(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065316
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240508BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240508BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240508BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20240508BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D119:00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174122
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安樂 厚二
(72)【発明者】
【氏名】石野 嵩人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佳夫
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC03
3D232CC08
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA25
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3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB31
3D333CB46
3D333CC06
3D333CC15
3D333CC18
3D333CC38
3D333CC39
3D333CC41
3D333CD51
3D333CE50
(57)【要約】
【課題】前後加速度の変化を伴う車両の走行状態に応じて、より適切な操舵反力を付与することができる操舵制御装置を提供する。
【解決手段】操舵制御装置は、反力モータを制御する反力制御部を有する。反力モータは、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力を発生する。反力制御部は、ステアリングホイールの操舵状態に応じて演算される反力トルク指令値T
*に基づき反力モータを制御する。反力制御部は、車載されるセンサを通じて検出される前後加速度、または車載のセンサを通じて検出される値から演算される前後加速度に応じて、反力トルク指令値T
*を変化させるための処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力を発生する反力モータを、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じて演算される反力トルク指令値に基づき制御するように構成される反力制御部を有し、
前記反力制御部は、車載のセンサを通じて検出される前後加速度、または車載のセンサを通じて検出される値から演算される前後加速度に応じて、前記反力トルク指令値を変化させるための処理を実行するように構成される操舵制御装置。
【請求項2】
前記反力制御部は、前記前後加速度の値が増加するほど、前記反力トルク指令値を前記ステアリングホイールの操舵方向と反対方向へ増加させるように構成される請求項1に記載の操舵制御装置。
【請求項3】
前記反力制御部は、
前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルク指令値を演算する処理と、
前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに作用する軸力を前記転舵輪の転舵状態に基づき演算し、前記軸力を前記ステアリングホイールに対するトルクに換算することにより軸力トルクを演算する処理と、
前記アシストトルク指令値から前記軸力トルクを減算することにより前記反力トルク指令値を演算する処理と、
前記前後加速度の値が増加するほど、前記軸力トルクの値を増加させるための処理と、を実行するように構成される請求項2に記載の操舵制御装置。
【請求項4】
前記反力制御部は、
前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルク指令値を演算する処理と、
前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに作用する軸力を前記転舵輪の転舵状態に基づき演算し、前記軸力を前記ステアリングホイールに対するトルクに換算することにより軸力トルクを演算する処理と、
前記アシストトルク指令値から前記軸力トルクを減算することにより前記反力トルク指令値を演算する処理と、
前記前後加速度に応じて、前記アシストトルク指令値を減少させるための処理と、を実行するように構成される請求項2に記載の操舵制御装置。
【請求項5】
前記反力制御部は、
前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルク指令値を演算する処理と、
前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに作用する軸力であって、前記転舵輪の転舵動作に連動して回転する回転体の回転角に基づく前記軸力である角度軸力を演算する処理と、
前記転舵輪を転舵させるためのトルクを発生する転舵モータの電流の値に基づく前記軸力である電流軸力を演算する処理と、
前記角度軸力と前記電流軸力とが定められた配分比率で混合された混合軸力を演算する処理と、
前記混合軸力を前記ステアリングホイールに対するトルクに換算することにより軸力トルクを演算する処理と、
前記アシストトルク指令値から前記軸力トルクを減算することにより前記反力トルク指令値を演算する処理と、
前記前後加速度に応じて、前記電流軸力または前記混合軸力の値を増加させるための処理と、を実行するように構成される請求項2に記載の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達を分離した、いわゆるステアバイワイヤ方式の操舵装置が知られている。この操舵装置は、ステアリングシャフトに付与される操舵反力の発生源である反力モータ、および転舵輪を転舵させる転舵力の発生源である転舵モータを有している。車両の走行時、操舵装置の制御装置は、反力モータを通じて操舵反力を発生させるとともに、転舵モータを通じて転舵輪を転舵させる。
【0003】
ステアバイワイヤ方式の操舵装置においては、ステアリングホイールと転舵輪との間の動力伝達が分離されているため、転舵輪に作用する路面反力がステアリングホイールに伝わりにくい。したがって、運転者は路面状態を、ステアリングホイールを介した手応えとして感じにくい。
【0004】
たとえば、特許文献1の制御装置は、操舵状態に応じて反力モータに対する指令値を演算し、演算される指令値に基づき反力モータを制御する。制御装置は、転舵輪に連動して回転するピニオンシャフトの回転角に基づき角度軸力を演算する。角度軸力は、路面状態あるいは転舵シャフトに作用する力が反映されない軸力である。制御装置は、転舵モータの電流値に基づき電流軸力を演算する。電流軸力は、路面状態あるいは転舵輪を介して転舵シャフトに作用する力が反映される軸力である。
【0005】
制御装置は、角度軸力および電流軸力に対して、車両挙動あるいは操舵状態に応じて個別に設定される分配比率を乗算し、乗算した値を合算することにより最終軸力を演算する。最終軸力は、指令値に反映させる最終的な軸力である。電流軸力には、路面状態が反映される。このため、反力モータが発生する操舵反力にも路面状態が反映される。したがって、運転者は、路面状態を操舵反力として感じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の制御装置には、つぎのような懸念がある。たとえば、車両が加減速するとき、または車両が登坂路を上り下りするとき、車両の前後加速度が変化する。しかし、前後加速度の変化に対して軸力が変化しないおそれがある。このため、車両の加減速、あるいは車両の登坂路の上り下りなど、前後加速度の変化を伴う車両の走行状態に応じた操舵反力がステアリングホイールに付与されないことが懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得る操舵制御装置は、車両の転舵輪との間の動力伝達が分離されたステアリングホイールに付与される操舵反力を発生する反力モータを、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じて演算される反力トルク指令値に基づき制御するように構成される反力制御部を有する。前記反力制御部は、車載のセンサを通じて検出される前後加速度、または車載のセンサを通じて検出される値から演算される前後加速度に応じて、前記反力トルク指令値を変化させるための処理を実行するように構成される。
【0009】
この構成によれば、前後加速度に応じて、反力トルク指令値の値が調整される。反力モータが調整後の反力トルク指令値に応じたトルクを発生することによって、前後加速度の変化を伴う車両の走行状態に応じた、より適切な操舵反力をステアリングホイールに付与することができる。
【0010】
上記の操舵制御装置において、前記反力制御部は、前記前後加速度の値が増加するほど、前記反力トルク指令値を前記ステアリングホイールの操舵方向と反対方向へ増加させるように構成されてもよい。
【0011】
この構成によれば、前後加速度の値が増加するほど、反力トルク指令値がステアリングホイールの操舵方向と反対方向へ増加する。このため、前後加速度の値が増加するほど、操舵反力が増加する。すなわち、車両の加減速の度合いが大きくなるほど、ステアリングホイールの剛性感が増加する。このため、運転者は、加減速の度合いが大きくなるほど、よりしっかりとした手応え感を得ることができる。
【0012】
上記の操舵制御装置において、前記反力制御部は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルク指令値を演算する処理と、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに作用する軸力を前記転舵輪の転舵状態に基づき演算し、前記軸力を前記ステアリングホイールに対するトルクに換算することにより軸力トルクを演算する処理と、前記アシストトルク指令値から前記軸力トルクを減算することにより前記反力トルク指令値を演算する処理と、前記前後加速度の値が増加するほど、前記軸力トルクの値を増加させるための処理と、を実行するように構成されてもよい。
【0013】
この構成によれば、前後加速度の値が増加するほど、軸力トルクの値が増加する。軸力トルクは、アシストトルク指令値から減算される。このため、前後加速度の値が増加するほど、反力トルク指令値をステアリングホイールの操舵方向と反対方向へ増加させることができる。
【0014】
上記の操舵制御装置において、前記反力制御部は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルク指令値を演算する処理と、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに作用する軸力を前記転舵輪の転舵状態に基づき演算し、前記軸力を前記ステアリングホイールに対するトルクに換算することにより軸力トルクを演算する処理と、前記アシストトルク指令値から前記軸力トルクを減算することにより前記反力トルク指令値を演算する処理と、前記前後加速度に応じて、前記アシストトルク指令値を減少させるための処理と、を実行するように構成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、前後加速度の値が増加するほど、アシストトルク指令値が減少する。アシストトルク指令値は、ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクである。このため、前後加速度の値が増加するほど、反力トルク指令値をステアリングホイールの操舵方向と反対方向へ増加させることができる。
【0016】
上記の操舵制御装置において、前記反力制御部は、前記ステアリングホイールの操舵状態に基づき前記ステアリングホイールの操舵方向と同方向のトルクであるアシストトルク指令値を演算する処理と、前記転舵輪を転舵させる転舵シャフトに作用する軸力であって、前記転舵輪の転舵動作に連動して回転する回転体の回転角に基づく前記軸力である角度軸力を演算する処理と、前記転舵輪を転舵させるためのトルクを発生する転舵モータの電流の値に基づく前記軸力である電流軸力を演算する処理と、前記角度軸力と前記電流軸力とが定められた配分比率で混合された混合軸力を演算する処理と、前記混合軸力を前記ステアリングホイールに対するトルクに換算することにより軸力トルクを演算する処理と、前記アシストトルク指令値から前記軸力トルクを減算することにより前記反力トルク指令値を演算する処理と、前記前後加速度に応じて、前記電流軸力または前記混合軸力の値を増加させるための処理と、を実行するように構成されてもよい。
【0017】
この構成によれば、前後加速度の値が増加するほど、電流軸力または配分軸力の値が増加する。電流軸力または配分軸力の値が増加すれば、軸力トルクの値も増加する。軸力トルクは、アシストトルク指令値から減算される。このため、前後加速度の値が増加するほど、反力トルク指令値をステアリングホイールの操舵方向と反対方向へ増加させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の操舵制御装置によれば、前後加速度の変化を伴う車両の走行状態に応じて、より適切な操舵反力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】操舵制御装置の第1の実施の形態が搭載される操舵装置の構成図である。
【
図2】第1の実施の形態にかかる反力制御装置および転舵制御装置のブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態および第2の実施の形態にかかる反力トルク指令値演算部のブロック図である。
【
図4】第3の実施の形態にかかる軸力演算部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施の形態>
以下、操舵制御装置の第1の実施の形態を説明する。
<全体構成>
図1に示すように、操舵制御装置1の制御対象は、ステアバイワイヤ式の操舵装置2である。操舵装置2は、操舵機構3と、転舵機構4とを有している。操舵機構3は、ステアリングホイール5を介して、運転者により操舵される機構部分である。転舵機構4は、ステアリングホイール5の操舵に応じて、車両の転舵輪6を転舵させる機構部分である。操舵制御装置1は、反力制御装置1Aと、転舵制御装置1Bとを含む。反力制御装置1Aの制御対象は、操舵機構3である。反力制御装置1Aは、反力制御を実行する。反力制御装置1Aは、反力制御部に相当する。転舵制御装置1Bの制御対象は、転舵機構4である。転舵制御装置1Bは、転舵制御を実行する。転舵制御装置1Bは、転舵制御部に相当する。
【0021】
操舵機構3は、ステアリングシャフト11と、反力モータ12と、減速機13と、を有している。ステアリングホイール5は、ステアリングシャフト11に一体回転可能に連結される。反力モータ12は、ステアリングシャフト11に付与する操舵反力の発生源である。操舵反力は、ステアリングホイール5の操舵方向と反対方向の力である。反力モータ12は、たとえば三相のブラシレスモータである。減速機13は、反力モータ12の回転を減速し、減速された回転をステアリングシャフト11に伝達する。
【0022】
転舵機構4は、ピニオンシャフト21と、転舵シャフト22と、ハウジング23と、を有している。ハウジング23は、ピニオンシャフト21を回転可能に支持する。また、ハウジング23は、転舵シャフト22を往復動可能に収容する。転舵シャフト22は、ステアリングホイール5との間の動力伝達が分離されている。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合う。転舵シャフト22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド24を介して、タイロッド25が連結されている。タイロッド25の先端は、転舵輪6が組み付けられた図示しないナックルに連結される。
【0023】
転舵機構4は、転舵モータ31と、伝動機構32と、変換機構33とを備えている。転舵モータ31は、転舵シャフト22に付与する転舵力の発生源である。転舵力は、転舵輪6を転舵させるための力である。転舵モータ31は、たとえば三相のブラシレスモータである。伝動機構32は、たとえばベルト伝動機構である。伝動機構32は、転舵モータ31の回転を変換機構33に伝達する。変換機構33は、たとえばボールねじ機構である。変換機構33は、伝動機構32を介して伝達される回転を、転舵シャフト22の軸方向の運動に変換する。
【0024】
転舵シャフト22が軸方向に移動することによって、転舵輪6の転舵角θwが変更される。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合っているため、転舵シャフト22の移動に連動して回転する。ピニオンシャフト21は、転舵輪6の転舵動作に連動して回転するシャフト、あるいは回転体である。
【0025】
反力制御装置1Aは、反力モータ12の動作を制御する。反力制御装置1Aは、つぎの3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一つを含む処理回路を有している。
A1.ソフトウェアであるコンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ。プロセッサは、CPU(central processing unit)およびメモリを含む。
【0026】
A2.各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)などの1つ以上の専用のハードウェア回路。ASICは、CPUおよびメモリを含む。
【0027】
A3.構成A1,A2を組み合わせたハードウェア回路。
メモリは、コンピュータで読み取り可能とされた媒体であって、コンピュータに対する処理あるいは命令を記述したプログラムを記憶している。本実施の形態では、コンピュータは、CPUである。メモリは、RAM(random access memory)およびROM(read only memory)を含む。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを定められた演算周期で実行することによって各種の制御を実行する。
【0028】
反力制御装置1Aは、車載のセンサの検出結果を取り込む。センサは、車速センサ41、トルクセンサ42、および回転角センサ43を含む。
車速センサ41は、車速Vを検出する。車速Vは、車両の走行状態が反映される状態変数である。トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11に設けられている。トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11における減速機13の連結部分に対して、ステアリングホイール5側に位置している。トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11に付与される操舵トルクThを検出する。操舵トルクThは、ステアリングシャフト11に設けられるトーションバー42aのねじれ量に基づき演算される。回転角センサ43は、反力モータ12に設けられている。回転角センサ43は、反力モータ12の回転角θaを検出する。
【0029】
操舵トルクTh、および反力モータ12の回転角θaは、たとえば、ステアリングホイール5を右に操舵する場合は正の値であり、ステアリングホイール5を左に操舵する場合は負の値である。
【0030】
反力制御装置1Aは、車速センサ41、トルクセンサ42、および回転角センサ43の検出結果を使用して、反力モータ12の動作を制御する。反力制御装置1Aは、操舵トルクThに応じた操舵反力を反力モータ12に発生させるように、反力モータ12に対する給電を制御する。
【0031】
転舵制御装置1Bは、転舵モータ31の動作を制御する。転舵制御装置1Bは、反力制御装置1Aと同様に、先の3つの構成A1,A2,A3のうちいずれか一を含む処理回路を有している。
【0032】
転舵制御装置1Bは、車載のセンサの検出結果を取り込む。センサは、回転角センサ44、および前後加速度センサ45を含む。回転角センサ44は、転舵モータ31に設けられている。回転角センサ44は、転舵モータ31の回転角θbを検出する。転舵モータ31の回転角θbは、たとえば、ステアリングホイール5を右に操舵する場合は正の値であり、ステアリングホイール5を左に操舵する場合は負の値である。前後加速度センサ45は、前後加速度Gfbを検出する。前後加速度Gfbは、車両の前後方向の加速度である。前後加速度Gfbは、車両が加速するときの前加速度と、車両が減速するときの後加速度とを含む。
【0033】
転舵制御装置1Bは、回転角センサ44の検出結果を使用して、転舵モータ31の動作を制御する。転舵制御装置1Bは、ステアリングホイール5の操舵状態に応じて転舵輪6が転舵されるように、転舵モータ31に対する給電を制御する。
【0034】
<反力制御装置1Aの構成>
つぎに、反力制御装置1Aの構成について説明する。
図2に示すように、反力制御装置1Aは、操舵角演算部51、反力トルク指令値演算部52、および通電制御部53を有している。
【0035】
操舵角演算部51は、回転角センサ43を通じて検出される反力モータ12の回転角θaに基づき、ステアリングホイール5の操舵角θsを演算する。
反力トルク指令値演算部52は、操舵トルクThおよび車速Vに基づき反力トルク指令値T*を演算する。反力トルク指令値T*は、反力モータ12に発生させるべき、操舵反力の目標値である。操舵反力は、ステアリングホイール5の操舵方向と反対方向のトルクである。操舵トルクThの絶対値が大きいほど、また車速Vが遅いほど、反力トルク指令値T*の絶対値は、より大きくなる。
【0036】
通電制御部53は、反力トルク指令値T*に応じた電力を反力モータ12へ供給する。具体的には、通電制御部53は、反力トルク指令値T*に基づき、反力モータ12に対する電流指令値を演算する。通電制御部53は、反力モータ12に対する給電経路に設けられた電流センサ54を通じて、給電経路に生じる電流Iaの値を検出する。電流Iaの値は、反力モータ12に供給される電流の値である。通電制御部53は、電流指令値と電流Iaの値との偏差を求め、当該偏差を無くすように反力モータ12に対する給電を制御する。これにより、反力モータ12は、反力トルク指令値T*に応じたトルクを発生する。
【0037】
<転舵制御装置1Bの構成>
つぎに、転舵制御装置1Bの構成について説明する。
図2に示すように、転舵制御装置1Bは、ピニオン角演算部61、目標ピニオン角演算部62、ピニオン角フィードバック制御部63、および通電制御部64を有している。
【0038】
ピニオン角演算部61は、回転角センサ43を通じて検出される転舵モータ31の回転角θbに基づき、ピニオン角θpを演算する。ピニオン角θpは、ピニオンシャフト21の回転角であって、ピニオンシャフト21の実際の角度である実角度に相当する。転舵モータ31とピニオンシャフト21とは、伝動機構32、変換機構33、および転舵シャフト22を介して連動する。このため、転舵モータ31の回転角θbとピニオン角θpとの間には相関関係がある。この相関関係を利用して、転舵モータ31の回転角θbからピニオン角θpを求めることができる。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22に噛合されている。このため、ピニオン角θpと転舵シャフト22の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θpは、転舵輪6の転舵角θwを反映する値である。
【0039】
目標ピニオン角演算部62は、操舵角演算部51により演算される操舵角θsに基づき目標ピニオン角θp
*を演算する。目標ピニオン角θp
*は、ピニオン角θpの目標角度である。目標ピニオン角演算部62は、製品仕様などに応じて設定される舵角比が実現されるように、目標ピニオン角θp
*を演算する。舵角比は、操舵角θsに対する転舵角θwの比である。
【0040】
目標ピニオン角演算部62は、たとえば、車速Vなどの車両の走行状態に応じて舵角比を設定し、この設定される舵角比に応じて目標ピニオン角θp
*を演算する。目標ピニオン角演算部62は、車速Vが遅くなるにつれて操舵角θsに対する転舵角θwが大きくなるように、目標ピニオン角θp
*を演算する。目標ピニオン角演算部62は、車速Vが速くなるにつれて操舵角θsに対する転舵角θwが小さくなるように、目標ピニオン角θp
*を演算する。目標ピニオン角演算部62は、車両の走行状態に応じて設定される舵角比を実現するために、操舵角θsに対する補正角度を演算し、この演算される補正角度を操舵角θsに加算することにより舵角比に応じた目標ピニオン角θp
*を演算する。
【0041】
なお、製品仕様などによっては、目標ピニオン角演算部62は、車両の走行状態にかかわらず、舵角比が「1:1」となるように、目標ピニオン角θp
*を演算するようにしてもよい。
【0042】
ピニオン角フィードバック制御部63は、目標ピニオン角演算部62により演算される目標ピニオン角θp
*、およびピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θpを取り込む。ピニオン角フィードバック制御部63は、ピニオン角θpが目標ピニオン角θp
*に追従するように、ピニオン角θpのフィードバック制御を通じて、転舵トルク指令値Tp
*を演算する。転舵トルク指令値Tp
*は、転舵モータ31が発生するトルクに対する指令値であって、転舵力の目標値である。
【0043】
通電制御部64は、転舵トルク指令値Tp
*に応じた電力を転舵モータ31へ供給する。具体的には、通電制御部64は、転舵トルク指令値Tp
*に基づき、転舵モータ31に対する電流指令値を演算する。通電制御部64は、転舵モータ31に対する給電経路に設けられた電流センサ65を通じて、給電経路に生じる電流Ibの値を検出する。電流Ibの値は、転舵モータ31に供給される電流の値である。通電制御部64は、電流指令値と電流Ibの値との偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵モータ31に対する給電を制御する。これにより、転舵モータ31は転舵トルク指令値Tp
*に応じたトルクを発生する。
【0044】
<反力トルク指令値演算部52の構成>
つぎに、反力トルク指令値演算部52の構成について詳細に説明する。
図3に示すように、反力トルク指令値演算部52は、アシストトルク指令値演算部81、軸力演算部82、および減算器83を有している。
【0045】
アシストトルク指令値演算部81は、トルクセンサ42を通じて検出される操舵トルクTh、および車速センサ41を通じて検出される車速Vを取り込む。アシストトルク指令値演算部81は、操舵トルクThおよび車速Vに基づき、アシストトルク指令値T1を演算する。アシストトルク指令値T1は、操舵装置2が電動パワーステアリング装置である場合のアシストトルクの目標値に相当する。アシストトルクは、ステアリングホイール5の操舵を補助するための力である。アシストトルク指令値T1は、ステアリングホイール5の操舵方向と同じ方向のトルクである。操舵トルクThの絶対値が大きいほど、また車速Vが遅いほど、アシストトルク指令値T1の絶対値は、より大きくなる。
【0046】
軸力演算部82は、ピニオン角演算部61により演算されるピニオン角θp、電流センサ65を通じて検出される転舵モータ31の電流Ibの値、車速センサ41を通じて検出される車速V、および操舵角演算部51により演算される操舵角θsを取り込む。軸力演算部82は、ピニオン角θp、転舵モータ31の電流Ibの値、車速V、および操舵角θsに基づき、転舵シャフト22に作用する軸力を演算する。軸力演算部82は、演算される軸力をステアリングシャフト11に対するトルクに換算することにより、軸力トルクT2を演算する。
【0047】
減算器83は、アシストトルク指令値演算部81により演算されるアシストトルク指令値T1、および軸力演算部82により演算される軸力トルクT2を取り込む。減算器83は、アシストトルク指令値T1から軸力トルクT2を減算することにより、反力トルク指令値T*を演算する。
【0048】
<前後加速度の変化>
たとえば、車両が加速または減速するとき、前後加速度Gfbが変化する。また、車両が登坂路を上り下りするとき、前後加速度Gfbが変化しやすい。上り坂では、車両の重量と勾配の度合いに応じた勾配抵抗が車両に作用するため、車両が減速しやすい。下り坂では、勾配による加速がつくため、車両が加速しやすい。ただし、前後加速度Gfbが変化すること自体によっては、軸力の値が変化しない。すなわち、前後加速度Gfbの変化に応じた操舵反力が得られないおそれがある。そこで、本実施の形態では、加減速、および登坂路の上り下りなどを含む車両の走行状態に応じて、より適切な操舵反力を発生させるために、反力トルク指令値演算部52として、つぎの構成を採用している。
【0049】
図3に示すように、反力トルク指令値演算部52は、ゲイン演算部84、および第1の乗算器85を有している。
ゲイン演算部84は、前後加速度センサ45を通じて検出される前後加速度G
fbを取り込む。ゲイン演算部84は、前後加速度G
fbに応じて、第1のゲインG1を演算する。第1のゲインG1は、たとえば、「1」よりも大きい値であって、「0.1」刻みで設定される。第1のゲインG1は、前後加速度G
fbの絶対値が増加するほど、より大きい値に設定される。
【0050】
第1の乗算器85は、ゲイン演算部84により演算される第1のゲインG1を取り込む。第1の乗算器85は、軸力演算部82により演算される軸力トルクT2に第1のゲインG1を乗算することにより、反力トルク指令値T*の演算に使用される最終的な軸力トルクT2を演算する。前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的な軸力トルクT2の絶対値が増加する。
【0051】
減算器83は、アシストトルク指令値T1から最終的な軸力トルクT2を減算することにより、反力トルク指令値T*を演算する。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、操舵反力が増加する。操舵反力は、軸力トルクT2の絶対値が増加する分だけ増加する。
【0052】
<第1の実施の形態の効果>
第1の実施の形態は、以下の効果を奏する。
(1-1)前後加速度Gfbに応じて、軸力トルクT2、ひいては反力トルク指令値T*の値が調整される。反力モータ12が調整後の反力トルク指令値T*に応じたトルクを発生することにより、前後加速度Gfbの変化を伴う車両の走行状態に応じて、より適切な操舵反力をステアリングホイール5に付与することができる。運転者は、ステアリングホイール5を介した操舵反力を手応えとして感じることにより、前後加速度Gfbに応じた車両挙動を把握することが可能である。すなわち、運転者に対するインフォメーションとしての操舵反力を確保することができる。
【0053】
(1-2)前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的な軸力トルクT2の絶対値が増加する。軸力トルクT2は、アシストトルク指令値T1から減算される。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、反力トルク指令値T*がステアリングホイール5の操舵方向と反対方向へ増加する。したがって、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、操舵反力が増加する。すなわち、車両の加減速の度合いが大きくなるほど、ステアリングホイール5の剛性感が増加する。このため、運転者は、加減速の度合いが大きくなるほど、よりしっかりとした手応え感を得ることができる。
【0054】
(1-3)軸力演算部82により演算される軸力トルクT2に第1のゲインG1を乗算するだけで、操舵反力を前後加速度Gfbに応じて簡単に調整することができる。第1のゲインG1は、前後加速度Gfbに応じた値に設定される。
【0055】
<第2の実施の形態>
つぎに、操舵制御装置の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には、先の
図1~
図3に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。このため、第1の実施の形態と同一の部材および構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を割愛する。本実施の形態は、操舵反力の調整方法の点で、第1の実施の形態と異なる。
【0056】
図3に示すように、ゲイン演算部84は、前後加速度G
fbに応じて、第2のゲインG2を演算する。第2のゲインG2は、アシストトルク指令値演算部81により演算されるアシストトルク指令値T1に対するゲインである。第2のゲインG2は、たとえば、「1」よりも小さい値であって、「0.1」刻みで設定される。第2のゲインG2は、前後加速度G
fbの絶対値が増加するほど、より小さい値に設定される。
【0057】
図3に二点鎖線で示すように、反力トルク指令値演算部52は、第2の乗算器86を有している。第2の乗算器86は、ゲイン演算部84により演算される第2のゲインG2を取り込む。第2の乗算器86は、アシストトルク指令値演算部81により演算されるアシストトルク指令値T1に第2のゲインG2を乗算することにより、反力トルク指令値T
*の演算に使用される最終的なアシストトルク指令値T1を演算する。前後加速度G
fbの絶対値が増加するほど、最終的な軸力トルクT2の絶対値が減少する。
【0058】
減算器83は、最終的なアシストトルク指令値T1から、軸力演算部82により演算される軸力トルクT2を減算することにより、反力トルク指令値T*を演算する。アシストトルク指令値T1はステアリングホイール5の操舵方向と同じ方向のトルクであって、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的なアシストトルク指令値T1の絶対値が減少する。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、操舵反力が増加する。操舵反力は、アシストトルク指令値T1の絶対値が減少する分だけ増加する。
【0059】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態は、以下の効果を奏する。
(2-1)前後加速度Gfbに応じて、アシストトルク指令値T1、ひいては反力トルク指令値T*の値が調整される。このため、反力モータ12が調整後の反力トルク指令値T*に応じたトルクを発生することにより、前後加速度Gfbの変化を伴う車両の走行状態に応じて、より適切な操舵反力をステアリングホイール5に付与することができる。運転者は、ステアリングホイール5を介した操舵反力を手応えとして感じることにより、前後加速度Gfbに応じた車両挙動を把握することが可能である。すなわち、運転者に対するインフォメーションとしての操舵反力を確保することができる。
【0060】
(2-2)前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的なアシストトルク指令値T1の絶対値が減少する。アシストトルク指令値T1は、ステアリングホイール5の操舵方向と同方向のトルクである。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、反力トルク指令値T*がステアリングホイール5の操舵方向と反対方向へ増加する。したがって、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、操舵反力が増加する。すなわち、加減速の度合いが大きくなるほど、ステアリングホイール5の剛性感が増加する。このため、運転者は、加減速の度合いが大きくなるほど、よりしっかりとした手応え感を得ることができる。
【0061】
(2-3)アシストトルク指令値演算部81により演算されるアシストトルク指令値T1に第2のゲインG2を乗算するだけで、操舵反力を前後加速度Gfbに応じて簡単に調整することができる。第2のゲインG2は、前後加速度Gfbに応じた値に設定される。
【0062】
<第3の実施の形態>
つぎに、操舵制御装置の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、基本的には、先の
図1~
図3に示される第1の実施の形態と同様の構成を有している。このため、第1の実施の形態と同一の部材および構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を割愛する。本実施の形態は、操舵反力の調整方法の点で、第1の実施の形態と異なる。
【0063】
図4に示すように、軸力演算部82は、角度軸力演算部82A、電流軸力演算部82B、混合軸力演算部82C、換算器82D、および第3の乗算器82Eを有している。
角度軸力演算部82Aは、ピニオン角θ
pに基づき、角度軸力AF
1を演算する。ピニオン角θ
pは、転舵輪6の転舵状態が反映される状態変数である。角度軸力AF
1は、ピニオン角θ
pの絶対値が増大するほど、また車速Vが遅いほど、より大きな絶対値に設定される。角度軸力AF
1の符号は、ピニオン角θ
pの符号と同符号である。角度軸力AF
1は、路面状態あるいは転舵シャフト22に作用する力が反映されない軸力である。
【0064】
電流軸力演算部82Bは、転舵モータ31の電流Ibの値に基づき、電流軸力AF2を演算する。転舵モータ31の電流Ibの値は、転舵輪6の転舵状態が反映される状態変数である。転舵モータ31の電流Ibの値は、路面摩擦抵抗などの路面状態に応じた外乱が転舵輪6に作用することに起因して、目標ピニオン角θp
*と実際のピニオン角θpとの間に発生する差に応じて変化する。すなわち、転舵モータ31の電流Ibの値には、転舵輪6に作用する実際の路面状態が反映される。このため、転舵モータ31の電流Ibの値に基づき、路面状態の影響を反映した軸力を演算することが可能である。電流軸力演算部82Bは、たとえば車速Vに応じた係数であるゲインを転舵モータ31の電流Ibの値に乗算することにより、電流軸力を演算する。電流軸力AF2は、路面状態あるいは転舵輪6を介して転舵シャフト22に作用する力が反映される軸力である。
【0065】
混合軸力演算部82Cは、角度軸力演算部82Aにより演算される角度軸力AF1、および電流軸力演算部82Bにより演算される電流軸力AF2を取り込む。混合軸力演算部82Cは、角度軸力AF1、および電流軸力AF2を使用して混合軸力AF3を演算する。混合軸力AF3は、角度軸力AF1と電流軸力AF2とが所定の配分比率で混合された軸力である。
【0066】
混合軸力演算部82Cは、車両挙動、路面状態あるいは操舵状態が反映される各種の状態変数に応じて、角度軸力AF1に対する第1の配分比率と、電流軸力AF2に対する第2の配分比率とを設定する。混合軸力演算部82Cは、製品仕様などに基づき、第1の配分比率および第2の配分比率の値を「0(0%)」~「1(100%)」の範囲において、たとえば「0.1」刻みで設定する。ただし、混合軸力演算部82Cは、第1の配分比率の値と、第2の配分比率の値との合計が「1」となるように、第1の配分比率と第2の配分比率との値を設定する。
【0067】
混合軸力演算部82Cは、角度軸力AF1に対して個別に設定される第1の分配比率を乗じて得られた値と、電流軸力AF2に対して個別に設定される第2の分配比率を乗じて得られた値とを合算することにより、混合軸力AF3を演算する。
【0068】
換算器82Dは、混合軸力演算部82Cにより演算される混合軸力AF3をステアリングホイール5に対するトルクに換算することによって、軸力トルクT2を演算する。
第3の乗算器82Eは、ゲイン演算部84により演算される第1のゲインG1を取り込む。第3の乗算器82Eは、たとえば、電流軸力演算部82Bにより演算される電流軸力AF2に第1のゲインG1を乗算することにより、混合軸力AF3の演算に使用される最終的な電流軸力AF2を演算する。前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的な電流軸力AF2の絶対値が増加する。
【0069】
混合軸力演算部82Cは、第1のゲインG1が乗算された後の最終的な電流軸力AF2を使用して、混合軸力AF3を演算する。前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的な電流軸力AF2の絶対値、ひいては軸力トルクT2の絶対値が増加する。軸力トルクT2は、アシストトルク指令値T1から減算される。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、操舵反力が増加する。操舵反力は、軸力トルクT2の絶対値が増加する分だけ増加する。
【0070】
なお、第3の乗算器82Eは、電流軸力AF2に代えて、混合軸力AF3に第1のゲインG1を乗算するようにしてもよい。この場合、第3の乗算器82Eは、混合軸力演算部82Cにより演算される混合軸力AF3に第1のゲインG1を乗算することにより、軸力トルクT2の演算に使用される最終的な混合軸力AF3を演算する。前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的な混合軸力AF3の絶対値が増加する。
【0071】
<第3の実施の形態の効果>
第3の実施の形態は、以下の効果を奏する。
(3-1)前後加速度Gfbに応じて、電流軸力AF2、ひいては軸力トルクT2の値が調整される。このため、反力トルク指令値T*も前後加速度Gfbに応じて調整される。反力モータ12が調整後の反力トルク指令値T*に応じたトルクを発生することにより、前後加速度Gfbの変化を伴う車両の走行状態に応じて、より適切な操舵反力をステアリングホイール5に付与することができる。運転者は、ステアリングホイール5を介した操舵反力を手応えとして感じることにより、前後加速度Gfbに応じた車両挙動を把握することが可能である。すなわち、運転者に対するインフォメーションとしての操舵反力を確保することができる。
【0072】
(3-2)前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、最終的な電流軸力AF2、ひいては軸力トルクT2の絶対値が増加する。軸力トルクT2は、アシストトルク指令値T1から減算される。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、反力トルク指令値T*がステアリングホイール5の操舵方向と反対方向へ増加する。したがって、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、操舵反力が増加する。すなわち、加減速の度合いが大きくなるほど、ステアリングホイール5の剛性感が増加する。このため、運転者は、加減速の度合いが大きくなるほど、よりしっかりとした手応え感を得ることができる。
【0073】
(3-3)電流軸力演算部82Bにより演算される電流軸力AF2に第1のゲインG1を乗算するだけで、操舵反力を前後加速度Gfbに応じて簡単に調整することができる。第1のゲインG1は、前後加速度Gfbに応じた値に設定される。
【0074】
(3-4)電流軸力AF2は、路面状態あるいは転舵輪6を介して転舵シャフト22に作用する力が反映される軸力である。このため、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、電流軸力AF2の絶対値を増加させることによって、車両挙動あるいは路面状態がより反映された操舵反力をステアリングホイール5に付与することができる。運転者は、ステアリングホイール5を介した操舵反力を手応えとして感じることにより車両挙動あるいは路面状態を把握することが可能となる。このことは、混合軸力AF3に対する電流軸力AF2の反映度合いが増加するほど、すなわち混合軸力AF3において電流軸力AF2がより支配的な状態になるほど、顕著である。
【0075】
(3-5)第3の乗算器82Eとして、電流軸力AF2に代えて、混合軸力AF3に第1のゲインG1を乗算する構成を採用する場合、前後加速度Gfbの絶対値が増加するほど、混合軸力AF3、ひいては軸力トルクT2の絶対値が増加する。このため、先の(3-1)欄~(3-3)欄に記載の効果と同様の効果を得ることができる。また、角度軸力AF1に対する第1の配分比率と、電流軸力AF2に対する第2の配分比率とによっては、先の(3-4)欄に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0076】
<他の実施の形態>
各実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・前後加速度Gfbは、車速センサ41を通じて検出される車速Vに基づき演算してもよい。たとえば、操舵制御装置1は、車速Vを時間で微分することにより、前後加速度Gfbを求めることができる。車速Vは、車載のセンサを通じて検出される値である。
【0077】
・
図1に二点鎖線で示すように、車両にタイヤ力センサ46が設けられることがある。タイヤ力センサ46は、たとえば、車両の各車輪に組み込まれたハブユニット軸受に設けられる。車輪は、転舵輪6を含む。タイヤ力センサ46は、タイヤ力F
xを検出する。タイヤ力F
xは、路面と各車輪との間に作用する荷重であって、車輪の前後水平方向に作用する力である前後荷重を含む。すなわち、タイヤ力F
xには、前後加速度G
fbが反映される。
【0078】
車両にタイヤ力センサ46が設けられている場合、反力トルク指令値演算部52は、前後加速度Gfbに代えて、タイヤ力センサ46を通じて検出されるタイヤ力Fxを取り込むようにしてもよい。この場合、ゲイン演算部84は、タイヤ力Fxに応じて、第1のゲインG1または第2のゲインG2を演算する。タイヤ力Fxに応じて、反力トルク指令値T*、ひいては操舵反力が調整されることにより、第1~第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
なお、混合軸力AF3に対する角度軸力AF1の反映度合いが、混合軸力AF3に対する電流軸力AF2の反映度合いよりも大きいとき、すなわち混合軸力AF3において電流軸力AF2が角度軸力AF1よりも支配的であるときのみ、タイヤ力Fxを使用するようにしてもよい。タイヤ力Fxは、車載のセンサを通じて検出される値である。
【符号の説明】
【0080】
1…操舵制御装置
1A…反力制御装置(反力制御部)
5…ステアリングホイール
6…転舵輪
12…反力モータ
22…転舵シャフト
31…転舵モータ
45…前後加速度センサ
46…タイヤ力センサ