(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065257
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シリコーン粘着剤組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20240508BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240508BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240508BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240508BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240508BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240508BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J11/06
C09J183/05
C09J183/07
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/00 101
B32B27/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174011
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 司
(72)【発明者】
【氏名】篠原 愛
(72)【発明者】
【氏名】梅山 晃典
(72)【発明者】
【氏名】田村 正明
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AH04A
4F100AH04H
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK15B
4F100AK16B
4F100AK42B
4F100AK52A
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4F100AT00
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4F100CA22A
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4F100EH462
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4F100JL13A
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4J004AA11
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA04
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4J004FA04
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4J040EK031
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4J040HC07
4J040HD17
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA32
4J040LA09
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
4J040NA19
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】一層形成において、粘着特性を損なわず十分な帯電防止能を発現するシリコーン粘着剤組成物を提供するものである。
【解決手段】シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含むシリコーン粘着剤組成物。
式(1):Q+・(R1SO2)2N- (1)
(式中、Q+はシリル基をもつピリジニウムカチオン又はイミダゾリウムカチオンを表す。)
式(1)中のR1は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含むシリコーン粘着剤組成物。
【化1】
(式中、Q
+は式(2)又は式(3)で示されるカチオンを示す。)
式(1)中のR
1及びR
2は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表し、同一又は異なってもよい。
【化2-3】
式(2)中、R
3は、同一又は異なってもよい、炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。式(2)及び式(3)中、R
4は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
5は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~2を示す。
【請求項2】
式(2)及び式(3)中のR4が、全て炭素数2のアルキル基である請求項1に記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項3】
式(1)中のR1及びR2が、トリフルオロメチル基もしくはフルオロ基である請求項1又は2に記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項4】
シリコーン系樹脂100質量部に対して、式(1)で表されるオニウム塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項5】
前記シリコーン系樹脂が付加反応型シリコーン系樹脂である、請求項1~4のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物を含む粘着層が、基材上に形成された積層体。
【請求項7】
基材上に、請求項1~5のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物を含む粘着層を形成させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル基を有するオニウム塩含有シリコーン粘着剤組成物及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン粘着剤組成物への帯電防止機能付与はリチウム塩によるもの(特許文献1)やイオン性化合物(特許文献2)、導電性高分子を用いた多層フィルム(特許文献3)が知られている。また、導電性高分子を帯電防止層として塗布し、イオン性化合物をシリコーン系樹脂に導入したフィルム(特許文献4)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-30028号公報
【特許文献2】特開2017-171924号公報
【特許文献3】特開2018-172611号公報
【特許文献4】特開2021-142756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のイオン性化合物及び導電性高分子を含有するシリコーン粘着剤組成物は、一層形成の場合、フィルム等の用途で使用するのに十分な帯電防止能を有していない。フィルム等の用途で使用可能な帯電防止能を発現するには、導電性高分子を含む帯電防止層とイオン性化合物及びシリコーン系樹脂を含む粘着層の二層形成が必要となる。
従って本発明は、一層形成でも、フィルム等に使用可能な帯電防止能を発現する、シリコーン粘着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、カチオン部位にシリル基を有するオニウム塩をシリコーン系樹脂に一定量含有させることで、一層形成において、粘着特性を損なわず十分な帯電防止能を発現する、シリコーン粘着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は以下[1]~[7]に示すものである。
【0007】
[1]シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含むシリコーン粘着剤組成物。
【化1】
(式中、Q
+は式(2)又は式(3)で示されるカチオンを示す。)
式(1)中のR
1及びR
2は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表し、同一又は異なってもよい。
【化2-3】
式(2)中、R
3は、同一又は異なってもよい、炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。式(2)及び式(3)中、R
4は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
5は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~2を示す。
[2]式(2)及び式(3)中のR
4が、全て炭素数2のアルキル基である[1]に記載のシリコーン粘着剤組成物。
[3]式(1)中のR
1及びR
2が、トリフルオロメチル基もしくはフルオロ基である[1]又は[2]に記載のシリコーン粘着剤組成物。
[4]シリコーン系樹脂100質量部に対して、式(1)で表されるオニウム塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物。
[5]前記シリコーン系樹脂が付加反応型シリコーン系樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物を含む粘着層が、基材上に形成された積層体。
[7]基材上に、[1]~[5]のいずれかに記載のシリコーン粘着剤組成物を含む粘着層を形成させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一層形成において、粘着特性を損なわず十分な帯電防止能を発現するシリコーン粘着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について説明する。
【0010】
[シリル基含有オニウム塩]
本発明のシリコーン粘着剤組成物は、式(1)で表されるオニウム塩を含有する。
【化1】
(式中、Q
+は式(2)又は式(3)で示されるカチオンを示す。)
【化2-3】
【0011】
式(1)中のR1及びR2は炭素鎖が1~4のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基であり、例えば、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基が挙げられ、R1及びR2は同一又は異なってもよく、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0012】
式(2)及び式(3)中、R3は炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。このアルキル基は直鎖及び分枝鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基又は水素原子である。具体的には例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、炭素数1~2の直鎖状のアルキル基又は水素原子が特に好ましい。R4は炭素数1~3のアルキル基である、好ましくは直鎖状のアルキル基である。アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、好ましくはエチル基である。R5は炭素数1~4のアルキル基である。このアルキル基は直鎖及び分枝鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。式(2)及び式(3)中のnは1~2を示し、好ましくは2である。
【0013】
本発明の式(1)で表されるオニウム塩は、種々の方法で製造することができる。その代表的な方法はシリル基を有するアルキルハライド類に対しアミン類を作用させオニウム=ハライドを合成したのち、イミド酸アルカリ金属塩との複分解反応でオニウム塩を合成する方法である。
【0014】
本合成に適したアミン類としては、例えば2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-プロピルピリジン、3-プロピルピリジン、4-プロピルピリジン、2-ブチルピリジン、3-ブチルピリジン、4-ブチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール等が挙げられる。
【0015】
アルキルハライド類としては、例えば、クロロメチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、4-クロロブチルトリメトキシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、4-クロロブチルトリエトキシラン、クロロメチルトリプロポキシシラン、2-クロロエチルトリプロポキシラン、3-クロロプロピルトリプロポキシシラン、4-クロロブチルトリプロポキシラン、クロロメチルトリブトキシシラン、2-クロロエチルトリブトキシラン、3-クロロプロピルトリブトキシシラン、4-クロロブチルトリブトキシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、2-ブロモエチルトリメトキシラン、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン、4-ブロモブチルトリメトキシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、2-ブロモエチルトリエトキシラン、3-ブロモプロピルトリエトキシシラン、4-ブロモブチルトリエトキシラン、ブロモメチルトリプロポキシシラン、2-ブロモエチルトリプロポキシラン、3-ブロモプロピルトリプロポキシシラン、4-ブロモブチルトリプロポキシラン、ブロモメチルトリブトキシシラン、2-ブロモエチルトリブトキシラン、3-ブロモプロピルトリブトキシシラン、4-ブロモブチルトリブトキシラン、ヨ-ドメチルトリメトキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリメトキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリメトキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリメトキシラン、ヨ-ドメチルトリエトキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリエトキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリエトキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリエトキシラン、ヨ-ドメチルトリプロポキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリプロポキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリポロポキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリプロポキシラン、ヨ-ドメチルトリブトキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリブトキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリブトキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリブトキシラン等が挙げられる。
【0016】
アミン類とアルキルハライド類との四級化反応は、溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用するときの溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0017】
アルキルハライド類の使用量は、アミン類1モルに対して0.7モル以上であればよく、好ましくは0.9~1.5モルである。
【0018】
イミド酸アルカリ金属塩としては、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドカリウム、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミドリチウム、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミドカリウム、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドリチウム、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドナトリウム、ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドカリウム、(フルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、(フルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、(フルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドリチウム、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドナトリウム、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドカリウム等が挙げられる。
【0019】
複分解反応におけるイミド酸アルカリ金属塩の使用量は、オニウム=ハライド類1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル~1.2モルであり、より好ましくは1~1.05モルである。
【0020】
イオン交換反応は通常溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0021】
オニウム=ハライド類、イミド酸アルカリ金属塩及び溶媒の混合順序は特に限定されず、オニウム=ハライド類と溶媒を混合した後にイミド酸アルカリ金属塩を添加してもよいし、イミド酸アルカリ金属塩と溶媒を混合した後にオニウム=ハライド類を添加してもよい。
【0022】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10~60℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0023】
反応終了後の反応液からオニウム塩を分離するには、溶媒及び生成する無機塩を反応液から除去する。得られた反応液中に無機塩が析出していれば、反応液を濾過して析出した無機塩を除き、次いで濃縮、濾過、抽出等の単位操作を適宜組み合わせて、オニウム塩を単離する。
【0024】
[シリコーン粘着剤組成物]
本発明のシリコーン粘着剤組成物は、オニウム塩及びシリコーン系樹脂を少なくとも含むものである。シリコーン系樹脂としては、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などを含有するものも用いることができる。特に硬化型シリコーン系樹脂を含有することが好ましい。
【0025】
硬化型シリコーン系樹脂には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノポリシロキサンを過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物で架橋し硬化させた「過酸化物硬化型」のいずれを用いてもよいが、本発明ではオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた付加反応型が好ましい。
本発明におけるシリコーン粘着剤組成物は、塗料組成物を必要に応じて乾燥工程で溶媒を除去の上、硬化することで形成される。
【0026】
付加反応型シリコーン系樹脂は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサン及び1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンをもつものが好ましい。
【0027】
[塗料組成物]
前述の塗料組成物は、室温にて液体の性状を示す混合物であり、シリコーン粘着剤組成物を形成可能な材料と、重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含み、更に溶媒、粒子、架橋剤、帯電防止剤などの各種添加剤を含んでもよい。
塗料組成物は、その組成は特に限定されないが、硬化型シリコーン系樹脂を形成可能な樹脂前駆体が好ましく、「付加反応型」、「過酸化物硬化型」の樹脂前駆体、及び重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含む塗料組成物がより好ましく、更には「付加反応型」がより好ましい。
【0028】
付加反応型シリコーン系樹脂としては、市販品を使用することができる。例えば、信越化学工業社製のKR3700、KR3701、X-40-3237、X-40-3240、X-40-3291-1、KR3704、X-40-3323、X-40-3270-1、X-40-3306や、東レ・ダウコーニング社製のSD 4580 PSA、SD 4584 PSA、SD 4585 PSA、SD 4587 L PSA、SD 4560 PSA、SD 4570 PSA、SD 4600 FC PAS、SD 4593 PAS、DC 7651 ADHESIVE、DC 7652 ADHESIVE、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のTSR1512、TSR1516、XR37-B9204等を使用することができる。
【0029】
硬化触媒としては、白金系の触媒、すなわち、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコール溶液との反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサン化合物との反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体、白金-リン錯体等が挙げられる。上記のような硬化触媒として、より具体的には、信越化学工業社製のCAT-PL-50T、東レ・ダウコーニング社製のSRX-212等が挙げられる。
【0030】
硬化触媒の配合量は白金元素量として、シリコーン系樹脂成分に対して、通常0.1~1質量部、好ましくは、0.3~0.6質量部である。0.1質量部未満では、硬化性が低下して粘着層の凝集力(保持力)が低下し、1質量部以上では、白金含有量が多くコストアップになり、かつ粘着層の安定性が低下する。ここで、粘着層とは、支持基材上に塗工された塗料組成物が、乾燥工程により溶媒除去された上で硬化し、形成される層を示す。
【0031】
アミン化合物や、アンモニウムカチオンは、白金触媒への触媒毒となりうることが知られている。そのため、アンモニウム系オニウム塩はシリコーン系樹脂の硬化阻害を起こしやすく、硬化不良により被着体へ粘着層が溶出してしまう問題が生じやすい。また、アンモニウム系オニウム塩はシリコーン系樹脂との相溶性が乏しいため、表面にブリードアウトして、被着体を汚染する問題が生じる。
本発明における式(2)及び式(3)で表されるカチオンは、硬化触媒である白金触媒への触媒毒とはならないため、シリコーン系樹脂の硬化阻害を起こさず、硬化不良による被着体への粘着層の溶出が抑制される。
また、式(1)で表されるオニウム塩はシリコーン系樹脂との相溶性に優れるため、表面へのブリードアウトが抑制され、被着体を汚染する問題が生じにくい。
【0032】
粘着特性を維持したまま十分な帯電防止能が付与される必要があるため、本発明のシリコーン粘着剤組成物におけるオニウム塩の含有量は、シリコーン系樹脂100質量部固形分に対し、通常0.1~10質量部が好ましく、更には1~5質量部がより好ましい。
【0033】
本発明における塗料組成物の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常40質量%以下であり、更には20~30質量%であることが好ましい。
【0034】
従来は、粘着特性を損なわないよう、支持基材への塗料組成物の塗工は、帯電防止層を有するプライマー層と粘着層の二層にする必要があった。本発明における塗料組成物は、帯電防止能を付与しても粘着特性が維持されるため、一層塗工が可能となる。
【0035】
[その他の塗料組成物添加剤]
塗料組成物は、製造適性の面から溶媒を含むことが好ましい。ここで溶媒とは、塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。本発明の積層体に適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては、1種類以上10種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上5種類以下、更に好ましくは1種類以上3種類以下である。塗料組成物を乾燥させることでシリコーン粘着剤組成物となり、粘着層を形成することができる。
【0036】
溶媒は、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、メチルエチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類などを使用することができる。これらは溶解性、塗工性、沸点等を考慮し、単独又は複数混合して使用するのが好ましい。
【0037】
水系の溶媒は、シリコーン系樹脂の硬化に必要な白金触媒の触媒毒になりうるため、本発明における塗料組成物の溶媒には、有機溶媒を用いることが好ましい。
【0038】
本発明における積層体は、支持基材上にシリコーン粘着剤組成物を含む粘着層が形成されたものを指す。ここでいう積層体とは、粘着テープや粘着フィルム、反射防止フィルムや保護フィルム等のことである。
【0039】
[支持基材]
本発明における支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。特に粘着フィルムとして用いる際は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0040】
基材の厚みは、好ましくは10μm~100μmであり、より好ましくは15μm~80μmであり、更には20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
【0041】
[付加反応型シリコーン系樹脂を用いた積層体の製造方法]
支持基材上への塗料組成物の塗布方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などにより支持基材等へ塗布し、層を形成することが好ましい。更に、これらの塗布方法のうち、ワイヤーバーコート法がより好ましい。次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、液膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、80℃以上200℃以下であることがより好ましく、更には80℃以上150℃以下であることが好ましい。
積層体の表面抵抗率は1.0×1012(Ω/□)以下であることが好ましい。更に、積層体に透明性が求められる場合は、オニウム塩のうちカチオン部位にイミダゾリウムをもつオニウム塩を使用することがより好ましい。
【実施例0042】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。
【0043】
(合成例1)
3-メチルピリジン9.3g(100ミリモル)と3-クロロプロピルトリエトキシシラン25.2g(105ミリモル)との混合物を110℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下で乾燥して1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=クロライド30.0g(収率90%)を得た。
得られた1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=クロライド30.0g(90ミリモル)をエタノール30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム25.8g(90ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド48.1g(収率95%)を得た。
【0044】
(合成例2)
合成例1の合成条件に記載されているビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりに、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変更せず合成し、液体の1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド38.8g(収率93%)を得た。
【0045】
(合成例3)
1-メチルイミダゾリウム8.21g(100ミリモル)と3-クロロプロピルトリエトキシシラン25.2g(105ミリモル)との混合物を110℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下で乾燥して1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=クロライド30.6g(収率95%)を得た。
得られた1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=クロライド30.6g(95ミリモル)をエタノール30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム27.2g(95ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド52.8g(収率98%)を得た。
【0046】
(合成例4)
合成例1の合成条件に記載されているビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりに、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変更せず合成し、液体の1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド41.7g(収率94%)を得た。
【0047】
(実施例1)
[塗料組成物の作製]
付加反応型シリコーン系樹脂として、2種のポリジメチルシロキサンを含むシリコーン系樹脂(商品名「X-40-3306」、信越化学工業社製)を100質量部、白金系触媒(商品名「CAT-PL-50T」、信越化学工業社製)を固形分換算で0.5質量部、合成例1のオニウム塩を2質量部、全体の固形分が20質量%となるようにトルエン:MEK=2.5:1で希釈し、塗料組成物を調製した。
【0048】
(実施例2)
実施例1のオニウム塩に合成例2を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0049】
(実施例3)
実施例1のオニウム塩に合成例3を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0050】
(実施例4)
実施例1のオニウム塩に合成例4を使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0051】
(比較例1)
実施例1のオニウム塩を未添加にした条件以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0052】
(比較例2)
実施例1のオニウム塩に1-オクチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0053】
(比較例3)
実施例1のオニウム塩に1-ブチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0054】
(比較例4)
実施例1のオニウム塩に1-エチル-3-メチルイミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料組成物を作製した。
【0055】
[塗工条件]
塗料組成物をPETフィルム上にバーコーターを用いて、乾燥後膜厚約20μmの厚みでコートし、130℃で3分間加熱して試験片を作製した。
【0056】
[表面抵抗率測定]
ハイレスターUP(MCP-HT450)を用いて、室温下50%RH、印加電圧100Vで試験片塗工面の表面抵抗率を測定した。
【0057】
[粘着試験]
ステンレス板(SUS304、以下同じ)に貼り付け面積が幅25mm×長さ100mmとなるように粘着フィルム試験片を貼り付け[2kg荷重のローラーで1往復、以下同じ。]、JIS Z0237に従い常温(23℃)で引っ張り試験機を用いて、300mm/分の速度、180゜の角度でテープをステンレス板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定し、粘着力(単位:N/25mm)を評価した。
【0058】
[ヘイズ値の測定]
セパレーターを剥がした粘着フィルムの粘着層側を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH5000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じて測定した。
【0059】
[基材密着性の評価]
粘着層に対して、カッターナイフで十字の切り込み(30mm×30mm)を入れた。そして、切り込みを入れた部位の粘着層を指の腹で擦り、粘着層の脱落度合いを確認した。
〇・・・粘着層が基材から脱着せず、良好な密着性を維持
△・・・粘着層の一部が基材から脱着するが、ある程度の密着性を維持
×・・・粘着層全体が基材から脱着し、密着性不足
【0060】
実施例1~4及び比較例1~4の結果を表1に示す。
【表1】
【0061】
上記のとおり、本発明の実施例1~4のシリコーン粘着剤組成物は、一層形成において、基材との密着性を損なうことなく帯電防止に必要な表面抵抗率を有していた。また、比較例1のブランクと比較して、実施例1~4のいずれのシリコーン粘着剤組成物も粘着力に変化はなく、オニウム塩が粘着特性に悪影響を及さないことが示された。
本発明のシリコーン粘着剤組成物は、粘着シート及び粘着フィルムに使用可能で、半導体部品のリフロー工程や樹脂封止工程におけるマスキングや部品の仮固定などの電子材料用途、反射防止フィルムや保護フィルムなどの光学用途に用いることができ、極めて有用である。