(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006526
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 107
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107515
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】牛尼 裕之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA11
2C056EB27
2C056EB41
2C056EC07
2C056EC42
2C056EC79
2C056EE02
2C056FA11
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】縦配列ヘッドに起因する色むらを低減可能な技術を提供する。
【解決手段】記録ヘッドは、双方向印刷においてバンド領域に対して往路と復路とで吐出するカラーインク滴の色が互いに異なる複数のカラーノズル群を含んでいる。補償部は、主走査方向における前記バンド領域内の位置に応じて生じる第一カラーノズル群からの第一カラーインク滴と第二カラーノズル群からの第二カラーインク滴との吐出のタイミング差についての基準タイミング差で所定記録濃度比の前記第一及び第二カラーインク滴を吐出させることにより基準パッチを記録媒体に形成させ、第一タイミング差で複数の異なる記録濃度比の前記第一及び第二カラーインク滴を吐出させることにより複数の第一パッチを前記記録媒体に形成させ、前記複数の第一パッチから選択された第一の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比に基づいて、前記タイミング差による色ずれを補償して印刷画像を形成させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックインク滴を吐出する複数のブラックノズルが並べられたブラックノズル列、及び、カラーインク滴を吐出する複数のカラーノズルが前記ブラックノズル列に沿って並べられた複数のカラーノズル群を有する記録ヘッドを備え、前記複数のブラックノズルの並び方向において前記複数のカラーノズル群が順番に並べられた印刷装置であって、
前記並び方向と交差する主走査方向に沿って往路と復路において前記記録ヘッドと記録媒体との相対位置を変化させる主走査を行い、前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記記録ヘッドと前記記録媒体との相対位置を変化させる副走査を行う駆動部と、
前記記録媒体において前記カラーインク滴を吐出する各前記カラーノズル群の前記副走査方向における長さに対応した各バンド領域に割り当てられた前記カラーノズル群から前記往路と前記復路の両方において前記副走査間の1回の前記主走査で前記カラーインク滴を着弾させる双方向印刷を制御する制御部と、を備え、
前記複数のカラーノズル群は、前記双方向印刷において前記バンド領域に対して前記往路と前記復路とで吐出する前記カラーインク滴の色が互いに異なる第一カラーノズル群及び第二カラーノズル群を含み、
前記第一カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第一カラーインク滴とし、前記第二カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第二カラーインク滴として、
前記制御部は、前記主走査方向における前記バンド領域内の位置に応じて生じる前記第一カラーインク滴と前記第二カラーインク滴との吐出のタイミング差による色ずれを補償する補償部を含み、
前記補償部は、
前記タイミング差の基準である基準タイミング差で所定記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより基準パッチを前記記録媒体に形成させ、
前記基準タイミング差とは異なる第一タイミング差で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより複数の第一パッチを前記記録媒体に形成させ、
前記複数の第一パッチから選択された第一の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比に基づいて、前記タイミング差による色ずれを補償して印刷画像を形成させる、印刷装置。
【請求項2】
前記第一タイミング差は、前記基準タイミング差よりも大きく、
前記補償部は、
前記基準タイミング差よりも小さい第二タイミング差で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより複数の第二パッチを前記記録媒体に形成させ、
前記第一の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比と、前記複数の第二パッチから選択された第二の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比と、に基づいて、前記タイミング差による色ずれを補償して前記印刷画像を形成させる、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記補償部は、前記基準パッチとして、前記第一パッチ同士の間に配置された第一基準パッチ、及び、前記第二パッチ同士の間に配置された第二基準パッチを前記記録媒体に形成させる、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記補償部は、前記記録媒体に前記基準パッチを形成させる前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴の吐出を前記往路と前記復路のいずれか一方に揃える制御を行う、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記補償部は、前記記録媒体に前記複数の第一パッチ及び前記複数の第二パッチを形成させる前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴の吐出を前記往路と前記復路のいずれか一方に揃える制御を行う、請求項2又は請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第一タイミング差は、前記双方向印刷において前記タイミング差の最大であり、
前記第二タイミング差は、前記双方向印刷において前記タイミング差の最小である、請求項2又は請求項3に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記記録媒体は、第一記録媒体、及び、該第一記録媒体よりも前記タイミング差による色ずれが少ない第二記録媒体を含み、
前記制御部は、
前記印刷画像を形成させる前記記録媒体の種類の設定を受け付け、
前記種類が前記第一記録媒体に相当する場合、前記補償部において前記タイミング差による色ずれを補償して前記印刷画像を形成させ、
前記種類が前記第二記録媒体に相当する場合、前記タイミング差による色ずれを補償する処理を行わない、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記補償部は、前記基準パッチ、及び、前記複数の第一パッチの読取結果を取得し、該読取結果に基づいて、前記複数の第一パッチから前記第一の色ずれ補償用パッチを選択する、請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項9】
ブラックインク滴を吐出する複数のブラックノズルが並べられたブラックノズル列、及び、カラーインク滴を吐出する複数のカラーノズルが前記ブラックノズル列に沿って並べられた複数のカラーノズル群であって前記複数のブラックノズルの並び方向において順番に並べられた前記複数のカラーノズル群を有する記録ヘッドと、
前記並び方向と交差する主走査方向に沿って往路と復路において前記記録ヘッドと記録媒体との相対位置を変化させる主走査を行い、前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記記録ヘッドと前記記録媒体との相対位置を変化させる副走査を行う駆動部と、を備え、
前記記録媒体において前記カラーインク滴を吐出する各前記カラーノズル群の前記副走査方向における長さに対応した各バンド領域に割り当てられた前記カラーノズル群から前記往路と前記復路の両方において前記副走査間の1回の前記主走査で前記カラーインク滴を着弾させる双方向印刷を行う印刷方法であって、
前記複数のカラーノズル群は、前記双方向印刷において前記バンド領域に対して前記往路と前記復路とで吐出する前記カラーインク滴の色が互いに異なる第一カラーノズル群及び第二カラーノズル群を含み、
前記第一カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第一カラーインク滴とし、前記第二カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第二カラーインク滴として、
前記印刷方法は、
前記主走査方向における前記バンド領域内の位置に応じて生じる前記第一カラーインク滴と前記第二カラーインク滴との吐出のタイミング差の基準である基準タイミング差で所定記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより基準パッチを前記記録媒体に形成する基準パッチ形成工程と、
前記基準タイミング差とは異なる第一タイミング差で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより複数の第一パッチを前記記録媒体に形成する第一パッチ形成工程と、
前記複数の第一パッチから選択された第一の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比に基づいて、前記タイミング差による色ずれを補償して印刷画像を形成する印刷画像形成工程と、を含む、印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主走査及び副走査を行う印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアルプリンターは、主走査方向に沿って記録ヘッドを往復移動させる主走査を行いながら記録ヘッドから記録媒体にインク滴を吐出する印刷を行い、印刷が行われていない間に記録媒体を送り方向へ送る副走査を行う。送り方向は、記録ヘッドの相対移動方向である副走査方向とは逆の方向である。双方向印刷では、主走査時に往路と復路の両方において記録ヘッドから記録媒体にインク滴が吐出される。
【0003】
特許文献1には、イエロー用ノズル群、マゼンタ用ノズル群、及び、シアン用ノズル群が副走査方向へ1列に並べられたカラーノズル列を有する記録ヘッドである「縦配列ヘッド」が示されている。該縦配列ヘッドは、カラーノズル列に並行するブラックノズル列を有している。副走査方向において、カラーノズル列の各カラーノズル群の長さは、ブラックノズル列の長さの1/3である。縦配列ヘッドは、ノズル列が2列で済むため、安価に形成され、カラーノズル群の3倍の長さのブラックノズル列を使用することにより高速のモノクロ印刷を実現させることができる。
上述した縦配列ヘッドを備えるシリアルプリンターは、カラー印刷時に高速の双方向バンド印刷を行う際、各カラーノズル群の長さに対応した複数のバンド領域の内、シアン及びイエローのインク滴を往路で吐出するバンド領域にはマゼンタのインク滴を復路で吐出する。また、マゼンタのインク滴を復路で吐出するバンド領域にはシアン及びイエローのインク滴を往路で吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したバンド領域に形成される印刷画像は主走査方向における位置に応じて発色が異なることが判った。そこで、縦配列ヘッドにおいてカラー双方向印刷時に主走査方向における位置に応じて発色が異なるという色むらの対策が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、ブラックインク滴を吐出する複数のブラックノズルが並べられたブラックノズル列、及び、カラーインク滴を吐出する複数のカラーノズルが前記ブラックノズル列に沿って並べられた複数のカラーノズル群を有する記録ヘッドを備え、前記複数のブラックノズルの並び方向において前記複数のカラーノズル群が順番に並べられた印刷装置であって、
前記並び方向と交差する主走査方向に沿って往路と復路において前記記録ヘッドと記録媒体との相対位置を変化させる主走査を行い、前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記記録ヘッドと前記記録媒体との相対位置を変化させる副走査を行う駆動部と、
前記記録媒体において前記カラーインク滴を吐出する各前記カラーノズル群の前記副走査方向における長さに対応した各バンド領域に割り当てられた前記カラーノズル群から前記往路と前記復路の両方において前記副走査間の1回の前記主走査で前記カラーインク滴を着弾させる双方向印刷を制御する制御部と、を備え、
前記複数のカラーノズル群は、前記双方向印刷において前記バンド領域に対して前記往路と前記復路とで吐出する前記カラーインク滴の色が互いに異なる第一カラーノズル群及び第二カラーノズル群を含み、
前記第一カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第一カラーインク滴とし、前記第二カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第二カラーインク滴として、
前記制御部は、前記主走査方向における前記バンド領域内の位置に応じて生じる前記第一カラーインク滴と前記第二カラーインク滴との吐出のタイミング差による色ずれを補償する補償部を含み、
前記補償部は、
前記タイミング差の基準である基準タイミング差で所定記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより基準パッチを前記記録媒体に形成させ、
前記基準タイミング差とは異なる第一タイミング差で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより複数の第一パッチを前記記録媒体に形成させ、
前記複数の第一パッチから選択された第一の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比に基づいて、前記タイミング差による色ずれを補償して印刷画像を形成させる、態様を有する。
【0007】
また、本発明の印刷方法は、
ブラックインク滴を吐出する複数のブラックノズルが並べられたブラックノズル列、及び、カラーインク滴を吐出する複数のカラーノズルが前記ブラックノズル列に沿って並べられた複数のカラーノズル群であって前記複数のブラックノズルの並び方向において順番に並べられた前記複数のカラーノズル群を有する記録ヘッドと、
前記並び方向と交差する主走査方向に沿って往路と復路において前記記録ヘッドと記録媒体との相対位置を変化させる主走査を行い、前記主走査方向と交差する副走査方向に沿って前記記録ヘッドと前記記録媒体との相対位置を変化させる副走査を行う駆動部と、を備え、
前記記録媒体において前記カラーインク滴を吐出する各前記カラーノズル群の前記副走査方向における長さに対応した各バンド領域に割り当てられた前記カラーノズル群から前記往路と前記復路の両方において前記副走査間の1回の前記主走査で前記カラーインク滴を着弾させる双方向印刷を行う印刷方法であって、
前記複数のカラーノズル群は、前記双方向印刷において前記バンド領域に対して前記往路と前記復路とで吐出する前記カラーインク滴の色が互いに異なる第一カラーノズル群及び第二カラーノズル群を含み、
前記第一カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第一カラーインク滴とし、前記第二カラーノズル群が吐出する前記カラーインク滴を第二カラーインク滴として、
前記印刷方法は、
前記主走査方向における前記バンド領域内の位置に応じて生じる前記第一カラーインク滴と前記第二カラーインク滴との吐出のタイミング差の基準である基準タイミング差で所定記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより基準パッチを前記記録媒体に形成する基準パッチ形成工程と、
前記基準タイミング差とは異なる第一タイミング差で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴及び前記第二カラーインク滴を吐出させることにより複数の第一パッチを前記記録媒体に形成する第一パッチ形成工程と、
前記複数の第一パッチから選択された第一の色ずれ補償用パッチに対応する記録濃度比に基づいて、前記タイミング差による色ずれを補償して印刷画像を形成する印刷画像形成工程と、を含む、態様を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】記録ヘッドのノズル面と記録媒体上のドットパターンの例を模式的に示す図。
【
図3】カラーの双方向バンド印刷の例を模式的に説明するための平面図。
【
図4】基準パッチ、第一パッチ、及び、第二パッチを含む調整パターンの例を模式的に示す図。
【
図5】シアンとマゼンタの混色調整パターンに含まれる各パッチの形成条件の例を模式的に示す図。
【
図6】マゼンタとイエローの混色調整パターンに含まれる各パッチの形成条件の例を模式的に示す図。
【
図7】インク滴吐出のタイミング差Tiに応じた補正値を算出する例を模式的に示す図。
【
図8】補正データとしての色変換LUTを生成する例を模式的に示す図。
【
図9】補正データとしてのドット発生LUTを生成する例を模式的に示す図。
【
図10】補正データ生成処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図11】印刷制御処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図12】カラーの双方向バンド印刷により印刷画像を形成する例を模式的に示す図。
【
図13】色変換LUTを使用した色ずれ補償処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図14】ドット発生LUTを使用した色ずれ補償処理の例を模式的に示すフローチャート。
【
図15】記録媒体の種類に応じて補正データを生成するか否かを切り替える例を模式的に示すフローチャート。
【
図16】インク滴吐出のタイミング差Tに応じて色ずれが生じる例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0010】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~16に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。「本発明に含まれる技術の概要」において、括弧内は直前の語の補足説明を意味する。
【0011】
[態様1]
本技術の一態様に係る印刷装置1は、
図2に例示するように、ブラックインク滴37Kを吐出する複数のブラックノズル34Kが並べられたブラックノズル列33K、及び、カラーインク滴37Aを吐出する複数のカラーノズル34Aが前記ブラックノズル列33Kに沿って並べられた複数のカラーノズル群33Gを有する記録ヘッド30を備える。前記複数のカラーノズル群33Gは、前記複数のブラックノズル34Kの並び方向D4において順番に並べられている。本印刷装置1は、
図1に例示するように、駆動部50、及び、制御部U1を備える。前記駆動部50は、
図3に例示するように、前記並び方向D4と交差する主走査方向D1に沿って往路P1と復路P2において前記記録ヘッド30と記録媒体ME0との相対位置を変化させる主走査P0を行い、前記主走査方向D1と交差する副走査方向D2に沿って前記記録ヘッド30と前記記録媒体ME0との相対位置を変化させる副走査を行う。前記制御部U1は、前記記録媒体ME0において前記カラーインク滴37Aを吐出する各前記カラーノズル群33Gの前記副走査方向D2における長さL0に対応した各バンド領域B0に割り当てられた前記カラーノズル群33Gから前記往路P1と前記復路P2の両方において前記副走査間の1回の前記主走査P0で前記カラーインク滴37Aを着弾させる双方向印刷を制御する。前記複数のカラーノズル群33Gは、前記双方向印刷において前記バンド領域B0に対して前記往路P1と前記復路P2とで吐出する前記カラーインク滴37Aの色が互いに異なる第一カラーノズル群331及び第二カラーノズル群332を含んでいる。
【0012】
ここで、
図5,6に例示するように、前記第一カラーノズル群331が吐出する前記カラーインク滴37Aを第一カラーインク滴371とし、前記第二カラーノズル群332が吐出する前記カラーインク滴37Aを第二カラーインク滴372とする。前記制御部U1は、前記主走査方向D1における前記バンド領域B0内の位置Xに応じて生じる前記第一カラーインク滴371と前記第二カラーインク滴372との吐出のタイミング差Tによる色ずれを補償する補償部U2(
図1参照)を含んでいる。前記補償部U2は、
図4,10,11等に例示するように、以下の処理を行う。
(処理1)前記補償部U2は、前記タイミング差Tの基準である基準タイミング差T0で所定記録濃度比の前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372を吐出させることにより基準パッチPA0を前記記録媒体ME0に形成させる。
(処理2)前記補償部U2は、前記基準タイミング差T0とは異なる第一タイミング差T1で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第一パッチPA1を前記記録媒体ME0に形成させる。
(処理3)前記補償部U2は、前記複数の第一パッチPA1から選択された第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1に基づいて、前記タイミング差Tによる色ずれを補償して印刷画像IM0を形成させる。
【0013】
基準パッチPA0は、第一カラーインク滴371と第二カラーインク滴372との吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0である場合の印刷色を示している。複数の第一パッチPA1は、インク滴吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0とは異なる場合の補正色の候補を示している。複数の第一パッチPA1から第一の色ずれ補償用パッチPA1zが選択されると、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1に基づいて、前記タイミング差Tによる色ずれが補償される。
以上より、上記態様は、縦配列ヘッドに起因する色むらを低減可能な印刷装置を提供することができる。
【0014】
ここで、記録ヘッドと記録媒体との相対位置を変化させることは、記録ヘッドと記録媒体との相対的な位置関係を変化させることを意味する。記録ヘッドと記録媒体との相対位置を変化させることには、記録媒体を移動させないで記録ヘッドを移動させること、記録ヘッドを移動させないで記録媒体を移動させること、及び、記録ヘッドと記録媒体の両方を移動させることが含まれる。
本願における「第一」、「第二」、…は、類似点を有する複数の構成要素に含まれる各構成要素を識別するための用語であり、順番を意味しない。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様2]
図5,6に例示するように、前記第一タイミング差T1は、前記基準タイミング差T0よりも大きくてもよい。前記補償部U2は、前記基準タイミング差T0よりも小さい第二タイミング差T2で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第二パッチPA2を前記記録媒体ME0に形成させてもよい。当該補償部U2は、
図7,10,11等に例示するように、前記第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1と、前記複数の第二パッチPA2から選択された第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2と、に基づいて、前記タイミング差Tによる色ずれを補償して前記印刷画像IM0を形成させてもよい。
【0016】
複数の第一パッチPA1は、インク滴吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0よりも大きい場合の補正色の候補を示している。複数の第二パッチPA2は、インク滴吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0よりも小さい場合の補正色の候補を示している。複数の第一パッチPA1から第一の色ずれ補償用パッチPA1zが選択され、複数の第二パッチPA2から第二の色ずれ補償用パッチPA2zが選択されると、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1と、第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2と、に基づいて、前記タイミング差Tによる色ずれが補償される。
以上より、上記態様は、縦配列ヘッドに起因する色むらをさらに低減可能な印刷装置を提供することができる。
【0017】
[態様3]
図4に例示するように、前記補償部U2は、前記基準パッチPA0として、前記第一パッチPA1同士の間に配置された第一基準パッチPA01、及び、前記第二パッチPA2同士の間に配置された第二基準パッチPA02を前記記録媒体ME0に形成させてもよい。
以上の場合、第一パッチPA1同士の間に第一基準パッチPA01が配置されているので複数の第一パッチPA1から第一の色ずれ補償用パッチPA1zを容易に選択することができ、第二パッチPA2同士の間に第二基準パッチPA02が配置されているので複数の第二パッチPA2から第二の色ずれ補償用パッチPA2zを容易に選択することができる。従って、上記態様は、縦配列ヘッドに起因する色むらを容易に低減可能な印刷装置を提供することができる。
【0018】
[態様4]
図4に例示するように、前記補償部U2は、前記記録媒体ME0に前記基準パッチPA0を形成させる前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372の吐出を前記往路P1と前記復路P2のいずれか一方に揃える制御を行ってもよい。
以上により、インク滴吐出の基準タイミング差T0における印刷色を示す基準パッチPA0が精度よく形成される。従って、上記態様は、基準パッチを形成する好ましい例を提供することができる。
【0019】
[態様5]
図4に例示するように、前記補償部U2は、前記記録媒体ME0に前記複数の第一パッチPA1及び前記複数の第二パッチPA2を形成させる前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372の吐出を前記往路P1と前記復路P2のいずれか一方に揃える制御を行ってもよい。
以上により、基準タイミング差T0よりも大きい第一タイミング差T1における補正色の候補を示す複数の第一パッチPA1が精度よく形成され、基準タイミング差T0よりも小さい第二タイミング差T2における補正色の候補を示す複数の第二パッチPA2が精度よく形成される。従って、上記態様は、複数の第一パッチと複数の第二パッチを形成する好ましい例を提供することができる。
【0020】
[態様6]
図5,6に例示するように、前記第一タイミング差T1は、前記双方向印刷において前記タイミング差Tの最大Tmaxでもよい。前記第二タイミング差T2は、前記双方向印刷において前記タイミング差Tの最小Tminでもよい。
以上の場合、複数の第一パッチPA1は、インク滴吐出のタイミング差Tが最大Tmaxである場合の補正色の候補を示している。複数の第二パッチPA2は、インク滴吐出のタイミング差Tが最小Tminである場合の補正色の候補を示している。従って、上記態様は、縦配列ヘッドに起因する色むらをさらに低減可能な印刷装置を提供することができる。
【0021】
[態様7]
図15に例示するように、前記記録媒体ME0は、第一記録媒体ME1、及び、該第一記録媒体ME1よりも前記タイミング差Tによる色ずれが少ない第二記録媒体ME2を含んでいてもよい。前記制御部U1は、前記印刷画像IM0を形成させる前記記録媒体ME0の種類の設定を受け付けてもよい。当該制御部U1は、前記種類が前記第一記録媒体ME1に相当する場合、前記補償部U2において前記タイミング差Tによる色ずれを補償して前記印刷画像IM0を形成させてもよい。当該制御部U1は、前記種類が前記第二記録媒体ME2に相当する場合、前記タイミング差Tによる色ずれを補償する処理を行わなくてもよい。
以上の場合、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが少ない場合は色ずれを補償する処理を行わなくてもよいので、上記態様は、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0022】
[態様8]
前記補償部U2は、前記基準パッチPA0、及び、前記複数の第一パッチPA1の読取結果SC0を取得し、該読取結果SC0に基づいて、前記複数の第一パッチPA1から前記第一の色ずれ補償用パッチPA1zを選択してもよい。本態様は、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれを補償するための色ずれ補償用パッチが自動的に選択されるので、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0023】
[態様9]
ところで、
図10,11等に例示するように、本技術の一態様に係る印刷方法は、以下の工程を含む。
(A1)前記主走査方向D1における前記バンド領域B0内の位置Xに応じて生じる前記第一カラーインク滴371と前記第二カラーインク滴372との吐出のタイミング差Tの基準である基準タイミング差T0で所定記録濃度比の前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372を吐出させることにより基準パッチPA0を前記記録媒体ME0に形成する基準パッチ形成工程ST1。
(A2)前記基準タイミング差T0とは異なる第一タイミング差T1で複数の異なる記録濃度比の前記第一カラーインク滴371及び前記第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第一パッチPA1を前記記録媒体ME0に形成する第一パッチ形成工程ST2。
(A3)前記複数の第一パッチPA1から選択された第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1に基づいて、前記タイミング差Tによる色ずれを補償して印刷画像IM0を形成する印刷画像形成工程ST4。
上記態様は、縦配列ヘッドに起因する色むらを低減可能な印刷方法を提供することができる。
【0024】
さらに、本技術は、上述した印刷装置を含む印刷システム、該印刷システムの制御方法、上述した印刷装置の制御プログラム、前述の印刷システムの制御プログラム、前述のいずれかの制御プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な媒体、等に適用可能である。また、上述した印刷装置は、分散した複数の部分で構成されてもよい。
【0025】
(2)印刷装置の具体例:
図1は、印刷装置1を模式的に例示している。印刷装置1は、補償部U2を含む制御部U1を内在している。本具体例の印刷装置1はプリンター2自体であるものとするが、印刷装置1はプリンター2とホスト装置HO1との組合せでもよい。尚、プリンター2は
図1に示されていない追加要素を含んでいてもよい。
図2は、記録ヘッド30のノズル面30aと記録媒体ME0上のドットパターンを模式的に例示している。
図3は、カラーの双方向バンド印刷を模式的に例示する平面図である。
【0026】
図1に示すプリンター2は、インクジェットプリンターの一種であるシリアルプリンターであり、コントローラー10、半導体メモリーであるRAM21、通信I/F22、記憶部23、操作パネル24、記録ヘッド30、駆動部50、等を備える。ここで、RAMはRandom Access Memoryの略称であり、I/Fはインターフェイスの略称である。プリンター2は、
図4に示す調整パターンCH0等といった画像を読み取る読取部60を備えていてもよい。
図1に示す読取部60は、コントローラー10に接続され、画像の読取結果SC0をコントローラー10に出力する。また、プリンター2は、パッチを測色する測色器を備えていてもよい。
コントローラー10、RAM21、通信I/F22、記憶部23、及び、操作パネル24は、バスに接続され、互いに情報を入出力可能とされている。
【0027】
コントローラー10は、プロセッサーであるCPU11、色変換部12、ハーフトーン処理部13、ラスタライズ処理部14、駆動信号送信部15、等を備える。ここで、CPUは、Central Processing Unitの略称である。コントローラー10は、ホスト装置HO1、不図示のメモリーカード、等のいずれかから取得した元画像データDA1に基づいて、駆動部50による主走査及び副走査、並びに、記録ヘッド30によるインク滴37の吐出を制御する。元画像データDA1は、インク量データDA2に変換することが可能な画像データであればよく、例えば、各画素にR、G、及び、Bの28階調や216階調の整数値を有するRGBデータを適用することができる。ここで、Rは赤を意味し、Gは緑を意味し、Bは青を意味する。また、コントローラー10は、ホスト装置HO1、操作パネル24、等のいずれかから印刷モードの設定を受け付け、設定された印刷モードに従って、駆動部50による主走査及び副走査、並びに、記録ヘッド30によるインク滴37の吐出を制御する。印刷モードには、カラー印刷を行うモード、モノクロ印刷を行うモード、双方向印刷を行うモード、単方向印刷を行うモード、バンド印刷を行うモード、インターレース印刷を行うモード、等が含まれる。
コントローラー10は、SoC等により構成することができる。ここで、SoCは、System on a Chipの略称である。
CPU11は、プリンター2における情報処理や制御を中心的に行う装置である。
【0028】
色変換部12は、例えば、R、G、及び、Bの階調値とC、M、Y、及び、Kの各階調値との対応関係が規定された色変換LUTを参照し、RGBデータを各画素にC、M、Y、及び、Kの28階調や216階調の整数値を有するインク量データDA2に変換する。ここで、Cはシアンを意味し、Mはマゼンタを意味し、Yはイエローを意味し、Kはブラックを意味し、LUTはルックアップテーブルの略称である。インク量データDA2は、画素PX0の単位でインク36の使用量を表している。また、RGBデータの解像度が出力解像度とは異なる場合、色変換部12は、RGBデータの解像度を出力解像度に変換し、変換されたRGBデータをインク量データDA2に変換する。色変換部12は、最終的に出力解像度のインク量データDA2をRGBデータから生成することができればよいため、先にRGBデータの解像度のインク量データをRGBデータから生成してから、インク量データの解像度を出力解像度に変換することによりインク量データDA2を生成してもよい。
【0029】
ハーフトーン処理部13は、インク量データDA2を構成する各画素PX0の階調値に対して例えばディザ法や誤差拡散法や濃度パターン法といった所定のハーフトーン処理を行うことにより前記階調値の階調数を減らし、ハーフトーンデータDA3を生成する。ハーフトーンデータDA3は、画素PX0の単位でドット38の形成状態を表している。ハーフトーンデータDA3は、ドットの形成有無を表す2値データでもよいし、小中大の各ドットといった異なるサイズのドットに対応可能な3階調以上の多値データでもよい。2値データは、例えば、ドット形成に1、及び、ドット無しに0を対応させるデータとすることができる。各画素について2ビットで表現可能な4値データとしては、例えば、大ドット形成に3、中ドット形成に2、小ドット形成に1、及び、ドット無しに0を対応させるデータとすることができる。
ラスタライズ処理部14は、駆動部50でドット38が形成される順番にハーフトーンデータDA3を並べ換えるラスタライズ処理を行うことによりラスターデータRA0を生成する。
【0030】
駆動信号送信部15は、記録ヘッド30の駆動回路31に対して、記録ヘッド30の駆動素子32に印加する電圧信号に対応した駆動信号SG1をラスターデータRA0から生成して出力する。例えば、ラスターデータRA0が「ドット形成」であれば、駆動信号送信部15はドット形成用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力する。また、ラスターデータRA0が4値データである場合、駆動信号送信部15は、ラスターデータRA0が「大ドット形成」であれば大ドット用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力し、ラスターデータRA0が「中ドット形成」であれば中ドット用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力し、ラスターデータRA0が「小ドット形成」であれば小ドット用のインク滴を吐出させる駆動信号SG1を出力する。
【0031】
上記各部11~15は、ASICで構成されてもよく、RAM21から処理対象のデータを直接読み込んだりRAM21に処理後のデータを直接書き込んだりしてもよい。ここで、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
【0032】
コントローラー10に制御される駆動部50は、キャリッジ駆動部51とローラー駆動部55を備える。駆動部50は、キャリッジ駆動部51の駆動によりキャリッジ52を主走査方向D1に沿って往復動作させ、ローラー駆動部55の駆動により記録媒体ME0を搬送経路59に沿って送り方向D3へ送る。
図2に示すように、主走査方向D1は、ノズル34の並び方向D4と交差する方向であり、例えば、並び方向D4に直交する方向である。送り方向D3は、主走査方向D1と交差する方向であり、例えば、主走査方向D1に直交する方向である。
図1において、送り方向D3は右方向であり、左側を上流側と呼び、右側を下流側と呼ぶことにする。
図3に示す副走査方向D2は、送り方向D3とは逆の方向である。キャリッジ駆動部51は、コントローラー10の制御に従って、
図3に示すように、主走査P0の往路P1においてキャリッジ52を主走査方向D1に沿った往方向D11へ移動させ、主走査P0の復路P2においてキャリッジ52を往方向D11とは反対の復方向D12へ移動させる。尚、主走査方向D1は、往方向D11と復方向D12を総称している。キャリッジ駆動部51は、ブラックノズル34Kの並び方向D4と交差する主走査方向D1に沿って往路P1と復路P2において記録ヘッド30と記録媒体ME0との相対位置を変化させる主走査P0を行うといえる。ローラー駆動部55は、搬送ローラー対56と排紙ローラー対57を含んでいる。ローラー駆動部55は、コントローラー10の制御に従って、搬送ローラー対56の駆動搬送ローラーと排紙ローラー対57の駆動排紙ローラーを回転させることにより記録媒体ME0を送り方向D3へ送る副走査を行う。ローラー駆動部55は、主走査方向D1と交差する副走査方向D2に沿って記録ヘッド30と記録媒体ME0との相対位置を変化させる副走査を行うといえる。記録媒体ME0は、印刷画像を保持する素材のことであり、紙、樹脂、金属、等で形成される。記録媒体ME0の材質は、特に限定されず、樹脂、金属、紙、等、様々な材質が考えられる。記録媒体ME0の形状も、特に限定されず、長方形、ロール状、等、様々な形状が考えられ、立体形状でもよい。
【0033】
キャリッジ52には、記録ヘッド30が搭載されている。キャリッジ52には、インク滴37として吐出されるインク36が記録ヘッド30に供給されるインクカートリッジ35が搭載されてもよい。むろん、キャリッジ52外に設置されたインクカートリッジ35からチューブを介して記録ヘッド30にインク36が供給されてもよい。記録ヘッド30が設けられているキャリッジ52は、図示しない無端ベルトに固定され、ガイド53に沿って、往方向D11及び復方向D12へ移動可能である。ガイド53は、長手方向を主走査方向D1に向けた長尺な部材である。キャリッジ駆動部51は、サーボモーターで構成され、コントローラー10からの指令に従ってキャリッジ52を往方向D11及び復方向D12へ移動させる。
【0034】
記録ヘッド30から上流側にある搬送ローラー対56は、副走査時、ニップしている記録媒体ME0を駆動搬送ローラーの回転により記録ヘッド30の方へ送る。記録ヘッド30から下流側にある排紙ローラー対57は、副走査時、ニップしている記録媒体ME0を駆動排紙ローラーの回転により不図示の排紙トレイの方へ搬送する。ローラー駆動部55は、サーボモーターで構成され、コントローラー10からの指令に従って搬送ローラー対56と排紙ローラー対57を動作させ、記録媒体ME0を送り方向D3へ送る。
【0035】
プラテン58は、搬送経路59の下側にあり、搬送経路59にある記録媒体ME0に接することにより記録媒体ME0を支持する。コントローラー10に制御される記録ヘッド30は、プラテン58に支持されている記録媒体ME0に向けてインク滴37を吐出することにより記録媒体ME0にインク36を付着させる。
【0036】
記録ヘッド30は、インク滴37を吐出する複数のノズル34をノズル面30aに有し、プラテン58上の記録媒体ME0にインク滴37を吐出することにより印刷を行う。ここで、ノズルはインク滴が噴射する小孔を意味し、ノズル列は複数のノズルの並びを意味する。ノズル面30aは、インク滴37の吐出面である。記録ヘッド30は、駆動回路31、駆動素子32、等を備える。駆動回路31は、駆動信号送信部15から入力される駆動信号SG1に従って駆動素子32に電圧信号を印加する。駆動素子32には、ノズル34に連通する圧力室内のインク36に圧力を加える圧電素子、熱により圧力室内に気泡を発生させてノズル34からインク滴37を吐出させる駆動素子、等を用いることができる。記録ヘッド30の圧力室には、インクカートリッジ35からインク36が供給される。圧力室内のインク36は、駆動素子32によってノズル34から記録媒体ME0に向かってインク滴37として吐出される。これにより、記録媒体ME0にインク滴37のドット38が形成される。記録ヘッド30が主走査方向D1へ移動する間にラスターデータRA0に従ったドット38が形成され、記録媒体ME0が送り方向D3へ副走査1回分、送られることが繰り返されることにより、記録媒体ME0に印刷画像IM0が形成される。
【0037】
RAM21は、大容量で揮発性の半導体メモリーであり、ホスト装置HO1や不図示のメモリー等から受け入れた元画像データDA1等を格納する。通信I/F22は、ホスト装置HO1に有線又は無線で接続され、ホスト装置HO1に対して情報を入出力する。ホスト装置HO1には、パーソナルコンピューターやタブレット端末といったコンピューター、スマートフォンといった携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、等が含まれる。記憶部23には、フラッシュメモリーといった不揮発性半導体メモリー、ハードディスクといった磁気記憶装置、等を用いることができる。操作パネル24は、出力部25、入力部26、等を備えている。出力部25は、例えば、各種の指示に応じた情報やプリンター2の状態を示す情報を表示する液晶パネルといった表示部で構成される。出力部25は、これらの情報を音声出力してもよい。入力部26は、例えば、カーソルキーや決定キーといった操作キーといった操作入力部で構成される。入力部26は、表示画面への操作を受け付けるタッチパネル等でもよい。
【0038】
図2に示す記録ヘッド30は、並び方向D4へ所定のノズルピッチの間隔で並んでいる複数のノズル34を含むノズル列33を複数、ノズル面30aに有している。各ノズル列33は、インク滴37を記録媒体ME0に向けて吐出する。
図2,3に示す並び方向D4は主走査方向D1に直交しているが、並び方向D4は主走査方向D1に直交せず斜めに交差していてもよい。言い換えると、並び方向D4は、
図3に示すように送り方向D3と一致していてもよいし、送り方向D3から90°未満の範囲でずれていてもよい。各ノズル列33に含まれる複数のノズル34は、一列に並べられてもよいし、千鳥状すなわち2列に並べられてもよい。尚、千鳥状に並べられた複数のノズル34の並び方向は、2列の各列に着目したノズルの並びの方向とする。
【0039】
図2に示す記録ヘッド30は、縦配列ヘッドであり、ブラックノズル列33Kとカラーノズル列33Aとで構成される2列のノズル列33を有している。ブラックノズル列33Kには、複数のブラックノズル34Kが並び方向D4へ並べられている。各ブラックノズル34Kは、Kのインク滴37であるブラックインク滴37Kを吐出する。ブラックインク滴37Kが記録媒体ME0に着弾すると、Kのドット38であるブラックドット38Kが記録媒体ME0に形成される。カラーノズル列33Aは、並び方向D4において複数のカラーノズル群33Gに分けられている。各カラーノズル群33Gには、複数のカラーノズル34Aがブラックノズル列33Kに沿って並べられている。各カラーノズル34Aは、カラーのインク滴37であるカラーインク滴37Aを吐出する。
図2に示すカラーノズル列33Aには、副走査方向D2の順に、イエローノズル群33Y、マゼンタノズル群33M、及び、シアンノズル群33Cが配置されている。従って、複数のカラーノズル群33Gは、複数のブラックノズル34Kの並び方向D4において順番に並べられている。
【0040】
イエローノズル群33Yには、Yのインク滴37であるイエローインク滴37Yを吐出する複数のイエローノズル34Yがブラックノズル列33Kに沿って並べられている。イエローインク滴37Yが記録媒体ME0に着弾すると、Yのドット38であるイエロードット38Yが記録媒体ME0に形成される。マゼンタノズル群33Mには、Mのインク滴37であるマゼンタインク滴37Mを吐出する複数のマゼンタノズル34Mがブラックノズル列33Kに沿って並べられている。マゼンタインク滴37Mが記録媒体ME0に着弾すると、Mのドット38であるマゼンタドット38Mが記録媒体ME0に形成される。シアンノズル群33Cには、Cのインク滴37であるシアンインク滴37Cを吐出する複数のシアンノズル34Cがブラックノズル列33Kに沿って並べられている。シアンインク滴37Cが記録媒体ME0に着弾すると、Cのドット38であるシアンドット38Cが記録媒体ME0に形成される。
尚、
図2には、複数のイエローノズル34Yの並びに複数のマゼンタノズル34Mの並びが繋がり、複数のマゼンタノズル34Mの並びに複数のシアンノズル34Cの並びが繋がっているが、複数のカラーノズル群33Gの配置は
図2に示す配置に限定されない。各カラーノズル群33Gの複数のカラーノズル34Aがブラックノズル列33Kに沿って並べられている限り、複数のマゼンタノズル34Mの並びが複数のイエローノズル34Yの並びからずれていたり、複数のシアンノズル34Cの並びが複数のマゼンタノズル34Mの並びからずれていたりしてもよい。
【0041】
図2に示すカラーノズル列33Aには、各カラーノズル群33Gのノズル数をnとして、イエローノズルY1~Yn、マゼンタノズルM1~Mn、及び、シアンノズルC1~Cnが副走査方向D2の順に並べられていることが示されている。
図2に示すブラックノズル列33Kのノズル数は3nであり、ブラックノズル列33KにはブラックノズルK1~K3nが副走査方向D2の順に並べられていることが示されている。
縦配列ヘッドである記録ヘッド30は、ノズル列33が2列で済むため、安価に形成され、カラーノズル群33Gの3倍の長さのブラックノズル列33Kを使用することにより高速のモノクロ印刷を実現させることができる。
【0042】
上述した記録ヘッド30を備えるプリンター2は、
図3に示すように、カラーの双方向バンド印刷を行うことが可能である。尚、双方向印刷は、往路P1と復路P2の両方において主走査P0でインク滴37を記録媒体ME0に着弾させドット38を形成する印刷を意味する。往路P1は、
図3において、「Home」側から「Full」側に向かう主走査P0を意味する。復路P2は、
図3において、「Full」側から「Home」側に向かう主走査P0を意味する。縦配列ヘッドのカラーのバンド印刷は、記録媒体ME0において各カラーノズル群33Gの副走査方向D2における長さL0に対応した各バンド領域B0に割り当てられたカラーノズル群33Gから副走査間の1回の主走査P0で印刷に必要なカラーインク滴37Aを着弾させカラードットを形成する印刷を意味する。コントローラー10は、各バンド領域B0に割り当てられたカラーノズル群33Gから往路P1と復路P2の両方において副走査間の1回の主走査P0で印刷に必要なカラーインク滴37Aを着弾させる双方向印刷を制御する。
【0043】
図3に示すように、バンド領域B0として副走査方向D2の順にバンド領域B1,B2,B3,B4があり、シアンインク滴37Cとマゼンタインク滴37Mのドット38で印刷画像IM0が形成されるものとする。
図3に示す例では、m回目の主走査P0である往路P1において、バンド領域B1に印刷に必要な全てのシアンインク滴37Cが吐出される。この動作は、
図3に「C(m)」と示されている。長さL0の副走査後、m+1回目の主走査P0である復路P2において、バンド領域B1に印刷に必要な全てのマゼンタインク滴37Mが吐出され、バンド領域B2に印刷に必要な全てのシアンインク滴37Cが吐出される。この動作は、
図3に「M(m+1)」及び「C(m+1)」と示されている。長さL0の副走査後、m+2回目の主走査P0である往路P1において、バンド領域B2に印刷に必要な全てのマゼンタインク滴37Mが吐出され、バンド領域B3に印刷に必要な全てのシアンインク滴37Cが吐出される。この動作は、
図3に「M(m+2)」及び「C(m+2)」と示されている。長さL0の副走査後、m+3回目の主走査P0である復路P2において、バンド領域B3に印刷に必要な全てのマゼンタインク滴37Mが吐出され、バンド領域B4に印刷に必要な全てのシアンインク滴37Cが吐出される。この動作は、
図3に「M(m+3)」及び「C(m+3)」と示されている。尚、長さL0の副走査後、m+4回目の主走査P0である往路P1において、バンド領域B4に印刷に必要な全てのマゼンタインク滴37Mが吐出される。この動作は、
図3に「M(m+4)」と示されている。
【0044】
以上より、プリンター2は、カラーの双方向バンド印刷時、シアンインク滴37Cを往路P1で吐出するバンド領域B0にはマゼンタインク滴37Mを復路P2で吐出し、シアンインク滴37Cを復路P2で吐出するバンド領域B0にはマゼンタインク滴37Mを往路P1で吐出する。このことから、主走査方向D1におけるバンド領域B0内の位置に応じてシアンインク滴37Cとマゼンタインク滴37Mとに吐出のタイミング差が生じる。このタイミング差により、CとMの発色にむらが生じる。
同様に、プリンター2は、カラーの双方向バンド印刷時、マゼンタインク滴37Mを往路P1で吐出するバンド領域B0にはイエローインク滴37Yを復路P2で吐出し、マゼンタインク滴37Mを復路P2で吐出するバンド領域B0にはイエローインク滴37Yを往路P1で吐出する。このことから、主走査方向D1におけるバンド領域B0内の位置に応じてマゼンタインク滴37Mとイエローインク滴37Yとに吐出のタイミング差が生じる。このタイミング差により、MとYの発色にむらが生じる。
【0045】
CとMとYの混色時、シアンインク滴37Cとイエローインク滴37Yが往路P1で吐出されるバンド領域B0にはマゼンタインク滴37Mが復路P2で吐出される。また、シアンインク滴37Cとイエローインク滴37Yが復路P2で吐出されるバンド領域B0にはマゼンタインク滴37Mが往路P1で吐出される。従って、主走査方向D1におけるバンド領域B0内の位置に応じてシアンインク滴37C及びイエローインク滴37Yとマゼンタインク滴37Mとに吐出のタイミング差が生じる。このタイミング差により、C及びYとMとの発色にむらが生じる。
【0046】
以上説明したように、複数のカラーノズル群33Gは、双方向印刷においてバンド領域B0に対して往路P1と復路P2とで吐出するカラーインク滴37Aの色が互いに異なる第一カラーノズル群331及び第二カラーノズル群332を含んでいる。
図2に示す例では、シアンノズル群33Cが第一カラーノズル群331に当て嵌められ、マゼンタノズル群33Mが第二カラーノズル群332に当て嵌められている。ここで、第一カラーノズル群331が吐出するカラーインク滴37Aを第一カラーインク滴371とし、第二カラーノズル群332が吐出するカラーインク滴37Aを第二カラーインク滴372とする。
図2に示す例では、シアンインク滴37Cが第一カラーインク滴371に当て嵌められ、マゼンタインク滴37Mが第二カラーインク滴372に当て嵌められている。
むろん、第一カラーノズル群331、第二カラーノズル群332、第一カラーインク滴371、及び、第二カラーインク滴372は、相対的に決まる。例えば、マゼンタノズル群33Mが第一カラーノズル群331に当て嵌められ、イエローノズル群33Yが第二カラーノズル群332に当て嵌められ、マゼンタインク滴37Mが第一カラーインク滴371に当て嵌められ、イエローインク滴37Yが第二カラーインク滴372に当て嵌められてもよい。
【0047】
図16は、異なる色のカラーインク滴37A同士で生じる吐出のタイミング差Tに応じて色ずれが生じる様子を模式的に例示している。
図16に示す例では、バンド領域B1に往路P1でシアンノズル群33Cからシアンインク滴37Cが着弾して復路P2でマゼンタノズル群33Mからマゼンタインク滴37Mが着弾している。
図16の上部には、バンド領域B1において主走査方向D1における位置Xに対するカラーインク滴37Aの吐出のタイミング差Tが示されている。また、バンド領域B2には、復路P2でシアンノズル群33Cからシアンインク滴37Cが着弾して往路P1でマゼンタノズル群33Mからマゼンタインク滴37Mが着弾している。
図16の下部には、バンド領域B2において主走査方向D1における位置Xに対するカラーインク滴37Aの吐出のタイミング差Tが示されている。
【0048】
バンド領域B1の場合、シアンインク滴37Cとマゼンタインク滴37Mとの吐出のタイミング差Tは、
図16の上部に示すように、「Home」位置において最大のタイミング差Tmaxとなり、「Full」位置において最小のタイミング差Tminとなる。色むらの補正が行われない場合、バンド領域B1のMの発色は、「Full」位置から「Home」位置に向かうにつれて徐々に強くなる。これは、タイミング差Tが大きい「Home」位置では先に着弾したシアンインクが記録媒体ME0に染み込むことにより後から着弾したマゼンタインクの色が強く表れるためと推測される。別の見方をすると、タイミング差Tが小さい「Full」位置では先に着弾したシアンインクが記録媒体ME0の表面に多く残っていることにより後からマゼンタインクが着弾してもシアンインクの色が多く残るためと推測される。
バンド領域B2の場合、シアンインク滴37Cとマゼンタインク滴37Mとの吐出のタイミング差Tは、
図16の下部に示すように、「Home」位置において最小のタイミング差Tminとなり、「Full」位置において最大のタイミング差Tmaxとなる。色むらの補正が行われない場合、バンド領域B1のMの発色は、「Home」位置から「Full」位置に向かうにつれて徐々に強くなる。これは、タイミング差Tが大きい「Full」位置では先に着弾したシアンインクが記録媒体ME0に染み込むことにより後から着弾したマゼンタインクの色が強く表れるためと推測される。別の見方をすると、タイミング差Tが小さい「Home」位置では先に着弾したシアンインクが記録媒体ME0の表面に多く残っていることにより後からマゼンタインクが着弾してもシアンインクの色が多く残るためと推測される。
【0049】
本具体例では、縦配列ヘッドのノズル配置により双方向印刷において生じる色ずれを補償するため、
図4に例示する調整パターンCH0を記録媒体ME0に形成し、色ずれ補償用パッチの選択により色ずれを補償することにしている。制御部U1は、主走査方向D1におけるバンド領域B0内の位置Xに応じて生じる第一カラーインク滴371と第二カラーインク滴372との吐出のタイミング差Tによる色ずれを補償する補償部U2を含んでいる。調整パターンCH0の説明のため、
図16には、タイミング差Tの基準である基準タイミング差T0、基準タイミング差T0よりも大きい第一タイミング差T1、この第一タイミング差T1となる位置X1、基準タイミング差T0よりも小さい第二タイミング差T2、及び、この第二タイミング差T2となる位置X2が示されている。
【0050】
図4は、複数の基準パッチPA0、複数の第一パッチPA1、及び、複数の第二パッチPA2を含む調整パターンCH0を模式的に例示している。調整パターンCH0は、記録媒体ME0に形成される。
図4には、便宜上、調整パターンCH0がCとMの混色である場合にシアンノズル群33C及びマゼンタノズル群33Mの走査方向が矢印で示されている。
図5は、CとMの混色調整パターンに含まれる各パッチの形成条件を模式的に例示している。
コントローラー10は、基準タイミング差T0で所定記録濃度比の第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372を吐出させることにより基準パッチPA0を記録媒体ME0に形成させる。基準タイミング差T0は、例えば、
図16に示すように、最大のタイミング差Tmaxと最小のタイミング差Tminとの平均(Tmax+Tmin)/2とすることができる。この場合、基準タイミング差T0は、主走査方向D1において「Home」位置と「Full」位置との中間の位置におけるタイミング差Tでもある。第一カラーインク滴371と第二カラーインク滴372との所定記録濃度比は、例えば、等量比とすることができる。
図5に示す例では、シアンインク滴37Cが第一カラーインク滴371に当て嵌められ、マゼンタインク滴37Mが第二カラーインク滴372に当て嵌められ、シアンインク滴37Cの記録濃度が50%であり、マゼンタインク滴37Mの記録濃度が50%であることが示されている。ここで、記録濃度(RDとする。)は、所定数の画素PX0に対してインク滴により形成されるドットの数の比を意味し、大きさの異なるドットが形成される場合には最も大きいドット(例えば大ドット)に換算したときの比を意味する。画素は、色を独立に割り当てることができる、画像を構成する最小要素である。例えば、100個の画素PX0に対してNd個の大ドットが形成される場合、記録濃度RDはNd%となる。
【0051】
コントローラー10は、第一タイミング差T1で複数の異なる記録濃度比の第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第一パッチPA1を記録媒体ME0に形成させる。
図16に示す第一タイミング差T1は最大のタイミング差Tmaxであるが、第一タイミング差T1は基準タイミング差T0及び第二タイミング差T2とは異なるタイミング差であればよく、基準タイミング差T0よりも大きいタイミング差が好ましい。第一カラーインク滴371と第二カラーインク滴372との記録濃度比は、例えば、
図5に示す記録濃度比とすることができる。
図4,5に示す複数の第一パッチPA1は、第一パッチPA11~PA16を含んでいる。第一パッチPA11~PA16のCの記録濃度は、50%と一定であり、基準パッチPA0のCの記録濃度と同じである。第一パッチPA11,PA12,PA13,PA14,PA15,PA16のMの記録濃度は、それぞれ、50%、45%、40%、35%、30%、25%である。T1>T0である場合、通常、シアンインク滴37Cよりも後に吐出されるマゼンタインク滴37Mの発色が強くなり、第一パッチPA1は基準パッチPA0よりもMの発色が強くなる。そこで、各第一パッチPA1において、Mの記録濃度はCの記録濃度以下にしている。
【0052】
コントローラー10は、第二タイミング差T2で複数の異なる記録濃度比の第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第二パッチPA2を記録媒体ME0に形成させる。
図16に示す第二タイミング差T2は最小のタイミング差Tminであるが、第二タイミング差T2は基準タイミング差T0及び第一タイミング差T1とは異なるタイミング差であればよく、基準タイミング差T0よりも小さいタイミング差が好ましい。第一カラーインク滴371と第二カラーインク滴372との記録濃度比は、例えば、
図5に示す記録濃度比とすることができる。
図4,5に示す複数の第二パッチPA2は、第二パッチPA21~PA26を含んでいる。第二パッチPA21~PA26のCの記録濃度は、50%と一定であり、基準パッチPA0のCの記録濃度と同じである。第二パッチPA21,PA22,PA23,PA24,PA25,PA26のMの記録濃度は、それぞれ、75%、70%、65%、60%、55%、50%である。T2<T0である場合、通常、第二パッチPA2は基準パッチPA0よりもMの発色が弱くなる。そこで、各第二パッチPA2において、Mの記録濃度はCの記録濃度以上にしている。
【0053】
図4に示す調整パターンCH0は、第一パッチPA11~PA16と複数の基準パッチPA0が主走査方向D1に沿って一列に並べられた調整パターンCH1、及び、第二パッチPA21~PA26と複数の基準パッチPA0が主走査方向D1に沿って一列に並べられた調整パターンCH2を含んでいる。複数の基準パッチPA0は、調整パターンCH1に含まれる複数の第一基準パッチPA01、及び、調整パターンCH2に含まれる複数の第二基準パッチPA02を含んでいる。調整パターンCH1では、第一パッチPA11~PA16が順に並べられ、第一パッチPA1同士の間にそれぞれ第一基準パッチPA01が配置されている。調整パターンCH2では、第二パッチPA21~PA26が順に並べられ、第二パッチPA2同士の間にそれぞれ第二基準パッチPA02が配置されている。コントローラー10は、
図4に示すパッチ配置の調整パターンCH0を記録媒体ME0に形成させる。
【0054】
タイミング差Tによる色ずれを補償するため、第一パッチPA11~PA16から第一の色ずれ補償用パッチPA1zが選択され、第二パッチPA21~PA26から第二の色ずれ補償用パッチPA2zが選択される。第一の色ずれ補償用パッチPA1z及び第二の色ずれ補償用パッチPA2zの選択は、ユーザーが行ってもよいし、プリンター2が行ってもよい。第一パッチPA1同士の間に第一基準パッチPA01が配置されているので、複数の第一パッチPA1から第一の色ずれ補償用パッチPA1zを容易に選択することができる。また、第二パッチPA2同士の間に第二基準パッチPA02が配置されているので、複数の第二パッチPA2から第二の色ずれ補償用パッチPA2zを容易に選択することができる。
図4では、第一パッチPA13が第一の色ずれ補償用パッチPA1zとして選択され、第二パッチPA24が第二の色ずれ補償用パッチPA2zとして選択されていることが示されている。
図5に示すように、第一の色ずれ補償用パッチPA1zとしての第一パッチPA13において、シアンインク滴37Cの記録濃度に対するマゼンタインク滴37Mの記録濃度の比は、40/50である。この場合、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1は、40/50となる。また、第二の色ずれ補償用パッチPA2zとしての第二パッチPA24において、シアンインク滴37Cの記録濃度に対するマゼンタインク滴37Mの記録濃度の比は、60/50である。この場合、第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R1は、60/50となる。
【0055】
コントローラー10は、複数の基準パッチPA0、複数の第一パッチPA1、及び、複数の第二パッチPA2を形成させる第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372の吐出を往路P1に揃える制御を行う。記録媒体ME0のバックフィードと組み合わせることにより、所望のタイミング差Tで各パッチを形成することができる。むろん、コントローラー10は、複数の基準パッチPA0、複数の第一パッチPA1、及び、複数の第二パッチPA2を形成させる第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372の吐出を復路P2に揃える制御を行ってもよい。
尚、調整パターンCH0のパッチの配置は、
図4に示す例に限定されない。例えば、各調整パターンCH1,CH2は、副走査方向D2に沿って一列に並べられてもよいし、主走査方向D1及び副走査方向D2と交差する斜めに並べられてもよい。
【0056】
図6は、MとYの混色調整パターンに含まれる各パッチの形成条件を模式的に例示している。この場合の各パッチの形成条件も、
図5で示した各パッチの形成条件と同様である。基準パッチPA0における第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372の記録濃度は、いずれも50%である。T1>T0である場合、通常、マゼンタインク滴37Mよりも後に吐出されるイエローインク滴37Yの発色が強くなり、第一パッチPA1は基準パッチPA0よりもYの発色が強くなる。そこで、各第一パッチPA1において、Yの記録濃度はMの記録濃度以下にしている。T2<T0である場合、通常、第二パッチPA2は基準パッチPA0よりもYの発色が弱くなる。そこで、各第二パッチPA2において、Yの記録濃度はMの記録濃度以上にしている。
図示していないが、CとMとYの混色調整パターンについても、各パッチの形成条件を設定することができ、各パッチの形成条件に従って調整パターンを形成することができる。
【0057】
図7は、カラーインク滴37Aの吐出のタイミング差Tに応じた補正値を算出する様子を模式的に例示している。
上述したように、タイミング差Tが第一タイミング差T1である場合、複数の第一パッチPA1から第一の色ずれ補償用パッチPA1zが選択される。従って、第一タイミング差T1に対応する記録濃度比R、すなわち、第一カラーインク滴371の記録濃度に対する第二カラーインク滴372の記録濃度比の比は、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1となる。タイミング差Tが第二タイミング差T2である場合、複数の第二パッチPA2から第二の色ずれ補償用パッチPA2zが選択される。従って、第二タイミング差T2に対応する記録濃度比Rは、第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2となる。
【0058】
第一タイミング差T1と第二タイミング差T2との間のタイミング差Tiは、
図16に示す位置X1,X2の間の位置をXiとすると、線形補間により算出することができる。
【数1】
【数2】
タイミング差Tiに対応する記録濃度比Riは、線形補間により算出することができる。
【数3】
【0059】
記録濃度比Riは、タイミング差Tによる色ずれを補償するための補正値となり、
図8,9に例示する補正データの生成に使用される。補正データは、
図8に例示するように色変換LUTでもよいし、
図9に示すようにドット発生LUTでもよい。
【0060】
図8は、補正データとしての色変換LUTを生成する例を模式的に示している。
図8に示す元色変換LUTは、タイミング差Tによる色ずれを補償しない場合に
図1の色変換部12で使用される色変換LUTである。元色変換LUTは、入力側のRGB色空間の座標値(R,G,B)と、出力側のCMYK色空間の座標値(C,M,Y,K)と、の対応関係を表すデータである。RGB色空間に設定された格子点を識別する変数をjとすると、
図8に示す元色変換LUTは、各格子点について入力座標値(Rj,Gj,Bj)に対応付けられた出力座標値(C0j,M0j,Y0j,K0j)を有するデータである。色変換部12は、元色変換LUTを参照しながら元画像データDA1をインク量データDA2に変換することができる。
【0061】
コントローラー10又はホスト装置HO1は、記録濃度比Riに基づいて、タイミング差Tiに応じて異なるTi用色変換LUTを段階的に生成する。コントローラー10又はホスト装置HO1は、格子点毎に記録濃度比Riに基づいて元色変換LUTの出力座標値(C0j,M0j,Y0j,K0j)から出力座標値(C1j,M1j,Y1j,K1j)を求め、各格子点について入力座標値(Rj,Gj,Bj)に対応付けられた出力座標値(C1j,M1j,Y1j,K1j)を有するTi用色変換LUTを生成する。CとMの混色における色ずれを補償する場合においてシアンインク滴37Cに対するマゼンタインク滴37Mの記録濃度比がRiである場合、簡単な例として、C1j=C0j、M1j=Ri×M0j、Y1j=Y0j、K1j=K0jでもよい。ただし、出力座標値M1jには取り得る範囲があり、出力座標値C1j,M1j,Y1j,K1jの合計には上限があるため、これらが考慮されて出力座標値(C1j,M1j,Y1j,K1j)が求められる。
色変換LUTには多くのデータが必要である。このため、コントローラー10又はホスト装置HO1は、例えば、タイミング差100ミリ秒用色変換LUT、タイミング差200ミリ秒用色変換LUT、…、タイミング差500ミリ秒用色変換LUTのように、段階的なタイミング差Tiに応じて異なるTi用色変換LUTを生成する。
【0062】
図9は、補正データとしてのドット発生LUTを生成する例を模式的に示している。
図9に示す元ドット発生LUTは、タイミング差Tによる色ずれを補償しない場合に
図1のハーフトーン処理部13で使用されるドット発生LUTである。元ドット発生LUTは、C,Y,M,Kのそれぞれについて、インク量と、ドット38の発生率と、の対応関係を表すデータである。
図9に示す元ドット発生LUT及びTi用ドット発生LUTのグラフは、横軸がインク量であり、縦軸がドット38の発生率である。ドットの種類に小ドット、中ドット、及び、大ドットの3種類がある場合、元ドット発生LUTは、小ドット、中ドット、及び、大ドットの発生率を示すデータとなる。ハーフトーン処理部13は、元ドット発生LUTを参照しながらインク量データDA2のインク量を小中大の各ドットの発生率に変換したうえで4値のハーフトーンデータDA3を生成することができる。
【0063】
コントローラー10又はホスト装置HO1は、記録濃度比Riに基づいて、タイミング差Tiに応じて異なるTi用ドット発生LUTを段階的に生成する。コントローラー10又はホスト装置HO1は、記録濃度比Riに基づいて元ドット発生LUTにおけるインク量に応じた小中大の各ドットの発生率からTi用ドット発生LUTにおけるインク量に応じた小中大の各ドットの発生率を求め、得られたドット発生率を有するTi用ドット発生LUTを生成する。CとMの混色における色ずれを補償する場合においてシアンインク滴37Cに対するマゼンタインク滴37Mの記録濃度比がRiである場合、簡単な例として、M用のTi用ドット発生LUTにおけるインク量に応じた小中大の各ドットの発生率は、M用の元ドット発生LUTにおけるインク量に応じた小中大の各ドットの発生率に記録濃度比Riを乗じたドット発生率でもよい。ただし、各色のドット発生LUTのドット発生率には取り得る範囲があり、一つの画素PX0に吐出されるインクの総量には上限があるため、これらが考慮されてインク量に応じた小中大の各ドットの発生率が求められる。
コントローラー10又はホスト装置HO1は、例えば、タイミング差100ミリ秒用ドット発生LUT、タイミング差200ミリ秒用ドット発生LUT、…、タイミング差500ミリ秒用ドット発生LUTのように、段階的なタイミング差Tiに応じて異なるTi用ドット発生LUTを生成する。
【0064】
(3)印刷装置で行われる処理の具体例:
図10は、補正データ生成処理を模式的に例示している。補正データ生成処理は、
図1に示す補償部U2で行われ、例えば、
図1に示すコントローラー10で行われる。この場合、補正データ生成処理を開始させる操作を入力部26がユーザーから受け付けると、補正データ生成処理が開始する。また、補正データ生成処理の一部は、
図1に示すホスト装置HO1で行われてもよい。この場合、補正データ生成処理を開始させる操作をホスト装置HO1がユーザーから受け付けると、補正データ生成処理が開始する。
図10に示すステップS102~S112の調整パターン形成処理は、基準パッチ形成工程ST1、第一パッチ形成工程ST2、及び、第二パッチ形成工程ST3に対応している。ステップS114~S118の処理は、印刷画像形成工程ST4に対応している。以下、「ステップ」の記載を省略し、括弧内にステップの符号を示すことがある。また、コントローラー10が補正データ生成処理を行うものとして説明する。
【0065】
補正データ生成処理が開始すると、コントローラー10は、
図4に示す調整パターンCH0の中から印刷するパッチを一つ設定する(S102)。設定されるパッチは、基準パッチPA0、第一パッチPA1、及び、第二パッチPA2のいずれか一つである。
図4に示す例では、調整パターンCH1から第一パッチPA11、第一基準パッチPA01、第一パッチPA12、…、第一パッチPA16の順に設定され、次に、調整パターンCH2から第二パッチPA21、第二基準パッチPA02、第二パッチPA22、…、第二パッチPA26の順に設定される。
【0066】
次いで、コントローラー10は、設定されたパッチを形成するための設定記録濃度の第一カラーインク滴371を記録ヘッド30に往路P1で吐出させる制御を行う(S104)。各パッチの形成条件は、例えば、
図5,6に示されている。CとMの混色調整パターンを形成する場合、コントローラー10は、記録ヘッド30にシアンノズル群33Cから設定記録濃度のシアンインク滴37Cを吐出させることになる。
次いで、コントローラー10は、記録ヘッド30を搭載したキャリッジ52を主走査方向D1において設定パッチの印刷開始位置に戻し、長さL0の副走査を実施する制御を行う(S106)。
【0067】
次いで、コントローラー10は、設定されたパッチに割り当てられているインク滴吐出のタイミング差を第一カラーインク滴371の吐出開始を起点として計測する(S108)。コントローラー10は、パッチが基準パッチPA0である場合に基準タイミング差T0を計測し、パッチが第一パッチPA1である場合に第一タイミング差T1を計測し、パッチが第二パッチPA2である場合に第二タイミング差T2を計測する。
【0068】
次いで、コントローラー10は、設定されたパッチを形成するための設定記録濃度の第二カラーインク滴372を記録ヘッド30に往路P1で吐出させる制御を行う(S110)。上述したように、各パッチの形成条件は、例えば、
図5,6に示されている。CとMの混色調整パターンを形成する場合、コントローラー10は、記録ヘッド30にマゼンタノズル群33Mから設定記録濃度のマゼンタインク滴37Mを吐出させることになる。
【0069】
次いで、コントローラー10は、調整パターンCH0に含まれる全てのパッチを印刷したか否かを判断し(S112)、印刷すべきパッチが残っている場合に処理をS102に戻し、全てのパッチを印刷した場合に処理をS114に進める。
図4に示す調整パターンCH1,CH2の途中のように、次に設定するパッチが往方向D11に向かう位置にある場合、コントローラー10は、S102において、設定されたパッチの印刷開始位置に合わせるために記録媒体ME0を1副走査分、バックフィードさせる制御を行う。
S102~S112の調整パターン形成処理は、例えば、CとMの混色調整パターン、MとYの混色調整パターン、及び、CとMとYの混色調整パターンのそれぞれについて、行われる。
【0070】
上述した調整パターン形成処理に従って、コントローラー10は、基準タイミング差T0で所定記録濃度比の第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372を吐出させることにより基準パッチPA0を記録媒体ME0に形成させる。その際、コントローラー10は、記録媒体ME0に基準パッチPA0を形成させる第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372の吐出を往路P1に揃える。また、コントローラー10は、第一タイミング差T1で複数の異なる記録濃度比の第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第一パッチPA1を記録媒体ME0に形成させる。その際、コントローラー10は、記録媒体ME0に第一パッチPA1を形成させる第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372の吐出を往路P1に揃える。さらに、コントローラー10は、第二タイミング差T2で複数の異なる記録濃度比の第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372を吐出させることにより複数の第二パッチPA2を記録媒体ME0に形成させる。その際、コントローラー10は、記録媒体ME0に第二パッチPA2を形成させる第一カラーインク滴371及び第二カラーインク滴372の吐出を往路P1に揃える。
【0071】
調整パターンCH0の形成後、コントローラー10は、複数の第一パッチPA1から第一の色ずれ補償用パッチPA1zを選択し、複数の第二パッチPA2から第二の色ずれ補償用パッチPA2zを選択する(S114)。尚、複数の第一パッチPA1から2以上の第一の色ずれ補償用パッチPA1zが選択されてもよく、複数の第二パッチPA2から2以上の第二の色ずれ補償用パッチPA2zが選択されてもよい。
第一の色ずれ補償用パッチPA1z及び第二の色ずれ補償用パッチPA2zの選択のため、コントローラー10は、第一パッチPA11~PA16と第二パッチPA21~PA26のそれぞれに対応させて異なる識別情報を印刷させる制御を行ってもよい。この場合、コントローラー10は、第一パッチPA11~PA16の中から選択された第一の色ずれ補償用パッチPA1zを示す識別情報の選択操作を受け付け、第二パッチPA21~PA26の中から選択された第二の色ずれ補償用パッチPA2zを示す識別情報の選択操作を受け付ける処理を行えばよい。
【0072】
プリンター2が読取部60を備えている場合、コントローラー10は、調整パターンCH0を有する記録媒体ME0を読取部60に読み取らせ、各パッチの読取結果SC0を取得し、該読取結果SC0に基づいて第一の色ずれ補償用パッチPA1zと第二の色ずれ補償用パッチPA2zを取得してもよい。読取結果SC0には、複数の第一基準パッチPA01、第一パッチPA11~PA16、複数の第二基準パッチPA02、及び、第二パッチPA21~PA26の読取結果が含まれる。コントローラー10は、第一パッチPA11~PA16のうち第一基準パッチPA01の読取結果の平均に最も近い読取結果が得られたパッチを第一の色ずれ補償用パッチPA1zとして選択することができる。また、コントローラー10は、第二パッチPA21~PA26のうち第二基準パッチPA02の読取結果の平均に最も近い読取結果が得られたパッチを第二の色ずれ補償用パッチPA2zとして選択することができる。
プリンター2が測色器を備えている場合、コントローラー10は、調整パターンCH0を測色器に読み取らせ、各パッチの読取結果SC0を取得し、該読取結果SC0に基づいて第一の色ずれ補償用パッチPA1zと第二の色ずれ補償用パッチPA2zを取得してもよい。
【0073】
第一の色ずれ補償用パッチPA1z及び第二の色ずれ補償用パッチPA2zの選択後、コントローラー10は、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1と、第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2と、に基づいて、補正値としての記録濃度比Riを決定する(S116)。複数の第一の色ずれ補償用パッチPA1zが選択された場合、各第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比の平均を記録濃度比R1として扱えばよい。複数の第二の色ずれ補償用パッチPA2zが選択された場合、各第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比の平均を記録濃度比R2として扱えばよい。
図7,16を参照して説明したように、バンド領域B0において主走査方向D1における位置Xiに対応するタイミング差Tiは、第一タイミング差T1に対応する位置X1、及び、第二タイミング差T2に対応する位置X2を用いて、上述した式(1),(2)に従って算出することができる。タイミング差Tiが得られると、補正値としての記録濃度比Riは、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1、及び、第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2を用いて、上述した式(3)に従って算出することができる。
【0074】
記録濃度比Riの決定後、コントローラー10は、タイミング差Tiによる色ずれを補償するための補正データを記録濃度比Riに基づいて生成し(S118)、補正データ生成処理を終了させる。補正データには、
図8を参照して説明した色変換LUT、
図9を参照して説明したドット発生LUT、等が含まれる。補正データが色変換LUTである場合、コントローラー10は、記録濃度比Riに基づいて、タイミング差Tiに応じて異なるTi用色変換LUTを段階的に生成する。補正データがドット発生LUTである場合、コントローラー10は、記録濃度比Riに基づいて、タイミング差Tiに応じて異なるTi用ドット発生LUTを段階的に生成する。
【0075】
図11は、必要に応じてタイミング差Tによる色ずれを補償する印刷制御処理を模式的に例示している。印刷制御処理は、
図1に示す補償部U2で行われ、例えば、
図1に示すコントローラー10で行われる。この場合、色変換部12が元画像データDA1を取得すると、印刷制御処理が開始する。また、印刷制御処理の一部は、
図1に示すホスト装置HO1で行われてもよい。この場合、元画像データDA1を印刷させる操作をホスト装置HO1がユーザーから受け付けると、印刷制御処理が開始する。
図11に示す印刷制御処理は、印刷画像形成工程ST4に対応している。以下、コントローラー10が印刷制御処理を行うものとして説明する。
【0076】
印刷制御処理が開始すると、コントローラー10は、元画像データDA1を取得する(S202)。S202の元画像データ取得処理には、ホスト装置HO1から受信した元画像データDA1をRAM21に格納する処理、不図示のメモリーから元画像データDA1をRAM21に格納する処理、等が含まれる。
次いで、コントローラー10は、色変換部12において、通常モードの色変換LUT、例えば、
図8に示す元色変換LUTを参照しながら元画像データDA1をインク量データDA2に変換する(S204)。
【0077】
次いで、コントローラー10は、ハーフトーン処理部13において、通常モードのドット発生LUT、例えば、
図9に示す元ドット発生LUTを参照しながらインク量データDA2のインク量をドット発生率に変換したうえでハーフトーンデータDA3を生成する(S206)。
次いで、コントローラー10は、ラスタライズ処理部14において、駆動部50でドット38が形成される順番にハーフトーンデータDA3を並べ換えるラスタライズ処理を行うことによりラスターデータRA0を生成する(S208)。
【0078】
次いで、コントローラー10は、タイミング差Tによる色ずれを補償するか否かを判断する(S210)。例えば、コントローラー10は、設定されている印刷モードがカラーの双方向バンド印刷を行うモードである場合にS212~S214においてタイミング差Tによる色ずれを補償し、設定されている印刷モードが他のモードである場合にタイミング差Tによる色ずれを補償する処理を行わない。他のモードには、モノクロ印刷を行うモード、単方向印刷を行うモード、インターレース印刷を行うモード、等が含まれる。
コントローラー10は、タイミング差Tによる色ずれを補償する処理を行わない場合、処理をS216に進め、駆動信号送信部15において、ラスターデータRA0から駆動信号SG1を生成して記録ヘッド30の駆動回路31に出力する。これにより、記録媒体ME0に印刷画像IM0が形成される。
【0079】
コントローラー10は、タイミング差Tによる色ずれを補償する場合、印刷画像IM0のバンド領域B0毎に主走査方向D1における位置Xiに応じたインク滴吐出のタイミング差Tiを取得する(S212)。例えば、補正データが色変換LUTである場合、S204で得られたインク量データDA2を対象として色ずれを補償する処理が行われる。この場合、S208のラスタライズ処理により、コントローラー10は、インク量データDA2の各部がどのバンド領域B0のどの位置Xiとなるかを把握することができる。また、補正データがドット発生LUTである場合、S206で得られたハーフトーンデータDA3を対象として色ずれを補償する処理が行われる。この場合、S208のラスタライズ処理により、コントローラー10は、ハーフトーンデータDA3の各部がどのバンド領域B0のどの位置Xiとなるかを把握することができる。
【0080】
位置Xiに応じたタイミング差Tiは、基本的には、上述した式(1),(2)に従って算出することができる。ここで、記録ヘッド30が常に、往路P1で「Home」位置から「Full」位置に移動し、且つ、復路P2で「Full」位置から「Home」位置に移動する場合、「Home」位置を位置X1とし、「Full」位置を位置X2とすればよい。ただ、
図12に例示するように、印刷画像IM0のうちカラーインク滴37Aを吐出しない部分に記録ヘッド30が移動しない場合、位置X1を「Home」位置からずらしたり、位置X2を「Full」位置からずらしたりする必要がある。
【0081】
図12は、カラーの双方向バンド印刷によりCとMの混色の印刷画像IM0を形成する例を模式的に示している。
図12に示す例において、バンド領域B1には、往路P1において「Home」位置から「Full」位置に移動するシアンノズル群33Cがシアンインク滴37Cを吐出し、復路P2において「Full」位置から「Home」位置に移動するマゼンタノズル群33Mがマゼンタインク滴37Mを吐出する。この場合、位置Xiに応じたタイミング差Tiは、「Home」位置を位置X1とし、「Full」位置を位置X2として、往路P1用の式(1)に従って算出することができる。
【0082】
バンド領域B2には、復路P2において「Full」位置から「Home」位置に移動するシアンノズル群33Cがシアンインク滴37Cを吐出し、往路P1において「Home」位置から「Full」位置に移動するマゼンタノズル群33Mがマゼンタインク滴37Mを吐出する。この場合、位置Xiに応じたタイミング差Tiは、「Home」位置を位置X1とし、「Full」位置を位置X2として、復路P2用の式(2)に従って算出することができる。
バンド領域B3,B4には、インク滴37が吐出されない。そこで、バンド領域B3,B4において、記録ヘッド30を搭載したキャリッジ52は移動しない。
【0083】
バンド領域B5には、往路P1において「Home」位置よりも「Full」寄りの途中位置101から「Full」位置よりも「Home」寄りの途中位置102に移動するシアンノズル群33Cがシアンインク滴37Cを吐出する。当該バンド領域B5には、復路P2において途中位置102から途中位置101に移動するマゼンタノズル群33Mがマゼンタインク滴37Mを吐出する。この場合、途中位置102を位置X2としてタイミング差Tiを算出すればよい。途中位置101を位置X1Aとすると、位置X1Aは、バンド領域B1において「Full」位置と途中位置102との差の分、途中位置101から「Full」寄りの位置に相当する。そこで、位置Xiに応じたタイミング差Tiは、途中位置101を位置X1Aとし、途中位置102を位置X2として、往路P1用の式(1)に従って算出することができる。
【0084】
バンド領域B6には、復路P2において途中位置102から途中位置101に移動するシアンノズル群33Cがシアンインク滴37Cを吐出し、往路P1において途中位置101から途中位置102に移動するマゼンタノズル群33Mがマゼンタインク滴37Mを吐出する。この場合、途中位置101を位置X1としてタイミング差Tiを算出すればよい。途中位置102を位置X2Aとすると、位置X2Aは、バンド領域B2において途中位置101と「Home」位置との差の分、途中位置102から「Home」寄りの位置に相当する。そこで、位置Xiに応じたタイミング差Tiは、途中位置101を位置X1とし、途中位置102を位置X2Aとして、復路P2用の式(2)に従って算出することができる。
【0085】
タイミング差Tiの取得後、コントローラー10は、色ずれ補償処理を行う(S214)。例えば、補正データが色変換LUTである場合、コントローラー10は、
図13に例示する処理に従ってタイミング差Tiによる色ずれを補償することができる。補正データがドット発生LUTである場合、コントローラー10は、
図14に例示する処理に従ってタイミング差Tiによる色ずれを補償することができる。
【0086】
図13は、色変換LUTを使用した色ずれ補償処理を模式的に例示している。
図1に示す記憶部23は、Tmin用色変換LUTからTmax用色変換LUTまで段階的なタイミング差Tiに応じて異なるTi用色変換LUTを記憶しているものとする。
図13に示す色ずれ補償処理が開始すると、コントローラー10は、インク滴吐出のタイミング差Tiに応じたTi用色変換LUTを選択する(S302)。次いで、コントローラー10は、色変換部12において、選択されたTi用色変換LUTを参照しながら元画像データDA1をインク量データDA2に変換する(S304)。得られるインク量データDA2のインク量は、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが補償されるように補正されている。次いで、コントローラー10は、ハーフトーン処理部13において、通常モードのドット発生LUT、例えば、
図9に示す元ドット発生LUTを参照しながらインク量データDA2のインク量をドット発生率に変換したうえでハーフトーンデータDA3を生成する(S306)。最後に、コントローラー10は、ラスタライズ処理部14においてラスタライズ処理を行うことにより、ハーフトーンデータDA3からラスターデータRA0を生成する(S308)。
【0087】
上述したように、Ti用色変換LUTは、タイミング差Tiについて段階的にしか設けられていない。そこで、コントローラー10は、タイミング差Tiに対応するTi用色変換LUTと、タイミング差Ti+1に対応するTi+1用色変換LUTと、を用いて、タイミング差Tiとタイミング差Ti+1との間のタイミング差(Tdとする。)による色ずれを補償してもよい。例えば、コントローラー10は、Ti用色変換LUTを参照しながら元画像データDA1を第一のインク量に変換し、Ti+1用色変換LUTを参照しながら元画像データDA1を第二のインク量に変換し、第一のインク量と第二のインク量との間で線形補間を行うことによりタイミング差Tdによる色ずれが補償されるインク量データDA2を生成してもよい。
【0088】
図14は、ドット発生LUTを使用した色ずれ補償処理を模式的に例示している。
図1に示す記憶部23は、Tmin用ドット発生LUTからTmax用ドット発生LUTまで段階的なタイミング差Tiに応じて異なるTi用ドット発生LUTを記憶しているものとする。
図14に示す色ずれ補償処理が開始すると、コントローラー10は、インク滴吐出のタイミング差Tiに応じたTi用ドット発生LUTを選択する(S402)。次いで、コントローラー10は、ハーフトーン処理部13において、選択されたTi用ドット発生LUTを参照しながらインク量データDA2のインク量をドット発生率に変換したうえでハーフトーンデータDA3を生成する(S404)。得られるハーフトーンデータDA3は、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが補償されるように補正されている。最後に、コントローラー10は、ラスタライズ処理部14においてラスタライズ処理を行うことにより、ハーフトーンデータDA3からラスターデータRA0を生成する(S406)。
【0089】
上述したように、Ti用ドット発生LUTは、タイミング差Tiについて段階的にしか設けられていない。そこで、コントローラー10は、タイミング差Tiに対応するTi用ドット発生LUTと、タイミング差Ti+1に対応するTi+1用ドット発生LUTと、を用いて、タイミング差Tiとタイミング差Ti+1との間のタイミング差(Tdとする。)による色ずれを補償してもよい。例えば、コントローラー10は、Ti用ドット発生LUTを参照しながらインク量データDA2を第一のドット発生率に変換し、Ti+1用ドット発生LUTを参照しながらインク量データDA2を第二のドット発生率に変換し、第一のドット発生率と第二のドット発生率との間で線形補間を行うことによりタイミング差Tdによる色ずれが補償されるハーフトーンデータDA3を生成してもよい。
【0090】
以上説明したように、コントローラー10は、
図10,11に示すS114~118,S202~S214の処理に従って、第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1と、第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2と、に基づいて、タイミング差Tによる色ずれを補償する。
【0091】
色ずれ補償処理の後、コントローラー10は、駆動信号送信部15において、ラスターデータRA0から駆動信号SG1を生成して記録ヘッド30の駆動回路31に出力し(S216)、印刷制御処理を終了させる。これにより、記録媒体ME0に印刷画像IM0が形成される。
以上より、コントローラー10は、記録濃度比R1,R2に基づいて、タイミング差Tによる色ずれを補償して印刷画像IM0を形成させる。
【0092】
図4に示す基準パッチPA0は、第一カラーインク滴371と第二カラーインク滴372との吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0である場合の印刷色を示している。
図4に示す複数の第一パッチPA1は、インク滴吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0よりも大きい場合の補正色の候補を示している。
図4に示す複数の第二パッチPA2は、インク滴吐出のタイミング差Tが基準タイミング差T0よりも小さい場合の補正色の候補を示している。複数の第一パッチPA1から選択された第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1と、複数の第二パッチPA2から選択された第二の色ずれ補償用パッチPA2zに対応する記録濃度比R2と、に基づいて、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが補償される。従って、本具体例は、縦配列ヘッドに起因する色むらを低減させることができる。
【0093】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、インクの色の組合せは、C、M、Y、及び、Kに限定されず、オレンジ、グリーン、ホワイト、無色、等を含んでいてもよい。むろん、印刷装置1がC、M、及び、Yのいずれかのインクを使用しない場合でも、ブラック以外に2種類以上の色のインクを使用する場合にも、本技術を適用可能である。
ホスト装置HO1が元画像データDA1をインク量データDA2に変換する場合、プリンター2は、ホスト装置HO1からインク量データDA2を受信して印刷画像IM0を形成してもよい。さらに、ホスト装置HO1がインク量データDA2からハーフトーンデータDA3を生成する場合、プリンター2は、ホスト装置HO1からハーフトーンデータDA3を受信して印刷画像IM0を形成してもよい。さらに、ホスト装置HO1がハーフトーンデータDA3からラスターデータRA0を生成する場合、プリンター2は、ホスト装置HO1からラスターデータRA0を受信して印刷画像IM0を形成してもよい。
【0094】
上述した処理を行う主体は、CPUに限定されず、ASIC等といったCPU以外の電子部品でもよい。むろん、複数のCPUが協働して上述した処理を行ってもよいし、CPUと他の電子部品(例えばASIC)とが協働して上述した処理を行ってもよい。
また、上述した処理は、適宜、変更可能である。
【0095】
上述した調整パターンCH1には第一パッチPA1同士の間にそれぞれ第一基準パッチPA01が配置され、上述した調整パターンCH2には第二パッチPA2同士の間にそれぞれ第二基準パッチPA02が配置されていたが、これらに限定されない。例えば、第一パッチPA1同士が隣接していてもよいし、第一基準パッチPA01が複数の第一パッチPA1から離れていてもよいし、第二パッチPA2同士が隣接していてもよいし、第二基準パッチPA02が複数の第二パッチPA2から離れていてもよい。また、基準パッチPA0が第一基準パッチPA01と第二基準パッチPA02に分かれておらず、第一パッチPA1と第二パッチPA2との間に基準パッチPA0が配置されてもよい。
【0096】
印刷装置1は、第二パッチPA2を含まない調整パターンを印刷してもよい。この場合、コントローラー10又はホスト装置HO1は、複数の第一パッチPA1から選択された第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1に基づいて、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれを補償することができる。この場合において、第一タイミング差T1は、基準タイミング差T0とは異なるタイミング差であればよく、基準タイミング差T0よりも小さくてもよい。ここで、「Home」位置と「Full」位置との中間位置をX0とする。位置X0は、基準タイミング差T0となる位置である。位置Xiに対応するタイミング差Tiは、線形補間により算出することができる。
【数4】
【数5】
タイミング差Tiに対応する記録濃度比Riは、線形補間により算出することができる。
【数6】
【0097】
以上より、複数の第一パッチPA1から選択された第一の色ずれ補償用パッチPA1zに対応する記録濃度比R1に基づいて、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが補償される。従って、調整パターンに第二パッチPA2が無い場合も、縦配列ヘッドに起因する色むらを低減させることができる。
【0098】
図15に例示するように、記録媒体ME0の種類に応じて補正データを生成するか否かを切り替える処理が行われてもよい。
図15に示す記録媒体設定処理及び条件別処理は、
図1に示す制御部U1で行われ、例えば、
図1に示すコントローラー10で行われる。この場合、記録媒体設定処理を開始させる操作を入力部26がユーザーから受け付けると、コントローラー10は、印刷画像IM0を形成させる記録媒体ME0の種類の設定画面を出力部25に表示させ、印刷画像IM0を形成させる記録媒体ME0の種類の設定を受け付ける(S502)。また、記録媒体設定処理の少なくとも一部は、
図1に示すホスト装置HO1で行われてもよい。この場合、記録媒体設定処理を開始させる操作をホスト装置HO1がユーザーから受け付けると、ホスト装置HO1は、前述の設定画面を表示部に表示させ、印刷画像IM0を形成させる記録媒体ME0の種類の設定を受け付ける。
【0099】
図15に示す普通紙は、インクが比較的滲みやすく、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが大きく現れやすい。
図15に示す光沢紙は、インクが比較的滲み難く、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが比較的少ない。これは、先に着弾した第一カラーインク滴371が光沢紙の表面に多く残っていることにより後から第二カラーインク滴372が着弾しても第一カラーインク滴371の色が多く残るためと推測される。別の見方をすると、記録媒体ME0が普通紙である場合、先に着弾した第一カラーインク滴371が普通紙に染み込むことにより後から着弾した第二カラーインク滴372の色が強く表れるためと推測される。
図15に示す例において、普通紙は第一記録媒体ME1の例であり、光沢紙は第一記録媒体ME1よりもタイミング差Tによる色ずれが少ない第二記録媒体ME2の例である。
【0100】
S502の処理後、コントローラー10は、記録媒体ME0の種類の設定を記憶部23に記憶させ(S504)、記録媒体設定処理を終了させる。むろん、ホスト装置HO1が記録媒体ME0の種類の設定を記憶してもよい。
【0101】
コントローラー10は、色変換部12が元画像データDA1を取得すると、条件別処理を開始させ、設定されている記録媒体ME0の種類に応じて処理を分岐させる(S512)。設定されている記録媒体ME0の種類が普通紙に相当する場合、コントローラー10は、
図10で示した補正データ生成処理を行い(S514)、条件別処理を終了させる。設定されている記録媒体ME0の種類が光沢紙に相当する場合、コントローラー10は、S514の処理を行わずに条件別処理を終了させる。
図11に示す印刷制御処理におけるS210の判断処理において、コントローラー10は、設定されている記録媒体ME0の種類が普通紙に相当し、且つ、設定されている印刷モードがカラーの双方向バンド印刷を行うモードであるか否かを判断すればよい。コントローラー10は、条件成立時にS212~S216においてタイミング差Tによる色ずれを補償して印刷画像IM0を形成させ、条件不成立時にタイミング差Tによる色ずれを補償する処理を行わずにS216において印刷画像IM0を形成させる。
従って、制御部U1は、記録媒体ME0の種類が第一記録媒体ME1に相当する場合、補償部U2においてタイミング差Tによる色ずれを補償して印刷画像IM0を形成させる。一方、制御部U1は、記録媒体ME0の種類が第二記録媒体ME2に相当する場合、タイミング差Tによる色ずれを補償する処理を行わない。
【0102】
また、S512の判断処理は、
図1に示すホスト装置HO1で行われてもよい。この場合、ホスト装置HO1は、元画像データDA1を印刷させる操作をユーザーから受け付けると、条件別処理を開始させ、設定されている記録媒体ME0の種類に応じて処理を分岐させる(S512)。設定されている記録媒体ME0の種類が普通紙に相当する場合には補正データ生成処理が行われ(S514)、設定されている記録媒体ME0の種類が光沢紙に相当する場合には補正データ生成処理が行われない。
【0103】
図15に示す例は、インク滴吐出のタイミング差Tによる色ずれが少ない場合は色ずれを補償する処理を行わなくてもよいので、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0104】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、縦配列ヘッドに起因する色むらを低減可能な技術等を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1…印刷装置、2…プリンター、10…コントローラー、11…CPU、12…色変換部、13…ハーフトーン処理部、14…ラスタライズ処理部、15…駆動信号送信部、23…記憶部、24…操作パネル、30…記録ヘッド、31…駆動回路、32…駆動素子、33…ノズル列、33A…カラーノズル列、33K…ブラックノズル列、33G…カラーノズル群、34…ノズル、34A…カラーノズル、34K…ブラックノズル、37…インク滴、37A…カラーインク滴、37K…ブラックインク滴、38…ドット、50…駆動部、51…キャリッジ駆動部、52…キャリッジ、55…ローラー駆動部、60…読取部、331…第一カラーノズル群、332…第二カラーノズル群、371…第一カラーインク滴、372…第二カラーインク滴、B0…バンド領域、CH0,CH1,CH2…調整パターン、D1…主走査方向、D2…副走査方向、D3…送り方向、D4…並び方向、D11…往方向、D12…復方向、DA1…元画像データ、DA2…インク量データ、DA3…ハーフトーンデータ、HO1…ホスト装置、IM0…印刷画像、L0…長さ、ME0…記録媒体、ME1…第一記録媒体、ME2…第二記録媒体、P0…主走査、P1…往路、P2…復路、PA0…基準パッチ、PA01…第一基準パッチ、PA02…第二基準パッチ、PA1…第一パッチ、PA1z…第一の色ずれ補償用パッチ、PA2…第二パッチ、PA2z…第二の色ずれ補償用パッチ、R1,R2…記録濃度比、PX0…画素、RA0…ラスターデータ、SC0…読取結果、ST1…基準パッチ形成工程、ST2…第一パッチ形成工程、ST3…第二パッチ形成工程、ST4…印刷画像形成工程、T…タイミング差、T0…基準タイミング差、T1…第一タイミング差、T2…第二タイミング差、U1…制御部、U2…補償部、X…位置。