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▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065103
(43)【公開日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電気機械ブレーキ及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/102 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H02K7/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185075
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】202211325946.6
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャオクン ツァン
(72)【発明者】
【氏名】フェイ ユ
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607CC03
5H607EE07
5H607EE33
5H607EE34
5H607HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子機械ブレーキにおいて、迅速な応答、単純な構造、メンテナンスの容易化を実現する。
【解決手段】第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータと、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータに連結されたトランスミッションデバイスと、トランスミッションデバイスに連結されたブレーキアクチュエータであって、トランスミッションデバイスは、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータのブレーキトルクをブレーキアクチュエータに伝達する、ブレーキアクチュエータと、を含み、トランスミッションデバイスは、差動装置を含み、差動装置は、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータにそれぞれ結合されて、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータの入力トルクを受け取り、統合されたトルクをブレーキアクチュエータに出力する、電気機械ブレーキ。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械ブレーキであって、
第1のブレーキモータ(11)及び第2のブレーキモータ(12)と、
前記第1のブレーキモータ(11)及び前記第2のブレーキモータ(12)に連結されたトランスミッションデバイス(2)と、
前記トランスミッションデバイス(2)に連結されたブレーキアクチュエータ(3)であって、前記トランスミッションデバイス(2)は、ブレーキトルクを前記第1のブレーキモータ(11)及び前記第2のブレーキモータ(12)から前記ブレーキアクチュエータ(3)に伝達する、ブレーキアクチュエータ(3)と、を備え、
前記トランスミッションデバイス(2)は、差動装置を備え、前記差動装置は、前記第1のブレーキモータ(11)及び前記第2のブレーキモータ(12)にそれぞれ結合されて、前記第1のブレーキモータ(11)及び前記第2のブレーキモータ(12)から入力トルクを受け取り、統合されたトルクを前記ブレーキアクチュエータ(3)に出力することを特徴とする、電気機械ブレーキ。
【請求項2】
前記差動装置は、遊星差動装置システム(204)であることを特徴とする、請求項1に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項3】
前記遊星差動装置システム(204)は、
第1のリング歯車(2041)と、
第1の太陽歯車(2043)と、
前記第1のリング歯車と前記第1の太陽歯車との間の複数の第1の遊星歯車(2042)と、
を備え、
前記第1のブレーキモータ(11)は、前記第1のリング歯車(2041)の外歯に結合されており、前記第2のブレーキモータ(12)は、前記第1の太陽歯車(2043)に結合されており、前記複数の第1の遊星歯車(2042)は、第1の遊星キャリア(2044)に連結されていることを特徴とする、請求項2に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項4】
前記トランスミッションデバイスは、
第1の中間歯車(201)と、
第2の中間歯車(202)と、
同軸歯車(203)と、
を更に備え、
前記第1の中間歯車(201)は、前記第1のブレーキモータ(11)の出力シャフト(111)及び前記第1のリング歯車(2041)の前記外歯にそれぞれ係合されており、前記第2の中間歯車(202)は、前記第2のブレーキモータ(12)の出力シャフト(121)及び前記同軸歯車(203)にそれぞれ係合されており、前記同軸歯車(203)は、前記第1の太陽歯車(2043)に同軸に結合されていることを特徴とする、請求項3に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項5】
前記同軸歯車及び前記第1のリング歯車が各々、第1のベアリング(2061)及び第2のベアリング(2062)によってそれぞれ支持される軸方向に延在する部分(2031、2040)を備えることを特徴とする、請求項3に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項6】
前記トランスミッションデバイスは、第2の遊星歯車セット(205)を更に備え、前記第2の遊星歯車セット(205)は、第2の太陽歯車(2051)と、第2のリング歯車(2053)と、前記第2の太陽歯車と前記第2のリング歯車との間の複数の第2の遊星歯車(2052)と、を備え、前記第2の太陽歯車(2051)は、前記第1の遊星キャリア(2044)に同軸に結合されており、前記第2のリング歯車(2053)は、固定されており、第2の遊星キャリア(2054)が、複数の第2の遊星歯車(2052)に連結されており、前記第2の遊星キャリア(2054)は、トルクを前記ブレーキアクチュエータ(3)に出力するためのコア穴(2055)を備えることを特徴とする、請求項3に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項7】
前記第1のブレーキモータ(11)及び前記第2のブレーキモータ(12)が各々、セルフロックデバイスに適合されており、前記セルフロックデバイス及び対応するブレーキモータが、同じ電源(100)によって給電され、前記セルフロックデバイスは、前記電源が失われたときに、前記対応するブレーキモータの回転を阻止することを特徴とする、請求項1に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項8】
前記セルフロックデバイスは、
対応するモータ出力シャフトに接続された回転ディスク(94)と、
固定摩擦ディスク(95)と、
前記回転ディスクを前記摩擦ディスクに押し付けて、前記回転ディスクにブレーキをかけるのに役立つばね(97)と、
電磁コイル(98)であって、電力がオンのときに磁界を発生し、前記回転ディスクに磁力を加え、前記回転ディスクが前記ばねのスラストを克服し、前記摩擦ディスクから離れる方向に移動することを可能にする、電磁コイルと、
を備えることを特徴とする、請求項7に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項9】
前記電気機械ブレーキは、
前記第1のブレーキモータ及び前記第2のブレーキモータの回転速度をそれぞれ検出するための第1の回転速度センサ(112)及び第2の回転速度センサ(122)と、
前記第1のブレーキモータ及び前記第2のブレーキモータの電流をそれぞれ検出するための第1の電流センサ(82)及び第2の電流センサ(83)と、
前記第1のブレーキモータ及び前記第2のブレーキモータの前記回転速度及び電流に基づいて、前記第1のブレーキモータ及び前記第2のブレーキモータを制御するコントローラ(80)と、
を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の電気機械ブレーキ。
【請求項10】
車両であって、前記車両は、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気機械ブレーキを備えることを特徴とする、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両ブレーキシステムの分野に関し、より具体的には、新規の電気機械ブレーキ及び電気機械ブレーキを用いる車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機械ブレーキは、ブレーキングのためにブレーキキャリパを作動させる電気モータを利用するデバイスである。従来の液圧ブレーキシステムと比較して、電気機械ブレーキは、迅速な応答、単純な構造、及びメンテナンスの容易さなどの利点を提供する。車両電動化及び車両インテリジェンスの発展に伴い、電気制御システムとの統合性により電気機械ブレーキは、ブレーキングシステムの開発のトレンドとなってきた。デュアルモータシステムを備えた電気機械ブレーキでは、各モータの動作を制御する方法が課題である。
【0003】
発明の概要
本出願は、先行技術に存在する課題を解決するか、又は少なくとも軽減することを目的としている。
【0004】
電気機械ブレーキであって、
第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータと、
第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータに連結されたトランスミッションデバイスと、
トランスミッションデバイスに連結されたブレーキアクチュエータであって、トランスミッションデバイスが、ブレーキトルクを第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータからブレーキアクチュエータに伝達する、ブレーキアクチュエータと、を含み、
トランスミッションデバイスが、差動装置を含み、差動装置は、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータにそれぞれ結合されて、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータから入力トルクを受け取り、統合されたトルクをブレーキアクチュエータに出力する。
【0005】
様々な実施形態による電気機械ブレーキを含む車両を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面を参照すると、本出願に開示される内容は、より容易に理解可能になる。当業者であれば、これらの図面は、例示のみを目的としており、本出願の保護範囲を限定することを意図するものではない、ことを容易に理解し得る。更に、図中の類似の数字は、類似の構成要素を表すために使用され、
図1】一実施形態による電気機械ブレーキの設置図を示す。
図2】一実施形態による電気機械ブレーキの三次元図を示す。
図3】一実施形態による電気機械ブレーキの分解図を示す。
図4】一実施形態による電気機械ブレーキの部分断面図を示す。
図5】一実施形態による、ブレーキアクチュエータ部分を除く、電気機械ブレーキの分解図を示す。
図6】一実施形態による、電気機械ブレーキのブレーキモータ及びトランスミッションデバイスの内部構造の三次元図を示す。
図7】異なる角度からの一実施形態によるトランスミッションデバイスの内部歯車構造を示す。
図8】異なる角度からの一実施形態によるトランスミッションデバイスの内部歯車構造を示す。
図9】異なる角度からの一実施形態によるトランスミッションデバイスの内部歯車構造を示す。
図10】異なる角度からの一実施形態によるトランスミッションデバイスの内部歯車構造を示す。
図11】異なる角度からの一実施形態によるトランスミッションデバイスの内部歯車構造を示す。
図12】一実施形態によるブレーキモータの内部構造を示す。
図13】一実施形態による電気機械ブレーキの部分回路構造を示す。
図14】一実施形態による電気機械ブレーキのブレーキアクチュエータ部分の分解図を示す。
図15】一実施形態による電気機械ブレーキのブレーキアクチュエータ部分の断面図を示す。
図16】一実施形態による電子機械ブレーキのブレーキアクチュエータの特定の構成要素の三次元図を示す。
図17】一実施形態による電気機械ブレーキのブレーキアクチュエータの摩擦ディスクブラケット及び摩擦ディスクの正面図を示す。
図18】様々な実施形態による回転位置センサの磁石の図を示す。
図19】様々な実施形態による回転位置センサの磁石の図を示す。
図20】様々な実施形態による回転位置センサの磁石の図を示す。
図21】様々な実施形態による回転位置センサの磁石の図を示す。
図22】様々な実施形態による回転位置センサの磁石の図を示す。
図23】様々な実施形態による回転位置センサの磁石の図を示す。
図24】一実施形態による電気機械ブレーキシステムの制御構造の概略図を示す。
図25】例示的なモータ特性曲線を示す。
図26】例示的なモータ断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、電気機械ブレーキの設置図を示し、設置図は、回転シャフト91と、ダンパー92と、ベアリング94と、ステアリングナックルアーム93と、ブレーキディスク95と、ホイール96と、並びにブレーキディスク95をブレーキキャリパでクランプすることによって制動力を提供する電気モータによって駆動される、本実施形態例による電気機械ブレーキ100とを示す。組み立て中、電気機械ブレーキ100は、ホイール96のハブ内側のコンパクトなスペースに収容されながら、同時に、ステアリングナックルアーム93上に取り付けられる。
【0008】
図2は、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12(図5に示すように)と、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12に連結されたトランスミッションデバイス2と、トランスミッションデバイス2に連結されたブレーキアクチュエータ3とを含む、実施形態に従った電気機械ブレーキを示す。トランスミッションデバイス2は、ブレーキアクチュエータ3に結合され、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12のブレーキトルクをブレーキアクチュエータ3に伝達する。図に示すように、電気機械ブレーキは、2つのブレーキモータ11及び12を含み、この電気機械ブレーキは、より大きなブレーキトルクを必要とする車両の前輪などの主要ブレーキ車輪のために使用され得る。車両の後輪への電気機械ブレーキのためには、1つのブレーキモータのみが適合されてもよく、その場合、ハウジング及びトランスミッションデバイス2は対応するように変更される。
【0009】
電気機械ブレーキの具体的な実施形態を、図3及び4を参照して更に説明する。図3に示す実施形態では、トランスミッションデバイス2のハウジング及びブレーキアクチュエータ3のハウジングは分離可能である。トランスミッションハウジング及びブレーキアクチュエータ30は、一対のボルト5を使用して、トランスミッションハウジングとブレーキアクチュエータハウジング30とを一緒に接続するための対応する対のボルト穴を画定するフランジ211、301を含む。追加的に、図4に示すように、ボルト5は、トランスミッションハウジング及びブレーキアクチュエータハウジング30のフランジ211、301を通過し、一対の軸方向ガイドロッド51の裏面のボルト穴によって受容され、それゆえ、ブッシング部分41を通して一対の軸方向ガイドロッド51上のブレーキアクチュエータ3の摩擦ディスクブラケット4の軸方向スライド式取り付けを可能にし、それによって、ブレーキアクチュエータハウジング30と摩擦ディスクブラケット4との間の相対的軸方向浮動を達成する。最後に、組み立てられた電気機械ブレーキは、摩擦ディスクブラケット4のフランジ43を使用して図1に示すステアリングナックルアーム93上に設置され、更に摩擦ディスクブラケット4上の2つの摩擦ディスクは、ブレーキディスク95の両側に位置決めされる。
【0010】
電気機械ブレーキのトランスミッションデバイス2の特定の構造は、図5~11を更に参照して本明細書に記載されている。本開示の実施形態では、出力トルクを協働的に提供するためにデュアルモータシステムを使用するスキームが提案され、これは、先行技術のデュアルモータシステムで単一のモータを別のモータのバックアップモータとして使用するスキームとは異なる。したがって、様々な機能を実行するために協働して動作する第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12を制御することが期待される。いくつかの共通のスキームでは、トルクセンサは、個々のブレーキモータの出力トルクを検出するために使用され、それによって、デュアルモータシステム全体を制御する。しかしながら、トルクセンサ自体のサイズが比較的大きいこと、及びトルクセンサ自体が占める空間が比較的大きいため、ホイールハブ内のコンパクトな空間内にトルクセンサを配置することは困難である。本出願は、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12を統合するために、トランスミッションデバイス内に差動装置を設置することを提案し、第1のブレーキモータ11と第2のブレーキモータ12とをある程度結合解除し、それぞれの回転速度及び電流を監視することによって、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の別個の制御を可能にし、したがって、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の出力トルクを個別に監視する必要性を排除する。
【0011】
図に示すように、トランスミッションハウジングは、差動歯車、中間歯車などを含む、トランスミッションデバイス2の歯車セットを収容する、ボルトによって接続された第1のハウジング部分21及び第2のハウジング部分22から構成され得る。図示した実施形態では、第1のハウジング部分21及び第2のハウジング部分22は、大まかにヘリングボーン形状のトランスミッション歯車セットを収容するために、ヘリングボーン形状の空洞を画定するために、大まかにヘリングボーン形状である。第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12は、第1のハウジング部分21上に取り付けられ、それらの出力シャフトに接続されたピニオン111、121は、内部空洞の中に延在し、対応する中間歯車201、202に係合される。したがって、実施形態による、第1のブレーキモータ11、第2のブレーキモータ12及びブレーキアクチュエータ3は、トランスミッションデバイス2の同じ側に位置し、結果として、電気機械ブレーキの軸方向の長さが比較的短くなり、これは、ホイールハブの内部側のコンパクトなスペースに配置され得るが、それでも、デュアルブレーキモータシステムの存在で十分なブレーキトルクを提供する。いくつかの実施形態では、回転位置センサの磁石部分112及び122は、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の出力シャフト上に設置される。更に、ホールセンサ(図13)などの、回転位置センサの対応する検出器112’及び122’は、磁石部分112及び122に対応する位置で回路基板上に設置され、磁石部分112及び122によって発生する磁界における変化を検出し、それによって第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の位相及び回転速度を検知する。第2のハウジング部分22は、電子制御ユニット(ECU)などの車両のコントローラに接続するためのインターフェース221を更に提供し、それによって、電気機械ブレーキとECUとの間の通信を達成して、ECUが第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12を制御し、回転位置センサを通してブレーキモータの状態を捕捉することを可能にする。追加的に、モータ11及び12に対応する合計出力トルクセンサ81(ブレーキアクチュエータ3のねじナットデバイスに配置され得る)及び電流センサ82及び83がそれぞれ設置されてもよく、したがって電気機械ブレーキの合計出力トルク及び第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の電流をECUに伝送する。上述の配置では、回転位置センサは、モータのロータの回転状態に関するフィードバックをECUに送信し、一方トルクセンサ及び電流センサは、締付トルク及びモータの動作電流に関するフィードバックをECUに送信する。ECUは、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータそれぞれの回転速度及び電流に基づいて、第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータを制御する。
【0012】
本開示の実施形態では、トランスミッションデバイス2は、差動装置を含み、差動装置は、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12に結合して、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の入力トルクをそれぞれ受け取り、統合されたトルクをブレーキアクチュエータ3に出力する。いくつかの実施形態では、差動装置は、遊星差動装置システムである。いくつかの実施形態では、遊星差動装置システムは、第1のリング歯車2041と、第1の太陽歯車2043と、第1のリング歯車2041と第1の太陽歯車2043との間の複数の第1の遊星歯車2042とを含み、第1のブレーキモータ11は、第1のリング歯車2041の外歯に結合され、第2のブレーキモータ12は、第1の太陽歯車2043に結合され、複数の第1の遊星歯車2042は、第1の遊星キャリア2044に連結される。いくつかの実施形態では、トランスミッションデバイスは、第1の中間歯車201と、第2の中間歯車202と、同軸歯車203とを更に含む。図6に示すように、第1の中間歯車201は、第1のブレーキモータ11の出力シャフト上の歯車111と、第1のリング歯車2041の外歯に、それぞれ係合する。第2の中間歯車202は、第2のブレーキモータの出力シャフト上の歯車121と、同軸歯車203とに、それぞれ係合する。図10に示すように、同軸歯車203は、第1の太陽歯車2043に同軸に結合されており、例えば、図に示すように、2つの歯車は、同軸に一緒に回転するように接続されるか、又は代替的に、2つの歯車を一体化することができる。図10に示すように、いくつかの実施形態では、同軸歯車203は、第1のベアリング2061によって回転可能に支持される軸方向延在部分2031を含み、第1のリング歯車2041は、第2のベアリング支持体2062によって回転可能に支持される軸方向延在部分2040を含む。第1のベアリング2061は、例えば、ハウジング内に取り付けられてもよく、第2のベアリング2062は、例えば、ハウジング内に取り付けられてもよく、及び/又は中間ブラケット207によって支持されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、トランスミッションデバイス2は、中間ブラケット207を通して上述の差動装置及び中間歯車から分離される、第2の遊星歯車セット205を更に含み、第2の遊星歯車セットは、第2の太陽歯車2051と、第2のリング歯車2053と、第2の太陽歯車2051と第2のリング歯車2053との間の複数の第2の遊星歯車2052と、を備え、第2の太陽歯車2051が、第1の遊星キャリア2044に同軸に結合されて、第1の遊星キャリア2044の回転トルクを受け、第2のリング歯車2053が、固定されてもよく、第2の遊星キャリア2054が、複数の第2の遊星歯車2052に連結され、第2の遊星キャリアが、正方形の断面又は他の非円形の断面を有し得る、コア穴2055を含み、それによって、ブレーキアクチュエータの入力端311(図15)に接続されて、トルクをブレーキアクチュエータ3に出力するように更に構成される。当然のことながら、第2の遊星歯車セット205は、主にトルクの増加における役割を果たす。いくつかの実施形態では、第2の遊星歯車セット205は省略されてもよく、第1の遊星キャリア2044をブレーキアクチュエータ3の入力端311に直接接続することを可能にする。
【0014】
図12は、更なる参照として、実施形態によるブレーキモータの内部構造図を示す。差動装置の使用により、ブレーキトルクが無給電ブレーキモータに伝達されるのを回避し、第1のブレーキモータ11又は第2のブレーキモータ12が電力を失うと、それをアイドル状態で回転させ、その結果、ブレーキアクチュエータ3に伝達されるトルクが不十分となるために、本出願の第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12は、各々セルフロックデバイスに適合されている。いくつかの実施形態では、セルフロックデバイス及び対応するブレーキモータは、同じ電源100によって給電され、セルフロックデバイスは、電力が失われたときに対応するブレーキモータの回転を阻止し、それによって、電力を失ったブレーキモータをロックし、他の機能しているブレーキモータがブレーキトルクをブレーキアクチュエータ3に依然として出力することを可能にする。いくつかの実施形態では、図12に示すように、ブレーキモータは、ハウジング9と、ハウジング内部のステータ91と、ステータ91内部のロータ92と、ロータ92に連結されたロータシャフト又は出力シャフト93とを含む。セルフロックデバイスは、対応するモータ出力シャフト93に接続された回転ディスク94であって、出力シャフト93と一緒に回転し、かつロータシャフト93に対して軸方向に移動することができ、例えば、ロータシャフト93が、回転ディスク94と一緒に回転するための1つ以上の鍵を有する、回転ディスク94と、例えば、モータハウジング9に固定された固定摩擦ディスク95と、回転ディスク94をブレーキディスク95に向かって押して、回転ディスク94にブレーキをかけるのに役立つばね97と、電磁コイル98であって、電力がオンのときに磁界を発生して、ばね97のスラストを克服するための磁力を生成し、電源100によって給電されたときに磁界を発生して、ばね97のスラストを克服し、回転ディスク94を摩擦ディスク95から右へ離れる方向に押し、それによって、出力シャフト93が自由に回転することを可能にし、故障に起因して電源100がもはや給電されないときに、回転ディスク94が摩擦ディスク95に係合し、モータのロータシャフト93がアイドリングすることを防止する、電磁コイル98と、を含む。加えて、電源100は、電子制御ユニット101に更に接続されている。
【0015】
図13に示すように、電気機械ブレーキは、回路基板8を更に含み、回路基板8は図に視覚的には示されていないが、インターフェース221を通して外部デバイスに接続される。回路基板8は、第1のブレーキモータ11と、第2のブレーキモータ12と、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の回転位置を検出するためのセンサの検出器112′及び122′と、第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の電流を検出するための電流センサ81及び82と、合計出力トルクセンサ83とにそれぞれ接続され、それによって、様々なデータ及び制御信号を制御システムと交換する。
【0016】
実施形態によるブレーキアクチュエータは、図14及び15を更に参照しながら詳細に説明される。ブレーキアクチュエータは、ねじナット機構31及びプランジャー35を収容するブレーキアクチュエータハウジング30を含む。例示的な実施形態では、ねじナット機構のねじは、トランスミッションデバイスに接続されて使用される、入力端311と、ナット313と係合するねじ本体312とを含む。入力端311は、例えば、四角などの断面形状を有し、四角などの断面形状は、トルクを受けるために、第2の遊星キャリアのコア穴2055に合致する。追加的に、ブレーキアクチュエータとトランスミッションデバイスとの間の封止を提供するために、封止リング36が提供される。入力端311は、ピン33を介してその外周上に配置された支持リング32と係合する。一態様では、支持リング32は、ねじ本体312の背面に対して支持され、更に一態様では、スナップリング37によって軸方向に制限され、したがって、軸方向に制限されるが、ねじと一緒に回転させることができる。支持リング32は、ベアリング34によって支持される。いくつかの実施形態では、ベアリング34はスラストベアリングである。代替的に、ベアリング34は、とりわけ、深溝ボールベアリング、角接点ボールベアリング、又は中心ボールベアリングであってもよい。代替的に、ねじはベアリングによって直接支持され得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、ねじナット機構のナット313は、円周方向のプランジャー35と結合される。例えば、ナット313の外側は、プランジャー35上の突起又は溝と対応するように係合する突起又は溝を有してもよい。いくつかの実施形態では、プランジャー35は、円周方向における摩擦ディスク71と結合される。例えば、プランジャー35の前面は、摩擦ディスク71上の突起又は溝と対応して係合する軸方向に沿った溝又は突起を有してもよい。更に、摩擦ディスク71は、摩擦ディスク71の円周方向の動きを制限する、摩擦ディスクブラケット4によって支持される。結果として、プランジャー35及びナット313の両方は、円周方向に制限され、軸方向動きのみを可能にし、円周の回転を防止するので、ねじナット機構でのナット313の円周方向の制限及び軸方向動きを達成する。したがって、ナットとプランジャーとの間の円周カップリング、プランジャー及び摩擦ディスク、並びに摩擦ディスク71の摩擦ディスクブラケット4によって提供される円周方向の制限を利用することによって、ナットの円周方向の動きを制限することを目的とするハウジングに特に特徴物を設置する必要はない。
【0018】
1つの実施形態によるナット、プランジャー、摩擦ディスク、及び摩擦ディスクブラケットの具体的な構造が更に図16及び17を参照して説明されている。いくつかの実施形態では、ナット313の外周は複数の鍵314を有し、プランジャー35は、ナット313の外周上に取り付けられたスリーブ部分を有し、スリーブ部分の背面は、複数の鍵314と係合する複数のスロット351を有し、ナット313の複数の鍵314とプランジャー35のスリーブ部分の複数のスロット351との嵌合を通して2つの円周の結合を達成する。いくつかの実施形態では、スリーブ部分の前面352は、複数の溝353を有し、スリーブ部分の前面352に面する摩擦ディスク71の隣接する表面は、対応する複数の突起713を有し、ナットの前面352上の複数の溝353の、摩擦ディスク71上の複数の突起713との嵌合を通して、2つの円周方向の結合を達成する。ナット313、プランジャー35、及び摩擦ディスク71は、互いに軸方向に結合されていないため、それらは互いに対して軸方向の変位を有することができることが理解されるべきである。しかしながら、複数の鍵314と、複数のスロット351と、複数の溝353と、複数の突起713とは、軸方向変位中にナット313、プランジャー35、及び摩擦ディスク71が互いから外れるのを防止するのに十分な軸長さを有して設置されるべきである。
【0019】
上述のナット313と、プランジャー35と、摩擦ディスク71とはまた、例えば、ナット313と、プランジャー35と、摩擦ディスク71とが締まり嵌めを通して軸方向に結合されることによって、互いに軸方向に結合されるように設計されてもよく、ナット313と、プランジャー35と、摩擦ディスク71とは、同時に軸方向に動くことができることが理解されるべきである。
【0020】
いくつかの実施形態では、摩擦ディスク71は、両端に耳部711を適合し、摩擦ディスク71は、耳部711を摩擦ディスクブラケット4の側面溝45に挿入することによって円周方向に制限される。いくつかの実施形態では、摩擦ディスク71の耳部711と摩擦ディスクブラケット4の溝45との間にギャップがあり、ダンピング戻りばねが設置される。この場合、摩擦ディスク71はまた、耳部の内部側上に肩部712を含み、摩擦ディスクブラケット4は、摩擦ディスクの2つの端部で肩部712を支持する一対の突起46を更に含み、それによって摩擦ディスク71の円周方向制限を達成する一方で、摩擦ディスク71が摩擦ディスクブラケット4に対して軸方向に動くことを可能にする。当然のことながら、図15に示すように、対向する摩擦ディスク72は、摩擦ディスク71の反対側に配置された摩擦ディスクブラケット4上に更に設置される。対向する摩擦ディスク72は、摩擦ディスク71と類似した形状(プランジャーと係合するための特徴なし)を有し、摩擦ディスクブラケット4上で同様の方法で軸方向に移動するように配置され得る。前述のように、ブレーキアクチュエータハウジング30は、軸方向ガイドロッド51を介して摩擦ディスクブラケット4上に浮動可能に取り付けられる。組み立てられた電子機械ブレーキは、摩擦ディスクブラケット4上のフランジ43を介してステアリングナックルアーム93に固定され、その結果、摩擦ディスク71及び対向する摩擦ディスク72は、ブレーキディスク95の両側に位置する。トルクの確立中、ブレーキモータの回転は、トランスミッションデバイス2を駆動し、ナットのねじの回転、ナットの並進、及びプランジャーの動きを引き起こし、それによって摩擦ディスク71をブレーキディスク95に接触させる。追加的に、ブレーキディスク95及び摩擦ディスクブラケット4は固定されているため、ねじ312上の反力は、ナット313が並進されたときに電気機械ブレーキのブレーキアクチュエータハウジング30に伝達され、ブレーキアクチュエータハウジング30を逆方向に移動させる(図15に示すように左に向かって)。ブレーキアクチュエータハウジングのフック部分301は、対向する摩擦ディスク72を駆動して、摩擦ディスク71とともに軸方向に左に移動させ、それによってブレーキディスク95を締め付ける。ブレーキトルクを解放するときに、ブレーキディスク95の回転は、摩擦ディスク71及び対応する摩擦ディスク72を押し離し、ブレーキディスク95が次のブレーキングサイクルまで自由に回転するのに十分なクリアランスを提供する。
【0021】
図18~21は、更なる参照として、回転位置センサ磁石の構造を示す。この実施形態では、磁石207は、ディスク形状の磁石部分2071及びシャフト部分2072を含む。シャフト部分2072は、歯車シャフト又はモータシャフト2013のシャフト穴に取り付けられ、ディスク形状の磁石部分2071、2071’は、180度離隔した1つ以上の対の磁極を含む。図22~23は、更なる参照として、環状磁石部分2071"及び環状磁石部分2071"の内部側にあるシャフトワッシャー2072"を含む、回転位置センサ磁石207"の別の構造を示す。回転位置センサ磁石は、シャフトワッシャー2072"を介して歯車シャフト又はモータシャフトの突出端2014上に取り付けられる。同様に、環状磁石部分2071”は、180度離隔した1つ以上の対の磁極を含み得る。上述のように、回転位置センサ磁石は、上述の方法又は他の適切な方法のいずれかを使用して、2つのブレーキモータ、又は中間歯車の出力シャフト上に取り付けられてもよい。
【0022】
実施形態による電気機械ブレーキシステムは、図24を更に参照しながら本明細書に説明される。制御システムは、例えば、車両の電子制御ユニット(ECU)である、コントローラ80を含む。ECUは、動作状態、すなわち回転位置センサを通して第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の回転速度及び位相を取得する。ECUは更に、電流センサ82及び83を通して、それぞれ第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の動作電流を取得する。追加的に、ECUはブレーキペダルデバイス840におけるペダル変位センサ84を使用することによって、ブレーキペダル841の変位を取得する。ブレーキペダル841の変位は、ペダル変位受信機84’に送信される。加えて、ブレーキペダルデバイス840は、ペダル感触シミュレーションデバイス842を更に含む。更に、ECUは、例えば、結合方式で、トランスミッションデバイス2を通してブレーキアクチュエータシステム3に伝送される第1のブレーキモータ11及び第2のブレーキモータ12の合計出力トルクである、結合された第1のブレーキモータ及び第2のブレーキモータの合計出力トルクをトルクセンサ81を通して取得する。例えば、トルクセンサ81は、トランスミッションデバイス2とブレーキアクチュエータ3(又はブレーキアクチュエータ3に)との間に設置され、ブレーキアクチュエータシステム3の入力端311でのトルクを検知し、ブレーキトルク受信機81’に送信する。代替的な実施形態では、合計ブレーキトルクは、例えば、差動装置システムとブレーキアクチュエータの入力シャフトとの間の任意の適切な位置で測定され得る。
【0023】
図25は、更なる参照として、例示的なモータ特性曲線を示す。モータ特性曲線は、特定の電流に対応する。様々な電流における各モータの特性曲線は、モータ性能試験を実施することによって、又は計算によって得ることができる。この曲線では、モータ速度が特定の値以下であるときに、モータ出力トルクは実質的に一定であり、モータ速度が特定の値よりも高いときに、モータ速度の増加とともにモータ出力トルクは減少する。
【0024】
図26は、更なる参照として、例示的なモータの断面図を示す。このタイプのモータについては、モータ出力トルクTは、例えば、以下の式を使用して計算することができる。
【数1】
式中、Tは、モータ出力トルクであり、Pは、ロータ極対の数であり、
【数2】
は、主磁束(主磁鎖)であり、Lは、d軸インダクタンスであり、Lは、q軸インダクタンスであり、Iは、主磁束に平行な磁束を発生するステータでの電流であり、Iは、ステータでの主流束に直交する磁束を生成する電流である。トルクを計算する上の方法は単に例示であり、代替的な実施形態では、各モータの出力トルクを計算するために様々な他の適切な方法を使用できる。
【0025】
本出願において上述した特定の実施形態は、本出願の原理をより明確に記述すること、すなわち、本開示の原理をより理解しやすくするために様々な構成要素を明確に例示又は記述することのみを意図している。本出願の範囲内において、当業者は、本出願に様々な修正又は変更を容易に行うことができる。したがって、これらの修正又は変更は、本出願の特許保護の範囲内に全て含まれることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26