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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065340
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】保守作業計画システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240508BHJP
   G06Q 10/10 20230101ALI20240508BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240508BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/10
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174162
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福永 峻
(72)【発明者】
【氏名】長野 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】永原 聡士
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L010AA13
5L049AA04
5L049AA13
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】
営業所から離れた作業現場を効率的に巡回する保守作業計画を立案するシステムを提供する。
【解決手段】
保守作業計画システム101は、情報を記憶する記憶部102と、制御部109とを備える。記憶部102は、作業現場を巡回する保守員の勤務時間、移動可能時間の少なくとも一方を含む勤務情報を保持する。制御部109は、各保守員の巡回経路と前記勤務情報とから各保守員の巡回経路が宿泊を必要とするかどうか、及び各保守員が宿泊しての巡回が可能かどうかを判定する宿泊要否・宿泊可否判定部111と、宿泊要否・宿泊可否判定部111によって宿泊が必要かつ宿泊が可能と判断された保守員の巡回経路に対して保守員が巡回作業の途中に宿泊可能な宿泊地の候補を追加した巡回経路を作成する宿泊巡回経路作成部112とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の巡回保守作業の計画を立案する保守作業計画システムであって、
情報を記憶する記憶部と、前記情報に基づいて保守作業計画を立案する制御部と、を備え、
前記記憶部は、
作業現場を巡回する保守員の勤務時間、移動可能時間の少なくとも一方を含む勤務情報を保持し、
前記制御部は、
各保守員の巡回経路と、前記勤務情報とから、各保守員の巡回経路が宿泊を必要とするかどうか、及び各保守員が宿泊しての巡回が可能かどうかを判定する宿泊要否・宿泊可否判定部と、
前記宿泊要否・宿泊可否判定部によって、宿泊が必要かつ宿泊が可能と判断された保守員の巡回経路に対して、保守員が巡回作業の途中に宿泊可能な宿泊地の候補を追加した巡回経路を作成する宿泊巡回経路作成部と、
を備えたことを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、
保守員が巡回し保守作業を行う複数の作業現場に関する作業現場情報と、前記作業現場と宿泊地点の任意の2地点間の移動時間に関する移動時間情報と、から各保守員の前記巡回経路を作成する巡回経路作成部を備えたことを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記作業現場情報及び前記移動時間情報は、前記記憶部に保持したことを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記制御部は、
前記巡回経路作成部と前記宿泊巡回経路作成部が作成した巡回経路の情報から、保守作業計画を更新する保守作業計画更新部を備えたことを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項5】
請求項4に記載の保守作業計画システムであって、
前記記憶部は、保守員の巡回作業により発生する宿泊費以外の費用に関するコスト情報を保持し、
前記保守作業計画更新部は、前記巡回経路作成部と前記宿泊巡回経路作成部のいずれかが作成した巡回経路と、前記コスト情報と、保守員が巡回作業の途中に宿泊可能な宿泊地の候補に関する宿泊地情報とから、それぞれの巡回経路に従う巡回作業で発生する総コストを計算し、計算した総コスト情報に基づいて、前記巡回経路のいずれかを新たな巡回経路情報として記憶させることを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項6】
請求項5に記載の保守作業計画システムであって、
前記総コストは、保守員の移動に伴って発生する移動コストと、宿泊に伴って発生する宿泊コストの合計値としたことを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項7】
請求項2に記載の保守作業計画システムであって、
前記宿泊巡回経路作成部は、前記巡回経路作成部が作成した巡回経路上に宿泊場所を追加する際に、前記移動時間情報と、前記勤務情報と、保守員が巡回作業の途中に宿泊可能な宿泊地の候補に関する宿泊地情報とから、勤務時間中に移動することが可能であり、かつチェックインに間に合い、かつ翌日チェックアウトまでに出発することが可能であると判断した宿泊地を選択して追加することを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項8】
請求項5に記載の保守作業計画システムであって、
前記勤務情報は、勤務時間に加えて、移動のみが可能な時間帯である勤務外移動可能時間の情報を有し、
前記巡回経路作成部と前記宿泊巡回経路作成部が巡回経路を作成する際に、移動時間と保守作業時間とが勤務時間に含まれる巡回経路に加え、移動時間の一部が、前記勤務外移動可能時間に含まれる巡回経路を作成することを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項9】
請求項8に記載の保守作業計画システムであって、
前記保守作業計画更新部がコストを計算する際に、勤務時間中の移動により発生するコストと勤務時間外の移動により発生するコストとをそれぞれ異なる計算方法で計算することを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項10】
請求項5に記載の保守作業計画システムであって、
表示部を備え、
前記表示部には、保守員の巡回経路と、巡回で発生するコストを表示することを特徴とする保守作業計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の巡回保守作業の計画を立案する保守作業計画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機等のビル設備、トンネル等の公共構造物、送電線等のインフラ設備は、故障発生時の損害額や人的被害が大きいことから、故障防止のために機器の劣化確認や部品の交換といった保守作業を受けることが義務付けられている。これらの設備に対する保守サービスを提供する保守事業者は、複数の顧客と保守契約を結んでおり、日々保守員が保守対象設備の設置場所を巡回しながら、各地で設備の保守をしている。
【0003】
限られた期間で、可能な限り多くの保守作業を実施するためには、各保守員が担当する作業現場の割当や作業現場を巡回する経路を保守作業計画として予め立案しておくことが重要である。
【0004】
保守作業計画立案の先行技術として、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1には、作業者の全移動時間と全作業時間との合計が所定時間以内となり、かつ、作業者の全移動時間が最小となる複数の保守作業の組み合わせ及び移動ツールを決定し、当該組み合わせに含まれる複数の保守作業を同一の作業日に割り当てるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-242774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
全国にサービスを展開している保守事業者は、各地に営業所を抱え、営業所ごとに担当地域を決めてサービスを提供している。一般に、保守対象設備の設置場所は、都市部では密集している一方、地方では点在している場合が多く、地方の営業所は担当地域が広くなり、遠く離れた作業現場を受け持つ傾向にある。
【0007】
特許文献1の方法を用いて遠方の作業現場の巡回経路を計画する場合、例えばある作業日の所定時間内にその現場を巡回することが不可能なために、経路を作ることができず、また、遠方の1か所のみを1日かけて往復する非効率な巡回経路となってしまうといった問題が発生する。
【0008】
特許文献1に記載の技術においては、遠方の作業現場を効率的に巡回する計画を立案することが困難であった。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決し、営業所から離れた作業現場を効率的に巡回する保守作業計画を立案するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、設備の巡回保守作業の計画を立案する保守作業計画システムであって、情報を記憶する記憶部と、前記情報に基づいて保守作業計画を立案する制御部と、を備え、前記記憶部は、作業現場を巡回する保守員の勤務時間、移動可能時間の少なくとも一方を含む勤務情報を保持し、前記制御部は、各保守員の巡回経路と、前記勤務情報とから、各保守員の巡回経路が宿泊を必要とするかどうか、及び各保守員が宿泊しての巡回が可能かどうかを判定する宿泊要否・宿泊可否判定部と、前記宿泊要否・宿泊可否判定部によって、宿泊が必要かつ宿泊が可能と判断された保守員の巡回経路に対して、保守員が巡回作業の途中に宿泊可能な宿泊地の候補を追加した巡回経路を作成する宿泊巡回経路作成部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、営業所から離れた作業現場を効率的に巡回する保守作業計画の立案が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るシステム構成図である。
図2】作業現場情報記憶部103に記憶された情報の一例を示す図である。
図3】宿泊地情報記憶部104に記憶された情報の一例を示す図である。
図4】移動時間情報記憶部105に記憶された情報の一例を示す図である。
図5】勤務情報記憶部106に記憶された情報の一例を示す図である。
図6】コスト情報記憶部107に記憶された情報の一例を示す図である。
図7】巡回経路情報記憶部108に記憶された情報の一例を示す図である。
図8】本発明の実施例に係る制御部109の処理フロー図である。
図9】巡回経路作成部110の処理の一例を示す処理フロー図である。
図10】巡回経路作成部110で作成される巡回経路の一例を示す図である。
図11】宿泊要否・宿泊可否判定部111による判定の一例を示す図である。
図12】宿泊巡回経路作成部112による宿泊を挟む巡回経路の作成の一例を示す図である。
図13】保守作業計画更新部113による巡回経路を選択する一例を示す図である。
図14】計画結果表示部114に表示する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、同一の要素については、全ての図において、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。なお、以下に説明する構成はあくまで実施例に過ぎず、本発明に係る実施様態が、以下の具体的様態に限定されることを意図する趣旨ではない。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係るシステム構成図である。本実施例では、保守事業における保守員に対する作業指示に利用することができる。
【0015】
保守作業計画システム101は、作業現場情報記憶部103、宿泊地情報記憶部104、移動時間情報記憶部105、勤務情報記憶部106、コスト情報記憶部107、巡回経路情報記憶部108からなる記憶部102と、巡回経路作成部110、宿泊要否・宿泊可否判定部111、宿泊巡回経路作成部112、保守作業計画更新部113からなる制御部109と、計画結果表示部114(表示部)とを有する。例えば、記憶部102と制御部109はサーバーで構築し、計画結果表示部114は、パーソナルコンピューターの表示装置で構成する。
【0016】
以降では、保守作業計画システム101の各構成部の詳細について述べる。
【0017】
作業現場情報記憶部103は、保守員が巡回し保守作業を行う複数の作業現場に関する作業現場情報を記憶する。図2は、作業現場情報記憶部103に記憶された情報の一例を示す図である。例えば、図2に示すように作業現場情報記憶部103には、作業現場を識別するための現場番号201(現場1,現場2,現場3…)、保守作業にかかる作業時間202(60分,120分…)、保守作業を実施することができる時間帯203(4/1:11時-16時,4/2:11時-16時…)といった情報が記憶されている。
【0018】
図1に戻り、宿泊地情報記憶部104は、保守員が巡回作業の途中で宿泊可能な宿泊地の候補に関する宿泊地情報を記憶する。図3は、宿泊地情報記憶部104に記憶された情報の一例を示す図である。例えば、図3に示すように宿泊地情報記憶部104には、宿泊地を識別するための宿泊地番号301(ホテル1,ホテル2…)、宿泊費用302(3000円,5000円…)、宿泊地点のチェックイン期限の時刻303(18時,15時…)、宿泊地点のチェックアウト期限の時刻304(8時,11時)といった情報が記憶されている。宿泊地情報記憶部104は、旅行会社が提供する旅行サイト(インターネット上にある旅行代理店)のシステムと連携するようにしても良い。この場合、宿泊を希望する日時において宿泊が可能かどうか、繁忙期等で変更される宿泊代金を即時に反映することができる。
【0019】
図1に戻り、移動時間情報記憶部105は、前記作業現場の2地点間、あるいは前記作業現場と前記宿泊地点の2地点間の移動時間に関する移動時間情報を記憶する。図4は、移動時間情報記憶部105に記憶された情報の一例を示す図である。例えば、図4に示すように移動時間情報記憶部105には、移動元の作業現場あるいは宿泊地を表す出発地点401(現場1)、移動先の作業現場あるいは宿泊地を表す到着地点402(現場2,現場3,ホテル1…)、出発地点から到着地点への移動時間403(20分,60分…)といった情報が記憶されている。移動時間情報記憶部105は、インターネット上で提供される地図情報と連携するようにしても良い。この場合、例えば新しい道路が開通した場合、開通した道路を利用した移動時間を反映することができる。また、移動時間情報は作業現場情報と宿泊地情報から算出するようにしても良い。
【0020】
図1に戻り、勤務情報記憶部106は、前記作業現場を巡回する保守員の勤務時間、移動可能時間の少なくとも一方を含む勤務情報を記憶する。図5は、勤務情報記憶部106に記憶された情報の一例を示す図である。例えば、図5に示すように勤務情報記憶部106には、保守員を識別するための保守員番号501(保守員1,保守員2…)、日付502(4/1,4/2…)、前記日付における前記保守員の巡回保守作業が可能な時間帯を表す勤務時間503(8-16時…)、出勤はしないが、遠方の作業現場付近の宿泊地点に前日に宿泊しておく等のための移動のみが可能な時間帯を表す勤務外移動可能時間504(6-14時…)といった情報が記憶されている。勤務時間503と勤務外移動可能時間504において、時間帯が記録されていない場合にはそれぞれ、保守員は勤務しない、勤務外の移動ができないことを表している。
【0021】
図1に戻り、コスト情報記憶部107は、保守員の巡回作業により発生する宿泊費以外の費用に関するコスト情報を記憶する。図6は、コスト情報記憶部107に記憶された情報の一例を示す図である。例えば、図6に示すように発生するコストの種類601と、その金額602(1000円,1500円…)といった情報が記憶されている。本実施例ではコストとして、勤務時間内の単位時間当たりの移動コストと、勤務時間外の単位時間当たりの移動コストとしている。
【0022】
図1に戻り、巡回経路情報記憶部108は、制御部109において作成される各保守員の各日の巡回経路に関する巡回経路情報を記憶する。図7は、巡回経路情報記憶部108に記憶された情報の一例を示す図である。例えば、図7に示すように巡回経路情報記憶部108は、巡回経路を識別するための経路番号701(1,2…)、前記巡回経路を巡回する保守員702(保守員1,保守員2…)、巡回経路上で訪問する場所703(現場1,現場2…)、前記訪問場所の前記巡回経路上の訪問順704(1,2,3…)、到着日時705(4/1:11時,4/1;9時…)、出発日時706(4/1;12時,4/1;10時…)といった情報が記憶されている。
【0023】
次に、図1の制御部109が宿泊を伴って作業現場を巡回する保守作業計画を立案する際に実行する処理を図8の処理フローを参照して説明する。図8は、本発明の実施例に係る制御部109の処理フロー図である。
【0024】
制御部109は、記憶部102が有する作業現場情報記憶部103の各情報、宿泊地情報記憶部104の各情報、移動時間情報記憶部105の各情報、勤務情報記憶部106の各情報、コスト情報記憶部107の各情報、巡回経路情報記憶部108の各情報を読み込む(ステップS101)。なお、制御部109には宿泊地情報取得する宿泊地情報取得部を備えるようにし、旅行会社が提供する旅行サイト(インターネット上にある旅行代理店)のシステムと連携させて宿泊地情報を取得するようにしても良い。
【0025】
巡回経路作成部110は、前記読み込んだ情報を用いて、既にある巡回経路それぞれに対してある作業現場を追加した新たな巡回経路案を作成する(ステップS102)。
【0026】
巡回経路作成部110の処理の一例について図9を参照して説明する。図9は、巡回経路作成部110の処理の一例を示す処理フロー図である。巡回経路作成部110は、作業現場情報記憶部103の各情報、移動時間情報記憶部105の各情報、巡回経路情報記憶部108の各情報を入力として読み込む(ステップS201)。
【0027】
次に、作業現場情報記憶部103に記憶されている作業現場のうち、巡回経路情報記憶部108に記憶されている巡回経路上に存在しない現場、すなわちまだ担当保守員が決まっていない現場の中から、1つの作業現場を選択する(ステップS202)。作業現場を選択する方法としては、現場毎に優先度を設定しておき、優先度の高い現場から選択する方法や、作業の期限が近い現場から選択する方法などがある。
【0028】
次に、巡回経路情報記憶部108の中から、ステップS202で選択した現場の割り当てをしていない巡回経路を1つ選択する(ステップS203)。
【0029】
次に、ステップS202で選択した作業現場をステップS203で選択した巡回経路に対して割り当てることで、巡回経路を作成する(ステップS204)。ここで、巡回経路に対して作業現場を割り当てる時には、割り当てる作業現場に対して経路上での訪問順を決める必要があるが、割り当てた時に巡回経路上の各作業現場で作業可能な時間帯に作業することができるような訪問順の中から、割り当てによる移動コストの増加量が最も少ないものを選ぶといった方法がある。そして、巡回経路作成部110は、全ての巡回経路に対してステップS202の作業現場の割り当てがされるまで、ステップS203とステップS204を繰り返し(ステップS205のNo)、全ての巡回経路に対してステップS202の作業現場の割り当てが完了すると(ステップS205のYes)、ステップS205で選択した作業現場を割り当てた複数の巡回経路を出力する(ステップS206)。
【0030】
巡回経路作成部110の処理により作成される巡回経路を、図10を参照して説明する。図10は、巡回経路作成部110で作成される巡回経路の一例を示す図である。
【0031】
図10において、入力としては、保守員1と保守員2のある日の巡回経路が巡回経路情報記憶部108に記憶されている。保守員1は作業現場1のみを巡回する巡回経路となっており、保守員2は作業現場2,3,4の順に訪問する巡回経路となっている。また、作業現場情報記憶部103には、これら作業現場1、2、3、4に加え、巡回経路に割り当てられていない作業現場5、6の情報も記憶されている。
【0032】
巡回経路作成部110がステップS202で巡回経路に割り当てられていない作業現場5を選択した場合、出力としては、例えば保守員1が作業現場5、1の順に訪問する巡回経路と、保守員2が作業現場2、3、4、5の順に訪問する巡回経路とが得られ、それぞれの現場の到着日時と出発日時が計算される。
【0033】
図8に戻り、ステップS102で得られた巡回経路それぞれに対して、宿泊要否・宿泊可否判定部111は、各保守員の巡回経路が宿泊を必要とするかどうか、及び各保守員が宿泊しての巡回が可能かどうかを判定する(ステップS103)。ここでは、ステップS102で得られた巡回経路において、その経路で巡回する保守員の、その巡回を始める日付における勤務情報を勤務情報記憶部106から取得し、営業所に帰還する時刻が、勤務終了時刻と勤務外移動可能時間の終了時刻よりも遅い場合に、宿泊が必要と判断される。また、宿泊要否の判定に用いた勤務情報と同じ保守員の翌日の勤務情報を取得し、勤務可能もしく勤務外移動可能な場合に宿泊が可能と判断される。
【0034】
図10に示した巡回経路に対して、宿泊要否・宿泊可否判定部111による判定の例を、図11を参照して説明する。図11は、宿泊要否・宿泊可否判定部111による判定の一例を示す図である。
【0035】
宿泊要否・宿泊可否判定部111では、図10に示した保守員1の作業現場5,1の順に訪問する巡回経路と、保守員2の作業現場2,3,4、5の順に訪問する巡回経路に対して、作業現場情報記憶部103に記憶されている各作業現場の作業時間202(図2)と、移動時間情報記憶部105に記憶されている作業現場間の移動時間403(図4)と、勤務情報記憶部106に記憶されている保守員の勤務時間503(図5)とから、各作業現場及び営業所の発着時刻を計算する。
【0036】
例えば、保守員1は4月1日の8時の勤務開始に営業所を出発し、作業現場5に11時に到着して12時まで作業をする。その後、12時から14時までの2時間で作業現場1に移動し、15時まで作業をし、営業所への帰還は18時となる。保守員2の巡回経路に対しても同様に、図11に示すようなスケジュールが計算される。それぞれの保守員の営業所の帰還時刻は保守員1が18時、保守員2が22時であり、両者ともに勤務時間の16時を超えているため、この場合、宿泊が必要と判断される。また、翌日4月2日は、保守員1は6時から14時まで保守作業はできないが、移動が可能であり、保守員2は8時から16時まで保守作業が可能である。そのため、保守員1、2ともに宿泊が可能と判断される。
【0037】
図8に戻り、制御部109はステップS103で宿泊が必要かつ宿泊が可能と判定された巡回経路に対して、宿泊巡回経路作成部112が、巡回経路上に宿泊地を追加した新たな巡回経路を作成する(ステップS104)。図11に示した例で宿泊が必要かつ宿泊が可能と判断された保守員1、2のうち保守員1に対する宿泊を挟む巡回経路の作成例を、図12を参照して説明する。
【0038】
図12は、宿泊巡回経路作成部112による宿泊を挟む巡回経路の作成の一例を示す図である。
【0039】
まず、宿泊地の訪問順序は、巡回経路情報の各作業現場の発着時刻と、勤務情報とから、勤務時間内に作業が完了している現場のうち、最後に訪問した現場の後とすればよい。例えば、保守員1は作業現場1が勤務時間中に最後に作業する現場のため、作業現場1の後に宿泊地へ移動することになる。
【0040】
次に、宿泊地情報記憶部104に記憶されている宿泊地の中から、宿泊地の訪問の直前に作業していた現場から、勤務時間もしくは勤務外移動可能時間中に移動することができ、かつチェックイン期限に間に合い、かつ翌日の勤務時間または勤務外の移動可能時間の開始よりもチェックアウト期限が遅い宿泊地が、宿泊地の候補となる。例えば保守員1は作業現場1を15時に出発する予定となっており、勤務時間は16時までの為、作業現場1から1時間以内に移動できるホテル1,2が候補となる。このうち、ホテル1は16時に到着でき、チェックイン期限が18時のため、チェックインに間に合うが、ホテル2は到着が15時30分到着に対して、チェックイン期限が15時のため、チェックインに間に合わない。そのため、ホテル2に宿泊することはできない。さらに、ホテル1はチェックアウト期限が翌日の8時であり、保守員1の翌日の勤務外移動可能時間の開始時刻6時よりも後の為、チェックアウト期限に間に合う移動が可能である。したがって、保守員1に対しては、ホテル1に宿泊する巡回経路のみが、宿泊巡回経路作成部により作成される。なお、保守員1に対して、勤務時間中に移動でき、チェックイン・チェックアウトに間に合う宿泊地がホテル1以外にも存在する場合には、それらのホテルを訪問する巡回経路を作成してよく、その場合複数の宿泊を伴う巡回経路が作成されることになる。
【0041】
図8に戻り、制御部109はステップS102で作成された巡回経路のうち宿泊が必要でない巡回経路と、ステップS104で作成された宿泊を伴う巡回経路の中から、保守作業計画更新部113が一つの巡回経路を選択し、巡回経路情報記憶部108の情報を更新する(ステップS105)。
【0042】
図11で宿泊が必要かつ宿泊が可能と判断された保守員1,2の巡回経路に対して、図12で説明した宿泊巡回経路作成部112の実施例により作成された巡回経路の中から、保守作業計画更新部113が一つの巡回経路を選択する実施例を、図13を参照して説明する。
【0043】
図13は、保守作業計画更新部113による巡回経路を選択する一例を示す図である。
【0044】
図8のステップS103において、宿泊が不要と判定された巡回経路があった場合には、宿泊を挟む巡回経路と宿泊が不要な巡回経路の中から一つの巡回経路を選択することになるが、ここでは保守員1,2ともに宿泊を伴う巡回経路となっているため、宿泊を挟む巡回経路の中から一つの巡回経路を選択する例を示す。
【0045】
図13は、宿泊巡回経路作成部112によって、保守員1は作業現場5と1を巡回した後ホテル1に宿泊し、翌日営業所に帰還する巡回経路が作成され、保守員2は作業現場2と3と4を訪問した後ホテル3に宿泊し、翌日作業現場5を訪問し営業所に帰還する巡回経路が作成されたときの、それぞれの巡回経路における各営業所、作業現場、宿泊地の発着時刻を表している。
【0046】
保守作業計画更新部113は、まずこれら発着時刻と、宿泊地情報記憶部104の各情報と、勤務情報記憶部106の各情報と、コスト情報記憶部107の各情報とから、それぞれの巡回経路で発生するコストを計算する。例えば、保守員1の巡回経路では、勤務時間中の移動時間が6時間、勤務外の移動時間が3時間であり、単位時間当たりの移動コストは勤務中が1000円、勤務時間外が1500円なので、移動コストは1000円×6時間+1500円×3時間=10500円、ホテル1の宿泊コスト3000円と併せて総コストは合計13500円である。
【0047】
一方、保守員2の巡回経路では、勤務時間中の移動時間が7時間、ホテル3の宿泊コストが5000円なので、総コストは合計12000円(1000円×7時間+5000円)となる。
【0048】
次に、これらの総コストと、作業現場5を追加する前の巡回経路のコスト(移動コスト)とを比較し、コストの増加量を計算する。例えば、保守員1は作業現場1を日帰りで往復する巡回経路であったため、勤務時間内の移動時間が6時間、総コストは6000円であり、作業現場5の追加によりコストは7500円増加すると計算できる。
【0049】
また、保守員2の場合には、作業現場2,3,4を日帰りで巡回する巡回経路であったため、勤務時間内の移動時間が4時間、総コストは4000円であり、作業現場5の追加によりコストが8000円増加すると計算できる。
【0050】
そして、コストの増加量が最も少ない巡回経路を選択する。ここでは、保守員1の巡回経路が選択されることになり、結果として、作業現場5は保守員1に割り当てられ、かつ保守員1が宿泊を挟む巡回をすることが決まり、この保守員1の宿泊を挟む巡回経路の情報が巡回経路情報記憶部108に記憶される。なお、保守員2のホテル3に宿泊し作業現場5を訪問する巡回経路は棄却されるため、巡回経路情報記憶部には作業現場5を訪れる前の作業現場2,3,4を巡回する経路が記憶されたままとなる。
【0051】
図8に戻り、制御部109は、以上のステップS102からステップS105までのステップを全ての作業現場がいずれかの巡回経路に割り当てられるまで繰り返す(ステップS106)。すなわち、制御部109は、ステップS102からステップS105までの全てのステップ処理が済んでいない場合(ステップS106のNo)、ステップS102からの処理を実行する。
【0052】
そして、制御部109は、ステップS102からステップS105までの全てのステップ処理が済んだ場合(ステップS106のYes)、巡回経路作成部110に記憶されている各情報を計画結果表示部114に出力する(ステップS107)。
【0053】
図1に戻り、計画結果表示部114は、制御部109が作成した宿泊を伴う巡回経路に関する情報をシステムの利用者が分かりやすい形でディスプレイ等に表示する。図14は、計画結果表示部114に表示する情報の一例を示す図である。
【0054】
例えば図14のように、表示条件として、巡回経路を表示したい保守員と日付を選択すると、該当する保守員・日付の巡回経路や各地点の発着日時と、巡回で発生するコストが表示され、システムの使用者が立案された計画を確認することができる。図14では、保守員1について、営業所→作業現場5→作業現場1→ホテル1(宿泊)→営業所の経路情報が表示され、この経路情報に対応する各場所の到着時刻、出発時刻が表示されている。さらに、経路評価情報として、勤務中移動コスト、勤務外移動コスト、宿泊コストが金額として表示されている。
【0055】
以上説明したように、本実施例によれば営業所から離れた作業現場を効率的に巡回する保守作業計画を立案することができる。
【0056】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
101…保守作業計画システム、102…記憶部、103…作業現場情報記憶部、104…宿泊地情報記憶部、105…移動時間情報記憶部、106…勤務情報記憶部、107…コスト情報記憶部、108…巡回経路情報記憶部、109…制御部、110…巡回経路作成部、111…宿泊要否・宿泊可否判定部、112…宿泊巡回経路作成部、113…保守作業計画更新部、114…計画結果表示部
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