(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006509
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
F15B 20/00 20060101AFI20240110BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F15B20/00 D
E02F9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107432
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】清水 自由理
(72)【発明者】
【氏名】岡野 一
(72)【発明者】
【氏名】平工 賢二
【テーマコード(参考)】
2D003
3H082
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003FA02
3H082AA01
3H082BB27
3H082CC02
3H082DA06
3H082DA18
3H082DA46
3H082EE02
(57)【要約】
【課題】作業装置を駆動するためのアクチュエータと複数の油圧ポンプとの間で閉回路を構成して当該アクチュエータを駆動する場合において、当該アクチュエータの圧力を計測する圧力センサが故障した場合の操作性低下を抑制することが可能な建設機械を提供する。
【解決手段】コントローラ57は、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bを故障と判定した場合に、姿勢センサ400~403の計測値に基づいてアクチュエータ1,3,5の疑似圧力を算出し、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値の代わりに前記疑似圧力を用いて閉回路切換弁前後差圧を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、
前記作業装置を駆動するアクチュエータと、
2つの流出入ポートを有する可変容量式の複数の閉回路ポンプと、
前記アクチュエータと前記複数の閉回路ポンプとの連通または遮断を切換可能な複数の閉回路切換弁と、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢センサと、
前記複数の閉回路ポンプの圧力を検出する複数の閉回路ポンプ圧力センサと、
前記アクチュエータの圧力を検出するアクチュエータ圧力センサと、
前記アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置からの入力信号に応じて前記複数の閉回路切換弁および前記複数の閉回路ポンプを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記複数の閉回路ポンプのうちの1つの閉回路ポンプから前記アクチュエータに作動油の供給を開始する際に、前記複数の閉回路切換弁のうちの前記1つの閉回路ポンプに対応する1つの閉回路切換弁を閉じた状態で前記1つの閉回路ポンプに対応する1つの閉回路ポンプ圧力センサの計測値と前記アクチュエータ圧力センサの計測値との差分である閉回路切換弁前後差圧が所定の第1閾値以下となるように前記1つの閉回路ポンプを制御した後に前記1つの閉回路切換弁を開く建設機械において、
前記コントローラは、
前記複数の閉回路ポンプのうち2以上の閉回路ポンプが前記アクチュエータに接続された状態で、前記複数の閉回路ポンプ圧力センサのうち前記2以上の閉回路ポンプに対応する2以上の閉回路ポンプ圧力センサの計測値と前記アクチュエータ圧力センサの計測値とに基づいて前記アクチュエータ圧力センサの故障の有無を判定し、
前記アクチュエータ圧力センサを故障と判定した場合に、前記姿勢センサの計測値に基づいて前記アクチュエータの疑似圧力を算出し、前記アクチュエータ圧力センサの計測値の代わりに前記疑似圧力を用いて前記閉回路切換弁前後差圧を算出する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
流入ポートおよび流出ポートを有する可変容量式の複数の開回路ポンプと、
前記複数の開回路ポンプを前記アクチュエータに接続可能な複数の開回路切換弁と、
前記複数の開回路ポンプの圧力を検出する複数の開回路ポンプ圧力センサとを備え、
前記コントローラは、
前記複数の開回路ポンプのうちの1つの開回路ポンプから前記アクチュエータに作動油の供給を開始する際に、前記複数の開回路切換弁のうちの前記1つの開回路ポンプに対応する1つの開回路切換弁を閉じた状態で前記1つの開回路ポンプに対応する1つの開回路ポンプ圧力センサの計測値と前記アクチュエータ圧力センサの計測値との差分である開回路切換弁前後差圧が前記第1閾値以下となるように前記1つの開回路ポンプを制御した後に前記1つの開回路切換弁を開き、
前記複数の開回路ポンプのうち2以上の開回路ポンプが前記アクチュエータに接続された状態で、前記複数の開回路ポンプ圧力センサのうち前記2以上の開回路ポンプに対応する2以上の開回路ポンプ圧力センサの計測値と前記アクチュエータ圧力センサの計測値とに基づいて前記アクチュエータ圧力センサの故障の有無を判定し、
前記アクチュエータ圧力センサを故障と判定した場合に、前記アクチュエータ圧力センサの計測値の代わりに前記疑似圧力を用いて前記開回路切換弁前後差圧を算出する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記コントローラは、前記2以上の閉回路ポンプと前記2以上の開回路ポンプとが前記アクチュエータに接続された状態で、前記アクチュエータ圧力センサ、前記2以上の閉回路ポンプ圧力センサ、および前記2以上の開回路ポンプ圧力センサに含まれる2つの圧力センサの組み合わせごとに計測値の差分を算出し、前記差分が所定の第2閾値よりも大きくなる2以上の組み合わせに含まれる圧力センサを故障と判定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
前記コントローラから出力された情報を表示可能な表示装置を備え、
前記コントローラは、前記アクチュエータ圧力センサ、前記2以上の閉回路ポンプ圧力センサ、および前記2以上の開回路ポンプ圧力センサに含まれる1つの圧力センサを故障と判定した場合に、前記1つの圧力センサの識別情報を前記表示装置に出力する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記コントローラは、前記姿勢センサで検出された姿勢を前記作業装置が無負荷の状態で取ったときの前記アクチュエータの圧力以上の値となるように前記疑似圧力を算出する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記コントローラの入出力を調整可能な圧力センサ故障診断入力生成装置を備え、
前記コントローラは、前記圧力センサ故障診断入力生成装置により入出力を調整されることにより、前記作業装置が所定の姿勢を取るように前記複数の閉回路ポンプ、前記複数の閉回路切換弁、前記複数の開回路ポンプ、および前記複数の開回路切換弁を制御した後、前記複数の閉回路ポンプの吐出流量をゼロにした状態で前記複数の閉回路ポンプが前記アクチュエータに接続された状態を維持し、前記複数の開回路ポンプの吐出流量をゼロにした状態で前記複数の開回路ポンプが前記アクチュエータに接続された状態を維持する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ポンプから吐出される圧油により油圧アクチュエータを駆動する油圧回路を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルなどの建設機械において、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータを駆動させる油圧回路内の絞り要素を減らし燃料消費率を低減する為に、油圧ポンプなどの油圧駆動源から作動油を油圧アクチュエータへ送り、油圧アクチュエータで仕事を行った作動油をタンクに戻さず油圧ポンプへ戻すように接続した油圧回路(閉回路と定義する)の開発が進められている。さらに、閉回路を適用したショベルにおいて、片ロッドシリンダの受圧面積差を補償するためにキャップ室側にポンプを接続した構成が提案されている。
【0003】
これらの油圧回路において、1つのアクチュエータに複数のポンプを冗長に接続可能な構成とすることで、複数のアクチュエータによる複合操作と、単独動作時の速度向上を実現する構成が提案されている。この様なポンプの接続先アクチュエータが変更可能な油圧回路ではポンプとアクチュエータの接続と遮断を切り換える必要がある。この際、アクチュエータとポンプの差圧が大きいとショックが発生する。特許文献1には、アクチュエータとポンプの圧力差を小さくしてからポンプとアクチュエータを接続する油圧駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、アクチュエータ圧を圧力センサで計測し、計測されたアクチュエータ圧までポンプ圧を上昇させてから、ポンプとアクチュエータを接続する。そのため、圧力センサが故障していた場合、ポンプとアクチュエータの接続前に実際のアクチュエータ圧とは異なる圧力にポンプ圧が昇圧されることにより、ポンプとアクチュエータの接続時にショックが発生し、操作性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業装置を駆動するためのアクチュエータと複数の油圧ポンプとの間で閉回路を構成して当該アクチュエータを駆動する場合において、当該アクチュエータの圧力を計測する圧力センサが故障した場合の操作性低下を抑制することが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、作業装置と、前記作業装置を駆動するアクチュエータと、2つの流出入ポートを有する可変容量式の複数の閉回路ポンプと、前記アクチュエータと前記複数の閉回路ポンプとの連通または遮断を切換可能な複数の閉回路切換弁と、前記作業装置の姿勢を検出する姿勢センサと、前記複数の閉回路ポンプの圧力を検出する複数の閉回路ポンプ圧力センサと、前記アクチュエータの圧力を検出するアクチュエータ圧力センサと、前記アクチュエータの動作を指示する操作装置と、前記操作装置からの入力信号に応じて前記複数の閉回路切換弁および前記複数の閉回路ポンプを制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記複数の閉回路ポンプのうちの1つの閉回路ポンプから前記アクチュエータに作動油の供給を開始する際に、前記複数の閉回路切換弁のうちの前記1つの閉回路ポンプに対応する1つの閉回路切換弁を閉じた状態で前記1つの閉回路ポンプに対応する1つの閉回路ポンプ圧力センサの計測値と前記アクチュエータ圧力センサの計測値との差分である閉回路切換弁前後差圧が所定の第1閾値以下となるように前記1つの閉回路ポンプを制御した後に前記1つの閉回路切換弁を開く建設機械において、前記コントローラは、前記複数の閉回路ポンプのうち2以上の閉回路ポンプが前記アクチュエータに接続された状態で、前記複数の閉回路ポンプ圧力センサのうち前記2以上の閉回路ポンプに対応する2以上の閉回路ポンプ圧力センサの計測値と前記アクチュエータ圧力センサの計測値とに基づいて前記アクチュエータ圧力センサの故障の有無を判定し、前記アクチュエータ圧力センサを故障と判定した場合に、前記姿勢センサの計測値に基づいて前記アクチュエータの疑似圧力を算出し、前記アクチュエータ圧力センサの計測値の代わりに前記疑似圧力を用いて前記閉回路切換弁前後差圧を算出するものとする。
【0008】
以上のように構成した本発明によれば、アクチュエータ圧力センサの計測値と2以上の閉回路ポンプ圧力センサの計測値との比較結果に基づいて、アクチュエータ圧力センサの故障を正しく判定することが可能となる。また、アクチュエータ圧力センサが故障した場合に、故障した圧力センサの計測値に代えて、作業装置の姿勢に応じて算出したアクチュエータの疑似圧力を用いて閉回路切換弁の前後差圧が算出される。その結果、閉回路ポンプをアクチュエータに接続する際のショックが抑制されるため、操作性低下を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る建設機械よれば、作業装置を駆動するアクチュエータの圧力を計測する圧力センサが故障した場合の操作性低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態における油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態における油圧ショベルに搭載される油圧駆動装置の油圧回路図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるコントローラの機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるブームシリンダを伸長動作させた場合の油圧駆動装置の状態変化を示すタイムチャートである。
【
図5】本発明の実施形態における圧力センサ故障検出部の処理の一部を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態におけるアームシリンダを伸長動作させた場合の油圧ショベルの姿勢変化を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態におけるアームシリンダのストロークとキャップ室の圧力との関係を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態における圧力センサ故障診断入力生成部の処理を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態における圧力センサ故障診断入力生成装置の入力に応じた油圧駆動装置の状態変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る建設機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0012】
図1は本実施形態における油圧ショベルの側面図であり、
図2は本実施形態における油圧ショベルに搭載される油圧駆動装置の油圧回路図である。
【0013】
図1に示すように、油圧ショベル100は、左右方向の両側にクローラ式の走行装置101a,101bを備えた下部走行体102と、下部走行体102上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体103とを備えている。上部旋回体103上には、オペレータが搭乗するキャブ104が設けられている。上部旋回体103は、下部走行体102に旋回装置105を介して下旋回可能に取り付けられている。走行装置101a,101bは走行モータ8a,8b(
図2に示す)によって駆動され、旋回装置105は旋回モータ7(
図2に示す)によって駆動される。
【0014】
上部旋回体103の前側には、例えば掘削作業等を行うための作業装置であるフロント作業機106の基端部が上下方向に回動可能に取り付けられている。フロント作業機106は、上部旋回体103の前側に基端部が上下方向に回動可能に連結されたブーム2を備えている。ブーム2は、供給される流体としての作動油(圧油)にて駆動する片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1を介して動作する。ブームシリンダ1は、ロッド1cの先端部が上部旋回体103に連結され、シリンダチューブ1dの基端部がブーム2に連結されている。
【0015】
ブームシリンダ1は、
図2に示すように、シリンダチューブ1dの基端側に位置し作動油が供給されることによりロッド1cの基端部に取り付けられたピストン1eを押圧して作動油圧による荷重を与えて、ロッド1cを伸長移動させるキャップ側の第1作動油室であるキャップ室1aを備えている。また、ブームシリンダ1は、シリンダチューブ1dの先端側に位置し作動油が供給されることによりピストン1eを押圧して作動油圧による荷重を与えて、ロッド1cを縮退移動させるロッド側の第2作動油室としてのロッド室1bを備えている。
【0016】
図1に戻り、ブーム2の先端部には、アーム4の基端部が俯仰動可能に連結されている。アーム4は、片ロッド式油圧シリンダであるアームシリンダ3を介して動作する。アームシリンダ3は、ロッド3cの先端部がアーム4に連結され、アームシリンダ3のシリンダチューブ3dがブーム2に連結されている。
【0017】
アームシリンダ3は、
図2に示すように、シリンダチューブ3dの基端側に位置し作動油が供給されることによりロッド3cの基端部に取り付けられたピストン3eを押圧して、ロッド3cを伸長移動させるキャップ室3aを備えている。また、アームシリンダ3は、シリンダチューブ3dの先端側に位置し作動油が供給されることによりピストン3eを押圧して、ロッド3cを縮退移動させるロッド室3bを備えている。
【0018】
図1に戻り、アーム4の先端部には、バケット6の基端部が俯仰動可能に連結されている。バケット6は、供給される作動油にて駆動する油圧アクチュエータとしての片ロッド式油圧シリンダであるバケットシリンダ5を介して動作する。バケットシリンダ5は、ロッド5cの先端部がバケット6に連結され、バケットシリンダ5のシリンダチューブ5dの基端がアーム4に連結されている。
【0019】
バケットシリンダ5は、
図2に示すように、シリンダチューブ5dの基端側に位置し作動油が供給されることによりロッド5cの基端部に取り付けられたピストン5eを押圧して、ロッド5cを伸長移動させるキャップ室5aを備えている。また、バケットシリンダ5は、シリンダチューブ5dの先端側に位置し作動油が供給されることによりピストン5eを押圧して、ロッド5cを縮退移動させるロッド室5bを備えている。
【0020】
なお、ブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5のそれぞれは、供給される作動油によって伸縮動作し、この供給される作動油の供給方向に応じて伸縮駆動される。本実施形態における油圧ショベル100はバックホウショベルであり、アームシリンダ3またはバケットシリンダ5を伸長させることにより、バケット6が後方に引き戻されるように構成されている。
【0021】
ブーム2には、姿勢角を計測可能な姿勢センサ400が設けられている。アーム4には、姿勢角を計測可能な姿勢センサ401が設けられている。バケット6には、姿勢角を計測可能な姿勢センサ402が設けられている。上部旋回体103には、旋回角と、上部旋回体の姿勢を計測可能な姿勢センサ403が設けられている。姿勢センサ403により、斜面に停車している場合の上部旋回体103の姿勢角も計測することができる。
【0022】
図2に示すように、油圧駆動装置107は、3種類の片ロッド式油圧シリンダおよび3種類の油圧モータに対し、閉回路接続された閉回路ポンプ4台と開回路接続された開回路ポンプ4台とを備え、片ロッド式油圧シリンダを駆動する際に、1台の閉回路ポンプと1台の開回路ポンプとを組み合わせて流量制御を行う。また、これら各油圧ポンプのそれぞれに切換弁を設け、1つの片ロッド式油圧シリンダに対し、複数の閉回路ポンプと複数の開回路ポンプとが合流できる構成とされている。さらに、1つの片ロッド式油圧シリンダへの合流時においては、1台の閉回路ポンプと1台の開回路ポンプとを組み合わせて合流するようにコントローラにて切換弁を制御する。
【0023】
油圧駆動装置107は、油圧ショベル100を駆動させるための駆動装置であり、上部旋回体103に搭載されている。油圧駆動装置107は、フロント作業機106を構成するブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5に加え、旋回モータ7および走行モータ8a,8bの駆動に用いられる。旋回モータ7および走行モータ8a,8bは、作動油の供給を受けて回転駆動する油圧モータである。
【0024】
また、油圧駆動装置107は、キャブ101内に設置された操作装置56の操作に応じて、油圧アクチュエータであるブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5、旋回モータ7、および走行モータ8a,8bを駆動させる。ここで、ブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5の伸縮動作、すなわち動作方向および動作速度は、操作装置56の各レバー56a~
56dの操作方向および操作量によって指示される。
【0025】
さらに、油圧駆動装置107は、動力源であるエンジン9を備えている。エンジン9は、例えば所定のギヤ等で構成され、動力を配分するための動力伝達装置10に接続されている。動力伝達装置10には、可変流量油圧ポンプである油圧ポンプ12,13,・・・,19と、後述する流路229に圧油を補充するチャージポンプ11とがそれぞれ接続されている。
【0026】
そして、油圧ポンプ12,14,16,18は、両方向に作動油を流出入可能な2つ、すなわち一対の流出入ポートとしての入出力ポートを有する両傾転斜板機構(図示せず)と、この両傾転斜板機構を構成する両傾転式の斜板の傾転角(傾斜角度)を調整するレギュレータ12a,14a,16a,18aとを備えた可変容量式の閉回路ポンプである。レギュレータ12a,14a,16a,18aは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、対応する閉回路ポンプ12,14,16,18の斜板の傾転角を調整して、閉回路ポンプ12,14,16,18から吐出される作動油の流量を制御する。また、閉回路ポンプ12,14,16,18は、作動油の供給を受けると油圧モータとして機能する。
【0027】
そして、油圧ポンプ13,15,17,19は、片方向に作動油を流出入が可能な流出ポートを有する片傾転斜板機構(図示せず)と、この片傾転斜板機構を構成する片傾転式の斜板の傾転角(傾斜角度)を調整するレギュレータ13a,15a,17a,19aとを備えた可変容量式の開回路ポンプである。レギュレータ13a,15a,17a,19aは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、対応する開回路ポンプ13,15,17,19の斜板の傾転角を調整して、開回路ポンプ13,15,17,19から吐出される作動油の流量を制御する。
【0028】
さらに、油圧ポンプ12,13,・・・,19の傾転斜板機構は、傾転角を検出する手段(図示せず)を備え、後述の
図4に示すタイムチャートで、切換弁の切換タイミングとして吐出流量をトリガにする際に使用することができる。または、油圧ポンプ12,13,・・・,19のレギュレータの制御圧力を計測する手段を備え、レギュレータ制御圧力から各ポンプの斜板の傾転状態、および吐出流量を計算しても良い。
【0029】
また、閉回路ポンプ12,14,16,18は,斜板の傾転角を2方向に制御するために,傾転角を最大角にする方向と最小にする方向の双方向に対してレギュレータによる駆動力を発生させられる構造であるのに対して、開回路ポンプ13,15,17,19は、斜板の傾転角を1方向に制御するために、レギュレータによる駆動力は傾転角を最大角にする方向のみに作用し、最小角への戻りはばねによる復元力に依存する。そのため,閉回路ポンプ12,14,16,18の方が、吐出量を減少させる方向に傾転角を制御する際の応答性が高い。
【0030】
具体的に、第1閉回路ポンプ12の一方の入出力ポートに流路200が接続され、他方の入出力ポートに流路201が接続されている。流路200,201には、複数、例えば4つの切換弁43a,43b,43c,43dが接続されている。切換弁43a,43b,43cは、第1閉回路ポンプ12に対して閉回路状に接続されたブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えるための閉回路切換弁である。また、切換弁43dは、第1閉回路ポンプ12に対して閉回路状に接続された旋回モータ7への作動油の供給を切り換えるための油圧モータ用の閉回路切換弁である。そして、切換弁43a,43b,43c,43dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路200,201の導通と遮断とを切り換える構成とされ、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態とされる。コントローラ57は、切換弁43a,43b,43c,43dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0031】
さらに、切換弁43aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続されている。よって、第1閉回路ポンプ12は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて切換弁43aが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43a、および流路212,213を介してブームシリンダ1に閉回路状に接続される閉回路Aを構成する。
【0032】
また、切換弁43bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続されている。よって、第1閉回路ポンプ12は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて切換弁43bが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43b、および流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続される閉回路Bを構成する。
【0033】
さらに、切換弁43cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続されている。よって、第1閉回路ポンプ12は、コントローラ57からの操作信号により切換弁43cが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43c、および流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続される閉回路Cを構成する。
【0034】
また、切換弁43dは、流路218,219を介して旋回モータ7に接続されている。よって、第1閉回路ポンプ12は、コントローラ57からの操作信号により切換弁43dが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43d、および流路218,219を介して旋回モータ7に閉回路状に接続される閉回路Dを構成する。
【0035】
ここで、流路212は、ブームシリンダ1を後述する開回路E,F,G,Hの複数の切換弁44a,46a,48a,50aへ独立して接続させるための油圧シリンダ用の接続流路でもある。また、流路214は、アームシリンダ3を後述する開回路E,F,G,Hの複数の切換弁44b,46b,48b,50bへ独立して接続させるための油圧シリンダ用の接続流路でもある。さらに、流路216は、バケットシリンダ5を、後述する開回路E,F,G,Hの複数の切換弁44c,46c,48c,50cへ独立して接続させるための油圧シリンダ用の接続流路でもある。
【0036】
また、第2閉回路ポンプ14の一方の入出力ポートに流路203が接続され、他方の入出力ポートに流路204が接続されている。流路203,204には、複数、例えば4つの切換弁45a,45b,45c,45dが接続されている。切換弁45a,45b,45cは、第2閉回路ポンプ14に対して閉回路状に接続されたブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えるための閉回路切換弁である。また、切換弁45dは、第2閉回路ポンプ14に対して閉回路状に接続された旋回モータ7への作動油の供給を切り換えるための油圧モータ用の閉回路切換弁である。そして、切換弁45a,45b,45c,45dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路203,204の導通と遮断とを切り換える構成とされ、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。コントローラ57は、切換弁45a,45b,45c,45dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0037】
さらに、切換弁45aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続されている。よって、第2閉回路ポンプ14は、コントローラ57からの操作信号により切換弁45aが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45a、および流路212,213を介してブームシリンダ1に閉回路状に接続される閉回路Aを構成する。また、切換弁45bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続されている。よって、第2閉回路ポンプ14は、コントローラ57からの操作信号により切換弁45bが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45b、および流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続される閉回路Bを構成する。
【0038】
さらに、切換弁45cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続されている。よって、第2閉回路ポンプ14は、コントローラ57からの操作信号により切換弁45cが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45c、および流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続される閉回路Cを構成する。また、切換弁45dは、流路218,219を介して旋回モータ7に接続されている。よって、第2閉回路ポンプ14は、コントローラ57からの操作信号により切換弁45dが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45d、および流路218,219を介して旋回モータ7に閉回路状に接続される閉回路Dを構成する。
【0039】
次いで、第3閉回路ポンプ16の一方の入出力ポートに流路206が接続され、他方の入出力ポートに流路207が接続されている。流路206,207には、複数、例えば4つの切換弁47a,47b,47c,47dが接続されている。切換弁47a,47b,47cは、第3閉回路ポンプ16に対して閉回路状に接続されたブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えるための閉回路切換弁である。また、切換弁47dは、第3閉回路ポンプ16に対して閉回路状に接続された旋回モータ7への作動油の供給を切り換えるための油圧モータ用の閉回路切換弁である。そして、切換弁47a,47b,47c,47dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路の導通と遮断とを切り換える構成とされ、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。コントローラ57は、切換弁47a,47b,47c,47dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0040】
さらに、切換弁47aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続されている。よって、第3閉回路ポンプ16は、コントローラ57からの操作信号により切換弁47aが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47a、および流路212,213を介してブームシリンダ1に閉回路状に接続される閉回路Aを構成する。また、切換弁47bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続されている。よって、第3閉回路ポンプ16は、コントローラ57からの操作信号により切換弁47bが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47b、および流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続される閉回路Bを構成する。
【0041】
また、切換弁47cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続されている。よって、第3閉回路ポンプ16は、コントローラ57からの操作信号により切換弁47cが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47c、および流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続される閉回路Cを構成する。さらに、切換弁47dは、流路218,219を介して旋回モータ7に接続されている。よって、第3閉回路ポンプ16は、コントローラ57からの操作信号により切換弁47dが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47d、および流路218,219を介して旋回モータ7と閉回路状に接続される閉回路Dを構成する。
【0042】
次いで、第4閉回路ポンプ18の一方の入出力ポートに流路209が接続され、他方の入出力ポートに流路210が接続されている。流路209,210には、複数、例えば4つの切換弁49a,49b,49c,49dが接続されている。切換弁49a,49b,49cは、第4閉回路ポンプ18に対して閉回路状に接続されたブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えるための閉回路切換弁である。また、切換弁49dは、第4閉回路ポンプ18に対して閉回路状に接続された旋回モータ7への作動油の供給を切り換えるための油圧モータ用の閉回路切換弁である。そして、切換弁49a,49b,49c,49dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路の導通と遮断とを切り換える構成とされ、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態とされる。コントローラ57は、切換弁49a,49b,49c,49dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0043】
そして、切換弁49aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続されている。よって、第4閉回路ポンプ18は、コントローラ57からの操作信号により切換弁49aが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49a、および流路212,213を介してブームシリンダ1と閉回路状に接続される閉回路Aを構成する。また、切換弁49bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続されている。よって、第4閉回路ポンプ18は、コントローラ57からの操作信号により切換弁49bが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49b、および流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続される閉回路Bを構成する。
【0044】
さらに、切換弁49cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続されている。よって、第4閉回路ポンプ18は、コントローラ57からの操作信号により切換弁49cが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49c、および流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続される閉回路Cを構成する。また、切換弁49dは、流路218,219を介して旋回モータ7に接続されている。よって、第4閉回路ポンプ18は、コントローラ57からの操作信号により切換弁49dが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49d、および流路218,219を介して旋回モータ7に閉回路状に接続される閉回路Dを構成する。
【0045】
さらに、第1開回路ポンプ13の一方の入出力ポートには、流路202を介して複数、例えば4つの切換弁44a,44b,44c,44dと、リリーフ弁21とが接続されている。第1開回路ポンプ13の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続されて開回路Eとされている。切換弁44a,44b,44c,44dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて流路202の導通と遮断とを切り換え、第1開回路ポンプ13から流出される作動油の供給先を、後述する連結流路301,302,303,304に切り換える開回路切換弁であり、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態とされる。コントローラ57は、切換弁44a,44b,44c,44dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0046】
また、切換弁44aは、連結流路301と流路212とを介してブームシリンダ1に接続されている。連結流路301は、流路212から分岐されて設けられた連結管路である。また、切換弁44bは、連結流路302と流路214とを介してアームシリンダ3に接続されている。連結流路302は、流路214から分岐されて設けられた連結管路である。さらに、切換弁44cは、連結流路303と流路216とを介してバケットシリンダ5に接続されている。連結流路303は、流路216から分岐されて設けられた連結管路である。また、切換弁44dは、連結流路304と流路220と介して、走行モータ8a,8bへの作動油の給排出を制御するコントロールバルブである比例切換弁54,55に接続されている。一方、リリーフ弁21は、流路202内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路202内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路202、ひいては油圧駆動装置107(油圧回路)を保護する。
【0047】
また、流路202と作動油タンク25との間には、圧力補償付きの流量調整弁としての比例弁64が接続されている。比例弁64は、切換弁44a,44b,44c,44dと第1開回路ポンプ13とを繋ぐ管路である流路202から分岐されて作動油タンク25へ繋がる管路である分岐流路202a上に設けられている。よって、比例弁64は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路202から作動油タンク25に流す作動油の流量を制御する。また、比例弁64は、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態とされる。
【0048】
さらに、第2開回路ポンプ15の一方の入出力ポートには、流路205を介して複数、例えば4つの切換弁46a,46b,46c,46dと、リリーフ弁22とが接続されている。第2開回路ポンプ15の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続されて開回路Fとされている。切換弁46a,46b,46c,46dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて流路205の導通と遮断とを切り換え、第2開回路ポンプ15から流出される作動油の供給先を、連結流路301,302,303,304に切り換える開回路切換弁であり、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態とされる。コントローラ57は、切換弁46a,46b,46c,46dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0049】
また、切換弁46aは、連結流路301および流路212を介してブームシリンダ1に接続されている。切換弁46bは、連結流路302および流路214を介してアームシリンダ3に接続されている。また、切換弁46cは、連結流路303および流路216を介してバケットシリンダ5に接続されている。切換弁46dは、連結流路304および流路220を介して比例切換弁54,55に接続されている。一方、リリーフ弁22は、流路205内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路205内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路205を保護する。
【0050】
また、流路205と作動油タンク25との間には、圧力補償付きの流量調整弁としての比例弁65が接続されている。比例弁65は、切換弁46a,46b,46c,46dと第2開回路ポンプ15とを繋ぐ管路である流路205から分岐されて作動油タンク25へ繋がる管路である分岐流路205a上に設けられている。よって、比例弁65は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路205から作動油タンク25に流す作動油の流量を制御する。また、比例弁65は、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態とされる。
【0051】
さらに、第3開回路ポンプ17の一方の入出力ポートには、流路208を介して複数、例えば4つの切換弁48a,48b,48c,48dと、リリーフ弁23とが接続されている。第3開回路ポンプ17の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続されて開回路Gとされている。切換弁48a,48b,48c,48dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて流路208の導通と遮断とを切り換え、第3開回路ポンプ17から流出される作動油の供給先を、連結流路301,302,303,304に切り換える開回路切換弁であり、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態とされる。コントローラ57は、切換弁48a,48b,48c,48dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0052】
また、切換弁48aは、連結流路301および流路212を介してブームシリンダ1に接続されている。切換弁48bは、連結流路302および流路214を介してアームシリンダ3に接続されている。また、切換弁48cは、連結流路303および流路216を介してバケットシリンダ5に接続されている。切換弁48dは、連結流路304および流路220を介して比例切換弁54,55に接続されている。一方、リリーフ弁23は、流路208内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路208内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路208を保護する。
【0053】
また、流路208と作動油タンク25との間には、圧力補償付きの流量調整弁としての比例弁66が接続されている。比例弁66は、切換弁48a,48b,48c,48dと第3開回路ポンプ17とを繋ぐ管路である流路208から分岐されて作動油タンク25へ繋がる管路である分岐流路208a上に設けられている。よって、比例弁66は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路208から作動油タンク25に流す流量を制御する。また、比例弁66は、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態とされる。
【0054】
さらに、第4開回路ポンプ19の一方の入出力ポートには、流路211を介して複数、例えば4つの切換弁50a,50b,50c,50dと、リリーフ弁24とが接続されている。第4開回路ポンプ19の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続されて開回路Hとされている。切換弁50a,50b,50c,50dは、コントローラ57から出力される操作信号に応じて流路211の導通と遮断とを切り換え、第4開回路ポンプ19から流出される作動油の供給先を、連結流路301,302,303,304に切り換える開回路切換弁であり、コントローラ57からの操作信号の出力がない場合は遮断状態とされる。コントローラ57は、切換弁50a,50b,50c,50dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0055】
また、切換弁50aは、連結流路301および流路212を介してブームシリンダ1に接続されている。切換弁50bは、連結流路302および流路214を介してアームシリンダ3に接続されている。また、切換弁50cは、連結流路303および流路216を介してバケットシリンダ5に接続されている。切換弁50dは、連結流路304および流路220を介して比例切換弁54,55に接続されている。一方、リリーフ弁24は、流路211内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路211内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路211を保護する。
【0056】
また、流路211と作動油タンク25との間には、圧力補償付きの比例弁67が接続されている。比例弁67は、切換弁50a,50b,50c,50dと第4開回路ポンプ19とを繋ぐ管路である流路211から分岐されて作動油タンク25へ繋がる管路である分岐流路211a上に設けられている。よって、比例弁67は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路211から作動油タンク25に流す作動油の流量を制御する。また、比例弁67は、コントローラ57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態とされる。
【0057】
ここで、連結流路301は、複数の開回路E,F,G,Hのうちの少なくとも1つの切換弁44a,46a,48a,50aの作動油が流出される側である吐出側に接続される開回路用接続流路305a,306a,307a,308aと、閉回路Aを構成する流路212に接続される閉回路用接続流路309aとで構成されている。連結流路302は、複数の開回路E,F,G,Hのうちの少なくとも1つの切換弁44b,46b,48b,50bの作動油が流出される側である吐出側に接続される開回路用接続流路305b,306b,307b,308bと、閉回路Bを構成する流路214に接続される閉回路用接続流路309bとで構成されている。連結流路303は、複数の開回路E,F,G,Hのうちの少なくとも1つの切換弁44c,46c,48c,50cの作動油が流出される側である吐出側に接続される開回路用接続流路305c,306c,307c,308cと、閉回路Cを構成する流路216に接続される閉回路用接続流路309cとで構成されている。また連結流路304は、複数の開回路E,F,G,Hのうちの少なくとも1つの切換弁44d,46d,48d,50dの作動油が流出される側である吐出側に接続される開回路用接続流路305d,306d,307d,308dと、流路220に接続される接続流路309dとで構成されている。
【0058】
油圧駆動装置107は、閉回路ポンプ12,14,16,18とブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5、および旋回モータ7とが、油圧ポンプの一方の入出力ポートからアクチュエータを介して他方の入出力ポートへ閉回路状に接続される閉回路A,B,C,Dから構成され、さらに開回路ポンプ13,15,17,19と、切換弁44a,44b,44c,44d,46a,46b,46c,46d,48a,48b,48c,48d,50a,50b,50c,50dとが、油圧ポンプの一方の入出力ポートに切換弁を接続し、他方の入出力ポートに作動油タンク25を接続した開回路E,F,G,Hとから構成されている。さらに、閉回路A,B,C,Dおよび開回路E,F,G,Hは、例えば4つずつ設けられ、対をなして設けられている。
【0059】
一方、チャージポンプ11の吐出口は、流路229を介してチャージ用リリーフ弁20、およびチャージ用チェック弁26,27,28,29,40a,40b,41a,41b,42a,42bに接続されている。チャージポンプ11の吸込口は、作動油タンク25に接続されている。ここで、チャージ用リリーフ弁20は、チャージ用チェック弁26,27,28,29,40a,40b,41a,41b,42a,42bのチャージ圧力を調整する。
【0060】
また、チャージ用チェック弁26は、流路200,201内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路200,201にチャージポンプ11から作動油を供給する。同様に、チャージ用チェック弁27は、流路203,204内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路203,204にチャージポンプ11から作動油を供給する。また、チャージ用チェック弁28は、流路206,207内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路206,207にチャージポンプ11から作動油を供給する。同様に、チャージ用チェック弁29は、流路209,210内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路209,210にチャージポンプ11から作動油を供給する。
【0061】
さらに、チャージ用チェック弁40a,40bは、流路212,213内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路212,213にチャージポンプ11から作動油を供給する。同様に、チャージ用チェック弁41a,41bは、流路214,215内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路214,215にチャージポンプ11から作動油を供給する。また、チャージ用チェック弁42a,42bは、流路216,217内の作動油圧が,チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路216,217にチャージポンプ11から作動油を供給する。
【0062】
また、流路200,201間には、一対のリリーフ弁30a,30bが接続されている。リリーフ弁30a,30bは、流路200,201内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路200,201内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路200,201を保護する。同様に、流路203,204間には、一対のリリーフ弁31a,31bが接続されている。リリーフ弁31a,31bは、流路203,204内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路203,204内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路203,204を保護する。
【0063】
さらに、流路206,207間にもまた、リリーフ弁32a,32bが接続されている。リリーフ弁32a,32bは、流路206,207内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路206,207内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路206,207を保護する。また、流路209,210間にも、リリーフ弁33a,33bが接続されている。リリーフ弁33a,33bは、流路209,210内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路209,210内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路209,210を保護する。
【0064】
次いで、流路212は、ブームシリンダ1のキャップ室1aに接続されている。流路213は、ブームシリンダ1のロッド室1bに接続されている。そして、流路212,213間には、リリーフ弁37a,37bが接続されている。リリーフ弁37a,37bは、流路212,213内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路212,213内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に逃がして流路212,213を保護する。さらに、流路212,213間には、フラッシング弁34が接続されている。フラッシング弁34は、流路212,213内の余剰分の作動油(余剰油)を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に排出させる。
【0065】
また、流路214は、アームシリンダ3のキャップ室3aに接続されている。流路215は、アームシリンダ3のロッド室3bに接続されている。さらに、流路214,215間には、リリーフ弁38a,38bが接続されている。リリーフ弁38a,38bは、流路214,215内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路214,215内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路214,215を保護する。さらに、流路214,215間には、フラッシング弁35が接続されている。フラッシング弁35は、流路214,215内の余剰分の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に排出させる。
【0066】
また、流路216は、バケットシリンダ5のキャップ室5aに接続されている。流路217は、バケットシリンダ5のロッド室5bに接続されている。さらに、流路216,217間には、リリーフ弁39a,39bが接続されている。リリーフ弁39a,39bは、流路216,217内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路216,217内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路216,217を保護する。さらに、流路216,217間には、フラッシング弁36が接続されている。フラッシング弁36は、流路216,217内の余剰分の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に排出させる。
【0067】
さらに、流路218,219は、旋回モータ7にそれぞれ接続されている。また、流路218,219間には、リリーフ弁51a,51bが接続されている。リリーフ弁51a,51bは、流路218,219間の作動油の圧力差(流路圧力差)が所定の圧力以上になった場合に、高圧側の流路218,219内の作動油を低圧側の流路219,218へ逃がして流路218,219を保護する。
【0068】
また、比例切換弁54と走行モータ8aとは、流路221,222にて接続されている。流路221,222間には、リリーフ弁52a,52bが接続されている。リリーフ弁52a,52bは、流路221,222間の作動油の圧力差が所定の圧力以上になった場合に、高圧側の流路221,222内の作動油を低圧側の流路222,221へ逃がして流路221,222を保護する。比例切換弁54は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路220と作動油タンク25との接続先を、流路221および流路222のいずれかに切り換える構成とされ、流量調整可能とされている。
【0069】
さらに、比例切換弁55と走行モータ8bとは、流路223,224にて接続されている。流路223,224間には、リリーフ弁53a,53bが接続されている。リリーフ弁53a,53bは、流路223,224間の作動油の圧力差が所定の圧力以上になった場合に、高圧側の流路223,224内の作動油を低圧側の流路224,223へ逃がして流路223,224を保護する。比例切換弁55は、コントローラ57から出力される操作信号に応じて、流路220と作動油タンク25との接続先を、流路223および流路224のいずれかに切り換える構成とされ、流量調整可能とされている。
【0070】
流路200に接続された圧力センサ80aは、流路200の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ80aは、流路200の圧力を計測することにより、第1閉回路ポンプ12の一方の入出力ポートの圧力を計測する。流路201に接続された圧力センサ80bは、流路201の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ80bは、流路201の圧力を計測することにより、第1閉回路ポンプ12の他方の入出力ポートの圧力を計測する。流路202に接続された圧力センサ81は、流路202の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ81は、流路202の圧力を計測することにより、第1開回路ポンプ13の吐出ポートの圧力を計測する。
【0071】
流路203に接続された圧力センサ82aは、流路203の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ82aは、流路203の圧力を計測することにより、第2閉回路ポンプ14の一方の入出力ポートの圧力を計測する。流路204に接続された圧力センサ82bは、流路204の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ82bは、流路204の圧力を計測することにより、第2閉回路ポンプ14の他方の入出力ポートの圧力を計測する。流路205に接続された圧力センサ83は、流路205の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ83は、流路205の圧力を計測することにより、第2開回路ポンプ15の吐出ポートの圧力を計測する。
【0072】
流路206に接続された圧力センサ84aは、流路206の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ84aは、流路206の圧力を計測することにより、第3閉回路ポンプ16の一方の入出力ポートの圧力を計測する。流路207に接続された圧力センサ84bは、流路207の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ84bは、流路207の圧力を計測することにより,第3閉回路ポンプ16の他方の入出力ポートの圧力を計測する。
流路208に接続された圧力センサ85は,流路208の圧力を計測し,コントローラ57に入力する。圧力センサ85は,流路208の圧力を計測することにより、第3開回路ポンプ17の吐出ポートの圧力を計測する。
【0073】
流路209に接続された圧力センサ86aは、流路209の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ86aは、流路209の圧力を計測することにより、第4閉回路ポンプ18の一方の入出力ポートの圧力を計測する。流路210に接続された圧力センサ86bは、流路210の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ86bは、流路210の圧力を計測することにより、第4閉回路ポンプ18の他方の入出力ポートの圧力を計測する。流路211に接続された圧力センサ87は、流路211の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ87は、流路211の圧力を計測することにより、第4開回路ポンプ19の吐出ポートの圧力を計測する。
【0074】
流路212に接続された圧力センサ70aは、流路212の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ70aは、流路212の圧力を計測することにより、ブームシリンダ1のキャップ室1aの圧力を計測する。流路213に接続された圧力センサ70bは、流路213の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ70bは、流路213の圧力を計測することにより、ブームシリンダ1のロッド室1bの圧力を計測する。
【0075】
流路214に接続された圧力センサ71aは、流路214の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ71aは、流路214の圧力を計測することにより、アームシリンダ3のキャップ室3aの圧力を計測する。流路215に接続された圧力センサ71bは、流路215の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ71bは、流路215の圧力を計測することにより、アームシリンダ3のロッド室3bの圧力を計測する。
【0076】
流路216に接続された圧力センサ72aは、流路216の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ72aは、流路216の圧力を計測することにより、バケットシリンダ5のキャップ室5aの圧力を計測する。流路217に接続された圧力センサ72bは、流路217の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ72bは、流路217の圧力を計測することにより、バケットシリンダ5のロッド室5b圧力を計測する。
【0077】
流路218に接続された圧力センサ73aは、流路218の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ73aは、流路218の圧力を計測することにより、旋回モータ7の一方の入出力ポートの圧力を計測する。流路219に接続された圧力センサ73bは、流路219の圧力を計測し、コントローラ57に入力する。圧力センサ73bは、流路219の圧力を計測することにより、旋回モータ7の他方の入出力ポートの圧力を計測する。
【0078】
コントローラ57は、操作装置56からのブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5の伸縮方向および伸縮速度の指令値と、旋回モータ7および走行モータ8a,8bの回転方向および回転速度の指令値と、油圧駆動装置107内の種々のセンサ情報に基づいて、各レギュレータ12a,13a,・・・,19a、切換弁43a,44a,・・・,50a,43b,44b,・・・,50b,43c,44c,・・・,50c,43d,44d,・・・,50d、および比例切換弁54,55を制御する。
【0079】
具体的に、コントローラ57は、例えば、ブームシリンダ1のキャップ室1aおよびロッド室1bに接続された流路212側の第1閉回路ポンプ12の流量である第1流量と、連結流路301に切換弁44aを介して接続された第1開回路ポンプ13の流量である第2流量との比が、ブームシリンダ1のキャップ室1aとロッド室1bとの受圧面積に応じて予め設定された所定値となるように、これら第1流量および第2流量を制御する受圧面積制御を行う。同様に、コントローラ57は、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5についても、上記受圧面積制御を行う。
【0080】
また、コントローラ57は、ブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5のうちの少なくとも1つを動作させた際に、切換弁43a~50a,43b~50b,43c~50c,43d,~50dを適宜制御して、対応する閉回路ポンプ12,14,16,18と同じ台数の開回路ポンプ13,15,17,19から吐出される作動油を、動作させるブームシリンダ1、アームシリンダ3、およびバケットシリンダ5のうちの少なくとも1つに供給する。
【0081】
さらに、操作装置56のブームレバー56aは、ブームシリンダ1の伸縮方向および伸縮速度の指令値をコントローラ57に与える。アームレバー56bは、アームシリンダ3の伸縮方向および伸縮速度の指令値をコントローラ57に与え、バケットレバー56cは、バケットシリンダ5の伸縮方向および伸縮速度の指令値をコントローラ57に与える。さらに、旋回レバー56dは、旋回モータ7の回転方向および回転速度の指令値をコントローラ57に与える。なお、走行モータ8a,8bの回転方向および回転速度の指令値をコントローラ57に与える操作レバー(図示せず)も備えた構成とされている。また、コントローラ57には、車体の状態をオペレータに提示するための表示装置58が接続されている。
【0082】
図3にコントローラ57の機能ブロック図を示す。コントローラ57は、レバー操作量演算部57a、圧力演算部57b、アクチュエータ割当流量演算部57c、圧力センサ故障検出部57d、および疑似圧力演算部57eから構成される。
【0083】
レバー操作量演算部57aは、オペレータのレバー入力に対して、各アクチュエータの動作方向、および動作速度目標を算出し、アクチュエータ割当流量演算部57cに入力する。
【0084】
圧力演算部57bは、各部に設けた圧力センサ70a~73b,80~87の計測値から、各部の圧力を算出し、アクチュエータ割当流量演算部57cおよび表示装置58に入力する。
【0085】
圧力センサ故障検出部57dは、圧力センサ70a~73b,80~87の計測値と、切換弁43a~49dへの指令値から決定する圧力センサ同士の接続状態から、
図5に示すフローチャートに従い圧力センサの故障を検出し、アクチュエータ割当流量演算部57cおよび表示装置58に入力する。
【0086】
疑似圧力演算部57eは、姿勢センサ400~403の計測値に基づきアクチュエータ1,3,5の疑似圧力を算出し、アクチュエータ割当流量演算部57cおよび表示装置58に入力する。
【0087】
アクチュエータ割当流量演算部57cは、通常時は、レバー操作量演算部57aおよび圧力演算部57bからの入力に基づいて、切換弁43a~50d、比例弁64~67、およびレギュレータ12a~19aへの指令値を算出する。一方、圧力センサ故障検出部57dで圧力センサの故障が検出されている場合は、疑似圧力演算部57eおよびレバー操作量演算部57aからの入力に基づいて、切換弁43a~50d、比例弁64~67、およびレギュレータ12a~19aへの指令値を算出する。
【0088】
表示装置58は、圧力演算部57bから入力された各圧力センサの計測値、圧力センサ故障検出部57dから入力された各圧力センサの故障状態、および疑似圧力演算部57eから入力された疑似圧力を表示する。
【0089】
コントローラ57に接続されている圧力センサ故障診断入力生成装置59は、圧力センサ故障検出部57dによる故障検出の精度を向上させるための装置である。圧力センサ故障診断入力生成装置59は、姿勢センサ400~403の計測値に基づいて油圧ショベル100に圧力センサの診断に適した所定の姿勢(診断姿勢)を取らせるためのレバー操作信号をレバー操作量演算部57aに出力し、油圧ショベル100が診断姿勢で静止した状態で切換弁43a~50dに開指令を出力する。本実施形態では、圧力センサ故障診断入力生成装置59をコントローラ57から独立した装置で構成しているが、コントローラ57の機能の一部として構成してもよい。圧力センサ故障診断入力生成装置59の詳細については後述する。
【0090】
次に、
図2に示した油圧駆動装置107の動作を説明する。
(1)非操作時
図2において、レバー56a~56dの非操作時は,油圧ポンプ12~19は最小傾転角に制御され、切換弁43a~50dは全て閉じられ、ブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5、および旋回モータ7は停止状態で保持される。
(2)ブーム上げ動作時
図4に、ブームシリンダ1を伸長動作させた場合の油圧駆動装置107の状態変化を示す。
図4では、圧力センサ70aが正常の場合と、圧力センサ70aが故障して計測値がプラスにドリフトしてしまった場合の圧力センサ70a,80a,82a,84a,86aの計測値を示している。
【0091】
時刻t0から時刻t1にかけて、ブームレバー56aの入力は0であり、ブームシリンダ1は静止している。
【0092】
時刻t1から時刻t5にかけて、ブームレバー56aの入力はブームシリンダ1を伸長する指令値が最大値まで上げられる。ブームレバー56aの入力が上昇するのに応じて、接続されるポンプ数が増える。切換弁43a,45a,47a,49aが開くタイミングは、閉回路ポンプ12,14,16,18とブームシリンダ1とが接続されるタイミングである。
【0093】
時刻t1では、ブームレバー56aが入力される。この時、第1閉回路ポンプ12とブームシリンダ1が接続される前に、第1閉回路ポンプ12の吐出圧力がブームシリンダ1のキャップ室1aの圧力まで昇圧されてから切換弁43aが開く。昇圧動作は圧力センサ70a,80aで計測した値に基づき実施され、圧力センサ80aの計測値と圧力センサ70aの計測値との差分が閾値(第1閾値)以下となった後に切換弁43aを開く。
【0094】
圧力センサ70aが正常時は、昇圧処理により切換弁43aが開く直前に圧力センサ80aで計測される第1閉回路ポンプ12の吐出圧が十分に昇圧されている。時刻t1から時刻t2にかけて第1閉回路ポンプ12の吐出流量が増加すると、管路および切換弁43aを通過する際に生じる圧損の分だけ、圧力センサ70aの計測値より圧力センサ80aの計測値が大きくなる。
【0095】
圧力センサ70aが故障して計測値がプラス側にドリフトしてしまった場合、昇圧処理により切換弁43aが開く直前に圧力センサ80aで計測される第1閉回路ポンプ12の吐出圧力がブームシリンダ1のキャップ室1aの圧力より高くなってしまう。これにより、切換弁43aを開く際にショックが発生してしまう。
【0096】
時刻t2から時刻t3にかけても、第2閉回路ポンプ14を昇圧してから切換弁45aを開くが、圧力センサ70aが故障した場合では過剰に昇圧することにより各切換弁を開く際にショックが生じる。時刻t3までの間に同じ管路に3つ以上の圧力センサが接続されるため、後述の圧力センサ故障検出部57dの処理により、圧力センサ70aの故障が検出される。
【0097】
時刻t3から時刻t5にかけては、圧力センサ70aの故障が検出されているため、圧力センサ70aの計測値の代わりに疑似圧力演算部57eで算出した疑似圧力を使用して切換弁47a,49aの前後差圧を算出する。故障した圧力センサ70aの計測値の代わりに疑似圧力を用いることにより、閉回路ポンプ16,18が過剰に昇圧されることを防止できるため、切換弁47a,49aを開く際のショックを抑制することができる。
【0098】
図5は、圧力センサ故障検出部57dの処理の一部を示すフローチャートである。
図5では、ブームシリンダ1の圧力センサ70aの故障を検出する処理のみを示している。ブームシリンダ1の圧力センサ70aの故障検出は、圧力センサ70aの計測値をブームシリンダ1と同一管路で接続された閉回路ポンプ12,14,16,18の圧力センサ80a,82a,84a,86aおよび開回路ポンプ13,15,17,19の圧力センサ81,83,85,87の計測値とを比較することにより行う。なお、
図5では、開回路ポンプ13,15,17,19の圧力センサ81,83,85,87の計測値と比較する処理は省略している。以下、
図5の各ステップを順に説明する。
【0099】
圧力センサ故障検出部57dは、まず、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ12が接続されているか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11でYESと判定した場合は、後述のステップS21へ移行する。ステップS11でYESと判定した場合は、圧力センサ70a,80aの計測値の差分の絶対値(差圧)を算出する(ステップS12)。ステップS12に続き、差圧が所定の閾値Plimよりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。ここで、閾値Plimは、圧力センサの計測誤差、および流量圧損特性を考慮して予め決められる値である。また、本実施形態では閾値Plimを一定値とするが、ポンプ吐出流量に応じて変化する値としてもよい。ステップS13でNOと判定した場合は、後述のステップS21へ移行する。ステップS13でNOと判定した場合は、圧力センサ70aの故障フラグに1を加算する(ステップS14)。
【0100】
ステップS14に続き、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ14が接続されているか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21でYESと判定した場合は、圧力センサ70a,82aの計測値の差分の絶対値(差圧)を算出する(ステップS22)。ステップS22に続き、差圧が閾値Plimよりも小さいか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23でNOと判定した場合は、後述のステップS31へ移行する。ステップS23でNOと判定した場合は、圧力センサ70aの故障フラグに1を加算する(ステップS24)。
【0101】
ステップS24に続き、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ16が接続されているか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31でYESと判定した場合は、圧力センサ70a,84aの計測値の差分の絶対値(差圧)を算出する(ステップS32)。ステップS32に続き、差圧が閾値Plimよりも小さいか否かを判定する(ステップS33)。ステップS33でNOと判定した場合は、後述のステップS41へ移行する。ステップS33でNOと判定した場合は、圧力センサ70aの故障フラグに1を加算する(ステップS34)。
【0102】
ステップS34に続き、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ18が接続されているか否かを判定する(ステップS41)。ステップS41でYESと判定した場合は、圧力センサ70a,86aの計測値の差分の絶対値(差圧)を算出する(ステップS42)。ステップS42に続き、差圧が閾値Plimよりも小さいか否かを判定する(ステップS43)。ステップS43でNOと判定した場合は、後述のステップS51へ移行する。ステップS43でNOと判定した場合は、圧力センサ70aの故障フラグに1を加算する(ステップS44)。
【0103】
ステップS44に続き、故障フラグが1よりも大きいか否かを判定する(ステップS51)。ステップS51でNOと判定した場合は、当該フローを終了する。ステップS51でYESと判定した場合は、圧力センサ70aを故障と判定し(ステップS52)、当該フローを終了する。
【0104】
以上、圧力センサ70aの故障検出に関わる処理を説明したが、圧力センサ故障検出部57dは、連通状態にある管路の圧力を検出している3つ以上の圧力センサに含まれる2つの圧力センサの組み合わせごとに計測値を比較することにより、その他のアクチュエータ圧力センサ70b,71a,71b,72a,72b,73a,73bおよびポンプ圧力センサ80a,80b,81,82a,82b,83,84a,84b,85,86a,86b,87の故障も検出することができる。
【0105】
図4を参照し、ブームシリンダ1のキャップ室圧を計測する圧力センサ70aが正常な場合と故障した場合の故障検出動作を説明する。
【0106】
<圧力センサ70aが正常な場合>
時刻t1から時刻t5の状態において、切換弁43a,45a,47a,49aが開いた状態で、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ12,14,16,18が接続されているか否かがステップS11,S21,S31,S41で判定される。接続されている場合、ブームシリンダ1の圧力とポンプ12,14,16,18の圧力との差圧がS12,S22,S32,S42で算出される。この時、圧力センサ70aは正常であり、ポンプ圧力との差圧が閾値Plimよりも小さくなるため、圧力センサ70aの故障フラグはカウントアップされない。すなわち、故障フラグはゼロであるため、ステップS51で圧力センサ70aが故障と判定されない。
【0107】
<圧力センサ70aが故障した場合>
時刻t1から時刻t5の状態において、切換弁43a,45a,47a,49aが開いた状態で、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ12,14,16,18が接続されているか否かがステップS11,S21,S31,S41で判定される。接続されている場合、ブームシリンダ1とポンプ12,14,16,18の圧力との差圧がステップS12,S22,S32,S42で算出される。この時、圧力センサ70aは故障しており、ポンプ圧力との差圧が閾値Plimよりも大きくなるため、ステップS14,S24,S34,S44で圧力センサ70aの故障フラグがカウントアップされる。時刻t2以降、ブームシリンダ1に2台以上のポンプが接続された状況では、圧力センサ70aの故障フラグが1より大きくなるため、ステップS51で圧力センサ70aが故障と判定される。
【0108】
次に、
図3に示した疑似圧力演算部57eの処理について説明する。疑似圧力演算部57eは、油圧ショベル100の姿勢に基づいて作業装置106を駆動するアクチュエータ1,3,5の疑似圧力を決定する。以下、アームシリンダ3を例に疑似圧力の決定方法を説明する。
【0109】
図6にアームシリンダ3を伸長動作させた場合の油圧ショベル100の姿勢変化を示し、
図7にアームシリンダ3のストロークとキャップ室3aとの関係を示す。
図6の姿勢(a)~(b)においては、
図7に示す通りアームシリンダ3のキャップ室3aの圧力は一定になる。これは、アーム4とバケット6を重力に対して支える力がアームシリンダ3のロッド室3bに作用することで、ロッド室3bの圧力がキャップ室3aの圧力より高くなり、低圧側のキャップ室3aがフラッシング弁34によってチャージ圧力に保たれるためである。従って、姿勢(a)~(b)のストローク範囲では、アームシリンダ3のキャップ室3aの疑似圧力はチャージ圧力に設定すればよい。
【0110】
図6の姿勢(b)~(c)においては、
図7に示す通りアームシリンダ3のキャップ室3aの圧力は、ストロークに応じて増加する。これは、アーム4とバケット6を重力に対して支えるのに必要な力を発揮するためである。この時、バケット6の中が空荷か、満載状態の荷有かにより圧力が異なる。疑似圧力はこの特性を考慮し、荷有の状態であったとしても、疑似圧力と実際の圧力の差が小さくなるように、シリンダストロークに対して空荷状態(無負荷状態)の圧力より大きい値になるように設定する。なお、本実施形態では、ブームシリンダ1、バケットシリンダ5、および上部旋回体103の姿勢が
図6に示した通り一定の姿勢の場合について述べたが、アームシリンダ3以外のアクチュエータと上部旋回体103の姿勢が異なる場合についても疑似圧力のテーブルを備えることとする。
【0111】
図3に示した機能をコントローラ57に設けたことにより、アクチュエータ圧力センサ70a~73bが故障した場合でも、疑似圧力を用いて切換弁43a~50dの前後差圧を算出することにより、操作性を著しく低下することなく油圧ショベル100を稼働することができる。また、表示装置58に表示される情報により、オペレータは圧力センサの故障状態を認識することができ、圧力センサの早期の修理を促すことができる。
【0112】
図3に示す圧力センサ故障診断入力生成装置59は、油圧ショベル100に所定の診断姿勢(例えば、
図6(a)のようなアームシリンダ3のキャップ室3aの圧力が低くなる姿勢、
図6(c)のようなアームシリンダ3のキャップ室3aの圧力が高くなる姿勢)を取らせることにより、様々な圧力レベルで正常な圧力センサと故障した圧力センサの出力を比較し、故障検出の確率を向上させることができる。また、運転中に検出する場合と異なり、油圧ショベル100が診断姿勢で静止した状態、すなわち流量圧損特性の影響を除去して管路上の圧力を均一にした状態で圧力センサの出力を比較することにより、故障検出の精度を向上させることができる。なお、本実施形態では、圧力センサ故障診断入力生成装置59をコントローラ57から独立した装置として構成しているが、コントローラ57の機能の一部として構成してもよい。
【0113】
図8は、圧力センサ故障診断入力生成装置59の処理を示すフローチャートである。当該フローの処理は、油圧ショベル100が水平地面に設置している状態で実施される。以下、各ステップを順に説明する。
【0114】
圧力センサ故障診断入力生成装置59は、まず、姿勢センサ400~403の計測値からブームシリンダ1のストローク(検出ストローク)を算出し、検出ストロークが診断姿勢におけるブームシリンダ1のストローク(診断ストローク)と一致しているか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101でNOと判定した場合は、検出ストロークと診断ストロークとの差分が小さくなるようにブームレバー56aの入力を調整し(ステップS102)、ステップS101に戻る。ここで、ブームレバー56aの入力は、例えば、診断ストロークと検出ストロークとの差分に所定のゲインを掛けた値に調整される。また、所定のゲインは、ブームシリンダ1に2台以上の閉回路ポンプが接続されない程度の小さな値に設定される。これにより、ブーム2の姿勢を診断姿勢に向けて緩やかに変化させることができる。
【0115】
ステップS101でYESと判定した場合は、姿勢センサ400~403の計測値からアームシリンダ3のストローク(検出ストローク)を算出し、検出ストロークが診断姿勢におけるアームシリンダ3のストローク(診断ストローク)と一致しているか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103でNOと判定した場合は、検出ストロークと診断ストロークとの差分が小さくなるようにアームレバー56bの入力を調整し(ステップS104)、ステップS103に戻る。ここで、アームレバー56bの入力は、例えば、診断ストロークと検出ストロークとの差分に所定のゲインを掛けた値に調整される。また、所定のゲインは、アームシリンダ3に2台以上の閉回路ポンプが接続されない程度の小さな値に設定される。これにより、アーム4の姿勢を診断姿勢に向けて緩やかに変化させることができる。
【0116】
ステップS103でYESと判定した場合は、姿勢センサ400~403の計測値からバケットシリンダ5のストローク(検出ストローク)を算出し、検出ストロークが診断姿勢におけるバケットシリンダ5のストローク(診断ストローク)と一致しているか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105でNOと判定した場合は、検出ストロークと診断ストロークとの差分が小さくなるようにバケットレバー56cの入力を調整し(ステップS106)、ステップS105に戻る。ここで、バケットレバー56cの入力は、例えば、診断ストロークと検出ストロークとの差分に所定のゲインを掛けた値に調整される。また、所定のゲインは、バケットシリンダ5に2台以上の閉回路ポンプが接続されない程度の小さな値に設定される。これにより、バケット6の姿勢を診断姿勢に向けて緩やかに変化させることができる。
【0117】
ステップS105でYESと判定した場合は、切換弁43a,44a,45a,46a,47a,48a,49a,50aに開指令を出力する(ステップS107)。これにより、油圧ショベル100が診断姿勢で静止しかつ閉回路ポンプ12,14,16,18がブームシリンダ1に接続された状態で、圧力センサ故障検出部57dによる故障診断処理が実施される(ステップS108)。
【0118】
ステップS108に続き、切換弁43a,44a,45a,46a,47a,48a,49a,50aに閉指令を出力し(ステップS109)、切換弁43b,44b,45b,46b,47b,48b,49b,50bに開指令を出力する(ステップS110)。これにより、油圧ショベル100が診断姿勢で静止しかつ閉回路ポンプ12,14,16,18がアームシリンダ3に接続された状態で、圧力センサ故障検出部57dによる故障診断処理が実施される(ステップS111)。
【0119】
ステップS111に続き、切換弁43b,44b,45b,46b,47b,48b,49b,50bに閉指令を出力し(ステップS112)、切換弁43c,44c,45c,46c,47c,48c,49c,50cに開指令を出力する(ステップS113)。これにより、油圧ショベル100が診断姿勢で静止しかつ閉回路ポンプ12,14,16,18がバケットシリンダ5に接続された状態で、圧力センサ故障検出部57dによる故障診断処理が実施される(ステップS114)。
【0120】
ステップS114に続き、切換弁43c,44c,45c,46c,47c,48c,49c,50cに閉指令を出力し(ステップS115)、切換弁43d,44d,45d,46d,47d,48d,49d,50dに開指令を出力する(ステップS116)。これにより、油圧ショベル100が診断姿勢で静止しかつ閉回路ポンプ12,14,16,18が旋回モータ7に接続された状態で、圧力センサ故障検出部57dによる故障診断処理が実施される(ステップS117)。
【0121】
ステップS117に続き、切換弁43d,44d,45d,46d,47d,48d,49d,50dに閉指令を出力し(ステップS118)、当該フローを終了する。
【0122】
図9に、圧力センサ故障診断入力生成装置59の入力に応じた油圧駆動装置107の状態変化を示す。
図9では、ブームシリンダ1のキャップ側の圧力センサ70aの故障診断時の動作のみを示している。また、アーム4およびバケット6はすでに診断姿勢を取っているものと仮定している。
【0123】
時刻t10から時刻t11は、圧力センサ故障診断入力生成装置59は起動しておらず、ブームレバー56aの入力は0であり、ブームシリンダ1は静止している。
【0124】
時刻t11に圧力センサ故障診断入力生成装置59が起動し、時刻t12にかけてブームシリンダ1のストロークが診断ストロークに達するまでブームレバー56aの入力を調整する。時刻t11でブームレバー56aの入力を開始して間もなく切換弁43aが開き、閉回路ポンプ12がブームシリンダ1に接続される。ブームレバー56aの入力は、ブームシリンダ1のストロークが診断ストロークに近づくにつれて小さくなる。
【0125】
時刻t12でブームシリンダ1のストロークが診断ストロークに達すると切換弁43aが閉じ、時刻t12から時刻t13にかけて切換弁43a,45a,47a,49aが開く。
【0126】
時刻t13から時刻t14にかけて、圧力センサ70aの故障診断が実施され、時刻t14から時刻t15にかけて切換弁43a,45a,47a,49aが閉じる。
【0127】
(まとめ)
本実施形態では、作業装置106と、作業装置106を駆動するアクチュエータ1,3,5と、2つの流出入ポートを有する可変容量式の複数の閉回路ポンプ12,14,16,18と、アクチュエータ1,3,5と複数の閉回路ポンプ12,14,16,18との連通または遮断を切換可能な複数の閉回路切換弁43a~43d,45a~45d,47a~47dと、作業装置106の姿勢を検出する姿勢センサ400~403と、複数の閉回路ポンプ12,14,16,18の圧力を検出する複数の閉回路ポンプ圧力センサ80a,80b,82a,82b,84a,84b,86a,86bと、アクチュエータ1,3,5の圧力を検出するアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bと、アクチュエータ1,3,5の動作を指示する操作装置56と、操作装置56からの入力信号に応じて複数の閉回路切換弁43a~43d,45a~45d,47a~47dおよび複数の閉回路ポンプ12,14,16,18を制御するコントローラ57とを備え、コントローラ57は、複数の閉回路ポンプ12,14,16,18のうちの1つの閉回路ポンプからアクチュエータ1,3,5に作動油の供給を開始する際に、複数の閉回路切換弁43a~43d,45a~45d,47a~47dのうちの前記1つの閉回路ポンプに対応する1つの閉回路切換弁を閉じた状態で前記1つの閉回路ポンプに対応する1つの閉回路ポンプ圧力センサの計測値とアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値との差分である閉回路切換弁前後差圧が所定の第1閾値以下となるように前記1つの閉回路ポンプを制御した後に前記1つの閉回路切換弁を開く建設機械において、コントローラ57は、複数の閉回路ポンプ12,14,16,18のうち2以上の閉回路ポンプがアクチュエータ1,3,5に接続された状態で、複数の閉回路ポンプ圧力センサ80a,80b,82a,82b,84a,84b,86a,86bのうち前記2以上の閉回路ポンプに対応する2以上の閉回路ポンプ圧力センサの計測値とアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値とに基づいてアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの故障の有無を判定し、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bを故障と判定した場合に、姿勢センサ400~403の計測値に基づいてアクチュエータ1,3,5の疑似圧力を算出し、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値の代わりに前記疑似圧力を用いて前記閉回路切換弁前後差圧を算出する。
【0128】
以上のように構成した本実施形態によれば、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b,73a,73bの計測値と2以上の閉回路ポンプ圧力センサの計測値との比較結果に基づいて、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b,73a,73bの故障を正しく判定することが可能となる。また、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bが故障した場合に、故障した圧力センサの計測値に代えて、作業装置106の姿勢に応じて算出したアクチュエータ1,3,5の疑似圧力を用いて閉回路切換弁43a~43d,45a~45d,47a~47dの前後差圧が算出される。その結果、閉回路ポンプ12,14,16,18をアクチュエータ1,3,5に接続する際のショックが抑制されるため、操作性低下を防ぐことが可能となる。
【0129】
また、本実施形態における油圧ショベル100は、流入ポートおよび流出ポートを有する可変容量式の複数の開回路ポンプ13,15,17,19と、複数の開回路ポンプ13,15,17,19をアクチュエータ1,3,5に接続可能な複数の開回路切換弁44a~44d,46a~46d,48a~48d,50a~50dと、複数の開回路ポンプ13,15,17,19の圧力を検出する複数の開回路ポンプ圧力センサ81,83,85,87とを備え、コントローラ57は、複数の開回路ポンプ13,15,17,19のうちの1つの開回路ポンプからアクチュエータ1,3,5に作動油の供給を開始する際に、複数の開回路切換弁44a~44d,46a~46d,48a~48d,50a~50dのうちの前記1つの開回路ポンプに対応する1つの開回路切換弁を閉じた状態で前記1つの開回路ポンプに対応する1つの開回路ポンプ圧力センサの計測値とアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値との差分である開回路切換弁前後差圧が前記第1閾値以下となるように前記1つの開回路ポンプを制御した後に前記1つの開回路切換弁を開き、複数の開回路ポンプ13,15,17,19のうち2以上の開回路ポンプがアクチュエータ1,3,5に接続された状態で、複数の開回路ポンプ圧力センサ81,83,85,87のうち前記2以上の開回路ポンプに対応する2以上の開回路ポンプ圧力センサの計測値とアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値とに基づいてアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの故障の有無を判定し、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bを故障と判定した場合に、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bの計測値の代わりに前記疑似圧力を用いて前記開回路切換弁前後差圧を算出する。これにより、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b,73a,73bの計測値と2以上の開回路ポンプ圧力センサの計測値との比較結果に基づいて、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b,73a,73bの故障を正しく判定することが可能となる。また、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bが故障した場合に、故障した圧力センサの計測値に代えて、作業装置106の姿勢に応じて算出したアクチュエータ1,3,5の疑似圧力を用いて開回路切換弁44a~44d,46a~46d,48a~48dの前後差圧が算出される。その結果、開回路ポンプ13,15,17,19をアクチュエータ1,3,5に接続する際のショックが抑制されるため、操作性低下を防ぐことが可能となる。
【0130】
また、本実施形態におけるコントローラ57は、前記2以上の閉回路ポンプと前記2以上の開回路ポンプとがアクチュエータ1,3,5に接続された状態で、アクチュエータ圧力センサ70a~72b、前記2以上の閉回路ポンプ圧力センサ、および前記2以上の開回路ポンプ圧力センサに含まれる2つの圧力センサの組み合わせごとに計測値の差分を算出し、前記差分が所定の第2閾値Plimよりも大きくなる2以上の組み合わせに含まれる圧力センサを故障と判定する。これにより、アクチュエータ圧力センサ70a~72bに加えて、閉回路ポンプ圧力センサ80a,80b,82a,82b,84a,84b,86a,86bおよび開回路ポンプ圧力センサ81,83,85,87の故障を検出することが可能となる。
【0131】
また、本実施形態における油圧ショベル100は、コントローラ57から出力された情報を表示可能な表示装置58を備え、コントローラ57は、アクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b、前記2以上の閉回路ポンプ圧力センサ、および前記2以上の開回路ポンプ圧力センサに含まれる1つの圧力センサを故障と判定した場合に、前記1つの圧力センサの識別情報を表示装置58に出力する。これにより、故障した圧力センサが修正または交換されるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0132】
また、本実施形態におけるコントローラ57は、姿勢センサ400~403で検出された姿勢を作業装置106が無負荷の状態で取ったときのアクチュエータ1,3,5の圧力より大きい値となるように前記疑似圧力を算出する。これにより、作業装置106に負荷が掛かっている状態でアクチュエータ圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b,73a,73bが故障した場合でも、切換弁43a~49dを開く際のショックを抑制することが可能となる。
【0133】
また、本実施形態における油圧ショベル100は、コントローラ57の入出力を調整可能な圧力センサ故障診断入力生成装置59を備え、コントローラ57は、圧力センサ故障診断入力生成装置59により入出力を調整されることにより、作業装置106が所定の姿勢(診断姿勢)を取るように複数の閉回路ポンプ12,14,16,18、前記複数の閉回路切換弁、複数の開回路ポンプ13,15,17,19、および前記複数の開回路切換弁を制御した後、複数の閉回路ポンプ12,14,16,18の吐出流量をゼロにした状態で複数の閉回路ポンプ12,14,16,18がアクチュエータ1,3,5に接続された状態を維持し、複数の開回路ポンプ13,15,17,19の吐出流量をゼロにした状態で複数の開回路ポンプ13,15,17,19がアクチュエータ1,3,5に接続された状態を維持する。これにより、油圧ショベル100が診断姿勢で静止した状態、すなわち流量圧損特性の影響を除去して管路上の圧力を均一にした状態で圧力センサの故障診断処理が実施されるため、故障検出の精度を向上させることが可能となる。
【0134】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0135】
1…ブームシリンダ(アクチュエータ)、1a…キャップ室、1b…ロッド室、1c…ロッド、1d…シリンダチューブ、1e…ピストン、2…ブーム、3…アームシリンダ(アクチュエータ)、3a…キャップ室、3b…ロッド室、3c…ロッド、3d…シリンダチューブ、3e…ピストン、4…アーム、5…バケットシリンダ(アクチュエータ)、5a…キャップ室、5b…ロッド室、5c…ロッド、5d…シリンダチューブ、5e…ピストン、6…バケット、7…旋回モータ(アクチュエータ)、8a,8b…走行モータ、9…エンジン、10…動力伝達装置、11…チャージポンプ、12…第1閉回路ポンプ、12a…レギュレータ、13…第1開回路ポンプ、13a…レギュレータ、14…第2閉回路ポンプ、14a…レギュレータ、15…第2開回路ポンプ、15a…レギュレータ、16…第3閉回路ポンプ、16a…レギュレータ、17…第3開回路ポンプ、17a…レギュレータ、18…第4閉回路ポンプ、18a…レギュレータ、19…第4開回路ポンプ、19a…レギュレータ、20…チャージ用リリーフ弁、21~24…リリーフ弁、25…作動油タンク、26~29…チャージ用チェック弁、30a,30b,31a,31b,32a,32b,33a,33b…リリーフ弁、34~36…フラッシング弁、37a,37b,38a,38b,39a,39b…リリーフ弁、40a,40b,41a,41b,42a,42b…チャージ用チェック弁、43a~43d,45a~45d,47a~47d,49a~49d…切換弁(閉回路切換弁)、44a~44d,46a~46d,48a~48d,50a~50d…切換弁(開回路切換弁)、51a,51b,52a,52b,53a,53b…リリーフ弁、54,55…比例切換弁、56…操作装置、56a…ブームレバー、56b…アームレバー、56c…バケットレバー、56d…旋回レバー、57…コントローラ、57a…レバー操作量演算部、57b…圧力演算部、57c…アクチュエータ割当流量演算部、57d…圧力センサ故障検出部、57e…疑似圧力演算部、58…表示装置、59…圧力センサ故障診断入力生成装置、64~67…比例弁、70a,70b,71a,71b,72a,72b,73a,73b…圧力センサ(アクチュエータ圧力センサ)、80a,80b,82a,82b,84a,84b,86a,86b…圧力センサ(閉回路ポンプ圧力センサ)、81,83,85,87…圧力センサ(開回路ポンプ圧力センサ)、100…油圧ショベル、101…キャブ、101a,101b…走行装置、102…下部走行体、103…上部旋回体、104…キャブ、105…旋回装置、106…フロント作業機(作業装置)、107…油圧駆動装置、200~202…流路、202a…分岐流路、203~205…流路、205a…分岐流路、206~208…流路、208a…分岐流路、209~211…流路、211a…分岐流路、212~225…流路、301~304…連結流路、305a~305d,306a~306d,307a~307d,308a~308d…開回路用接続流路、309a~309c…閉回路用接続流路、400~403…姿勢センサ、A~D…閉回路、E~H…開回路。