方法は、(例えば、視覚的及び/又は物理的な検査を通じて)各機械的接続を手動で検査する必要なく欠陥状態を判断することを可能にし得る。これは、固定プロセス、したがって、組立プロセス全体の速度を上げ得る。
【0046】
図3は、例えば、図1のシステム10を使用して、第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間の機械的接続の特徴を判断する方法200のフロー図を示す。当該方法は、固定デバイス16を使用して第1の部品12を第2の部品14に固定すること202を含む。固定デバイスは、第1の航空機部品12と第2の航空機部品14との間に締結具22を施して、第1の航空機部品12を第2の航空機部品14に固定する。
【0047】
第1の航空機部品12を第2の航空機部品14に固定している間、当該方法は、固定デバイス16の特性を監視すること204を含む。この例では、特性は、固定デバイス16によって締結具22にかけられるトルクであるが、特性は、固定デバイス16に供給される電流/固定デバイス16によって使用される電流などの固定デバイス16の別の特性であり得る。固定デバイス16によってかけられるトルクは、締結具22が正しく施されているかどうかに応じて変化する。したがって、固定デバイス16のトルクは、締結具22が正しく施されているかどうか、したがって、機械的接続の検査が必要であるかどうかを示すために使用することができる。
【0048】
方法200は、第1の航空機部品12を第2の航空機部品14に固定している間に固定デバイス16によって発せられる音響信号を監視すること206を更に含む。音響信号は、固定デバイス16に取り付けられたマイク18によって監視される。固定デバイス16によって発せられる音響信号において、機械的接続に関する欠陥が存在するかどうか(例えば、締結具22が間違って施されているかどうか)に応じて、例えば、ピッチ又は持続時間が異なり得る。したがって、音響信号は、欠陥が存在するかどうか、したがって、機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断するために、固定デバイス16の特性と共に、又は当該特性の代わりに使用され得る。
【0049】
機械的接続の検査が必要であるかどうかを判断するために、第1の例では、固定デバイス16の特性は、特性閾値に対して比較される。特性閾値は、固定デバイス16の特性の値であって、それを超えると、機械的接続に関する欠陥を示す。固定デバイス16の特性が、特性閾値から所定量よりも大きくずれている場合、出力は、機械的接続の検査が必要であることを(例えば、オペレータに)示すために提供される。
【0050】
固定デバイス16の特性が、特性閾値から所定量よりも小さくずれており、欠陥が存在せず、機械的接続が検査を必要としていないことを示す場合、方法200は、音響信号閾値に対して音響信号を比較することを含む。音響信号閾値は、音響信号の値であって、それを超えると、機械的接続に欠陥があることを示す。音響信号が、所定量よりも大きく音響信号閾値を超える場合、出力は、機械的接続の検査が必要であることを示すために提供される。音響信号閾値に対して音響信号を比較することによって、固定デバイス16の特性が特性閾値から所定量よりも大きくずれていない場合でも、検査が必要であるかどうかの追加の確認が提供される。これは、誤検出が発生する可能性、例えば、機械的接続に欠陥が存在するが、固定デバイス16の特性は機械的接続の検査が不要であることを示す場合等、を低減するのに役立ち得る。
【0051】
第2の例では、音響信号(又は音響信号のピッチ及び/若しくは持続時間を含む音声特徴などの音響信号を示す情報)は、機械学習モデル(図1及び図2に関して述べられた機械学習モデルなど)に入力され、機械的接続を検査する必要があるかどうかを判断する。
【0052】
機械学習モデルは、欠陥状態を出力として提供するように構成されており、欠陥状態は、機械的接続の検査が必要であるかどうかを示す。欠陥状態は、機械的接続の検査が必要であるかどうかをオペレータが迅速且つ容易に調べることができるように、ディスプレイ23(又は他の好適なデバイス)上に表示される。一部の例では、欠陥状態は、音声インジケータ(スピーカによって発せられるアラームなど)によっても、又は代替的に伝えられる。
【0053】
図3の方法は、各機械的接続を手動で検査する必要なく(例えば、視覚的及び/又は物理的な検査を通じて)、欠陥状態を判断することを可能にし、これによって、固定固定、したがって、組立工程全体の速度を上げ得る。
【0054】
本明細書において使用される「又は」という用語は、特に明示的に述べられていない限り、「及び/又は」を意味するように解釈されるべきであることに留意されたい。
図1
図2
図3
【外国語明細書】