(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065151
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 17/22 20060101AFI20240508BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20240508BHJP
B60K 17/24 20060101ALI20240508BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B60K17/22 Z
B60K17/10 D
B60K17/24
E02F9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173893
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】山崎 明日佳
(72)【発明者】
【氏名】清川 春矢
(72)【発明者】
【氏名】川口 隆博
【テーマコード(参考)】
2D015
3D042
【Fターム(参考)】
2D015AA02
2D015CA01
3D042AA06
3D042AB07
3D042DA01
3D042DA12
3D042DC02
(57)【要約】
【課題】等速ジョイントの組み付け誤差を吸収すると共に、省スペース化を図ることができる作業車を提供する。
【解決手段】機体フレーム2と、前車軸ケース20と、サスペンション装置100と、クラッチハウジング5aの下部に配置され、エンジン3から変速装置を介して伝達された駆動力が伝達される第一シャフト210と、第一シャフト210からの駆動力が伝達される第二シャフト220と、第二シャフト220から伝達された駆動力を、車軸に伝達する第三シャフト230と、第二シャフト220の前端側及び前記第三シャフト230の後端側を、揺動軸130に対応する位置で屈曲可能に接続する等速ジョイント240と、第二シャフト220及び第一シャフト210の軸線方向の相対的な移動を許容するように、第二シャフト220の後端側及び前記第一シャフト210の前端側を接続する接続部(スプライン部250)と、を具備する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが固定される機体フレームと、
前輪の車軸を支持する前車軸ケースと、
前記前車軸ケースを、前記機体フレームに対して揺動軸回りに揺動可能に支持するサスペンション装置と、
変速装置が収容される第一ケースの下部に配置され、前記エンジンから前記変速装置を介して伝達された駆動力が伝達される第一シャフトと、
前記第一シャフトの前方側に配置され、前記第一シャフトからの駆動力が伝達される第二シャフトと、
前記第二シャフトの前方側に配置され、前記第二シャフトから伝達された駆動力を、前記車軸に伝達する第三シャフトと、
前記第二シャフトの前端側及び前記第三シャフトの後端側を、前記揺動軸に対応する位置で屈曲可能に接続する等速ジョイントと、
前記第二シャフト及び前記第一シャフトの軸線方向の相対的な移動を許容するように、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側を接続する接続部と、
を具備する作業車。
【請求項2】
前記第二シャフトの後端部は、
前記エンジン及び前記第一ケースの間に配置され、フライホイールを収容する第二ケースよりも後方に位置する、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記接続部は、
前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側を接続する接続位置と、
前記接続位置から、前記第一シャフト側又は前記第二シャフト側へ移動し、前記第一シャフト及び前記第二シャフトの接続を解除する接続解除位置と、
に変位可能である、
請求項1に記載の作業車。
【請求項4】
前記接続部は、
内周面に形成された第一係合部を、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側の外周面に形成された第二係合部に係合させたスプライン構造により、前記第二シャフト及び前記第一シャフトを接続する、
請求項1に記載の作業車。
【請求項5】
前記接続部の内周面における前後方向両側には、当該内周面と、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側の外周面と、の間の隙間を閉塞する閉塞部が設けられている、
請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記等速ジョイントを下方から覆うと共に、内部に侵入した異物を排出可能な排出部が形成されたカバー部を具備する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、トラクタが記載されている。上記トラクタは、エンジンの駆動力をミッションケース内の変速装置で変速し、機体の下側に配置された前輪駆動軸を介して、フロントアクスルケース内の車軸に伝達させている。上記フロントアクスルケースは、ケース揺動支持部(サスペンション装置)によって機体に対して揺動可能に支持されている。
【0004】
上述のようなサスペンション装置を備えるトラクタでは、フロントアクスルケースの揺動に追従するように前輪駆動軸を屈曲させる継手を設ける必要がある。特許文献1のトラクタでは、前輪駆動軸に2つの自在継手を設けている。これによれば、自在継手が設けられた箇所において前輪駆動軸を屈曲させることができる。また、自在継手が2つ設けられている場合には、一方の自在継手の組み付け誤差を、他方の自在継手により吸収することができる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のトラクタのように、2つの自在継手を前輪駆動軸に設けた場合、機体の下方における省スペース化が図り難く、更なる改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の一態様は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、等速ジョイントの組み付け誤差を吸収すると共に、省スペース化を図ることができる作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本開示の一態様に係る作業車は、エンジンが固定される機体フレームと、前輪の車軸を支持する前車軸ケースと、前記前車軸ケースを、前記機体フレームに対して揺動軸回りに揺動可能に支持するサスペンション装置と、変速装置が収容される第一ケースの下部に配置され、前記エンジンから前記変速装置を介して伝達された駆動力が伝達される第一シャフトと、前記第一シャフトの前方側に配置され、前記第一シャフトからの駆動力が伝達される第二シャフトと、前記第二シャフトの前方側に配置され、前記第二シャフトから伝達された駆動力を、前記車軸に伝達する第三シャフトと、前記第二シャフトの前端側及び前記第三シャフトの後端側を、前記揺動軸に対応する位置で屈曲可能に接続する等速ジョイントと、前記第二シャフト及び前記第一シャフトの軸線方向の相対的な移動を許容するように、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側を接続する接続部と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、等速ジョイントの組み付け誤差を吸収すると共に、省スペース化を図ることができる。
【0010】
本開示の一態様に係る前記第二シャフトの後端部は、前記エンジン及び前記第一ケースの間に配置され、フライホイールを収容する第二ケースよりも後方に位置するものである。
本開示の一態様によれば、等速ジョイントの組み付け誤差をより効果的に吸収することができる。
【0011】
本開示の一態様に係る前記接続部は、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側を接続する接続位置と、前記接続位置から、前記第一シャフト側又は前記第二シャフト側へ移動し、前記第一シャフト及び前記第二シャフトの接続を解除する接続解除位置と、に変位可能であるものである。
本開示の一態様によれば、組み付け性を向上させることができる。
【0012】
本開示の一態様に係る前記接続部は、内周面に形成された第一係合部を、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側の外周面に形成された第二係合部に係合させたスプライン構造により、前記第二シャフト及び前記第一シャフトを接続するものである。
本開示の一態様によれば、スプライン構造により第二シャフト及び第一シャフトを接続したことで、等速ジョイントの組み付け誤差をより効果的に吸収することができる。
【0013】
本開示の一態様に係る作業車は、前記接続部の内周面における前後方向両側には、当該内周面と、前記第二シャフトの後端側及び前記第一シャフトの前端側の外周面と、の間の隙間を閉塞する閉塞部が設けられているものである。
本開示の一態様によれば、メンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
本開示の一態様に係る作業車は、前記等速ジョイントを下方から覆うと共に、内部に侵入した異物を排出可能な排出部が形成されたカバー部を具備するものである。
本開示の一態様によれば、カバー部の内部に異物が侵入した場合でも、上記異物を排出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、等速ジョイントの組み付け誤差を吸収すると共に、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一態様に係るトラクタの全体的な構成を示した側面図。
【
図2】トラクタの機体フレーム、エンジン、ミッションケース、クラッチハウジング、フライホイールハウジング、前車軸ケース、ステアリング装置及びサスペンション装置を示した分解斜視図。
【
図3】フライホイールハウジング、前車軸ケース、ステアリング装置及びサスペンション装置を示した斜視図。
【
図4】前車軸ケース、サスペンション装置及び駆動伝達軸を示した分解斜視図。
【
図8】サスペンション装置及び駆動伝達軸を示した側面断面図。
【
図9】支持部材及びジョイントカバーを示した分解底面斜視図。
【
図10】接続位置の駆動伝達軸を示した拡大側面断面図。
【
図11】接続解除位置の駆動伝達軸を示した拡大側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0018】
まず、本開示の一態様に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示すトラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、ボンネット4、ミッションケース5、前輪6、後輪7、フェンダ8、昇降装置9、キャビン10、前車軸ケース20、ステアリング装置30、サスペンション装置100、駆動伝達軸200及びカバー部材300等を具備する。
【0020】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される(
図2を参照)。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に配置される。機体フレーム2の後部にはエンジン3が固定される。エンジン3は、ボンネット4に覆われる。エンジン3の後部には、ミッションケース5が固定される。ボンネット4の右側方には、エンジン3の排気ガスを排出するマフラ4aが配置される。
【0021】
エンジン3の下部には、エンジンオイルを溜めることができるオイルパン3aが設けられている。オイルパン3a(エンジン3)の下面には、前後方向に延びるように形成された凹部3bが形成されている(
図12を参照)。
【0022】
ミッションケース5は、動力伝達機構(不図示)を収容する。
図2に示すように、ミッションケース5の前方には、動力伝達機構(変速装置やクラッチ等)(不図示)を収容するクラッチハウジング5aが設けられる。クラッチハウジング5aの下部には、後述する駆動伝達軸200を支持する軸支持部5bが設けられる(
図8を参照)。また、クラッチハウジング5aの前方(エンジン3との間)には、フライホイールを収容するフライホイールハウジング5cが設けられる。
【0023】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(後述する前車軸ケース20等)を介して左右一対の前輪6に支持される。ミッションケース5の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。左右一対の後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0024】
ミッションケース5の後部には、昇降装置9が設けられる。昇降装置9には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。昇降装置9は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。
【0025】
エンジン3の動力は、クラッチハウジング5aに収容された変速装置(不図示)等で変速された後、駆動伝達軸200により前記フロントアクスル機構に伝達されると共に、当該フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされる。また、変速装置で変速された動力は、前記リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。このように、エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置9に装着された作業装置を駆動させることができる。
【0026】
エンジン3の後方にはキャビン10が設けられる。キャビン10は車体(ミッションケース5等)に載置される。キャビン10の内部には、運転者が搭乗する居住空間が形成される。居住空間には、運転者が着座するための座席11が配置される。また、キャビン10の前部には、前輪6の切れ角を調節するためのステアリングホイール12が配置される。
【0027】
図2から
図4までに示す前車軸ケース20は、前輪6の車軸(不図示)を収容するものである。前車軸ケース20は、機体フレーム2の下方に配置される。前車軸ケース20は、左右方向に長尺な形状に形成される。前車軸ケース20は、中空状に形成され、内部の空間に前輪6の車軸が配置される。前車軸ケース20の左右方向両側には、車軸を介して前輪6が設けられる。前車軸ケース20は、後述するステアリングシリンダ31と共に、フロントアクスル機構を構成する。前車軸ケース20は、軸部21を具備する。
【0028】
図4及び
図8に示す軸部21は、前車軸ケース20の左右方向中央部において、前後に突出する部分である。軸部21は、軸線を前後方向に向けた略円柱形状に形成される。
図8に示すように、前後の軸部21のうち、後側の軸部21には、後方に開口すると共に内部の空間と連通する挿通孔21aが形成されている。
【0029】
図2に示すステアリング装置30は、ステアリングホイール12の操作量に応じて前輪6の操舵を行うものである。ステアリング装置30は、油圧を用いて操舵の補助を行うパワーステアリング機構を構成する。ステアリング装置30は、ステアリングシリンダ31、ステアリングバルブ32及び第一ホース33を具備する。
【0030】
図3に示すステアリングシリンダ31は、適宜のポンプ(不図示)により供給された油の油圧により動作することで、前輪6の切れ角を変更するものである。ステアリングシリンダ31は、前車軸ケース20の前部に設けられる。
【0031】
ステアリングバルブ32は、ステアリングホイール12の操作量に応じてステアリングシリンダ31へ油を供給するものである。ステアリングバルブ32は、フライホイールハウジング5cの上部に設けられる。
【0032】
第一ホース33は、ステアリングシリンダ31とステアリングバルブ32とを接続するものである。第一ホース33は、ステアリングシリンダ31の左右両側に接続されるように一対設けられている。
【0033】
上述の如きステアリング装置30は、ステアリングホイール12の操作量に応じてステアリングバルブ32を駆動させることで、第一ホース33を介して油がステアリングシリンダ31に供給され、油圧によりステアリングシリンダ31が動作する。これにより、前輪6の操舵が行われる。
【0034】
図3及び
図4に示すサスペンション装置100は、前車軸ケース20(前輪6)から機体フレーム2へ伝わる振動を吸収するものである。サスペンション装置100は、前車軸ケース20を、機体フレーム2に対して揺動可能に支持する。サスペンション装置100は、支持部材110、揺動部材120、揺動軸130、サスペンションシリンダ140、アキュムレータ150及び第二ホース160を具備する。
【0035】
図4、
図5、
図8及び
図9に示す支持部材110は、機体フレーム2に固定されると共に、前車軸ケース20の揺動中心となる軸(左右方向に軸線を向けた軸)である揺動軸130を支持するものである。
【0036】
支持部材110は、主として板面を上下方向に向けた略板形状に形成される。支持部材110は、例えば鋳造により成形される。
図8及び
図12に示すように、支持部材110は、機体フレーム2の下面に固定される。これにより支持部材110は、エンジン3の下方に位置するように配置される。支持部材110は、固定部111、中央部112、凹部113、第一支持部114及び第二支持部115を具備する。
【0037】
図5に示す固定部111は、機体フレーム2の下面に固定される部分である。固定部111は、支持部材110の左右方向両端部を構成する。固定部111には、支持部材110の固定のための止具が挿通される孔が形成される。
【0038】
中央部112は、支持部材110の左右方向中央部分を構成するものである。
図12に示すように、中央部112の高さ位置は、固定部111の高さ位置と概ね同じ位置となるように、周囲に対して盛り上がるように形成されている。
【0039】
凹部113は、左右の固定部111と中央部112との間において、下方に凹むように形成された部分である。すなわち、凹部113は、中央部112の左右方向両側に位置するように一対設けられる。凹部113は、前後方向に延びるように形成されている。
【0040】
図5及び
図9に示す第一支持部114は、揺動軸130を支持する部分である。第一支持部114は、支持部材110の左右方向両端部(固定部111)から下方に延出するように、一対形成される。第一支持部114は、板面を左右方向に向けた略板形状に形成される。第一支持部114には、揺動軸130が挿通される孔が形成されている。
【0041】
第二支持部115は、第一支持部114と共に揺動軸130を支持する部分である。第二支持部115は、第一支持部114に対して所定間隔を開けて、支持部材110の左右方向中央側に配置される。図例では、第二支持部115を、一対の凹部113から下方に延出するように、一対形成している。また、第二支持部115の延出寸法は、第一支持部114の延出寸法よりも大きく形成されている(
図12を参照)。第二支持部115は、板面を左右方向に向けた略板形状に形成される。第二支持部115には、揺動軸130が挿通される孔が形成されている。
【0042】
図4、
図6及び
図8に示す揺動部材120は、前車軸ケース20を支持すると共に、支持部材110に対して揺動可能に支持されるものである。揺動部材120は、例えば鋳造により成形される。揺動部材120は、本体部121、案内溝部122及び連結部123を具備する。
【0043】
本体部121は、前車軸ケース20を支持する部分である。本体部121は、揺動部材120の前部を構成する。本体部121は、前後方向に長尺な形状に形成される。本体部121には、前後方向に貫通する貫通孔121aが形成されている。また、本体部121の前後方向中途部には、左右方向及び下方に開口する(上方に凹む)凹部121bが形成されている。
図8に示すように、凹部121bの前後方向両側は、貫通孔121aと連通している。
【0044】
図8に示すように、凹部121bの内部には、前車軸ケース20が配置される。この状態では、前車軸ケース20の前後の軸部21は、それぞれ貫通孔121aに挿通される。これにより、前車軸ケース20は、軸部21を中心として揺動可能に、本体部121(揺動部材120)に対して支持される。
【0045】
案内溝部122は、第一ホース33を案内可能な部分である。案内溝部122は、前後方向に延びるように、本体部121の上面に形成される。案内溝部122は、本体部121の前後方向中央側に形成される。案内溝部122は、前方側に向かうに従い、溝深さ寸法が小さくなるように形成されている。
【0046】
連結部123は、揺動軸130を介して支持部材110と連結される部分である。連結部123は、揺動部材120の後部を構成する。連結部123は、本体部121の後部から、支持部材110の左右方向両側(第一支持部114及び第二支持部115)に向かって延出するように、一対形成される。一対の連結部123の延出方向先端部は、第一支持部114及び第二支持部115の間の空間に位置する。連結部123の延出方向先端部には、揺動軸130が挿通される孔が形成されている。
【0047】
図4に示す揺動軸130は、揺動部材120の揺動中心となるものである。揺動軸130は、軸線を左右方向に向けた略円柱形状に形成される。揺動軸130は、揺動部材120及び支持部材110の左右方向両側を連結するように、一対設けられる。揺動軸130は、揺動部材120の連結部123と、支持部材110の第一支持部114及び第二支持部115と、に挿通されることで、揺動部材120及び支持部材110を連結する。
【0048】
サスペンションシリンダ140は、適宜のポンプ(不図示)により供給された油の流動抵抗により振動を吸収するものである。サスペンションシリンダ140は、上下方向に伸縮することで振動を吸収する。サスペンションシリンダ140は、機体フレーム2と揺動部材120とを接続するように配置される。具体的には、サスペンションシリンダ140の上端側は、機体フレーム2の内側面に、左右方向を向く軸線回りに支持されている。また、サスペンションシリンダ140の下端側は、揺動部材120の本体部121の側面に、左右方向を向く軸線回りに支持されている。また、サスペンションシリンダ140は、機体フレーム2及び揺動部材120の左右両側を接続するように、一対配置されている。
【0049】
アキュムレータ150は、サスペンションシリンダ140の振動を吸収するものである。アキュムレータ150は、フライホイールハウジング5cの下部における左側に設けられる。アキュムレータ150は、2つ(一対)設けられる。一方のアキュムレータ150は、一対のサスペンションシリンダ140のヘッド側の油室に接続され、他方のアキュムレータ150は、一対のサスペンションシリンダ140のロッド側の油室に接続される。
【0050】
第二ホース160は、一対のサスペンションシリンダ140と、一対のアキュムレータ150と、を接続するものである。また、第二ホース160は、各サスペンションシリンダ140に対して2本設けられている。
【0051】
上述の如きサスペンション装置100は、支持部材110及び揺動部材120を介して、機体フレーム2に対して、前車軸ケース20を揺動軸130回りに揺動可能に支持している。また、前車軸ケース20側(揺動部材120)と機体フレーム2との間に介在させたサスペンションシリンダ140により、前車軸ケース20(前輪6)から機体フレーム2へ伝わる振動を吸収することができる。
【0052】
図4、
図7及び
図8に示す駆動伝達軸200は、エンジン3(変速装置)からの動力を、前車軸ケース20内の車軸に伝達するものである。
図8に示すように、駆動伝達軸200は、エンジン3やクラッチハウジング5aの下方に配置される。駆動伝達軸200は、概ね前後方向に軸線を向けた略円柱形状に形成される。駆動伝達軸200は、第一シャフト210、第二シャフト220、第三シャフト230、等速ジョイント240、スプライン部250、軸受260、Oリング270及び移動規制部280を具備する。
【0053】
図7、
図8及び
図10に示す第一シャフト210は、エンジン3から変速装置を介して伝達された駆動力が伝達されるものである。第一シャフト210は、駆動伝達軸200の後部を構成する。
図8及び
図10に示すように、第一シャフト210は、クラッチハウジング5aの下部の軸支持部5bにより、クラッチハウジング5aに対して回転可能に支持される。第一シャフト210は、変速装置側伝達部211及び歯部212を具備する。
【0054】
変速装置側伝達部211は、動力伝達機構からの駆動力(回転)が伝達される部分である。変速装置側伝達部211は、第一シャフト210の他の部分に対して拡径した形状に形成されている。変速装置側伝達部211は、第一シャフト210の後端部に設けられている。変速装置側伝達部211としては、動力伝達機構に係合するギヤ等を採用可能である。
図8及び
図10に示すように、変速装置側伝達部211は、軸支持部5bの内部に収容される。
【0055】
図7及び
図10に示す歯部212は、後述するスプライン部250に対して係合する部分である。歯部212は、第一シャフト210の前側部分の外周面に形成される。歯部212は、軸線方向に延びる直線状の溝を周方向に等間隔に複数形成することで、凹凸が周方向に連続するように形成される。なお図例では、凹凸の図示を省略している。第一シャフト210のうち、歯部212が形成されている部分は、他の部分に対して縮径されている。
【0056】
図7、
図8及び
図10に示す第二シャフト220は、第一シャフト210からの駆動力が伝達されるものである。第二シャフト220は、第一シャフト210の前方側に配置され、駆動伝達軸200の前後方向中間部を構成する。第二シャフト220の長さ寸法は、第一シャフト210の長さ寸法よりも大きく形成される。また、第二シャフト220の後端部は、フライホイールハウジング5cよりも後方に位置する(
図8を参照)。本実施形態では、第二シャフト220の後端部を、平面視においてクラッチハウジング5aと重複する位置に位置させている。第二シャフト220は、歯部221を具備する。
【0057】
歯部221は、後述するスプライン部250に対して係合する部分である。歯部221は、上記歯部212と概ね同様に、第二シャフト220の後側部分の外周面に、凹凸が周方向に連続するように形成される。第二シャフト220のうち、歯部221が形成されている部分は、他の部分に対して縮径されている。
【0058】
図7及び
図8に示す第三シャフト230は、第二シャフト220から伝達された駆動力を、前輪6の車軸(不図示)に伝達するものである。第三シャフト230は、第二シャフト220の前方側に配置され、駆動伝達軸200の前部を構成する。第三シャフト230の長さ寸法は、第二シャフト220の長さ寸法よりも小さく形成される。
【0059】
図8に示すように、第三シャフト230は、揺動部材120の貫通孔121aに挿通されると共に、揺動部材120(本体部121)に対して回転可能に支持される。また、第三シャフト230の前端部は、前車軸ケース20の挿通孔21aに挿通される。第三シャフト230は、車軸側伝達部231を具備する。
【0060】
車軸側伝達部231は、前輪6の車軸に駆動力(回転)を伝達する部分である。車軸側伝達部231は、第三シャフト230の前端部に設けられている。
図8に示すように、車軸側伝達部231は、前車軸ケース20の内部の空間内に位置する。車軸側伝達部231としては、車軸に係合するギヤ(例えばベベルギヤ)等を採用可能である。
【0061】
図7及び
図8に示す等速ジョイント240は、第二シャフト220の前端側及び第三シャフト230の後端側を、屈曲可能に接続するものである。より詳細には、等速ジョイント240は、第二シャフト220と第三シャフト230との間に角度がある場合でも、各シャフトが等速で回転するように、第二シャフト220から第三シャフト230へのトルクの伝達を行う。
【0062】
等速ジョイント240は、第二シャフト220及び第三シャフト230に対して拡径した形状に形成される。等速ジョイント240としては、等速ボールジョイント等を採用可能である。等速ジョイント240は、揺動軸130に対応する位置に配置される。具体的には、等速ジョイント240は、屈曲の中心となる部分が、側面視において揺動軸130の軸心と概ね一致する(重複する)ように配置される(
図8を参照)。
【0063】
図7、
図8及び
図10に示すスプライン部250は、第一シャフト210及び第二シャフト220の軸線方向(前後方向)の相対的な移動を許容するように、第一シャフト210の前端側と、第二シャフト220の後端側と、を接続するものである。スプライン部250は、第一シャフト210の前端側及び第二シャフト220の後端側を挿通可能な、略円筒形状に形成されている。スプライン部250の内径は、第一シャフト210及び第二シャフト220の外径に応じた寸法に形成されている。スプライン部250は、歯部251を具備する。
【0064】
歯部251は、第一シャフト210の歯部212及び第二シャフト220の歯部221に対して係合する部分である。歯部251は、スプライン部250の内周面に、凹凸が周方向に連続するように形成される。
【0065】
上述の如きスプライン部250の歯部251を、第一シャフト210の歯部212及び第二シャフト220の歯部221に対して係合させることで、第一シャフト210及び第二シャフト220をスプライン構造により接続することができる。これによれば、第一シャフト210及び第二シャフト220の軸線方向(前後方向)の相対的な移動を許容すると共に、回転方向(周方向)の相対的な移動は規制するように、各シャフトを接続することができる。
【0066】
図8及び
図10に示す軸受260は、駆動伝達軸200の各シャフトを滑らかに回転可能に支持するものである。軸受260としては、例えばボールベアリング等を採用可能である。
図8に示すように、本実施形態では、クラッチハウジング5aの軸支持部5bと第一シャフト210との間に、前後方向に間隔を開けて一対の軸受260(第一シャフト側軸受260A)を設けている。また、揺動部材120(本体部121)の貫通孔121aと第三シャフト230との間に、前後方向に間隔を開けて一対の軸受260(第三シャフト側軸受260B)を設けている。
【0067】
図10に示すOリング270は、スプライン部250の内周面と、第一シャフト210の前端側及び第二シャフト220の後端側の外周面と、の間の隙間を閉塞する(シールする)ものである。Oリング270は、例えばゴム等の可撓性を有する材料により形成される。Oリング270は、スプライン部250の内周面の前後方向両側にそれぞれ設けられる。図例では、後側のOリング270は、スプライン部250の内周面の後端部に形成された溝に設けられ、前側のOリング270は、第二シャフト220の外周面に形成された溝に設けられている。
【0068】
上記Oリング270を設けたことで、スプライン部250の内周面と、第一シャフト210及び第二シャフト220の外周面と、の間に封入した潤滑剤(グリス等)の漏れを抑制することができ、メンテナンスの負担を低減することができる。
【0069】
図8及び
図10に示す移動規制部280は、スプライン部250の軸線方向の移動を規制するものである。移動規制部280は、第二シャフト220の外周面に固定される。
図10に示す例では、移動規制部280を、第二シャフト220の外周面のうち、Oリング270が設けられる溝よりも前方に形成された溝に係合させている。移動規制部280は、例えば止め輪等を採用可能である。なお、移動規制部280は、拡径されることで上記外周面の溝との係合を解除可能に形成される。また、移動規制部280は、拡径された状態で、第二シャフト220上を前後に移動することができる(
図11を参照)。
【0070】
図8及び
図10に示すように、スプライン部250は、クラッチハウジング5aの軸支持部5bと、移動規制部280と、の間に配置されることで、前後の移動が規制される。移動規制部280が固定された第二シャフト220は、移動規制部280がスプライン部250に当接した状態では後方への移動が規制される(
図8、
図10を参照)。また、第二シャフト220は、前端側に接続された等速ジョイント240が、本体部121(揺動部材120)の後端部(例えば貫通孔121aに設けられたオイルシール等)に当接した状態では前方への移動が規制される(
図8を参照)。移動規制部280とスプライン部250との間、及び本体部121と等速ジョイント240との間には、それぞれある程度(例えば1mm程度)の隙間が形成されている。このように、第二シャフト220は、上記隙間の範囲で前後方向(軸線方向)の移動が許容されるように、スプライン部250を介して第一シャフト210に接続されている。
【0071】
以下では、上述のように第一シャフト210の前端側及び第二シャフト220の後端側を接続するスプライン部250の位置を「接続位置」と称する(
図10を参照)。本実施形態では、上記接続位置のスプライン部250を、前方側(第二シャフト220)へ移動させて、第一シャフト210との接続を解除する「接続解除位置」に変位させることができる(
図11を参照)。この場合は、スプライン部250の前方への移動を許容するように、移動規制部280を前方へ移動させる。
図11に示すように、前方へ移動した移動規制部280は、第二シャフト220の外周面において凹む(くびれた形状の)部分に収まるように配置される。なお、この際には、後述するシャフトカバー部310を取り外す。
【0072】
図11では、スプライン部250を接続解除位置に位置させた状態を示している。接続解除位置では、第二シャフト220の後端部と、スプライン部250の後端部と、の前後の位置が概ね一致する。この状態で、等速ジョイント240を介して、第三シャフト230に対して第二シャフト220を屈曲させて、第二シャフト220を下ろすことで、第一シャフト210に対して容易に第二シャフト220を取り外すことができる。また、上記動作とは逆に、第二シャフト220を第一シャフト210の位置まで上げると共に、スプライン部250を接続位置に移動させることで、第一シャフト210に対して容易に第二シャフト220を組み付けることができる。
【0073】
図8に示すカバー部材300は、駆動伝達軸200を下方から覆うものである。カバー部材300は、金属製の板を、適宜折り曲げることで形成される。カバー部材300は、クラッチハウジング5aの軸支持部5bと、支持部材110と、に架け渡すように配置される。カバー部材300は、シャフトカバー部310及びジョイントカバー部320を具備する。
【0074】
シャフトカバー部310は、駆動伝達軸200のうち、第一シャフト210、第二シャフト220及びスプライン部250を覆うものである。より詳細には、シャフトカバー部310は、第一シャフト210、第二シャフト220及びスプライン部250の左右両側方及び下側を覆う。シャフトカバー部310は、前後方向に長尺な略箱形状に形成される。シャフトカバー部310は、後端部が軸支持部5bに固定される。
【0075】
図8、
図9及び
図12に示すジョイントカバー部320は、等速ジョイント240を覆うものである。より詳細には、ジョイントカバー部320は、
図8及び
図9に示すように、等速ジョイント240の左右両側方及び下側を覆う。ジョイントカバー部320は、後端部がシャフトカバー部310に固定される。また、ジョイントカバー部320は、左右両側部が、支持部材110の第二支持部115に固定される(
図9を参照)。
【0076】
ジョイントカバー部320の側面には、左右方向に開口すると共に、ジョイントカバー部320の内部と連通する開口部321が形成されている。開口部321は、ジョイントカバー部320の側面における後下側の角部に形成されている。上記開口部321を介して、ジョイントカバー部320の内部に侵入した異物(例えば泥や水等)を排出することができる。
【0077】
上述の如きトラクタ1は、駆動伝達軸200に等速ジョイント240を設けたことで、サスペンション装置100の動作(揺動軸130を中心とした揺動)に追従するように、駆動伝達軸200を屈曲させることができる(
図8を参照)。
【0078】
ここで、等速ジョイント240の組み付け誤差等が発生し、等速ジョイント240の屈曲の中心となる部分が、側面視において揺動軸130の軸心と一致しない場合、駆動伝達軸200がサスペンション装置100の動作に追従できないおそれがある。
【0079】
そこで、本実施形態においては、等速ジョイント240に加えて、スプライン部250を用いて第一シャフト210及び第二シャフト220をスプライン構造で接続している。これにより、
図10に示すように、第一シャフト210及び第二シャフト220の軸線方向の相対的な移動が許容されるため、上記等速ジョイント240の組み付け誤差を吸収することができる。
【0080】
また、本実施形態のように、第一シャフト210及び第二シャフト220をスプライン構造で接続した場合には、第二シャフト220の外周面と、スプライン部250の内周面と、の間に形成されたある程度の隙間により、スプライン部250に対する第二シャフト220の径方向の変位(上下方向の移動等)が許容される(ガタが生じる)。本実施形態においては、第二シャフト220を比較的長く形成したことで、スプライン部250のガタの変位量に応じた第二シャフト220の前端側(等速ジョイント240側)の変位量を大きくすることができる。これにより、等速ジョイント240の組み付け誤差をより効果的に吸収することができる。
【0081】
このように、本実施形態では、スプライン構造による第一シャフト210及び第二シャフト220の接続を採用したことで、駆動伝達軸200の軸線方向及び径方向の上記組み付け誤差を吸収することができる。また、上記構成によれば、例えば、組み付け誤差の吸収のために駆動伝達軸200にもう1つ等速ジョイント240を設けた場合とは異なり、車体の下方における省スペース化を図ることができる。これにより、車体の最低地上高を確保することができる。
【0082】
また、上述の如きトラクタ1は、ステアリング装置30やサスペンション装置100を作動させるための各ホース(第一ホース33及び第二ホース160)を好適に配策することができる。以下では、各ホースの配策の様子について説明する。
【0083】
本実施形態では、
図12に示すように、エンジン3と、支持部材110と、の間に各ホース(第一ホース33及び第二ホース160)を配策可能な配策空間Aを形成している。配策空間Aには、第一配策空間A1及び第二配策空間A2が含まれる。
【0084】
第一配策空間A1は、ステアリング装置30の第一ホース33が配策される空間である。第一配策空間A1は、エンジン3の凹部3bと、支持部材110の中央部112と、により区画される。第一配策空間A1は、前後方向に延びるように形成される。
【0085】
エンジン3の後方のステアリングバルブ32に接続された第一ホース33は、第一配策空間A1を通過する。当該第一ホース33は、支持部材110の中央部112の上を前後に亘るように配置される(
図3を参照)。本実施形態では、第一配策空間A1を通過した第一ホース33は、揺動部材120の案内溝部122に沿って前方側へ案内され、ステアリングシリンダ31に接続される。
【0086】
第二配策空間A2は、第二ホース160が配策される空間である。第二配策空間A2は、エンジン3(オイルパン3a)の左右の側面と、当該側面に対向する機体フレーム2の内面と、支持部材110の一対の凹部113と、によって区画される。第二配策空間A2は、第一配策空間A1の左右方向両側に位置するように、一対形成されている。第二配策空間A2は、前後方向に延びるように形成される。
【0087】
エンジン3の後方のアキュムレータ150に接続された左右の第二ホース160は、左右の第二配策空間A2を通過して、左右のサスペンションシリンダ140に接続される(
図3を参照)。
【0088】
上述のように、本実施形態においては、エンジン3と支持部材110との間に形成された配策空間Aを利用して、第一ホース33及び第二ホース160の配策を行うことができる。また、サスペンション装置100の支持部材110を、第一ホース33及び第二ホース160をガイドする部材としても利用することで、部材点数を削減することができる。また、支持部材110が、各ホースと駆動伝達軸200(等速ジョイント240等)の間に介在されるため、高速回転する駆動伝達軸200と各ホースが直接接触しないようにすることができる。
【0089】
ここで、トラクタ1は、サスペンション装置100を設けた仕様を採用しているが、上記サスペンション装置100を設けない仕様を採用する場合も想定される。サスペンション装置100を設けない場合には、駆動伝達軸200を上下に揺動させる機構が不要になり、駆動伝達軸200を高い位置に配置できる。この場合、エンジン3のオイルパン3aの凹部3b(第一配策空間A1)に、第一ホース33に代えて駆動伝達軸200を配置することも可能である。このように、本実施形態では、エンジン3を汎用性が高いものとしている。
【0090】
本実施形態においては、上述のようなエンジン3の凹部3bを利用して、第一ホース33の配策を行うことができる。また、第一ホース33は、前車軸ケースの動作に連動して上下及び左右に動作することが想定される。本実施形態によれば、このような第一ホース33を、車体の左右方向中央側の第一配策空間A1や、案内溝部122を用いて安定して配策することができる。
【0091】
また、本実施形態においては、第一ホース33の左右両側に形成された第二配策空間A2を利用して、車体の左右両側に配置されるサスペンションシリンダ140の第二ホース160を、好適に配策することができる。
【0092】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、
エンジン3が固定される機体フレーム2と、
前輪6の車軸を支持する前車軸ケース20と、
前記前車軸ケース20を、前記機体フレーム2に対して揺動軸130回りに揺動可能に支持するサスペンション装置100と、
変速装置が収容される第一ケース(クラッチハウジング5a)の下部に配置され、前記エンジン3から前記変速装置を介して伝達された駆動力が伝達される第一シャフト210と、
前記第一シャフト210の前方側に配置され、前記第一シャフト210からの駆動力が伝達される第二シャフト220と、
前記第二シャフト220の前方側に配置され、前記第二シャフト220から伝達された駆動力を、前記車軸に伝達する第三シャフト230と、
前記第二シャフト220の前端側及び前記第三シャフト230の後端側を、前記揺動軸130に対応する位置で屈曲可能に接続する等速ジョイント240と、
前記第二シャフト220及び前記第一シャフト210の軸線方向の相対的な移動を許容するように、前記第二シャフト220の後端側及び前記第一シャフト210の前端側を接続する接続部(スプライン部250)と、
を具備するものである。
【0093】
このように構成することにより、等速ジョイント240の組み付け誤差を吸収すると共に、省スペース化を図ることができる。すなわち、前車軸ケース20を揺動軸130回りに揺動可能に支持するサスペンション装置100を設けた場合には、上記揺動軸130に対応する位置で屈曲可能な等速ジョイント240をシャフトに設け、サスペンション装置100の動作に追従させてシャフトを屈曲させる必要がある。ここで、上記等速ジョイント240の組み付け誤差が発生した場合、シャフトがサスペンション装置100の動作に追従できないおそれがある。本実施形態に係るトラクタ1(作業車)においては、等速ジョイント240に加えて、第一シャフト210及び第二シャフト220の軸線方向の相対的な移動を許容する接続部(スプライン部250)により第一シャフト210及び第二シャフト220を接続したことで、上記等速ジョイント240の組み付け誤差を吸収することができる。また、上記接続部(スプライン部250)による接続を採用した場合には、上記組み付け誤差の吸収のためにもう1つ等速ジョイント240を設けた場合とは異なり、車体の下方における省スペース化を図ることができる。これにより、車体の最低地上高を確保することができる。
【0094】
また、前記第二シャフト220の後端部は、
前記エンジン3及び前記第一ケース(クラッチハウジング5a)の間に配置され、フライホイールを収容する第二ケース(フライホイールハウジング5c)よりも後方に位置するものである。
【0095】
このように構成することにより、等速ジョイント240の組み付け誤差をより効果的に吸収することができる。すなわち、接続部(スプライン部250)による接続を採用した場合には、第二シャフト220と接続部(スプライン部250)との間に形成されたある程度の隙間により、接続部(スプライン部250)に対する第二シャフト220の径方向の変位(上下方向の移動等)が許容される(ガタが生じる)。本実施形態においては、第二シャフト220の後端部をフライホイールハウジング5cよりも後方に位置させたことで、第二シャフト220の長さ寸法を比較的大きく形成している。このように、第二シャフト220を比較的長く形成したことで、接続部(スプライン部250)のガタの変位量に応じた第二シャフト220の前端側(等速ジョイント240側)の変位量を大きくすることができる。これにより、等速ジョイント240の組み付け誤差をより効果的に吸収することができる。
【0096】
また、前記接続部(スプライン部250)は、
前記第二シャフト220の後端側及び前記第一シャフト210の前端側を接続する接続位置と、
前記接続位置から、前記第一シャフト210側又は前記第二シャフト220側へ移動し、前記第一シャフト210及び前記第二シャフト220の接続を解除する接続解除位置と、
に変位可能であるものである。
【0097】
このように構成することにより、組み付け性を向上させることができる。すなわち、接続部(スプライン部250)を接続解除位置にすることで、第一シャフト210に対して、第二シャフト220を容易に脱着することができ、組み付け性を向上させることができる。
【0098】
また、前記接続部(スプライン部250)は、
内周面に形成された第一係合部(歯部251)を、前記第二シャフト220の後端側及び前記第一シャフト210の前端側の外周面に形成された第二係合部(歯部212、歯部221)に係合させたスプライン構造により、前記第二シャフト220及び前記第一シャフト210を接続するものである。
【0099】
このように構成することにより、スプライン構造により第二シャフト220及び第一シャフト210を接続したことで、等速ジョイント240の組み付け誤差をより効果的に吸収することができる。
【0100】
また、前記接続部(スプライン部250)の内周面における前後方向両側には、当該内周面と、前記第二シャフト220の後端側及び前記第一シャフト210の前端側の外周面と、の間の隙間を閉塞する閉塞部(Oリング270)が設けられているものである。
【0101】
このように構成することにより、メンテナンス性を向上させることができる。すなわち、接続部(スプライン部250)の内周面と、第二シャフト220及び第一シャフト210の外周面と、の間に封入した潤滑剤(グリス等)の漏れを抑制することができ、メンテナンスの負担を低減することができる。
【0102】
また、前記等速ジョイント240を下方から覆うと共に、内部に侵入した異物を排出可能な排出部(開口部321)が形成されたカバー部(ジョイントカバー部320)を具備するものである。
【0103】
このように構成することにより、カバー部(ジョイントカバー部320)の内部に異物が侵入した場合でも、上記異物を排出することができる。
【0104】
また、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、
エンジン3が固定される機体フレーム2と、
前輪の車軸を支持し、揺動軸130回りに揺動可能な前車軸ケース20と、
前記前車軸ケース20から前記機体フレーム2へ伝わる振動を吸収する緩衝装置(サスペンション装置100)と、
前記エンジン3の下方に位置するように前記機体フレーム2に固定されると共に前記揺動軸130を支持し、前記エンジン3との間において、前後方向に延びる線状部材(第一ホース33、第二ホース160)を配策可能な配策空間Aを区画する支持部材110と、
を具備するものである。
【0105】
このように構成することにより、線状部材(第一ホース33、第二ホース160)の配策を好適に行うことができる。すなわち、エンジン3と支持部材110との間に形成された配策空間Aを利用して、線状部材(第一ホース33、第二ホース160)の配策を行うことができる。また、揺動軸130を支持する支持部材110を、線状部材(第一ホース33、第二ホース160)をガイドする部材としても利用することで、部材点数を削減することができる。
【0106】
また、前記エンジン3は、
前後方向に延びるように下面に形成された凹部3bを有し、
前記配策空間Aは、
前記凹部3bと前記支持部材110とによって区画される第一配策空間A1を含むものである。
【0107】
このように構成することにより、エンジン3の下面に形成された凹部3bを利用して、線状部材(第一ホース33)を配策することができる。また、トラクタ(作業車)の機種や型式等に応じて、凹部3b(第一配策空間A1)を、駆動伝達軸200を配置するための空間としても利用することができる。
【0108】
また、前記線状部材(第一ホース33、第二ホース160)は、
前記エンジン3の後方側から、前記前車軸ケース20に設けられたステアリングシリンダに接続される第一ホース33を含み、
前記第一配策空間A1には、前記第一ホース33が配策されるものである。
【0109】
このように構成することにより、第一ホース33の配策を好適に行うことができる。第一ホース33を、凹部3bにより形成された第一配策空間A1に配策することで、前車軸ケース20の動作に連動して上下動する第一ホース33を、安定して配策することができる。
【0110】
また、前記配策空間Aは、
前記エンジン3の側面と、前記側面に対向する前記機体フレーム2の内面と、前記支持部材110と、によって区画される第二配策空間A2を含むものである。
【0111】
このように構成することにより、エンジン3の側方に形成された第二配策空間A2を利用して、線状部材(第二ホース160)を配策することができる。
【0112】
また、前記緩衝装置(サスペンション装置100)は、
緩衝シリンダ(サスペンションシリンダ140)を具備し、
前記線状部材(第一ホース33、第二ホース160)は、
前記エンジン3の後方側から、前記緩衝シリンダ(サスペンションシリンダ140)に接続される第二ホース160を含み、
前記第二配策空間A2には、前記第二ホース160が配策されるものである。
【0113】
このように構成することにより、第二ホース160の配策を好適に行うことができる。すなわち、エンジン3の側方に位置する第二配策空間A2を利用して、第二ホース160の配策を行うことができる。
【0114】
また、前記前車軸ケース20が固定されると共に、前記支持部材110に対して前記揺動軸130回りに揺動可能に支持される揺動部材120を具備し、
前記揺動部材120は、
前後方向に延びるように上面に形成され、前記線状部材(第一ホース33、第二ホース160)を案内可能な案内溝部122を有するものである。
【0115】
このように構成することにより、揺動部材120の上面に形成された案内溝部122を利用して、線状部材(第一ホース33、第二ホース160)を配策することができる。
【0116】
また、前記支持部材110の下方には、前記エンジン3からの駆動力を前記車軸に伝達する駆動伝達軸200が配置されるものである。
【0117】
このように構成することにより、線状部材(第一ホース33、第二ホース160)を保護することができる。すなわち、駆動伝達軸200及び線状部材(第一ホース33、第二ホース160)の間に支持部材110を介在させることで、高速回転する駆動伝達軸200と線状部材(第一ホース33、第二ホース160)とが直接接触しないようにすることができる。
【0118】
また、前記支持部材110に固定され、前記駆動伝達軸200を下方から覆うカバー部(ジョイントカバー部320)を具備するものである。
【0119】
このように構成することにより、支持部材110を利用して、駆動伝達軸200を覆うカバー部(ジョイントカバー部320)を固定することができる。
【0120】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るクラッチハウジング5aは、本発明に係る第一ケースの一形態である。
また、本実施形態に係るフライホイールハウジング5cは、本発明に係る第二ケースの一形態である。
また、本実施形態に係るスプライン部250は、本発明に係る接続部の一形態である。
また、本実施形態に係る歯部251は、本発明に係る第一係合部の一形態である。
また、本実施形態に係る歯部212、歯部221は、本発明に係る第二係合部の一形態である。
また、本実施形態に係るOリング270は、本発明に係る閉塞部の一形態である。
また、本実施形態に係るジョイントカバー部320は、本発明に係るカバー部の一形態である。
また、本実施形態に係るサスペンション装置100は、本発明に係る緩衝装置の一形態である。
また、本実施形態に係る第一ホース33、第二ホース160は、本発明に係る線状部材の一形態である。
また、本実施形態に係るサスペンションシリンダ140は、本発明に係る緩衝シリンダの一形態である。
また、本実施形態に係る開口部321は、本発明に係る排出部の一形態である。
【0121】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0122】
例えば、上記実施形態において説明した各部材(支持部材110、揺動部材120、駆動伝達軸200等)の形状等は一例であり、上述した形状等に限定されない。上記各部材の形状等は、任意の形状に変更可能である。
【0123】
また、上記実施形態では、第二シャフト220の後端部を、フライホイールハウジング5cよりも後方に位置させた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、第二シャフト220の後端部を、フライホイールハウジング5cに対応する(平面視においてフライホイールハウジング5cと重複する)位置に位置させるようにしてもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、エンジン3からの動力を伝達する動力伝達機構を収容する部材として、ミッションケース5、クラッチハウジング5a、フライホイールハウジング5c等を例示しているが、このような態様に限定されない。例えば、上記ミッションケース5等を互いに一体的に形成することや、さらに分割することも可能である。
【0125】
また、上記実施形態では、第一シャフト210及び第二シャフト220の接続を解除する際に、スプライン部250を前方側(第二シャフト220側)へ移動させた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、スプライン部250を後方側(第一シャフト210側)へ移動させることで、各シャフトの接続を解除するようにしてもよい。この場合は、スプライン部250を後方側へ移動可能なように、第一シャフト210の長さ寸法等を適宜設定する。具体的には、スプライン部250の移動距離を確保するように、第一シャフト210やスプライン部250の長さ寸法を設定することが可能である。
【0126】
また、上記実施形態では、スプライン部250を、接続位置と接続解除位置とに移動可能とした例を示したが、このような態様に限定されず、例えば上記移動を不能としてもよい。
【0127】
また、上記実施形態では、第二配策空間A2を左右に一対設けた例を示したが、このような態様に限定されず、例えば第二配策空間A2を1つ設けるようにしてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、揺動部材120に案内溝部122を設けた例を示したが、このような態様に限定されず、例えば案内溝部122を設けないようにしてもよい。
【0129】
また、上記実施形態では、配策空間Aを用いて、シリンダに接続されるホース(第一ホース33及び第二ホース160)を配策した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、ハーネス、ワイヤー等の他の線状部材を、配策空間Aに配策してもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、作業車として、トラクタ1を例示したが、このような態様に限られない。例えば作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 トラクタ
20 前車軸ケース
100 サスペンション装置
200 駆動伝達軸
300 カバー部材