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特開2024-65296撮影支援システム、X線撮影装置、および撮影支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065296
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】撮影支援システム、X線撮影装置、および撮影支援方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/10 20060101AFI20240508BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240508BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240508BHJP
   A61B 6/08 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A61B6/10 350
A61B6/03 333A
A61B6/03 360Q
A61B6/03 360G
A61B6/08 309Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174085
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 義人
(72)【発明者】
【氏名】山田 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 悠
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA16
4C093CA23
4C093CA33
4C093EC57
4C093EE16
4C093FB12
4C093FF35
4C093FF42
4C093FG01
4C093FG13
4C093FG14
(57)【要約】
【課題】X線撮影装置と患者との位置関係を調整する作業を簡略化できる撮影支援システム、X線撮影装置、および撮影支援方法を提供する。
【解決手段】X線撮影装置1によるX線撮影の被験体と被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、演算処理部は、撮像部で撮像した被験構成体の位置と支持部の位置との位置関係に応じて旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成し、表示部が重畳画像を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影装置の撮影支援システムであって、
前記X線撮影装置は、
X線発生器と、
X線検出器と、
前記X線発生器と前記X線検出器とを対向するように支持する支持部と、
少なくとも旋回軸の軸回りに前記支持部を駆動する駆動機構と、
少なくとも前記支持部を支え、前記駆動機構を備えるX線撮影本体と、
前記X線発生器、前記X線検出器、および前記駆動機構を制御する制御部と、
演算処理を行う演算処理部と、
画像を表示する表示部と、
を含み、
前記X線撮影装置は、
撮像対象物の表面を撮像する撮像部をさらに含み、
前記X線撮影装置によるX線撮影の被験体と前記被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、
前記演算処理部は、
前記撮像部で撮像した前記被験構成体の位置と前記支持部の位置との位置関係に応じて前記旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの前記支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、前記被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成し、
前記表示部が前記重畳画像を表示する、撮影支援システム。
【請求項2】
前記演算処理部が、前記撮像部で撮像した前記被験構成体の位置に応じて、
前記X線撮影本体の画像であるX線撮影本体画像と、
前記支持部仮想画像と、
前記被験構成体画像と、
を重畳した前記重畳画像を生成し、
前記重畳画像において前記支持部仮想画像を前記X線撮影本体画像の前記支持部の取付箇所に配置し、
前記表示部が前記重畳画像を表示する、請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項3】
前記演算処理部が、前記X線撮影のために前記支持部を駆動した場合の前記支持部と前記被験構成体との接触状況を演算し、接触が発生する場合に、接触を術者に報知する報知処理を行う、請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項4】
前記演算処理部が、前記接触が発生する場合に、前記重畳画像中の前記接触の領域に接触を示す画像処理を行う、請求項3に記載の撮影支援システム。
【請求項5】
前記X線撮影本体が、前記X線撮影本体の接地面に対して転動する転動子を備え、前記X線撮影本体が前記転動子を介して前記接地面に対して移動して前記被験構成体に向けて移動可能である、請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項6】
前記被験体支持体中、前記被験体の被験部の位置を位置決めする部分を被験体位置決め部としたとき、
前記撮像部が前記被験構成体として前記被験体支持体を撮像し、
前記演算処理部が、前記被験体の体格情報から前記被験体の仮想画像である被験体仮想画像を生成し、前記重畳画像において、前記被験体仮想画像を前記被験体支持体の画像である被験体支持体画像に対して前記被験体位置決め部で支持位置を特定されたように配置する画像処理を行う、請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項7】
前記演算処理部が、前記接触が発生する場合に、前記支持部仮想画像の色を変化させて警告色にする画像処理を行う、請求項3に記載の撮影支援システム。
【請求項8】
前記演算処理部が、前記接触が解消されたと判断した場合、前記支持部仮想画像の色を前記警告色と異なる色にする、請求項7に記載の撮影支援システム。
【請求項9】
前記演算処理部が、前記接触が発生すると判断した場合、前記重畳画像中の前記接触の領域の色を変化させる、請求項4に記載の撮影支援システム。
【請求項10】
前記演算処理部が、前記接触が発生すると判断した場合、前記接触を回避するために、前記X線撮影本体と前記被験構成体の一方または双方を移動させる方向および移動量のうち少なくとも一方の情報を前記表示部に表示させる、請求項3に記載の撮影支援システム。
【請求項11】
術者が手持ちで運搬でき、前記撮像部と前記表示部を備える端末装置をさらに備え、
前記演算処理部が、前記撮像部で撮像した画像に基づいて前記X線撮影本体に対する前記撮像部の相対位置を算出することにより、前記X線撮影本体に対する前記支持部仮想画像の配置を演算する、請求項2に記載の撮影支援システム。
【請求項12】
前記演算処理部が、撮像した画像に含まれる前記X線撮影本体の一部を基準に、前記相対位置を算出する、請求項11に記載の撮影支援システム。
【請求項13】
前記X線撮影装置は、前記端末装置から読取りできるように前記X線撮影本体に設けられ、前記X線撮影本体の情報を記憶する第1記憶タグを、さらに含み、
前記演算処理部は、前記第1記憶タグから読み取った前記X線撮影本体の情報に基づき、前記支持部仮想画像を前記X線撮影本体画像の支持部取付箇所に配置する、請求項12に記載の撮影支援システム。
【請求項14】
前記第1記憶タグは、2次元コードである、請求項13に記載の撮影支援システム。
【請求項15】
前記演算処理部は、前記被験体支持体に設けられた第2記憶タグから前記被験体仮想画像を作成する、請求項6に記載の撮影支援システム。
【請求項16】
前記撮像部は、深度カメラを有し、
前記演算処理部は、前記深度カメラで撮像した前記被験体の画像から前記被験体仮想画像を生成する、請求項6に記載の撮影支援システム。
【請求項17】
前記演算処理部は、X線撮影の関心領域の仮想画像である関心領域仮想画像を作成し、前記重畳画像にさらに重畳して前記表示部に表示させる、請求項1に記載の撮影支援システム。
【請求項18】
前記端末装置は、前記X線撮影装置と通信を行うための通信部をさらに含み、
前記演算処理部は、前記X線撮影装置の操作パネルを仮想空間内に表示し、
前記通信部は、術者が前記操作パネルを操作した場合、当該操作に対応したコマンドを前記X線撮影装置に送信する、請求項11に記載の撮影支援システム。
【請求項19】
X線発生器と、
X線検出器と、
前記X線発生器と前記X線検出器とを対向するように支持する支持部と、
少なくとも旋回軸の軸回りに前記支持部を駆動する駆動機構と、
少なくとも前記支持部を支え、前記駆動機構を備えるX線撮影本体と、
前記X線発生器、前記X線検出器、および前記駆動機構を制御する制御部と、
演算処理を行う演算処理部と、
画像を表示する表示部と、
撮像対象物の表面を撮像する撮像部と、を含み、
X線撮影の被験体と前記被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、
前記演算処理部は、
前記撮像部で撮像した前記被験構成体の位置と前記支持部の位置との位置関係に応じて前記旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの前記支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、前記被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成し、
前記表示部が前記重畳画像を表示する、X線撮影装置。
【請求項20】
X線撮影装置の撮影を支援する撮影支援方法であって、
前記X線撮影装置は、X線発生器と、X線検出器と、前記X線発生器と前記X線検出器とを対向するように支持する支持部と、少なくとも旋回軸の軸回りに前記支持部を駆動する駆動機構と、少なくとも前記支持部を支え、前記駆動機構を備えるX線撮影本体と、前記X線発生器、前記X線検出器、および前記駆動機構を制御する制御部と、演算処理を行う演算処理部と、画像を表示する表示部と、撮像対象物の表面を撮像する撮像部と、を含み、
前記X線撮影装置によるX線撮影の被験体と前記被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、
前記演算処理部で、前記撮像部で撮像した前記被験構成体の位置と前記支持部の位置との位置関係に応じて前記旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの前記支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、前記被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成するステップと、
前記表示部が前記重畳画像を表示するステップと、を含む、撮影支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮影支援システム、X線撮影装置、および撮影支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の診断等に用いられるX線撮影装置では、手足の関節や乳房等の患者の局部を撮影するX線CT撮影装置が開発されている。当該X線CT撮影装置として、例えば特開2011-025012号公報(特許文献1)に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1に開示されているX線CT撮影装置は、患者の頭部を撮影する可搬式のX線撮影装置で、X線発生源とX線検出器とを対向配置した旋回アームが、水平方向の一軸を旋回軸としてフレームに支持されている。そして、当該X線CT撮影装置は、X線発生源とX線検出器との間に頭部を配置した状態で、旋回アームを回転させることによって、X線発生源とX線検出器とを頭部周りに回転させて撮影を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-025012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のX線CT撮影装置では、X線発生源とX線検出器との間に頭部を配置した状態で、旋回アームを回転させる必要があるため、旋回アームと患者とが衝突しないように、X線CT撮影装置と患者との位置関係を確認する必要がある。具体的に、旋回アームと患者とが衝突しないことを確認するためには、患者に対してX線CT撮影装置を配置した上で、実際に旋回アームを手で回転させるか、X線を照射しないモードで旋回アームを回転させる必要があった。そのため、X線CT撮影装置と患者との位置関係を調整する作業は煩雑で、操作者にとって手間のかかる作業であった。
【0006】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、X線撮影装置と患者との位置関係を調整する作業を簡略化できる撮影支援システム、X線撮影装置、および撮影支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る撮影支援システムは、X線撮影装置の撮影支援システムである。X線撮影装置は、X線発生器と、X線検出器と、X線発生器とX線検出器とを対向するように支持する支持部と、少なくとも旋回軸の軸回りに支持部を駆動する駆動機構と、少なくとも支持部を支え、駆動機構を備えるX線撮影本体と、X線発生器、X線検出器、および駆動機構を制御する制御部と、演算処理を行う演算処理部と、画像を表示する表示部と、を含む。X線撮影装置は、撮像対象物の表面を撮像する撮像部をさらに含む。X線撮影装置によるX線撮影の被験体と被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、演算処理部は、撮像部で撮像した被験構成体の位置と支持部の位置との位置関係に応じて旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成し、表示部が重畳画像を表示する。
【0008】
本開示に係るX線撮影装置は、X線発生器と、X線検出器と、X線発生器とX線検出器とを対向するように支持する支持部と、少なくとも旋回軸の軸回りに支持部を駆動する駆動機構と、少なくとも支持部を支え駆動機構を備えるX線撮影本体と、X線発生器、X線検出器、および駆動機構を制御する制御部と、演算処理を行う演算処理部と、画像を表示する表示部と、撮像対象物の表面を撮像する撮像部と、を含む。X線撮影の被験体と被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、演算処理部は、撮像部で撮像した被験構成体の位置と支持部の位置との位置関係に応じて旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成し、表示部が重畳画像を表示する。
【0009】
本開示に係る撮影支援方法は、X線撮影装置の撮影を支援する撮影支援方法ある。X線撮影装置は、X線発生器と、X線検出器と、X線発生器とX線検出器とを対向するように支持する支持部と、少なくとも旋回軸の軸回りに支持部を駆動する駆動機構と、少なくとも支持部を支え駆動機構を備えるX線撮影本体と、X線発生器、X線検出器、および駆動機構を制御する制御部と、演算処理を行う演算処理部と、画像を表示する表示部と、撮像対象物の表面を撮像する撮像部と、を含む。X線撮影装置によるX線撮影の被験体と被験体を支持する被験体支持体の少なくとも一方を被験構成体としたとき、演算処理部で、撮像部で撮像した被験構成体の位置と支持部の位置との位置関係に応じて旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの支持部を画像化した仮想画像である支持部仮想画像と、被験構成体の画像である被験構成体画像とを重畳した重畳画像を生成するステップと、表示部が重畳画像を表示するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る撮影支援システムでは、旋回軸の軸回りに駆動している支持部の仮想画像を、算出したX線撮影装置との相対位置に基づいて調整し、撮像したX線撮影装置の画像に重畳して表示することができるので、X線撮影装置と患者との位置関係を調整する作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る撮影支援システムの概略構成を示す模式図である。
図2】実施の形態1に係るX線撮影装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る端末装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係るX線撮影装置と端末装置からなる対が全体として画像処理部を構成するとした場合のブロック図である。
図5】実施の形態1に係る撮影支援システムの支援処理を説明するためのフローチャートである。
図6】実施の形態1に係る撮影支援システムにおいて表示される仮想画像の概略図である。
図7】実施の形態2に係る撮影支援システムの支援処理を説明するためのフローチャートである。
図8】実施の形態2に係る撮影支援システムにおいて旋回アームとの衝突を説明するための概略図である。
図9】実施の形態2に係る撮影支援システムにおいて旋回アームの衝突時に表示される仮想画像の概略図である。
図10】実施の形態2に係る撮影支援システムにおいて旋回アームの衝突を回避するための修正指示が表示された仮想画像の概略図である。
図11】実施の形態2の変形例に係る撮影支援システムの概略構成を示す模式図である。
図12】患者、診療台の位置を特定する方法を説明するための図である。
図13】診療台での患者の位置決めを行う方法について説明するための図である。
図14】実施の形態3に係るX線撮影装置の概略構成を示す模式図である。
図15】実施の形態3に係るX線撮影装置の構成を示すブロック図である。
図16】表示される仮想画像の変形例を説明する概略図である。
図17】端末装置の変形例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
可搬式のX線撮影装置を用いて患者(被検体)を撮影する場合、旋回アームと患者とが衝突しないように、X線撮影装置と患者との位置関係を確認する必要がある。なお、本願においては、衝突は接触の一例である。本実施の形態に係る撮影支援システムでは、旋回軸の軸回りに駆動する旋回アームの仮想画像を、撮像したX線撮影装置の画像の支持部の位置に重畳した重畳画像を表示することができるので、X線撮影装置と患者との位置関係を調整する作業を簡略化できる。まず、以下に、本実施の形態に係る撮影支援システムの構成について説明する。
[撮影支援システムの構成]
図1は、実施の形態1に係る撮影支援システム100の概略構成を示す模式図である。撮影支援システム100は、X線撮影装置1と、端末装置200とを含む。なお、端末装置200が外部装置と通信可能な構成として、X線撮影装置1に関する情報(例えば、旋回アームの仮想画像など)を収集できるようにしてもよい。外部装置として、例えばPC、データベース、X線撮影装置1を制御する装置などが考えられる。
【0013】
端末装置200は、操作キー216と、表示部であるディスプレイ218と、撮像部であるカメラ(図3参照)とを含む。なお、図1に示す端末装置200では、ディスプレイ218側の筺体面にカメラが設けられておらず、ディスプレイ218の反対側の筺体面にカメラが設けられている一例を示しているが、これに限定されない。例えば、端末装置200の筺体自体にはカメラを設けず、ケーブル等でカメラを接続できるようにしてもよい。カメラ217は撮像対象物の表面を撮像する。撮像は可視光撮影によってもよいし、赤外光撮影などの不可視光撮影によってもよい。
【0014】
端末装置200は、カメラで撮像したX線撮影装置1の画像の旋回アーム30の位置に、旋回アーム30の仮想画像を重畳してX線撮影装置1の駆動状態を表示することができる。図1に示す端末装置200では、タブレット型のPCが図示されているが、これに限られない。端末装置200は、X線撮影装置1の駆動状態をAR(Augmented Reality)やVR(Virtual Reality)として表示できる装置であれば、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)、スマートグラスなどであってもよい。
【0015】
現実空間に現にある物体の表面を撮像して得た画像を実画像とし、現実空間には無いが画像処理で存在するかのように表示可能に仮想的に生成した物体の形状の画像を仮想画像とする。
[X線撮影装置の構成]
一方、X線撮影装置1は、例えば、可搬式のX線CT(Computerized Tomography)撮影装置である。なお、X線撮影装置1は、可搬式であれば、X線CT撮影装置に限定されない。可搬式とする具体的構成例としては、X線撮影部7の基部底部に車輪などの、接地面に対して転動する転動子72を備えさせ、X線撮影部7が転動子72を介して接地面に対して移動して被験構成体MRに向けて移動可能であるように構成する。
【0016】
図2は、実施の形態1に係るX線撮影装置1の構成を示すブロック図である。X線撮影装置1は、図2に示すように、X線CT撮影を実行して、投影データを収集するX線撮影部7と、X線撮影部7において収集した投影データを処理して、X線CT画像データなどを生成する画像処理部8とを含む。なお、X線撮影装置1は、図1においてX線撮影部7と画像処理部8とが一体として構成され1つの筐体50に収容されているが、X線撮影部7と画像処理部8とがそれぞれ別の筐体に収容され、接続ケーブルによって接続される構成でもよい。一体として組むことも一体から分離して別体となるようになっていてもよい。X線撮影部7をX線撮影本体と呼び換えてもよい。X線撮影部7を、照射X線を授受するX線照射授受装置と呼び換えてもよい。単にX線照射装置と呼び換えてもよい。
【0017】
X線撮影部7は、患者(被験体)M1に向けてX線の束で構成するX線コーンビームBxやX線細隙ビームを出射するX線発生器10と、X線発生器10で出射されたX線を検出するX線検出面を備えたX線検出器20と、X線発生器10とX線検出器20とをそれぞれ支持する支持部30SPの具体例としての旋回アーム30と、床面に対して鉛直方向に延びる筐体50と、床面に対して旋回軸31が水平となるように取り付けた旋回アーム30を駆動する旋回アーム駆動部40(駆動機構)と、制御部60とで構成されている。支持部30SPはX線発生器10とX線検出器20をそれぞれ支持する。旋回アーム30は支持部30SPの例である。支持部30SPはリング形状をしていてもよい。本構成において、X線撮影部7は支持部30SP(旋回アーム30)を支えるようになっている。
【0018】
X線発生器10、およびX線検出器20は、旋回アーム30の両端部にそれぞれ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、水平方向に延びる旋回軸31を介して、筐体50の一面に設けた旋回アーム駆動部40に固定されている。なお、旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、筐体に吊り下げられる構成であってもよい。
【0019】
旋回アーム30は、正面視略逆U字状であり、床面に対して水平に備えた旋回軸31を旋回中心として旋回する。旋回アーム30は、旋回軸31の軸周りに旋回する旋回部30Rと、旋回部30Rの一端に備えられた、X線発生器10を備えるX線発生部30Gと、旋回部30Rの他端に備えられた、X線検出器20を備えるX線検出部30Dで構成される。
【0020】
X線撮影の被験体M1、具体例として患者には手術中であればドレープやチューブなどが装着されていることがある。本件の目的はそのような装着物も含めて接触が無いか確認を容易にすることにあるので、そのような装着物も含めて被験体M1であると考えてよい。以下の説明では、被験体M1としての患者(被験者)を「患者M1」と記すことがある。
【0021】
被験体M1が図示の例では診療台Sに横たわることで現実空間の中で少なくとも被験体M1の被験部が安定する。診療台Sのように、被験体M1が安定するように被験体M1を支持する要素は被験体支持体MSである。診療台Sには、図示のように車輪等の転動子72を設けて、可搬式としてもよい。被験体支持体MSと、当該被験体支持体MSに支持された被験体M1の少なくともいずれかを被験構成体MRと呼んでもよい。
【0022】
旋回駆動する支持部30SPおよびその内部空間を旋回圏内としてもよい。支持部30SPの旋回圏内に配置される被験構成体MRを旋回圏内サブジェクト(旋回圏内サブジェクトSB)と呼んでもよい。この旋回圏内サブジェクトSBは、接触の発生の有無の確認対象となるものを指すと考えてもよい。本件構成により、接触の発生の有無が旋回圏内で確認容易とされる。X線撮影装置1によっては被験体支持体MSがX線撮影部7に連接され、旋回アーム30と被験体支持体MSとの接触がもともと発生しない配置となっているものもある。この場合、被験体M1のみが旋回圏内サブジェクトSBとなると考えてもよい。X線撮影部7と被験体支持体MSが分離した構成となっている場合や、被験体支持体MSがX線撮影部7に連接されていたとしてもX線撮影部7に対する被験体支持体MSの相対的移動の自由度が高い構造となっていて、旋回アーム30と被験体支持体MSの接触が発生しうるものである場合は、被験体支持体MSも旋回圏内サブジェクトSBとなりうる。
【0023】
支持部30SPのうち、旋回圏内サブジェクトSBとの接触を観察する対象とする部分を旋回観察対象として設定するようにしてもよい。そのような、旋回観察対象となる部分をローターRTと呼んでもよい。例えば、旋回アーム30全体をローターRTとしてもよいし、X線発生部30GとX線検出部30DのみをローターRTとしてもよいし、X線CT撮影中のX線発生部30GとX線検出部30Dのうち旋回圏内サブジェクトSBに近い方のみをローターRTとしてもよい。もっとも、旋回圏内サブジェクトとの接触の有無判定が課題となる文脈では、「旋回アーム30」と表現したとしても、それが旋回アーム30の全体でも一部でも「旋回アーム30」となると考えてもよい。旋回駆動するローターRTおよびその内部空間を旋回圏内としてもよい。
【0024】
旋回アーム駆動部40の内部には、図示していないが旋回軸移動機構が備えられている。この旋回軸移動機構は、旋回軸31の一端に接続されている。この旋回軸31の他端には、旋回アーム30に設けられた旋回駆動機構(不図示)が接続されている。旋回駆動機構は、旋回軸31とモータ(不図示)に巻回されたベルト(不図示)を備えており、旋回駆動機構のモータの駆動により、旋回軸31を中心にして旋回アーム30が旋回する。旋回軸31は、図示しない軸受けを介して、旋回アーム30に接続されており、旋回アーム30が旋回する際には、旋回軸31は回転せずに旋回アーム30のみが回転する。
【0025】
旋回軸31の旋回軸移動機構側端部に軸受を介在させて、旋回軸31に対して旋回アーム30が旋回しないように固定させて、旋回軸31と旋回アーム30が一体となって旋回軸移動機構に対して旋回するようにしてもよい。
【0026】
旋回軸移動機構や旋回駆動機構のように旋回アーム30を駆動する機構は支持部を駆動する駆動機構である。旋回アーム駆動部40は支持部を駆動する駆動機構の例である。X線CT撮影には少なくとも旋回駆動機構を要する。
【0027】
旋回軸移動機構は、例えばボルトやモータ、ガイド機構などで構成される。旋回軸移動機構を駆動することによって、旋回軸31が旋回アーム駆動部40を設けた筐体50の一面内で移動し、旋回アーム30を所定範囲内の任意の位置へ移動させることができる。
【0028】
このような構成を備えるX線撮影部7は、X線コーンビームBxを患者M1の撮影領域CAに照射しながら、旋回軸31まわりに旋回アーム30を旋回させて、撮影領域CAに対するX線投影データを収集する。そして収集されたX線投影データは、画像処理部8へ送信される。なお、旋回軸移動機構および旋回駆動機構は、旋回アーム駆動部40を構成している。
【0029】
X線撮影部7では、旋回アーム駆動部40が図2に示すように制御部60に接続されており、予め決められたプログラムに従って駆動することによって、旋回アーム30を旋回させながら、筐体50の一面内において上下左右方向に移動させることができる。
【0030】
制御部60は、X線撮影部7の各構成の動作を制御することができ、例えば、筐体50の内部に配置されている。詳しくは、制御部60には、図2に示すように、X線発生器10、X線検出器20、旋回アーム駆動部40、表示部61、操作部62、通信インタフェース63、記憶部64、および報知部90が接続され、各構成と通信して各構成を制御している。
【0031】
なお、本実施の形態において、表示部61をタッチパネル等で構成することで、操作部62の機能の一部を備えている。すなわち、表示部61は操作部62としても機能する。さらに、操作部62には、スイッチ部65が接続されている。スイッチ部65は、例えば、CT撮影前に、押下することで、旋回アーム30を撮影開始位置に移動させることができる。
【0032】
通信インタフェース63は、接続ケーブル83と接続され、画像処理部8と通信するためのインタフェースである。記憶部64は、制御部60によって各構成を制御するための制御プログラム、X線投影データ等を記憶する。報知部90は、所定のブザー音を発するなどの報知動作を実行することができる。
【0033】
画像処理部8は、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示部81、およびキーボードやマウス等で構成される操作部82、演算部84、演算部84で実行するプログラム等を記憶する記憶部85、および通信インタフェース86で構成している。演算部84はCPUを主構成要素としてよく、ROMやRAM等の副構成要素を備えてよい。
【0034】
表示部81、操作部82、記憶部85、および通信インタフェース86は、演算部84に接続され、記憶部85に記憶された制御プログラムを演算部84で実行することにより制御されている。また、演算部84は、記憶部85に記憶された画像処理プログラムを実行することで、X線投影データに対して逆投影などの演算処理を行って、撮影領域CAの3次元領域を表現する3次元CT画像データ(ボリュームデータ)を生成する。つまり、演算部84は、X線投影データを再構成する機能を備える演算処理部、演算処理装置である。
【0035】
演算部84で生成された3次元CT画像データは、記憶部85に記憶される。画像処理部8において、操作者(術者)は、操作部82を介して画像処理部8に対して各種指令を入力することができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、表示部81が操作部82の機能の一部または全部を備え、操作部82としても機能することとなる。また、表示部81に各種のボタン等の画像の表示をして、マウス等でポインタを操作してONできるようにしてもよく、この場合も表示部81が操作部82としても機能する。表示部81は、演算部84で生成された3次元CT画像データが表示される。表示部81は、演算部84で再構成したデータを出力する出力インタフェースでもある。
【0036】
画像処理部8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成され、通信ケーブルである接続ケーブル83で通信インタフェース86と通信インタフェース63とを接続し、X線撮影部7との間で各種データを送受信できれば、同じ筐体50内に収容される必要はなく別々の筐体であってもよい。ただし、画像処理部8とX線撮影部7との通信を有線でなく無線で行ってもよい。
[端末装置の構成]
次に、端末装置200のハードウェア構成について具体的に説明する。図3は、実施の形態1における端末装置200のハードウェア構成を示す模式図である。図3に示す端末装置200は、各種の演算を行なうCPU(Central Processing Unit)211と、ROM(Read Only Memory)212と、RAM(Random Access Memory)213と、各種のプログラムを不揮発的に格納するフラッシュメモリ214と、通信インタフェース215と、操作キー216と、カメラ217と、ディスプレイ218とを備える。通信インタフェース215は通信部の一例である。なお、これらの部位は、内部バスを介して互いに接続される。また、端末装置200が外部装置と通信するためには、通信インタフェース215を介して通信を行う必要がある。
【0037】
ディスプレイ218は、ディスプレイのみの構成でも、ディスプレイ218を覆うように設置されたタッチパネルを有する構成でもよい。通信インタフェース215は、例えば、Ethernet(登録商標)用IF(InterFace)と、シリアル用IFと、USB(Universal Serial Bus)用IFなどがある。
【0038】
CPU211は、演算処理部の主構成要素であって、フラッシュメモリ214に格納されているプログラムをRAM213などに展開して実行する。格納されているプログラムには、後述する撮像支援を実行するためのプログラムも含まれている。ROM212は、一般的に、オペレーティングシステム(OS:Operating System)等のプログラムを格納している。RAM213は、揮発性メモリであり、ワークメモリとして使用される。CPU211が主構成要素となり、ROM212、RAM213が副構成要素となって演算部211Xを構成すると考えてもよい。CPU211が行う演算は演算部211Xの行う演算と考えてよい。
【0039】
図4は、実施の形態1に係るX線撮影装置1と端末装置200からなる対が全体として画像処理部を構成するとした場合のブロック図である。図4に示すように、少なくとも画像処理部8と端末装置200からなる対が全体として画像処理部8Xを構成すると見てもよい。画像処理部8Xは画像処理装置であると考えてもよい。X線撮影部7の方にも画像処理機能を持つ要素が備わっている場合は、それらも含めて画像処理部8Xであると考えてよい。
【0040】
演算部84と演算部211Xとが演算処理部として演算部84Xを構成し、記憶部85と記憶部としてのフラッシュメモリ214とが記憶部85Xを構成し、表示部81と表示部としてのディスプレイ218とが表示部81Xを構成し、操作部82と操作部としての操作キー216とが操作部82Xを構成すると考えてもよい。
【0041】
演算部84Xのうち、画像処理を行う部分を画像処理演算部と見てもよい。端末装置200を、端末装置単体で操作者が手持ちで運搬できる可搬画像処理部または可搬画像処理装置であると見てもよい。端末装置200は一般的な体格の術者が手持ちで運搬可能なサイズと重量であることが好ましい。画像処理部8を、画像処理部8Xのうち可搬画像処理部(端末装置200)を除いた画像処理ベース部であると見てもよい。
[撮像支援方法]
可搬式のX線撮影装置1を用いて患者M1を撮影する場合、診療台Sに横たわっている患者M1の近くまでX線撮影装置1を移動し、旋回アーム30と患者M1とが衝突しないように、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整する。撮影支援システム100では、当該調整のために、端末装置200でX線撮影装置1および患者M1を撮影して、端末装置200のディスプレイ218で旋回する旋回アーム30の仮想画像を確認することができる。具体的に、フローチャートを用いて撮像支援方法を説明する。図5は、実施の形態1に係る撮影支援システムの支援処理を説明するためのフローチャートである。
【0042】
ここでは、演算部84Xがカメラ217で撮像した画像に基づいてX線撮影部7に対するカメラ217の相対位置を算出することにより、X線撮影部7に対する支持部仮想画像VSPの配置を演算する。相対位置は、撮像した画像に含まれるX線撮影部7の一部を基準に行ってもよい。支持部仮想画像VSPは支持部30SPを画像化した仮想画像である。
【0043】
まず、端末装置200のCPU211は、カメラ217でX線撮影装置1および患者M1を撮像した画像を取得したか否かを判断する(ステップS101)。撮像した画像を取得していない場合(ステップS101でNO)、CPU211は、処理をステップS101に戻し、カメラ217から撮像した画像が送られてくるのを待つ。
【0044】
撮像した画像を取得していた場合(ステップS101でYES)、CPU211は、カメラ217で撮像した画像に基づいてカメラ217とX線撮影装置1、具体的にはX線撮影部7との相対位置を算出する(ステップS102)。具体的に、CPU211は、操作者が操作キー216(図1参照)などで撮像支援のメニューを選択した場合、カメラ217を起動して撮像処理を開始する。X線撮影装置1および患者M1を撮像した画像は、カメラ217からCPU211に送られる。図1に示すX線撮影部7には、あらかじめマーカmaが貼り付けられている。そのため、X線撮影部7および患者M1を撮影した画像には、マーカmaも含まれている。なお、本開示においてカメラ217で撮像した画像は、静止画像であっても、動画像であってもよい。以下では、説明の便宜上、カメラ217で撮像した画像は、動画像であるとして説明する。
【0045】
マーカmaは、例えば2次元コードであり、X線撮影部7の情報を記憶する記憶タグ(第1記憶タグ)である。もちろん、マーカmaは、2次元コードに限定されず文字、数字、記号、その他の図柄などの模様であってもよい。X線撮影部7の情報には、X線撮影部7の構造に関する情報が含まれてよい。また、CPU211は、マーカmaの4頂点から現実空間におけるカメラ217とマーカmaとの位置関係が算出することができるので、この算出結果に基づいてX線撮影部7との相対位置を算出できる。さらに、CPU211は、カメラ217とマーカmaとの位置関係から仮想空間におけるカメラ217の位置および姿勢を設定することができ、X線撮影部7の情報も利用して、後述する仮想空間内にある旋回アーム30などの仮想画像を現実空間にあるX線撮影部7に対して位置が一致するように重畳させることができる。厳密には、X線撮影部画像I7の支持部取付箇所に支持部30SPの仮想画像の配置を仮想的に行うようにする。
【0046】
このように、演算部211Xは、カメラ217で撮像した画像に基づいてX線撮影部7に対するカメラ217の相対位置を算出することにより、X線撮影部7に対する支持部30SPの仮想画像の配置を演算する。
【0047】
なお、以下の説明では、図1に示すX線撮影装置1には、マーカmaが貼り付けてあると説明するが、これに限定されない。X線撮影装置1にマーカmaが貼り付けられていない場合であっても、CPU211は、撮像した画像に含まれるX線撮影装置の部分(例えば、旋回アーム30の形状など)を基準に、X線撮影装置1との相対位置を算出することができる。
【0048】
図5に戻って、CPU211は、旋回アーム30が駆動している仮想画像を作成する(ステップS103)。具体的に、CPU211は、マーカmaに記憶されている情報から仮想画像を作成しても、マーカmaに記憶されている情報に基づいてあらかじめ記憶されている仮想画像をフラッシュメモリ214から読み出してもよい。また、CPU211は、マーカmaに記憶されている情報からX線撮影装置1に対応する機種を特定し、特定した機種の仮想画像を、通信インタフェース215を介して外部にサーバから読み出してもよい。なお、X線撮影装置1にマーカmaが貼り付けられていない場合、CPU211は、フラッシュメモリ214からあらかじめ記憶されている仮想画像を読み出す。
【0049】
このように、演算部84Xは、第1記憶タグから読み取ったX線撮影部7の情報に基づき、支持部仮想画像VSPをX線撮影部画像I7の支持部取付箇所に配置する。
【0050】
X線撮影装置1の機種を特定する場合、特定した機種により、X線撮影部7の旋回アーム30の配置などの構造が特定できる。
【0051】
X線撮影装置1を複数方向から可視光撮影した画像または深度カメラなどの3次元カメラで撮像した画像があれば旋回アーム30などの支持部(ローターRT)の部分を抽出識別できるよう学習(機械学習)した学習モデルを用いて支持部の仮想画像を生成するようにしてもよい。
【0052】
CPU211は、ステップS102で算出したX線撮影装置1との相対位置に基づいて、撮像したX線撮影装置1の画像に仮想画像を重畳できるように、仮想画像の位置、大きさなどを調整する(ステップS104)。CPU211は、ステップS104で調整した仮想画像を撮像したX線撮影装置1の画像に重畳してディスプレイ218に表示させる(ステップS105)。図1に示す端末装置200のディスプレイ218には、ローターRTとして旋回アーム30が駆動している仮想画像tが撮像したX線撮影装置1の画像に重畳表示されている。なお、撮像したX線撮影装置1の画像が動画像であれば、旋回アーム30が旋回軸31を中心に回っている仮想の動画像がX線撮影装置1に重畳表示される。撮像したX線撮影装置1の画像が静止画像であれば、旋回アーム30が旋回軸31を中心に回った場合の軌跡を示す仮想の静止画像がX線撮影装置1に重畳表示される。静止画像の表示については、旋回アーム30の軌跡の表示に限らず、例えば、被験構成体MRとの接触が生じる場合に、接触状況にある旋回アーム30の仮想画像t(支持部仮想画像VSP)を旋回アーム30が接触状態で動きを止めたような静止画像となるよう生成し、重畳表示するようにしてもよい。
【0053】
上述のような、支持部30SPの動画表示の支持部仮想画像VSPを動態表示型仮想画像と呼び、支持部30SPの軌跡表示の支持部仮想画像VSPを軌跡表示型仮想画像と呼び、支持部30SPの動きを止めたような静止画表示の支持部仮想画像VSPを静態表示型仮想画像と呼ぶようにしてもよい。軌跡表示型仮想画像は、後出の図6に図示するようにX線撮影の終始の間、支持部30SPが占める領域の形状画像とするようにしてよい。
【0054】
CPU211は、カメラ217とマーカmaとの位置関係から仮想空間におけるカメラ217の位置および姿勢を設定するので、現実空間にあるX線撮影装置1の位置、大きさに合わせて旋回アーム30の仮想画像の位置、大きさを調整することができる。そのため、端末装置200の向きを変えてX線撮影装置1を撮像しても、X線撮影装置1の向きにあわせて旋回アーム30の仮想画像が追従してディスプレイ218に表示される。その結果、撮影支援システム100では、端末装置200のカメラ217で様々な角度からX線撮影装置1を撮像することで、旋回アーム30と患者M1とが衝突しないように、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を確認することができる。もちろん、患者M1以外に、診療台S、周辺の装置、壁などと旋回アーム30とが衝突しないように、X線撮影装置1とそれらとの位置関係を確認することができる。
【0055】
図6は、実施の形態1に係る撮影支援システム100において表示される仮想画像tの概略図である。図6(a)に示すように、端末装置200のディスプレイ218で、旋回している旋回アーム30の仮想画像tと患者M1とが衝突しないことを確認することができる。よって、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を確認するため、実際に旋回アーム30を手で回転させたり、X線を照射しないモードで旋回アーム30を回転させたりする必要がなくなり、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整する作業を大幅に簡便化できる。
【0056】
被験構成体MRの画像を被験構成体画像IMRと呼んでよい。被験構成体画像IMRのうち、被験構成体MRの実画像を被験構成体実画像RMRと呼んでよく、仮想画像を被験構成体仮想画像VMRと呼んでよい。患者の画像や診療台の画像は被験構成体画像IMRの例である。
【0057】
被験構成体MRの画像のうち、患者等の被験体M1の画像を被験体画像IM1と呼んでよい。被験体画像IM1のうち、被験体M1の実画像を被験体実画像RM1と呼んでよく、仮想画像を被験体仮想画像VM1と呼んでよい。
【0058】
被験体仮想画像VM1は、被験体M1の体格情報から生成することができる。例えば、カメラ217で撮像した被験体M1の画像からサイズ、形状を検出して被験体仮想画像VM1を生成してもよいし、個々の被験体M1の身体をサイズの測定具等で計測して得た情報から生成してもよいし、標準的なサイズ、形状の被験体仮想画像VM1を複数の中から選択可能としてもよい。標準的なサイズは体格のクラス別に複数準備された中から患者に適合するものを選択するようにしてよい。
【0059】
被験構成体MRの画像のうち、診療台等の被験体支持体MSの画像を被験体支持体画像IMSと呼んでよい。被験体支持体画像IMSのうち、被験体支持体MSの実画像を被験体支持体実画像RMSと呼んでよく、仮想画像を被験体支持体仮想画像VMSと呼んでよい。
【0060】
被験体画像IM1、被験体支持体画像IMSは被験構成体画像IMRに属する。被験体実画像RM1、被験体支持体実画像は被験構成体実画像RMRに属する。被験体仮想画像VM1、被験体支持体仮想画像VMSは被験構成体仮想画像VMRに属する。
【0061】
旋回アーム30等の支持部30SPの画像を支持部画像ISPと呼んでよい。支持部画像ISPの画像のうち、支持部30SPの実画像を支持部実画像RSPと呼んでよく、仮想画像を支持部仮想画像VSPと呼んでよい。支持部仮想画像VSPのうち、特に支持部30SPが旋回軸の軸回りに駆動したと仮想したときの支持部30SPを画像化した画像を支持部駆動仮想画像VDSPと呼んでもよい。
【0062】
X線撮影装置1またはX線撮影部7の画像をX線撮影部画像I7と呼んでよい。X線撮影部画像I7はX線撮影本体画像I7と表現してもよく、X線撮影部画像I7の画像のうち、X線撮影装置1またはX線撮影部7の実画像をX線撮影本体実画像R7と呼んでよく、仮想画像をX線撮影本体仮想画像V7と呼んでよい。各実画像、仮想画像は演算部84Xで生成可能である。
【0063】
演算部84Xは、カメラ217で撮像した被験構成体MRの位置と支持部30SPの位置との位置関係に応じて旋回軸31の軸回りに駆動したと仮想したときの支持部30SPを画像化した仮想画像である支持部仮想画像VSPと、被験構成体MRの画像である被験構成体画像IMRとを重畳した重畳画像を生成できる。
【0064】
図6(a)に示す例では、カメラ217で被験体M1を撮像し、旋回アーム30の仮想画像t(支持部仮想画像VSP)と被験体M1との接触の有無を確認できる。接触の有無は、被験体M1の位置と旋回アーム30の位置との位置関係から判定できる。例えば、カメラ217で旋回アーム30を直接撮像することで、旋回アーム30の位置を特定するようにしてもよいし、カメラ217でX線撮影部7基部を撮像することで、X線撮影部7基部の位置を検出し、これにより、その構造の一部である旋回アーム30の位置を特定するようにしてもよい。また、X線撮影部7基部とカメラ217の位置関係が予め定まっているのであれば、カメラ217に対する旋回アーム30の位置も定まるので、被験体M1の位置さえ特定できれば、被験体M1の位置と旋回アーム30の位置の位置関係が特定できるようにしてもよい。
【0065】
図6(a)では、被験体画像IM1である被験体M1の画像と支持部仮想画像VSPである仮想画像tとが重畳した重畳画像ISIが生成されて、表示部81Xに表示される。
【0066】
仮想画像tは、予定されるX線CT撮影の旋回アーム30の旋回範囲に適合した形状で表示されるようにしてもよい。例えば、360°旋回のX線CT撮影の場合は、図6(a)に示すように断面O字状の円筒形の表示とし、180°旋回のX線CT撮影の場合は、図6(b)に示すように断面C字状の欠けのある円筒形の表示とする。
【0067】
仮想画像tを、半透明の画像で表示してもよい。仮想画像tを、実写の旋回アーム30の色彩で示してもよいが、異なる色彩で示してもよい。旋回アームの色彩表示、異なる色彩表示は、非透明の色彩表示であってもよいし、半透明の色彩表示であってもよい。
【0068】
支持部と被験構成体との接触が生じる場合に、非接触状態に導くアシストをするように構成してもよい。例えば、支持部30SPと被験構成体MRの位置関係から両者の接触が生じると判定される場合に、非接触状態の実現のために支持部30SPと被験構成体MRの一方または双方を移動させる目標位置を表示するようにしてもよい。目標位置の算出のためには、例えば、現状の接触位置と接触量を算出し、非接触状態とするための移動方向と移動量の少なくとも一方を演算するようにしてよい。
【0069】
目標位置の表示方法の例を示すと、非接触状態になったときの支持部30SPと被験構成体MRの一方または双方の仮想画像をさらに重畳表示する構成、接触状態で表示されている支持部30SPと被験構成体MRの一方または双方の仮想画像に対し、移動目標位置の指標をさらに重畳表示する構成、可視光ビームの発光源をX線撮影装置1のいずれかの位置に設け、非接触状態の目標位置を可視光ビーム照射で示す構成、移動方向と移動量数値の表示をする構成など、様々に考えうる。これは、他の実施の形態でも同様である。
【0070】
以上のように、実施の形態1に係る撮影支援システム100は、可搬式のX線撮影装置1と、X線撮影装置1の駆動状態を表示する端末装置200とを備えるX線撮影装置1の撮影支援システムである。X線撮影装置1は、X線発生器10と、X線検出器20と、X線発生器10とX線検出器20とを対向するように支持する旋回アーム30と、少なくとも旋回軸31の軸回りに旋回アーム30を駆動する旋回アーム駆動部40と、X線発生器10、X線検出器20、および旋回アーム駆動部40を制御する制御部60と、を含む。端末装置200は、X線撮影装置1を撮像するカメラ217と、カメラ217で撮像した画像に基づいてX線撮影装置との相対位置を算出するCPU211と、旋回軸の軸回りに駆動している旋回アーム30の仮想画像tを、CPU211で算出したX線撮影装置1との相対位置に基づいて調整し、カメラ217で撮像したX線撮影装置1の画像に重畳して表示するディスプレイ218とを含む。
【0071】
これにより、実施の形態1に係る撮影支援システム100は、旋回軸31の軸回りに駆動している旋回アーム30の仮想画像tを、算出したX線撮影装置1との相対位置に基づいて調整し、撮像したX線撮影装置1の画像に重畳して表示することができるので、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整する作業を簡略化できる。
(実施の形態2)
実施の形態1に係る撮影支援システム100では、旋回アーム30の仮想画像tを撮像したX線撮影装置1の画像に重畳して表示すると説明した。実施の形態2に係る撮影支援システムでは、さらに患者M1の形状を旋回アーム30の仮想画像tと同じ仮想空間に取り込むことで、仮想空間内で旋回アーム30と患者M1との衝突の有無を判断することが可能となる。なお、実施の形態2に係る撮影支援システムは、実施の形態1で説明した図1図3に示す撮影支援システム100と構成が同じであるため、同じ符号を用いて説明し、詳しい構成について説明を繰り返さない。
【0072】
図7は、実施の形態2に係る撮影支援システム100の支援処理を説明するためのフローチャートである。まず、端末装置200のCPU211は、カメラ217でX線撮影装置1および患者M1を撮像した画像を取得したか否かを判断する(ステップS101)。撮像した画像を取得していない場合(ステップS101でNO)、CPU211は、処理をステップS101に戻し、カメラ217から撮像した画像が送られてくるのを待つ。
【0073】
撮像した画像を取得していた場合(ステップS101でYES)、CPU211は、患者M1の情報を取得できたか否かを判断する(ステップS101a)。実施の形態2に係るカメラ217は、深度(Depth)カメラなど3次元カメラの機能を備えている。そのため、CPU211は、撮像した画像に含まれる患者M1の位置や形状を患者M1の情報(3次元情報)として取得することができる。患者M1の位置や形状を3次元情報として取得することができれば、仮想空間内に患者M1の仮想画像を作成することができる。
【0074】
例えば、患者M1がカメラ217のフレームから外れている、撮像した画像がブレているなどで、患者M1の情報を取得できない場合(ステップS101aでNO)、CPU211は、処理をステップS101に戻し、カメラ217から撮像した新しい画像が送られてくるのを待つ。
【0075】
患者M1の情報を取得できた場合(ステップS101aでYES)、CPU211は、カメラ217で撮像した画像に基づいてX線撮影装置1との相対位置を算出する(ステップS102)。次に、CPU211は、旋回アーム30が駆動している仮想画像を作成する(ステップS103)。さらに、CPU211は、ステップS102で算出したX線撮影装置1との相対位置に基づいて、撮像したX線撮影装置1の画像に仮想画像を重畳できるように、仮想画像の位置、大きさなどを調整する(ステップS104)。
【0076】
CPU211は、旋回アーム30の仮想画像だけなく、患者M1の仮想画像も同じ仮想空間内における位置、大きさなどを、現実空間にあるX線撮影装置1と患者M1との位置関係にあわせて調整する。そのため、CPU211は、旋回アーム30を旋回させた場合に、同じ仮想空間内にある旋回アーム30と患者M1とが衝突するか否かをシミュレーションすることができる。具体的に、CPU211は、旋回アーム30を旋回させた場合に、患者M1と旋回アーム30とが重なる空間が存在するか否かで、患者M1と旋回アーム30との衝突を判断する(ステップS104a)。
【0077】
図8は、実施の形態2に係る撮影支援システム100において旋回アーム30との衝突を説明するためのシミュレーションの概略図である。
【0078】
図8では、X線撮影部画像I7と、支持部仮想画像VSPである仮想画像tと、被験構成体画像IMRとを重畳した重畳画像ISIが生成されている。重畳画像ISIにおいて支持部仮想画像VSPはX線撮影部画像I7の支持部取付箇所に配置される。重畳画像ISIは表示部81Xに表示される。
【0079】
図8(a)は、被験体仮想画像VM1である患者M1の仮想画像の左肩が旋回アーム30の仮想画像tと重なる空間C1が存在するので、X線撮影を行うと患者M1と旋回アーム30とが衝突することがわかる。CPU211は、図8(a)のように空間C1が存在する場合、患者M1と旋回アーム30との衝突があると判断できる。なお、被験体仮想画像VM1を、仮想画像における患者M1と表現してもよい。
【0080】
カメラ217は、患者M1だけでなく診療台Sも撮像することができるので、仮想空間内に診療台Sの仮想画像を作成することもできる。さらに診療台Sの形状を仮想空間に取り込むことで、仮想空間内で旋回アーム30と診療台Sとの衝突の有無も判断することが可能となる。図8(b)は、旋回アーム30を旋回させた場合に被験体支持体仮想画像VMSである診療台Sの仮想画像の端部が旋回アーム30と重なる空間C2が存在するので、X線撮影を行うと診療台Sと旋回アーム30とが衝突することがわかる。CPU211は、図8(b)のように空間C2が存在する場合、診療台Sと旋回アーム30との衝突があると判断できる。なお、被験体支持体仮想画像VMSを仮想画像における被験体支持体MSと表現してもよい。
【0081】
演算部84Xは、X線撮影のために支持部30SPを駆動した場合の支持部30SPと被験構成体MRとの接触状況を演算し、接触が発生する場合に、接触を術者に報知する報知処理を行うことができる。
【0082】
患者M1と旋回アーム30との衝突がない場合(ステップS104aでNO)、CPU211は、旋回アーム30の仮想画像(支持部仮想画像VSP)を撮像したX線撮影装置1の画像またはX線撮影部7の画像(いずれにしてもX線撮影部画像I7である)に重畳して表示する(ステップS105)。X線撮影部画像I7は、X線撮影本体実画像R7でもよいが、外形データがあれば、X線撮影本体仮想画像V7として生成してもよい。
【0083】
CPU211は、患者M1の仮想画像(被験体仮想画像VM1)と旋回アーム30の仮想画像t(支持部仮想画像VSP)との重なりがない、すなわち、患者M1と旋回アーム30との衝突がないので、図6に示す旋回している旋回アーム30の仮想画像tを例えば緑色で表示(正常表示またはノープロブレム表示)し、緑色の仮想画像と撮像した患者M1およびX線撮影装置1とをディスプレイ218に重畳表示させる。
【0084】
一方、患者M1と旋回アーム30との衝突がある場合(ステップS104aでYES)、CPU211は、報知処理をする。報知処理の例として、旋回アーム30の仮想画像を撮像したX線撮影装置1の画像に重畳して警告表示する(ステップS106)。報知は音や振動で行うようにしてもよい。図9は、実施の形態2に係る撮影支援システム100において旋回アーム30の接触、具体例として衝突がある場合、支持部仮想画像VMPの色を変化させて警告色にするようにしてよい。例えば、図9に示すように、旋回している旋回アーム30の仮想画像tを例えば赤色で表示(警告表示)し、赤色の仮想画像と撮像した患者M1およびX線撮影装置1とをディスプレイ218に重畳表示させる。なお、図9では、赤色の仮想画像tを表すために仮想画像tにハッチングを施している。旋回アーム30と患者M1の衝突のみならず、旋回アーム30と被験体支持体MSとの衝突のシミュレーション結果も反映してよいので、シミュレーション上の患者M1と被験体支持体MSの少なくともいずれかとの衝突がある場合に旋回アーム30の仮想画像tを例えば赤色で表示(警告表示)し、赤色の仮想画像tと撮像した患者M1の被験体仮想画像VM1、被験体支持体MSの被験体支持体仮想画像VMS、X線撮影本体画像をディスプレイ218に重畳表示させるようにしてよい。
【0085】
接触状況が解消したと判断された場合は、支持部仮想画像VMPの色を警告色と異なる色、例えば、前述の緑色の正常表示またはノープロブレム表示とするようにしてよい。
【0086】
図8に示す例では、カメラ217で被験体M1、被験体支持体MSのような被験構成体MRを撮像し、旋回アーム30の仮想画像t(支持部仮想画像VSP)と被験構成体MRとの接触の有無を確認できる。接触の有無は、被験構成体MRの位置と旋回アーム30の位置との位置関係から判定できることは図6の場合と同様である。
【0087】
被験構成体MR、旋回アーム30、X線撮影部7の位置関係は様々な手法で特定できる。例えば、カメラ217でX線撮影部7、旋回アーム30、被験構成体MRを直接撮像することで、3者の位置関係を特定するようにしてもよいし、カメラ217でX線撮影部7基部を撮像することで、X線撮影部7基部の位置を検出し、これにより、その構造の一部である旋回アーム30の位置を特定し、さらに被験構成体MRを撮像することで3者の位置関係を特定するようにしてもよい。また、X線撮影部7基部とカメラ217の位置関係が予め定まっているのであれば、カメラ217に対するX線撮影部7、旋回アーム30の位置も定まるので、被験体M1の位置さえ特定できれば、被験体M1の位置とX線撮影部7、旋回アーム30の位置の位置関係が特定できるようにしてもよい。
【0088】
被験構成体画像IMRは、図示のように被験構成体仮想画像VMRでもよいが、被験構成体実画像RMRを用いることもできる。例えば、X線撮影部7に対し、被験構成体MRを、旋回アーム30に接触が無いように配置し、その状態にしてカメラ217でX線撮影部7、旋回アーム30、被験構成体MRを撮像する。そうして、X線撮影本体実画像R7と被験構成体実画像RMRからなる画像と旋回アーム30の駆動シミュレーションをして得た支持部仮想画像VSPとの重畳画像ISIを生成表示し、被験構成体実画像RMRと支持部仮想画像VSPとの重なりの有無を表示するようにすることもできる。
【0089】
このように、演算部84Xは、カメラ217で撮像した被験構成体MRの位置に応じて、X線撮影部画像I7と、支持部仮想画像VSPと、被験体画像IM1とを重畳した重畳画像ISIを生成し、重畳画像ISIにおいて支持部仮想画像VSPをX線撮影部画像I7の支持部取付箇所に配置し、表示部81Xが表示する。
【0090】
患者M1と旋回アーム30との衝突を警告する方法は、図9に表示した方法に限定されず、例えば、端末装置200のディスプレイ218に衝突や警告の文字を表示したり、音声で衝突や警告を報知したり、警告音を発したりしてもよい。また、CPU211は、接触が発生すると判断した場合、接触を示す画像処理として重畳画像ISI中の接触の領域の色を変化させるようにしてもよい。例えば、図8(a)に示した患者M1と旋回アーム30との衝突部分(空間C1)の部分を、例えば緑色から赤色に変更して患者M1と旋回アーム30との衝突を警告してもよい。
【0091】
CPU211は、接触が発生すると判断した場合、接触を回避するために、X線撮影部7と被験構成体MRを移動させる方向および移動量のうち少なくとも一方の情報を表示部81Xに表示させるようにしてよい。例えば、患者M1と旋回アーム30との衝突を単に警告するだけでなく、患者M1と旋回アーム30との衝突を回避するための修正指示をディスプレイ218に表示させてもよい。図10は、実施の形態2に係る撮影支援システム100において旋回アーム30の衝突を回避するための修正指示が表示された仮想画像の概略図である。CPU211は、図10に示すように、患者M1と旋回アーム30との衝突を回避するため、X線撮影装置1または旋回アーム30を移動させる方向を示す矢印の仮想画像Aと、旋回アーム30の仮想画像tと、撮像した患者M1およびX線撮影装置1とをディスプレイ218に重畳表示させる。操作者は、ディスプレイ218に表示された矢印の方向にX線撮影装置1または旋回アーム30を移動するように、操作部62でX線撮影装置1を操作する。当該操作により患者M1と旋回アーム30との衝突が回避されると、旋回アーム30の仮想画像tが例えば赤色から緑色に戻り、緑色の仮想画像と撮像した患者M1およびX線撮影装置1とがディスプレイ218に重畳表示される。
【0092】
被験構成体MRと旋回アーム30との接触がある場合に旋回アーム30との接触を回避するための修正指示をディスプレイ218に表示するようにしてもよい。
【0093】
患者M1と旋回アーム30との衝突を回避するための修正指示の表示は、図10に表示した矢印の仮想画像Aに限定されず、例えば、患者M1と旋回アーム30との衝突している箇所を表示したり、回避するための操作手順を表示したり、X線撮影装置1または旋回アーム30を移動させる方向および移動量のうち少なくとも一方の情報を表示したりしてもよい。また、患者M1と旋回アーム30との衝突を回避するための修正指示の方法は、端末装置200のディスプレイ218に修正指示を表示させる場合に限定されず、音声でX線撮影装置1または旋回アーム30を移動させる方向および移動量のうち少なくとも一方の情報を報知してもよい。なお、患者M1と旋回アーム30との衝突を回避するため、X線撮影装置1と旋回アーム30とを共に移動させてもよい。
【0094】
以上のように、旋回アーム30と被験構成体MRとの接触が生じる場合と生じない場合とで表示形態が異なるように表示してもよい。例えば、色彩が異なるように表示するとして、接触が生じない場合は緑や青等の寒色系の色で、接触が生じる場合は赤やオレンジ等の暖色系の色で表示するようにしてよい。
【0095】
重畳画像ISI中の、接触の起こる領域に接触を示す画像処理を行うようにしてもよい。例えば、接触が生じる範囲のみ異なる表示形態で示してもよい。例えば、色彩が異なるように表示するとして、接触が生じない範囲を寒色系の色で、接触が生じる範囲を暖色系の色で表示するようにしてもよい。例えば、動態表示型の仮想画像tにおいて、接触が生じない状態で動いている間は仮想画像tを寒色系の色で表示し、接触が生じた状態になったら仮想画像tを暖色系の色で表示するようにしてもよい。軌跡表示型の仮想画像tにおいて、接触が生じない範囲を寒色系の色で表示し、接触が生じる範囲を暖色系の色で表示するようにしてもよい。静態表示型の仮想画像tにおいて、接触が生じない状態の仮想画像tを寒色系の色で表示し、接触が生じた状態の仮想画像tを暖色系の色で表示するようにしてもよい。
【0096】
前述の実施の形態では、ステップS101aで患者M1の情報を深度(Depth)カメラなど3次元カメラの機能を備えているカメラ217で撮像することにより取得すると説明した。しかし、患者M1の情報を取得して患者M1の仮想画像Mt(被験構成体仮想画像VMR)を作成する方法は、これに限定されず、例えば、標準的なサイズの患者M1の情報が記憶されたマーカが診療台に貼り付けられていてもよい。標準的なサイズは体格のクラス別に複数準備された中から患者M1に適合するものを選択したものでもよい。図11は、実施の形態2の変形例に係る撮影支援システム100aの概略構成を示す模式図である。
【0097】
図11に示す撮影支援システム100aでは、あらかじめ診療台Sに貼り付けられているマーカmbに基づいて患者M1の被験体仮想画像VM1を作成する。マーカmbは、例えば2次元コードであり、標準的なサイズの患者M1の情報を記憶する記憶タグ(第2記憶タグ)である。もちろん、マーカmbは、2次元コードに限定されず文字、数字、記号、その他の図柄などの模様であってもよい。マーカmbは被験体支持体MSに設けられた第2記憶タグである。
【0098】
撮影支援システム100aでは、マーカmbに基づいて患者M1の情報を取得して患者M1の被験体仮想画像VM1を作成する。具体的に、CPU211は、マーカmbに記憶されている情報から患者M1の仮想画像を作成しても、マーカmbに記憶されている情報に基づいてあらかじめ記憶されている患者M1の仮想画像をフラッシュメモリ214から読み出してもよい。また、CPU211は、マーカmbに記憶されている情報から、患者M1の仮想画像を、通信インタフェース215を介して外部にサーバから読み出してもよい。
【0099】
撮影支援システム100aでは、図11に示すように、端末装置200のディスプレイ218において、旋回している旋回アーム30の仮想画像tと患者M1の被験構成体仮想画像VMRとが撮像したX線撮影装置1の画像に重畳して表示される。そのため、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を確認するため、診療台Sに患者M1を載せる必要がなく、X線撮影装置1と診療台Sとを用意するだけでよく、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整する作業を大幅に簡便化できる。
【0100】
また、図11にては被験体M1の安全性がより確保された構成が示される。現実空間の状況は、X線撮影部7と被験体支持体MSである診療台Sとが近接配置されている状況である。診療台Sの被験部支持領域は旋回アーム30の旋回圏内にあり、診療台Sには被験体M1が居らず、すなわち被験体支持体MSが被験体M1を支持していない。表示部81Xには現実空間の位置関係にあるX線撮影部画像I7と被験体支持体画像IMSが表示される。X線撮影部画像I7はX線撮影部実画像R7であり、被験体支持体画像IMSは被験体支持体実画像RMSである。
【0101】
両者の配置、構造再現さえ正確であれば、X線撮影部画像I7をX線撮影部仮想画像V7とし、被験体支持体画像IMSを被験体支持体仮想画像VMSとしてもよい。表示部81Xには被験体仮想画像VM1も支持部仮想画像VSPも重畳表示される。この構成により、被験体M1が実際は被験体支持体MSに不在でも、接触の検証が可能である。特に、X線撮影部7と被験体支持体MSの少なくとも一方が可搬式であり、X線撮影部7を被験体支持体MSのところに運搬してくる場合や被験体支持体MSをX線撮影部7のところに運搬してくる場合、または双方を運搬してセットする場合に有効である。
【0102】
旋回アーム30の仮想画像と同じ仮想空間内における被験体仮想画像VM1の位置を現実空間にある被験体M1との位置関係にあわせて調整するために、位置合わせ用要素を、具体的には、例えば被験体M1に固定したマーカや被験体M1の身体的特徴箇所を利用する構成が考えられる。位置合わせ要素の位置は、例えば画像認識ソフトウェア等を利用して特定できる。この構成は、ひけたM1をX線撮影のために位置付けして撮像する前に予め被験体M1を撮像して仮想画像を得ておく場合に好適である。
【0103】
次に、患者、診療台の位置を特定する方法を説明する。図12は、患者M1、診療台Sの位置を特定する方法を説明するための図である。図12(a)に頭部MHに3つのマーカMC1、MC2、MC3を固定し位置を特定する例を示す。額右にマーカMC1、額左にマーカMC2、顎にマーカMC3を固定的に置く。この状態で被験体M1を撮影して仮想画像を得る。仮想画像上マーカの位置は特定される。
【0104】
図12(b)に頭部MHに3つの特徴箇所の位置を特定する例を示す。被験体M1を撮影して得た画像の右目尻部を特徴箇所(特徴点)FP1とし、左目尻部を特徴箇所(特徴点)FP2とし、鼻尖部すなわち鼻の頂上部を特徴箇所(特徴点)FP3とする。こうして特徴箇所(特徴点)の位置は特定される。
【0105】
図12(a)の場合、上記のとおりマーカを固定した被験体M1を撮像して仮想画像を得た上で、位置付けした被験体M1をカメラ217で撮像する。このとき、マーカを頭部MHに固定したまま撮像する。撮像画像においてマーカの位置を特定する。位置付けした被験体M1のマーカと、仮想空間の被験体仮想画像VM1のマーカを位置合わせする。すなわち、仮想空間内の被験体M1の仮想画像を現実空間における被験体M1の位置に適合させる。
【0106】
図12(b)の場合、上記のとおり被験体M1を撮像して得た仮想画像に上記の特徴箇所(特徴点)を特定した上で、位置付けした被験体M1をカメラ217で撮像する。撮像画像において特徴箇所(特徴点)の位置を特定する。位置付けした被験体M1の特徴箇所(特徴点)と、被験体仮想画像VM1の特徴箇所(特徴点)を位置合わせする。すなわち、仮想空間内の被験体仮想画像VM1を現実空間における被験体M1の位置に適合させる。
【0107】
図12(a)、図12(b)にては、現実空間の被験体M1の位置合わせ要素の位置に被験体仮想画像VM1の位置合わせ要素の位置を適合させる。
【0108】
上述のように、被験体M1に3または3を超す数の位置合わせ要素を用いると、3次元的位置特定により被験体仮想画像VM1の位置合わせの精度を高くできる利点がある。
【0109】
被験体仮想画像VM1は、実際の被験体M1を撮影して得てもよいが、体格のクラス別に複数準備された中から現実の被験体M1に適合するものを選択するようにしてもよい。選択は操作者が行っても、機械学習した学習モデルが被験体M1の画像から自動選択するようにしてもよい。図12(a)の場合、現実の被験体M1に固定するマーカの位置と被験体仮想画像VM1に設定するマーカの位置が一致するように、現実の被験体M1にマーカを固定するか、現実の被験体M1に固定したマーカの位置に適合するよう被験体仮想画像VM1に設定するマーカの位置を調整する。図12(b)の場合、被験体仮想画像VM1の特徴箇所と現実の被験体M1に見出す特徴箇所を一致させる。
【0110】
以上は被験体M1に対する位置合わせ要素の構成であるが、被験体支持体MSに対する位置合わせ要素の構成も考えうる。
【0111】
旋回アーム30の仮想画像tと同じ仮想空間内における被験体支持体MSの仮想画像(被験体支持体仮想画像VMS)の位置を現実空間にある被験体支持体MSとの位置関係に合わせて調整するために、位置合わせ用要素を、具体的には、例えば被験体支持体MSに固定したマーカや被験体支持体MSの構造的特徴箇所を利用する構成が考えられる。
【0112】
位置合わせ要素の位置は、例えば画像認識ソフトウェア等を利用して特定できる。この構成は、被験体支持体MSをX線撮影のために位置付けして撮像する前に予め被験体支持体MSを撮像して仮想画像を得ておく場合に好適である。
【0113】
図12(c)に被験体支持体MSの被験体の被験部分近傍、具体的には患者M1が横たわった場合の診療台(被験体支持体MS)の頭部側の端部MS1に3つのマーカMC4、MC5、MC6を固定し位置を特定する例を示す。患者M1が横たわったときの端部MS1右側(患者の右側)端上端にマーカMC4、端部MS1左側端上端にマーカMC5、端部MS1右側端下端にマーカMC6を固定的に置く。この状態で患者を撮影して仮想画像を得る。仮想画像上マーカの位置は特定される。
【0114】
図12(d)に被験体支持体MSに3つの特徴箇所の位置を特定する例を示す。被験体支持体MSを撮影して得た画像の上述の端部MS1右側端上端を特徴箇所(特徴点)FP4とし、端部MS1左側端上端を特徴箇所(特徴点)FP5とし、端部MS1右側端下端を特徴箇所(特徴点)FP6とする。こうして仮想画像上特徴箇所(特徴点)の位置は特定される。
【0115】
図12(c)の場合、上記のとおりマーカを固定した被験体支持体MSを撮像して被験体支持体仮想画像VMSを得た上で、位置付けした被験体支持体MSをカメラ217で撮像する。このとき、マーカを端部に固定したまま撮像する。撮像画像においてマーカの位置を特定する。位置付けした被験体支持体MSのマーカと、仮想画像の被験体支持体仮想画像VMSのマーカを位置合わせする。すなわち、仮想空間内の被験体支持体仮想画像VMSを現実空間における被験体支持体MSの位置に適合させる。
【0116】
図12(d)の場合、上記のとおり被験体支持体MSを撮像して得た被験体支持体仮想画像VMSに上記の特徴箇所(特徴点)を特定した上で、位置付けした被験体支持体MSをカメラ217で撮像する。撮像画像において特徴箇所(特徴点)の位置を特定する。位置付けした被験体支持体MSの特徴箇所(特徴点)と、被験体支持体仮想画像VMSの特徴箇所(特徴点)を位置合わせする。すなわち、仮想空間内の被験体支持体仮想画像VMSを現実空間における被験体支持体MSの位置に適合させる。
【0117】
図12(c)、図12(d)にては、現実空間の被験体支持体MSの位置合わせ要素の位置に被験体支持体仮想画像VMSの位置合わせ要素の位置を適合させる。
【0118】
上述のように、被験体支持体MSに3または3を超す数の位置合わせ要素を用いると、3次元的位置特定により被験体支持体仮想画像VMSの位置合わせの精度を高くできる利点がある。
【0119】
被験体支持体仮想画像VMSは、実際の被験体支持体MSを撮影して得てもよいが、被験体支持体MSの構造データを座標データ的に準備して利用するようにしてもよい。図12(c)の場合、現実の被験体支持体MSに固定するマーカの位置と被験体支持体仮想画像VMSに設定するマーカの位置が一致するように、現実の被験体支持体MSにマーカを固定するか、現実の被験体支持体MSに固定したマーカの位置に適合するよう被験体支持体仮想画像VMSに設定するマーカの位置を調整する。図12(d)の場合、被験体支持体仮想画像VMSの特徴箇所と現実の被験体支持体MSに見出す特徴箇所を一致させる。
【0120】
被験体支持体MSに対する位置合わせ要素の構成は、上述の、X線撮影装置1と被験体支持体MSが分離した構成となっている場合や、被験体支持体MSがX線撮影装置1に連接されていたとしてもX線撮影装置1に対する被験体支持体MSの移動の自由度が高い構造となっている場合に好適である。
【0121】
診療台Sのような被験体支持体MSの画像に被験体仮想画像VM1を重畳表示させるについて、被験体支持体MSに被験体M1の被験部の位置を正確な位置に位置決めする要素があれば、被験体仮想画像VM1の表示位置特定の精度が向上する。図13は、診療台Sでの患者M1の位置決めを行う方法について説明するための図である。図13に示す診療台Sすなわち被験体支持体MSは、撮影対象となる頭部MHを位置決めするヘッドホルダーSHHを備える。ヘッドホルダーSHHは、左右の側頭押さえSSHと後頭部レストSBHからなる。後頭部レストSBHの後頭部を受ける部分は後頭部の頂がはまる凹部HRに形成されている。このように、被験体支持体MS中の、さらに患者M1の被験部の位置を正確な位置に位置決めするものを被験体位置決め部PSと呼んでよい。被験体位置決め部PSを、被験体ポジショナーと呼んでよい。本件の診療台Sにこのような被験体位置決め部PSを設けてよい。
【0122】
図10に示す診療台Sがこのような被験体位置決め部PSを備えるものとして、撮影支援システム100を次のように構成することも可能である。被験体支持体MSとして診療台SをX線撮影装置1にX線撮影のために位置付ける。この時点でシミュレーションを行う。現実の診療台Sの位置は、例えば上述の位置合わせ要素の利用で検出できる。仮想空間において被験体仮想画像VM1を現実の診療台Sの位置に適合するように位置付けする。被験体仮想画像VM1の配置は被験体位置決め部PSがあるため、仮想空間においても被験体位置決め部PSに対応する位置を基準にして正確に行える。
【0123】
現実の空間に位置付けられた診療台Sはカメラ217で撮像され、ディスプレイ218で表示される。CPU211は診療台Sの被験体支持体画像IMSの患者支持位置に被験体仮想画像VM1を重畳表示した重畳画像を画像処理で生成し、表示させる。ディスプレイ218には旋回アーム30の仮想画像tと被験体仮想画像VM1とがともに表示される。
【0124】
すなわち、演算部84Xは、被験体M1の体格情報から被験体M1の仮想画像である被験体仮想画像VM1を生成し、重畳画像ISIにおいて、被験体仮想画像VM1を被験体支持体画像IMSに対して被験体位置決め部PSで支持位置を特定されたように配置する画像処理を行う。
【0125】
仮想空間において、旋回アーム30を旋回させた場合の被験構成体MRとの接触の有無を判定する演算を行う。具体的には、旋回アームの仮想画像tと被験構成体仮想画像VMRの接触の有無を判定する。接触がある場合に旋回アーム30の仮想画像tを撮像したX線撮影装置1の画像の旋回アーム30の位置に重畳して警告表示する。接触が無い場合は旋回アーム30の仮想画像tを撮像したX線撮影装置1の画像の旋回アーム30の位置に重畳して正常表示またはノープロブレム表示する。旋回アーム30の仮想画像tと患者M1の被験構成体仮想画像VMRを共に表示するので、接触の有無の状況が視覚的にわかりやすく表示される。
【0126】
診療台SをX線撮影装置1にX線撮影のために位置付けた時点で、診療台Sに対して旋回アーム30を旋回させるシミュレーションを行うようにしてもよい。仮想空間で診療台Sと旋回アーム30の接触が生じる場合、警告表示して診療台Sの位置変更を促す。接触状態が生じない場合は単に患者M1の診療台Sへの着床(診療台Sによる患者M1の支持)を促す。及び/または、旋回アーム30の仮想画像tを正常表示またはノープロブレム表示する。
【0127】
以上のように、実施の形態2に係る撮影支援システム100,100aでは、CPU211が、患者M1の仮想画像を旋回アーム30の仮想画像と同じ仮想空間内に作成し、患者M1と旋回軸31の軸回りに駆動している旋回アーム30とが衝突しているか否かを判断する。これにより、旋回アーム30が患者M1に衝突するか否かをシミュレーションで確認でき、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整する作業を大幅に簡便化できる。
【0128】
なお、本願において、支持部仮想画像VSPのように、実際に表示部を通して操作者に見せる画像は人間が視認できるように生成しなければならないが、接触の有無判定の演算には必ずしも人間が視認できる仮想画像の生成をしなくともよい。例えば、患者M1の3次元座標データとローターRTの3次元座標データの双方の位置を3次元演算し、仮想画像を生成せずに場所的に同じ位置を共有するならば接触ありと判定するようにしてよい。共通の仮想空間において患者M1の仮想画像MtとローターRTの仮想画像VRTを生成してみて、双方が接触しているかどうか判定をしたのと同じ結果が得られる演算が行われればよい。
【0129】
(実施の形態3)
実施の形態1に係る撮影支援システム100では、端末装置200のカメラ217でX線撮影装置1などを撮像することにより、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整する作業を支援するシステムについて説明した。実施の形態3に係るX線撮影装置では、端末装置の機能を取り込み、X線撮影装置単体でX線撮影装置と患者との位置関係の調整を支援できる構成について説明する。
【0130】
図14は、実施の形態3に係るX線撮影装置1aの概略構成を示す模式図である。図15は、実施の形態3に係るX線撮影装置1aの構成を示すブロック図である。図14および図15に示すX線撮影装置1aは、旋回アーム30の上方にアーム71を介してカメラ70が取り付けてある以外、図1に示すX線撮影装置1と同じ構成である。そのため、図14および図15に示すX線撮影装置1aのうち、図1に示すX線撮影装置1と同じ構成には同じ符号を付して、詳細な説明を繰り返さない。
【0131】
可搬式のX線撮影装置1aを用いて患者(不図示)を撮影する場合、診療台(不図示)に横たわっている患者の近くまでX線撮影装置1aを移動させる。患者の近くまでX線撮影装置1aを移動させた場合、カメラ70は、旋回アーム30および患者を撮像することができる。X線撮影装置1aでは、旋回アーム30および患者をカメラ70で撮像して、撮像した画像に旋回する旋回アーム30の仮想画像を表示部81に重畳表示させることができる。
【0132】
実施の形態1で端末装置200のCPU211が処理していた旋回アーム30の仮想画像の作成などの処理は、画像処理部8の演算部84で同じように処理することができる。具体的に、演算部84は、カメラ70で旋回アーム30および患者を撮像した画像を取得する。演算部84は、旋回アーム30が駆動している仮想画像を作成する。なお、カメラ70は、X線撮影装置1aに取り付けられているため、旋回アーム30との相対位置はあらかじめ決まっており、旋回アーム30の仮想画像の位置、大きさなどを調整する必要はない。演算部84は、旋回アーム30の仮想画像を撮像した旋回アーム30の画像に重畳して表示部81に表示させる。X線撮影装置1aは、カメラ70が深度(Depth)カメラなど3次元カメラの機能を有していれば、患者の仮想画像を旋回アーム30の仮想画像と同じ仮想空間内に取り込むことができ、仮想空間内で旋回アーム30と患者との衝突の有無を判断することもできる。
【0133】
以上のように、実施の形態3に係るX線撮影装置1aは、可搬式のX線撮影装置である。X線撮影装置1aは、X線発生器10と、X線検出器20と、旋回アーム30と、旋回アーム駆動部40と、少なくとも旋回アーム30を含む範囲を撮像できるカメラ70と、表示部81と、制御部60と、を備える。制御部60は、旋回軸31の軸回りに駆動している旋回アーム30の仮想画像を作成し、カメラ70で撮像した旋回アーム30の画像に重畳して表示部81に表示させる。これにより、実施の形態3に係るX線撮影装置1aは、旋回軸31の軸回りに駆動している旋回アーム30の仮想画像を、撮像した旋回アーム30の画像に重畳して表示することができるので、X線撮影装置1a(特に、旋回アーム30)と患者との位置関係を調整する作業を簡略化できる。
(変形例1)
前述の実施の形態では、旋回アーム30の仮想画像、患者M1の仮想画像などをカメラ217などで撮像した画像に重畳して、端末装置200のディスプレイ218などに表示させることを説明した。さらに、CPU211(演算部84)は、X線撮影の関心領域の仮想画像(関心領域仮想画像)を作成し、作成した仮想画像をカメラ217などで撮像した画像に重畳してディスプレイ218などに表示させてもよい。
【0134】
図16は、表示される仮想画像の変形例を説明する概略図である。CPU211は、図16に示すように、X線撮影の関心領域の仮想画像Rをカメラ217で撮像した患者M1の画像に重畳してディスプレイ218に表示させて、患者M1のどの部分をX線撮影するのかを視覚的に確認できるようにしている。そのため、撮影支援システム100などでは、X線撮影の関心領域を考慮しつつ、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を調整することができる。
(変形例2)
前述の実施の形態では、端末装置200において、旋回アーム30の仮想画像tをカメラ217で撮像したX線撮影装置1の画像に重畳して表示させると説明した。しかし、端末装置は、旋回アーム30の仮想画像tを表示するだけでなく、X線撮影装置1を操作する操作端末として機能させてもよい。
【0135】
図17は、端末装置の変形例を説明する概略図である。図17に示す端末装置200aは、操作キー216と、表示部であるディスプレイ218と、撮像部であるカメラ(不図示)とを含む。なお、端末装置200aでは、ディスプレイ218側の筺体面にカメラが設けられておらず、ディスプレイ218の反対側の筺体面にカメラが設けられている一例を示しているが、これに限定されない。また、端末装置200aのハードウェア構成は、図3で説明した端末装置200のハードウェア構成と同じ構成であるため説明を繰り返さない。
【0136】
端末装置200aは、カメラで撮像したX線撮影装置1の画像に、旋回アーム30の仮想画像tを重畳してX線撮影装置1の駆動状態を表示することができる。さらに、端末装置200aでは、ディスプレイ218がタッチパネルを有する構成となっており、図17に示すようにディスプレイ218にX線撮影装置1の操作ボタン220を表示できる。操作者がディスプレイ218に表示された操作ボタン220を操作した場合、端末装置200aは、操作ボタン220に対応したコマンドを、通信インタフェース215(図3参照)を介してX線撮影装置1に送信することで、X線撮影装置1を操作することができる。具体的に、旋回アーム30の仮想画像tを重畳したX線撮影装置1の画像を見ながら、操作者は、操作ボタン220を操作して旋回アーム30が患者M1と衝突しないように旋回アーム30の旋回軸31を移動させることができる。
【0137】
なお、図17に示す端末装置200aでは、タブレット型のPCが図示されているが、これに限られない。端末装置200aは、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラスなどでもよく、ディスプレイにX線撮影装置1の操作ボタンを表示させてX線撮影装置1の操作が可能であればよい。
【0138】
また、端末装置200aでは、操作者が操作ボタン220を操作しなくても、仮想空間内でのシミュレーションにより患者M1と旋回アーム30とが衝突している判断した場合、衝突を回避するように旋回アーム30の旋回軸31を移動させるコマンドを自動で送信するようにしてもよい。これにより、端末装置200aを含む撮影支援システムでは、端末装置200aでX線撮影装置1および患者M1を撮影するだけで、X線撮影装置1と患者M1との位置関係を自動で調整することができる。
【0139】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0140】
1,1a X線撮影装置、7 X線撮影部、8 画像処理部、10 X線発生器、20 X線検出器、30 旋回アーム、30D X線検出部、30G X線発生部、40 旋回アーム駆動部、30R 旋回部、31 旋回軸、50 筐体、60 制御部、61,81 表示部、62,82 操作部、63,86,215 通信インタフェース、64,85 記憶部、65 スイッチ部、70,217 カメラ、71 アーム、84 演算部、90 報知部、100,100a 撮影支援システム、200,200a 端末装置、211 CPU、212 ROM、213 RAM、214 フラッシュメモリ、216 操作キー、218 ディスプレイ、220 操作ボタン。
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