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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065283
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ガスタービンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/40 20060101AFI20240508BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20240508BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20240508BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F02C9/40 A
F02C3/22
F02C6/00 E
F02C7/22 D
F02C7/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174057
(22)【出願日】2022-10-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 グリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築/アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化/ガスタービンにおけるアンモニア専焼技術の開発・実証/アンモニア専焼ガスタービンの研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太朗
(57)【要約】
【課題】アンモニアを燃料として使用するガスタービンシステムにおいて、ガスタービンの始動を促進すること。
【解決手段】ガスタービンシステム100は、アンモニア供給源1と、アンモニア供給源1に接続され、アンモニア供給源1からのアンモニアを燃焼する燃焼器42を含むガスタービン4と、ガスタービン4の出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置6と、水電解装置6によって生成される水素を貯留し、かつ、燃焼器42と流体連通する水素タンク7と、水素タンク7から燃焼器42への水素の供給を制御する制御装置90であって、ガスタービン4の始動時に燃焼器42への水素の供給を開始する、制御装置90と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア供給源と、
前記アンモニア供給源に接続され、前記アンモニア供給源からのアンモニアを燃焼する燃焼器を含むガスタービンと、
前記ガスタービンの出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置と、
前記水電解装置によって生成される水素を貯留し、かつ、前記燃焼器と流体連通する水素タンクと、
前記水素タンクから前記燃焼器への水素の供給を制御する制御装置であって、前記ガスタービンの始動時に前記燃焼器への水素の供給を開始する、制御装置と、
を備える、ガスタービンシステム。
【請求項2】
前記アンモニア供給源および前記ガスタービンに接続されるクラッキング装置であって、前記アンモニア供給源からのアンモニアを水素および窒素へと分解し、生成された水素を含むガスを前記ガスタービンに送る、クラッキング装置と、
前記水電解装置によって生成される酸素を貯留し、かつ、前記クラッキング装置と流体連通する酸素タンクと、
を備え、
前記制御装置は、前記酸素タンクから前記クラッキング装置への酸素の供給を制御し、前記ガスタービンの始動時に前記クラッキング装置への酸素の供給を開始する、請求項1に記載のガスタービンシステム。
【請求項3】
アンモニア供給源と、
前記アンモニア供給源に接続され、アンモニアを水素および窒素へと分解するクラッキング装置と、
前記アンモニア供給源および前記クラッキング装置に接続され、前記アンモニア供給源からのアンモニアと、前記クラッキング装置からの水素を含むガスと、を燃焼する燃焼器を含むガスタービンと、
前記ガスタービンの出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置と、
前記水電解装置によって生成される酸素を貯留し、かつ、前記クラッキング装置と流体連通する酸素タンクと、
前記酸素タンクから前記クラッキング装置への酸素の供給を制御する制御装置であって、前記ガスタービンの始動時に前記クラッキング装置への酸素の供給を開始する、制御装置と、
を備える、ガスタービンシステム。
【請求項4】
前記水電解装置によって生成される水素を貯留し、かつ、前記燃焼器と流体連通する水素タンクを備え、
前記制御装置は、前記水素タンクから前記燃焼器への水素の供給を制御し、前記ガスタービンの始動時に前記燃焼器への水素の供給を開始する、請求項3に記載のガスタービンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、COを放出しない燃料として知られている。例えば、特許文献1は、アンモニアを燃料として使用するガスタービンシステムを開示する。このシステムは、アンモニアのタンクと、第一の燃焼チャンバと、を備える。タンク内のアンモニアは、第一の質量流量分離器を通り、一部が第一の燃焼チャンバに直接的に送られ、残りが第一のクラッキングチャンバに送られる。第一のクラッキングチャンバでは、アンモニアが、窒素、水素およびその他の成分を含有する水素リッチガス混合物へと分解される。アンモニアおよび水素リッチガス混合物は、第一の燃焼チャンバ内に噴射され、燃焼される。第一の燃焼チャンバからの排ガスは、高水準のNOxを含む。また、このシステムは、第二の燃焼チャンバを備える。第一の燃焼チャンバからの排ガスは、第二の燃焼チャンバに誘導される。タンク内のアンモニアは、第二の質量流量分離器を通り、一部が第二の燃焼チャンバに直接的に送られ、残りが第二のクラッキングチャンバに送られる。第二のクラッキングチャンバでは、アンモニアが、窒素、水素およびその他の成分を含有する水素リッチガス混合物へと分解される。アンモニアおよび水素リッチガス混合物は、第二の燃焼チャンバ内に噴射され、燃焼される。第二の燃焼チャンバでは、燃料は1.0~1.2の高い当量比で燃焼される。これによって、第一の燃焼チャンバからの排ガスからNOxが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-535355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアは難燃性の燃料である。したがって、ガスタービンを始動する際に、燃料としてアンモニアのみを使用して、燃焼器内の圧力を大気圧から定格回転数の圧力まで増加させることは難しい。したがって、ガスタービンを始動するために、例えば天然ガス等の別の燃えやすい燃料を準備しておくことが考えられる。しかしながら、これは燃料コストの増加に繋がる。
【0005】
本開示は、ガスタービンの始動を促進することができる、アンモニアを燃料として使用するガスタービンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガスタービンシステムは、アンモニア供給源と、アンモニア供給源に接続され、アンモニア供給源からのアンモニアを燃焼する燃焼器を含むガスタービンと、ガスタービンの出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置と、水電解装置によって生成される水素を貯留し、かつ、燃焼器と流体連通する水素タンクと、水素タンクから燃焼器への水素の供給を制御する制御装置であって、ガスタービンの始動時に燃焼器への水素の供給を開始する、制御装置と、を備える。
【0007】
ガスタービンシステムは、アンモニア供給源およびガスタービンに接続されるクラッキング装置であって、アンモニア供給源からのアンモニアを水素および窒素へと分解し、生成された水素を含むガスをガスタービンに送る、クラッキング装置と、水電解装置によって生成される酸素を貯留し、かつ、クラッキング装置と流体連通する酸素タンクと、を備えてもよく、制御装置は、酸素タンクからクラッキング装置への酸素の供給を制御し、ガスタービンの始動時にクラッキング装置への酸素の供給を開始してもよい。
【0008】
本開示の他の態様に係るガスタービンシステムは、アンモニア供給源と、アンモニア供給源に接続され、アンモニアを水素および窒素へと分解するクラッキング装置と、アンモニア供給源およびクラッキング装置に接続され、アンモニア供給源からのアンモニアと、クラッキング装置からの水素を含むガスと、を燃焼する燃焼器を含むガスタービンと、ガスタービンの出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置と、水電解装置によって生成される酸素を貯留し、かつ、クラッキング装置と流体連通する酸素タンクと、酸素タンクからクラッキング装置への酸素の供給を制御する制御装置であって、ガスタービンの始動時にクラッキング装置への酸素の供給を開始する、制御装置と、を備える。
【0009】
ガスタービンシステムは、水電解装置によって生成される水素を貯留し、かつ、燃焼器と流体連通する水素タンクを備えてもよく、制御装置は、水素タンクから燃焼器への水素の供給を制御し、ガスタービンの始動時に燃焼器への水素の供給を開始してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、アンモニアを燃料として使用するガスタービンシステムにおいて、ガスタービンの始動を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係るガスタービンシステムを示す概略図である。
図2図2は、第2実施形態に係るガスタービンシステムを示す概略図である。
図3図3は、第3実施形態に係るガスタービンシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、第1実施形態に係るガスタービンシステム100を示す概略図である。本開示において、ガスタービンシステム100は、単に「システム100」とも称され得る。例えば、システム100は、アンモニアタンク(アンモニア供給源)1と、加圧器2と、クラッキング装置3と、ガスタービン4と、発電機5と、水電解装置6と、水素タンク7と、酸素タンク8と、制御装置90と、を備える。システム100は、他の構成要素をさらに備えてもよい。また、システム100は、上記の構成要素のうちの1つまたは複数を備えてなくてもよい。
【0014】
アンモニアタンク1は、アンモニアを貯蔵する。具体的には、アンモニアタンク1は、液体のアンモニアを貯蔵する。アンモニアタンク1は、配管P1によって加圧器2に接続される。アンモニアタンク1に貯蔵される液体アンモニアは、配管P1を介して加圧器2に供給される。他の実施形態では、例えば、アンモニアタンク1に代えて、アンモニア製造装置がアンモニア供給源として用いられてもよい。
【0015】
加圧器2は、アンモニアタンク1からのアンモニアを加圧する。加圧器2は、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、制御装置90によって制御される。加圧器2には、配管P2が接続される。加圧されたアンモニアは、加圧器2から配管P2へ流れる。
【0016】
本実施形態では、アンモニアは、クラッキング装置3およびガスタービン4に液体状態で供給される。この場合、例えば、加圧器2は、ポンプであってもよい。他の実施形態では、例えば、システム100は、配管P1、配管P2および配管P21の少なくとも1つに気化器を備えてもよく、アンモニアは、クラッキング装置3およびガスタービン4に気体状態で供給されてもよい。加圧器2が気体アンモニアを加圧する場合には、例えば、加圧器2は、コンプレッサであってもよい。
【0017】
配管P2には、バルブV1が設けられる。バルブV1は、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、制御装置90によって制御される。例えば、制御装置90は、電力需要および発電機5における発電量に基づいて、バルブV1の開度を制御することによって、配管P2を流れるアンモニアの流量を調整する。配管P2は、配管P21および配管P22に分岐される。配管P21はクラッキング装置3に接続され、配管P22はガスタービン4に接続される。
【0018】
加圧されたアンモニアの少なくとも一部は、配管P22を介してガスタービン4へ供給される。
【0019】
加圧されたアンモニアの残りは、配管P21を介してクラッキング装置3へ供給される。配管P21には、バルブV2が設けられる。バルブV2は、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、制御装置90によって制御される。制御装置90は、バルブV2の開度を制御することによって、クラッキング装置3へ供給されるアンモニアの流量を調整する。
【0020】
クラッキング装置3は、アンモニアを水素および窒素へと分解する。クラッキング装置3は、アンモニアを水素および窒素へと分解する触媒を含む。このような触媒は、例えば、Ru、Rh、PtおよびPdの少なくとも1つを含む。クラッキング装置3は、配管P23によってガスタービン4に接続される。水素および窒素を含むガス(本開示において、「水素リッチガス」とも称され得る)は、クラッキング装置3から配管P23を介してガスタービン4へ供給される。
【0021】
ガスタービン4は、コンプレッサ41と、燃焼器42と、タービン43と、を含む。ガスタービン4は、他の構成要素をさらに備えてもよい。コンプレッサ41は、空気を加圧し、加圧された空気を燃焼器42に送る。
【0022】
燃焼器42は、コンプレッサ41から加圧された空気を受け入れる。また、燃焼器42は、上記の配管P1,P2,P22を介してアンモニアタンク1に流体的に接続される。燃焼器42は、アンモニアタンク1からのアンモニアを受け入れる。さらに、燃焼器42は、上記の配管P23を介してクラッキング装置3に流体的に接続される。燃焼器42は、クラッキング装置3からの水素リッチガスを受け入れる。本実施形態では、燃焼器42は、アンモニアおよび水素リッチガスを燃焼する。燃焼器42は、状況に応じて他の燃料を燃焼してもよい。
【0023】
燃焼により生じた排気ガスは、燃焼器42からタービン43に供給される。タービン43は、排気ガスによって回転される。排気ガスは、タービン43の下流に位置する不図示の他の設備、例えば排熱回収ボイラおよび脱硝装置等に供給される。本実施形態では、タービン43の回転力は、発電機5の運転に使用される。他の実施形態では、タービン43の回転力は、他の装置で使用されてもよい。発電機5で生成された電力は、システム100内の不図示の他の装置または外部に供給される。また、発電機5で生成された電力の一部は、水電解装置6に供給される。
【0024】
一般的に、アンモニアの燃焼速度は遅い。したがって、燃焼器42でアンモニアのみが燃焼される場合、燃焼は不安定になり易い。しかしながら、本実施形態では、アンモニアタンク1からのアンモニアの一部が、クラッキング装置3において水素および窒素に分解されてから、燃焼器42に供給される。水素の燃焼速度は速いことから、燃焼器42における燃焼が安定し、燃焼可能なアンモニアの量も増加する。したがって、様々な要因で燃焼器42からの排気ガス中に残留するアンモニア(例えば、クラッキング装置3における未反応のアンモニア、および、燃焼器42における未燃のアンモニア)が低減される。その結果、例えば、脱硝装置の運転コストが低減される。
【0025】
また、上記のように、本実施形態では、アンモニアタンク1からのアンモニアの一部が、クラッキング装置3において水素および窒素に分解されてから、燃焼器42に供給される。この場合、窒素原子Nは、クラッキング装置3から燃焼器42までの区間に、酸素原子Oが無いまたは少ない環境において、窒素分子Nへと結合する。窒素分子Nは安定的であり、窒素原子Nに比べて、酸素原子Oと結合し難い。したがって、NOxの生成、特にフューエルNOxの生成が抑制される。
【0026】
水電解装置6は、電気分解によって水を水素および酸素に分解する。水電解装置6は、陰極および陽極を含む電解槽を備える。水電解装置6は、配管P3から水(例えば、アルカリ性の純水)を受け入れる。水は、例えば、蒸気タービンの給水ライン等、不図示の様々な供給源から供給されることができる。水電解装置6は、発電機5から電気を受け取り、水に入れられた陰極および陽極の間に電圧をかける。陰極からは水素が発生し、陽極からは酸素が発生する。
【0027】
水電解装置6は、配管P4によって水素タンク7に接続される。また、水電解装置6は、配管P5によって酸素タンク8に接続される。水素は、配管P4によって水素タンク7に送られ、酸素は、配管P5によって酸素タンク8に送られる。
【0028】
水素タンク7は、水電解装置6で生成された水素を貯留する。水素タンク7は、燃焼器42と流体連通する。具体的には、本実施形態では、水素タンク7は、配管P6によって配管P22に接続され、配管P6およびP22を介して燃焼器42に接続される。
【0029】
水素タンク7は、燃焼器42に水素を供給する。具体的には、例えば、配管P6にはバルブV3が設けられる。バルブV3は、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、制御装置90によって制御される。制御装置90は、バルブV3の開度を制御することによって、水素タンク7から燃焼器42へ供給される水素の流量を調整する。
【0030】
酸素タンク8は、水電解装置6で生成された酸素を貯留する。酸素タンク8は、クラッキング装置3と流体連通する。具体的には、本実施形態では、酸素タンク8は、配管P7によってクラッキング装置3に接続される。
【0031】
酸素タンク8は、クラッキング装置3に酸素を供給する。具体的には、例えば、配管P7にはバルブV4が設けられる。バルブV4は、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、制御装置90によって制御される。制御装置90は、バルブV4の開度を制御することによって、クラッキング装置3へ供給される酸素の流量を調整する。
【0032】
制御装置90は、システム100の全体または一部を制御する。例えば、制御装置90は、1つまたは複数のPCにより構成されてもよい。制御装置90は、例えば、プロセッサ90a、記憶装置90bおよびコネクタ90c等の構成要素を含み、これらの構成要素はバスを介して互いに接続される。例えば、プロセッサ90aは、CPU(Central Processing Unit)等を含む。例えば、記憶装置90bは、ハードディスク、プログラム等が格納されるROM、および、ワークエリアとしてのRAM等を含む。制御装置90は、コネクタ90cを介してシステム100の各構成要素と有線でまたは無線で通信可能に接続される。例えば、制御装置90は、液晶ディスプレイまたはタッチパネル等の表示装置、および、キーボード、ボタンまたはタッチパネル等の入力装置等、他の構成要素を更に含んでもよい。例えば、制御装置90の以下の動作は、記憶装置90bに記憶されるプログラムをプロセッサ90aに実行することによって、実現されてもよい。
【0033】
続いて、システム100の動作について説明する。
【0034】
水電解装置6は、ガスタービン4の運転中の何れかのタイミングにおいて、発電機5で生成された電力、すなわち、ガスタービン4の出力によって生成される電力によって、水を水素および酸素に分解する。水素は、水素タンク7に貯留され、酸素は、酸素タンク8に貯留される。例えば、水電解装置6は、水素タンク7および酸素タンク8の双方または少なくとも一方が気体で満たされた場合に、運転を停止してもよい。
【0035】
ガスタービン4が運転を停止した後に、ガスタービン4を再び始動させる指令を制御装置90が受けると、プロセッサ90aは、バルブV1およびバルブV2を開きかつ加圧器2を始動させて、アンモニアタンク1から燃焼器42およびクラッキング装置3にアンモニアを供給するように加圧器2を制御する。
【0036】
また、プロセッサ90aは、バルブV3を開き、水素タンク7から配管P22に水素を供給する。配管P22では、アンモニアタンク1からのアンモニアと、水素タンク7からの水素とが混合される。したがって、燃焼器42には、アンモニアおよび水素の混合ガスが供給される。ガスタービン4が運転を停止した後、燃焼器42および配管P22内の圧力は、大気圧まで低下する。したがって、例えば、水素は、水素タンク7内の圧力と、配管P22内の圧力との間の差圧によって、水素タンク7から配管P22に自動的に供給されてもよい。
【0037】
燃焼器42は、上記のように、配管P22からアンモニアおよび水素の混合ガスを受け入れる。したがって、ガスタービン4を始動させるときに、燃焼器42では、アンモニアおよび水素の混合ガスが燃焼される。水素は、アンモニアに比して、容易に燃焼される。したがって、アンモニアのみが燃料として使用される場合に比して、燃焼器42における燃焼が加速される。
【0038】
また、プロセッサ90aは、バルブV4を開き、酸素タンク8からクラッキング装置3に酸素を供給する。例えば、ガスタービン4が運転を停止する場合、クラッキング装置3も運転を停止する。また、これらの停止時には、バルブV4は閉じられているので、酸素は流れない。したがって、ガスタービン4が運転を停止した後、クラッキング装置3内の圧力も、大気圧まで低下する。したがって、例えば、酸素は、酸素タンク8内の圧力と、クラッキング装置3内の圧力との間の差圧によって、酸素タンク8からクラッキング装置3に自動的に供給されてもよい。
【0039】
クラッキング装置3は、上記のように、アンモニアタンク1からのアンモニアと、酸素タンク8からの酸素と、を受け入れる。アンモニアの窒素および水素へのクラッキングは吸熱反応であり、したがってクラッキング装置3はエネルギを必要とする。しかしながら、本実施形態では、クラッキング装置3は、酸素タンク8から酸素を受け入れる。したがって、ガスタービン4を始動させるときに、クラッキング装置3内には、アンモニアおよび酸素の双方が存在する。クラッキング装置3の触媒は、酸素タンク8からの酸素によって酸化され、発熱する。したがって、クラッキング装置3は、外部からエネルギを受けること無く、触媒の自己発熱によってクラッキングに必要なエネルギを得ることができる。生成された窒素および水素を含む水素リッチガスは、クラッキング装置3から燃焼器42に供給される。したがって、燃焼器42は、クラッキング装置3からも水素を受け入れる。したがって、燃焼器42における燃焼がさらに加速される。
【0040】
水素タンク7内の水素の量が減少するにつれて、水素タンク7内の圧力は低下する。また、ガスタービン4の起動(シーケンス)が進むにつれて、燃焼器42および配管P22内の圧力が増加する。したがって、水素タンク7内の圧力と、配管P22内の圧力との間の差圧が低下する。したがって、例えば、水素の供給は、差圧が十分に低下すると、自動的に止まってもよい。代替的にまたは追加的に、例えば、ガスタービン4が定格回転数に達した場合に、プロセッサ90aは、バルブV3を閉じて、水素タンク7から配管P22への水素の供給を停止してもよい。
【0041】
同様に、酸素タンク8内の酸素の量が減少するにつれて、酸素タンク8内の圧力は低下する。また、クラッキングが進むにつれて、クラッキング装置3内の圧力が増加する。したがって、酸素タンク8内の圧力と、クラッキング装置3内の圧力との間の差圧が低下する。したがって、例えば、酸素の供給は、差圧が十分に低下すると、自動的に止まってもよい。代替的にまたは追加的に、例えば、ガスタービン4が定格回転数に達した場合に、プロセッサ90aは、バルブV4を閉じて、酸素タンク8からクラッキング装置3への酸素の供給を停止してもよい。
【0042】
以上のようなシステム100は、アンモニアタンク1と、アンモニアタンク1に接続され、アンモニアタンク1からのアンモニアを燃焼する燃焼器42を含むガスタービン4と、ガスタービン4の出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置6と、水電解装置6によって生成される水素を貯留し、かつ、燃焼器42と流体連通する水素タンク7と、水素タンク7から燃焼器42への水素の供給を制御する制御装置90であって、ガスタービン4の始動時に燃焼器42への水素の供給を開始する、制御装置90と、備える。このような構成によれば、ガスタービン4を始動させるときに、燃焼器42では、アンモニアおよび水素の混合ガスが燃焼される。水素は、アンモニアに比して、容易に燃焼される。したがって、アンモニアのみが燃料として使用される場合に比して、燃焼器42における燃焼を加速することができる。よって、ガスタービン4の始動を促進することができる。
【0043】
また、システム100は、アンモニアタンク1およびガスタービン4に接続されるクラッキング装置3であって、アンモニアタンク1からのアンモニアを水素および窒素へと分解し、生成された水素リッチガスをガスタービン4に送る、クラッキング装置3と、水電解装置6によって生成される酸素を貯留し、かつ、クラッキング装置3と流体連通する酸素タンク8と、を備え、制御装置90は、酸素タンク8からクラッキング装置3への酸素の供給を制御し、ガスタービン4の始動時にクラッキング装置3への酸素の供給を開始する。このような構成によれば、ガスタービン4を始動させるときに、クラッキング装置3内には、アンモニアおよび酸素の双方が存在する。クラッキング装置3の触媒は、酸素タンク8からの酸素によって酸化され、発熱する。したがって、クラッキング装置3は、外部からエネルギを受けること無く、触媒の自己発熱によってクラッキングに必要なエネルギを得ることができる。生成された水素リッチガスは、クラッキング装置3から燃焼器42に供給される。したがって、燃焼器42は、クラッキング装置3からも水素を受け入れる。したがって、ガスタービン4の始動をさらに促進することができる。
【0044】
別の観点では、システム100は、アンモニアタンク1と、アンモニアタンク1に接続され、アンモニアを水素および窒素へと分解するクラッキング装置3と、アンモニアタンク1およびクラッキング装置3に接続され、アンモニアタンク1からのアンモニアと、クラッキング装置3からの水素を含むガスと、を燃焼する燃焼器42を含むガスタービン4と、ガスタービン4の出力によって生成される電力によって運転し、水を水素および酸素に分解する水電解装置6と、水電解装置6によって生成される酸素を貯留し、かつ、クラッキング装置3と流体連通する酸素タンク8と、酸素タンク8からクラッキング装置3への酸素の供給を制御する制御装置90であって、ガスタービン4の始動時にクラッキング装置3への酸素の供給を開始する、制御装置90と、を備える。このような構成によれば、ガスタービン4を始動させるときに、クラッキング装置3内には、アンモニアおよび酸素の双方が存在する。クラッキング装置3の触媒は、酸素タンク8からの酸素によって酸化され、発熱する。したがって、クラッキング装置3は、外部からエネルギを受けること無く、触媒の自己発熱によってクラッキングに必要なエネルギを得ることができる。生成された水素リッチガスは、クラッキング装置3から燃焼器42に供給される。したがって、ガスタービン4を始動させるときに、燃焼器42では、アンモニアおよび水素の混合ガスが燃焼される。水素は、アンモニアに比して、容易に燃焼される。したがって、アンモニアのみが燃料として使用される場合に比して、燃焼器42における燃焼を加速することができる。よって、ガスタービン4の始動を促進することができる。
【0045】
また、システム100は、水電解装置6によって生成される水素を貯留し、かつ、燃焼器42と流体連通する水素タンク7を備え、制御装置90は、水素タンク7から燃焼器42への水素の供給を制御し、ガスタービン4の始動時に燃焼器42への水素の供給を開始する。このような構成によれば、ガスタービン4を始動させるときに、燃焼器42は、水素タンク7からも水素を受け入れる。したがって、ガスタービン4の始動をさらに促進することができる。
【0046】
続いて、他の実施形態に係るガスタービンシステムについて説明する。
【0047】
図2は、第2実施形態に係るガスタービンシステム200を示す概略図である。システム200は、酸素タンク8において、酸素が周囲の空気と混合されて貯留される点において、第1実施形態に係るシステム100と異なる。その他の構成については、システム200は、システム100と同じであってもよい。
【0048】
具体的には、酸素タンク8には、周囲の空気を酸素タンク8に取り込むための配管P8が設けられる。配管P8には、バルブV5と、コンプレッサ9と、が設けられる。バルブV5およびコンプレッサ9は、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、制御装置90によって制御される。
【0049】
また、酸素タンク8には、センサSeが設けられる。センサSeは、酸素タンク8内のガスの酸素濃度を検出する。センサSeは、例えば、酸素濃度計であることができる。センサSeは、制御装置90と有線または無線で通信可能に接続され、検出データを制御装置90に送信する。
【0050】
例えば、制御装置90は、センサSeによって検出される酸素濃度が所定の範囲内になるように、バルブV5の開度およびコンプレッサ9の出力を制御して、酸素タンク8に取り込まれる空気の量を調整する。例えば、所定の範囲の下限値は、酸素タンク8内のガスが、クラッキング装置3における発熱を十分に促進するように決定されることができ、一般的な環境の酸素濃度である21%よりも高い。また、酸素は、強い助燃性を有するガスである。したがって、例えば、所定の範囲の上限値は、酸素タンク8内における着火を防止するように決定されることができる。例えば、所定の範囲は、記憶装置90bに保存されてもよい。
【0051】
このような第2実施形態に係るシステム200は、システム100と同様な効果を奏する。また、システム200は、酸素タンク8内のガスの酸素濃度を検出するセンサSeと、周囲の空気を酸素タンク8に取り込むためのコンプレッサ9およびバルブV5と、を備える。このような構成によれば、酸素タンク8内のガスの酸素濃度を、クラッキング装置3における発熱を十分に促進し、かつ、酸素タンク8内における着火を防止できる範囲に維持することができる。
【0052】
続いて、さらに他の実施形態に係るガスタービンシステムについて説明する。
【0053】
図3は、第3実施形態に係るガスタービンシステム300を示す概略図である。システム300は、水素タンク7からの配管P6が、燃焼器42に直接的に接続される点において、第1実施形態に係るシステム100と異なる。その他の構成については、システム300は、システム100と同じであってもよい。
【0054】
例えば、配管P6は、燃焼器42において、不図示のイグナイタの近傍に水素を供給してもよい。このような構成によれば、ガスタービン4を始動させるときに、燃焼器42内に素早く火炎を形成することができる。このような第3実施形態に係るシステム300は、システム100と同様な効果を奏する。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上記の実施形態では、システム100,200,300は、水素タンク7および酸素タンク8の双方を備え、水電解装置6によって生成される水素および酸素の双方を、ガスタービン4を始動するために使用する。他の実施形態では、システムは、水電解装置6によって生成される水素および酸素の一方のみを、ガスタービン4を始動するために使用してもよい。例えば、他の実施形態では、システムは、酸素タンク8を備えなくてもよく、水電解装置6によって生成される酸素を、ガスタービン4を始動するために使用しなくてもよい。この場合、システムは、クラッキング装置3を備えてもよく、または、備えなくてもよい。さらに他の実施形態では、例えば、システムは、水素タンク7を備えなくてもよく、水電解装置6によって生成される水素を、ガスタービン4を始動するために使用しなくてもよい。
【0057】
また、第3実施形態に係るシステム300では、水素タンク7からの配管P6が、燃焼器42に直接的に接続される。他の実施形態では、例えば、配管P6は、クラッキング装置3と燃焼器42とを接続する配管P23に接続されてもよい。
【0058】
本開示は、CO放出の削減につながるアンモニアの使用を促進することができるので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 アンモニアタンク(アンモニア供給源)
3 クラッキング装置
4 ガスタービン
6 水電解装置
7 水素タンク
8 酸素タンク
42 燃焼器
90 制御装置
100 ガスタービンシステム
200 ガスタービンシステム
300 ガスタービンシステム
図1
図2
図3