(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065354
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】擬似餌
(51)【国際特許分類】
A01K 85/16 20060101AFI20240508BHJP
A01K 85/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A01K85/16
A01K85/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174177
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】502109267
【氏名又は名称】株式会社デュエル
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイエリックユンハ
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307BA42
2B307BA44
2B307BA46
2B307BA49
2B307BA70
(57)【要約】
【課題】 飛距離が長く且つ投げる度に飛距離がばらつき難い擬似餌を提供する。
【解決手段】 擬似本体2と、前記擬似本体2に取り付けられた柔軟な紐状体3と、を有する擬似餌1であって、前記擬似本体2が、ボディ4と、前記ボディ4の前方部に設けられたライン連結部5と、前記ボディ4に設けられた重り6と、を有し、前記紐状体3の長手方向一方側である第1端部31を前記擬似本体2の後方側に且つ前記紐状体3の長手方向反対側である第2端部32を前記擬似本体2の前方側に向けて、前記紐状体3の第1端部31が前記擬似本体2の前後方向中途部に取り付けられ、且つ、前記紐状体3の第2端部32が自由端とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似本体と、前記擬似本体に取り付けられた柔軟な紐状体と、を有し、
前記擬似本体が、ボディと、前記ボディの前方部に設けられたライン連結部と、前記ボディに設けられた重りと、を有し、
前記紐状体の長手方向一方側である第1端部を前記擬似本体の後方側に且つ前記紐状体の長手方向反対側である第2端部を前記擬似本体の前方側に向けて、前記紐状体の第1端部が前記擬似本体の前後方向中途部に取り付けられ、且つ、前記紐状体の第2端部が自由端とされている、擬似餌。
【請求項2】
前記重りが、前記ボディの前後方向中途部において前記ボディの下方に突出されており、
前記紐状体の第1端部が、前記重りに取り付けられている、請求項1に記載の擬似餌。
【請求項3】
前記紐状体の第1端部が、前記重りの後方部に取り付けられている、請求項2に記載の擬似餌。
【請求項4】
前記重りの後方部に取着部が設けられ、前記取着部に前記紐状体の第1端部が取り付けられており、
前記重りの後方部のうち少なくとも前記取着部の設けられた部分が面取りされている、請求項3に記載の擬似餌。
【請求項5】
前記重りが、前記ボディに埋設されている、請求項1に記載の擬似餌。
【請求項6】
前記紐状体が、複数本を引き揃えた紐状体の集合物から構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の擬似餌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、イカなどを釣る際に使用される擬似餌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な擬似餌が釣りに使用されている。
擬似餌を使用した釣りは、ルアーフィッシングとも呼ばれ、通常、竿を利用したキャスティングによって擬似餌を目的のポイントに投入する。このようなルアーフィッシングにおいては、より遠くに安定的に飛ばすことができる擬似餌が求められる。
例えば、特許文献1には、キャスティング段階における飛距離を長くするために、横長の本体と、前記本体における長手方向の一方側に取り付けられたラインアイと、前記本体における長手方向の他方側に取り付けられた針と、重心移動用の錘と、内部に前記錘を移動可能に収容する錘収容空間を有し、その一部が前記本体における前記ラインアイ側の底部から外方に突設され、残部が前記本体の内部において長手方向にて前記針側に延びた錘収容部とを備えており、前記錘収容空間は、前記本体の外側に突出した突出部から前記針側にかけて延び、かつ前記突出部内に前記錘を移動させたとき、前記錘の重心が前記本体の外側に位置するように形成されている擬似餌が開示されている。かかる擬似餌は、錘が前後に移動できる、つまり、擬似餌の重心が前後に移動できるようになっており、これにより飛距離を長くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような重心が移動するタイプの擬似餌は、長い飛距離を期待できるが、投げる度に飛距離がばらつき、長い飛距離で安定して投げることが期待できないおそれがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、飛距離が比較的長く且つ投げる度に飛距離がばらつき難い擬似餌を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、まず、投げた際の擬似餌の飛行姿勢を細かく分析した。擬似餌を投げると、擬似餌は、リールから繰り出されるラインに引張られることに起因する抵抗を適度に受け、また、飛行方向先端側において空気抵抗を受ける。この飛行中に、擬似餌が回転し、前記空気抵抗が大きくなる結果、投げた擬似餌が失速する。この擬似餌の回転の程度により、擬似餌の飛距離が、投げる度に同じにならないと考えられる。すなわち、擬似餌を同様な投げ方で複数回投げた場合に、比較的遠方へ投げることができる場合もあれば、それよりも短い場合もある。そこで、本発明者らは、整流効果を高めるため、飛行機の尾翼の如き構造部材を擬似餌の後方部に取り付けたり、或いは、敢えて空気抵抗を大きくするために擬似餌に板状の抵抗板を付けたり、反対に、空気抵抗を小さくするために擬似餌の中で突起している構造部分を削除するなどを試みたが、投げる度に安定した飛距離を確保できない。
このような試行錯誤の結果、本発明者らは、安定的に長い飛距離を確保できる擬似餌を完成した。
【0007】
本発明の第1態様に係る擬似餌は、擬似本体と、前記擬似本体に取り付けられた柔軟な紐状体と、を有し、前記擬似本体が、ボディと、前記ボディの前方部に設けられたライン連結部と、前記ボディに設けられた重りと、を有し、前記紐状体の長手方向一方側である第1端部を前記擬似本体の後方側に且つ前記紐状体の長手方向反対側である第2端部を前記擬似本体の前方側に向けて、前記紐状体の第1端部が前記擬似本体の前後方向中途部に取り付けられ、且つ、前記紐状体の第2端部が自由端とされている。
【0008】
本発明の第2態様に係る擬似餌は、前記第1態様に係る擬似餌において、前記重りが、前記ボディの前後方向中途部において前記ボディの下方に突出されており、前記紐状体の第1端部が、前記重りに取り付けられている。
本発明の第3態様に係る擬似餌は、前記第2態様に係る擬似餌において、前記紐状体の第1端部が、前記重りの後方部に取り付けられている。
本発明の第4態様に係る擬似餌は、前記第3態様に係る擬似餌において、前記重りの後方部に取着部が設けられ、前記取着部に前記紐状体の第1端部が取り付けられており、前記重りの後方部のうち少なくとも前記取着部の設けられた部分が面取りされている。
【0009】
本発明の第4態様に係る擬似餌は、前記第1態様に係る擬似餌において、前記重りが、前記ボディに埋設されている。
【0010】
本発明の第5態様に係る擬似餌は、前記第1態様乃至第4態様のいずれかに係る擬似餌において、前記紐状体が、複数本を引き揃えた紐状体の集合物から構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の擬似餌は、比較的長く投げることができ、投げる度に飛距離がばらつき難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】(a)は、1つの例の紐状体の拡大断面図、(b)は、他の例の紐状体の拡大断面図、(c)は、更なる他の例の紐状体の拡大斜視図(一部断面を含む)。
【
図8】擬似餌を宙吊りにしたときに、紐状体が曲がった状態を示す右側面図。
【
図9】本発明の擬似餌を投げ、飛行中の擬似餌の変化を示す参考側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の擬似餌を図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、「前方」は、擬似餌に結び付けられたラインを水中で引いた際に擬似餌が進む側を指し、「後方」は、前方と反対側を指し、前方と後方を結んだ方向を「前後方向」という。また、本明細書において、「上方」は、前後方向と直交し且つ使用時(水中で擬似餌を遊泳させた際)の擬似餌を基準にして水面に近い側を指し、「下方」は、上方と反対側、即ち、水中での使用時の擬似餌を基準にして水底に近い側を指し、上方と下方を結んだ方向を「上下方向」という。さらに、本明細書において、「幅方向」は、上下方向及び前後方向と直交する方向をいう。
【0014】
図1は、本発明の擬似餌1の右側面図であり、
図2は、同擬似餌1の左側面図であり、
図3は、同擬似餌1を下方から上方に向かって見た下面図であり、
図4は、
図1の紐状体3付近を拡大した右側面図であり、
図5は、
図3の紐状体3付近を拡大した平面図である。なお、
図4及び
図5において、ゴム管を断面で表わしている。
図1乃至
図5を参照して、本発明の擬似餌1は、装飾が施された擬似本体2と、前記擬似本体2に取り付けられた柔軟な紐状体3と、を有する。前記柔軟な紐状体3は、擬似餌1を安定的に長く投げることができるようにするための飛行安定部材である。
【0015】
<擬似本体>
擬似本体2は、ボディ4と、前記ボディ4の前方部に設けられたライン連結部5と、前記ボディ4に設けられた重り6と、前記ボディ4に設けられた釣り針7と、を有する。擬似本体2は、化粧材などの装飾材のほか、その他の構成部材を有していてもよい。
【0016】
ボディ4は、擬似餌1の主要部であり、擬似餌1の外形をほぼ構成する。ボディ4の形状は、対象魚(釣りの対象となる魚及び魚に類するものである。対象魚は、イカやタコなどを含む水中で生息する釣りの対象になるものの総称である。)の種類によって適宜設定される。例えば、ボディ4の形状は、甲殻類、小魚などに似せた形状が挙げられる。図示例のボディ4は、例えば、イカ(烏賊)を対象魚とするものであり、エビの外形を真似た形状に形成されている。イカはエビを好むため、エビの外形を真似た擬似餌1は、イカ釣り用として好適である。つまり、図示例の本発明の擬似餌1は、イカ釣り用擬似餌(いわゆるエギ)である。
【0017】
ボディ4の形成材料は特に限定されず、対象魚がボディ4に食いついても壊れない程度の機械的強度を有する材料が用いられる。このような材料としては、例えば、樹脂、木材、金属などが挙げられ、好ましくは樹脂が用いられる。特に、成形が容易であることから、ABS樹脂が好ましく用いられる。
ボディ4は、中空状に形成されていてもよく、或いは、中実状に形成されていてもよい。図示例の擬似餌1のボディ4は、中空状に形成されている。ボディ4は、1つの部品から構成されていてもよく、複数の部品から構成されていてもよい。図示例の擬似餌1のボディ4は、2つの部品(半割り品)を接着剤などで接着することによって形成されている。
ボディ4には、装飾が施されている。装飾は、装飾材をボディ4に付加することによってボディ4に施される。装飾は、主として対象魚の視角を刺激して捕食を促すことを期待できる外見的な構成要素をいう。例えば、ボディ4の外面には、化粧材(図示せず)が設けられている。化粧材は、所望の色模様が表された布生地、所望の色模様が表されたフィルムなどが挙げられる。化粧材は、接着剤などを介してボディ4の外面に固定的に取り付けられている。なお、本明細書において、固定的に取り付けられているとは、人力で容易に取り外すことができない程度に取り付けられているという意味である。また、前記化粧材が設けられたボディ4の内部が見えるように、前記ボディ4が透光性を有する場合、ボディ4の内部に、反射板(図示せず)などの装飾を設けてもよい。また、必要に応じて、ボディ4の外面に羽根(図示せず)を設けてもよいが、紐状体3が前記羽根に絡むおそれがあるので、
図1乃至
図3に示すように、羽根が設けられていない擬似本体2が好ましい。
【0018】
ライン連結部5は、例えば、ボディ4の前方部に設けられている。ライン連結部5は、使用時にライン(釣り糸)を結びつける部分である。ライン連結部5は、例えば、金属製の環状部分からなる。ライン連結部5は、例えば、金属線材を略U字状に曲げて環状に形成したU字環を用いて形成できる。そのU字環の端部をボディ4に固定的に取り付けることによって、ライン連結部5がボディ4の前方部に設けられている。ライン連結部5は、例えば、前記U字環の端部に戻り防止用突起などの係止部(図示せず)を形成し、そのU字環の端部をボディ4内の被係止部(図示せず)に係止させることによって、ボディ4に固定的に取り付けられている。また、ライン連結部5は、ボディ4の前縁42から前方に突出するように設けられている。
【0019】
釣り針7は、例えば、ボディ4の後方部に設けられている。図示例では、傘状の釣り針7がボディ4の後方部に固定的に取り付けられている。釣り針7は、例えば、釣り針7の端部をボディ4の後方部に設けられた嵌入穴(図示せず)に嵌入し且つ接着剤などを介してその端部を嵌入穴に接着することによって、ボディ4に固定的に取り付けられている。なお、このような固定式の釣り針7に代えて、ボディ4の適宜な箇所に釣り針連結部を設け、この釣り針連結部にフック状の釣り針(例えばトレブルフックなど)を取り付けてもよい(図示せず)。また、釣り針7が設けられる位置はボディ4の後方部に限られず、対象魚に応じてその位置を適宜変更することができるが、釣り針7は、柔軟な紐状体3と接触しないような位置に設けられていることが好ましい。例えば、後述するように、紐状体3が重り6に取り付けられている場合、紐状体3が釣り針に絡まないようにするために、重り6の周辺に釣り針が設けられていないことが好ましい。すなわち、釣り針が直接的に又はサルカンなどを介して間接的に重り6に取り付けられておらず、釣り針は、重り6付近を除くボディ4の適宜箇所に設けられていることが好ましい。
【0020】
重り6は、擬似餌1の重量を調整するものである。また、重り6の取り付け位置によって擬似餌1の重心を調整できる。
重り6は、適宜な位置に設けることができ、例えば、ボディ4の後方部、ボディ4の前方部、又は、ボディ4の前後方向中途部に設けられる。前後方向中途部とは、ボディ4の前後方向長さ4L(ボディ4の前縁42から後縁43までの長さ)の中間点(中間点は、ボディ4の前後方向長さ4Lを1とした場合、1/2の位置)という意味ではなく、前後方向長さ4Lの中の任意の部分を意味する。前方に重心が寄っていることが好ましいことから、図示例では、重り6は、例えば、ボディ4の前後方向長さ4Lの中間点よりも前方寄りの部分に設けられている。また、上下方向における位置関係では、重り6は、ボディ4の下方部(図示例のようなエビを真似たボディ4にあっては、いわゆる腹部)に設けられている。
【0021】
重り6は、ボディ4内に埋設されていてもよく(図示せず)、或いは、図示のようにボディ4から突出するように設けられていてもよい。前記重り6がボディ4内に埋設されているとは、重り6の一部又は全部がボディ4の表面から突出しないように設けられていることをいう。重り6がボディ4内に埋設されている場合としては、重り6の全部がボディ4の形成材料によって覆われている場合、重り6の一部がボディ4の表面と同一面上に存在するが重り6がボディ4の表面から突出していない場合、後述するようにボディ内の重り収容空間に重りが収容されている場合などが挙げられる。
図示例では、重り6は、ボディ4の前後方向中途部であって中間点よりも前方寄りの部分に設けられ、その中途部からボディ4の下方に突出されている。重り6は、接着剤などを介してボディ4に固定的に取り付けられている。
重り6の形状は、特に限定されないが、空気抵抗及び水中での抵抗を小さくするために、板状であることが好ましい。板状の重り6は、その板表面がボディ4の上下方向及び幅方向に含まれるように配置して、ボディ4に取り付けられている。従って、板状の重り6の上辺がボディ4の前後方向に沿って、重り6はボディ4に取り付けられている。重り6の形成材料としては、例えば、鉛、銅、真鍮、タングステン、鉄などの金属類が挙げられる。
【0022】
<紐状体>
紐状体3は、前記擬似本体2に設けられている。
紐状体3は、柔軟な細長い部材からなる。紐状体3は、1本の細長い部材から構成されていてもよいが、擬似餌1の安定的な飛行を期待できることから、複数本の紐状体3を引き揃えた集合物から構成されていることが好ましい。紐状体3が前記集合物からなる場合、各紐状体3は、その第1端部31を除いて互いに接合されておらず、互いに規制されることのない自由な状態となっている。なお、紐状体3が前記集合物からなる場合、各紐状体3の第1端部31は、各紐状体3の第1端部31の全部又は一部が互いに離れないように接合(一体化)されていてもよいし、或いは、互いに接合されていなくてもよい。
【0023】
紐状体3が前記集合物からなる場合、その本数は、特に限定されないが、例えば、2本以上であり、好ましくは6本以上であり、より好ましくは10本以上である。紐状体3の本数が余りに多いと、擬似餌1を取り扱いし難くなるので、この点を考慮すると、前記紐状体3の本数は、例えば、16以下であり、好ましくは12本以下である。
図示例では、8本の紐状体3の集合物からなる。なお、8本の紐状体3は、重り6を基準にして、その重り6の幅方向一方側(例えば、右側面側)において後方から前方に延びる4本と幅方向反対側(例えば、左側面側)において後方から前方に延びる4本とからなる。なお、各図で、重り6の幅方向一方側に配置された紐状体に符号3aを括弧書きし、重り6の幅方向反対側に配置された紐状体に符号3bを括弧書きしている。
ただし、紐状体3は、図示例の8本に限定されるわけではない。また、重り6の幅方向一方側及び反対側において配置された紐状体3が同数である場合に限定されるわけではなく、一方側に配置される紐状体3の数が反対側に配置される紐状体3の数よりも多い又は少なくてもよく、或いは、一方側又は反対側のみに複数の紐状体3が配置されていてもよい。擬似餌1の安定的な飛行のために、重り6を挟んで、その幅方向一方側及び反対側において、同数の紐状体3が後方から前方に延びていることが好ましい。
【0024】
なお、
図4及び
図5に示すように、幅方向一方側及び反対側に配置された2本の紐状体3(図示例の8本の紐状体3の場合、この2本の紐状体3が4組存在する)は、1本の細長い長状部品をヘアピン状に2つ折りすることによって構成されており、従って、折り返し部分Xで繋がっている。これは擬似餌1の製造(紐状体3の取り付けなど)が簡便になるため、かかる構成を採用している。もっとも、これに限定されず、折り返し部分Xで繋がらず、2本などの複数の紐状体3が独立していてもよい。
【0025】
紐状体3の形状は、細長く且つ宙吊りにしたときに自重によって垂れ下がる程度の柔軟性を確保できる形状であれば特に限定されない。例えば、紐状体3は、断面視所定形状の細長い紐状、平面視で短冊状の細長い紐状(換言すると、扁平状の紐状)などが挙げられる。前記断面視所定形状としては、紐状体3の軸方向に対して直交する方向で切断した断面視で、略円形、略楕円形、略正方形状などの略矩形状、略三角形状や略六角形状などの略多角形状、略星形状、又は、その他の異形状などが挙げられる。擬似餌1の安定的な飛行を期待できることから、紐状体3は、断面視所定形状のものが好ましく、断面視略矩形状、略円形状又は略楕円形状の細長い紐状体3がより好ましく、特に、断面視略正方形状、略円形状又は略楕円形状の細長い紐状体3がさらに好ましい。
図6(a)は、断面視略正方形状の紐状体3の断面図を表し、
図6(b)は、断面視略円形状の紐状体3の断面図を表している。また、
図6(c)は、平面視で短冊状の細長い紐状の紐状体の断面を含む斜視図である。
【0026】
1本の紐状体3の太さは、特に限定されないが、適度な柔軟性のために、例えば、直径0.1mm以上5mm以下であり、好ましくは、直径0.5mm以上2mm以下である。ただし、断面視略円形状でない紐状体3の前記太さは、円相当径とする。
紐状体3の長さは、特に限定されないが、擬似餌1の安定的な飛行のため、例えば、20mm以上200mm以下であり、好ましくは、50mm以上80mm以下である。前記紐状体3の長さは、その第1端部31の縁から第2端部32の縁までの長さをいう。
また、紐状体3は、飛行時及び水中での引き寄せ時に、ライン連結部5に連結されたラインや釣り針7に絡み難い程度の長さであることが好ましい。この点を考慮した紐状体3の長さは、ボディ4の前後方向長さ4Lとの関係で決定でき、例えば、紐状体3の長さは、ボディ4の前後方向長さ4Lの1/5以上1以下が好ましく、さらに、1/2以上4/5以下がより好ましい。
なお、本発明の擬似餌1のボディ4の前後方向長さ4Lは、例えば、30mm以上200mm以下であり、好ましくは、70mm以上150mm以下である。
紐状体3の形成材料は、柔軟性を有するものであれば特に限定されず、シリコーンゴムなどのゴム、熱可塑性エラストマー、軟質の合成樹脂などを用いることができ、好ましくは、ゴムやエラストマーのような弾性率の高い弾性材料が用いられる。なお、紐状体3は、軟質の合成樹脂を紡糸したフィラメントのような弾性率の低い弾性材料を用いて形成してもよい。
【0027】
紐状体3は、その第1端部31が擬似本体2の前後方向中途部に取り付けられ、且つ、その第2端部32が自由端とされている。このような向きで紐状体3が取り付けられた擬似餌1は、投げる度に飛距離がばらつき難く、安定的に長い飛距離で投げることができる。
具体的には、紐状体3は、第1端部31を擬似本体2の後方側に且つ第2端部32を擬似本体2の前方側に向けて、その第1端部31が擬似本体2の前後方向中途部に取り付けられ、且つ、その第2端部32が自由端とされている。紐状体3の第1端部31は、細長い紐状体3の長手方向一方側の端部であり、紐状体3の第2端部32は、長手方向において前記第1端部31とは反対側の端部である。
柔軟な紐状体3は、前記第1端部31のみが擬似本体2に取り付けられている。従って、擬似本体2に取り付けられた第1端部31は、その取り付け位置において動かず(変位せず)、紐状体3のうち第1端部31以外は、自由に動くことができる(変位可能である)。
【0028】
紐状体3の第1端部31は、ボディ4に取り付けられていてもよいが、重り6に取り付けられていることが好ましく、重り6の後方部に取り付けられていることがより好ましく、さらに、重り6の後方であってその上方部に取り付けられていることがさらに好ましい。紐状体3の第1端部31が重り6に取り付けられている、特に、重り6の後方部に取り付けられていることにより、飛行時の擬似餌の重心の振れを抑制することが期待できる。
【0029】
紐状体3の第1端部31の取り付け位置は、擬似本体2の任意の箇所であればよい。後述するように、飛行前期及び飛行中期に空気抵抗を受け且つ飛行後期に紐状体3が空気抵抗を受け難くするために、紐状体3の第1端部31の取り付け位置は、ボディ4の前後方向長さ4Lの中間点よりも前方寄りの部分であることが好ましく、さらに、ボディ4の前後方向長さ4Lを1とした場合、ボディ4の前縁42から1/6以上1/2未満の範囲内であることがより好ましく、ボディ4の前縁42から1/5以上1/3以下の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、紐状体3の第1端部31が、擬似本体2のうちボディ4以外(例えば重り6など)に取り付けられている場合、その第1端部31の取り付け位置は、そのボディ4以外に取り付けられている第1端部31から上下方向に延びる仮想線を引き、その仮想線がボディ4と交差する箇所を、前記紐状体3の第1端部31の取り付け位置とみなされるものとする。
【0030】
前記紐状体3の第1端部31は、擬似本体2に固定的に取り付けられていてもよく、或いは、着脱可能な状態で取り付けられていてもよい。図示例では、紐状体3の第1端部31は、擬似本体2に着脱可能に取り付けられている。紐状体3が着脱可能に取り付けられていることにより、擬似餌1の使用中に紐状体3が千切れるなどして損傷した場合、紐状体3を容易に交換できる。
紐状体3の第1端部31の取り付け方法は特に限定されない。紐状体3の第1端部31を固定的に取り付ける場合には、第1端部31は、接着剤などを用いて、重り6などの擬似本体2に取り付けられる。紐状体3の第1端部31を着脱可能に取り付ける場合には、例えば、第1端部31は、ゴムや紐などを用いた締め付け止めなどによって、重り6などの擬似本体2に取り付けられる。
例えば、紐状体3は、重り6に設けられた取着部61に取り付けられている。
図示例では、ゴム管62を用いて紐状体3の第1端部31を着脱可能に取り付けている。ただし、紐状体3を着脱可能に取り付ける方法は、これに限定されるわけではない。
【0031】
具体的には、特に、
図4及び
図5を参照して、重り6は、前記紐状体3の第1端部31が取り付ける取着部61を有する。また、重り6の後方部に設けられる紐状体3が、当該重り6の角に当たって屈曲し難くするために、重り6の後方部のうち少なくとも取着部61が設けられた部分が面取りされている。図示例では、重り6の後方部の一方の側面全体若しくは両側面全体又は取着部61の設けられた部分に対応する一方の側面若しくは両側面に、傾斜面69が形成されている。換言すると、重り6の後方部の全体又は取着部61の設けられた部分が、前方に向かうに従い幅広に形成されている。このように傾斜面69を形成することにより、紐状体3が、(重り6に邪魔され難く)擬似本体2の幅方向に屈曲することを防止できる。
【0032】
取着部61は、例えば、重り6の後方部(特に、後方且つ上方部)において突設されている。取着部61は、例えば、金属製であり、環状部611と前記環状部611に接続された棒部612とを有する。前記環状部611及び棒部612を有する取着部61は、例えば、金属線材の先端部を環状に曲げることによって形成できる(金属製の環付き棒)。取着部61は、例えば、前記棒部612に戻り防止用突起などの係止部(図示せず)を形成し、その係止部を重り6の被係止部に係止させる又は重り6に埋設するなどによって、重り6と一体化されている。また、取着部61は、その棒部612の一部及び環状部611が重り6の後方部から後方に突出するように設けられている。ただし、取着部61は、このような構成に限られず、適宜変更できる。
ゴム管62は、この取着部61の環状部611に取り付けられている。ゴム管62の内径は、環状部611の外径よりも小さい。ゴム管62を拡張させながら環状部611に外嵌し、前記拡張を解除することにより、ゴム管62が環状部611に強く密着する。また、ゴム管62を拡張させると、管状体611から取り外すことができ、ゴム管62は環状部611に着脱可能に取り付け可能である。
【0033】
図7に示すように、1本の紐状体3の約2倍長さの長状部品30を準備する。図示例では、4本の長状部品30を引き揃え、前記取着部61の環状部611に挿通する。長状部品30の1/2長さの箇所まで、長状部品30を環状部611に挿通した後、その箇所で長状部品30を折り曲げながら、取着部61の環状部611にゴム管62を拡張させながら外嵌する。ゴム管62を取着部61の棒部612付近まで進入させる。このようにして、
図4及び
図5に示すように、ゴム管62と取着部61の間に、複数の紐状体3の第1端部31が止められている。前記長状部品30は、紐状体3の約2倍長さである点を除いて、紐状体3と全く同じものであって、紐状体3の形成材料である。長状部品30を擬似本体2に取り付けた時点で、概念上、長状部品30は紐状体3となる。
【0034】
紐状体3は、その紐状体3を直線状にしたときに前後方向と略平行となるように、擬似本体2に取り付けられている。前記「紐状体3を直線状にする」とは、第1端部31の付近や長手方向中途部などにおいて紐状体3を屈曲させることなく、紐状体3の第1端部31から第2端部32に亘って軸芯が略直線状になるようにした状態をいう。
図5に示すように、重り6の後方部に取り付けられた紐状体3は、重り6の存在によって、第1端部31付近で若干屈曲している。上述のように、重り6の後方部に傾斜面69が形成されている場合でも、重り6の存在により、紐状体3は若干屈曲する。このため、この場合の前記「紐状体3を直線状にする」とは、重り6を無くしたと仮定し、前記第1端部31の付近や長手方向中途部などにおいて紐状体3を屈曲させることなく、紐状体3の第1端部31から第2端部32までを略直線状に伸ばした状態をいう。
【0035】
なお、
図1乃至
図3の紐状体3の状態は、設計上の状態であることに留意されたい。柔軟な紐状体3は、擬似餌1の使用時、(第1端部31は動かないが)第1端部31以外は、様々な形に変化し得る。例えば、
図8は、擬似餌1の下方部を下側(空とは反対側)にして、擬似餌1を宙吊りにした状態を表しており、この場合、柔軟な紐状体3は、紐状体3の自重により、第1端部31の付近から長手方向中途部にかけて湾曲し、自由端である第2端部32が下方に垂れ下がる。
【0036】
<擬似餌の使用>
本発明の擬似餌1は、ライン連結部5にラインを結び、竿を利用して水中(海中又は淡水中)に投入して使用される。
図9は、本発明の擬似餌1を投げたときの、擬似餌1の飛行姿勢を説明した参考側面図である。
図9(a)乃至(c)の矢印は、擬似餌1の進行方向を表している。
図9(a)に示すように、擬似餌1を投げた飛行初期には、擬似餌1は、重り6が設けられている擬似本体2の下方部を空側に向け且つライン9とボディ4の前後方向軸が略鋭角となるような姿勢で、前方部であるライン連結部5を進行方向先頭側に向けて飛行する。
同図(b)に示すように、前記飛行初期から飛行中期にかけて、擬似餌1は、次第に擬似本体2の後方部が進行方向先頭側に向くように、ライン連結部5を中心点として側面視で徐々に回転する。
同図(c)に示すように、飛行後期において、擬似餌1は、擬似本体2の後方部が進行方向先頭側に向けて飛行する。
【0037】
本発明の擬似餌1は、紐状体3の第1端部31を後方側に且つ第2端部32を前方側に向けて、紐状体3の第1端部31が擬似本体2に取り付けられ且つ第2端部32(第1端部31以外)が自由端とされている(
図1乃至
図3参照)。かかる擬似餌1は、投げる度に飛距離の長短が生じ難く、安定して長い飛距離で投げることができる。本発明の擬似餌1が前記効果を奏する理由は明確ではないが、本発明者らは、その理由を次のように推定している。
【0038】
図9は、擬似餌1を投げた際の飛行姿勢の変化を表した参考右側面図である。
図9(a)に示す飛行初期から同図(b)に示す飛行中期では、紐状体3は、第1端部31の付近で湾曲し、第2端部32が飛行方向先頭側とは反対側(擬似餌1を投げた使用者側)に向いている。そして、飛行初期から飛行中期にかけて、擬似餌1は、釣り針7側が飛行方向先頭側となるように飛行姿勢を変化させる。このように飛行姿勢が変化する過程において、擬似餌1に主として作用する力は、ライン9によって飛行方向反対側に引かれる力であるが、第1端部31付近で湾曲してボディ4の側方に出た紐状体3が飛行方向反対側に靡くので、この紐状体3が空気抵抗を受け易くなり、前記ライン9によって引かれる力にさらにプラスした力が擬似餌1に作用する。その結果、擬似餌1が飛行前期の姿勢から飛行中期の姿勢に素早く変化するようになる。特に、紐状体3の第1端部31がボディ4の前方寄りに取り付けられていることにより、前記紐状体3が湾曲することによって擬似餌1に作用するプラスの力(前記ライン9によって引かれる力にさらにプラスされる力)が大きくなることが期待できる。擬似餌1は、飛行初期から飛行中期の姿勢変化の間において最も空気抵抗を受けるので、この間を短くできる本発明の擬似餌1は、飛距離が長くなる。
【0039】
次に、飛行中期から同図(c)に示す飛行後期にかけて、擬似餌1は、重り6を水面側(空側とは反対側)に向け且つ後方部(図示例では釣り針7が設けられた側)を飛行方向先頭側に向けて飛行する。飛行後期においては、飛行前期から飛行中期にかけて湾曲していた紐状体3が徐々に第1端部31から第2端部32へと略直線状になる。つまり、飛行後期においては、擬似餌1は、その後方部を進行方向先頭側に向けて飛行するので、第1端部31付近で湾曲していた紐状体3が第1端部31から第2端部32へと略直線状になった状態(
図1乃至
図3に示すような状態)に変化し、その状態で擬似餌1が飛行する。紐状体3が第1端部31から第2端部32へと略直線状になった状態で後方部を進行方向先頭側に向けて飛行する擬似餌1の、当該紐状体3は、空気抵抗を受け難くなる。このため、本発明の擬似餌1は、飛行後期の擬似餌1の姿勢が安定化すると考えられる。また、飛行後期における擬似餌1は、後方部が前方部に比して天側に若干上がった斜めの姿勢となり、突風などの風の影響を受け易くなるが、前述のように紐状体3が略直線状となって靡くことによって、前記紐状体3が前記風を受け流す整流作用を発揮し、飛行後期の擬似餌1の姿勢が安定化すると考えられる。
擬似餌1の飛行中、飛行前期及び飛行中期を合わせた期間は、飛行後期よりも随分と短いため、飛行後期の姿勢が安定化する本発明の擬似餌1は、投げる度に飛距離の長短が生じ難く、安定して長い飛距離で投げることができる。
【0040】
なお、上記実施形態において、ボディ4に固定的な重り6が設けられている擬似餌1を例示したが、これに限定されない。
本発明の擬似餌1にあっても、例えば、特許文献1のように、ボディ内に重り収容空間を形成し、その重り収容空間内に重りを収容してもよい(図示せず)。このような移動式の重りは、ボディ4に埋設されている重りである。このような移動式の重りを有する擬似本体(重心が移動するタイプ)に、上記紐状体3を設けることにより、安定して長い飛距離で投げることができる。なお、移動式の重りを有する擬似本体の構成は広く公知であり、かかる公知の構成を有する擬似本体に紐状体3を適用することにより、本発明の擬似餌1を構成できる。
【符号の説明】
【0041】
1 擬似餌
2 擬似本体
3 紐状体
31 紐状体の第1端部
32 紐状体の第2端部
4 ボディ
5 ライン連結部
6 重り
7 釣り針