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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065245
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】餅状の澱粉含有食品の品質保持剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/206 20160101AFI20240508BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240508BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20240508BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
A23L29/206
A23L7/10 102
A23L29/244
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173990
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522425574
【氏名又は名称】上海輝文生物技術股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 霜
【テーマコード(参考)】
4B023
4B041
【Fターム(参考)】
4B023LC08
4B023LE07
4B023LE23
4B023LG04
4B023LK08
4B023LP07
4B023LP17
4B041LC03
4B041LC07
4B041LD01
4B041LD10
4B041LH08
4B041LH16
4B041LK21
4B041LK23
4B041LP05
4B041LP07
(57)【要約】
【課題】水や汁物等の液体中に保存した場合でも、溶け出して形状が崩れることなく、餅類らしい食感の維持が可能な餅状の澱粉含有食品の品質保持剤を提供する。
【解決手段】シロキクラゲ多糖体を有効成分とする餅状の澱粉含有食品の品質保持剤を提供する。さらに、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする餅状の澱粉含有食品の品質保持剤を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキクラゲ多糖体を有効成分とする餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
【請求項2】
シロキクラゲ多糖体の平均分子量が220万Mw以上580万Mw以下である、請求項1の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
【請求項3】
シロキクラゲ多糖体の粘度が2,900mpa・s以上20,000mpa・s以下である、請求項1又は2に記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
【請求項4】
さらに増粘多糖類を含む、請求項1又は2に記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
【請求項5】
増粘多糖類がグルコマンナン又はネイティブジェランガムのいずれか一種以上である請求項4に記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
【請求項6】
次の(A)の工程を含む、餅状の澱粉含有食品の製造方法。
(A)原料に請求項1又は2に記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤を、原料に添加する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は餅状の澱粉含有食品(以下、本発明において単に餅類と示す場合がある)の品質保持剤に関する。さらに詳しくは、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする餅状の澱粉含有食品の品質保持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
餅、白玉団子、トック等の様々な餅状の澱粉含有食品が、日本、韓国等を始めとして世界各地で食されている。これらはきっ食にあたり、茹でる、煮る、焼く等の加熱処理によって澱粉の糊化が必要となるが、より簡便に食せるレトルト食品としての提供が望まれている。
しかし、餅類のような澱粉を多く含む食品は、水や汁物等の液体中に溶け出して形状が崩れたり、固さやもちもち感等の餅類らしい食感が失われたりし易く、湿度の高い状態での長期保存に適さないという問題があった。
【0003】
このような問題を解決すべく、餅類の製造において、増粘多糖類や糖類を添加する等の様々な方法が開発されている。例えば、特許文献1では、餅様の粘弾性が持続し、かつ、耐熱性のあるゲルの提供にあたり、ネイティブジェランガムを含むことが開示されており、このようなゲルとして、レトルト処理した白玉団子や餅が、ふやけたりせず、粘弾性を良好に保持していたこと等が記載されている。
特許文献2では、ネイティブジェランガム、小麦タンパク及び/又は大豆タンパク、デンプン及び/又は加工デンプンを含む餅類または団子類が開示されており、これらを配合して製造した餅入りぜんざいについて、6か月保存後もレトルト処理直後と同様の餅の形状、食感を維持していたこと等が記載されている。
【0004】
また、特許文献3では、アラビアガム、プルラン、アラビノガラクタン、大豆多糖類の中から選ばれた少なくとも一種の糊料を含む液状物に餅類を浸漬して常温流通可能とした餅加工食品が開示されており、ネイティブ型ジェランガムを加えることによって餅に粘弾性と耐熱性を付与できること等が記載されている。
さらに、特許文献4では、砂糖、麦芽糖およびトレハロース等の糖類と、水飴および還元水飴等の水飴類と、増粘多糖類とを含む餅状食品が開示されており、グルコマンナン製剤を使用して製造した餅状食品について、100℃で30分間煮込んでも全く溶解しなかったこと等が記載されている。
【0005】
しかし、これらの文献において、餅類のレトルト食品が提供できることが開示されているものの、市場では冷凍、半生や乾燥させた状態等で販売されているものがほとんどであり、実際に常温保存のレトルト食品として適用できる技術とはいえなかった。
そこで、本発明者らは、液体中に保存した場合でも、溶け出して形状が崩れることなく、餅類らしい食感の維持が可能な餅状の澱粉含有食品の品質保持剤、特に常温保存のレトルト食品として実際に流通し得る、新規の品質保持剤の提供を試みた。
【0006】
このような品質保持剤の提供にあたり、本発明者らはシロキクラゲ多糖体に着目した。なお、特許文献5において、シロキクラゲ由来の粘質性物質(多糖類)がレトルト食品の製造や、弾力性付与剤や澱粉質の老化防止剤として使用できることが示唆されている。しかし、この粘質性物質は単にシロキクラゲ(Tremella fuciformis)を多量の水と共に100℃を越える温度条件下に加熱処理したものにすぎず、この粘質性物質の主成分が多糖類と思われる旨の記載はあるものの、多糖類であることの確認が全くされておらず、餅類のレトルト食品に使用した具体的な例も開示されていない。実際、本発明者らはこの文献の記載に基づいて、乾燥シロキクラゲを水に添加し、120℃に設定して15分間加熱処理して調製した粘質性水溶液について粘度と分子量を測定したが、粘度が2536mPa・sと低く、また、分子量も213万Mwと低く、本願発明のシロキクラゲ多糖体とは全く異なるものであった。そして、この粘質性水溶液は、全く精製されておらず、飲食物の増粘剤、改良剤等として実用に足り得るものとはいえないことも示唆された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-215801号公報
【特許文献2】特開2009-124950号公報
【特許文献3】特開2000-197457号公報
【特許文献4】特開2018-027041号公報
【特許文献5】特開平06-339354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水や汁物等の液体中に保存した場合でも、溶け出して形状が崩れることなく、餅類らしい食感の維持が可能な餅状の澱粉含有食品の品質保持剤(以下、本発明において単に品質保持剤と示す場合がある。場合により、澱粉含有食品の保存安定剤、又は単に保存安定剤と呼んでも良い)の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、シロキクラゲ多糖体を有効成分とすることで、水や汁物等の液体中に保存した場合でも、溶け出して形状が崩れることなく、餅類らしい食感の維持が可能な餅状の澱粉含有食品の品質保持剤が得られることを見出すに至った。
本発明の品質保持剤によって、液体中の保存においても形状や食感が維持された餅類の提供が可能となることから、餅類を常温保存のレトルト食品として流通することも容易となる。
【0010】
すなわち、本発明は次の(1)~(6)に示される餅状の澱粉含有食品の品質保持剤等に関する。
(1)シロキクラゲ多糖体を有効成分とする餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
(2)シロキクラゲ多糖体の平均分子量が220万Mw以上580万Mw以下である、上記(1)の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
(3)シロキクラゲ多糖体の粘度が2,900mpa・s以上20,000mpa・s以下である、上記(1)又は(2)に記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
(4)さらに増粘多糖類を含む、上記(1)~(3)のいずれかに記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
(5)増粘多糖類がグルコマンナン又はネイティブジェランガムのいずれか一種以上である上記(4)に記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤。
(6)次の(A)の工程を含む、餅状の澱粉含有食品の製造方法。
(A)上記(1)~(5)のいずれかに記載の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤を原料に添加する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤によって、水や汁物等の液体中での保存においても形状や食感が安定して維持された餅類の提供が可能となる。これにより、餅、白玉団子、トック等の幅広い種類の餅類や、これらを含む調理済みのお汁粉、ぜんざい、あんみつ、トッポッキ等を安定して保存することが可能となり、常温保存のレトルト食品等の提供も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】レトルト加熱直後の各白玉団子の外観を示した図である。
図2】レトルト加熱後1週間保存後の各白玉団子の外観を示した図である。
図3】レトルト加熱後2週間保存後の各白玉団子の外観を示した図である。
図4】各白玉団子の固さの維持率を示した図である。
図5】各生地の白玉団子の製造における作業性を示した図である。
図6】レトルト加熱後2週間保存後の各白玉団子の外観を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の「餅状の澱粉含有食品の品質保持剤」とは、餅類を保存した場合に、保存前の餅類の形状や食感を安定して維持することが可能な剤のことをいう。ここで「保存」とは、常温保存、冷蔵保存、冷凍保存等のいずれの形態でもよく、一態様において、餅類を水や調味液等の液体に入れた状態で保存するレトルト保存を意味する。
【0014】
ここで、本発明の「餅状の澱粉含有食品」とは、白玉粉、餅粉、米粉、片栗粉、コーンスターチ、タピオカ等の澱粉を含む穀物の粉を原料として製造される食品のことをいい、これらの「餅状の澱粉含有食品」として、弾力感やもちもち感等、餅類らしい食感を有する、餅、白玉団子、トック等が挙げられる。さらに、本発明の「餅状の澱粉含有食品」には、調理の前処理として調製された水煮や、調理されたぜんざい、あんみつ、お汁粉、トッポッキ等も含まれる。
【0015】
本発明の「餅状の澱粉含有食品の品質保持剤」は、「シロキクラゲ多糖体」を有効成分とするものであればよく、餅状の澱粉含有食品の保存安定において有用なその他の成分を含むものであってもよい。
この「シロキクラゲ多糖体」は餅類の保存を安定にし得るものであればいずれのものであっても良く、市販のものや、独自で調製したもの等を用いることができる。
例えば、シロキクラゲを熱水(100℃以下)で4時間抽出した後、エタノール沈殿を行い、沈殿物を乾燥等により粉末化したものを、「シロキクラゲ多糖体」として用いることができる。乾燥は、熱風乾燥、真空乾燥、直接加熱乾燥、高周波加熱乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿乾燥等のいずれの方法で行ってもよい。
【0016】
この「シロキクラゲ多糖体」は平均分子量が220万Mw以上であり、580万Mw以下である。「シロキクラゲ多糖体」の平均分子量は、一態様において、250万Mw以上550万Mw以下であり、別の態様において、平均分子量が280万Mw以上520万Mw以下、300万Mw以上500万Mw以下あるいは350万Mw以上450万Mw以下である。この平均分子量は、次の測定機器及び測定条件で測定することができる。
【0017】
<平均分子量の測定条件>
GPCによる分子量及び分子量分布の測定
装置:ビルドアップGPCシステム(東ソー株式会社)
カラム:TSKgel GMPWXL(7.8mmID×30cm)(東ソー株式会社)
検出器:RI検出器
溶離液:0.05M-NaNO3水溶液
流速:0.5ml/min
濃度:0.5mg/ml
注入量:100μl
カラム温度:40℃
前処理として、試料(シロキクラゲ多糖体)を秤量し所定量の溶離液を加えて、100℃で10分加熱・冷却後、0.45μmのセルロースアセテートカートリッジフィルターにて濾過を行った。検量線は、標準プルラン(Shodex製)を用いて作成した。
【0018】
また、この「シロキクラゲ多糖体」は1w/w%溶液を調製した場合に粘度が2900mpa・s以上、3000mpa・s以上、3500mpa・s以上、4000mpa・s以上、4500mpa・s以上、5000mpa・s以上、5500mpa・s以上、又は6000mpa・s以上であり、100000mpa・s以下、90000mpa・s以下、80000mpa・s以下、70000mpa・s以下、60000mpa・s以下、50000mpa・s以下、40000mpa・s以下、30000mpa・s以下、20000mpa・s以下、19000mpa・s以下、18000mpa・s以下、17000mpa・s以下、16000mpa・s以下、15000mpa・s以下、14000mpa・s以下、13000mpa・s以下、12000mpa・s以下、11000mpa・s以下、10000mpa・s以下、9000mpa・s以下、8000mpa・s以下、又は7500mpa・s以下である。一態様において、当該粘度は4000mpa・s以上9000mpa・s以下である。別の一態様において、当該粘度は5000mpa・s以上8000mpa・s以下、さらに別の一態様において6000mpa・s以上7500mpa・s以下である。この粘度は、次の測定機器及び測定条件で測定することができる。
【0019】
<粘度の測定条件>
水を溶媒として、シロキクラゲ多糖体1w/w%水溶液を調製し粘度を測定した。
測定機器:B型粘度計
回転数:12rpm
【0020】
本発明の「餅状の澱粉含有食品の品質保持剤」はシロキクラゲ多糖体に加えて、「増粘多糖類」を含むものであってもよい。この「増粘多糖類」は、食品の製造に利用できるものであればよく、さらに餅状の澱粉含有食品の保存において有用なものであることが好ましい。例えば、グルコマンナン、ネイティブジェランガム、キサンタンガム、ローカストビンガム、タラガム、カラギナン、アラビアガム、グアーガム、カシアガム、ペクチン、タマリンドガム、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体、カードラン、スクシノグリカン等が挙げられ、これらを二種以上組み合わせても良い。増粘多糖類は特にグルコマンナン、ネイティブジェランガム、キサンタンガムのいずれか一種以上を用いることが好ましい。
また、この「増粘多糖類」は、複数の増粘多糖類を組み合わせて製剤化されたものであってもよい。
これらの増粘多糖類は市販のものを使用してもよく、従来知られているいずれかの方法によって独自に調製したもの等を使用してもよい。
【0021】
本発明の「餅状の澱粉含有食品」は、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする本発明の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤を、澱粉を含む穀物の粉等の原料に添加する工程を含む製造方法によって製造することができる。
この製造方法ではさらに、本発明の「餅状の澱粉含有食品」の製造に有用なその他の工程を含むものであってもよい。
【0022】
本発明の「餅状の澱粉含有食品」の製造において、原料が澱粉を含む穀物の粉である場合、この粉に対してシロキクラゲ多糖体が0.1w/w%以上、0.2w/w%以上、0.3w/w%以上、0.4w/w%以上、0.5w/w%以上、0.6w/w%以上、0.7w/w%以上、0.8w/w%以上、0.9w/w%以上、1.0w/w%以上、1.1w/w%以上、1.2w/w%以上、1.3w/w%以上、1.4w/w%以上、1.5w/w%以上、1.6w/w%以上、1.7w/w%以上、1.8w/w%以上、1.9w/w%以上、2.0w/w%以上、2.1w/w%以上、2.2w/w%以上、2.3w/w%以上、2.4w/w%以上、2.5w/w%以上、2.6w/w%以上、2.7w/w%以上、2.8w/w%以上、又は2.9w/w%以上であり、10.0w/w%以下、9.0w/w%以下、8.0w/w%以下、7.0w/w%以下、6.0w/w%以下、5.0w/w%以下、4.0w/w%以下、又は3.0w/w%以下となるように添加する。一態様において、当該粉に対してシロキクラゲ多糖体は0.1~10.0w/w%となるように添加し、別の態様において0.2~7.0w/w%となるように添加し、さらに別の態様において0.5~5.0w/w%となるように添加することが特に好ましい。
【0023】
以下に実施例を挙げて本発明の具体的な実施態様について説明する。なお、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【実施例0024】
本発明の実施例において、別途記載がない限りは次の試料を使用し、また、製造した各食品の評価を行った。
1.試料
1)シロキクラゲ多糖体
シロキクラゲ5gを熱水100mL(100℃以下)で4時間抽出した後、エタノール沈殿を行い、沈殿物を熱風乾燥により粉末化したものを、「シロキクラゲ多糖体」として用いた。
このシロキクラゲ多糖体の平均分子量と粘度をそれぞれ上記に示した測定条件で測定したところ、平均分子量370万Mwであり、粘度は10817mPa・sであった。
【0025】
2)増粘多糖類
(1)グルコマンナン
レオレックス(登録商標)One(清水化学株式会社)
(2)ネイティブジェランガム
ケルコゲルHM(DSP五協フード&ケミカル株式会社)
3)白玉粉
玉三白玉粉(川光物産株式会社)
【0026】
2.評価
1)官能評価
5人のパネラーにより、次の基準に沿って、各餅状の澱粉含有食品の外観を観察し保形性を評価した。また、各餅類をきっ食した際の食感(固さ、もちもち感)を評価した。
[評価基準]
(1)外観
3点:製造後の形が非常に維持されている
2点:製造後の形が若干維持されている
1点:製造後の形が完全に崩れている
【0027】
(2)固さ
3点:弾力感が維持されている
2点:弾力感が若干維持されている
1点:ほぼ溶けており、弾力感が全く維持されていない
【0028】
(3)もちもち感
3点:もちもちとした適度な弾力があり、餅類らしい食感が感じられる
2点:もちもちとした適度な弾力があり、餅類らしい食感が若干感じられる
1点:もちもちとした適度な弾力がなく、餅類らしい食感が全く感じられない
【0029】
2)物性評価
各餅状の澱粉含有食品について、次の測定条件によりテクスチャーアナライザーTA XT Plus(英弘精機社)にて分析し、固さを調べた。餅類が白玉団子の場合、白玉団子1個(10g)について固さを調べ、4個の平均値を固さとした。
また、各餅類について、レトルト加熱直後の固さと、レトルト加熱後2週間保存後の固さを調べ、次の式により固さの維持率(固さ維持率)を求めた。
<固さの測定条件>
20/Pを測定冶具とし、貫入速度2.00mm/secで貫入距離が80%Strainの時の測定数値を固さ(Force(g))とした。
【0030】
【数1】
【0031】
[実施例1]
1.餅状の澱粉含有食品(餅類)の品質保持剤の製造
前記のシロキクラゲ多糖体をそのまま品質保持剤Aとした。
【0032】
2.餅状の澱粉含有食品の製造方法
次の工程により、餅類(白玉団子)を製造した。
1)白玉粉100gに、表1に記載の配合量となるように、白玉粉と本願発明の品質保持剤を混合した後、水を添加し、これらを全て浸した。
2)上記1)の工程を経たものを均一になるまで練りこんだ。その後、白玉団子1個あたり10gになるように定量し、丸めて成形した。
3)上記2)の工程を経て得られた白玉団子を4個ずつレトルト専用袋に入れ、レトルト保存用に水を100g加えた。
4)上記3)のものを密封した後、121℃で10分間、レトルト殺菌器(HLM-36LB、平山製作所)を用いてレトルト加熱した。
5)上記4)によって得られたものを20℃(常温)で保存した。
【0033】
なお、コントロールとして品質保持剤を添加しないもの(無添加区)、比較として品質保持剤の替わりに増粘多糖類を表1に記載の配合量となるように混合したもの(比較例1a:グルコマンナン、比較例1b:ネイティブジェランガム)を、上記2の製造方法と同様の方法により製造し、20℃で保存した。
【0034】
【表1】
【0035】
3.評価
各白玉団子(以下、単に団子と示す場合がある)について、レトルト加熱直後のもの(図1)、レトルト加熱後1週間保存後のもの(図2)、同じく2週間保存後のもの(図3)について、それぞれ写真で示すとともに、目視にて外観を評価した。また、レトルト加熱直後、またはレトルト加熱後2週間保存後の各団子をきっ食し、食感(固さ、もちもち感)を評価した。さらに、テクスチャーアナライザーを用いて具体的な固さを調べ、固さ維持率を求めた(図4)。
これらの外観及び食感の評価結果をまとめて表2に示した。また、各団子の製造において、生地を丸めて成形する際の扱いやすさ(作業性)も評価し、結果を表2及び図5に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
4.結果
図1~3に示すように、コントロールのものはレトルト加熱直後から完全に団子の丸い形状が崩れており、水中で全く保存できなかった。ネイティブジェランガムを添加したもの(比較例1b)も、レトルト加熱直後から団子同士がくっついて、団子の丸い形状自体を維持できなかった。さらに、この団子(比較例1b)は、保存期間が経過するにつれて、ふやけて水中に溶け出し、溶けた部分が透明となって、滑らかさが失われてぼさぼさとした外観になるとともに、団子の周りの水もドロドロになった。
これに対して、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする、本願発明の品質保持剤を添加した団子(実施例1A~1C)は、いずれもレトルト加熱直後から保存後2週間経過しても丸く滑らかな形状を維持しており、長期間の水中での保存においても、ふやけ等が抑制され、安定して保存できることが確認できた。
【0038】
また、図4に示すように、グルコマンナンやネイティブジェランガムを添加した団子(比較例1a、1b)は、レトルト加熱直後に比べてレトルト加熱後2週間保存後の固さが完全に柔らかくなり、団子らしい固さを全く維持できていなかった。コントロールである品質保持剤を添加しないもの(無添加区)も、完全に形状が崩れ、固さの測定すらできなかった。
これに対して、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする、本願発明の品質保持剤を添加した団子(実施例1A~1C)は、レトルト加熱直後も、水中で1週間保存後も同等の固さを維持できており、2週間保存した場合でも、団子らしい固さを維持していることが確認できた。
【0039】
これは、官能試験の結果にも現れており、表2に示すように、グルコマンナンやネイティブジェランガムを添加した団子は、レトルト加熱直後は固さやもちもち感等の食感を有していたが、2週間保存後は完全に柔らかくなり、団子らしい食感を維持できていなかった。一方、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする、本願発明の品質保持剤を添加した団子は、レトルト加熱直後も、2週間保存後も同等の固さやもちもち感等を示し、団子らしい食感を維持していることが確認できた。
【0040】
さらに、図5に示すように、各団子の製造にあたり、グルコマンナンを添加した生地は、非常にべたつき、手に張り付くため、丸めて団子を成形するのが難しく、作業性が悪かった。ネイティブジェランガムを添加した生地も同様であり、団子の製造において実用的とは言えなかった。
一方、シロキクラゲ多糖体を有効成分とする、本願発明の品質保持剤を添加した生地では、べたつきや手への張付きが少なく、団子の成形がしやすく、作業性に優れていた。
【0041】
[実施例2]
1.餅状の澱粉含有食品の品質保持剤の製造
シロキクラゲ多糖体と、増粘多糖類を次の配合となるように組み合わせて、品質保持剤B(B1~B3)とした。
B1:餅類の粉に対して、シロキクラゲ多糖体2.5w/w%及びグルコマンナン0.25w/w%を配合
B2:餅類の粉に対して、シロキクラゲ多糖体3.0w/w%及びルコマンナン0.25w/w%を配合
B3:餅類の粉に対して、シロキクラゲ多糖体2.5w/w%、グルコマンナン0.25w/w%及びネイティブジェランガムを0.15w/w%配合
【0042】
2.餅状の澱粉含有食品の製造方法
次の工程により、餅類(白玉団子)を製造した。
白玉粉50gに対して、表3に記載の配合量となるように本願発明の品質保持剤Bを混合した後、水を添加し、これらを全て浸した後、実施例1と同様の方法によって白玉団子を成形した。
各白玉団子を4個ずつレトルト専用袋に入れ、レトルト保存用に水又は0.5w/w%のシロキクラゲ多糖体を添加した水を100g加え、実施例1と同様の方法によってレトルト加熱し、20℃で保存した。
なお、実施例2A~2Dでは品質保持剤B1、実施例2Eでは品質保持剤B2、実施例2Fでは品質保持剤B3を用い、実施例2Dのみレトルト保存用に0.5w/w%のシロキクラゲ多糖体を添加した水を用いた。
また、コントロールとして品質保持剤Bを添加しないもの(無添加区)を同様の方法により製造し、水を用いてレトルト保存した。
【0043】
【表3】
【0044】
3.評価
レトルト加熱後2週間保存後の各団子について写真で示すとともに、目視にて外観を評価した(図6)。また、これらをきっ食し、食感も評価した。さらに、レトルト加熱後7月保存後の実施例2Dの団子について外観を評価した。
【0045】
4.結果
図6に示すように、コントロールのものは完全に団子の丸い形状が崩れており、水中で全く保存できなかった。一方、シロキクラゲ多糖体と増粘多糖類を含む本願発明の品質保持剤B1~B3を添加した団子(実施例2A~2F)は、いずれもレトルト加熱後2週間保存後も丸く滑らかな形状を維持しており、長期間の水中での保存においても、ふやけ等が抑制され、安定して保存できることが確認できた。また、これらの団子はいずれも弾力感が維持されており、もちもちとした適度な弾力があり、餅類らしい食感が感じられ、十分な固さや、もちもち感を維持していることも確認できた。
特に、レトルト保存用に0.5w/w%のシロキクラゲ多糖体を添加した水を用いた実施例2Dの団子は、形状や食感を特に優れて維持していた。そして、この団子は7ヶ月という長期の保存においても、若干形状は崩れるものの、コントロールのもののように完全に形状が崩れることなく、団子として認識できる外観及び食感を維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の餅状の澱粉含有食品の品質保持剤によって、水や汁物等の液体中での保存においても形状や食感が安定して維持された餅類の提供が可能となる。これにより、餅、白玉団子、トック等の幅広い種類の餅類や、これらを含む調理済みのお汁粉、ぜんざい、あんみつ、トッポッキ等を安定して保存することが可能となり、常温保存のレトルト食品等の提供も容易となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6