(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065307
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】糖衣食品
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20240508BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240508BHJP
【FI】
A23G3/34 109
A23G3/34
A23L5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174104
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】山邊 史貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB08
4B014GB09
4B014GE03
4B014GK03
4B014GK04
4B014GL10
4B014GP18
4B014GP19
4B035LC01
4B035LC03
4B035LE07
4B035LG19
4B035LK03
4B035LK19
4B035LP26
(57)【要約】
【課題】口中に入れた当初はハードキャンディのような硬度を有し、舐めるうちにかつ砂糖のおいしさと程よい酸味が交互に感じられることができ、かつかりっとしたクランチ性を有する、新たな食感を有する糖衣食品を提供すること。
【解決手段】糖類を含有する食品からなる中心部及び前記中心部に対して重量比で5倍以上の糖衣層を有する糖衣食品であって、前記糖衣層が、砂糖主体の平均粒径が5~15μmである結晶を含むA層と、80メッシュ以下の酸味料を含む粉体からなるB層とが交互に重なり合ったラメラ構造を有し、前記A層の平均の厚みが25~100μm、前記B層の平均の厚みが2.5~25μmであり、前記糖衣層の厚みが7mm以上であり、ハードキャンディ様の硬度を有することを特徴とする糖衣食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類を含有する食品からなる中心部及び前記中心部に対して重量比で5倍以上の糖衣層を有する糖衣食品であって、
前記糖衣層が、砂糖主体の結晶を含むA層と、80メッシュ以下の酸味料を含む粉体からなるB層とが交互に重なり合ったラメラ構造を有し、
前記A層の平均の厚みが25~100μm、前記B層の平均の厚みが2.5~25μmであり、
前記糖衣層の厚みが7mm以上であり、
ハードキャンディ様の硬度を有することを特徴とする、糖衣食品。
【請求項2】
前記ハードキャンディ様の硬度として、破壊強度が30~50kgfである、請求項1に記載の糖衣食品。
【請求項3】
前記中心部の食品が錠菓、丸薬又はキャンディである、請求項1又は2に記載の糖衣食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂糖主体のなめらかで硬度のある層と酸味料主体の程良い酸味が感じられる粉体層とを有する糖衣層を備えた、ハードキャンディ様の硬度を持った糖衣食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術で製造されている糖衣食品として、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ、タブレット、ラムネ、チョコレート、錠剤などにハード糖衣、またはソフト糖衣などを行うことによって様々な食感、味わいが提供されている。
【0003】
一般的な上記菓子類や錠剤等に利用される糖衣物は、被糖衣物(以下、中心部と呼ぶ。)に対して、砂糖に代表される結晶性物質を主成分とし、他の糖類、澱粉等の結合剤を含む水溶液を、スプレー等で中心部表面の全域に行き渡らせ、この後、炭酸カルシウム等の微粉末混合物を散布して中心部相互の結着をふせぎ、次に温風を送って糖衣層を乾燥させる工程を複数回繰り返す。場合により、この後、色素を含む水溶液をスプレーし温風での乾燥を行う工程を繰り返して糖衣層を着色し、更に場合によりワックス等で艶を出すこともある(特許文献1)。更に、中心部が比較的大きな物やいびつなものに対しては、下掛け、中掛け、上掛けの3段階の糖衣工程を経て作られるのが一般的である(特許文献2)。また、通常、前記糖衣工程に用いられる砂糖を主体とする水溶液は、20~40℃の温度に保たれるのが一般的である。
【0004】
その中でもタブレットに幾層も糖衣を行い、かつ砂糖の結晶の平均の大きさを5~15μmに抑えた密な構造を取らせることにより、硬い食感を有する糖衣した食品が知られている(特許文献3)。この糖衣した食品では、砂糖結晶の粒度を細かく均一にした結晶の層を何層も重ねることにより、強固なA層を構成することでクランチ性のある食感が得られる。しかしながら、この糖衣した食品ではビタミンCの層と砂糖の層を交互に重なり合う状態で多層にしているため、糖衣の硬度が下がりクランチ性はあるものの健常者の歯であれば容易に咀嚼できる硬度であり、ハードキャンディのように長く舐めるという特性は得られていなかった。
【0005】
また水溶性の粉体を糖衣層に用いる試みも提案されており、特にビタミンCをA層に用いられる方法がよく知られている(特許文献4、5)。これらはビタミンCの保存性を高めることを目的としたものであり、糖衣した食品の食感を楽しむためのものではなかった。
【0006】
加えて、糖衣物の硬度を上げるために中心層の硬度をそもそも硬くするという方法が考えられる。
例えば、打錠物は錠剤に使われるという性質上硬く打錠するよりも形状を維持したまま崩壊性を改善する方に研究がされ、打錠物の硬度を上げる方法としては打圧を上げるという物理的な変化を与える方が、効果があると認識されている。そのため、破壊強度が50kgf以上となる大粒の打錠物も製造することができる。
【0007】
しかしながら上記のように硬い打錠物は結晶粒径が大きく、ハードキャンディ様のなめらかな舐め心地を感じられず、口中内である程度水分を吸収すると崩壊が始まるため、味が変化するような層構造をとることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-252871号公報
【特許文献2】特開平9-313109号公報
【特許文献3】特許第3765419号公報
【特許文献4】特開平8-70791号公報
【特許文献5】特開平6-70792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、口中に入れた当初はハードキャンディのような硬度を有し、舐めるうちにかつ砂糖のおいしさと程よい酸味が交互に感じられることができ、かつ糖衣層がかりっとしたクランチ性を有する、新たな食感を有する糖衣食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、糖衣層において、糖質層と酸味料を含む層との厚みを調整することによって、酸味料を含む層を含む糖衣物でありながらハードキャンディに近い十分な硬度が得られることが分かった。具体的には、糖衣食品の全体の厚みが7mm以上であり、かつ砂糖主体の結晶を含むA層の平均の厚みを25~100μmの範囲、かつ、80メッシュ以下の酸味料を含む粉体からなるB層の平均の厚みを2.5~25μmの範囲の条件下でA層とB層とがラメラ構造状に重なり合っていることにより、糖衣食品であってもハードキャンディのような硬度を得られること、そして、このような構造を有することで、舐めるうちに、A層により砂糖のおいしさち、B層による程よい酸味を交互に感じることができ、糖衣層がかりっとしたクランチ性も奏することを見出して本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、
(1)糖類を含有する食品からなる中心部及び前記中心部に対して重量比で5倍以上の糖衣層を有する糖衣食品であって、
前記糖衣層が、砂糖主体の結晶を含むA層と、80メッシュ以下の酸味料を含む粉体からなるB層とが交互に重なり合ったラメラ構造を有し、
前記A層の平均の厚みが25~100μm、前記B層の平均の厚みが2.5~25μmであり、
前記糖衣層の厚みが7mm以上であり、
ハードキャンディ様の硬度を有することを特徴とする、糖衣食品、
(2)前記ハードキャンディ様の硬度として、破壊強度が30~50kgfである、前記(1)に記載の糖衣食品、
(3)前記中心部の食品が錠菓、丸薬又はキャンディである、前記(1)又は(2)に記載の糖衣食品
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の糖衣食品は、口中に入れた当初はハードキャンディのような硬度を有し、なおかつ舐めるうちにかつ砂糖のおいしさと程よい酸味が交互に感じられることができ、糖衣層がかりっとしたクランチ性も奏する新たな食感を提供するものである。また、本発明の糖衣食品は、前記のような糖衣層の様々な食感を楽しんだ後、中心層を食べることで、さらに異なる食感を楽しむことができる。例えば、中心層が錠菓、丸薬又はキャンディである場合には、中心部を噛むことで、よりクランチ性をある食感を楽しむことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の糖衣食品は、糖類を含有する食品からなる中心部及び前記中心部に対して重量比で5倍以上の糖衣層を有する糖衣食品であって、
前記糖衣層が、砂糖主体の結晶を含むA層と、80メッシュ以下の酸味料を含む粉体からなるB層とが交互に重なり合ったラメラ構造を有し、
前記A層の平均の厚みが25~100μm、前記B層の平均の厚みが2.5~25μmであり、
前記糖衣層の厚みが7mm以上であり、
ハードキャンディ様の硬度を有することを特徴とする。
【0014】
前記中心部を構成する糖類を含有する食品は、糖衣層の風味に悪影響を与えない味を有する糖類を含有していればよく、特に限定はないが、糖衣食品としてのクランチ性を楽しむことができる観点から、錠菓、丸薬又はキャンディであることが好ましい。
【0015】
前記糖類を含有する食品の大きさは、目的とする味や食感などにより適宜設定することができる。例えば、錠菓であれば直径4~10mm、厚み1~10mm、丸薬であれば直径1~10mm、キャンディであれば長径10mm以下が好ましい。
【0016】
本発明でいう錠菓とは、砂糖を含む糖類を主原料とし、打錠機等で圧縮成型したものである。
また、丸薬とはハーブや果汁等のエキスをでんぷん等の糖類やゲル化剤で固め、丸く成形したものである。
また、キャンディとは、砂糖、水飴を含む糖類を主原料とし、煮詰めた後に冷やして固めたものである。前記キャンディとしては、ハードキャンディやソフトキャンディが挙げられる。
前記錠菓及び前記キャンディに使用される糖類としては、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール等の糖アルコール、デキストリン等の多糖類を用いてもよい。
また、前記錠菓、丸薬及びキャンディに使用される、結合剤、果汁、香料、増粘剤、乳化剤等の副原料の種類及び量については、所望の食感、風味に応じて適宜選択すればよく、特に限定はない。
【0017】
本発明の糖衣食品では、前記中心部に対して重量比で5倍以上の糖衣層を有する。
本発明において、糖衣層とは、砂糖主体の結晶を含むA層と、80メッシュ以下の酸味料を含む粉体からなるB層とが交互に重なり合ったラメラ構造を有する層をいう。
本発明でいうラメラ構造とは、複数のA層と複数のB層とが交互に重なりあった構造をいう。ラメラ構造中の複数のA層、B層は、それぞれほぼ同じ厚みを有しながら、中心部の周囲に形成されている。
【0018】
前記A層に含まれる結晶とは、砂糖を主体とする糖質の結晶をいう。
前記A層に含まれる砂糖の量は、結晶化構造を有することができる50重量%以上であればよく、100重量%でもよい。
【0019】
また、前記糖質の結晶は、砂糖に加えて、砂糖のおいしさを損なわない程度の他の糖質の結晶を含んでもよい。このような他の糖質としては多様な選択範囲があり、果糖、ブドウ糖、液糖、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、麦芽糖、オリゴ糖、高分子水飴、澱粉、還元基を持たない糖アルコール(例えば、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等)等が挙げられる。
これらの内でも、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、オリゴ糖、高分子水飴及び澱粉は、砂糖の再結晶(糖化)を防ぐ点で本発明において使用するのが好ましい糖である。
前記A層に含まれる他の糖質の量は、35重量%未満であればよく、10重量%以下が好ましい。
【0020】
前記結晶は、なめらかな舐め心地を奏する観点から、平均粒径が5~15μmのものであることが好ましい。
前記平均粒径の範囲に調整する方法としては、レボーリングパンに入れておいた中心層である錠菓又は丸薬に砂糖水溶液が均一に掛かるように散布し、レボーリングパンの回転数を10~50rpmで回転させながら、例えば温度5~70℃ 、湿度45~65%、風速3~8m/秒程度の送風下で乾燥する方法等が挙げられる。
前記平均粒径は、糖衣層の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺の平均粒径を計測する方法によって測定することができる。
【0021】
前記A層には、食感を阻害させない範囲で結合剤を使用することができる。
前記結合剤としては、アラビアゴム、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、キサンタンガム、トラガン、マクロゴール、グリコール等が挙げられる。
前記結合剤の含有量としては、A層中において、0.001~5重量%の範囲であればよい。
【0022】
また、前記A層には、ラフィノース等の砂糖の結晶阻害剤、乳化剤、香料等を添加してもよい。これらの成分の含有量としては、特に限定はないが、A層中において、0.001~10重量%の範囲であればよい。
【0023】
前記糖衣層中の前記A層の平均の厚みは、食べたときに砂糖の甘味を感じることができ、かつ糖衣層がハードキャンディ様の硬い食感を奏する観点から、25~100μmの範囲に調整されている。
前記A層層の平均の厚みとは、前記糖衣層中に確認されるA層の厚みの平均値をいい、具体的には、糖衣物の断面を光学顕微鏡により350倍で観察することによって測定することができる。
【0024】
前記B層に含まれる粉体は、80メッシュ以下のものであり、具体的には、線径SWG38以上かつ0.14mm以下、目開き0.194mm以下の篩を通過する粉体をいう。
前記粉体は、酸味料を主体とするものであり、酸味料を50重量%以上含有していればよい。
【0025】
前記酸味料としては、ビタミンC(アスコルビン酸)、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、リン酸、酢酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸等が挙げられる。
ビタミンCとしては、一般に知られているビタミンCを用いればよく、粉末果汁等のビタミンCを多量に含有するものを用いてもよい。これらは単独でも2種以上併用してもよい。更に、ビタミンCの粒度、量に特に制限はないが、325メッシュパス以下のものを使用することが好ましい。
【0026】
また、前記粉体には、前記酸味料以外に、結合剤、粉末果汁、粉末果皮、粉末香料、糖質、粉末たんぱく質等の粉末原料を含有してもよい。
前記結合剤としては、A層に使用できるものであればよく、特に限定はない。
【0027】
前記B層の平均の厚みは、食べたときに酸味料の酸味を感じることができ、かつ糖衣層がハードキャンディ様の硬い食感を奏する観点から、2.5~25μmの範囲に調整されている。
前記B層の平均の厚みとは、前記糖衣層中に確認されるB層の厚みの平均値をいい、具体的には、糖衣層の断面を光学顕微鏡により350倍で観察し、粉末からなる層を計測する方法によって測定することができる。
【0028】
本発明の糖衣食品では、糖衣層を構成する前記A層と前記B層とが交互に重なり合ったラメラ構造を有し、且つ前記A層、前記B層が所定の厚みに調整されていることで、ハードキャンディ様の硬度があり、より滑らかに長く砂糖のおいしさと酸味料の酸味を味わうことができ、また、口中で糖衣層に唾液が浸透しにくく、容易に崩壊しないため、糖衣層を噛んだ場合に、かりっとしたクランチ性のある新規な食感を楽しむことができる。
【0029】
本発明の糖衣食品において、前記糖衣層の厚みとは、糖衣食品の厚みが最大になっている部分で切断した断面において、中心部の中心をとおる直線で測定できる、一方側及びその反対側の2カ所の糖衣層の厚みを合計して平均した値をいう(糖衣層全体の厚みともいう)。
前記糖衣層の厚みが、7mm以上あることで、前記糖衣層を構成するA層、B層の味の違いを楽しむことができる。
また、本発明の糖衣食品を食べやすい観点から、糖衣層の厚みは、10mm以下であることが好ましい。
また、本発明の糖衣食品において、前記中心部の表面から糖衣層表面までの前記糖衣層の厚みとしては、3.5mm以上であることが好ましい。
【0030】
前記中心部及び糖衣層を含む糖衣食品の厚みとしては、食べやすい観点から、8~20mmの範囲に調整されていることが好ましい。
【0031】
また、本発明の糖衣食品中の糖衣層の量としては、中心部に対して重量比で5倍以上であればよく、本発明の効果が奏されやすい観点から、5~33倍が好ましく、10~30倍がより好ましい。
【0032】
また、本発明の糖衣食品では、前記A層と前記B層とが交互に重なりあったラメラ構造を有する糖衣層の最外層にキシリトール層(以下、キシリトール層)を有してもよい。このキシリトール層を最外層に有していることで、口に入れた際の溶解性が良く、心地よい舐め心地を感じやすいという利点がある。
前記キシリトール層は、キシリトール以外の糖アルコール、糖質、結合剤、香料、色素等を含んでいてもよい。
前記キシリトール層の厚みについては、0.1~1mmの範囲に調整されていればよい。
なお、本発明において、前記糖衣食品の厚み及び前記糖衣層の厚みには、前記キシリトール層の厚みは含まれない。
【0033】
以上のような構成を有する本発明の糖衣食品は、ハードキャンディ様の硬度を有するものである。
ハードキャンディ様の硬度としては、破壊強度が30~50kgfであることが好ましい。
前記破壊強度は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0034】
本発明の糖衣食品は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、糖質を含む食品(錠菓、丸薬又はキャンディ)を中心部用として用意する。
次いで、A層用の砂糖の水溶液を作製し、糖衣食品用製造機(レボーリングパン等)に入れておいた前記中心部用食品に均一に掛かるように散布する。例えば、レボーリングパンの回転数は10~50rpmで回転させながら行う。
その後、例えば、温度5~70℃、湿度45~65%、風速3~8m/秒程度の送風下で乾燥させてA層を形成させる(A層形成工程)。
【0035】
本発明において、前記A層中の糖質の結晶の大きさの調整は、上記乾燥条件と乾燥時間によって行うことができる。例えば、乾燥をゆっくりしすぎると結晶が大きくなりすぎ、場合によっては噛んだ時に歯が入らないぐらいに固くなることがある。また、乾燥が速すぎると結晶が大きくならずに、ぼそぼその食感となることがある。
前記乾燥温度は、40℃よりも高い温度が、所望の大きさの結晶を効率よく形成させる観点から、好ましい。
また、砂糖の水溶液の温度を、所望の大きさの結晶を効率よく形成させる観点から、40~90℃の範囲、好ましくは70~80℃の範囲に調整しておくことが望ましい。
【0036】
次いで、前記糖衣食品用製造機内の食品に、B層用の酸味料を含む粉体を表面均一になるように散布することで、B層を形成させる(B層形成工程)。
また、結合剤を含む水溶液を予めA層表面に付着させてから、前記粉体を混合してもよい。
【0037】
次いで、前記A層形成工程、B層形成工程を、糖衣層全体の厚みが7mm以上となるまで繰り返すことで、A層とB層とがラメラ構造となっている糖衣層を有する目的とする糖衣食品を製造することができる。
【0038】
また、必要に応じて、前記A層と前記B層とが交互に重なりあったラメラ構造を有する糖衣層の最外層にキシリトール層を形成してもよい。
キシリトール層の形成方法としては、キシリトール糖衣液を用いる方法が挙げられる。キシリトール糖衣液は、例えば、キシリトールを固形分として60~90重量%含有し、必要に応じてキシリトール以外の糖アルコール、結合剤、香料、色素等を適宜加えることができる。これらからなるキシリトール糖衣液を水で固形比60~80重量%に調整し、40~80℃に加温し、レボーリングパンに入れておいた糖衣物に均一に掛かるように散布する。レボーリングパンの回転数は5~30rpmで回転させながら行う。次ぎに、例えば温度30~60℃、湿度10~50%、風速3~8m/秒程度の送風下で乾燥させ、この作業を繰り返し行うことで、キシリトール層を形成することができる。また、その他の方法として、特公平5-14535号公報、特開2000-316479号公報のようにしてそのキシリトール層を容易に形成することができる。
【実施例0039】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、実施例中の組成に関する数字は重量部、また「%」は重量%を意味する。
【0040】
「錠菓の調整」
下記表1に示す組成の造粒品を、流動層造粒機を使用し調製した。
【0041】
【0042】
更に、前記のように調製した造粒品を用い、下記表2に示す組成になるように打錠し、直径4.5mm、厚み4.8mm、1粒当たりの重量0.067gの錠菓を調製した。
【0043】
【0044】
「糖衣液1の調整」
下記表3に示す組成の糖衣液1(A層用)を調整した。糖度は80%に調整し、80℃で温度コントロールした。
【0045】
【0046】
上記の錠菓を糖衣用の回転釜に投入し、15rpmで回転させながら、糖衣液1を掛けて、錠菓(中心部)の重量に対して約3倍量になるまで被覆し、55℃で乾燥してA層を形成させた(A層形成工程)。
【0047】
次いで、A層を形成させた錠菓の総重量に対して、粉末状のビタミンC(サイズは325メッシュ)を0.9~3.9%となるように散布してA層の表面にB層を形成させた(B層形成工程)。
【0048】
(実施例1)
上記糖衣物に対し、A層は中心部重量の3倍、8倍、13倍、18倍の重量となるようにし、B層はそれぞれ処理前の糖衣物総重量の3重量%となるように、A層形成工程及びB層形成工程を交互に繰り返して多層を形成し、最終的に中心部重量に対し20倍となるように糖衣を行った。
得られた糖衣食品の糖衣層中のA層:B層の重量比は、19.5:1であった。
【0049】
次いで、キシリトールと果汁とを含むキシリトール糖衣液をかけて、乾燥させて、最外層にキシリトール層を形成させた。キシリトール層は、20倍糖衣品に対して8重量%であった。
【0050】
(実施例2)
上記糖衣物に対し、A層は中心部重量の3倍、5.5倍、7.5倍、12倍、17倍、18.5倍の重量となるようにし、B層はそれぞれ処理前の糖衣物総重量の2%となるように、A層形成工程及びB層形成工程を交互に繰り返して多層を形成し、最終的に中心部重量に対し20倍となるように糖衣を行い、実施例1と同様にして最外層にキシリトール層を形成させた。
得られた糖衣食品の糖衣層中のA層:B層の重量比は、19.1:1であった。
【0051】
(実施例3)
上記糖衣物に対し、A層は中心部重量の3倍、8倍、13倍、18倍の重量となるように、B層はそれぞれ処理前の糖衣物総重量の3.9%となるように、A層形成工程及びB層形成工程を交互に繰り返して多層を形成し、最終的に中心部重量に対し20倍となるように糖衣を行い、実施例1と同様にして最外層にキシリトール層を形成させた。
得られた糖衣食品の糖衣層中のA層:B層の重量比は19.1:1であった。
【0052】
(比較例1)
上記糖衣物に対し、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍の重量となるように、B層はそれぞれ処理前の糖衣物総重量の0.92%となるように、A層形成工程及びB層形成工程を交互に繰り返して多層を形成し、最終的に中心部重量に対し20倍となるように糖衣を行い、実施例1と同様にして最外層にキシリトール層を形成させた。
得られた糖衣食品の糖衣層中のA層:B層の重量比は19.5:1であった。
【0053】
(比較例2)
上記糖衣物に対し、A層は中心部重量の3倍、3.5倍、4倍、5倍、5.5倍、7倍、7.5倍、8.5倍、12倍、15倍、17倍、18.5倍の重量となるように、B層はそれぞれ処理前の糖衣物総重量の1.4%となるように、A層形成工程及びB層形成工程を交互に繰り返して多層を形成し、最終的に中心部重量に対し20倍となるように糖衣を行い、実施例1と同様にして最外層にキシリトール層を形成させた。
得られた糖衣食品の糖衣層中のA層:B層の重量比は、19.5:1であった。
【0054】
(参考例1)
砂糖85重量部、水飴15重量部を混ぜ合わせ、180℃となるまで鍋で煮詰めたものを球体型のステンレススタンプで成型し、10mm程度の球体のハードキャンディを作製した。
【0055】
(参考例2)
砂糖85重量部、水飴15重量部を混ぜ合わせ、180℃となるまで鍋で煮詰めたものを球体型のステンレススタンプで成型し、7mm程度の球体のハードキャンディを作製した。
【0056】
実施例1~3、比較例1~2および参考例1~2で作製した各食品をレオメーター(商品名:テクスチャー・アナライザー(Texture Analyzer TA.XT.plus)、Stable MicroSystems社製)および先端が鋭角となっているプランジャーを用い、20℃の温度下にて該プランジャーを、固定した食品に対し押し付けて食品が破砕した際に生じた最大荷重(kgf)を測定し(n=5)、硬度(破壊強度)を求めた。
【0057】
A層、B層の厚みに関しては顕微鏡(商品名:MXB-2500REZ機能拡張モデルRH2000、Hirox社製)を用いて、倍率350倍で観察し、各糖衣層の厚みを実測し(n=5)、これらの測定した平均値を以下の表4にまとめた。
また、A層、B層が互いに積層されたラメラ構造を有するかについても確認した。
【0058】
A層中の糖質の平均粒径については、糖衣層の断面を電子顕微鏡により1000倍で観察し、任意に選択した5つの砂糖結晶の長辺と短辺の平均粒径を計測することで測定した。
【0059】
【0060】
以上の結果より、実施例1~3で得られた糖衣食品は、いずれも糖衣層全体の厚みが7~10mmの範囲内にあり、その糖衣層中のA層の平均厚みが25~100μmでありかつ、B層の粉体部の平均厚みが2.5~25μmであるのものであった。
【0061】
実施例1~3で得られた糖衣食品の糖衣層では、所定の厚みのA層とB層とが互いに重ねあったラメラ構造となっていることが、顕微鏡観察で確認することができた。
【0062】
実施例1~3で得られた糖衣食品を食べたところ、口中に入れた当初は一般的なハードキャンディのような硬度を有し、舐めるうちにかつ砂糖のおいしさと程よい酸味が交互に感じられることができ、かつかりっとしたクランチ性を有するものであった。
【0063】
一方、比較例1、2で得られた糖衣食品は、B層の平均厚みが2.5μm未満と薄いため、糖衣層への唾液の浸透がし易いために口中溶解性が高くてすぐに溶けてしまい、ハードキャンディのような舐め心地が得られず、なおかつ糖衣層の崩壊性が高いため心地よいクランチ性は得られなかった。