(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006518
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/26 20060101AFI20240110BHJP
C08L 23/18 20060101ALI20240110BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20240110BHJP
C08L 101/08 20060101ALI20240110BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C04B24/26 H
C08L23/18
C08K3/20
C08L101/08
C04B24/26 B
C04B24/26 F
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107504
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
【テーマコード(参考)】
4G112
4J002
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
4G112PC01
4J002BB171
4J002BB191
4J002BE042
4J002BG012
4J002BG072
4J002BH021
4J002BH022
4J002DE026
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】水硬性組成物硬化体の表面に発生する黒ずみを抑制する効果に優れる水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物用混和剤組成物、並びに硬化時の表面に発生する黒ずみが抑制された水硬性組成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(a)炭素数6以上10以下のオレフィンである構成単量体(a1)とマレイン酸、フマル酸、及びこれらの塩、並びにマレイン酸無水物から選ばれる1種以上の不飽和二塩基酸である構成単量体(a2)を、構成単量体として含み、構成単量体中の構成単量体(a1)と構成単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が4/6以上6/4以下であり、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体(以下、(a)成分という)、及び水を含有し、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが9.0以上11.0未満である、水硬性組成物用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数6以上10以下のオレフィンである構成単量体(a1)とマレイン酸、フマル酸、及びこれらの塩、並びにマレイン酸無水物から選ばれる1種以上の不飽和二塩基酸である構成単量体(a2)を、構成単量体として含み、構成単量体中の構成単量体(a1)と構成単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が4/6以上6/4以下であり、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体(以下、(a)成分という)、及び水を含有し、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが9.0以上11.0未満である、水硬性組成物用添加剤。
【請求項2】
(a)成分を、5質量%以上50質量%以下含有する、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
構成単量体(a1)が、炭素数8のオレフィンである、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
構成単量体(a1)が、ジイソブチレンである、請求項1~3の何れか1項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
(a)成分の重量平均分子量が、20,000以上30,000以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の水硬性組成物用添加剤、及び(b)ポリカルボン酸系分散剤を含有する、水硬性組成物用混和剤組成物。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載の水硬性組成物用添加剤、(b)ポリカルボン酸系分散剤、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載の水硬性組成物用添加剤、(b)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(b)成分という)、水硬性粉体、及び水を混合する水硬性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記水硬性組成物用添加剤、及び(b)成分を、それぞれ別々に水に添加して混合水を調製し、前記混合水と水硬性粉体を混合する、請求項8に記載の水硬性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤、水硬性組成物用混和剤組成物、水硬性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGs達成のため、ESG観点から環境に配慮したインフラ整備が目指されており、石炭火力発電の結果生じる産業副産物であるフライアッシュをセメントから一部代替したり、岩石の破砕によって得られる砕石や砕砂を天然砂から代替したりする試みがなされている。
しかしながら、フライアッシュには焼却の結果残存した未燃カーボン分が、砕石や砕砂には産地や種類によって炭が混入し、コンクリート材料としてこれらを用いた際に、上記炭素成分がコンクリート表面に表出し、美観性を損なったり、型枠等の洗浄が煩雑になったりといった課題があった。
【0003】
そこで既往の検討においては、界面活性剤や高分子により上記炭素分を分散させ、上記の黒ずみを低減する試みがなされている。
特許文献1には、HLBが17.5~19.5であり1分子あたりのエチレンオキシド基の数が15~200個である非イオン性界面活性剤及び1分子あたりのエチレンオキシド基の数が15~200である陰イオン性界面活性剤から選ばれる一種以上の界面活性剤を含有するコンクリート混和剤について開示されている。
特許文献2には、炭素数6~10のモノオレフィンとマレイン酸の共重合体又はその塩を含有するコンクリート硬化体表面の黒色物析出抑制剤;及びセメント100重量部に対して、炭素数6~10のモノオレフィンとマレイン酸の共重合体又はその塩を、固形分換算で0.0001~0.1重量部添加するコンクリート硬化体表面の美観改善方法について開示されている。
特許文献3には、アルキルエーテル基等の特定の基を有するリン酸モノエステル又はその塩と、アルキルエーテル基等の特定の基を有するリン酸ジエステル又はその塩とを、特定の重量比で含有する混合物等、1種以上のリン酸エステル又はその塩からなる、水硬性組成物硬化体の黒ずみ防止用添加剤について開示されている。
特許文献4には、α-オレフィンと不飽和二塩基酸との共重合体と水を含有する組成物とアミン型中和剤からなる第1の中和剤の混合物に、アルカリ金属水酸化物からなる第2の中和剤を混合して得た重合体組成物からなる分散剤、比表面積が500~2650m2/gの炭素材料、及び水性媒体を含有する水性スラリーについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-234763号公報
【特許文献2】特開2004-83303号公報
【特許文献3】特開2005-213082号公報
【特許文献4】特開2015-52029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存のコンクリート表面黒ずみ抑制剤には、十分な黒ずみ抑制効果を得るために必要な添加量が多いという課題がある。
本発明は、水硬性組成物硬化体の表面に発生する黒ずみを抑制する効果に優れる水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物用混和剤組成物、並びに硬化時の表面に発生する黒ずみが抑制された水硬性組成物、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)炭素数6以上10以下のオレフィンである構成単量体(a1)とマレイン酸、フマル酸、及びこれらの塩、並びにマレイン酸無水物から選ばれる1種以上の不飽和二塩基酸である構成単量体(a2)を、構成単量体として含み、構成単量体中の構成単量体(a1)と構成単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が4/6以上6/4以下であり、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体(以下、(a)成分という)、及び水を含有し、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが9.0以上11.0未満である、水硬性組成物用添加剤に関する。
【0007】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び(b)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(b)成分という)を含有する、水硬性組成物用混和剤組成物に関する。
【0008】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤、(b)成分、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物に関する。
【0009】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤、(b)成分、水硬性粉体、及び水を混合する水硬性組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水硬性組成物硬化体の表面に発生する黒ずみを抑制する効果に優れる水硬性組成物用添加剤、及び水硬性組成物用混和剤組成物、並びに硬化時の表面に発生する黒ずみが抑制された水硬性組成物、及びその製造方法を提供できる。
【0011】
近年、持続的な社会実現のためにSDGsが提唱されている。本発明は、産業副産物や廃棄物の有効活用、CO2排出量低減により、例えば、SDGsのNo.7、9、11、12、13などに貢献する技術となり得ると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、(a)成分、及び水を含有し、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが9.0以上11.0未満である、水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に添加した場合、水硬性組成物硬化体の表面に発生する黒ずみを抑制する効果に優れることを見出した。このような効果が発現する理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。
水硬性組成物中の黒ずみは、微量に含まれる炭素成分に由来するが、炭素成分は元来、フライアッシュ、砕石、砕砂等に吸着しており、セメント分散剤によって分散されることによってはじめて、スラリー中での比重差が大きくなり、水硬性組成物スラリーから分離して、硬化体表面に表出すると考えられる。本発明の(a)成分のような疎水的なオレフィンと不飽和二塩基酸との共重合体を水硬性組成物のスラリー中に添加すると、疎水的なオレフィン部で炭素成分に吸着し、不飽和二塩基酸部のカルボキシ基によってセメント粒子表面のカルシウムカチオサイトに吸着することにより、セメント粒子表面に炭素成分をつなぎ留めることで、前述の比重差による分離を抑制するものと考えられる。しかしながら、上記の共重合体は、不飽和二塩基酸部のカルボキシ基が完全に中和されていると、該共重合体の親水性が過度に高くなり、炭素成分との相互作用力が低くなり、ひいては黒ずみ抑制効果が低下すると考えられる。また一方で不飽和二塩基酸部のカルボキシ基の中和度が低い場合、該共重合体の疎水性が過度に高くなり、親水的なセメント粒子表面に炭素成分をつなぎ留めることが困難になると考えられる。
本発明の水硬性組成物用添加剤では、特定のオレフィンと不飽和二塩基酸との共重合体である(a)成分、及び水を含有し、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが9.0以上11.0未満となるように該共重合体の中和度(親疎水性)を調整することで、水硬性組成物に添加した際に、該共重合体が炭素成分およびセメント粒子の双方と効果的に相互作用し、優れた黒ずみ抑制効果を発現したものと考察される。
【0013】
[水硬性組成物用添加剤]
本発明の水硬性組成物用添加剤組成物は、(a)成分として、炭素数6以上10以下のオレフィンである構成単量体(a1)とマレイン酸、フマル酸、及びこれらの塩、並びにマレイン酸無水物から選ばれる1種以上の不飽和二塩基酸である構成単量体(a2)を、構成単量体として含み、構成単量体中の構成単量体(a1)と構成単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)が4/6以上6/4以下であり、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の共重合体を含有する。
【0014】
構成単量体(a1)は、炭素数6以上10以下のオレフィンである。
構成単量体(a1)の炭素数は、共重合性および黒ずみ抑制効果の観点から、6以上、好ましくは7以上、そして、10以下であり、好ましくは9以下であり、より好ましくは8である。
構成単量体(a1)としては、ジイソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、及びイソブチレンから選ばれる1種以上が挙げられ、共重合性および黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくはジイソブチレン、及びイソブチレンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはジイソブチレンである。
【0015】
構成単量体(a2)は、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの塩、並びにマレイン酸無水物から選ばれる1種以上の不飽和二塩基酸である。
前記の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などの一価金属塩、マグネシウム塩などの二価金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などの有機アミン塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
構成単量体(a2)は、共重合性の観点から、好ましくはマレイン酸無水物及びフマル酸から選ばれる1種以上であり、より好ましくはマレイン酸無水物である。
【0016】
(a)成分は、例えば、ジイソブチレンと、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの塩、並びにマレイン酸無水物から選ばれる1種以上との共重合体が挙げられ、共重合性および黒ずみ抑制効果の観点から、ジイソブチレンと、マレイン酸無水物、マレイン酸、及びフマル酸から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。
【0017】
(a)成分の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリスチレンスルホン酸換算)は、水溶液のハンドリング性および黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、更に好ましくは20,000以上、そして、好ましくは40,000以下、より好ましくは30,000以下である。(a)成分は、例えば、特開昭55-40797号公報記載の方法に準じて製造できる。なお本発明において、(a)成分の重量平均分子量は、未中和の酸型化合物に換算した値を用いるものとする。
【0018】
(a)成分の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記条件で測定した。重量平均分子量は、予め作成した検量線に基づき算出した。検量線の作成には、下記の標準試料を用いた。
測定装置:HLC-8120GPC(東ソー社製)
カラム:TSK α-M + α-M(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶離液:H3PO4(60mmol/L)及びLiBr(50mmol/L)を加えたN,N-ジメチルホルムアミド溶液
流速:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%(固形分)
試料注入量:0.1mL
標準試料:東ソー社製ポリスチレン 5.26×102、1.02×105、8.42×106;西尾工業社製ポリスチレン 4.0×103、3.0×104、9.0×105(数字はそれぞれ分子量)
【0019】
(a)成分の構成単量体中、構成単量体(a1)と構成単量体(a2)のモル比(a1)/(a2)は、共重合性および黒ずみ抑制効果の観点から、40/60以上、好ましくは45/55以上、そして、60/40以下、好ましくは55/45以下である。
【0020】
(a)成分は、構成単量体(a1)及び構成単量体(a2)以外の構成単量体を含むことができる。
(a)成分の構成単量体中、構成単量体(a1)とび構成単量体(a2)の合計は、90モル%以上、95モル%以上、98モル%以上、そして、100モル%以下である。(a)成分の構成単量体中、構成単量体(a1)とび構成単量体(a2)の合計が100モル%であってよい。
【0021】
(a)成分の中和度は、水硬性組成物用添加剤中の(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが、9.0以上11.0未満となるように調整される。
水硬性組成物用添加剤中の(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHは、黒ずみ抑制、水溶液の保存安定性、及びハンドリングの観点から、9.0以上、好ましくは9.5以上、そして、11.0未満、好ましくは10.5以下である。
(a)成分の中和度は、例えば、未中和の(a)成分、及び水を含有する水硬性組成物用添加剤中に、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を添加して、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが、9.0以上11.0未満とすることで調整される。
pHは、25℃下において、電極式pHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製)を用いて測定する。
【0022】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、(a)成分を、水溶液の保存安定性およびハンドリングの観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下含有する。
なお本発明において、(a)成分の質量に関する規定は、未中和の酸型化合物に換算した値を用いるものとする。
【0023】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水を含有する。本発明の水硬性組成物用添加剤中、(a)成分以外の残部が水である。
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水を、水溶液の保存安定性およびハンドリングの観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下含有する。
【0024】
[水硬性組成物用混和剤組成物]
本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び(b)ポリカルボン酸系分散剤(以下、(b)成分という)を含有する、水硬性組成物用混和剤組成物を提供する。
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有することで、(a)成分を含有することになる。(a)成分は、本発明の水硬性組成物用添加剤で記載した態様と同じである。
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤で記載した態様を適宜適用することができる。
【0025】
(b)成分のポリカルボン酸系分散剤は、下記一般式(b1)で示される構成単量体(b1)と、下記一般式(b2)で示される構成単量体(b2)を構成単量体として含む、共重合体が好ましい。
【0026】
【0027】
〔式中、
R1b、R2b同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
R3b:水素原子又は-(CO)qO(AO)nX
X:炭素数1以上4以下のアルキル基又は水素原子
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
p:0以上2以下の数
q:0又は1の数
を示す。〕
【0028】
【0029】
〔式中、
R4b、R5b、R6b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM1であり、(CH2)rCOOM1は、COOM又は他の(CH2)rCOOM1と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、M1は存在しない。
M、M1:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0030】
一般式(b1)中、R1bは、水素原子が好ましい。
一般式(b1)中、R2bは、メチル基が好ましい。
一般式(b1)中、R3bは、水素原子が好ましい。
一般式(b1)中、Xは、メチル基が好ましい。
一般式(b1)中、AOは、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とを含んでもよい。この場合、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基は、ランダム結合であっても、ブロック結合であってもよい。AOは、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
【0031】
一般式(b1)中、nは、AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数である。nは、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、そして、好ましくは200以下、より好ましく150以下、更に好ましくは100以下、より更に好ましくは50以下の数である。
【0032】
一般式(b2)中、R4bは、水素原子が好ましい。
一般式(b2)中、R5bは、メチル基又は水素原子が好ましい。
一般式(b2)中、R6bは、水素原子が好ましい。
(CH2)rCOOM1については、COOM又は他の(CH2)rCOOM1と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、M1は存在しない。
一般式(b2)中、M、M1は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子が好ましい。
一般式(b2)中の(CH2)rCOOM1のrは、1が好ましい。
【0033】
(b)成分は、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、(b)成分を構成する構成単量体中、構成単量体(b1)と構成単量体(b2)の合計量が、好ましくは90モル%以上、より好ましくは92モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、そして、100モル%以下である。この合計量は、100モル%であってもよい。
【0034】
(b)成分を構成する構成単量体中、構成単量体(b1)と構成単量体(b2の合計に対する構成単量体(b2)の割合が、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは50モル%以上、より更に好ましくは60モル%以上、より更に好ましくは70モル%以上、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
【0035】
(b)成分の重量平均分子量は、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上、より更に好ましくは30,000以上、そして、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、更に好ましくは150,000以下、より更に好ましくは100,000以下、より更に好ましくは50,000以下である。この重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(単分散のポリエチレングリコール:分子量250,000、145,000、87,500、46,000、24,000)
なお本発明において、(b)成分の重量平均分子量は、未中和の酸型化合物に換算した値を用いるものとする。
【0036】
(b)成分は、具体的には、
(メタ)アクリル酸/メトキシポリエチレングリコール共重合体、
(メタ)アクリル酸/ビニルエーテル共重合体、
(メタ)アクリル酸/アリルエーテル共重合体、
(メタ)アクリル酸/メタリルエーテル共重合体、
(メタ)アクリル酸/イソプレニルエーテル共重合体、
マレイン酸/メトキシポリエチレングリコール共重合体、
マレイン酸/ビニルエーテル共重合体、
マレイン酸/アリルエーテル共重合体、
マレイン酸/メタリルエーテル共重合体、
マレイン酸/イソプレニルエーテル共重合体、
などが挙げられ、(メタ)アクリル酸/メトキシポリエチレングリコール共重合体が好ましい。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸由来の構成単位を有する共重合体を示す。またマレイン酸の代わりに、無水マレイン酸、フマル酸を使用しても良い。
【0037】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、(a)成分を、黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、そして、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下含有することができる。
【0038】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、(b)成分を、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上、そして、水硬性組成物用混和剤組成物の保存安定性の観点から、好ましくは50.0質量%以下、より好ましくは40.0質量%以下、更に好ましくは30.0質量%以下含有することができる。なお本発明において、(b)成分の質量に関する規定は、未中和の酸型化合物に換算した値を用いるものとする。
【0039】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは35以上、そして、黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは75以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは45以下である。
【0040】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は水を含有することができる。本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、水を含有する場合、水を、水硬性組成物用混和剤組成物のハンドリング性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、そして、未硬化の水硬性組成物の流動性向上および黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下含有する。
【0041】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、水硬性組成物硬化体の強度および未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、(c)成分として、消泡剤を含有することができる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、脂肪族アミン系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールアルキルエーテルがより好ましく、脂肪族アミン系消泡剤ではアルキルジメチルアミン又はその塩がより好ましい。
【0042】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下含有する。
【0043】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物は、任意にAE剤、流動化剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、増粘剤、防水剤、収縮低減剤、膨張剤、水溶性高分子、界面活性剤等(但し、(a)成分、(b)成分、(c)成分に該当するものは除かれる)を含有することができる。
【0044】
[水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法]
本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤と、(b)を混合する、水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法を提供する。
また本発明の水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法は、更に水を混合することができる。
また本発明の水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法は、更に上記した(c)成分を混合することができる。
【0045】
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤を混合することで、(a)成分を混合することになる。(a)成分は、本発明の水硬性組成物用添加剤で記載した態様と同じである。
また(b)成分、(c)成分は、本発明の水硬性組成物用混和剤組成物で記載した態様と同じである。
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤、本発明の水硬性組成物用混和剤で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物用混和剤組成物の製造方法において、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の混合量、並びに質量比(b)/(a)は、本発明の水硬性組成物用混和剤組成物に記載の各成分の含有量を混合量に置き換えて適用することができる。
【0046】
[水硬性組成物]
本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤、(b)成分、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物を提供する。
本発明の水硬性組成物は、更に上記した(c)成分を含有することができる。
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有することで、(a)成分を含有することになる。(a)成分は、本発明の水硬性組成物用添加剤で記載した態様と同じである。また(b)成分、(c)成分は、本発明の水硬性組成物用混和剤組成物で記載した態様と同じである。
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤、並びに本発明の水硬性組成物用混和剤組成物及びその製造方法で記載した態様を適宜適用することができる。
【0047】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、及び普通ポルトランドセメントから選ばれるセメントがより好ましい。
【0048】
また、水硬性粉体には、本発明の効果を享受する観点から、特に黒色微紛が多く含まれる、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、石粉、炭酸カルシウム、亜炭等が含まれてよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
【0049】
本発明の水硬性組成物は、(a)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは0.0001質量部以上、より好ましくは0.0005質量部以上、更に好ましくは0.001質量部以上、より更に好ましくは0.005質量部以上、そして、未硬化の水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下、より更に好ましくは0.05質量部以下、より更に好ましくは0.01質量部以下含有する。
【0050】
本発明の水硬性組成物は、(b)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、未硬化の水硬性組成物の流動性の観点から、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、そして、水硬性組成物の強度発現性の観点から、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下含有する。
【0051】
本発明の水硬性組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、未硬化の水硬性組成物の流動性向上の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは35以上、そして、黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは75以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは45以下である。
【0052】
本発明の水硬性組成物は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.00000005質量部以上、より好ましくは0.000005質量部以上、更に好ましくは0.00001質量部以上、より更に好ましくは0.00005質量部以上、より更に好ましくは0.0001質量部以上、より更に好ましくは0.0005質量部以上、より更に好ましくは0.001質量部以上、より更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.01質量部以上、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下含有する。
【0053】
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比(W/C)が、黒ずみ抑制効果の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
ここで、水/水硬性粉体比(W/C)は、水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。
なお、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
【0054】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することができる。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JISA0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A 0203-2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0055】
水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積が、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。嵩容積は、コンクリート1m3中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。
また、水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500kg/m3以上、より好ましくは600kg/m3以上、更に好ましくは700kg/m3以上であり、そして、好ましくは1000kg/m3以下、より好ましくは900kg/m3以下である。
水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m3以上、より好ましくは900kg/m3以上、更に好ましくは1000kg/m3以上であり、そして、好ましくは2000kg/m3以下、より好ましくは1800kg/m3以下、更に好ましくは1700kg/m3以下である。
【0056】
本発明の水硬性組成物から得られる硬化体は、硬化体表面に発生する黒ずみを抑制する効果に優れるため、構造物やコンクリート製品に用いることができる。構造物として、例えば、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の柱、梁、床板、耐力壁等の主要部や、道路、橋梁、橋脚、桁、トンネル、水路、ダム、下水道、防波堤、擁壁等、土木構造物が挙げられる。コンクリート製品として、例えば、カルバート、側溝、セグメント等の振動成形製品やポール、パイル、ヒューム管等の遠心成形製品が挙げられる。
【0057】
[水硬性組成物の製造方法]
本発明は、本発明の水硬性組成物用添加剤と、(b)成分と、水硬性粉体と、水を混合する水硬性組成物の製造方法を提供する。
本発明の水硬性組成物の製造方法は、更に上記した(c)成分を混合することができる。
【0058】
本発明の水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤を混合することで、(a)成分を混合することになる。(a)成分は、本発明の水硬性組成物用添加剤で記載した態様と同じである。また(b)成分、(c)成分は、本発明の水硬性組成物用混和剤組成物で記載した態様と同じである。
本発明の水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤、本発明の水硬性組成物用混和剤組成物及びその製造方法、並びに本発明の水硬性組成物で記載した態様を適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物の製造方法において、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の混合量、並びに質量比(b)/(a)は、本発明の水硬性組成物に記載の各成分の含有量を混合量に置き換えて適用することができる。
【0059】
本発明の水硬性組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用添加剤、及び(b)成分を、それぞれ別々に水に添加して混合水を調製し、前記混合水と水硬性粉体を混合する方法が挙げられる。
【実施例0060】
実施例、比較例で使用した材料を以下に示す。
<(a)成分>
・(a1):ジイソブチレン/無水マレイン酸共重合体(ジイソブチレン/無水マレイン酸(モル比)=50/50、重量平均分子量=25,000)
<(b)成分>
・(b1):メタクリル酸(MAA)/メトキシポリエチレングリコール(25)モノメタクリレート(MEPEG)共重合体(MAA:一般式(b2)中、R4b、R6bが水素原子、R5bがメチル基、Mが水素原子の化合物である構成単量体(b2)、MEPEG:一般式(b1)中、R1b、R3bが水素原子、R2bがメチル基、pが0、qが1、AOがエチレンオキシ基、nが25、Xがメチル基である構成単量体(b1)、MAA/MEPEG(モル比)=75/25、重量平均分子量=40,000)
<(c)成分>
・(c1):消泡剤(消泡剤 No.21、花王株式会社製)
【0061】
・セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、比重3.16)
・フライアッシュ:JIS II種、中部フライアッシュ(株式会社テクノ中部製、比重2.70)
・水:上水道水(和歌山市上水、比重1.00)
・細骨材:山砂(京都市城陽産、粗粒率2.73、表乾比重2.58)
【0062】
<実施例、及び比較例>
本発明の水硬性組成物用添加剤の調製
特開昭55-40797号公報記載の方法に準じて、表1に記載の(a)成分、及び水を混合し、そこに水道水により希釈した48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)を添加して、(a)成分の固形分濃度が20質量%、25℃におけるpHが表1の値となるように調整し、水硬性組成物用添加剤を調製した。水硬性組成物用添加剤のpHは、25℃において、電極式pHメーター(株式会社堀場製作所製)により測定し実施した。以下、pH測定は、他の実施例、比較例でも同様の方法に則って行った。
【0063】
水硬性組成物スラリーの調製
(1)で調製した水硬性組成物用添加剤、表1に記載の(b)成分、及び(c)成分を、水硬性組成物中の(a)成分、(b)成分、(c)成分の含有量が表1に記載の値となるように水に添加し練り混ぜ水とした。次いで、表1記載の配合量となるように、JIS R 5201記載のホバート式ミキサーに細骨材、セメントおよびフライアッシュを投入し、140rpmで10秒間空練を行った後、上記練り混ぜ水を添加して、更に120秒間撹拌することで、水硬性組成物スラリーを調製した。表1の各成分の(a)成分、(b)成分、(c)成分の含有量(質量部)は、水硬性粉体(セメントとフライアッシュの質量部の合計)100質量部に対する有効分換算の質量部である。またW/Cは、水/水硬性粉体(セメントとフライアッシュの質量部の合計)の比(質量%)である。
【0064】
(3)水硬性組成物表面の黒ずみ抑制効果の評価
(2)の通り調製した水硬性組成物スラリーを、ディスポーサブルカップに500mL計量し、JIS R 5201記載のタッピングテーブル上に乗せ、15回のタッピングの後、水硬性組成物表面をデジタルカメラにより撮影した。その後、撮影した画像データを、画像処理オープンソースソフトウェアのImageJを用いて画像解析を行い、輝度を0から255のヒストグラムで表し、その標準偏差(StdDev)を、黒ずみ抑制効果の指標とした。白い部分と黒い部分のバラつきが大きい程、黒ずみが多いと視認されることから、この標準偏差が小さい程、黒ずみ抑制効果に優れると評価される。結果を表1に示す。
【0065】
【0066】
表1中、実施例1~2は、比較例1~3と対比して、ヒストグラムの標準偏差が小さく、すなわち優れた黒ずみ抑制効果を示した。これは、水硬性組成物に添加した水硬性組成物用添加剤について、(a)成分の含有量が20質量%である場合の25℃におけるpHが9.0以上11.0未満となるように(a)成分の共重合体の中和度(親疎水性)を調整したことにより、該共重合体が炭素成分およびセメント粒子の双方と効果的に相互作用し、優れた黒ずみ抑制効果を発現したものと考察される。