(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006510
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】排泄物処理材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
A01K 1/015 20060101AFI20240110BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20240110BHJP
B01J 2/20 20060101ALI20240110BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240110BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01K1/015 B
B01J2/00 B
B01J2/20
B01J20/22 B
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107434
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
4G004
4G066
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101GB05
2B101GB07
2B101GB08
4G004BA00
4G004LA06
4G066AA77B
4G066AB29B
4G066AC02B
4G066AC39B
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA43
4G066DA13
4G066FA27
4G066FA28
(57)【要約】
【課題】芯部の強度不足を回避しつつ、粒径の大きな粒状体を得るのに適した排泄物処理材の製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置は、排泄物を処理するための粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、造粒機を備えている。造粒機は、造粒材料を押出造粒することにより、粒状体を構成する造粒物を形成する押出造粒機である。造粒機は、ダイス12を有している。ダイス12には、造粒材料を通過させる複数の貫通孔13が設けられている。複数の貫通孔13は、入口14aを有する貫通孔13a、及び入口14bを有する貫通孔13bを含んでいる。貫通孔13a及び貫通孔13bは、共通の出口15を有している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を処理するための粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、
押出造粒機を用いて造粒材料を押出造粒することにより、前記粒状体を構成する造粒物を形成する造粒工程を含み、
前記押出造粒機は、前記造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、
前記複数の貫通孔は、第1の入口を有する第1の貫通孔、及び前記第1の入口から離間した第2の入口を有する第2の貫通孔を含んでおり、
前記第1及び第2の貫通孔は、共通の出口を有することを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の入口の径は、何れも、前記出口の径よりも小さい排泄物処理材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の入口の開口面積の和は、前記出口の開口面積よりも大きい排泄物処理材の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記ダイスは、前記第1の入口から入った前記造粒材料と前記第2の入口から入った前記造粒材料とが合流する合流部を有し、
前記合流部は、前記ダイスの表面と裏面との間に存在する排泄物処理材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記ダイスの厚み方向について、前記合流部から当該ダイスの前記表面までの距離は、前記合流部から当該ダイスの前記裏面までの距離以上である排泄物処理材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記厚み方向について、前記合流部から前記ダイスの前記表面までの距離は、当該ダイスの厚みの2/3以上4/5以下である排泄物処理材の製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の貫通孔は、前記第1の入口から前記合流部までの区間において、前記ダイスの厚み方向に対して斜めに延びている排泄物処理材の製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第2の貫通孔は、前記第2の入口から前記合流部までの区間において、前記ダイスの厚み方向に対して斜めに延びている排泄物処理材の製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
平面視で、前記第1の入口の中心と前記第2の入口の中心とを結ぶ線分の中点は、前記合流部に重なる排泄物処理材の製造方法。
【請求項10】
請求項4に記載の排泄物処理材の製造方法において、
平面視で、前記出口の中心は、前記合流部に重なる排泄物処理材の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記造粒材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記造粒工程において形成された前記造粒物を被覆材料で被覆する被覆工程を含む排泄物処理材の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記被覆工程においては、前記造粒工程において形成された前記造粒物が収容された容器を回転させながら、当該造粒物の周囲に前記被覆材料を付着させる排泄物処理材の製造方法。
【請求項14】
排泄物を処理するための粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、
造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、前記造粒材料を押出造粒することにより、前記粒状体を構成する造粒物を形成する押出造粒機を備え、
前記複数の貫通孔は、第1の入口を有する第1の貫通孔、及び前記第1の入口から離間した第2の入口を有する第2の貫通孔を含んでおり、
前記第1及び第2の貫通孔は、共通の出口を有することを特徴とする排泄物処理材の製造装置。
【請求項15】
請求項14に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1及び第2の入口の径は、何れも、前記出口の径よりも小さい排泄物処理材の製造装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1及び第2の入口の開口面積の和は、前記出口の開口面積よりも大きい排泄物処理材の製造装置。
【請求項17】
請求項14又は15に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記ダイスは、前記第1の入口から入った前記造粒材料と前記第2の入口から入った前記造粒材料とが合流する合流部を有し、
前記合流部は、前記ダイスの表面と裏面との間に存在する排泄物処理材の製造装置。
【請求項18】
請求項17に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記ダイスの厚み方向について、前記合流部から当該ダイスの前記表面までの距離は、前記合流部から当該ダイスの前記裏面までの距離以上である排泄物処理材の製造装置。
【請求項19】
請求項18に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記厚み方向について、前記合流部から前記ダイスの前記表面までの距離は、当該ダイスの厚みの2/3以上4/5以下である排泄物処理材の製造装置。
【請求項20】
請求項17に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第1の貫通孔は、前記第1の入口から前記合流部までの区間において、前記ダイスの厚み方向に対して斜めに延びている排泄物処理材の製造装置。
【請求項21】
請求項17に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記第2の貫通孔は、前記第2の入口から前記合流部までの区間において、前記ダイスの厚み方向に対して斜めに延びている排泄物処理材の製造装置。
【請求項22】
請求項17に記載の排泄物処理材の製造装置において、
平面視で、前記第1の入口の中心と前記第2の入口の中心とを結ぶ線分の中点は、前記合流部に重なる排泄物処理材の製造装置。
【請求項23】
請求項17に記載の排泄物処理材の製造装置において、
平面視で、前記出口の中心は、前記合流部に重なる排泄物処理材の製造装置。
【請求項24】
請求項14又は15に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記造粒材料は、有機物を主材料とする排泄物処理材の製造装置。
【請求項25】
請求項14又は15に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記押出造粒機により形成された前記造粒物を被覆材料で被覆する被覆機を備える排泄物処理材の製造装置。
【請求項26】
請求項25に記載の排泄物処理材の製造装置において、
前記被覆機は、前記押出造粒機により形成された前記造粒物を収容する容器を有し、当該造粒物が収容された前記容器を回転させながら、当該造粒物の周囲に前記被覆材料を付着させる排泄物処理材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された排泄物処理材は、動物又は人の排泄物の処理に用いられる排泄物処理材であって、吸水性を有する複数の粒状体からなる。各粒状体を構成する粒状の芯部は、造粒機を用いて形成される。造粒機としては、造粒材料(芯部を構成する材料)を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有する押出造粒機が一般に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出造粒機を用いて芯部を形成する場合、芯部の径は、ダイスの貫通孔の出口の径によって規定される。それゆえ、貫通孔の出口の径を大きくすることにより、粒径の大きな粒状体を得ることができる。しかしながら、貫通孔の径を大きくすると、貫通孔を通過する造粒材料に加わる圧力が低下する。当該圧力が不充分であると、芯部が強度不足により崩れやすくなってしまう。このことは、排泄物処理材の製造において、粒径の大きな粒状体を得ることを困難にする要因となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、芯部の強度不足を回避しつつ、粒径の大きな粒状体を得るのに適した排泄物処理材の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排泄物処理材の製造方法は、排泄物を処理するための粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、押出造粒機を用いて造粒材料を押出造粒することにより、上記粒状体を構成する造粒物を形成する造粒工程を含み、上記押出造粒機は、上記造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、上記複数の貫通孔は、第1の入口を有する第1の貫通孔、及び上記第1の入口から離間した第2の入口を有する第2の貫通孔を含んでおり、上記第1及び第2の貫通孔は、共通の出口を有することを特徴とする。
【0007】
この製造方法においては、ダイスを有する押出造粒機が用いられる。ダイスには、第1及び第2の貫通孔を含む複数の貫通孔が設けられている。第1及び第2の貫通孔は、それぞれ、互いに離間した第1及び第2の入口を有している。すなわち、第1及び第2の貫通孔は、個別の入口を有している。一方、第1及び第2の貫通孔は、共通の出口を有している。このため、共通の出口の径を大きくしても、個別の入口の径を大きくしなければ、第1及び第2の貫通孔を通過する造粒材料に加わる圧力の低下を抑制することができる。
【0008】
また、本発明による排泄物処理材の製造装置は、排泄物を処理するための粒状体からなる排泄物処理材を製造する装置であって、造粒材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有し、上記造粒材料を押出造粒することにより、上記粒状体を構成する造粒物を形成する押出造粒機を備え、上記複数の貫通孔は、第1の入口を有する第1の貫通孔、及び上記第1の入口から離間した第2の入口を有する第2の貫通孔を含んでおり、上記第1及び第2の貫通孔は、共通の出口を有することを特徴とする。
【0009】
この製造装置は、ダイスを有する押出造粒機を備えている。ダイスには、第1及び第2の貫通孔を含む複数の貫通孔が設けられている。第1及び第2の貫通孔は、それぞれ、互いに離間した第1及び第2の入口を有している。すなわち、第1及び第2の貫通孔は、個別の入口を有している。一方、第1及び第2の貫通孔は、共通の出口を有している。このため、共通の出口の径を大きくしても、個別の入口の径を大きくしなければ、第1及び第2の貫通孔を通過する造粒材料に加わる圧力の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、芯部の強度不足を回避しつつ、粒径の大きな粒状体を得るのに適した排泄物処理材の製造方法及び製造装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す構成図である。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿った端面図である。
【
図9】被覆機20の構造を説明するための図である。
【
図10】本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態における造粒工程を説明するための図である。
【
図11】本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態における造粒工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。排泄物処理材6は、排泄物(主に尿)の処理に用いられる排泄物処理材である。排泄物処理材6は、猫や犬等の動物の排泄物の処理に用いられる動物用の排泄物処理材であってもよいし、人の排泄物の処理に用いられる人用の排泄物処理材であってもよい。排泄物処理材6は、排泄物を処理するための複数の粒状体30からなる。排泄物処理材6は、例えば、複数の粒状体30が箱状のトイレに敷設された状態で使用される。
【0014】
各粒状体30は、吸水性を有している。すなわち、各粒状体30は、その内部に排泄物を取り込んで保持する。粒状体30が吸水性を有するというには、次の試験により測定される液通過率が60%未満であることが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体30(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。計測した水量の滴下した水量(30ml)に対する割合をもって液通過率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18ml未満であれば、液通過率が60%未満となるため、粒状体30が吸水性を有するといえる。
【0015】
各粒状体30は、柱状をしている。本実施形態において各粒状体30は、略円柱状をしている。各粒状体30の粒径は、例えば、10mm以上30mm以下である。ここで、粒状体30の粒径は、粒状体30を内包し得る円柱のうち直径が最小である円柱(最小円柱)の直径として定義される。ただし、最小円柱の中心軸は、粒状体30の中心軸に平行である。粒状体30が円柱状をしている場合、当該粒状体30の粒径は、その直径に等しい。各粒状体30は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、粒状体30の主材料とは、粒状体30を構成する1又は2以上の材料のうち、当該粒状体30に占める重量割合が最大のものをいう。各粒状体30は、有機物のみからなっていてもよいし、有機物及び無機物からなっていてもよい。
【0016】
図2は、粒状体30を示す斜視図である。また、
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。粒状体30は、芯部32(造粒物)、及び被覆部34を有している。芯部32は、略円柱状に成形された造粒物である。芯部32は、尿を吸収及び保持する機能を有する。芯部32は、吸水性材料を含有している。芯部32は、吸水性材料を主材料としている。ここで、芯部32の主材料とは、芯部32を構成する1又は2以上の材料のうち、当該芯部32に占める重量割合が最大のものをいう。
【0017】
芯部32は、吸水性材料のみからなってもよいし、吸水性材料と他の材料とからなってもよい。吸水性材料は、有機物であることが好ましい。有機物である吸水性材料としては、例えば、紙類、植物類、プラスチック類、又は有機汚泥類が挙げられる。紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙(紙粉)の他にも、塩ビ壁紙分級物(塩ビ壁紙を分級することにより得られる紙)、又はフラッフパルプが挙げられる。植物類としては、例えば、木粉、大鋸屑、又は植物性残渣(茶殻、オカラ等)が挙げられる。プラスチック類としては、例えば、通常のプラスチックの他にも、紙おむつ分級物(紙おむつを分級することにより得られるプラスチック)が挙げられる。有機汚泥類としては、例えば、製紙スラッジ又はパルプスラッジが挙げられる。
【0018】
芯部32は、接着性材料を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。接着性材料としては、例えば、吸水性ポリマー、澱粉、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)、又はデキストリンが挙げられる。吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系吸水性ポリマーを用いることができる。
【0019】
被覆部34は、芯部32を覆っている。被覆部34は、各芯部32の周囲の全体を覆っていてもよいし、各芯部32の周囲の一部のみを覆っていてもよい。被覆部34は、使用時に排泄物を吸収した粒状体30どうしを接着させて固まりにする機能を有する。被覆部34も、吸水性材料を主材料としている。ここで、被覆部34の主材料とは、被覆部34を構成する1又は2以上の材料のうち、当該被覆部34に占める重量割合が最大のものをいう。被覆部34に含有される吸水性材料も、有機物であることが好ましい。被覆部34は、接着性材料を含有している。
【0020】
図4は、本発明による排泄物処理材の製造装置の一実施形態を示す構成図である。製造装置1は、上述の排泄物処理材6を製造する装置であって、造粒機10、及び被覆機20を備えている。
【0021】
図5及び
図6は、それぞれ、造粒機10を示す平面図及び底面図である。また、
図7は、
図5のVII-VII線に沿った端面図である。造粒機10は、造粒材料(芯部32を構成する材料)を押出造粒することにより、各粒状体30を構成する造粒物(芯部32)を形成する押出造粒機である。
【0022】
造粒機10は、ダイス12、ローラー16、及びカッター18を有している。ダイス12は、平面視で円形をしている。ダイス12の厚みは、均一である。ダイス12には、造粒材料を通過させる複数の貫通孔13が設けられている。なお、以下の記述において「複数の貫通孔13」は、別段の断りがない限り、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13を指すものとする。複数の貫通孔13は、ダイス12の表面の略全体にわたって点在している。
【0023】
図5に示すように、ダイス12の表面側(貫通孔13の入口側)には、ローラー16が設けられている。ローラー16は、円柱状をしており、その中心軸がダイス12の径方向に延びている。本実施形態においては、複数(具体的には4つ)のローラー16が設けられている。各ローラー16の一端は、ダイス12の表面の中心部に位置する回転軸17に連結されている。回転軸17の中心軸は、ダイス12の中心軸に一致する。ここで、ダイス12の中心軸とは、平面視でダイス12の中心を通り、ダイス12の厚み方向に延びる仮想的な直線をいう。回転軸17は、その中心軸の周りに回転(自転)するように構成されている。各ローラー16は、その中心軸の周りに回転(自転)しつつ、回転軸17と共にダイス12の中心軸の周りに回転(公転)する。このように、ローラー16は、ダイス12の中心軸の周りに公転しながら造粒材料を各貫通孔13に押し込む。ローラー16は、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13の入口上を通過することが可能である。
【0024】
図6に示すように、ダイス12の裏面側(貫通孔13の出口側)には、カッター18が設けられている。カッター18は、ダイス12の裏面の中心部からダイス12の径方向に延びている。カッター18は、ダイス12の裏面に沿って回転しながら、各貫通孔13から押し出された造粒材料を切断する。詳細には、カッター18は、ダイス12の裏面に平行な面内で、ダイス12の中心軸の周りに回転する。なお、カッター18は、上述のローラー16とは独立して回転できるように構成されている。カッター18は、ダイス12に設けられた全ての貫通孔13の出口上を通過することが可能である。
【0025】
図7及び
図8に示すように、複数の貫通孔は、貫通孔13a(第1の貫通孔)、及び貫通孔13b(第2の貫通孔)を含んでいる。
図8は、
図7におけるダイス12の一部(一対の貫通孔13a,13bを含む部分)を示す拡大図である。貫通孔13a及び貫通孔13bは、それぞれ、入口14a(第1の入口)及び入口14b(第2の入口)を有している。入口14aは、ダイス12の表面における貫通孔13aの開口部分である。同様に、入口14bは、ダイス12の表面における貫通孔13bの開口部分である。入口14bは、入口14aから離間している。一対の貫通孔13a,13bに関し、入口14a及び入口14bは、ダイス12の径方向に並んでいる(
図5参照)。入口14aは、入口14bよりも径方向内側に配置されている。貫通孔13a及び貫通孔13bは、共通の出口15を有している。出口15は、ダイス12の裏面における貫通孔13a,13bの開口部分である。本実施形態において入口14a及び入口14b、並びに出口15は、円形をしている。
【0026】
入口14aの径d1、及び入口14bの径d2は、何れも、出口15の径d3よりも小さい。ここで、径d1及び径d2は、それぞれ、入口14a及び入口14bを内包し得る最小の円の直径として定義される。同様に、径d3は、出口15を内包し得る最小の円の直径として定義される。径d1及び径d2は、互いに等しい。入口14a及び入口14bの開口面積の和は、出口15の開口面積よりも大きいことが好ましい。
【0027】
ダイス12は、合流部P1を有している。合流部P1は、入口14aから入った造粒材料と入口14bから入った造粒材料とが合流する部分である。合流部P1は、ダイス12の表面と裏面との間に存在している。すなわち、合流部P1は、ダイス12の表面及び裏面の双方から離間した位置に存在している。これにより、貫通孔13a及び貫通孔13bは、入口(入口14a,14b)から出口15へと向かう経路の途中(合流部P1)において、互いに合体している。ダイス12の厚み方向(
図8の上下方向)について、合流部P1からダイス12の表面までの距離d4は、合流部P1からダイス12の裏面までの距離d5以上である。距離d4は、ダイス12の厚みd6の2/3以上4/5以下であることが好ましい。
【0028】
平面視で、出口15の中心は、合流部P1に重なる。すなわち、ダイス12の厚み方向から見たとき、出口15の中心は、合流部P1に重なる。貫通孔13aは、入口14aから合流部P1までの区間において、ダイス12の厚み方向に対して斜めに延びている。同様に、貫通孔13bは、入口14bから合流部P1までの区間において、ダイス12の厚み方向に対して斜めに延びている。平面視で、入口14aの中心と入口14bの中心とを結ぶ線分の中点は、合流部P1に重なる。
【0029】
複数の貫通孔13は、n対(nは整数)の貫通孔13a,13bからなる。すなわち、複数の貫通孔13は、n個の貫通孔13aとn個の貫通孔13bとからなる。これは、全ての貫通孔13が、他の貫通孔13と合体していることを意味する。これにより、複数の貫通孔13の入口の個数(2n)は、出口の個数(n)の2倍となっている。
【0030】
図4に戻って、被覆機20は、造粒機10により形成された各造粒物(芯部32)を粉体状の被覆材料(被覆部34を構成する材料)で被覆するものである。被覆機20は、
図9に示すように、ドラム22(容器)を有している。ドラム22は、略円筒状をしており、回転可能に設けられている。具体的には、ドラム22は、その中心軸周りに回転可能である。ドラム22の中心軸は、水平である。ドラム22には、造粒機10により形成された芯部32が収容される。被覆機20は、芯部32が収容されたドラム22を回転させながら、各芯部32の周囲に被覆材料を付着させる。
【0031】
続いて、製造装置1の動作と併せて、本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態を説明する。この製造方法は、造粒工程及び被覆工程を含むものである。造粒工程は、造粒機10を用いて造粒材料を押出造粒することにより、芯部32を形成する工程である。造粒材料は、有機物を主材料とすることが好ましい。なお、造粒に先立って、造粒材料には、粉砕、混練、加水等の前処理が必要に応じて行われる。
【0032】
造粒工程においては、
図10に示すように、ダイス12の表面側に供給された造粒材料M1が、ダイス12の表面上を転動するローラー16(図示せず)によって各貫通孔13a,13bに押し込まれる。貫通孔13aの入口14aから入った造粒材料M1と貫通孔13bの入口14bから入った造粒材料M1とは、
図11に示すように、合流部P1で合流した後、ダイス12の裏面側から押し出される。造粒材料M1が押し出される際、ダイス12の裏面側では、カッター18(図示せず)が回転し続けている。これにより、貫通孔13a,13bの出口15から出た造粒材料M1は、カッター18によって切断される。このようにして切断された部分が、造粒物(芯部32)となる。
【0033】
被覆工程は、造粒工程において形成された各造粒物を被覆材料で被覆する工程である。被覆工程においては、造粒工程において形成された芯部32をドラム22(
図9参照)内に収容した後、ドラム22を回転させながら、各芯部32の周囲に被覆材料を付着させる。被覆材料は、有機物を主材料とすることが好ましい。被覆材料の付着は、例えば、散布又は噴霧により行うことができる。これにより、被覆部34が形成される。その後、篩分け、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、複数の粒状体30からなる排泄物処理材6が得られる。
【0034】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、ダイス12を有する造粒機10が用いられている。ダイス12には、貫通孔13a及び貫通孔13bを含む複数の貫通孔13が設けられている。貫通孔13a及び貫通孔13bは、それぞれ、互いに離間した入口14a及び入口14bを有している。すなわち、貫通孔13a及び貫通孔13bは、個別の入口(入口14a,14b)を有している。一方、貫通孔13a及び貫通孔13bは、共通の出口15を有している。このため、共通の出口15の径を大きくしても、個別の入口14a,14bの径を大きくしなければ、貫通孔13a及び貫通孔13bを通過する造粒材料に加わる圧力の低下を抑制することができる。したがって、芯部32の強度不足を回避しつつ、粒径の大きな粒状体30を得るのに適した排泄物処理材6の製造方法及び製造装置1が実現されている。
【0035】
排泄物処理材6が動物用の排泄物処理材である場合、粒状体30の粒径を大きくすることにより、粒状体30が動物の足に挟まったり付着したりしにくくなるという利点がある。これにより、排泄後に粒状体30がトイレの周囲に散乱しにくくすることができる。
【0036】
入口14a及び入口14bの径は、何れも、出口15の径よりも小さい。このように各入口14a,14bの径を小さくすることにより、合流前の造粒材料(各入口14a,14bから合流部P1までの区間を通過する造粒材料)に対して充分な圧力を加えやすくなる。
【0037】
入口14a及び入口14bの開口面積の和が出口15の開口面積よりも大きい場合、合流後の造粒材料(合流部P1から出口15までの区間を通過する造粒材料)の密度が高くなる。このため、合流後の造粒材料に対しても充分な圧力を加えやすくなる。
【0038】
ダイス12の厚み方向について、合流部P1からダイス12の表面までの距離d4は、合流部P1からダイス12の裏面までの距離d5以上である。このように距離d4を大きくすることは、合流前の造粒材料に加わる圧力を高めるのに有利である。かかる観点から、距離d4は、ダイス12の厚みd6の2/3以上であることが好ましい。他方、距離d4が大きすぎると、合流後の造粒材料に対して充分な圧力を加えにくくなってしまう。かかる観点から、距離d4は、ダイス12の厚みd6の4/5以下であるであることが好ましい。
【0039】
貫通孔13aは、入口14aから合流部P1までの区間において、ダイス12の厚み方向に対して斜めに延びている。これにより、入口14aから入った造粒材料が入口14bから入った造粒材料と合流する際、造粒材料どうしを密着させやすくなる。
【0040】
貫通孔13bは、入口14bから合流部P1までの区間において、ダイス12の厚み方向に対して斜めに延びている。これにより、入口14bから入った造粒材料が入口14aから入った造粒材料と合流する際、造粒材料どうしを密着させやすくなる。
【0041】
平面視で、入口14aの中心と入口14bの中心とを結ぶ線分の中点は、合流部P1に重なっている。この場合、入口14aから合流部P1までの区間と入口14bから合流部P1までの区間とで、経路の長さ及び傾斜の角度を揃えることができる。これにより、合流前、入口14aから入った造粒材料に加わる圧力の高さと、入口14bから入った造粒材料に加わる圧力の高さとが等しくなる。このことは、合流後の造粒材料の均質性を高めるのに有利である。
【0042】
平面視で、出口15の中心は、合流部P1に重なっている。この場合、合流後の造粒材料は、ダイス12の厚み方向に進行し、出口15から真っ直ぐに(ダイス12の裏面と垂直な方向に)押し出されることになる。これにより、直柱体状(本実施形態においては直円柱状)の芯部32を形成しやすくなる。
【0043】
芯部32は、接着性材料を含む被覆材料(被覆部34)で被覆されている。これにより、排泄物を吸収した粒状体30どうしを相互に接着させ、使用済みの複数の粒状体30からなる固まりを形成することができる。このように粒状体30の固まりが形成されることにより、未使用の粒状体30と使用済みの粒状体30とが混在する排泄物処理材6の中から、使用済みの粒状体30を選択的に除去することが容易になる。
【0044】
被覆の際、芯部32が収容されたドラム22を回転させながら、各芯部32の周囲に被覆材料を付着させている。これにより、各芯部32の周囲全体に被覆材料を万遍なく付着させやすくなる。
【0045】
造粒材料が有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体30を得るのに有利である。被覆材料も有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体30を得るのに一層有利である。粒状体30が焼却処分に適していることは、使用済みの粒状体30の処分の便宜に資する。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、2つの貫通孔(貫通孔13a,13b)が1つの出口15を共有する場合を例示した。しかし、3つ以上の貫通孔が1つの出口15を共有していてもよい。
【0047】
上記実施形態においては、ダイス12の厚み方向について、合流部P1からダイス12の表面までの距離d4が合流部P1からダイス12の裏面までの距離d5以上である場合を例示した。しかし、距離d4は、距離d5より小さくてもよい。
【0048】
上記実施形態においては、造粒機10にローラー16が設けられた場合を例示した。しかし、造粒機10には、ローラー16が設けられていなくてもよい。その場合、ローラー16以外の公知の手段によって、造粒材料を各貫通孔13に押し込めばよい。
【0049】
上記実施形態においては、造粒機10にカッター18が設けられた場合を例示した。しかし、造粒機10には、カッター18が設けられていなくてもよい。その場合、カッター18以外の公知の手段によって、各貫通孔13から押し出された造粒材料を切断すればよい。
【0050】
上記実施形態においては、各粒状体30が、芯部32及び被覆部34からなる複層構造(二層構造)を有する場合を例示した。しかし、被覆部34を設けることは、必須でない。すなわち、各粒状体30は、被覆されていない造粒物(芯部32)のみからなる単層構造を有していてもよい。その場合、被覆機20は不要であり、被覆工程も実行されない。それにより、被覆材料が不要となるため、排泄物処理材6の製造コストを削減することができる。
【0051】
上記実施形態においては、粒状体30が吸水性を有する場合を例示した。しかし、粒状体30は、疎水性を有していてもよい。粒状体30が疎水性を有するというには、上述の試験により測定される液通過率が60%以上であることが必要である。かかる疎水性の粒状体30を用いた場合、排泄物は、粒状体30どうしの隙間を通過する。この場合、排泄物をトイレの下方に導くことにより、排泄物から発生した悪臭がトイレの上部から外に漏れるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 製造装置
6 排泄物処理材
10 造粒機
12 ダイス
13 貫通孔
13a 貫通孔(第1の貫通孔)
13b 貫通孔(第2の貫通孔)
14a 入口(第1の入口)
14b 入口(第2の入口)
15 出口
16 ローラー
17 回転軸
18 カッター
20 被覆機
22 ドラム(容器)
30 粒状体
32 芯部(造粒物)
34 被覆部
M1 造粒材料
P1 合流部