(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065352
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】四塩化チタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 23/02 20060101AFI20240508BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C01G23/02 E
B01D3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174175
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 康成
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA23
4D076BB01
4D076BB03
4D076BB23
4D076DA02
4D076EA01Z
4D076EA04Z
4D076EA20Z
4D076FA02
4D076FA12
4D076FA33
4D076HA20
4D076JA03
(57)【要約】
【課題】簡便かつ低コストにアンチモン濃度が低減された四塩化チタンの製造方法を提供する。
【解決手段】アンチモンを含む粗四塩化チタンを精留塔に供給して四塩化チタンを蒸留分離する四塩化チタンの製造方法であって、前記精留塔の塔底液を再沸器で蒸発させて精留塔に循環する際に、前記再沸器で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%以上を再沸器から精留塔への循環経路から抜き出すことを特徴とする四塩化チタンの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチモンを含む粗四塩化チタンを精留塔に供給して四塩化チタンを蒸留分離する四塩化チタンの製造方法であって、
前記精留塔の塔底液を再沸器で蒸発させて精留塔に循環する際に、前記再沸器で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%以上を再沸器から精留塔への循環経路から抜き出す
ことを特徴とする四塩化チタンの製造方法。
【請求項2】
前記精留塔で蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン濃度が1.00質量ppm未満である請求項1に記載の四塩化チタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四塩化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
四塩化チタンは、スポンジ状の固体金属チタン(以下、「スポンジチタン」と称する。)の製造原料のみならず、酸化チタンや触媒の製造或いは半導体や医薬の分野において幅広く利用されている。四塩化チタンは、チタン鉱石と、コークスと、塩素ガスとを高温にて反応させることにより製造されている。四塩化チタンの生成は、鉱石とコークスを塩素ガスで流動化した流動層内で行われている。なお、当該流動層は塩化炉内に形成されている。具体的には、チタン鉱石を塩素ガスで塩化し、蒸留・精製して四塩化チタン(TiCl4)を得る方法が挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、四塩化チタンの製造においては原料としてチタン鉱石を使用するため、当該チタン鉱石に由来する不純物の混入を避けることが困難である。
四塩化チタンが利用される各分野においては、人体や周辺環境に悪影響を及ぼすため不純物の含有量が規定されている場合や、規定はなくとも最終製品の性能を著しく低下させる要因となる場合があり、各分野においてその許容量(基準値)を法的に又は業界独自に規定していることが多い。
【0005】
チタン鉱石由来の不純物としては、鉄分が主体であり、その他の不純物としてヒ素、ケイ素、アンチモン、バナジウム等が知られている。
上記不純物の一つであるアンチモンは、四塩化チタンを経由して各最終製品への混入を抑制すべきものであり、四塩化チタンにおける含有量の低減を求められている。このため、本発明者等は、チタン鉱石を塩素ガスで塩化し、蒸留・精製して四塩化チタン(TiCl4)を得る塩化蒸留工程における蒸留・精製時にその蒸留能力を高め、得られる四塩化チタン中に混入するアンチモン量を低減することを着想した。
【0006】
しかしながら、この場合、分離段数を増加させた精留塔を新設して四塩化チタンを精製・分離するか、複数の精留塔を使用して不純物濃度を段階的に低減しつつ四塩化チタンを精製・分離する必要があることから、多大な設備投資を必要としたり、精製・分離工程における処理の煩雑化や製造コストの増大を招くことになる。
【0007】
このため、簡便かつ低コストにアンチモン濃度が低減された四塩化チタンを製造する方法が求められるようになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を重ねた結果、アンチモンを含む粗四塩化チタンを精留塔に供給して四塩化チタンを蒸留分離する四塩化チタンの製造方法であって、前記精留塔の塔底液を再沸器で蒸発させて精留塔に循環する際に、前記再沸器で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%以上を再沸器から精留塔への循環経路から抜き出すことにより、上記技術課題を解決し得ることを見出して、本知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)アンチモンを含む粗四塩化チタンを精留塔に供給して四塩化チタンを蒸留分離する四塩化チタンの製造方法であって、
前記精留塔の塔底液を再沸器で蒸発させて精留塔に循環する際に、前記再沸器で生成する単位時間あたり蒸気量の2質量%以上を再沸器から精留塔への循環経路から抜き出す
ことを特徴とする四塩化チタンの製造方法、
(2)前記精留塔で蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン濃度が1.00質量ppm未満である上記(1)に記載の四塩化チタンの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便かつ低コストにアンチモン濃度が低減された四塩化チタンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】塩化蒸留工程を施す際の製造プロセスの形態例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る四塩化チタンの製造方法は、アンチモンを含む粗四塩化チタンを精留塔に供給して四塩化チタンを蒸留分離する四塩化チタンの製造方法であって、
前記精留塔の塔底液を再沸器で蒸発させて精留塔に循環する際に、前記再沸器で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%以上を再沸器から精留塔への循環経路から抜き出す
ことを特徴とするものである。
【0013】
以下、本発明に係る方法を適用した実施態様の一例について、適宜図面を参照しつつ説明するものとする。
【0014】
本発明に係る四塩化チタンの製造方法においては、アンチモンを含む粗四塩化チタンを処理対象とする。
上記アンチモンを含む粗四塩化チタンとしては、チタン鉱石をコークスと塩素ガスにより高温のもとで塩化させて製造した粗四塩化チタンを蒸留・精製して四塩化チタン(TiCl4)を得る塩化蒸留工程を施す際に塩化処理して得られるものが挙げられる。
【0015】
図1は、塩化蒸留工程を施す際の製造プロセスの形態例を模式的に示す図である。
【0016】
図1に示す実施形態において、四塩化チタン製造装置1は、塩化炉10と、分離装置20と、凝縮塔30と、蒸留釜40と、精留塔50と、リボイラー60と、タンク70と、コンデンサー80とを備えている。
以下、四塩化チタン製造装置1を構成する各設備について説明する。
【0017】
(塩化炉)
塩化炉10は、アンチモン等の不純物を含むチタン鉱石と、コークスと、塩素ガスとを混合することにより塩化反応を生じさせて粗四塩化チタンガスを得るためのものである。上記チタン鉱石と、コークスと、塩素ガスとは、各々、所定の位置から塩化炉10内に導入される。
図1に示すように、塩化炉10で生成した粗四塩化チタンガスは、冷却塔等からなる分離装置20に供給される。
【0018】
(分離装置)
分離装置20は、塩化炉10と連通して配設されることにより、塩化炉10で生成した粗四塩化チタンを導入して、粗四塩化チタン中に含まれる不純物の分離を行うためのものである。
より詳細には、分離装置20は、塩化炉10で得られた粗四塩化チタンガスの不純物(未反応のコークス、チタン鉱石等のキャリーオーバーを含む)を低減し、更に後述するタンク70から供給される液体四塩化チタンに含まれる不純物も低減する。
【0019】
(凝縮塔)
凝縮塔30は、分離装置20で不純物を低減した粗四塩化チタンを四塩化チタンの沸点以下の温度まで冷却することで、液状の粗四塩化チタンと、塩化炉10で生成した二酸化炭素ガス及び一酸化炭素ガスとを分離するものである。
凝縮塔30で得られた液状の粗四塩化チタンは、凝縮塔30から蒸留釜40に供給される。
一方、凝縮塔30で分離された二酸化炭素ガス及び一酸化炭素ガスは、(図示しない)排ガス処理設備に供給され処理される。
【0020】
(蒸留釜)
蒸留釜40は、凝縮塔30で得られた液状の粗四塩化チタンに含まれる高沸点の成分を分離するためのものであり、例えば、蒸留釜40における粗四塩化チタンの滞留時間を十分に長くすることにより、上記高沸点の成分を効率よく分離することができる。
図1に示すように、蒸留釜40で高沸点の成分が分離された液体又は気体の粗四塩化チタンは、蒸留釜40から精留塔50に供給される。
【0021】
(精留塔)
精留塔50は、蒸留釜40で得られた粗四塩化チタンを導入し精密蒸留処理(精留処理)を施して精製することにより、不純物が低減された四塩化チタン(精製された四塩化チタン)を蒸留分離するものであり、通常、連続的に運転されることにより、継続的に四塩化チタンが蒸留分離される。
【0022】
蒸留釜40で得られた粗四塩化チタンは、
図1に示すように、通常、精留塔50の上部から導入される。
上記粗四塩化チタン中には、通常、不純物成分として、四塩化チタンよりも低沸点の成分の他、四塩化チタンよりも高沸点の成分が含まれる。
このため、本発明に係る製造方法においては、
図1に例示するように、精留塔50から四塩化チタン(TiCl
4)を蒸留分離する場合、塔頂と塔底との間、より具体的には、(蒸留釜40で得られた)粗四塩化チタンの精留塔50への導入位置より低く塔底より高い位置に設けられた棚段からガス状の四塩化チタンを抜き出すことが好ましい。
上記位置から精製された四塩化チタンを抜き出すことにより、得られる四塩化チタン中への不純物の混入を抑制することができる。
【0023】
一方、上述したように、精留塔50に導入される粗四塩化チタン中には、通常、アンチモン等の不純物が混入する。
アンチモンは塩化物(塩化アンチモン)として粗四塩化チタン中に存在し、当該塩化アンチモンの沸点(222.6℃)が四塩化チタンの沸点(136.4℃)よりも高沸点の成分であることから、精留塔50で精留処理した場合に塔底で濃縮され、液体四塩化チタン中に混入した状態で塔底液として滞留していると考えられる。
【0024】
本発明に係る製造方法において、上記精留塔50の塔底に滞留する塔底液は、後述するように再沸器に導入し蒸発させた上で精留塔に返送して循環させる。
また、精留塔50の塔頂部においても、低沸点の成分を含むガス状の四塩化チタン留分が留出するが、塔頂部から留出するガス状の四塩化チタン留分についても、通常、(図示しない)凝縮器等で凝縮し液状の四塩化チタンとした上で、精留塔50の塔頂に返送して循環させる。
【0025】
(再沸器(リボイラー))
再沸器(リボイラー)60は、精留塔50の塔底から塔底液(液状の四塩化チタン含有液)の一部を抜き出し、加熱して精留塔50に四塩化チタン含有ガスを戻す(循環する)ための装置であり、通常、連続的に運転されることにより、精留塔50に対し継続的に四塩化チタン含有ガスが循環される。
精留塔50の塔底に滞留する塔底液を再沸器60により加熱し、四塩化チタン含有ガスとして再度精留塔50で精留処理することにより、より高い収率で精製された四塩化チタンを得ることが可能となる。
【0026】
本発明に係る製造方法においては、上記精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させて四塩化チタンを精留塔50に循環する際に、上記再沸器60で生成する単位時間あたりの蒸気量(再沸器に導入した上記塔底液から生成する単位時間あたりの蒸気量)の2質量%以上を再沸器60から精留塔50への(後述する)循環経路から抜き出す。
上記抜き出し量が多くなる程、精留塔の塔底液中に滞留するアンチモンの濃度が低減して精留塔50から蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン量も低減されるが、精留塔50から蒸留分離される四塩化チタンの歩留まりも低下することから、上記抜き出し量の上限については、得られる四塩化チタンの収率を考慮しつつ適宜決定すればよい。
一方、上記抜き出し量が、上記再沸器60で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%未満となった場合には、精留塔50の塔底液中に滞留するアンチモンの濃縮が抑制できず、精留塔50から蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン量の低減が困難となるので好ましくない。
【0027】
本発明に係る製造方法において、上記精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させて四塩化チタンを精留塔50に循環する際に、上記再沸器60へ導入した精留塔50の塔底液のうちその一部を再沸器60から精留塔50への循環経路から抜き出す場合、
図1に例示するように、再沸器60から精留塔50へ蒸気(四塩化チタン含有ガス)を返送し循環する循環管cに分岐管dを設けこの分岐管dから精留塔50へ循環される蒸気を抜き出すことが好ましい。
【0028】
本発明に係る製造方法において、上記再沸器60で生成し循環経路から抜き出された蒸気(四塩化チタン含有ガス)は、例えば、
図1に例示するようにコンデンサー80で凝縮した後、その一部または全部を廃棄したり、または、上記抜き出された蒸気(四塩化チタン含有ガス)を(図示しない)スクラバーに導入し所定の処理液と気液接触させる方法で全量廃棄することで処理することができる。
なお、当該抜き出された蒸気(四塩化チタン含有ガス)の処理方法は、上述した方法に限定されず、公知の処理方法を適宜採用してもよい。
この場合、
図1に例示するように、コンデンサー80内でアンチモンを濃縮して除去するとともに、アンチモン量が低減された四塩化チタンは、
図1に例示するように必要に応じてその一部を分離装置20に循環して再利用してもよい。
【0029】
本発明に係る製造方法において、上記精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させ上記循環経路から抜き出された蒸気(四塩化チタン含有ガス)中には、不純物であるアンチモンが一定割合で含有されている。
本発明に係る製造方法においては、
図1に例示するように、精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させて四塩化チタン含有ガスを精留塔に循環、返送する際に、単位時間あたりの蒸気生成量の2質量%以上の量の蒸気(四塩化チタン含有ガス)を再沸器60から精留塔50への上記循環経路から抜き出すことで、精留塔50の塔底に滞留するアンチモンの濃度を低減し、結果的に精留塔50から蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン濃度を低減することができる(再沸器60から精留塔50への上記循環経路から抜き出されたアンチモンを含む蒸気(四塩化チタン含有ガス)は、上述したように、例えば、その一部または全部を廃棄しても構わない)。
このように、本発明によれば、精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させて精留塔50に循環、返送する際に、再沸器60で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%以上を再沸器60から精留塔50への上記循環経路から抜き出すことにより、簡便かつ低コストにアンチモン濃度が低減された四塩化チタンを製造する方法を提供することができる。
【0030】
なお、本出願書類において、循環管cからの抜き出し量は、後述する再沸器60から抜き出す底部液量を考慮して、下記式により算出することができ、本発明に係る製造方法においては、下記式により算出される循環管cからの抜き出し量が2質量%以上となるように制御する。
循環管cからの抜き出し量(質量%)=(コンデンサーで液化した単位時間あたりの液化回収量(kg))/(精留塔50から抜き出した単位時間あたりの塔底液量(kg)-再沸器60から抜き出した単位時間あたりの再沸器60の底部液量(kg))×100
【0031】
本発明に係る製造方法においては、精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させ、再沸器60に導入した単位時間あたりの精留塔50の塔底液の2質量%以上の量を再沸器60から精留塔50への上記循環経路から抜き出しつつ、四塩化チタン含有ガスを精留塔50に返送、循環することにより、精留塔50で蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン量を1.00質量ppm未満に容易に制御することができる。
なお、本発明に係る製造方法においては、精留塔50で蒸留分離される四塩化チタン中のアンチモン量を1.00質量ppm未満に制御することにより、あるいは0.90質量ppm以下、さらには0.80質量ppm以下に制御することにより、四塩化チタンを利用して得られる各製品中のアンチモン量を低減することができる。例えば、四塩化チタンを金属マグネシウムで還元して金属チタンを得るクロール(Kroll)法を利用した際に、得られる金属チタン(例えばスポンジチタン)中のアンチモン量を低減することができる。
【0032】
(タンク)
図1に例示するように、再沸器60の底部に滞留する高沸点の成分を含む液状物は、ポンプPによりタンク70に圧送され、貯留される。
タンク70に貯留された高沸点の成分を含む液状物は、適宜分離装置20に供給することにより、再利用することができる。
【0033】
本発明によれば、簡便かつ低コストにアンチモン濃度が低減された四塩化チタンの製造方法を提供することができる。
【実施例0034】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0035】
(実施例1)
図1に示す四塩化チタン製造装置1を用いて四塩化チタンを製造した。
図1に示すように、四塩化チタン製造装置1を構成する塩化炉10に、アンチモン等の不純物を含むチタン鉱石と、コークスと、塩素ガスとを混合して供給することにより粗四塩化チタンガスを得、生成した粗四塩化チタンガスを、(図示しない)冷却塔等からなる分離装置20に供給した。
分離装置20において、塩化炉10で得られた粗四塩化チタンガスの不純物(未反応のコークス、チタン鉱石等のキャリーオーバーを含む)を低減し、分離装置20で分離された粗四塩化チタン含有物を凝縮塔30に導入して四塩化チタンの沸点以下まで冷却することで、液状の粗四塩化チタンと、塩化炉10で生成した二酸化炭素ガス及び一酸化炭素ガスとを分離した。
凝縮塔30で得られた液状の粗四塩化チタンを蒸留釜40に供給し、液状の粗四塩化チタンに含まれる高沸点の成分を蒸留分離した上で、得られた液体又は気体の粗四塩化チタンを、蒸留釜40から精留塔50の上部に連続的に供給した。
精留塔50の塔底からアンチモンを含む液状の四塩化チタンの一部を抜き出し、再沸器60で加熱して精留塔50に四塩化チタンガスを連続的に返送して循環させた。
その際、
図1に示すように、再沸器60から精留塔50へ蒸気(四塩化チタン含有ガス)を循環させる循環管cに設けた分岐管dから蒸気(四塩化チタン含有ガス)を抜き出して、コンデンサー80に導入した。
また、本処理においては、適宜、再沸器60の底部に滞留する高沸点の成分を含む液状物をポンプPを用いてタンク70に圧送した。
このとき、下記式により算出される循環管cからの抜き出し量(循環管cから分岐管dへの抜き出し量(質量%))が、2.0質量%になるように制御した。
循環管cからの抜き出し量(質量%)=(コンデンサー80で液化した1時間あたりの液化回収量(kg))/(精留塔50から抜き出した1時間あたりの塔底液量(kg)-再沸器60から抜き出した1時間あたりの再沸器60の底部液量(kg))×100
上記の通り、再沸器60の底部に滞留する高沸点の成分を含む液状物は、ポンプPによりタンク70に圧送され、貯留される。
タンク70に貯留された高沸点の成分を含む液状物は、適宜分離装置20に供給することにより、再利用することができる。
循環管cから分岐管dを介して抜き出した蒸気(四塩化チタン含有ガス)は、コンデンサー80で液状の四塩化チタンに戻して一部を分離装置20に送液し、残りを廃棄した。
【0036】
上記一連の処理を連続して120日間繰り返し、この間、精留塔50の中央部に設けた棚段(蒸留釜40で得られた液状の粗四塩化チタンを精留塔50へ導入する位置と塔底との間に設けた棚段)から精製された四塩化チタンを抜き出した。
このとき得られた四塩化チタン中のアンチモン量をICP発光分光分析装置(株式会社日立ハイテク社製PS3520UVDDII)で測定した。
その結果、得られた四塩化チタン中のアンチモン量は、処理開始時に1.00質量ppmであったが、処理時間の経過とともに徐々に低下して処理開始から27日目に0.75質量ppmとなり、そのまま平衡状態となって120目まで維持された。
すなわち、四塩化チタン中のアンチモン量は1か月程度で測定開始時のアンチモン量に対して約25質量%低減され、その状態が維持されることが判明した。
【0037】
(比較例1)
実施例1において、
図1に示す再沸器60から精留塔50へ蒸気(四塩化チタン含有ガス)を循環させる循環管cから分岐する分岐管dに設けた(図示しない)バルブを閉じることにより、循環管cから蒸気を抜き出してコンデンサーで処理しなかった以外は、実施例1と同様の処理を連続して120日間繰り返し、この間、精留塔50の中央部に設けた棚段(蒸留釜40で得られた液状の粗四塩化チタンを精留塔50へ導入する位置と塔底との間に設けた棚段)から精製された四塩化チタンを抜き出した。
このとき得られた四塩化チタン中のアンチモン量をICP発光分光分析装置(株式会社日立ハイテク社製PS3520UVDDII)で測定した。
その結果、得られた四塩化チタン中のアンチモン量は、処理開始から120日目まで変化することなく1.00質量ppmのまま平衡状態となっていた。
【0038】
実施例1の結果より、精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させて精留塔50に循環、返送する際に、再沸器60で生成する単位時間あたりの蒸気量の2質量%以上の量を再沸器60から精留塔50への上記循環経路から抜き出すことにより、簡便かつ低コストにアンチモン濃度が低減された四塩化チタンを製造できることが分かる。
【0039】
一方、比較例1の結果より、精留塔50の塔底液を再沸器60で蒸発させて精留塔50に循環する際に、再沸器60から精留塔50への上記循環経路から蒸気(四塩化チタン含有ガス)の抜き出しを行わないことから、得られる四塩化チタン中のアンチモン濃度を低減し得ないことが分かる。