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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065093
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】超音波溶接パッド
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20240507BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B29C65/08
B23K20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184681
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】63/420,185
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/382,158
(32)【優先日】2023-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】キリーン イー.ベル
(72)【発明者】
【氏名】トマ ア.ブノワ
【テーマコード(参考)】
4E167
4F211
【Fターム(参考)】
4E167BE04
4E167BE06
4F211AA13
4F211AA15
4F211AD03
4F211AD16
4F211AF01
4F211AG05
4F211AR02
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC09
4F211TC11
4F211TJ14
4F211TN22
(57)【要約】
【課題】溶接パッド、及び、溶接物を形成する方法の提供。
【解決手段】ソノトロードを有する超音波溶接システムの溶接パッド、例えば、汎用溶接パッドが開示される。溶接パッドは、基部及び溶接要素を備える。基部は、ソノトロードの端部を受ける開口を備える。溶接要素は、一組の脚部及びその間の橋部分を備える。溶接要素は、溶接動作中、溶接基材の外面に適合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソノトロードを有する超音波溶接システムのための溶接パッドであって、
前記ソノトロードの遠位端部を受けるように構成された開口を有する基部と、
一組の脚部とそれらの間の橋部分とを備える溶接要素と、
を備え、
前記溶接要素は、溶接動作中、溶接基材の外面に適合するように構成されている、
溶接パッド。
【請求項2】
前記一組の脚部における各脚部は、前記基部に結合されており、かつ、前記基部に対して撓むように構成されている、請求項1に記載の溶接パッド。
【請求項3】
前記一組の脚部における各脚部は、前記基部に対して垂直に結合されている、請求項1に記載の溶接パッド。
【請求項4】
前記一組の脚部における各脚部は、前記基部に結合されており、かつ、互いに他に対して角度が付けられている、請求項1に記載の溶接パッド。
【請求項5】
前記橋部分は、ソノトロード接触面及びワーク接触面を画定している、請求項1に記載の溶接パッド。
【請求項6】
前記ソノトロード接触面は、前記ソノトロードのソノトロード表面に接触するように構成されており、前記ワーク接触面は、前記溶接基材の外面に接触するように構成されている、請求項5に記載の溶接パッド。
【請求項7】
前記ワーク接触面は、複数の接触領域を画定している、請求項6に記載の溶接パッド。
【請求項8】
前記複数の接触領域のそれぞれは、三角形状輪郭を有する直線状リッジである、請求項7に記載の溶接パッド。
【請求項9】
前記複数の接触領域のそれぞれは、平坦な先端を備えた三角形状輪郭を有する直線リッジである、請求項7に記載の溶接パッド。
【請求項10】
前記複数の接触領域のそれぞれは、ピラミッド形状である、請求項7に記載の溶接パッド。
【請求項11】
前記ソノトロード接触面は、平面状輪郭を画定している、請求項6に記載の溶接パッド。
【請求項12】
前記ソノトロード接触面は、湾曲状輪郭を画定している、請求項6に記載の溶接パッド。
【請求項13】
前記ソノトロード接触面は、スカラップ状輪郭を画定している、請求項6に記載の溶接パッド。
【請求項14】
前記橋部分は、複数の窓を画定している、請求項1に記載の溶接パッド。
【請求項15】
前記複数の窓のそれぞれは、四角形状の切欠き部として形成されている、請求項14に記載の溶接パッド。
【請求項16】
ソノトロード及びアンビルを有する超音波溶接システムを使用して、溶接パッドを溶接基材に超音波溶接して溶接物を形成する方法であって、
前記溶接パッド及び前記溶接基材を前記ソノトロードと前記アンビルとの間に挟持することであって、前記溶接パッドは、
前記ソノトロードの遠位端部を受けるように構成された開口を有する基部と、
一組の脚部とそれらの間の橋部分とを備える溶接要素と、
を備え、前記溶接要素は、溶接動作中、前記溶接基材の外面に適合するように構成されている、挟持することと、
前記溶接パッドと前記溶接基材との間の境界面に前記ソノトロードを介して超音波エネルギを印加することと、
前記境界面において前記溶接パッドを前記溶接基材に超音波溶接することと、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法に従って製造される溶接物。
【請求項18】
ソノトロードを有する超音波溶接システムのための溶接パッドであって、
前記ソノトロードの遠位端部を受けるように構成される開口を有する基部と、
一組の脚部及びその間の橋部分を備える溶接要素と、
を備え、
前記橋部分は、溶接基材の外面に適合するように、かつ、複数の接触領域を介して前記溶接基材の前記外面に接触するように、構成されている、
溶接パッド。
【請求項19】
前記橋部分は、前記ソノトロードのソノトロード表面に接触するように構成されたソノトロード接触面と、前記溶接基材の前記外面に接触するように構成されたワーク接触面とを画定している、請求項18に記載の溶接パッド。
【請求項20】
前記橋部分は、複数の窓を画定しており、前記複数の窓のそれぞれは、四角形状の切欠き部として形成されている、請求項18に記載の溶接パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年10月28日に出願された「Sonic Weld Pad」という発明の名称の米国仮特許出願第63/420,185号に対する優先権を主張し、この出願の開示は引用することによりその全体が本開示の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
背景
超音波溶接は、高周波機械振動を使用して材料をともに接合し、それにより、強力で、密封され、美観の優れた溶接をもたらす固体溶接プロセスである。超音波溶接は、自動車、エレクトロニクス、医療機器、包装、及びエレクトロニクスにおけるボンディングワイヤを含む、プラスチック及び一部の金属の強力で確実かつ迅速な接合が所望又は必要とされる産業において使用される。
【0003】
通常、溶接物を形成するためにともに溶接される部品は、まず、精密な嵌合幾何学形状を有する清浄で平坦な表面を有することを確実にするように準備される。いくつかの例において、例えば、管及び/又は他の部品を締結具又は他の構造体に固定するために、溶接パッドを溶接物に溶接することができる。しかしながら、既存の溶接パッドは、所与の基材の嵌合幾何学形状に合致するような形状であるため、特定の用途に向けて設計されることが通常である。その結果、様々な基材サイズ及び/又は表面外形に適応するためには、通常、複数の溶接パッドが必要とされる。したがって、複数の溶接パッドが必要であるため、複数の用途に適応するために複数の部品数が必要となる。
【0004】
したがって、進歩はしているが、平坦であるか、丸みを帯びているか、不均一であるかを問わず、様々な表面とともに機能するように設計される汎用音波溶接パッドが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、包括的には、超音波溶接パッドに関し、実質的に図面のうちの少なくとも1つによって例示されるとともにこれに関連して説明され、特許請求の範囲においてより完全に明記される。
【0006】
本開示に記載の装置、システム、及び方法の上記の目的、特徴、及び利点並びに他の目的、特徴、及び利点は、同様又は類似の参照符号が同様又は類似の構造を参照する添付の図面に示される特定の例についての以下の説明から明らかとなるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、本開示に記載の装置、システム、及び方法の原理を示すことに力点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、2つ以上の部片を超音波接合して、溶接物を形成するように構成される例示の超音波溶接システムを示す図である。
【0008】
図2a図2aは、第1の例に係る溶接パッドの頂面等角図である。
【0009】
図2b図2bは、図2aの溶接パッドの底面等角図である。
【0010】
図2c-2f】図2c-2fは、図2aの溶接パッドの第1,第2,第3,第4の側面図である。
【0011】
図2g図2gは、図2aの溶接パッドの頂面図である。
【0012】
図2h図2hは、図2aの溶接パッドの底面図である。
【0013】
図2i図2iは、ワークとともにクランプする前の溶接パッドの側面図である。
【0014】
図2j図2jは、ワークとともに確実にクランプされた溶接パッドの側面図である。
【0015】
図2k図2kは、ワークとともに確実にクランプされた溶接パッドの等角図である。
【0016】
図3a図3aは、第2の例に係る溶接パッドの頂面等角図である。
【0017】
図3b図3bは、図3aの溶接パッドの底面等角図である。
【0018】
図3c-3f】図3c-3fは、図3aの溶接パッドの第1,第2,第3,第4の側面図である。
【0019】
図3g図3gは、図3aの溶接パッドの頂面図である。
【0020】
図3h図3hは、図3aの溶接パッドの底面図である。
【0021】
図4a図4aは、第3の例に係る溶接パッドの頂面等角図である。
【0022】
図4b図4bは、図4aの溶接パッドの底面等角図である。
【0023】
図4c-4f】図4c-4fは、図4aの溶接パッドの第1,第2,第3,第4の側面図である。
【0024】
図4g図4gは、図4aの溶接パッドの頂面図である。
【0025】
図4h図4hは、図4aの溶接パッドの底面図である。
【0026】
図4i図4iは、ワークとともに確実にクランプされた溶接パッドの等角図である。
【0027】
図4j図4jは、ワークとともに確実にクランプされた溶接パッドの側面図である。
【0028】
図5a図5aは、第4の例に係る溶接パッドの側面図である。
【0029】
図5b図5bは、第5の例に係る溶接パッドの側面図である。
【0030】
図6図6は、溶接パッドを介して管が固定されている例示の管締結具の等角図である。
【0031】
図7図7は、超音波溶接システムを使用して溶接パッドを溶接基材に超音波溶接する例示の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
単数のものとして参照される項目については、別様に明示的に言及されている場合又は記載から明確である場合でない限り、その項目が複数である場合も含まれるとともにその逆もまた同じであることを理解すべきである。文法上の接続については、別様に明示的に言及されている場合又は文脈から明確である場合でない限り、結合された句、文、及び単語等の任意及び全ての離接的及び接続的な組合せを表すことを意図している。本開示中の値の範囲の列挙は、限定を意図したものではなく、本開示中で別様に示されない限り、その範囲内に入る及び/又はその範囲を含む任意及び全ての値を個別に参照するものであり、このような範囲内に入る各別個の値は、本開示中に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。以下の説明において、「第1の」、「第2の」、「頂」、「底」、「側」、「前」、「後」等の用語は、便宜上の単語であり、限定的な用語として解釈されないことが理解される。例えば、幾つかの例では第1の側が第2の側に隣接又は近接して位置する一方、「第1の側」及び「第2の側」という用語は、側が順序付けされた任意の特定の順序を暗に示すものではない。
【0033】
「約(about)」、「略(approximately)」、「実質的に(substantially)」等の用語は、数値が伴う場合、意図した目的のために十分に機能するものとして当業者であれば理解するであろう偏差を示すものとして解釈される。値の範囲及び/又は数値は、本開示においては例としてのみ提供され、本開示の範囲に対する限定を構成するものではない。本開示において提供される任意及び全ての例、又は例示的な言葉(「例えば(e.g.)」、「等(such as)」等)の使用は、単に開示の例をより良好に強調することを意図したものであり、本開示の範囲に対する限定を提示するものではない。「例えば(“e.g.,”及び“for example”)」という用語は、1つ以上の非限定的な例、具体例、又は実例の列挙の始まりとなるものである。本明細書中の言葉は、開示された例の実施に必要不可欠な任意の非請求の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0034】
「及び/又は」という用語は、「及び/又は」によって連結されるリストにおける項目のうちの任意の1つ以上の項目を意味する。一例として、「x及び/又はy」は、3つの要素の組{(x),(y),(x,y)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x及び/又はy」は、「x及びyのうちの一方又は両方」を意味する。別の例として、「x、y及び/又はz」は、7つの要素の組{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}のうちの任意の要素を意味する。言い換えれば、「x、y及び/又はz」は、「x、y及びzのうちの1つ以上」を意味する。
【0035】
平坦であるか、丸みを帯びているか、不均一であるかを問わず、様々な表面とともに機能するように設計される汎用音波溶接パッドが開示される。1つの例において、ソノトロードを有する超音波溶接システムの溶接パッドは、ソノトロードの遠位端部を受けるように構成される開口を有する基部と、一組の脚部及びその間の橋部分を備える溶接要素とを備える。溶接要素は、溶接動作中、溶接基材の外面に適合するように構成される。
【0036】
別の例において、ソノトロードを有する超音波溶接システムの溶接パッドは、ソノトロードの遠位端部を受けるように構成される開口を有する基部と、一組の脚部及びその間の橋部分を備える溶接要素とを備え、橋部分は、溶接基材の外面に適合するとともに、複数の接触領域を介して溶接基材の外面に接触するように構成される。
【0037】
更に別の例において、ソノトロード及びアンビルを有する超音波溶接システムを使用して、溶接パッドを溶接基材に超音波溶接して、溶接物を形成する方法は、溶接パッド及び溶接基材をソノトロードとアンビルとの間に挟持することであって、溶接パッドは、ソノトロードの遠位端部を受けるように構成される開口を有する基部と、一組の脚部及びその間の橋部分を備える溶接要素とを備え、溶接要素は、溶接動作中、溶接基材の外面に適合するように構成されることと、溶接パッドと溶接基材との間の境界面にソノトロードを介して超音波エネルギを印加することと、境界面において溶接パッドを溶接基材に超音波溶接することとを含む。
【0038】
いくつかの例において、一組の脚部における各脚部は、基部に結合され、基部に対して撓むように構成される。いくつかの例において、一組の脚部における各脚部は、基部に対して垂直に結合される。他の例において、一組の脚部における各脚部は、基部に結合され、互いに対して角度が付けられる。
【0039】
いくつかの例において、橋部分は、ソノトロード接触面及びワーク接触面を画定する。ソノトロード接触面は、ソノトロードのソノトロード表面に接触するように構成され、ワーク接触面は、溶接基材の外面に接触するように構成される。ワーク接触面は、複数の接触領域を画定する。いくつかの例において、複数の接触領域のそれぞれは、三角形状輪郭を有する直線状リッジである。他の例において、複数の接触領域のそれぞれは、平坦な先端部を有する三角形状輪郭を有する直線状リッジである。更に他の例において、複数の接触領域のそれぞれは、ピラミッド形状である。
【0040】
いくつかの例において、ソノトロード接触面は、平面状輪郭、湾曲状輪郭、及び/又はスカラップ状輪郭を画定する。いくつかの例において、橋部分は、四角形状の切欠き部として形成することができる複数の窓を画定する。
【0041】
図1は、適合材料による2つ以上の部片を超音波接合して、溶接物106を形成するように構成される例示の超音波溶接システム100を示している。いくつかの他の溶接方法とは異なり、超音波溶接は、接着剤、溶剤、又は充填材料の使用を必要としない。加えて、超音波溶接は、噴煙を生じたり有害な放射線を放出したりしないクリーンなプロセスである。
【0042】
図示のように、第1の溶接要素及び第2の溶接要素は、アンビル112(固定ホーンと呼ぶこともある)とソノトロード104(超音波ホーンと呼ぶこともある)との間に確実にクランプされる。第1の溶接要素は、溶接パッド108とすることができ、第2の溶接要素は、管、プレート等の溶接基材110とすることができる。
【0043】
アンビル112は、静止部分を支持し、ソノトロード104は、トランスデューサ102に取り付けられる。超音波トランスデューサ102は、多くの場合、圧電結晶又は磁歪素子を使用することによって高周波機械振動を発生させる。高周波機械振動は、例えば、20kHzから70kHzとすることができる。これらの振動は、ソノトロード104を通して溶接中の材料に伝達される。
【0044】
機械振動は、溶接パッド108と溶接基材110との間の境界面114に摩擦熱をもたらし、溶接物106を形成する。プラスチックの場合、超音波溶接により、振動エネルギを吸収することで、境界面114においてプラスチックの局所的溶融がもたらされる。金属の場合、表面酸化物の高圧分散と境界面114における材料の局所運動とにより、金属接合が生じ、すなわち、振動により局所的な原子結合が生じる。
【0045】
材料が軟化又は溶融すると、クランプにより溶接パッド108及び溶接基材110に圧力が加わることで、これらを融合させ、境界面114において溶接接合部を形成する。圧縮力により、溶接パッド108と溶接基材110との間の接触を維持することによって強力な接合を確実にする。
【0046】
既存の溶接パッド108は、特定の用途に向けて設計されることが通常であるが、開示される溶接パッド108は、平坦であるか、丸みを帯びているか、不均一であるかを問わず、様々な表面とともに機能するように設計される。後述するように、開示される汎用溶接パッド108は、複数の例のうちの1つにおいて具現化することができる。
【0047】
図2a及び図2bは、それぞれ、第1の例に係る溶接パッド108の頂面等角図及び底面等角図を示している。図2cから図2fは、それぞれ、図2aの溶接パッド108の第1の側面図、第2の側面図、第3の側面図、及び第4の側面図を示している。図2g及び図2hは、それぞれ、図2aの溶接パッド108の頂面図及び底面図を示している。図2iは、ワークとともにクランプされる前の溶接パッド108の側面図を示しており、図2j及び図2kは、それぞれ、ワークとともに確実にクランプされる溶接パッド108の側面図及び等角図を示している。
【0048】
溶接パッド108は、概して、基部202及び溶接要素204を備える。基部202は、ソノトロード104の遠位端部を受けるように構成される開口206を画定する。動作時、ソノトロード104は、開口206を通過し、溶接基材110に接触し、最終的に、溶接要素204を溶接基材110に対してクランプする。溶接動作中、基部202における開口206を介して、ソノトロード104のソノトロード表面220から溶接要素204に高周波機械振動が伝達される。
【0049】
溶接パッド108は、ソノトロード104のクランプ圧力によって変形するように構成される単一の部品として設計され、溶接要素204上に形成される接触領域222は、境界面114に沿った複数箇所において溶接基材110に接触するように撓むことができるようになっている。溶接パッド108は、単純な2プレート金型又は3Dプリント用途において加工する(tooled)ことが可能であるように設計される。
【0050】
溶接パッド108は、プラスチック射出技法、付加製造、又は他の方法を使用して、例えば、合成又は半合成ポリマ(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック)、複合材料(例えば、ガラス繊維)、又はそれらの組合せから製造することができる。いくつかの例において、溶接パッド108は、材料押出(例えば、熱溶解積層(FDM)、ステレオリソグラフィ(SLA)、選択的レーザ焼結(SLS)、材料噴射、結合剤噴射、粉末床溶融結合、指向性エネルギ堆積、液槽光重合、及び/又は他の任意の好適なタイプの付加製造/3Dプリントプロセスを使用して製造することができる。他の例において、溶接パッド108は、金属(又は金属合金)から製造することができる。
【0051】
付加製造技法は、物体を三次元でプリントするため、X-Y平面の最小特徴サイズ(すなわち、解像度)(水平解像度)及びZ軸における層高さ(垂直解像度)の双方が、全体のプリンタ解像度において考慮される。水平解像度は、プリンタの押出機が層内でX軸及びY軸上で行うことができる最小の動きであり、水平解像度は、プリンタが1回のパスで生成する層の最小厚さである。プリンタ解像度は、ドット毎インチ(DPI)又はマイクロメートル(μm)における層厚さ及びX-Y解像度を表す。水平解像度における粒子(3Dドット)は、直径が約50μmから100μm(510DPIから250DPI)とすることができる。典型的な層厚さ(垂直解像度)は、約100μm(250DPI)であるが、これらの層は、16μm(1600DPI)程度の薄さとすることができる。粒子が小さいほど、水平解像度は高くなる(すなわち、プリンタが生成する細部がより高度になる)。同様に、Z軸における層厚さが小さいほど、垂直解像度は高くなる(すなわち、プリントされる表面がより滑らかになる)。しかしながら、垂直解像度がより高いプリントにおけるプリントプロセスでは、プリンタがより多くの層を生成する必要があるため、より細かい層を生成するのにより長い時間がかかる。いくつかの例において、溶接パッド108の一部は、プリント動作中に異なる解像度で形成又は別様に製造することができる。
【0052】
図示の例において、溶接要素204は、概して、一組の脚部204aを備え、一組の脚部204aのそれぞれは、その近位端部において基部202に弾性的に結合される。図示のように、一組の脚部204aは、離隔して、基部202から垂直に突出するように構成される。橋部分204bが、一組の脚部204aの遠位端部を互いに接合する。
【0053】
橋部分204bは、ソノトロード接触面208及びワーク接触面210を画定する。ソノトロード接触面208は、ソノトロード104の遠位端部においてソノトロード表面220に接触するように構成され、ワーク接触面210は、溶接基材110の外面214に接触するように構成される。ワーク接触面210及び外面214は、溶接パッド108と溶接基材110との間の境界面114を形成又は別様に画定する。
【0054】
ワーク接触面210は、1つ以上の接触領域222を画定するような形状である。図示の例において、1つ以上の接触領域222は、ワーク接触面210に直線的に広がる直線リッジである。図2e及び図2fに最もよく示されているように、ワーク接触面210の輪郭は、スカラップ状輪郭を画定するような形状であるため、隣り合う接触領域222は、チャネル212によって分離される。チャネル212は、直線接触領域222を画定するのに加えて、橋部分204bの柔軟性も増大させる。
【0055】
図示の例において、ソノトロード接触面208及びワーク接触面210のそれぞれは、湾曲スカラップ状輪郭を画定するような形状である。湾曲スカラップ状輪郭等の非平面状輪郭により、橋部分204bの圧縮中の柔軟性を増大させることができる。ソノトロード接触面208及びワーク接触面210は、湾曲スカラップ状輪郭を画定するものとして示され、接触領域222は、直線リッジであり、鋭い縁部を有する三角形状輪郭を有するものとして示されているが、他の輪郭及び形状も想定される。例えば、ソノトロード接触面208及び/又はワーク接触面210の輪郭は、角度付き(例えば、三角形)、滑らかな湾曲(その一例が図5aに示されている)、又は更には直線状(その一例が図4aから図4jに関連して記載されている)とすることができる。別の例において、接触領域222は、ピラミッド形状であるか(例えば、一連のピラミッド形接触領域222として配置される)、直線状で平坦頂部を有する三角形状輪郭を有するか、又はそれ以外である。
【0056】
一組の脚部204aは、事実上、溶接要素204をワーク接触面210においてより柔軟にするように、ヒンジ又は屈曲点として機能する。図2i及び図2jに最もよく示されているように、一組の脚部204a及び橋部分204bは、(例えば、ソノトロード104とアンビル112との間に)クランプされると、その接触領域222が、境界面114に沿った複数箇所において溶接基材110に密着するように、変形するように構成される。すなわち、溶接中、溶接パッド108が溶接基材110に向かって付勢され(矢印216によって示されている)、ソノトロード104とアンビル112との間でクランプ圧力を受けると、一組の脚部204aが互いに向かって撓み(矢印218a、218bによって示されている)、橋部分204bは、溶接基材110の外面214に適合するように湾曲する又は撓む。
【0057】
ソノトロード表面220は、ワーク接触面210が溶接基材110の外面214の形状に適合するように、橋部分204bが形を変える(例えば、撓む又は曲がる)のに役立つような形状とすることもできる。いくつかの例において、その一例は、図2i及び図2jに示されており、ソノトロード104のソノトロード表面220は、クランプされると、ソノトロード接触面208の所望の輪郭を画定するような形状である。図示の例において、ソノトロード表面220は、クランプされるとソノトロード接触面208の輪郭を補完するスカラップ状輪郭を画定するような形状である。
【0058】
図3a及び図3bは、それぞれ、第2の例に係る溶接パッド108の頂面等角図及び底面等角図を示している。図3cから図3fは、それぞれ、図3aの溶接パッド108の第1の側面図、第2の側面図、第3の側面図、及び第4の側面図を示している。図3g及び図3hは、それぞれ、図3aの溶接パッド108の頂面図及び底面図を示している。
【0059】
図3aから図3hの第2の例に係る溶接パッド108は、図2aから図2kの第1の例に係る溶接パッド108と実質的に同じであるが、ただし、橋部分204bの曲率が低減され、スカラップ状であるが、概ね直線的又は実質的に直線的になっている。図2aから図2kの湾曲した橋部分204bは、大きな曲率を有する外面214を有する溶接基材110(例えば、より小さい管)に好適であり得るが、直線的又は湾曲の少ない橋部分204bは、大きな曲率を有する外面214を呈しない溶接基材110(例えば、より大径の管及び/又は平坦な部品)の方がより好適である。
【0060】
図4a及び図4bは、それぞれ、第3の例に係る溶接パッド108の頂面等角図及び底面等角図を示している。図4cから図4fは、それぞれ、図4aの溶接パッド108の第1の側面図、第2の側面図、第3の側面図、及び第4の側面図を示している。図4g及び図4hは、それぞれ、図4aの溶接パッド108の頂面図及び底面図を示している。
【0061】
図4aから図4jの第3の例に係る溶接パッド108は、いくつかの例外を除いて、図3aから図3hの第2の例に係る溶接パッド108と実質的に同じである。第1に、ソノトロード接触面208の輪郭は、この例では平面的であり(例えば、湾曲していない又は湾曲かつスカラップ状でない)、同様に平面的なソノトロード104aのソノトロード表面220を補完及び/又はソノトロード表面220に接触するように構成される。第2に、溶接パッド108は、橋部分204bに形成される複数の窓402を備える。図示の複数の窓402のそれぞれは、四角形状の切欠き部(例えば、矩形)として形成されるが、円形状、長円形状、三角形状、直線状のスリット等の他の形状も想定される。複数の窓402は、一組の脚部204a間に位置決めされる橋部分204bの構造から材料を切り取る及び/又は除去することによって、橋部分204bの柔軟性を増大させるように機能する。複数の窓402は、本開示に記載される他の例示の溶接パッド108において採用することもできる。
【0062】
図5aは、第4の例に係る溶接パッド108の側面図を示している。図5aの第4の例に係る溶接パッド108は、図2aから図2kの第1の例に係る溶接パッド108と実質的に同じであるが、ただし、ソノトロード接触面208の輪郭は、この例では滑らかに湾曲している(例えば、湾曲かつスカラップ状でない)。
【0063】
図5bは、第5の例に係る溶接パッド108の側面図を示している。図5bの第5の例に係る溶接パッド108は、図2aから図2kの第1の例に係る溶接パッド108と実質的に同じであるが、ただし、溶接パッド108は事前に外形加工されている。
【0064】
いくつかの例において、溶接パッド108(又はその一部、例えば、橋部分204b)は、溶接基材110の外面214に接触するために溶接パッド108が撓む必要のある量を軽減又は低減するように、事前外形加工位置に形成することができる。すなわち、溶接パッド108を事前に外形加工することは、溶接パッド108が、より一般的な特徴を有する或るカテゴリの溶接基材110とともに使用することが予期される場合に有益であり得る。例えば、管として構成される溶接基材110は、曲率、サイズ、又は形状に関して必ずしも同一でないが、通常、湾曲した外側輪郭を呈する。
【0065】
このために、一組の脚部204a及び橋部分204bは、或る程度事前に外形加工又は予備成形することにより、クランプされたときに溶接パッド108が撓む必要のある量を軽減又は低減することができる。例えば、管として構成される溶接基材110の場合、一組の脚部204aは、基部202に対して垂直である必要はないが、代わりに、一組の脚部204aは、基部202に対して角度αで互いに向かって角度が付けられ(クランプを受ける前)、クランプを受けると、予期される形状により良好に合致することができる(例えば、図2jに示されている)。同様に、橋部分204bの曲率502は、クランプを受けると、予期される形状により良好に合致するように、増大させることができる。
【0066】
図6は、溶接パッド108を介して管形状の溶接基材110が固定されている例示の管締結具600の等角図を示している。管締結具600は、プラスチック射出技法、付加製造、又は他の方法を使用して、合成又は半合成ポリマ(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック)、複合材料(例えば、ガラス繊維)、又はそれらの組合せから製造することができる。
【0067】
管締結具600は、複数のポケット602及び締結具604を備える、画定する、又は別様に提供することができる。管締結具600は、管形状の溶接基材110と結合し、及び/又は、管形状の溶接基材110を互いに対して、最終的に、締結具604を介して別の部品(例えば、車両部品、例えば、フレーム又は同様の構造体)に固定するように構成される。複数のポケット602のそれぞれは、管形状の溶接基材110を固定するように構成される。図示のように、複数のポケット602のそれぞれは、管形状の溶接基材110の直径に概ね対応するチャネルとしての形状を有することができる。
【0068】
湾曲外面214を有する溶接基材110(例えば、管形状の溶接基材)は、管形状の溶接基材110をそれぞれの管ポケット602に向かって押すことによって複数のポケット602のそれぞれの中に挿入及び固定することができる。2つのポケット602が示されているが、設計の必要性(例えば、固定する必要のある管形状の溶接基材110の数)に応じて、追加の又はより少ないポケット602を設けることができる。管形状の溶接基材110がそれぞれの管ポケット602内に位置決めされると、溶接パッド108が管形状の溶接基材110に隣接して位置決めされ、管締結具600に形成された開口を介して、管形状の溶接基材110の一部(例えば、外面214)に溶接される。その結果、管形状の溶接基材110は、ポケット602及び溶接パッド108の双方を介して管ポケット602に対して固定される。
【0069】
図7は、ソノトロード104及びアンビル112を有する超音波溶接システム100を使用して、溶接パッド108を溶接基材110に超音波溶接する例示の方法700を示している。
【0070】
ステップ702において、溶接パッド108及び溶接基材110を、ソノトロード104とアンビル112との間に挟持又は別様に位置決めする。例えば、溶接パッド108及び溶接基材110は、締結具に位置決めし、その後、ソノトロード104とアンビル112との間にクランプすることができる。
【0071】
ステップ704において、溶接パッド108と溶接基材110との間の境界面114にソノトロード104を介して超音波エネルギを印加する。
【0072】
ステップ706において、境界面114において溶接パッド108を溶接基材110に超音波溶接する。
【0073】
本方法及び/又はシステムを、或る特定の実施態様を参照して記載してきたが、当業者であれば、本方法及び/又はシステムの範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができること及び均等物に置き換えることができることを理解するであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの改変を行うことができる。例えば、開示した例のブロック及び/又は構成要素を、組み合わせ、分割し、再配置し、及び/又は他の方法で変更することができる。したがって、本方法及び/又はシステムは、開示されている特定の実施態様に限定されない。代わりに、本方法及び/又はシステムは、字義通りにでも均等論のもとにおいても、添付の特許請求の範囲内に入る全ての実施態様を含む。
図1
図2a
図2b
図2c-2f】
図2g
図2h
図2i
図2j
図2k
図3a
図3b
図3c-3f】
図3g
図3h
図4a
図4b
図4c-4f】
図4g
図4h
図4i
図4j
図5a
図5b
図6
図7
【外国語明細書】