(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065246
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】セメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240508BHJP
C04B 18/16 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173991
(22)【出願日】2022-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第76回セメント技術大会講演要旨、発行日:2022年4月20日 第76回セメント技術大会 開催日:2022年5月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】井川 義貴
(72)【発明者】
【氏名】目黒 貴史
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅隆
(72)【発明者】
【氏名】米山 暁
(72)【発明者】
【氏名】石田 征男
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA30
(57)【要約】
【課題】廃ガラスの有効利用を図ることができ、強度発現性に優れたセメント組成物を提供する。
【解決手段】セメントと、下記式(1)で表される数値が230以上であるガラス粉末と、セメント混和剤を含み、セメントとガラス粉末の合計100質量%中のガラス粉末の割合が1~30質量%であるセメント組成物。
(SiO2+Al2O3)×ブレーン比表面積/1000・・・(1)
(上記式(1)中、SiO2はガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、Al2O3はガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積はガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、下記式(1)で表される数値が230以上であるガラス粉末と、セメント混和剤を含み、
上記セメントと上記ガラス粉末の合計100質量%中の上記ガラス粉末の割合が1~30質量%であることを特徴とするセメント組成物。
(SiO2+Al2O3)×ブレーン比表面積/1000・・・(1)
(上記式(1)中、SiO2は上記ガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、Al2O3は上記ガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積は上記ガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
【請求項2】
上記ガラス粉末は、1~4μmの粒径を有する上記ガラス粒子の含有率が25~70体積%で、かつ、10~40μmの粒径を有する上記ガラス粒子の含有率が15~55体積%であるものである請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
上記ガラス粉末がホウケイ酸ガラス粉末である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
上記ガラス粉末中、SiO2の含有率が40質量%以上、Al2O3の含有率が10~18質量%、CaOの含有率が16~30質量%である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項5】
上記ガラス粉末の強熱減量が2.0質量%以下である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項6】
上記ガラス粉末のブレーン比表面積が3,000~7,000cm2/gである請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項7】
上記ガラス粉末の下記式(2)で表される数値が1.0以上である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
(CaO/SiO2)×ブレーン比表面積/1000・・・(2)
(上記式(2)中、CaOは上記ガラス粉末中のCaOの含有率(質量%)、SiO2は上記ガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、ブレーン比表面積は上記ガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
【請求項8】
上記ガラス粉末の下記式(3)で表される数値が138以上である請求項1又は2に記載のセメント組成物。
(CaO+Al2O3))×ブレーン比表面積/1000・・・(3)
(上記式(3)中、CaOは上記ガラス粉末中のCaOの含有率(質量%)、Al2O3は上記ガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積は上記ガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
【請求項9】
さらに、水を含む請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項10】
さらに、細骨材を含む請求項9に記載のセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物である廃ガラスの有効利用について様々な技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、ガラス粉末とセメント系固化材の混合物にアクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含む水溶液を添加し混練、固化させて形成した透水性ブロック、及び、上記ガラス粉末として、廃ガラスの破砕粉を用いることが記載されている。
また、特許文献2には、アルカリ含有ガラス粉末からアルカリ成分の一部またはすべてを除去したものであって、アルカリ含有量が3重量%以下であり、かつ平均粒子径が1~20μmであることを特徴とするセメント用混和材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-29809号公報
【特許文献2】特開2004-123458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、廃ガラスの有効利用を図ることができ、強度発現性に優れたセメント組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントと、式(1):(SiO2の含有率+Al2O3の含有率)×ブレーン比表面積/1000で表される数値が230以上であるガラス粉末と、セメント混和剤を含み、セメントとガラス粉末の合計100質量%中のガラス粉末の割合が1~30質量%であるセメント組成物によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供するものである。
[1] セメントと、下記式(1)で表される数値が230以上であるガラス粉末と、セメント混和剤を含み、上記セメントと上記ガラス粉末の合計100質量%中の上記ガラス粉末の割合が1~30質量%であることを特徴とするセメント組成物。
(SiO2+Al2O3)×ブレーン比表面積/1000・・・(1)
(上記式(1)中、SiO2は上記ガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、Al2O3は上記ガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積は上記ガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
[2] 上記ガラス粉末は、1~4μmの粒径を有する上記ガラス粒子の含有率が25~70体積%で、かつ、10~40μmの粒径を有する上記ガラス粒子の含有率が15~55体積%であるものである前記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 上記ガラス粉末が、ホウケイ酸ガラス粉末である前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
[4] 上記ガラス粉末中、SiO2の含有率が40質量%以上、Al2O3の含有率が10~18質量%、CaOの含有率が16~30質量%である前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメント組成物。
[5] 上記ガラス粉末の強熱減量が2.0質量%以下である前記[1]~[4]のいずれかに記載のセメント組成物。
[6] 上記ガラス粉末のブレーン比表面積が3,000~7,000cm2/gである前記[1]~[5]のいずれかに記載のセメント組成物。
【0006】
[7] 上記ガラス粉末の下記式(2)で表される数値が1.0以上である前記[1]~[6]のいずれかに記載のセメント組成物。
(CaO/SiO2)×ブレーン比表面積/1000・・・(2)
(上記式(2)中、CaOは上記ガラス粉末中のCaOの含有率(質量%)、SiO2は上記ガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、ブレーン比表面積は上記ガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
[8] 上記ガラス粉末の下記式(3)で表される数値が138以上である前記[1]~[7]のいずれかに記載のセメント組成物。
(CaO+Al2O3))×ブレーン比表面積/1000・・・(3)
(上記式(3)中、CaOは上記ガラス粉末中のCaOの含有率(質量%)、Al2O3は上記ガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積は上記ガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
[9] さらに、水を含む前記[1]~[8]のいずれかに記載のセメント組成物。
[10] さらに、細骨材を含む前記[1]~[9]のいずれかに記載のセメント組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメント組成物によれば廃ガラスの有効利用を図ることができる。また、本発明のセメント組成物は強度発現性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のセメント組成物は、セメントと、下記式(1)で表される数値が230以上であるガラス粉末と、セメント混和剤を含み、セメントとガラス粉末の合計100質量%中のガラス粉末の割合が1~30質量%であるものである。
(SiO2+Al2O3)×ブレーン比表面積/1000・・・(1)
(上記式(1)中、SiO2はガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、Al2O3はガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積はガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
なお、本明細書中、「セメント組成物」とは、水を含まない粉粒状の組成物のほか、水を含む組成物(ペースト、モルタル、又はコンクリート)であって、硬化前の流動性を有する形態および硬化後の形態を包含するものである。
以下、詳しく説明する。
セメント組成物に含まれるセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント(「JIS R 5212:2009(シリカセメント)」に規定されるもの)等の混合セメントや、シリカフューム含有セメント(例えば、太平洋セメント社製、商品名「シリカフュームプレミックスセメント」、本明細書中、「シリカフューム含有セメント」には、シリカセメントは含まれないものとする。)や、エコセメントや、白色セメントや、超速硬セメント等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、入手の容易性や強度発現性等の観点から、各種ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメントがより好ましく、普通ポルトランドセメントが特に好ましい。
また、セメント組成物がいわゆる超高強度コンクリート(例えば、圧縮強度が100N/mm2以上であるもの)である場合には、低熱ポルトランドセメント、シリカセメント、
シリカフューム含有セメントが特に好ましい。
【0009】
セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2,000~6,000cm2/g、より好ましくは2,500~5,000cm2/g、特に好ましくは3,000~4,000cm2/gである。上記ブレーン比表面積が2,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が6,000cm2/g以下であれば、セメントの製造に要する労力を小さくし、より容易に入手することができる。
【0010】
ガラス粉末の下記式(1)で表される数値は、230以上、好ましくは235~350、より好ましくは250~345、さらに好ましくは270~340、特に好ましくは300~340である。上記数値が230未満であると、セメント組成物の強度発現性が低下する。上記数値が350以下であれば、ガラス粉末の入手がより容易となり、かつ、ガラス粉末の製造に要する労力をより小さくすることができる。
(SiO2+Al2O3)×ブレーン比表面積/1000・・・(1)
(上記式(1)中、SiO2はガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、Al2O3はガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積はガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
【0011】
また、ガラス粉末の下記式(2)で表される数値は、セメント組成物の強度発現性をより向上させる観点からは、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.4以上、さらに好ましくは1.6以上、さらに好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.4以上である。また、ガラス粉末の入手がより容易となり、かつ、ガラス粉末の製造に要する労力をより小さくする観点からは、上記数値は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.0以下である。
(CaO/SiO2)×ブレーン比表面積/1000・・・(2)
(上記式(2)中、CaOはガラス粉末中のCaOの含有率(質量%)、SiO2はガラス粉末中のSiO2の含有率(質量%)、ブレーン比表面積はガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
また、ガラス粉末の下記式(3)で表される数値は、セメント組成物の強度発現性をより向上させる観点からは、好ましくは138以上、より好ましくは139以上、さらに好ましくは145以上、さらに好ましくは160以上、特に好ましくは180以上である。また、ガラス粉末の入手がより容易となり、かつ、ガラス粉末の製造に要する労力をより小さくする観点からは、上記数値は、好ましくは250以下、より好ましくは240以下、特に好ましくは220以下である。
(CaO+Al2O3)×ブレーン比表面積/1000・・・(3)
(上記式(3)中、CaOはガラス粉末中のCaOの含有率(質量%)、Al2O3はガラス粉末中のAl2O3の含有率(質量%)、ブレーン比表面積はガラス粉末のブレーン比表面積(cm2/g)である。)
なお、上記式(1)~(3)で表される数値において、単位(質量%×cm2/g)は省略するものとする。
【0012】
ガラス粉末の平均粒径(平均粒度)は、40μm以下、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは0.5~20μm、さらに好ましくは1.0~10μm、さらに好ましくは2.0~8.0μm、特に好ましくは3.0~5.0μmである。上記平均粒径が40μm以下であると、セメント組成物の硬化前の流動性、及び、強度発現性がより向上する。また、上記平均粒径が0.1μm以上であれば、ガラス粉末の製造に要する労力がより小さくなり、より容易に入手することができる。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは、50%体積累積粒径(メディアン径;D50ともいう)である。該平均粒径は、市販のレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置等を用いて、または「JIS Z 8815-1994(ふるい分け試験方法通則)」に準拠したふるい分け法を用いて、体積累積分布を作成することで得ることができる。
【0013】
ガラス粉末において、1~4μmの粒径を有するガラス粉末の含有率は、好ましくは25~70体積%、より好ましくは30~65質量%、さらに好ましくは40~60質量%、さらに好ましくは45~60質量%、特に好ましくは55~60質量%である。上記含有率が、上記数値範囲内であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
また、10~40μmの粒径を有するガラス粉末の含有率は、好ましくは15~55体積%、より好ましくは18~50質量%。さらに好ましくは20~40質量%、特に好ましくは22~30質量%である。上記含有率が、上記数値範囲内であれば、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる。
また、ガラス粉末は、セメント組成物の強度発現性をより向上させることができる観点から、1~4μmの粒径の範囲内、及び、10~40μmの粒径の範囲内に、各々、ピークを有する粒度分布を有するものであることが好ましい。
【0014】
ガラス粉末のガラスとしては、特に限定されるものではなく、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、及び鉛ガラス等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の強度発現性の向上、及び、廃ガラスの有効利用の観点から、ホウケイ酸ガラスが好ましい。
また、廃ガラスの有効利用を図る観点から、ガラス瓶等の廃ガラスや、半導体で使用されたホウケイ酸ガラスの廃棄物等を粉砕したものを使用してもよい。
廃ガラスの粉砕方法としては、特に限定されるものではなく、ボールミル等の市販の粉砕手段を用いて、ガラス粉末が所望の平均粒径を有するようになるまで粉砕する方法等が挙げられる。
【0015】
ガラス粉末のSiO2の含有率は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは47質量%以上、特に好ましくは48質量%以上である。上記含有率が40質量%以上であれば、セメント組成物の硬化前の流動性、及び、強度発現性がより向上する。上記含有率は、入手の容易性等の観点からは、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは55質量%以下である。
ガラス粉末のAl2O3の含有率は、好ましくは10~18質量%、より好ましくは12~16質量%、特に好ましくは13~15質量%である。上記含有率が上記数値範囲内であれば、セメント組成物の硬化前の流動性がより向上する。また、上記含有率が10質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。
【0016】
ガラス粉末のCaOの含有率は、好ましくは16~30質量%、より好ましくは18~28質量%、特に好ましくは20~25質量%である。上記含有率が上記数値範囲内であれば、セメント組成物の硬化前の流動性がより向上する。また、上記含有率が16質量%以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。
ガラス粉末のB2O3の含有率は、廃ホウケイ酸ガラスの有効利用を促進する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。また、上記含有率は、入手の容易性等の観点からは、好ましくは15質量%未満、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0017】
ガラス粉末の強熱減量は、セメント組成物の強度発現性の観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。また、上記強熱減量は、入手の容易性等の観点からは、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上である。
ガラス粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~7,000cm2/g、より好ましくは3,500~6,000cm2/g、さらに好ましくは3,800~5,600cm2/g、特に好ましくは4,200~5,400cm2/gである。上記ブレーン比表面積が3,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が7,000cm2/g以上であれば、ガラスを粉砕してガラス粉末を得る際の粉砕にかかる労力をより少なくすることができる。
【0018】
セメントとガラス粉末の合計100質量%中のガラス粉末の割合は、セメント組成物の強度発現性、施工性、及び材料分離の防止をバランスよくする等の観点から、1~30質量%である。
上記割合は、セメント組成物の強度発現性の向上の観点からは、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、特に好ましくは15質量%以上である。
また、上記割合は、セメント組成物の凝結による流動性の低下による施工性の低下、及び、セメント組成物の硬化前において材料分離が生じることによる性状の悪化をより防止する観点からは、好ましくは28質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは22質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
また、セメントとしてシリカセメント又はシリカフューム含有セメントを用いる場合、セメントとガラス粉末の合計100質量%中のガラス粉末の割合は、好ましくは2~5質量%である。上記割合が2質量%以上であれば、セメント組成物の硬化前の粘性がより低くなり、施工性がより向上する。また、上記割合が5質量%以下であれば、セメント組成物の硬化前において材料分離がより生じにくくなり、性状の悪化をより防ぐことができる。
【0019】
セメント混和剤としては、AE剤や、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等のセメント分散剤や、硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、セメント組成物の流動性、施工性、及び強度発現性等の観点から、セメント分散剤が好ましく、高性能AE減水剤及びAE減水剤の少なくともいずれか一方がより好ましい。
セメント混和剤の配合量は、目的とするセメント組成物の流動性や強度発現性によっても異なるが、セメントとガラス粉末の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~5.00質量部、より好ましくは0.05~2.00質量部、さらに好ましくは0.1~1.50質量部、さらに好ましくは0.2~1.00質量部、特に好ましくは0.3~0.90質量部である。上記配合量が0.01質量部以上であれば、セメント組成物の流動性をより向上することができる。上記配合量が2.00質量部以下であれば、セメント混和剤にかかるコストを低減することができる。
【0020】
本発明のセメント組成物(セメント、少なくとも上述した式(1)で表される数値が230以上であるガラス粉末、及びセメント混和剤を含むもの)は、必要に応じて他の材料を配合してもよい。必要に応じて配合される他の材料としては、水、骨材(細骨材、粗骨材)、及び各種セメント混和材(フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等)等が挙げられる。
水としては、特に限定されるものではなく、水道水、「JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート)」に規定される回収水等が挙げられる。
水の配合量は、コンクリート等における一般的な配合量であればよく、セメント組成物の配合、目的とするセメント組成物の硬化体の強度等によっても異なるが、セメント組成物の硬化前の流動性を向上させる観点からは、水と、セメント及びガラス粉末の合計の質量比(水/(セメント及びガラス粉末の合計))の値として、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.12以上、さらに好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.40以上である。また、セメント組成物の強度発現性及び硬化前の材料分離の発生をより抑制する観点からは、水の配合量は、上記質量比の値として、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.55以下である。
また、セメント組成物がいわゆる超高強度コンクリート(例えば、圧縮強度が100N/mm2以上であるもの)である場合には、上記水の配合量は、上記質量比の値として、この好ましくは0.1~0.25である。
【0021】
骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。また、天然骨材、人工骨材、再生骨材のいずれも用いることができる。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
細骨材の単位量は、特に限定されるものではなく、モルタルやコンクリート等のセメント組成物における一般的な単位量であればよい。例えば、モルタルの場合、細骨材の単位量は、好ましくは600~1,500kg/m3であり、コンクリートの場合、細骨材の単位量は、好ましくは600~1400kg/m3である。
また、セメント組成物が粗骨材を含む場合、細骨材率は、好ましくは5~60%、より好ましくは30~58%である。細骨材率が前記範囲内であれば、セメント組成物のワーカビリティや成形のし易さが向上する。
【0022】
本発明のセメント組成物がモルタルである場合における、「JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮試験方法)」に準拠して測定した材齢91日の圧縮強度は、好ましくは70N/mm2以上、より好ましくは72N/mm2以上であり、材齢182日の圧縮強度は、好ましくは77N/mm2以上、より好ましくは80N/mm2以上である。
【実施例0023】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント;普通ポルトランドセメント、密度:3.16g/cm3、ブレーン比表面積:3,070cm2/g、平均粒径(D50):20.29μm
(2)ガラス粉末A;ホウケイ酸ガラス粉末、強熱減量:0.46質量%、ブレーン比表面積:4,150cm2/g、密度:2.61g/cm3、化学組成の詳細を表2に示す。
(3)ガラス粉末B;ホウケイ酸ガラス粉末、強熱減量:0.46質量%、ブレーン比表面積:3,750cm2/g、密度:2.61g/cm3、化学組成の詳細を表2に示す。
(4)ガラス粉末C;ホウケイ酸ガラス粉末、強熱減量:0.46質量%、ブレーン比表面積:5,360cm2/g、密度:2.61g/cm3、化学組成の詳細を表2に示す。
(5)ガラス粉末D;ソーダ石灰ガラス粉末、強熱減量:0.58質量%、ブレーン比表面積:2,810cm2/g、密度:2.53g/cm3、化学組成の詳細を表2に示す。
(6)フライアッシュ;強熱減量:2.70質量%、ブレーン比表面積:4,390cm2/g、密度:2.30g/cm3、化学組成の詳細を表2に示す。
(7)セメント混和剤;ポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤、ポゾリスソリューションズ社製、商品名:マスターグレニウムSP8SV
(8)空気量調整剤;消泡剤、ポゾリスソリューションズ社製、商品名:マスターエア404
(9)細骨材;山砂
(10)水;上水道水
【0024】
[平均粒径等の測定]
ガラス粉末A~D、及びフライアッシュ(以下、「混和材」ともいう。)の各々の平均粒径(D50)及び粒度分布(全混和材中、粒径が1~4μmである混和材の割合、及び、粒径が10~40μmである混和材の割合)を、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、商品名「MW3300EXII」)を用いたレーザー回折・散乱法を用いて測定した。
[上記式(1)~(3)で表される数値の算出]
ガラス粉末A~D、及び、フライアッシュの上記式(1)~(3)で表される数値を、混和材の化学組成及びブレーン比表面積を用いて算出した。
結果を表2に示す。
【0025】
【0026】
【0027】
[実施例1~6、比較例1~5]
上記材料を、表3に示す種類及び配合割合で、ホバート社製のミキサを用いて混練してモルタルを作製した。作成したモルタルを、内寸がφ50×100mmの円柱型枠に打設して成型した後、24時間後に脱型して供試体を得た。次いで、材齢28日、91日、181日になるまで、20℃の水中において養生した。各材齢における供試体の圧縮強度を「JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮試験方法)」に準拠して、測定した。また、モルタルを作製する際に、セメントと混和材(ガラス粉末又はフライアッシュ)の合計量100質量部に対して0.02質量部となる量の消泡剤を添加した。
結果を表3に示す。
【0028】
【0029】
実施例1、3、5の圧縮強度(材齢28日:52.0~56.0N/mm2、材齢91日:71.0~74.0N/mm2、材齢182日:78.7~90.0N/mm2)は、比較例1~2(ガラス粉末A~Cの代わりに、ガラス粉末D又はフライアッシュを用いたもの)の圧縮強度(材齢28日:49.3~50.5N/mm2、材齢91日:61.6~67.8N/mm2、材齢182日:68.1~75.9N/mm2)よりも大きく、強度発現性に優れていることがわかる。同様の傾向は、実施例2、4、6と比較例3~4の比較でも見られた。
また、実施例1~6の材齢91日及び182日の圧縮強度(材齢91日:71.0~74.0N/mm2、材齢182日:78.7~90.0N/mm2)は、比較例5(混和材を使用しないもの)の材齢91日及び182日の圧縮強度(材齢91日:64.5N/mm2、材齢182日:68.5N/mm2)よりも大きいことがわかる。