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特開2024-65338モジュールブロックの設置装置及びモジュールブロックの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065338
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】モジュールブロックの設置装置及びモジュールブロックの設置方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/02 20060101AFI20240508BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/16 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174157
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】福島 康雅
(72)【発明者】
【氏名】怒田 邦広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 保
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA08
4K051AB03
4K051BB02
(57)【要約】
【課題】荷振れが発生したとしても、早期に荷振れを収めることができるモジュールブロックの設置装置を提供する。
【解決手段】複数の煉瓦から構成されるモジュールブロックを既設煉瓦上に設置するモジュールブロックの設置装置であって、モジュールブロックの側面を挟み込んで把持する一対の把持部と、一対の把持部を支持する枠体と、一対の把持部から下方に突出して設けられるガイド部と、一対の把持部からガイド部よりもさらに下方に突出して設けられる荷振れ防止部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の煉瓦から構成されるモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置するモジュールブロックの設置装置であって、
前記モジュールブロックの側面を挟み込んで把持する一対の把持部と、
前記一対の把持部を支持する枠体と、
前記一対の把持部から下方に突出して設けられるガイド部と、
前記一対の把持部から前記ガイド部よりもさらに下方に突出して設けられる荷振れ防止部と、
を有する、モジュールブロックの設置装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記一対の把持部のうちの一方に設けられ、前記荷振れ防止部は前記一対の把持部のうちの他方に設けられる、請求項1に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項3】
前記荷振れ防止部は少なくとも5kNの押力に耐えられる、請求項1又は請求項2に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項4】
前記ガイド部の下端には、下方にいくに従って内面が外面に近づく傾斜面が設けられる、請求項1又は請求項2に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項5】
前記ガイド部の下端には、下方にいくに従って内面が外面に近づく傾斜面が設けられる、請求項3に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項6】
前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、請求項4に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項7】
前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、請求項5に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項8】
前記傾斜面には緩衝材が設けられる、請求項4に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項9】
前記傾斜面には緩衝材が設けられる、請求項5に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項10】
前記傾斜面には緩衝材が設けられる、請求項6に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項11】
前記傾斜面には緩衝材が設けられる、請求項7に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項12】
前記ガイド部は前記把持部から離れる方向に移動できる、請求項1又は請求項2に記載のモジュールブロックの設置装置。
【請求項13】
請求項1又は請求項2に記載のモジュールブロックの設置装置を用いるモジュールブロックの設置方法であって、
前記荷振れ防止部を前記既設煉瓦の側面に衝突させて荷振れを小さくさせた後に、前記モジュールブロックを前記既設煉瓦の上の設置する、モジュールブロックの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の建設又はコークス炉の補修に用いられるモジュールブロックの設置装置及びモジュールブロックの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いられる冶金用コークスは、コークス炉で石炭を乾留することによって製造される。コークス炉は、炭化室と、炭化室に熱を供給する燃焼室とを炉幅方向に交互に配置することによって構成される。コークス炉では、炭化室と燃焼室を隔てている耐火煉瓦等の定型耐火物を介して燃焼室から炭化室へ熱が供給されて石炭が乾留される。コークス炉には100以上の炭化室を備える炉もあり、このようなコークス炉は、全長100m以上、高さ10m以上におよぶ巨大煉瓦構造物といえる。
【0003】
コークス炉は、現在、20~30年の稼働期間を経て老朽化してきており、既存のコークス炉の補修や新たなコークス炉の建設の必要が迫っている。コークス炉は様々な形状、大きさの定型耐火物を複雑に組み合わせて建築される。このように定型耐火物の形状の複雑さのため、コークス炉の建設は、長らく、築炉工による手積み作業で行われていた。
【0004】
このような手積み作業では工期が長くなることから、コークス炉の工期短縮のため、プレハブ工法が開発されている。プレハブ工法とは、コークス炉の建築現場から離れた作業しやすい場所で複数の煉瓦を所定の大きさまで積み上げ、モルタルによって一体化してモジュールブロックとし、このモジュールブロックを積み上げてコークス炉を建築する工法である。
【0005】
プレハブ工法に関する技術として、特許文献1には、複数の煉瓦を組合わせた煉瓦ブロックを把持する把持部と、当該把持部から下方に突出した1対のガイド部とを有するコークス炉の築造装置が開示されている。特許文献1によれば、ガイド部の間に既設煉瓦を挟むように位置合わせすることで、設置精度に個人差を生じさせることなく、既設煉瓦の上に煉瓦ブロックを設置できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-163351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既設煉瓦の上方にモジュールブロックを搬送する過程で荷振れが発生する。モジュールブロックに荷振れが発生すると、特許文献1のコークス炉の築造装置を用いたとしても、荷振れ量がガイド部によってガイドできる量に収まるまで待たなければならず、この待ち時間により工期が延長してしまうという課題があった。本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、荷振れが発生したとしても、早期に荷振れを収めることができるモジュールブロックの設置装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 複数の煉瓦から構成されるモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置するモジュールブロックの設置装置であって、前記モジュールブロックの側面を挟み込んで把持する一対の把持部と、前記一対の把持部を支持する枠体と、前記一対の把持部から下方に突出して設けられるガイド部と、前記一対の把持部から前記ガイド部よりもさらに下方に突出して設けられる荷振れ防止部と、を有する、モジュールブロックの設置装置。
[2] 前記ガイド部は、前記一対の把持部のうちの一方に設けられ、前記荷振れ防止部は前記一対の把持部のうちの他方に設けられる、[1]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[3] 前記荷振れ防止部は少なくとも5kNの押力に耐えられる、[1]又は[2]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[4] 前記ガイド部の下端には、下方にいくに従って内面が外面に近づく傾斜面が設けられる、[1]又は[2]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[5] 前記ガイド部の下端には、下方にいくに従って内面が外面に近づく傾斜面が設けられる、[3]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[6] 前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、[4]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[7] 前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、[5]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[8] 前記傾斜面には緩衝材が設けられる、[4]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[9] 前記傾斜面には緩衝材が設けられる、[5]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[10] 前記傾斜面には緩衝材が設けられる、[6]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[11] 前記傾斜面には緩衝材が設けられる、[7]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[12] 前記ガイド部は前記把持部から離れる方向に移動できる、[1]又は[2]に記載のモジュールブロックの設置装置。
[13] [1]又は[2]に記載のモジュールブロックの設置装置を用いるモジュールブロックの設置方法であって、前記荷振れ防止部を前記既設煉瓦の側面に衝突させて荷振れを小さくさせた後に前記モジュールブロックを前記既設煉瓦の上の設置する、モジュールブロックの設置方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷振れ防止部によってモジュールブロックの設置装置に生じた荷振れを小さくすることができるので、荷振れによる待ち時間を短くできる。これにより、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する時間を従来よりも短くでき、コークス炉の建設工期の短縮やコークス炉の補修工期の短縮が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、ガイド部の模式図である。
図3図3は、荷振れ防止部の模式図である。
図4図4は、モジュールブロックの設置装置でモジュールブロックを把持した状態を示す模式図である。
図5図5は、モジュールブロックを把持し、既設煉瓦の上に設置するまでの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。以下の実施形態では、コークス炉の建設を例として説明するが、これに限らず、モジュールブロックが用いられるコークス炉の補修やコークス炉以外の炉の建設にも適用できる。
【0012】
本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置で把持するモジュールブロックは、複数の煉瓦(定型耐火物や不定型耐火物)を積み上げて構成される。モジュールブロックを構成する複数の定型耐火物又は不定型耐火物は、各耐火物の間の目地部分に塗布されたモルタルによって一体化される。
【0013】
モジュールブロックは、例えば、直方体であって、高さが300mm以上2000mm以下、長手方向の長さが500mm以上3000mm以下、短手方向の長さが800mm以上1500mm以下である。モジュールブロックの大きさは、作業のし易さや、建設するコークス炉の炉壁等の寸法によって定めてよい。
【0014】
図1は、本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10の一例を示す模式図である。モジュールブロックの設置装置10は、モジュールブロックの周囲を囲む枠体12と、モジュールブロックの側面を挟み込んで把持する一対の把持部14a、14bと、2つのガイド部16と、荷振れ防止部18とを有する。なお、図1の説明において、右上に示す方向を前後、左右上下方向として説明する。この方向は図1から図5において同じである。
【0015】
枠体12は把持するモジュールブロックの大きさに対応した大きさで設けられる。把持部14a、14bは、枠体12の左右方向の下端部に、枠体12に対して互いに近接する方向に移動可能に支持されている。枠体12及び把持部14a、14bは、例えば、鋼板(SS400)等で構成される。把持部14a、14bは、モジュールブロックの側面を挟み込んで把持する場合に、把持部14a、14bは互いに接近し、モジュールブロックを離す場合に把持部14a、14bは互いに離間する。把持部14a、14bはボルト19を締めることで、把持部14a、14bが互いに近接する方向に移動し、ボルト19を緩めることで、把持部14a、14bが互いに離間する方向に移動する。
【0016】
ガイド部16は、一対の把持部のうちの一方の把持部14aの下端に設けられる板状部材である。本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10では、2つのガイド部16の前後方向に離間して設けられる。ガイド部16は、把持部14aに不図示のボルトによって固定されて設けられる。ガイド部16の幅は50mm以上であることが好ましく、また、把持部14aの下端よりも下方に100mm以上突出していることが好ましい。
【0017】
図2は、ガイド部16の模式図である。図2に示すように、ガイド部16の下端には、下方にいくに従って内面が外面に近づく傾斜面が設けられている。本実施形態において、把持されるモジュールブロック側(図2の右方向)の面を内面とし、当該内面の反対側(図2の左方向)の面を外面とする。ガイド部16の傾斜面は、水平方向に投影した長さaが100mm以上であることが好ましく、垂直方向に投影した長さbが水平方向に投影した長さaの2倍以上であることが好ましい。また、ガイド部16の傾斜面には緩衝材が設けられていることが好ましい。これにより、当該傾斜面が既設煉瓦に衝突して既設煉瓦を破損させてしまうことを抑制できる。ガイド部16は、例えば、塩化ビニル等の樹脂、硬質ラバー又は鋼板で構成され、緩衝材は、例えば、発泡スチロール、スポンジ又は硬質ラバーで構成される。
【0018】
再び、図1を参照する。荷振れ防止部18は、一対の把持部のうちの他方の把持部14bの下端に設けられる板状部材である。本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10では、例えば、1つの荷振れ防止部18が把持部14bにボルト15によって固定されて設けられる。荷振れ防止部18の幅は50mm以上であることが好ましく、また、荷振れ防止部18は、ガイド部16の下端からさらに下方に50mm以上突出していることが好ましい。
【0019】
図3は、荷振れ防止部18の模式図である。図3に示すように、荷振れ防止部18の下端にも下方にいくに従って内面が外面に近づく傾斜面が設けられていてもよい。本実施形態では、把持されるモジュールブロック側(図3の左方向)の面を内面とし、当該内面の反対側(図3の右方向)の面を外面とする。荷振れ防止部18の傾斜面も、水平方向に投影した長さcが100mm以上であることが好ましく、垂直方向に投影した長さdが水平方向に投影した長さcの2倍以上であることが好ましい。また、荷振れ防止部18には緩衝材が設けられていることが好ましい。荷振れ防止部18は、例えば、鋼板(SS400)で構成され、緩衝材は、例えば、硬質ラバー、発泡スチロール、スポンジで構成される。
【0020】
図4は、モジュールブロックの設置装置10でモジュールブロック20を把持した状態を示す模式図である。図4に示すように、モジュールブロック20は、ボルト19を締めることで把持部14a、14bが互いに近接する方向に移動させ、モジュールブロック20の左右方向の側面を把持部14a、14bで挟み込むことで把持される。モジュールブロックの設置装置10は、左右方向からモジュールブロックの設置装置10を把持する把持装置を備える不図示のクレーンによって吊り上げられ、モジュールブロック20が製造される場所からコークス炉が建設されている場所に移動される。
【0021】
次に、モジュールブロックの設置装置10を用いて、モジュールブロック20を既設煉瓦30の上に設置する方法について説明する。既設煉瓦30は、例えば、コークス炉の炉壁を構成するために設置された耐火物である。図5は、モジュールブロック20を把持し、既設煉瓦30の上に設置するまでの各状態を示す模式図である。
【0022】
図5(a)は、モジュールブロックの設置装置10に把持されたモジュールブロック20が既設煉瓦30の上方に移動された状態を示す模式図である。コークス炉の建築現場から離れた場所で製造されたモジュールブロック20は、モジュールブロックの設置装置10に把持された状態で、モルタルが塗布された既設煉瓦30の上方に移動される。この移動により、モジュールブロック20及びモジュールブロックの設置装置10には荷振れが発生する。
【0023】
荷振れが発生すると、ガイド部16で目標とする位置に案内することができなくなるので、従来は荷振れ量がガイド部16によって案内できる量に収まるまで待たなければならなかった。これに対し、本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10では、この荷振れが発生した状態で、ガイド部16が既設煉瓦30に衝突しない位置まで降下させ、荷振れ防止部18を既設煉瓦30の側面に衝突させる。この状態を示した図が図5(b)である。この荷振れ防止部18と既設煉瓦30の側面との衝突により、モジュールブロック20及びモジュールブロックの設置装置10の荷振れを小さくすることができる。これにより、荷振れ量がガイド部16で案内できる量に収まるまでの時間を大幅に短縮できる。
【0024】
このように、本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10では、荷振れ防止部18を既設煉瓦30に衝突させてモジュールブロック20及びモジュールブロックの設置装置10の荷振れを小さくする。このため、荷振れ防止部18は、既設煉瓦30との衝突による衝撃力に耐えられることが好ましく、少なくとも5kNの押力に耐えられることが好ましい。ここで、5kNの耐えられるとは、オートグラフ(精密万能試験機)を用いて荷振れ防止部18に5kNの押力を加えても破損や塑性変形しないことを意味する。
【0025】
モジュールブロック20及びモジュールブロックの設置装置10の荷振れがガイド部16の傾斜面で案内できるまでに収まった後、モジュールブロックの設置装置10をガイド部16が既設煉瓦30に衝突する位置まで降下させる。モジュールブロックの設置装置10は、ガイド部16の傾斜面によって案内されてモジュールブロックの設置装置10の左右方向の位置が、既設煉瓦30の位置に位置決めされる。この状態を示した図が図5(c)である。
【0026】
本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10では、ガイド部16が一対の把持部のうちの一方の把持部14aに設けられ、荷振れ防止部18が一対の把持部のうちの他方の把持部14bに設けられる。このように、ガイド部16と荷振れ防止部18とをモジュールブロック20を挟んで対向するように設けることで、荷振れ防止部18をガイド部として機能させることができる。これにより、ガイド部16を把持部14bに設けることなく、モジュールブロックの設置装置10の左右方向の位置を、既設煉瓦30の左右方向の位置に位置決めできる。
【0027】
モジュールブロックの設置装置10の左右方向の位置が、既設煉瓦30の左右方向の位置に位置決めされた状態で、モジュールブロックの設置装置10がさらに降下され、モジュールブロック20は、モルタルが塗布された既設煉瓦30の上に設置される。この状態を示すのが図5(d)である。その後、ボルト19を緩めることで、把持部14a、14bを互いに離間する方向に移動させ、把持部14a、14bによるモジュールブロック20の把持を解放する。モジュールブロックの設置装置10は、次のモジュールブロックを既設煉瓦30の上に設置するため、モジュールブロック20が製造されている場所に移動され、再び、次のモジュールブロックを把持する。その後、図5(a)~(d)を用いて説明した操作を繰り返し実施することで、モジュールブロックが既設煉瓦30の上に積み重ねられてコークス炉の炭化室や燃焼室が建設される。
【0028】
このように、本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10は、一対の把持部14a、14bから下方に突出して設けられるガイド部16と、当該ガイド部16よりもさらに下方に突出して設けられる荷振れ防止部18とを有する。ガイド部16よりもさらに下方に突出した荷振れ防止部18を有することで、モジュールブロック20及びモジュールブロックの設置装置10の移動による荷振れが生じたとしても、当該荷振れ防止部18のみを既設煉瓦30の側面に衝突させることで、モジュールブロック20及びモジュールブロックの設置装置10の荷振れを小さくすることができ、荷振れによる待ち時間を大幅に短縮できる。
【0029】
なお、本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。本実施形態では、ガイド部16が把持部14aに直接固定される例を示したが、これに限らない。把持部14aとガイド部16との間に、例えば、シム(厚みが特定されている板状部材)を挟みこんで、ガイド部16を固定してもよい。これにより、挟み込むシムの厚さを変えることで、ガイド部16を把持部14aから離れる方向に移動させることができ、ガイド部16と荷振れ防止部18との距離を調整できる。
【0030】
コークス炉の建築においては、既設煉瓦の左右方向の寸法と、その上に設置するモジュールブロックの左右方向の寸法とが必ずしも同じ寸法であるとは限らない。このため、ガイド部16と荷振れ防止部18との距離が調整できれば、既設煉瓦の左右方向寸法がモジュールブロックの左右方向寸法よりも大きい場合であっても、本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10を用いて、既設煉瓦上に位置を合わせてモジュールブロックを設置できる。これにより、モジュールブロックの設置装置10の汎用性を向上させることができる。さらに、本実施形態では、ボルト19を締めることで把持部14a、14bでモジュールブロック20を把持し、ボルト19を緩めることでモジュールブロック20の把持を開放する例を示した。しかしながら、把持部14a、14bの位置を固定できるものであれば、ボルト19に限らず、別の装置を用いてもよい。
【実施例0031】
次に、本発明の実施例を説明する。図1に示したモジュールブロックの設置装置10を用いて、発明例1、2及び比較例1、2のモジュールブロックの設置装置を作製した。発明例1、2及び比較例1、2の構成は下記の通りである。
【0032】
発明例1:図1に示したモジュールブロックの設置装置10(変更なし)
発明例2:図1に示したモジュールブロックの設置装置10のガイド部16を傾斜面が設けられていないガイド部に変更した装置。
比較例1:図1に示したモジュールブロックの設置装置10の荷振れ防止部18をガイド部16に変更した装置。
比較例2:図1に示したモジュールブロックの設置装置10からガイド部16及び荷振れ防止部18を取り除いた装置。
モジュールブロックの大きさ:高さ626mm×長辺1836mm×短辺850mm
モジュールブロックの重量:1.3tоn
ガイド部16の把持部下端からの突出長さ:200mm、幅:150mm、傾斜面:水平方向40mm、垂直方向100mm
荷振れ防止部18の把持部下端からの突出長さ:300mm、幅:150mm
【0033】
発明例1、2及び比較例1、2のモジュールブロックの設置装置を用いて、モジュールブロックを所定位置から既設煉瓦の上に設置し、設置するのに要した時間及び左右方向の位置決め精度を確認した。この操作を繰り返し5回実施し、設置時間及び左右方向の位置決め精度の平均値を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
モジュールブロックの設置装置10を用いた発明例1では、荷振れ防止部18によって移動により生じた荷振れを小さくでき、設置時間2分、位置決め精度±1mmでモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置できた。発明例2では、ガイド部16に傾斜面が設けられていないのでガイド部16で位置決めするのに時間を要したものの荷振れ防止部18で荷振れを小さくでき、設置時間3分、位置決め精度±1mmでモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置できた。
【0036】
一方、比較例1では、荷振れ防止部18が設けられていないので荷振れを小さくできず、位置決め精度は発明例1、2と変わらなかったものの設置時間が5分となり、発明例1、2よりも長くなった。比較例2では、ガイド部16及び荷振れ防止部18が設けられていないので荷振れを小さくすることができず、且つ、モジュールブロックを既設煉瓦の上に位置決めするのに時間を要した。このため、比較例2の設置時間は15分となり、発明例1、2よりも顕著に長くなった。さらに、比較例2ではガイド部16による位置決めが行われないために、位置決め精度が±2mmとなり、発明例1、2及び比較例1よりも劣る結果となった。
【0037】
以上の結果から、ガイド部16及び荷振れ防止部18を有する本実施形態に係るモジュールブロックの設置装置10を用いることで移動による荷振れを小さくでき、従来の装置よりも短時間で、且つ、高い位置決め精度で、既設煉瓦の上にモジュールブロックを設置できることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
10 モジュールブロックの設置装置
12 枠体
14a、14b 把持部
15 ボルト
16 ガイド部
18 荷振れ防止部
19 ボルト
20 モジュールブロック
30 既設煉瓦
図1
図2
図3
図4
図5