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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065332
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】工具管理装置および自動搬送機
(51)【国際特許分類】
   B23Q 41/00 20060101AFI20240508BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240508BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B23Q41/00 F
B23Q11/00 F
B25J5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174148
(22)【出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】淺田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 剛大
(72)【発明者】
【氏名】本郷 敦士
【テーマコード(参考)】
3C042
3C707
【Fターム(参考)】
3C042RG02
3C042RG08
3C042RG14
3C042RG16
3C042RK01
3C042RK22
3C707AS12
3C707BS10
3C707CS08
3C707DS01
3C707ES03
3C707KS03
3C707KS08
3C707WA16
3C707WA28
(57)【要約】
【課題】 工作機械から取り外されて工具を適切に無人搬送する。
【解決手段】 工具管理装置は、工具を識別する工具識別情報および工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報を含む工具情報のデータを変更する工具管理部と、工具の搬送命令を自動搬送機に送信する送信部と、を備える。送信部は、搬送命令の送信に際して、搬送対象となる工具の工具識別情報とシャンク情報を前記自動搬送機に送信する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を識別する工具識別情報および工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報を含む工具情報のデータを変更する工具管理部と、
工具の搬送命令を自動搬送機に送信する送信部と、を備え、
前記送信部は、前記搬送命令の送信に際して、搬送対象となる工具の工具識別情報とシャンク情報を前記自動搬送機に送信する、工具管理装置。
【請求項2】
電子装置から、工具の搬送指示を受信する受信部、を更に備え、
前記搬送指示には、前記工具の工具識別情報と、前記工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報が含まれる、請求項1に記載の工具管理装置。
【請求項3】
前記工具管理部は、工具台から自動運搬機により工具が取り出されたとき、前記工具情報における前記工具の所在地を前記工具台から前記自動運搬機に変更する、請求項1に記載の工具管理装置。
【請求項4】
工具を自動搬送可能な自動搬送機であって、
工具を把持可能なハンドを先端部に有するロボットアームと、
前記ロボットアームを制御するアーム制御部と、
前記自動搬送機の移動を制御する移動制御部と、
工具の搬送命令を受信する受信部と、を備え、
前記搬送命令には、搬送対象となる工具について、前記工具を識別する工具識別情報および前記工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報が含まれ、
前記アーム制御部は、前記シャンク情報に基づいて、前記ハンドの位置および前記ハンドの把持動作量の双方または一方を制御する、自動搬送機。
【請求項5】
前記アーム制御部は、工具台に設置される工具を前記ロボットアームに把持させるとき、前記工具に対応するシャンク情報にしたがって、前記ロボットアームのハンドの前記工具台からの高さを調整する、請求項4に記載の自動搬送機。
【請求項6】
前記アーム制御部は、工具台に設置される工具を前記ロボットアームに把持させるとき、前記工具に対応するシャンク情報にしたがって、前記ロボットアームのハンドの開度を調整する、請求項4に記載の自動搬送機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で使用する工具を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、ワークを所望の形状に切削加工する装置や、金属粉末などを積層してワークを作る装置がある。切削加工する工作機械には、回転するワークに切削用の工具を当てることでワークを加工するターニングセンタと、回転する工具をワークに当てることでワークを加工するマシニングセンタ、これらの機能を複合的に備える複合加工機などがある。
【0003】
主軸あるいは刃物台などの工具保持部に工具は固定される。工作機械は、あらかじめ用意された加工プログラムにしたがって、工具を交換しつつ、工具保持部を動かしながらワークを加工する。ワークとの摩擦により工具の刃先は徐々に摩耗する。作業者は、適宜、工作機械から工具を取り外し、交換エリアにて工具を検査する。継続使用に適さないほど摩耗が大きいときには、取り外した工具を新しい工具に交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6851525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、作業者は、工作機械から工具を取り外したあと、いったんは工作機械の近くにある台車にこの工具を置く。次に、作業者は台車を押して工具を交換エリアに運搬する。工作機械のある加工エリアと、工具を検査・交換するための交換エリアとの間で台車によって工具を運搬する作業は、作業効率を低下させる要因となりやすい。
【0006】
本発明者らは、工作機械から取り外されて工具を無人搬送する方法について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様における工具管理装置は、工具を識別する工具識別情報および工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報を含む工具情報のデータを変更する工具管理部と、工具の搬送命令を自動搬送機に送信する送信部と、を備える。
送信部は、搬送命令の送信に際して、搬送対象となる工具の工具識別情報とシャンク情報を自動搬送機に送信する。
【0008】
本発明のある態様における自動搬送機は、工具を把持可能なハンドを先端部に有するロボットアームと、ロボットアームを制御するアーム制御部と、自動搬送機の移動を制御する移動制御部と、工具の搬送命令を受信する受信部と、を備える。
搬送命令には、搬送対象となる工具について、工具を識別する工具識別情報および工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報が含まれる。
アーム制御部は、シャンク情報に基づいて、ハンドの位置およびハンドの把持動作量の双方または一方を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工作機械で使用する工具を自動搬送機で適切に運搬しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】加工エリア、交換エリアおよび自動搬送機の関係を説明するための模式図である。
図2】工具管理システムのハードウェア構成および工具管理装置の機能ブロック図である。
図3】自動搬送機の機能ブロック図である。
図4】台設置情報のデータ構造図である。
図5】工具情報のデータ構造図である。
図6】機械格納情報のデータ構造図および工作機械の外観図である。
図7】台格納情報のデータ構造図および工具台の外観図である。
図8】搬送機格納情報のデータ構造図と自動搬送機の外観図である。
図9】搬送指示画面の画面図である。
図10】取付画面の画面図である。
図11】ハンドにより把持されたシャンクの側断面図である。
図12】ハンドにより把持されたシャンクの上断面図である。
図13】ハンドにより把持された別のシャンクの側断面図である。
図14】ハンドにより把持された別のシャンクの上断面図である。
図15】工作機械から工具を取り外して、そばにある工具台にこの工具を搬入するときの処理過程を示すシーケンス図である。
図16】工具台にある工具を自動搬送機に搬送させるときの処理過程を示すシーケンス図である。
図17】搬送指示情報のデータ構造図である。
図18】自動搬送機が工具を交換エリアの工具台に搬入するときの処理過程を示すシーケンス図である。
図19】自動搬送機が工具を加工エリアに搬送するときの処理過程を示すシーケンス図である。
図20】加工エリアの工具台に工具を搬入したあと、工作機械に取り付ける処理過程を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、加工エリア102、交換エリア108および自動搬送機116の関係を説明するための模式図である。
図1に示す工場104には、複数の加工エリア102(加工エリア102a、102b・・・102n)が設けられる。加工エリア102は、工作機械100と複数の工具台106を含む領域である。本実施形態においては、1台の工作機械100に対して2台の工具台106が対応づけられる。
【0012】
工作機械100としては、マシニングセンタ、ターニングセンタあるいは複合加工機が想定される。工作機械100は、一般的にマガジンとよばれる工具格納部を備える。工具格納部には、複数の工具が格納される。また、工具格納部において工具が格納されるポットは「ポット番号」により識別される。
【0013】
上述したように、工場104には複数の加工エリア102が設定され、加工エリア102ごとに工作機械100が設置される。工作機械100は「マシンID」により識別される。たとえば、加工エリア102aに設置される工作機械100aのマシンIDは「MC1」である。以下、マシンID=MC1の工作機械100aのことを「工作機械100(MC1)」のように表記する。同様にして、加工エリア102bの工作機械100bのマシンIDは「MC2」であるから、工作機械100bのことを「工作機械100(MC2)」と表記する。
【0014】
工作機械100の近傍には工具台106が設置される。工具台106は「台ID」により識別される。たとえば、加工エリア102aの工具台106aの台IDは「B01」、工具台106bの台IDは「B02」である。以下、台ID=B01の工具台106aを「工具台106(B01)」のように表記する。
【0015】
本実施形態の工具台106は台車として構成されるが、特に、この形態に限定されない。工具台は、工作機械100からアームロボットで工具を取り外し、そのまま工具を置ける位置にある固定された台であってもよい。また、工具台106を台車として構成する場合であっても、2台のうちの1台は固定して移動不可に設定され、もう1台は作業者が移動可能となるように設定されてもよい。作業者は、工具台106に複数の工具を一時的に置くことができる。工具台106において工具が格納されるポットも「ポット番号」により識別される。なお、より具体的には、所定重量以上、たとえば、10キログラム以上の工具は移動可能な方の工具台106に載せて、作業者が人力にて運搬するとしてもよい。
【0016】
本実施形態の工具台106は、工場104において固定設置され、その位置は「位置番号」により特定される。作業者は、工場104に新たに工具台106を設置するとき、台IDおよび位置番号、工場104における工具台106の位置座標を後述の工具管理装置200に登録する。したがって、工具台106の台IDがわかれば、この工具台106の位置がわかるようになっている。たとえば、工具台106(B01)の位置番号は「Q01」であり、工具台106(B02)の位置番号は「Q02」である。位置番号「Q01」には工具台106(B01)の位置座標が対応づけられ、位置番号「Q02」には工具台106(B02)の位置座標が対応づけられている。
なお、位置座標は工具管理装置200ではなく、後述の搬送制御装置124において管理されてもよい。すなわち、搬送制御装置124において、台IDおよび位置番号、位置座標が対応づけられるとしてもよい。また、工具管理装置200および搬送制御装置124は、このような位置に関する情報を相互に参照または交換可能に構成されてもよい。
【0017】
交換エリア108は、工具の検査・交換作業をするための場所である。通常、加工エリア102と交換エリア108は数メートルから数十メートル離れている。交換エリア108には、工具計測装置110、交換作業台112および複数の工具台106が設置される。工具計測装置110は、工具の摩耗および折損を検査するための装置である。交換作業台112は、工具をシャンクから取り外し、シャンクに新しい工具(刃先)を取り付けることにより工具交換を行うための台である。
【0018】
交換エリア108に設置される複数の工具台106(B22)~工具台106(B26)も台IDにより識別され、位置番号が設定される。
【0019】
工場104においては、更に、複数の自動搬送機116(自動搬送機116a~116c)が設置される。自動搬送機116はロボットアームを有し、工具を運搬可能な自走ロボットである。
【0020】
自動搬送機116は、加工エリア102側の工具台106と、交換エリア108側の工具台106を結ぶ移動経路114を設定する。より具体的には、工場104に取り付けられるロケータ(不図示)により、工場104内における物体の配置を検出する。自動搬送機116は物体配置に基づいて工場104内を移動し、あらかじめ地図情報を形成しておく。自動搬送機116は現在位置に基づいて地図情報を参照しながら移動方向を決定することで、実際の移動経路114が決まる。また、自動搬送機116は、作業者などの障害物をセンサにより検出したときには自動停止することで、障害物との衝突を回避する。
【0021】
本実施形態における自動搬送機116は、加工エリア102側の工具台106と、交換エリア108側の工具台106との間で工具を運搬する。
【0022】
自動搬送機116は「搬送機ID」により識別される。たとえば、自動搬送機116aの搬送機IDは「A01」、自動搬送機116bの搬送機IDは「A02」である。以下、搬送機ID=A01の自動搬送機116aを「自動搬送機116(A01)」のように表記する。自動搬送機116も工具を格納するための複数のポットを有し、各ポットはポット番号により識別される。なお、図1に示す移動経路114は、自動搬送機116(A02)について想定される移動経路を示している。
【0023】
以下においては、加工エリア102において主にワークの加工作業を担当する作業者を「加工者」、交換エリア108において工具の検査および交換を行う作業者を「交換者」とよび、特に区別しないときには単に「作業者」とよぶ。
【0024】
図2は、工具管理システム118のハードウェア構成および工具管理装置200の機能ブロック図である。
工具管理装置200は、工具の所在を管理するための装置である。工作機械100は、工具管理装置200と接続される。工作機械100は、工具格納部にある工具が取り外されたとき、取り外し通知を工具管理装置200に送信する。また、加工者により、工具保持部等に新たに工具が取り付けられたとき、工作機械100は取り付け通知を工具管理装置200に送信する。取り付け通知および取り外し通知には、マシンID、工具を識別する工具IDと工具の取り付けまたは取り外しの対象となったポットのポット番号が含まれる。
【0025】
加工エリア102側の工具台106のそばには、機械側電子装置120が設置される。加工エリア102においては工具台106と機械側電子装置120は1対1にて対応づけられる。機械側電子装置120としては、パーソナルコンピュータ(PC)、電子タブレット、スマートフォンなどが想定される。加工者は、機械側電子装置120を操作することにより、自動搬送機116による工具搬送を指示できる(後述)。また、加工者は、機械側電子装置120により工具管理装置200にアクセスすることで工具の格納状態を確認できる。
なお、複数の工具台106に対して1台の機械側電子装置120を対応づけてもよい。この場合には、機械側電子装置120において、搬送元となる工具台106を選択してもよい。
【0026】
交換エリア108の工具台106のそばには、交換側電子装置122が設置される。交換エリア108においては工具台106と交換側電子装置122は1対1にて対応づけられる。交換側電子装置122もパーソナルコンピュータなどの各種のコンピュータ端末である。交換者は、交換側電子装置122を操作することにより工具搬送を指示できる。また、交換者は、交換側電子装置122により工具の格納状態を確認できる。
交換エリア108においても、複数、たとえば、5台の工具台106に対して1台の交換側電子装置122が対応づけられてもよい。
以下、機械側電子装置120および交換側電子装置122をまとめて言うとき、あるいは、特に区別しないときには、単に「電子装置300」とよぶ。
【0027】
搬送制御装置124は、複数の自動搬送機116を管理する。自動搬送機116は、搬送制御装置124からの指示にしたがって動作する。
【0028】
次に、工具管理装置200の機能ブロック図について説明する。
工具管理装置200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
図3に関連して後述する自動搬送機116の機能ブロックに関しても同様である。
【0029】
工具管理装置200は、通信部202、データ処理部204およびデータ格納部206を含む。
通信部202は、工作機械100、機械側電子装置120、交換側電子装置122、搬送制御装置124等の外部装置との通信処理を担当する。データ処理部204は、通信部202により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部204は、通信部202およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。データ格納部206は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0030】
通信部202は、データを送信する送信部208と、データを受信する受信部210を含む。
【0031】
データ処理部204は、工具管理部212および指示部214を含む。工具管理部212は、工具の所在地を管理する。指示部214は、搬送制御装置124に対して、自動搬送機116に対する各種指示を作成する。また、指示部214は、機械側電子装置120、交換側電子装置122等を介して作業者に工具の取り付け位置(工具台106におけるポットの位置)を指示する。
【0032】
工作機械100が使用する工具の形状はさまざまである。工具は「シャンク」とよばれる部材に固定される。シャンクの形状もさまざまである。工具とシャンクは一体化され、工具台106あるいは自動搬送機116のポットに挿入される。ポットの形状は統一されている。以下に示す「ホルダ名」とはシャンクの種別を示すシャンク情報である。詳細は後述するが、自動搬送機116は、ロボットアーム142によって工具と一体化されたシャンクの部分を掴むことで工具を運搬する。
【0033】
図3は、自動搬送機116の機能ブロック図である。
自動搬送機116は、ハードウェア機構としての機構部128と、機構部128を制御する電子機器およびコンピュータプログラムによって実現される制御部126を含む。機構部128は、工具を把持するロボットアーム142と駆動輪144を含む。
【0034】
制御部126は、搬送制御装置124との通信を担当する通信部130と、通信部130からの指示にしたがって機構部128を制御するデータ処理部132を含む。
通信部130は、データを送信する送信部134と、データを受信する受信部136を含む。データ処理部132は、ロボットアーム142を制御するアーム制御部138と、駆動輪144を制御する移動制御部140を含む。
【0035】
アーム制御部138は、把持対象となる工具に取り付けられるシャンクに応じて、ロボットアーム142の把持操作を調整する(後述)。
【0036】
図4は、台設置情報150のデータ構造図である。
台設置情報150は、工具管理装置200のデータ格納部206に格納される。作業者は、工具台106を工場104に設置するときには、台設置情報150に工具台106を登録する。上述したように、工具台106は台IDにより識別され、工作機械100または交換エリア108に対応づけられる。
【0037】
図4によれば、工具台106(B01)は、工作機械100(MC1)に対応づけられている。工具台106(B01)の名称は「CMC9M」である。また、工具台106(B01)の位置番号は「Q01」である。上述したように、位置番号「Q01」には、あらかじめ、工場104における位置座標(不図示)が対応づけられる。
【0038】
工具台106(B01)と工具台106(B02)は、工作機械100(MC1)に対応づけられている。工具台106(B03)と工具台106(B04)は、工作機械100(MC2)に対応づけられている(図1参照)。一方、工具台106(B22)等は工作機械100に対応づけられていない。これらの工具台106(B22)~工具台106(B26)は、加工エリア102ではなく、交換エリア108に設置されている(図1参照)。
【0039】
図5は、工具情報160のデータ構造図である。
工具情報160は、工具管理装置200のデータ格納部206に格納される。工具情報160は、工具の所在地を管理するデータである。図5によれば、工具ID=T01の工具(以下、「工具(T01)」のように表記する)は、工作機械100(MC1)の工具格納部におけるポット番号=P01のポットに格納されている。また、工具(T09)は現在交換中であることが示されている。「工具長補正」の欄は工具の長さ方向における補正値を示し、「工具径補正」の欄は工具の径方向における補正値を示す。
【0040】
工具情報160における「設定寿命」の欄は設定寿命を示す。工具の使用回数が設定寿命(回数)に到達したとき、工具管理部212は工作機械100に工具検査を行うよう通知する。工作機械100は、自装置の操作画面(不図示)において工具検査を行うように加工者に指示する。「使用回数」の欄は、工具の使用回数を示す。工作機械100は、工具を工具保持部に割り出すごとに、工具IDを工具管理装置200に通知し、工具管理部212は該当工具の使用回数を更新する。
【0041】
工具情報160における「警告寿命」の欄は、近いうちに工具検査を実行すべきと作業者に警告通知すべき使用回数を示す。たとえば、工具(T01)の現在の使用回数は「0回」であり、工具(T01)の使用回数が警告回数「80回」に到達したとき、工作機械100は加工者に対して工具(T01)の検査を推奨する。
【0042】
工具の重量はあらかじめ重量ランク1~10に分類される。工具情報160における「重量」の欄は、工具の重量ランクを示す。重量ランクが大きい工具ほど重い。工具管理部212は、工具の新規登録時および工具の移動時に工具情報160を適宜更新する。なお、本実施形態においては、工具重量が0.1キログラム重くなるごとにランクアップするように設定されている。
【0043】
上述したように、工具はシャンクに固定される。「ホルダ名」の欄は、工具が固定されるシャンクの種別を示す。
【0044】
図6は、機械格納情報180のデータ構造図および工作機械100の外観図である。
工作機械100は、工具格納部170を備え、工具格納部170は複数のポット172を有する。
【0045】
機械格納情報180は、工具管理装置200のデータ格納部206に格納される。機械格納情報180は、工作機械100における工具の格納状態を示す。図6は、工作機械100(MC1)の機械格納情報180を示す。
【0046】
工作機械100(MC1)のポット番号=P01のポット172(以下、「ポット172(P01)」のように表記する)には、工具(T01)が格納されている(図5参照)。別のポット172(P02)には工具(T02)、ポット172(P03)には工具(T03)、ポット172(P04)には工具(T04)が格納されている。また、工作機械100(MC1)のポット172(P05)~172(P10)は空きポットになっている。
【0047】
加工者が、工作機械100の工具格納部170から工具を取り外したとき、工作機械100は取り外し通知を工具管理装置200に送信し、工具管理装置200の工具管理部212は機械格納情報180を更新する。また、工具格納部170の空きポットに工具が取り付けられたときには、工作機械100は取り付け通知を工具管理装置200に送信し、工具管理部212は機械格納情報180を更新する。工具の着脱に応じて、工具管理部212は工具情報160も更新する。
【0048】
図7は、台格納情報190のデータ構造図および工具台106の外観図である。
工具台106は、キャスター194を備え、移動可能に構成される。本実施形態においては、キャスター194は固定されるため、工具台106は設置後において移動不可となる。工具台106の天井面には複数のポット192が形成される。作業者は、ポット192にシャンク付きの工具を格納する。工具台106には電気的な機構はない。上述したように、工具台106には機械側電子装置120または交換側電子装置122が対応づけられる。
【0049】
台格納情報190は、工具管理装置200のデータ格納部206に格納される。台格納情報190は、工具台106における工具の格納状態を示す。図7は、工具台106(B01)の台格納情報190を示す。工具台106(B01)の工具台名は「CMC9M」である(図4参照)。
【0050】
工具台106(B01)のポット192(P01)には、工具(T05)が格納されている(図5参照)。一方、工具台106(B01)のポット192(P03)は空きポットである。
【0051】
作業者が工具台106(B01)に工具を取り付けるとき、工具管理部212は台格納情報190を参照し、指示部214は取り付け先となる空きポットを作業者に指示する。取り付け指示の後、工具管理部212は台格納情報190を更新する(後述)。また、自動搬送機116などが工具台106(B01)から工具を取り出すときにも、工具管理装置200は台格納情報190を更新する。
【0052】
図8は、搬送機格納情報220のデータ構造図と自動搬送機116の外観図である。
自動搬送機116は、作業部230および自走部232を含む。作業部230と自走部232は、図3に関連して説明した機構部128に対応する。自動搬送機116の制御部126は、作業部230および自走部232を制御するための電子回路およびコンピュータプログラムにより構成される。
【0053】
自走部232には、駆動輪144が含まれる。自走部232は、図示しないセンサを搭載する。移動制御部140は、駆動輪144を制御し、自動搬送機116を移動させる。
【0054】
作業部230には、工具格納部234が構成される。工具格納部234にも工具を格納するための複数のポットが形成される。作業部230に形成されるロボットアーム142の先端には、工具を掴むためのハンド236が形成される。ロボットアーム142は、ハンド236でシャンクを掴むことにより工具台106から工具を取り出し、後方の工具格納部234の空きポットに取り出した工具を格納する。また、ロボットアーム142は、工具格納部234から工具のシャンクを掴むことで工具を取り出し、工具台106の空きポットに工具を格納することもできる。
【0055】
搬送機格納情報220は、工具管理装置200のデータ格納部206に格納される。搬送機格納情報220は、自動搬送機116における工具の格納状態を示す。図8は、自動搬送機116(A01)の搬送機格納情報220を示す。
【0056】
自動搬送機116(A01)のポット(P01)には、工具(T12)が格納されている。自動搬送機116(A01)のポット(P02)は空きポットになっている。自動搬送機116(A01)のポット(P03)には、工具(T07)が格納されている(図5参照)。
【0057】
ロボットアーム142が自動搬送機116(A01)の工具格納部234に工具を格納するとき、工具管理部212は搬送機格納情報220を更新する(後述)。また、自動搬送機116が工具台106(B01)に工具を格納するときにも、工具管理部212は搬送機格納情報220を更新する。
【0058】
図9は、搬送指示画面240の画面図である。
搬送指示画面240は、電子装置300、すなわち、機械側電子装置120または交換側電子装置122に表示される。ここでは、加工エリア102の工具台106(B01)に対応づけられる機械側電子装置120において表示される搬送指示画面240を想定して説明する。
【0059】
電子装置300は、台設置情報150(図4参照)、工具情報160(図5参照)、機械格納情報180(図6参照)、台格納情報190(図7参照)、搬送機格納情報220(図8参照)等の各種データに基づいて、搬送指示画面240を構成する。なお、工具管理装置200が画面データを生成し、電子装置300に表示させるとしてもよい。
【0060】
作業者が更新ボタン242をタッチしたとき、機械側電子装置120は工具管理装置200に更新要求を送信し、工具管理装置200から最新データを取得し、搬送指示画面240を更新する。図9の搬送指示画面240によれば、工具台106(B01:CMC9M)のポット192(P01)に工具(T05)が格納されており、工具(T05)のホルダ名(シャンク種)は「HSK50」である。また、ポット192(P02)には工具(T06)が格納されている(図5図7参照)。
【0061】
作業者は、工具を工具台106(B01)に取り付けるときには、取り付けボタン244をタッチする。取り付けボタン244のタッチが検出されると、機械側電子装置120は取付画面250(図10参照)を表示させる。工具台106への手動による工具の取り付けについては、後述する。以下、工具台106等へ工具を取り付けることを「搬入」とよぶ。
【0062】
作業者は、工具台106(B01)から工具を取り外すときには取り外しボタン246をタッチする。取り外しボタン246がタッチされたとき、機械側電子装置120は取外画面(不図示)を表示させる。取外画面において、作業者は工具台106から取り外しの対象となる工具を格納するポットを指定する。以下、工具台106等から工具を取り外すことを「搬出」とよぶ。
【0063】
工具台106に格納される工具を別の工具台106に搬送したいときには、作業者は搬送ボタン248をタッチする。たとえば、工具台106(B01)のポット192(P01)に格納される工具(T05)を、交換エリア108にある工具台106(B22)のポット192(P05)に搬送したいときには、作業者は工具(T05)に対応する行について「搬送先」欄にて「B22」、「搬送先ポット」欄にて「P05」を選択した上で搬送ボタン248をタッチする。なお「搬送先ポット」欄の入力は任意である。後述するように、工具管理部212が工具台106(B22)の空きポットから搬送先となるポットを選択してもよい。
【0064】
搬送ボタン248がタッチされると、機械側電子装置120から工具管理装置200に搬送要求が送信される。搬送要求には、搬送元の台ID、ポット番号、搬送対象となる工具の工具ID、搬送先の台ID、ホルダ名(シャンク情報)およびポット番号が含まれる。工具管理装置200は、搬送制御装置124を介して自動搬送機116に工具(T05)の搬送を指示する。ここでは、自動搬送機116(A01)が選ばれたとする。
【0065】
機械側電子装置120は、たとえば、工具(T05)が搬出対象として選択されたときには、搬送要求の送信前または送信後に、搬送指示画面240における工具(T05)の行を削除する。このため、作業者は搬出指示済みの工具(T05)が実際に搬出される前に、工具(T05)を再度搬出対象として選択することがなくなる。いいかえれば、ある工具についていったん搬出指示がなされたあと、同じ工具に対して二重に搬出指示がなされるという不都合が生じないように考慮されている。作業者が終了ボタン222をタッチしたときには、機械側電子装置120は搬送指示画面240を終了させる。
【0066】
搬送指示を受けた自動搬送機116(A01)は、工具台106(B01)から工具(T05)を搬出し、工具(T05)を自装置の工具格納部234に格納したあと、搬送先である工具台106(B22)の近くまで移動し、工具台106(B22)のポット192(P05)に工具(T05)を搬入する。
交換側電子装置122に表示される搬送指示画面240についても、操作方法は同じである。
【0067】
図10は、取付画面250の画面図である。
上述したように、作業者は工具を工具台106(B01)の空いているポット192に格納したいときには、取付画面250を表示させる。図10は、作業者が工具台106(CMC9M:B01)のポット192(P09)に工具(T18)を搬入するときの入力状態を示す。作業者は、工具(T18)を持参して、工具台106(B01)の空いているポット192(P09)に工具(T18)を搬入した後、OKボタン252をタッチする。このとき、機械側電子装置120から工具管理装置200に工具の取り付け通知が送信される。取り付け通知には、台ID、工具ID、ホルダ名(シャンク情報)およびポット番号が含まれる。工具管理装置200の指示部214は、取り付け通知にしたがって台格納情報190等の各種データを更新する。
なお、キャンセルボタン254がタッチされたときには取り付け通知は送信されない。
【0068】
図11は、ハンド236により把持されたシャンク400Aの側断面図である。
工具は、工具台106に形成されるポット192に挿入される。図11では、シャンク400Aに固定される工具が工具台106に格納されている。工具をポット192に挿入するとき、シャンク400Aの一部が工具台106の表面から露出する。図11では紙面手前方向をX軸、右方向をY軸、上方向をZ軸としている。
【0069】
シャンク400Aは、工具台106の表面から高さH1となる位置に、溝402が形成される。ハンド236の先端部が溝402に挿入されることで、ロボットアーム142はシャンク400Aを把持できる。以下、工具台106の表面から溝402までの高さを「把持高度」とよぶ。把持高度は、シャンク400の種類によって異なる。
【0070】
搬送制御装置124には、シャンクごとの把持高度があらかじめ登録されている。搬出要求により、工具のシャンク情報(ホルダ名)が指定されると、搬送制御装置124はシャンクに対応する把持高度を特定し、自動搬送機116に通知する。自動搬送機116のアーム制御部138は、ロボットアーム142におけるハンド236の高さを把持高度H1に調整した上で、シャンク400Aを把持する。
【0071】
図12は、ハンド236により把持されたシャンク400Aの上断面図である。
シャンク400Aの溝402の直径はD1である(以下、「把持径」とよぶ)。把持径もシャンク400の種類によって異なる。搬送制御装置124には、シャンクごとの把持径があらかじめ登録されている。搬出要求により、工具のシャンク情報(ホルダ名)が指定されると、搬送制御装置124はシャンクに対応する把持径を特定し、自動搬送機116に通知する。自動搬送機116のアーム制御部138は、ロボットアーム142におけるハンド236の開度を把持径以上に調整した上で、シャンク400Aを把持する。
以上のように、自動搬送機116は、シャンクに対応する把持高度および把持径に合わせてハンド236の把持動作量、具体的には高度と開度を調整することで、さまざまな工具を工具台106から確実に取り出すことができる。
工具台106から工具を搬出するときだけでなく、工具格納部234から工具を搬出するときも同様である。
【0072】
図13は、ハンド236により把持された別のシャンク400Bの側断面図である。
シャンク400Bの把持高度はH2である。搬送制御装置124は、シャンク400Bに取り付けられる工具の搬出要求を送信するときには、把持高度H2を自動搬送機116に通知する。自動搬送機116のアーム制御部138は、ロボットアーム142におけるハンド236の高さを把持高度H2に調整した上で、シャンク400Bを把持する。
【0073】
図14は、ハンド236により把持された別のシャンク400Bの上断面図である。
シャンク400Bの把持径はD2である。自動搬送機116のアーム制御部138は、把持径D2以上となるようにハンド236の開度を調整したあと、ハンド236の開度を把持径D2まで狭めることでロボットアーム142にシャンク400Bを把持させる。
以上のように、自動搬送機116は、シャンクに対応する把持高度および把持径に合わせてハンド236の高度と開度を調整することで、さまざまな工具を工具台106または工具格納部234から確実に取り出すことができる。
【0074】
図15は、工作機械100から工具を取り外して、そばにある工具台106にこの工具を搬入するときの処理過程を示すシーケンス図である。
加工者は、まず、検査・交換対象となる工具を工作機械100から取り外す(S10)。加工者は、工作機械100の工具保持部から工具を取り外してもよいし、工具格納部170から工具を取り外してもよい。工作機械100は、工具の取り外しを検出したとき、取り外し通知を工具管理装置200に送信する(S12)。工具管理装置200の受信部210は、取り外し通知を受信する。
ここでは工作機械100(MC1)のポット172(P01)から工具(T01)を取り外す場合を想定して説明する(図6参照)。
【0075】
工具管理部212は、取り外し通知にしたがって機械格納情報180等のデータを更新する(S14)。具体的には、工作機械100(MC1)の機械格納情報180について、工具(T01)が格納されていたポット172(P01)を空きポットに変更する。次に、工具管理部212は、台設置情報150を参照し、工作機械100(MC1)に対応づけられている工具台106(B01)および工具台106(B02)を特定し、台格納情報190に基づいてこの2つの工具台106について空きポットを探す。ここでは、工具管理部212は工具台106(B01)のポット192(P03)を選んだとする。工具管理部212は、台格納情報190を更新し、工具台106(B01)のポット192(P03)に工具(T01)をあらかじめ設定しておく。
【0076】
工具(T01)を取り外した作業者は、機械側電子装置120の搬送指示画面240において更新ボタン242をタッチする。このとき、機械側電子装置120は工具管理装置200に更新要求を送信する(S16)。指示部214は、工具台106(B01)のポット192(P03)を工具(T01)の格納先として機械側電子装置120に指示する。このとき、送信部208は台ID(B01)およびポット番号(P03)を含む指示を送信する(S18)。機械側電子装置120は指示を受信し、工具台106(B01)のポット(P03)に工具(T01)が取り付けられたことを示すように搬送指示画面240を更新する。
【0077】
作業者は、指示にしたがって、工具(T01)を工具台106(B01)のポット192(P03)に取り付ける(S20)。機械側電子装置120は、工具(T01)の取り付け完了後に搬送指示画面240を更新してもよい。
【0078】
以上のように、加工者は工作機械100(MC1)から工具(T01)を取り外したときには、工作機械100(MC1)のそばにある機械側電子装置120においてこの工具(T01)の搬入先となる工具台106と空きポットを指示される。加工者は工具(T01)を指定された格納場所に搬入する。この処理過程において、工具管理装置200は、工具情報160、機械格納情報180、台格納情報190等の各種データを更新し、工具(T01)の所在位置を追跡管理する。
【0079】
図16は、工具台106にある工具を自動搬送機116に搬送させるときの処理過程を示すシーケンス図である。
次に、工具台106(B01)に格納された工具(T01)を、別の工具台106(B22)に搬送する場合を想定して説明する。まず、工具台106(B01)に対応づけられる機械側電子装置120において、加工者は搬送先となる工具台106(B22)を指定して搬送ボタン248をタッチする。このとき、機械側電子装置120は、搬送元の工具台106の台ID(B01)とポット番号(P03)、搬送対象となる工具(T01)、工具(T01)が取り付けられるシャンク「HSK100」を示すシャンク情報、搬送先の工具台106の台ID(B22)を含む搬送要求を工具管理装置200に送信する(S30)。
上述したように、このとき、機械側電子装置120は搬送指示画面240から工具(T01)に対応する行を削除する。
【0080】
工具管理装置200は、機械側電子装置120から搬送要求を受信し、搬送制御装置124に搬送指示を送信する(S34)。工具管理装置200から搬送制御装置124に送信される搬送指示の詳細は次の図17に関連して説明する。このとき、工具管理部212は、搬送先となる工具台106(B22)の空きポットから、工具(T01)の搬入先となるポット192を選ぶ。ここでは、工具台106(B22)のポット192(P10)が選ばれたとする。
【0081】
搬送制御装置124は、工具(T01)を搬送すべき自動搬送機116を選ぶ。自動搬送機116の選び方は任意であるが、搬送制御装置124は、移動中ではない自動搬送機116を優先的に選んでもよい。搬送制御装置124は、自動搬送機116(A01)を選んだとして説明を続ける。
【0082】
搬送制御装置124は、工具(T01)の搬送を自動搬送機116(A01)に指示する(S36)。このときの搬送指示には、工具(T01)、搬出元である工具台106(B01)の台IDとポット番号、シャンク「HSK100」に対応する把持高度と把持径、搬出先である工具台106(B22)の台IDとポット番号などが含まれる。
【0083】
自動搬送機116(A01)は、搬送制御装置124から搬送指示を受信する。自動搬送機116(A01)は工具台106(B01)に向けて移動し、ロボットアーム142により工具台106(B01)のポット192(P03)から工具(T01)を搬出する(S38)。このとき、アーム制御部138は、指示された把持高度および把持径に合わせて、ハンド236の高度と開度を調整しつつ工具(T01)のシャンク部分を把持する。
【0084】
自動搬送機116(A01)は、工具(T01)を搬出して自装置の工具格納部234に格納し、搬出通知を搬送制御装置124に送信する(S40)。搬出通知には、搬送機ID(A01)とともに工具格納部234において工具(T01)を搬入したポットのポット番号が含まれる。ここでは自動搬送機116(A01)は工具格納部234のポット(P04)に工具(T01)を格納したとする。搬送制御装置124は、搬出指示を更に工具管理装置200に送信する(S42)。工具管理部212は、搬出指示を受信したとき、工具(T01)の所在地を工具台106(B01:P03)から自動搬送機116(A01:P04)に変更するように、工具情報160、台格納情報190および搬送機格納情報220のデータを更新する(S44)。
【0085】
続いて、搬送制御装置124は、自動搬送機116(A01)に工具(T01)の搬送先である工具台106(B22)の位置番号または位置座標を含む移動指示を送信する(S46)。この移動指示に基づいて、自動搬送機116(A01)は工具(T01)を工具台106(B22)に向けて運搬する。
【0086】
図17は、搬送指示情報260のデータ構造図である。
搬送指示情報260は、工具管理装置200から搬送制御装置124に送信される(図16のS34参照)。命令ID欄253には、搬送指示情報260を識別する命令IDが記載される。日時欄255は、搬送指示情報260の送信日時を示す。図17に示す搬送指示情報260は、9月27日15時37分に送信されている。
【0087】
搬送元欄256は搬送元の工具台106とそのポット番号、搬送先欄258は搬送先の工具台106とそのポット番号を示す。工具欄261は、搬送対象となる工具(T05)の工具IDを示し、ホルダ欄262はホルダ名、すなわち、シャンク情報を示す。ここでは、工具台106(B01:P03)から工具台106(B22:P10)に、シャンク「HSK100」に装着されている工具(T01)を運搬することが示されている。
搬送制御装置124は、シャンク「HSK100」に対応する把持高度と把持径を自動搬送機116に通知する。
【0088】
なお、搬送指示情報260の送信後、工具管理部212は工具台106(B22)のポット192(P10)を「空きポット」から「予約ポット」に変更し、工具(T01)以外の工具が格納されないように設定しておく。
【0089】
図18は、自動搬送機116が工具を交換エリア108の工具台106に搬入するときの処理過程を示すシーケンス図である。
続いて、自動搬送機116(A01:P04)に格納された工具(T01)を、工具台106(B22:P10)に搬入する場面を想定して説明する。自動搬送機116(A01)は、搬入先の工具台106(B22)の近くまで移動し、工具(T01)を工具台106(B22:P10)に搬入する(S50)。このときも、自動搬送機116(A01)は、工具(T01)のシャンク「HSK100」に対応する把持高度および把持径に対応して、ハンド236の高度と開度を調整し、工具格納部234から工具(T01)を取り出す。
【0090】
自動搬送機116(A01)は、工具(T01)を工具台106(B22:P10)に搬入したことを示す搬入通知を搬送制御装置124に送信する(S52)。搬送制御装置124は、更に、搬入通知を工具管理装置200に転送する(S54)。工具管理部212は、搬入通知にしたがって、工具(T01)の所在地を自動搬送機116(A02:P04)から工具台106(B22:P10)となるようにデータを更新する(S56)。
【0091】
次に、工具台106(B22:P10)に取り付けられた工具(T01)を工具計測装置110において検査し、交換作業台112においてシャンクから工具(T01)を取り外して新しい工具(T01)と交換する場面を想定して説明する。
【0092】
交換者は、工具台106(B22:P10)から工具(T01)を手動にて取り外す(S58)。このとき、交換者は、工具台106(B22)に対応づけられる交換側電子装置122を操作して取り外しを入力する。交換側電子装置122は取り外し通知を工具管理装置200に送信する(S60)。取り外し通知には、工具台106(B22)の台IDおよびポット番号、取り外された工具(T01)の工具ID、シャンク情報が含まれる。工具管理部212は、工具(T01)の所在地を「交換中」に変更する。交換者は、取り外した工具(T01)を工具計測装置110に運んで検査を行い、必要に応じて交換作業台112で交換する。
【0093】
工具(T01)の検査および交換のあと、交換者は工具(T01)を交換エリア108にあるいずれかの工具台106に取り付ける(S64)。工具(T01)の取り付けに際しては、指示部214はあらかじめ取り付け先となる工具台106およびポット192(空きポット)を交換者に指示しておく。ここでは、工具台106(B23)のポット192(P04)が搬入先として指定されたとする。
【0094】
工具(T01)を工具台106(B23:P04)に取り付けた後、作業者は交換側電子装置122を操作して工具(T01)の取り付けを入力する。交換側電子装置122は取り付け通知を工具管理装置200に送信する(S66)。工具管理部212は、取り付け通知を受信したあと、工具(T01)の所在地を工具台106(B23:P04)に変更する(S68)。
【0095】
図19は、自動搬送機116が工具を加工エリア102に搬送するときの処理過程を示すシーケンス図である。
工具台106(B23:P04)に格納された工具(T01)を工具台106(B03)のポット192(P03)に運ぶ場面を想定して説明する。まず、交換者は工具台106(B23)に対応づけられる交換側電子装置122において、工具(T01)を工具台106(B23:P04)から工具台106(B03)へ搬送するように指示する(S70)。交換側電子装置122は、工具ID、搬送先の工具台106の台ID、シャンク情報、搬送元の工具台106の台ID等を含む搬送要求を工具管理装置200に送信する(S72)。
【0096】
工具管理装置200は、工具(T01)の搬送指示を搬送制御装置124に送信する(S74)。搬送制御装置124は、更に、複数の自動搬送機116から工具(T01)を搬送すべき自動搬送機116に搬送指示を送信する(S76)。ここでは、自動搬送機116(A03)が選ばれたとする。
【0097】
自動搬送機116(A03)は、搬送元の工具台106(B23)の近くに移動し、指定された工具(T01)を工具台106(B23:P04)から搬出する(S78)。自動搬送機116(A03)は、工具台106(B23)から工具(T01)を取り出して工具格納部234の空きポットに格納し、搬出通知を搬送制御装置124に送信する(S80)。
【0098】
搬送制御装置124は、更に、搬出通知を工具管理装置200に送信する(S82)。工具管理部212は、工具(T01)の所在地を工具台106(B23)から自動搬送機116(A03)に変更する(S84)。搬送制御装置124は、自動搬送機116(A03)に工具台106(B03)へ移動するように指示する(S86)。
【0099】
図20は、加工エリア102の工具台106に工具を搬入したあと、工作機械100に取り付ける処理過程を示すシーケンス図である。
自動搬送機116(A03)は、工具(T01)を工具台106(B03:P03)に搬入する(S90)。自動搬送機116(A03)は搬入通知を搬送制御装置124に送信する(S93)。搬送制御装置124は、更に、搬入通知を工具管理装置200に送信する(S94)。工具管理装置200は、工具(T01)の所在地を自動搬送機116(A03)から工具台106(B03)に変更する(S96)。
【0100】
次に、加工者は工具台106(B03:P03)に格納された工具(T01)を取り外す(S98)。このとき、工具台106(B03)に対応づけられる機械側電子装置120において、加工者は取り外しと、工作機械100への取り付けを入力する。機械側電子装置120は、工具管理装置200に取り外し通知を送信する(S100)。工具管理部212は、工具(T01)の所在地を工具台106(B03)から工作機械100に変更する(S102)。
【0101】
加工者は、工作機械100に工具(T01)を取り付ける(S104)。取り付け後、工作機械100は取り付け通知を工具管理装置200に送信する(S106)。
【0102】
<総括>
以上、実施形態に基づいて、工具管理システム118を説明した。
工具管理システム118によれば、加工エリア102および交換エリア108の間で工具が運搬されるときにも、工具の位置を適切に追跡管理できる。加工者は工作機械100と工具台106の間での工具を移動させる。また、交換者は交換エリア108内において工具を移動させる。加工エリア102および交換エリア108の間では、自動搬送機116により工具が運搬される。加工エリア102から交換エリア108の間における工具運搬にかかる作業を自動化できるため、作業効率を向上させることができる。
【0103】
搬送指示にともなって、搬送制御装置124には搬送対象となる工具のシャンク情報が伝えられる。搬送制御装置124は、シャンク情報に基づいて、シャンクの把持高度および把持径を特定し、これらを自動搬送機116に通知する。自動搬送機116は、搬送制御装置124からの通知される把持高度および把持径にしたがって工具を適切に把持できる。
【0104】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0105】
<変形例>
本実施形態においては、台IDと位置番号が対応づけられ、位置番号に位置座標が対応づけられるため、台IDがわかれば工具台106の位置が特定できるとして説明した。変形例として、台IDと位置座標を直接対応づけてもよい。あるいは、位置座標データを台IDとして使用してもよい。
【0106】
工具台106に工具を取り付けるとき、作業者は機械側電子装置120を操作して、工具IDのほか、取り付け先となる工具台106の台IDおよびポット番号を機械側電子装置120に入力してもよい。機械側電子装置120は、入力された台ID、ポット番号および工具IDを含む取り付け通知を工具管理装置200に送信してもよい。工具管理部212は取り付け通知を受信したことを契機として、工具所在地に関する各種のデータを更新するとしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
100 工作機械、102 加工エリア、104 工場、106 工具台、108 交換エリア、110 工具計測装置、112 交換作業台、114 移動経路、116 自動搬送機、116a 自動搬送機、116b 自動搬送機、118 工具管理システム、120 機械側電子装置、122 交換側電子装置、124 搬送制御装置、126 制御部、128 機構部、130 通信部、132 データ処理部、134 送信部、136 受信部、138 アーム制御部、140 移動制御部、142 ロボットアーム、144 駆動輪、150 台設置情報、160 工具情報、170 工具格納部、172 ポット、180 機械格納情報、190 台格納情報、192 ポット、194 キャスター、200 工具管理装置、202 通信部、204 データ処理部、206 データ格納部、208 送信部、210 受信部、212 工具管理部、214 指示部、220 搬送機格納情報、222 終了ボタン、230 作業部、232 自走部、234 工具格納部、236 ハンド、240 搬送指示画面、242 更新ボタン、244 取り付けボタン、246 取り外しボタン、248 搬送ボタン、250 取付画面、252 OKボタン、253 命令ID欄、254 キャンセルボタン、255 日時欄、256 搬送元欄、258 搬送先欄、260 搬送指示情報、261 工具欄、262 ホルダ欄、300 電子装置、400 シャンク、402 溝
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【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を識別する工具識別情報および工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報を含む工具情報のデータを変更する工具管理部と、
工具の搬送命令を自動搬送機に送信する送信部と、を備え、
前記送信部は、前記搬送命令の送信に際して、搬送対象となる工具の工具識別情報とシャンク情報を前記自動搬送機に送信する、工具管理装置。
【請求項2】
電子装置から、工具の搬送指示を受信する受信部、を更に備え、
前記搬送指示には、前記工具の工具識別情報と、前記工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報が含まれる、請求項1に記載の工具管理装置。
【請求項3】
前記工具管理部は、工具台から前記自動搬送機により工具が取り出されたとき、前記工具情報における前記工具の所在地を前記工具台から前記自動搬送機に変更する、請求項1に記載の工具管理装置。
【請求項4】
工具を自動搬送可能な自動搬送機であって、
工具を把持可能なハンドを先端部に有するロボットアームと、
前記ロボットアームを制御するアーム制御部と、
前記自動搬送機の移動を制御する移動制御部と、
工具の搬送命令を受信する受信部と、を備え、
前記搬送命令には、搬送対象となる工具について、前記工具を識別する工具識別情報および前記工具が装着されるシャンクに関するシャンク情報が含まれ、
前記アーム制御部は、前記シャンク情報に基づいて、前記ハンドの位置および前記ハンドの把持動作量の双方または一方を制御する、自動搬送機。
【請求項5】
前記アーム制御部は、工具台に設置される工具を前記ロボットアームに把持させるとき、前記工具に対応するシャンク情報にしたがって、前記ロボットアームのハンドの前記工具台からの高さを調整する、請求項4に記載の自動搬送機。
【請求項6】
前記アーム制御部は、工具台に設置される工具を前記ロボットアームに把持させるとき、前記工具に対応するシャンク情報にしたがって、前記ロボットアームのハンドの開度を調整する、請求項4に記載の自動搬送機。