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特開2024-65339位置決め装置及びモジュールブロックの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065339
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】位置決め装置及びモジュールブロックの設置方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/02 20060101AFI20240508BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C10B29/02
F27D1/16 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174158
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】福島 康雅
(72)【発明者】
【氏名】怒田 邦広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 保
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA08
4K051AB03
4K051BB02
(57)【要約】
【課題】モジュールブロックの短手方向及び長手方向を位置決めできる位置決め装置及び当該位置決め装置を用いるモジュールブロックの設置方法を提供する。
【解決手段】複数の煉瓦から構成される直方体のモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する際に用いる位置決め装置であって、既設煉瓦に取り付けられ、モジュールブロックの長手方向の設置位置を示す第1ガイド部と、モジュールブロックの短手方向の設置位置を示す第2ガイド部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の煉瓦から構成される直方体のモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する際に用いる位置決め装置であって、
前記既設煉瓦に取り付けられ、
前記モジュールブロックの長手方向の設置位置を示す第1ガイド部と、前記モジュールブロックの短手方向の設置位置を示す第2ガイド部とを有する、位置決め装置。
【請求項2】
前記第2ガイド部は、対向して設けられる一対の板状部材であり、
前記一対の板状部材の間隔を調整する調整部をさらに有する、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記第2ガイド部の長さは、前記モジュールブロックの長手方向の長さに対して1/4以上1/2以下である、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記第2ガイド部の長さは、前記モジュールブロックの長手方向の長さに対して1/4以上1/2以下である、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には、前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、請求項3に記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、請求項4に記載の位置決め装置。
【請求項9】
前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、請求項5に記載の位置決め装置。
【請求項10】
前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、請求項6に記載の位置決め装置。
【請求項11】
前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、請求項7に記載の位置決め装置。
【請求項12】
前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、請求項8に記載の位置決め装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の位置決め装置を用いて、既設煉瓦の上に前記モジュールブロックを設置するモジュールブロックの設置方法であって、
少なくとも1つの前記位置決め装置を既設煉瓦に取り付けた後に前記モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する、モジュールブロックの設置方法。
【請求項14】
2つの前記位置決め装置を既設煉瓦に取り付けた後に前記モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する、請求項13に記載のモジュールブロックの設置方法。
【請求項15】
固定治具を用いて前記位置決め装置を既設煉瓦に固定する、請求項13に記載のモジュールブロックの設置方法。
【請求項16】
固定治具を用いて前記位置決め装置を既設煉瓦に固定する、請求項14に記載のモジュールブロックの設置方法。
【請求項17】
前記位置決め装置は、少なくとも5kNの押力に耐えられるように、前記固定治具によって前記既設煉瓦に固定される、請求項15に記載のモジュールブロックの設置方法。
【請求項18】
前記位置決め装置は、少なくとも5kNの押力に耐えられるように、前記固定治具によって前記既設煉瓦に固定される、請求項16に記載のモジュールブロックの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の建設又はコークス炉の補修に用いられるモジュールブロックの位置決め装置及びモジュールブロックの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄に用いられる冶金用コークスは、コークス炉で石炭を乾留することによって製造される。コークス炉は、炭化室と、炭化室に熱を供給する燃焼室とを炉幅方向に交互に配置することによって構成される。コークス炉では、炭化室と燃焼室を隔てている耐火煉瓦等の定型耐火物を介して燃焼室から炭化室へ熱が供給されて石炭が乾留される。コークス炉には100以上の炭化室を備える炉もあり、このようなコークス炉は、全長100m以上、高さ10m以上におよぶ巨大煉瓦構造物といえる。
【0003】
コークス炉は、現在、20~30年の稼働期間を経て老朽化してきており、既存のコークス炉の補修や新たなコークス炉の建設の必要が迫っている。コークス炉は様々な形状、大きさの定型耐火物を複雑に組み合わせて建築される。このように定型耐火物の形状の複雑さのため、コークス炉の建設は、長らく、築炉工による手積み作業で行われていた。
【0004】
このような手積み作業では工期が長くなることから、コークス炉の工期短縮のため、プレハブ工法が開発されている。プレハブ工法とは、コークス炉の建築現場から離れた作業しやすい場所で複数の煉瓦を所定の大きさまで積み上げ、モルタルによって一体化してモジュールブロックとし、このモジュールブロックを積み上げてコークス炉を建築する工法である。
【0005】
プレハブ工法に関する技術として、特許文献1には、複数の煉瓦を組合わせた煉瓦ブロックを把持する把持部と、当該把持部から下方に突出した1対のガイド部とを有するコークス炉の築造装置が開示されている。特許文献1によれば、ガイド部の間に既設煉瓦を挟むように位置合わせすることで、設置精度に個人差を生じさせることなく、既設煉瓦の上に煉瓦ブロックを設置できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-163351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のコークス炉の築造装置は、煉瓦ブロックの短手方向の位置合わせについては考慮されているが、煉瓦ブロックの長手方向の位置合わせについては全く考慮されていない。このため、長手方向の位置合わせをするのに時間を要してしまい、結果として工期が延長してしまうという課題があった。本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、モジュールブロックの短手方向及び長手方向を位置決めできる位置決め装置及び当該位置決め装置を用いるモジュールブロックの設置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 複数の煉瓦から構成される直方体のモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する際に用いる位置決め装置であって、前記既設煉瓦に取り付けられ、前記モジュールブロックの長手方向の設置位置を示す第1ガイド部と、前記モジュールブロックの短手方向の設置位置を示す第2ガイド部とを有する、位置決め装置。
[2] 前記第2ガイド部は、対向して設けられる一対の板状部材であり、前記一対の板状部材の間隔を調整する調整部をさらに有する、[1]に記載の位置決め装置。
[3] 前記第2ガイド部の長さは、前記モジュールブロックの長手方向の長さに対して1/4以上1/2以下である、[1]に記載の位置決め装置。
[4] 前記第2ガイド部の長さは、前記モジュールブロックの長手方向の長さに対して1/4以上1/2以下である、[2]に記載の位置決め装置。
[5] 前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には、前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、[1]に記載の位置決め装置。
[6] 前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、[2]に記載の位置決め装置。
[7] 前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、[3]に記載の位置決め装置。
[8] 前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方の上端には前記モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられる、[4]に記載の位置決め装置。
[9] 前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、[5]に記載の位置決め装置。
[10] 前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、[6]に記載の位置決め装置。
[11] 前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、[7]に記載の位置決め装置。
[12] 前記傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であり、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上である、[8]に記載の位置決め装置。
[13] [1]から[12]のいずれかに記載の位置決め装置を用いて、既設煉瓦の上に前記モジュールブロックを設置するモジュールブロックの設置方法であって、少なくとも1つの前記位置決め装置を既設煉瓦に取り付けた後に前記モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する、モジュールブロックの設置方法。
[14] 2つの前記位置決め装置を既設煉瓦に取り付けた後に前記モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する、[13]に記載のモジュールブロックの設置方法。
[15] 固定治具を用いて前記位置決め装置を既設煉瓦に固定する、[13]に記載のモジュールブロックの設置方法。
[16] 固定治具を用いて前記位置決め装置を既設煉瓦に固定する、[14]に記載のモジュールブロックの設置方法。
[17] 前記位置決め装置は、少なくとも5kNの押力に耐えられるように、前記固定治具によって前記既設煉瓦に固定される、[15]に記載のモジュールブロックの設置方法。
[18] 前記位置決め装置は、少なくとも5kNの押力に耐えられるように、前記固定治具によって前記既設煉瓦に固定される、[16]に記載のモジュールブロックの設置方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る位置決め装置を既設煉瓦に取り付けることで、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する際に、当該モジュールブロックを長手方向及び短手方向に位置合わせできる。これにより、短時間でモジュールブロックを目標とする設置位置に位置合わせでき、従来よりも短時間で既設煉瓦の上にモジュールブロックを設置できるようになる。この結果、コークス炉の築炉工期の短縮や、コークス炉の補修工期の短縮が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る位置決め装置の一例を示す斜視模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る位置決め装置を既設煉瓦に取り付けた状態を示す斜視模式図である。
図3図3は、1つの位置決め装置を用いて、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置するまでの状態を示す模式図である。
図4図4は、1つの位置決め装置を用いて、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置するまでの状態を示す模式図である。
図5図5は、2つの位置決め装置を用いて、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置するまでの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を本発明の実施形態を通じて説明する。以下の実施形態では、コークス炉の建設を例として説明するが、これに限らず、モジュールブロックが用いられるコークス炉の補修やコークス炉以外の炉の建設にも適用できる。
【0012】
本実施形態に係る位置決め装置で位置決めされるモジュールブロックは、複数の煉瓦(定型耐火物や不定型耐火物)を積み上げて構成される。モジュールブロックを構成する複数の定型耐火物又は不定型耐火物は、各耐火物の間の目地部分に塗布されたモルタルによって一体化される。
【0013】
モジュールブロックは、直方体であって、例えば、高さが300mm以上2000mm以下、長手方向の長さが500mm以上3000mm以下、短手方向の長さが800mm以上1500mm以下である。モジュールブロックの大きさは、作業のし易さや、建設するコークス炉の炉壁等の寸法によって定めてよい。
【0014】
図1は、本実施形態に係る位置決め装置の一例を示す斜視模式図である。なお、図1の説明において、右上に示した方向を、前後、左右、上下方向として説明する。この方向は図1から図5において同じである。
【0015】
位置決め装置10は、第1ガイド部12a、12bと、第2ガイド部14a、14bと、支持部16a、16bと、調整部18と、を有する。第2ガイド部14a、14bは、左右一対に対向して設けられる板状の部材である。第1ガイド部12a、12bはそれぞれ第2ガイド部14a、14bから左右方向の内側に突出して設けられる板状の部材である。
【0016】
第1ガイド部12a、12bは、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する際、モジュールブロックの長手方向の設置位置を示す。また、第2ガイド部14a、14bは、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置する際、モジュールブロックの短手方向の設置位置を示す。第2ガイド部14a、14bの大きさは、モジュールブロックの長手方向の長さの1/4以上であって1/2以下であることが好ましい。これにより、第2ガイド部14a、14bで、モジュールブロックの左右方向の位置を大きく示すことができ、モジュールブロックを既設煉瓦の左右方向の位置に位置合わせできる。第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bは、例えば、塩化ビニル等の樹脂、硬質ラバー又は鋼板(SS400)で構成される。
【0017】
支持部16a、16bは、第2ガイド部14a、14bを支持するシャフトである。調整部18は、支持部16a及び支持部16bと接続し、支持部16a、16bの長さを調整することで、第2ガイド部14a、14bの間隔を調整する。調整部18は、例えば、ターンバックルである。このように、第2ガイド部14a、14bの間隔を調整する調整部18を有することで、左右方向の寸法が異なる種々の既設煉瓦に位置決め装置を取り付けることができるようになるので、位置決め装置10の汎用性が向上する。
【0018】
第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bの上端には、モジュールブロックを目標位置に案内する傾斜面が設けられていることが好ましい。第1ガイド部12a、12bの傾斜面は、上方にいくに従って後方の面が前方の面に近づくように傾斜する傾斜面である。また、第2ガイド部14a、14bの傾斜面は、上方にいくに従って、第1ガイド部12a、12bが設けられている面が反対側の面に近づくように傾斜する傾斜面である。第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bの傾斜面は、水平方向に投影した長さが100mm以上であることが好ましく、垂直方向に投影した長さが水平方向に投影した長さの2倍以上であるであることが好ましい。
【0019】
また、第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bの傾斜面には緩衝部材が設けられていることが好ましい。これにより、当該傾斜面にモジュールブロックが衝突してモジュールブロックを破損させてしまうことを抑制しつつ、モジュールブロックを目標位置に案内できる。
【0020】
図2は、本実施形態に係る位置決め装置10を既設煉瓦に取り付けた状態を示す斜視模式図である。位置決め装置10は、第2ガイド部14a、14bの下方の一部で既設煉瓦20を挟みこむことで既設煉瓦20に取り付けられる。なお、位置決め装置10を既設煉瓦20に固定するために、不図示の固定治具で第2ガイド部14a及び第2ガイド部14bの外側から挟み込んで、位置決め装置10を既設煉瓦20に固定することが好ましい。この場合、少なくとも5kNの押力に耐えられるように、固定治具で位置決め装置10を既設煉瓦20に固定することが好ましい。ここで、5kNの耐えられるとは、既設煉瓦20に固定された位置決め装置10に5kNの押力を加えても位置決め装置10が動いたり、破損しないことを意味する。これにより、モジュールブロックが位置決め装置10に衝突することで位置決め装置10の位置が変わったり、破損したりすることを抑制できる。
【0021】
また、第2ガイド部14a、14bにおけるモジュールブロックの目標位置に示す面に、例えば、シム(厚みが特定されている板状部材)を貼り付けて、モジュールブロックの目標位置を調整できてもよい。コークス炉の建築においては、既設煉瓦20の左右方向の寸法と、その上に設置するモジュールブロックの左右方向の寸法とが必ずしも同じ寸法であるとは限らない。このため、モジュールブロックの目標位置が小さくなるように調整できれば、既設煉瓦20の左右方向の寸法がモジュールブロックの左右方向の寸法よりも大きい場合であっても、既設煉瓦の上の目標位置にモジュールブロックを設置できるようになるので、位置決め装置10の汎用性が向上する。
【0022】
次に、本実施形態に係る位置決め装置10を用いて、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置する方法について説明する。既設煉瓦20は、例えば、コークス炉の炉壁を構成するために設置された耐火物である。図3は、1つの位置決め装置10を用いて、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置するまでの状態を示す模式図である。
【0023】
図3(a)は、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に移動された状態を示す模式図である。位置決め装置10は、既設煉瓦20の上であってモジュールブロック30を設置する目標位置を第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bで囲むように位置決めされて取り付けられる。この状態で、把持装置32a、32bによって把持されたモジュールブロック30の位置決めが行われる。モジュールブロック30の長手方向(前後方向)は、第1ガイド部12a、12bの位置とモジュールブロック30の前面の位置とが一致するように位置合わせされる。モジュールブロック30の短手方向(左右方向)は、第2ガイド部14a、14bの位置がモジュールブロック30の左右方向の側面の位置に一致するように位置合わせされる。
【0024】
図3(b)は、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に設置された状態を示す模式図である。モジュールブロック30は、モジュールブロック30の長手方向及び短手方向が位置合わせされた状態で降下され、目標とする位置に設置される。既設煉瓦20の上には予めモルタルが塗布されており、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に設置されることで、モジュールブロック30は既設煉瓦20と一体化される。
【0025】
従来の装置においては、モジュールブロック30を把持する装置側にガイドを設けていたので、モジュールブロック30の長手方向の位置決めを設けることができなかった。これに対し、本実施形態に係る位置決め装置10は、既設煉瓦20の上に取り付けるので、モジュールブロック30の長手方向及び短手方向を位置合わせできる第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bを設けることができる。これらガイド部を有する位置決め装置10でモジュールブロック30を位置合わせすることで、従来よりも短時間で既設煉瓦20の上の目標とする位置にモジュールブロック30を設置できるようになる。この結果、コークス炉の建設工期の短縮や、コークス炉の補修工期の短縮が実現できる。
【0026】
図4は、1つの位置決め装置を用いて、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置するまでの状態を示す模式図である。図4に示した例では、既設煉瓦20の上であって、後方にも既設煉瓦20が設置されている前方の位置にモジュールブロック30を設置する方法について説明する。
【0027】
図4(a)は、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に移動された状態を示す模式図である。位置決め装置10は、既設煉瓦20の上であってモジュールブロック30を設置する目標位置を第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bで囲むように位置決めされて取り付けられる。一方、後方には、第2ガイド部42a、42bのみを有する位置決め装置40が既設煉瓦22に取り付けられる。この状態で、把持装置32a、32bによって把持されたモジュールブロック30の位置決めが行われる。
【0028】
モジュールブロック30の長手方向(前後方向)は、第1ガイド部12a、12bの位置とモジュールブロック30の前面の位置とが一致するように、且つ、既設煉瓦22の前面の位置と、モジュールブロック30の後面の位置とが一致するように位置合わせされる。モジュールブロック30の短手方向(左右方向)は、第2ガイド部14a、14bの位置、及び第2ガイド部42a、42bの位置がモジュールブロック30の左右方向の側面の位置に一致するように位置合わせされる。
【0029】
図4(b)は、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に設置された状態を示す模式図である。モジュールブロック30は、モジュールブロック30の長手方向及び短手方向が位置合わせされた状態で降下され、目標とする位置に設置される。既設煉瓦20の上には予めモルタルが塗布されており、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に設置されることで、モジュールブロック30は既設煉瓦20と一体化される。
【0030】
このように、後方に既設煉瓦20が設置されている場合には、後方の既設煉瓦20の前面をモジュールブロック30の長手方向の位置合わせに利用してもよい。なお、図4に示した例では、第2ガイド部42a、42bのみを有する位置決め装置40を用いる例を示したが、これに限らず、位置決め装置10の第1ガイド部12a、12のみでモジュールブロック30の短手方向の位置合わせを行ってもよい。この場合には、位置決め装置40を用いなくてもよい。
【0031】
次に、2つの位置決め装置10を用いて、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に位置合わせする方法を説明する。図5は、2つの位置決め装置10を用いて、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置するまでの状態を示す模式図である。
【0032】
図5(a)は、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に移動された状態を示す模式図である。2つの位置決め装置10は、既設煉瓦20の上であってモジュールブロック30を設置する目標位置を第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bで囲むように位置決めされて取り付けられる。この状態で、把持装置32a、32bによって把持されたモジュールブロック30の位置決めが行われる。モジュールブロック30の長手方向(前後方向)は、第1ガイド部12a、12bの位置とモジュールブロック30の前面と後面の位置とが一致するように位置合わせされる。モジュールブロック30の短手方向(左右方向)は、第2ガイド部14a、14bの位置がモジュールブロック30の左右方向の側面の位置に一致するように位置合わせされる。
【0033】
図5(b)は、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に設置された状態を示す模式図である。モジュールブロック30は、モジュールブロック30の長手方向及び短手方向が位置合わせされた状態で降下され、目標とする位置に設置される。既設煉瓦20の上には予めモルタルが塗布されており、モジュールブロック30が既設煉瓦20の上に設置されることで、モジュールブロック30は既設煉瓦20と一体化される。
【0034】
このように、2つの位置決め装置10を用いることでも、モジュールブロック30の長手方向の前面及び後面を位置合わせできる。このため、少なくとも1つの位置決め装置10を既設煉瓦20に取り付けた後に、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置すればよく、2つの位置決め装置10を既設煉瓦20に取り付けた後に、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置することが好ましい。2つの位置決め装置10を既設煉瓦20に取り付けることで、長手方向及び短手方向について前後方向の2カ所で位置合わせできるので、より高い精度でモジュールブロック30を目標位置に位置合わせできるようになる。
【実施例0035】
次に、図1に示した位置決め装置10を既設煉瓦20に取り付け、モジュールブロック30を既設煉瓦20の上に設置した実施例を説明する。発明例1、2及び比較例1、2の条件は以下の通りである。
【0036】
発明例1:2つの位置決め装置10を用いて位置合わせを行い、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置した発明例である。
発明例2:万力を用いて固定した2つの位置決め装置10を用いて位置合わせを行い、モジュールブロックを既設煉瓦の上に設置した発明例である。
比較例1:左右方向のガイドを設けたモジュールブロックを把持する把持装置を用いてモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置した比較例である。
比較例2:位置決め装置10を用いずにモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置した比較例である。
モジュールブロックの大きさ:高さ626mm×長辺1836mm×短辺850mm
モジュールブロックの重量:1.3tоn
第1ガイド部12a、12bの大きさ:40mm×100mm
第2ガイド部14a、14bの突出部の大きさ:150mm×幅200mm
【0037】
発明例1、2及び比較例1、2の方法でモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置し、設置するのに要した時間、左右方向の位置決め精度及び前後方向の位置決め精度を測定した。この操作を繰り返し5回実施し、平均時間、左右方向の位置決め精度及び前後方向の位置決め精度の平均値を求めた。その結果を下記表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
2つの位置決め装置10を用いた発明例1では、第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bでモジュールブロックの左右方向及び前後方向の位置合わせを行った上で既設煉瓦の上に設置できた。発明例1では、設置時間4分で左右及び前後ともに高い位置決め精度でモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置できた。
【0040】
万力を用いて固定した2つの位置決め装置10を用いた発明例2では、第1ガイド部12a、12b及び第2ガイド部14a、14bでモジュールブロックの左右方向及び前後方向の位置合わせを行った上で既設煉瓦の上に設置できた。発明例2では、設置時間4分で左右及び前後ともに高い位置決め精度でモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置できた。発明例2では万力を用いて位置決め装置10を固定したので、位置合わせの際にモジュールブロックが位置決め装置10に衝突しても位置決め装置10が移動することがなかった。
【0041】
一方、モジュールブロックを把持する装置側に左右方向のガイドを設けた把持装置を用いてモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置した比較例1では、モジュールブロックの前後方向を位置合わせするのに時間を要した。このため、比較例1では、設置時間が5分で前後方向の位置決め精度が±3mmとなり、設置時間及び位置決め精度ともに発明例1、2よりも劣る結果となった。
【0042】
比較例2では、作業者の目視で位置合わせしてモジュールブロックを既設煉瓦の上に設置した。このため、左右方向及び前後方向を位置合わせするのに時間を要した。この結果、比較例2では、設置時間が15分で左右方向の位置決め精度が±2mmmとなり、前後方向の位置決め精度が±3mmとなり、設置時間及び位置決め精度ともに発明例1、2よりも劣る結果となった。以上の結果から、本実施形態に係る位置決め装置を用いることで、従来よりも短時間で、且つ、高い位置決め精度で、既設煉瓦の上にモジュールブロックを設置できることが確認された。
【符号の説明】
【0043】
10 位置決め装置
12a、12b 第1ガイド部
14a、14b 第2ガイド部
16a、16b 支持部
18 調整部
20 既設煉瓦
22 既設煉瓦
30 モジュールブロック
40 位置決め装置
42a、42b 第2ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5