(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065153
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】セメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240508BHJP
C04B 18/16 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173895
(22)【出願日】2022-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第76回セメント技術大会講演要旨、発行日:2022年4月20日 第76回セメント技術大会 開催日:2022年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】安田 瑛紀
(72)【発明者】
【氏名】黒野 承太郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 克哉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA30
(57)【要約】
【課題】アルカリシリカ反応が抑制されるとともに、強度発現性に優れ、かつ、廃ガラスの有効利用を図ることができるセメント組成物を提供する。
【解決手段】セメントと、以下の(1)~(4)の条件を満たすホウケイ酸ガラス粉末を含むセメント組成物。
(1) 平均粒径が0.1~30μmであること
(2) SiO2の含有率が40質量%以上であること
(3) 全アルカリ量が5.0質量%以下であること
(4) B2O3の含有率が15.0質量%以上であること
上記ホウケイ酸ガラス粉末は、好ましくは以下の(5)の条件を満たす。
(5) B2O3の含有率とSiO2の含有率の質量比(B2O3の含有率/SiO2の含有率)が、0.23~0.60であること
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、以下の(1)~(4)の条件を満たすホウケイ酸ガラス粉末を含むことを特徴とするセメント組成物。
(1) 平均粒径が0.1~30μmであること
(2) SiO2の含有率が40質量%以上であること
(3) 全アルカリ量が5.0質量%以下であること
(4) B2O3の含有率が15.0質量%以上であること
【請求項2】
上記ホウケイ酸ガラス粉末が、以下の(5)の条件を満たす請求項1に記載のセメント組成物。
(5) B2O3の含有率とSiO2の含有率の質量比(B2O3の含有率/SiO2の含有率)が、0.23~0.60であること
【請求項3】
上記ホウケイ酸ガラス粉末が、以下の(6)の条件を満たす請求項1又は2に記載のセメント組成物。
(6) 最大内接円中心法(MIC)を用いて算出した円の中心に対する、最大外接円の半径(Di)と最大内接円の半径(Dc)の比の平方根(√(Di)/(Dc))」の平均値が0.80以下であること
【請求項4】
上記セメントと上記ホウケイ酸ガラス粉末の合計100質量%中の上記ホウケイ酸ガラス粉末の割合が1~40質量%である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項5】
上記セメントの全アルカリ量が0.3~1.0質量%である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項6】
さらに、水を含む請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項7】
さらに、セメント混和剤を含む請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項8】
「JIS A 1146:2017 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)」に準拠して測定した材齢26週における膨張量が、-500×10-6~500×10-6である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタル、コンクリート等のセメント組成物は、硬化後に、セメント組成物に含まれる骨材中のシリカ(SiO2)とアルカリの反応(いわゆるアルカリシリカ反応)によって生じた生成物が吸水して異常に膨張することで、セメント組成物の硬化体にひび割れが生じるという問題がある。
アルカリシリカ反応によるセメント質硬化体の膨張を抑制することができるセメント組成物として、特許文献1には、JIS-A1145に規定する骨材のアルカリシリカ反応性試験方法により無害でないと判定される骨材の粉砕物を含むセメント添加材を含有するセメント組成物であって、前記粉砕物のブレーン比表面積が、6000~10000cm2/gであり、前記粉砕物が結晶質の粉体であり、前記セメント組成物中の前記セメント添加材の配合量(セメント内割)が3~20質量%であることを特徴とするセメント組成物が記載されている。
一方、廃ガラスの有効利用を図ることができる技術として、アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分の一部またはすべてを除去したものであって、アルカリ含有量が3重量%以下であり、かつ平均粒子径が1~20μmであることを特徴とするセメント用混和材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4567473号公報
【特許文献2】特開2004-35211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメント組成物のアルカリシリカ反応を抑制する方法として、フライアッシュ又は高炉スラグ微粉末を混和材として用いる方法が知られている。
しかし、混和材としてフライアッシュ又は高炉スラグ微粉末を用いた場合、セメント組成物の硬化体の初期強度が低下したり、セメント組成物中のフライアッシュ等の混和材の配合割合が大きくなると、硬化体の収縮量が大きくなる等の問題がある。また、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末は、今後、供給量や品質が不安定になる可能性が考えられる。
本発明の目的は、アルカリシリカ反応が抑制されるとともに、強度発現性に優れ、かつ、廃ガラスの有効利用を図ることができるセメント組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントと、平均粒径が0.1~30μm、SiO2の含有率が40質量%以上、全アルカリ量が5.0質量%以下、かつ、B2O3の含有率が15.0質量%以上であるホウケイ酸ガラス粉末を含むセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供するものである。
[1] セメントと、以下の(1)~(4)の条件を満たすホウケイ酸ガラス粉末を含むことを特徴とするセメント組成物。
(1) 平均粒径が0.1~30μmであること
(2) SiO2の含有率が40質量%以上であること
(3) 全アルカリ量が5.0質量%以下であること
(4) B2O3の含有率が15.0質量%以上であること
[2] 上記ホウケイ酸ガラス粉末が、以下の(5)の条件を満たす前記[1]に記載のセメント組成物。
(5) B2O3の含有率とSiO2の含有率の質量比(B2O3の含有率/SiO2の含有率)が、0.23~0.60であること
[3] 上記ホウケイ酸ガラス粉末が、以下の(6)の条件を満たす前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
(6) 最大内接円中心法(MIC)を用いて算出した円の中心に対する、最大外接円の半径(Di)と最大内接円の半径(Dc)の比の平方根(√(Di)/(Dc))」の平均値が0.80以下であること
[4] 上記セメントと上記ホウケイ酸ガラス粉末の合計100質量%中の上記ホウケイ酸ガラス粉末の割合が1~40質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント組成物。
[5] 上記セメントの全アルカリ量が0.3~1.0質量%である前記[1]~[4]のいずれかに記載のセメント組成物。
[6] さらに、水を含む前記[1]~[5]のいずれかに記載のセメント組成物。
[7] さらに、セメント混和剤を含む前記[1]~[6]のいずれかに記載のセメント組成物。
[8] 「JIS A 1146:2017 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)」に準拠して測定した材齢26週における膨張量が、-500×10-6~500×10-6である前記[1]~[7]のいずれかに記載のセメント組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセメント組成物は、アルカリシリカ反応が抑制されるとともに、強度発現性に優れたものである。また、本発明のセメント組成物によれば、廃ガラスの有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のセメント組成物は、セメントと、以下の(1)~(4)の条件を満たすホウケイ酸ガラス粉末を含むものである。
(1) 平均粒径が0.1~30μmであること
(2) SiO2の含有率が40質量%以上であること
(3) 全アルカリ量が5.0質量%以下であること
(4) B2O3の含有率が15.0質量%以上であること
なお、本明細書中、「セメント組成物」とは、水を含まない粉粒状の組成物(粉状物、粒状物、又は、粉状物と粒状物の混合物)、又は、水を含む組成物(ペースト、モルタル、又はコンクリート)である。また、「セメント組成物」とは、水を含む硬化前の流動性を有する形態および硬化後の形態を包含するものである。
以下、詳しく説明する。
セメント組成物に含まれるセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメントや、エコセメントや、白色セメントや、超速硬セメント等が挙げられる。
中でも、入手の容易性や強度発現性等の観点から、各種ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0008】
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2,000~6,000cm2/g、より好ましくは2,500~5,000cm2/g、特に好ましくは3,000~4,000cm2/gである。上記ブレーン比表面積が2,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が6,000cm2/g以下のセメントは、より容易に入手可能である。
セメントの全アルカリ量(R2O)は、好ましくは0.3~1.0質量%、より好ましくは0.4~0.8質量%、特に好ましくは0.5~0.6質量%である。一般的に、セメントの全アルカリ量が大きくなると、該セメントを含むセメント組成物はアルカリシリカ反応の起こりやすいものとなる。本発明のセメント組成物は、上記全アルカリ量が0.3質量%以上であっても、アルカリシリカ反応が起こりにくいものである。また、上記全アルカリ量が1.0質量%以下であれば、セメントを含むセメント組成物のアルカリシリカ反応をより起こりにくくすることができる。
なお、全アルカリ量は、セメントの酸化ナトリウム(Na2O)、及び、酸化カリウム(K2O)の含有率(単位:質量%)から、以下の式(1)を用いて算出することができる。
全アルカリ量=Na2O+0.658K2O ・・・(1)
【0009】
ホウケイ酸ガラス粉末の平均粒径(平均粒度)は、0.1~30μm、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは1.0~15μm、さらに好ましくは2.0~10μm、特に好ましくは3.0~6.0μmである。上記平均粒径が0.1μm未満であるホウケイ酸ガラス粉末の入手や製造は困難である。上記平均粒径が30μmを超える場合、セメント組成物のアルカリシリカ反応の抑制効果、及び、強度発現性が低下する。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは、50%体積累積粒径(メディアン径;D50ともいう)である。該平均粒径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置を用いて、または「JIS Z 8815-1994(ふるい分け試験方法通則)」に準拠したふるい分け法を用いて、体積累積分布を作成することで得ることができる。なお、ガラス粉末を構成する各々のガラス粒子は、その断面が円形であることを問わないものである。
なお、ホウケイ酸ガラス粉末の粒度分布は、ブロードであってもシャープであってもよい。
【0010】
ホウケイ酸ガラス粉末中のSiO2の含有率は、40質量%以上、好ましくは42~90質量%、より好ましくは50~85質量%、特に好ましくは60~80質量%である。上記含有率が40質量%未満であると、セメント組成物のアルカリシリカ反応の抑制効果、及び、強度発現性が低下する。
ホウケイ酸ガラス粉末の全アルカリ量は、5.0質量%以下、好ましくは0.3~4.0質量%、より好ましくは0.5~3.0質量%、特に好ましくは1.0~2.0質量%である。上記全アルカリ量が5.0質量%を超えると、アルカリシリカ反応を抑制する効果が低下する。
【0011】
ホウケイ酸ガラス粉末中のB2O3の含有率は15.0質量%以上、好ましくは16.0~30.0質量%、より好ましくは18.0~25.0質量%である。上記含有率が15.0質量%未満であると、アルカリシリカ反応を抑制する効果が低下する。
また、ホウケイ酸ガラス粉末中のB2O3の含有率と、ホウケイ酸ガラス粉末中のSiO2の含有率の質量比(B2O3の含有率/SiO2の含有率)は、好ましくは0.23~0.60、より好ましくは0.24~0.40、特に好ましくは0.24~0.30である。上記質量比が上述した数値範囲内であれば、セメント組成物のアルカリシリカ反応の抑制効果、及び、強度発現性をより向上させることができる。
【0012】
ホウケイ酸ガラス粉末の最大内接円中心法(MIC)を用いて算出した円の中心に対する、最大外接円の半径(Di)と最大内接円の半径(Dc)の比(Di/Dc)の平方根(√(Di)/(Dc))の平均値(以下、「円形度」ともいう。)は、アルカリシリカ反応の抑制効果をより向上させる観点から、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.45~0.75、さらに好ましくは0.50~0.70、特に好ましくは0.55~0.65である。
ここで、最大外接円の半径(Di)とは、ホウケイ酸ガラス粉末を構成するホウケイ酸ガラス粒子の外縁(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像に映り込んだホウケイ酸ガラス粒子の外縁)に外接する半径が最大となる円の半径をいう。
また、最大内接円の半径(Dc)とは、ホウケイ酸ガラス粉末を構成するホウケイ酸ガラス粒子の外縁に内接する半径が最大となる円の半径をいう。
上記円形度は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた画像から、「JIS B 7451:1997 真円度測定機」付属書1(規定)の「真円度測定機による真円度の評価方法2.(4)」に準拠して、ホウケイ酸ガラス粉末を構成するホウケイ酸ガラス粒子の各々について、最大内接円中心法(MIC)を用いて円の中心を算出し、該中心に対して、測定真円度曲線及び真円度曲線から、最大外接円の半径(Di)と最大内接円の半径(Dc)を得た後、最大外接円の半径(Di)と最大内接円の半径(Dc)の比の平方根(√(Di)/(Dc))を算出し、次いで、全ホウケイ酸ガラス粒子の上記平方根の平均を算出することで得ることができる。
上記円形度は、市販の画像解析ソフト(例えば、ナノシステム社製、商品名「NS2KPro」)を用いて得ることができる。
【0013】
ホウケイ酸ガラス粉末のBET比表面積は、好ましくは1.5~30m2/g、より好ましくは2.0~20m2/g、さらに好ましくは4.0~15m2/g、特に好ましくは5,0~10m2/gである。上記BET比表面積が1.5m2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記BET比表面積が30m2/g以下であれば、セメント組成物のアルカリシリカ反応の抑制効果がより向上する。
【0014】
廃ガラスの有効利用を図る観点から、ホウケイ酸ガラス粉末として、ホウケイ酸ガラスからなるガラス瓶等の廃ガラスや、半導体で使用されたホウケイ酸ガラスの廃棄物等を粉砕したものを使用してもよい。
廃ガラスの粉砕方法としては、特に限定されるものではなく、ボールミル等の市販の粉砕手段を用いて、ホウケイ酸ガラス粉末が所望の平均粒径を有するようになるまで粉砕する方法が挙げられる。
【0015】
セメントとホウケイ酸ガラス粉末の合計100質量%中の上記ホウケイ酸ガラス粉末の割合は、セメント組成物のアルカリシリカ反応の抑制効果及び強度発現性向上の観点からは、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは8~20質量%、特に好ましくは12~18質量%である。また、セメント組成物に含まれるセメントの量を相対的に大きくすることで、セメント組成物の硬化前の流動性等を確保する目的で添加されるセメント混和剤の量をより少なくする等の観点からは、上記割合は、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1~12質量%、さらに好ましくは1~8質量%、特に好ましくは1~5質量%である。
【0016】
本発明のセメント組成物(セメント、少なくとも上述した(1)~(4)の条件を満たすホウケイ酸ガラスを含むもの)は、必要に応じて他の材料を配合してもよい。必要に応じて配合される他の材料としては、水、セメント混和剤、骨材(細骨材、粗骨材)、及び各種セメント混和材(フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等)等が挙げられる。
水としては、特に限定されるものではなく、水道水、「JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート)」に規定される回収水等が挙げられる。
水の配合量は特に限定されず、コンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、水の配合量は、水と、セメント及びホウケイ酸ガラスの合計の質量比(水/(セメント及びホウケイ酸ガラスの合計)の値として、好ましくは0.2~0.6となる量である。
【0017】
セメント混和剤としては、AE剤や、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のセメント分散剤や、硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の流動性、施工性、及び強度発現性等の観点から、高性能AE減水剤が好ましい。
セメント混和剤の配合量は、目的とするセメント組成物の流動性や強度発現性によっても異なるが、セメントとホウケイ酸ガラスの合計100質量部に対して、好ましくは0.01~5.0質量部、より好ましくは0.10~2.0質量部、特に好ましくは0.15~1.0質量部である。
【0018】
骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。また、天然骨材、人工骨材、再生骨材のいずれも用いることができる。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
細骨材の単位量は、特に限定されるものではなく、モルタルやコンクリート等のセメント組成物における一般的な単位量であればよい。例えば、モルタルの場合、細骨材の単位量は、好ましくは600~1,200kg/m3であり、コンクリートの場合、細骨材の単位量は、好ましくは600~1100kg/m3である。
また、セメント組成物が粗骨材を含む場合、細骨材率は、好ましくは5~60%、より好ましくは30~58%である。細骨材率が前記範囲内であれば、セメント組成物のワーカビリティや成形のし易さが向上する。
【0019】
本発明のセメント組成物は、アルカリシリカ反応が抑制されたものである。該セメント組成物の「JIS A 1146:2017 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)」に準拠して測定した材齢13週における膨張量は、好ましくは-400×10-6~400×10-6、より好ましくは-300×10-6~300×10-6、さらに好ましくは-200×10-6~200×10-6、特に好ましくは-100×10-6~100×10-6である。
また、該セメント組成物の「JIS A 1146:2017 骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)」に準拠して測定した材齢26週における膨張量は、好ましくは-500×10-6~500×10-6、より好ましくは-350×10-6~350×10-6、さらに好ましくは-250×10-6~250×10-6、特に好ましくは-150×10-6~150×10-6である。
【実施例0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント;普通ポルトランドセメント、ブレーン比表面積:3,100cm2/g、全アルカリ量(R2O):0.53質量%
(2)細骨材;砕砂、「JIS A 1146:2017(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法))」に規定される粒度に調製したもの
(3)セメント混和剤;ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(ポゾリスソリューションズ社製、商品名:マスターグレニウムSP8SV)
(4)ホウケイ酸ガラス粉末G1~G3、G4S、G4M、G4L、G4LL、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、商品名:MT3300EX II)を用いて測定した平均粒径(D50)、90%体積累積粒径(D90)と10%体積累積粒径(D10)と50%体積累積粒径(D50)から算出したシャープ指標、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像データ及び画像解析ソフト(ナノシステム社製 商品名「NS2K Pro」)を用いて得られた円形度、化学組成、並びに、BET比表面積(表1中、「比表面積」と示す。)を表1に示す。なお、G4S、G4M、G4L、及びG4LLは、同じ種類のホウケイ酸ガラスを、粉砕機を用いて、各々、表1に示す平均粒径を有するように粉砕してなるものである。また、シャープ指標の数値が小さいほど、ホウケイ酸ガラス粉末がシャープな粒度分布を有することを示す。
(5)フライアッシュ;ブレーン比表面積:3,490cm2/g、円形度:0.88
(6)水;上水道水
【0021】
【0022】
[実施例1~7、比較例3~5]
「JIS A 1146:2017(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法))」に準拠して、セメント組成物(モルタル)の膨張量を測定した。
具体的には、セメントと表2に示す種類のホウケイ酸ガラス粉末を、セメントとホウケイ酸ガラス粉末の合計100質量%中のホウケイ酸ガラス粉末の割合が表2に示す割合となるようにして、セメントとホウケイ酸ガラス粉末の混合粉体(以下、単に「粉体」という。)を作製した。
次いで、水と粉体と細骨材を、水と粉体と細骨材の質量比(水:粉体:細骨材)が、0.5:1:2.25となる量で混合して、モルタルを作製した。なお、混合の際に、各セメント組成物のモルタルフロー値を同程度(「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)に準拠して測定されたフロー値として220mm程度)にする目的で、セメントとホウケイ酸ガラス粉末の合計100質量部に対して、表2に示す量の高性能AE減水剤(表2中、「セメント混和剤」と示す。)を添加した。また、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、上記粉体のアルカリ含有量が1.2質量%となるように調整した。
内寸が40×40×160mmの型枠内にモルタルを打設し、材齢1日で脱型した後、アルカリシリカ反応を促進する目的で、40℃、相対湿度95%以上の環境下で13週(91日間)静置した後、得られた供試体の長さを測定することで膨張量を算出した。同様にして26週(182日間)静置した後の膨張量を算出した。なお、膨張量の絶対値が小さいほど、アルカリシリカ反応が抑制されていることを示す。
また、φ50×100mmの試験体を用いて、28日間水中養生を行った上記モルタルの圧縮強度を、「JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した。
【0023】
[比較例1]
ホウケイ酸ガラス粉末を使用しない以外は実施例1と同様にして、膨張量の算出等を行った。
[比較例2]
ホウケイ酸ガラス粉末の代わりにフライアッシュを用いる以外は実施例1と同様にして、膨張量の算出等を行った。
結果を表2に示す。
【0024】
【0025】
表2より、平均粒径が0.8~12.4μm、SiO2の含有率が44.0~77.2質量%、全アルカリ量が0.32~1.30質量%、B2O3の含有率が18.7~23.9質量%であるホウケイ酸ガラス粉末を使用した実施例1~7の膨張量の絶対値(13週:50~150、26週:20~300)は、比較例1(ホウケイ酸ガラス粉末を使用しないもの)、比較例3(全アルカリ量が6.89質量%であるホウケイ酸ガラス粉末を使用したもの)、比較例4(SiO2の含有率が30.2質量%であるホウケイ酸ガラス粉末を使用したもの)、及び比較例5(平均粒径が32.2μmであるホウケイ酸ガラス粉末を使用したもの)の膨張量の絶対値(13週:570~3,300、26週:640~3840)よりも小さく、アルカリシリカ反応が抑制されていることがわかる。
また、実施例1~6(セメントとホウケイ酸ガラス粉末の合計量100質量%中のホウケイ酸ガラス粉末の割合が3~15質量%であるもの)の圧縮強度(材齢7日:33.2~49.8N/mm2、材齢28日:43.5~64.2N/mm2)は、比較例1、3~5の圧縮強度(材齢7日:23.2~28.5N/mm2、材齢28日:31.6~44.5/mm2)よりも大きい又は同程度であることがわかる。
また、比較例2(ホウケイ酸ガラス粉末の代わりにフライアッシュを使用したもの)の膨張量の絶対値(13週:190、26週:220)は、実施例1~5と比較して、同程度であるものの、圧縮強度(材齢7日:17.2N/mm2、材齢28日:36.3N/mm2)は、実施例1~5と比較して、小さいことがわかる。