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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065366
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240508BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20240508BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/00 D
B60C11/13 B
B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174197
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】小泉 照平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131BA01
3D131BA04
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC11
3D131BC12
3D131BC31
3D131BC44
3D131CB06
3D131DA54
3D131EA08V
3D131EA08W
3D131EA09V
3D131EA09W
3D131EB05U
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB20V
3D131EB20X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB32V
3D131EB32W
3D131EB42X
3D131EB46V
3D131EB46W
3D131EB46X
3D131EB82V
3D131EB82X
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EB87X
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB91X
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB94X
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
3D131EC07V
3D131EC07W
3D131HA33
3D131HA35
(57)【要約】
【課題】幅が異なる複数の陸の外表面に曲率半径および突出高さが同じ略円弧状の突出部を形成しても、接地性の低下が抑制され、制動性が確保される空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ周方向に延びる複数の主溝60と、タイヤ幅方向において主溝60の間に配置される幅が異なる複数の陸70と、を有するトレッド30を備え、複数の陸70のそれぞれは、タイヤ幅方向断面視においてトレッド30の仮想的な輪郭を示す仮想線であるプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側に凸の略円弧状に突出する突出部100を有し、複数の陸70のうちの少なくとも1つの陸70は連続部を有し、当該連続部は、プロファイルラインPL上に存在し、かつ突出面に連続しており、突出部のそれぞれは、当該突出部の表面を形成する突出面の曲率半径が同じであり、かつプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側に突出する突出高さH1が同じである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、
タイヤ幅方向において前記主溝の間に配置される幅が異なる複数の陸と、を有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、
前記複数の陸のそれぞれは、タイヤ幅方向断面視において前記トレッドの仮想的な輪郭を示す仮想線であるプロファイルラインからタイヤ径方向外側に凸の略円弧状に突出する突出部を有し、
前記複数の陸のうちの少なくとも1つの陸は連続部を有し、当該連続部は、前記プロファイルライン上に存在し、かつ前記突出面に連続しており、
前記突出部のそれぞれは、当該突出部の表面を形成する突出面の曲率半径が同じであり、かつ前記プロファイルラインからタイヤ径方向外側に突出する突出高さH1が同じである、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記突出部は、前記プロファイルラインから最もタイヤ径方向外側に離れて前記突出高さH1を形成する最外周部を含み、当該最外周部が、前記陸の幅方向中央に配置されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記突出高さH1は、0.05mm以上0.5mm以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数の陸のうち、幅が最小である前記陸の幅をWmin、前記陸のそれぞれのプロファイルラインからの前記突出部の前記突出高さをH1、前記陸のそれぞれの前記突出部における前記突出面の曲率半径をR1としたとき、下記式(1)を満たす、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
Wmin≧4(2R1・H1-H1)・・・(1)
【請求項5】
前記連続部は、前記プロファイルラインとパラレルに延びている、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記トレッドは、前記複数の主溝および前記複数の陸が形成されるトレッドゴムを含み、当該トレッドゴムは、20℃における貯蔵弾性率が75MPa以下である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記陸は、前記主溝に面する側壁面を含み、
前記陸は、前記連続部と前記側壁面とのなす角部にあたる部分に、当該角部を切り欠く態様の面取り部を有する、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
少なくとも3つの前記主溝を有し、かつ少なくとも2つの前記陸を有する、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記陸として、少なくとも、タイヤ幅方向中央の中央陸と、当該中央陸の幅方向両側の2つの中間陸と、を有する、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の主溝および主溝間の複数の陸を含むトレッドを備えた空気入りタイヤが知られている。特許文献1には、陸の外表面である踏面をタイヤ径方向外側に凸となるようにタイヤ幅方向断面視で円弧状に形成した空気入りタイヤが開示されている。ここでは、その凸状の突出部の表面を形成する輪郭の曲率半径を、外側センター陸部よりも内側センター陸部の方を大きくすることにより、接地性が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-105361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幅の異なる複数の陸のそれぞれに対して、表面の曲率半径が同じで、かつ突出高さも同じであるタイヤ幅方向断面視が略円弧状の突出部を形成することが試みられた。その場合、幅の大きな陸においては陸の幅方向両側の端部がプロファイルラインよりもタイヤ径方向内側に切れ込んでしまい、プロファイルライン上の接地面が低減して接地性が低下することが懸念された。接地性の低下は制動性の低下を招くため、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、幅が異なる複数の陸の外表面に曲率半径および突出高さが同じ略円弧状の突出部を形成しても、接地性の低下が抑制され、制動性が確保される空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、タイヤ幅方向において前記主溝の間に配置される幅が異なる複数の陸と、を有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、前記複数の陸のそれぞれは、タイヤ幅方向断面視において前記トレッドの仮想的な輪郭を示す仮想線であるプロファイルラインからタイヤ径方向外側に凸の略円弧状に突出する突出部を有し、前記複数の陸のうちの少なくとも1つの陸は連続部を有し、当該連続部は、前記プロファイルライン上に存在し、かつ前記突出面に連続しており、前記突出部のそれぞれは、当該突出部の表面を形成する突出面の曲率半径が同じであり、かつ前記プロファイルラインからタイヤ径方向外側に突出する突出高さH1が同じである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、幅が異なる複数の陸の外表面に曲率半径および突出高さが同じ略円弧状の突出部を形成しても、接地性の低下が抑制され、制動性が確保される空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の断面図である。
図2】実施形態に係るタイヤのトレッド面を示す一部拡大正面図である。
図3】実施形態に係るタイヤのトレッド中央部を示す拡大断面図である。
図4】実施形態に係るタイヤの外側中間陸を示す拡大断面図である。
図5】実施形態に基づく変形例を示す図であって、外側中間陸の変形例を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1の内部構造を示す図であって、タイヤ幅方向の断面を示している。図2は、タイヤ1の正面図の一部拡大図であり、トレッドパターン38が形成されたタイヤ1のトレッド面37を示している。実施形態に係るタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。なお、図1の断面図においては、構成部材の境界線や後述するプロファイルラインを明確にするために、断面を表すハッチングを省略している。後述する図3図5も同様としている。
【0010】
はじめに、図1を参照しつつタイヤ1の内部構造を説明する。タイヤ1の基本的な内部構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。
【0011】
なお、図1の断面図は、タイヤ1を図示せぬ規定リムに装着し、かつ規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
図1中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示している。そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面中央側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面左側および右側である。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
【0013】
なお、実施形態のタイヤ1は、車両に装着する向き、すなわち車両に装着された状態でのタイヤ幅方向の両側のうち、車両の外側に配置される側と、車両の内側に配置される側とが指定されている。この車両に装着する向きは、トレッド面37に形成されるトレッドパターン38に基づく。図1および図2には、タイヤ1において車両の外側に配置される側を車幅方向外側として示し、車両の内側に配置される側を車幅方向内側として示している。すなわち、図1および図2において、紙面右側が車幅方向外側であり、紙面左側が車幅方向内側である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0015】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、チェーハー13と、リムストリップゴム14と、を備えている。
【0016】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0017】
チェーハー13は、ビードコア11周りに設けられたカーカスプライ40のタイヤ径方向内側に設けられている。リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14は、タイヤ1が装着されるリムと接触する部材である。
【0018】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含む。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最も撓む部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0019】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ35と、トレッドゴム36と、を備えている。ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ35は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0020】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、インナーライナー50のタイヤ径方向外側に配置された内側ベルト32と、内側ベルト32のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト33と、を備えた2層構造である。内側ベルト32および外側ベルト33は、いずれも複数のスチールコード等のベルトコードがゴムで覆われた構造を有している。内側ベルト32は、外側ベルト33よりも幅広である。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0021】
キャッププライ35は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ35は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ35は、ベルト31全体をタイヤ外表面側から覆っている。キャッププライ35を設けることにより、耐久性の向上や走行時のロードノイズの低減を図ることができる。なお、実施形態のキャッププライ35は1層であるが、2層以上の構造であってもよい。
【0022】
トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、トレッド30の外表面であるトレッド面37を構成する部材である。トレッドゴム36のタイヤ幅方向外側の端部36bは、キャッププライ35のタイヤ幅方向外側の端縁よりもタイヤ幅方向外側に張り出している。そのトレッドゴム36のタイヤ幅方向外側の端部36bは、上述したサイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側の端部を覆っている。タイヤ1は、トレッド30からサイドウォール20に移行する部分にショルダー25を有する。トレッド面37には、トレッドパターン38が設けられている。トレッド面37は本開示において特徴的な構成を有しており、それについては後で詳述する。
【0023】
カーカスプライ40は、一対のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10の間を、一対のサイドウォール20およびトレッド30のタイヤ内腔側を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。トレッド30においては、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側にベルト31が配置されている。
【0024】
カーカスプライ40は、複数の図示せぬプライコードを含んでいる。複数のプライコードは、例えばタイヤ幅方向に沿った面内に沿って延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のプライコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0025】
カーカスプライ40は、プライ本体部40Aと、プライ折り返し部40Bと、屈曲部40Cと、を有する。プライ本体部40Aは、一方のビードコア11のタイヤ幅方向内側から、一方のサイドウォール20、トレッド30および他方のサイドウォール20を経て、他方のビードコア11のタイヤ幅方向内側まで延在する部分である。プライ折り返し部40Bは、プライ本体部40Aからビードコア11周りに折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向外側に延びている部分である。屈曲部40Cは、プライ本体部40Aからビードコア11周りにU字状に屈曲し、プライ折り返し部40Bにつながる部分である。プライ本体部40Aとプライ折り返し部40Bとは、屈曲部40Cを介して連続している。プライ折り返し部40Bは、屈曲部40Cからビードフィラー12のタイヤ幅方向外側の面に沿ってサイドウォール20のタイヤ径方向中央付近まで延びている。プライ折り返し部40Bのタイヤ径方向外側の端部は、プライ本体部40Aに重なっている。
【0026】
上述したビード10のチェーハー13は、屈曲部40Cを含むカーカスプライ40のタイヤ径方向内側の端部を取り囲むように設けられている。また、リムストリップゴム14は、チェーハー13およびカーカスプライ40のプライ折り返し部40Bの、タイヤ幅方向外側に配置されている。リムストリップゴム14のタイヤ径方向外側の端部は、上述したサイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端部で覆われている。
【0027】
なお、実施形態のカーカスプライ40は1層構造であるが、カーカスプライ40は1層構造に限らず、2層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0028】
インナーライナー50は、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー50は、トレッド30およびトレッド30からサイドウォール20にわたる領域では、カーカスプライ40のプライ本体部40Aの内面を覆っている。また、インナーライナー50は、サイドウォール20からビード10にわたる領域では、カーカスプライ40のプライ本体部40Aおよびチェーハー13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0029】
ここで、ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21およびインナーライナー50よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253-3:2012のデュロメータ硬さ タイプAである。
【0030】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度が好ましい。リムストリップゴム14の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍以上1.6倍以下程度がより好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。また、トレッドゴム36の硬度は、接地性が良好で、かつ低燃費となる観点から比較的低いことが好ましく、例えば上記デュロメータ硬さ タイプAで50~60程度が好ましい。さらにトレッドゴム36は、20℃における貯蔵弾性率が75MPa以下であることが好ましい。
【0031】
以上が、実施形態に係るタイヤ1の内部構造である。次いで、図2を参照して、実施形態に係るトレッド30のトレッドパターン38について詳述する。なお、図2には、タイヤ幅方向Xおよびタイヤ周方向Cを示している。また、図2には、タイヤ赤道S2を示している。
【0032】
実施形態のトレッドパターン38は、複数の主溝60と、タイヤ幅方向において主溝60の間に配置される複数の陸70と、を備えている。複数の主溝60および複数の陸70は、いずれもタイヤ周方向に沿って環状に延びている。以下の説明で、主溝60および陸70における幅方向とは、タイヤ幅方向と同意であり、主溝60および陸70における幅とは、タイヤ幅方向の寸法をいう。
【0033】
複数の主溝60は、タイヤ幅方向中央に配置される内側中央主溝60Aおよび外側中央主溝60Bと、これら中央主溝60A、60Bのタイヤ幅方向外側に配置される内側中間主溝61Aおよび外側中間主溝61Bと、を含む。タイヤ1が車両に装着された状態で、内側中央主溝60Aおよび内側中間主溝61Aは、タイヤ赤道S2よりも車幅方向内側に配置される。タイヤ1が車両に装着された状態で、外側中央主溝60Bおよび外側中間主溝61Bは、タイヤ赤道S2よりも車幅方向外側に配置される。
【0034】
実施形態の主溝60においては、2つの中央主溝60A、60Bが互いに同じ幅を有し、2つの中間主溝61A、61Bが互いに同じ幅を有する。例えば、中央主溝60A、60Bの幅W1は13mm、中間主溝61A、61Bの幅W2は9.4mmである。実施形態においては、中央主溝60A、60Bの幅が中間主溝61A、61Bの幅よりも大きいが、同じであってもよく、逆に中間主溝61A、61Bの幅が中央主溝60A、60Bの幅より大きくてもよい。
【0035】
複数の陸70は、中央陸71と、中間陸としての内側中間陸72および外側中間陸73と、内側ショルダー陸74および外側ショルダー陸75と、含む。
【0036】
中央陸71は、トレッド面37のタイヤ幅方向中央において、内側中央主溝60Aと外側中央主溝60Bとの間に配置されている。中央陸71の幅方向中央に、タイヤ赤道S2が通る。図1に示すように、中央陸71は、トレッド面37の一部である表面71Sと、内側中央主溝60Aに面する側壁面である内側側壁面71Nと、外側中央主溝60Bに面する側壁面である外側側壁面71Gと、を有するリブ状の部分である。
【0037】
内側中間陸72は、内側中央主溝60Aと内側中間主溝61Aとの間に配置されている。図1に示すように、内側中間陸72は、トレッド面37の一部である表面72Sと、内側中間主溝61Aに面する側壁面である内側側壁面72Nと、内側中央主溝60Aに面する側壁面である外側側壁面72Gと、を有するリブ状の部分である。
【0038】
外側中間陸73は、外側中央主溝60Bと外側中間主溝61Bとの間に配置されている。図1に示すように、外側中間陸73は、トレッド面37の一部である表面73Sと、外側中央主溝60Bに面する側壁面である内側側壁面73Nと、外側中間主溝61Bに面する側壁面である外側側壁面73Gと、を有するリブ状の部分である。
【0039】
タイヤ1が車両に装着された状態で、内側中間陸72および内側ショルダー陸74は、中央陸71よりも車幅方向内側に配置される。タイヤ1が車両に装着された状態で、外側中間陸73および外側ショルダー陸75は、中央陸71よりも車幅方向外側に配置される。なお、上述したショルダー25は、タイヤ1が車両に装着された状態で車幅方向内側に配置される内側ショルダー25Aと、タイヤ1が車両に装着された状態で車幅方向外側に配置される外側ショルダー25Bと、を含む。
【0040】
実施形態の陸70の幅は、2つの中間陸72、73が互いに同じ幅を有し、1つの中央陸71は中間陸72、73よりも幅が小さい。すなわち、実施形態のタイヤ1は、幅が異なる複数の陸70を有しており、複数の陸70のうち、中央陸71の幅が最小である。例えば、中間陸72の幅W3は19.8mmであり、中間陸72、73の幅W4は22.2mmである。なお、中央陸71の幅が中間陸72、73の幅より大きくてもよい。
【0041】
中央陸71は、複数の第1傾斜溝81を有する。複数の第1傾斜溝81は、中央陸71の内側中央主溝60A側の縁部に、周方向に間隔をおいて配置されている。第1傾斜溝81は、略台形状の形状を有し、内側中央主溝60Aに連通している。第1傾斜溝81は、内側中央主溝60Aへの開口端から中央陸71の幅方向中央に向かうにつれてタイヤ周方向一方側(図2において下側)に傾斜して延び、中央陸71の幅方向中央に到達せず終端している。第1傾斜溝81のタイヤ周方向他方側(図2で上側)の端縁には、当該端縁に沿って延びる第1サイプ81aが形成されている。第1サイプ81aは、内側中央主溝60Aに連通している。第1サイプ81aは、第1傾斜溝81からさらにタイヤ周方向一方側に屈曲して延びており、中央陸71の幅方向中央を通過して外側中間主溝61Bに到達せず終端している。第1サイプ81aは、第1傾斜溝81よりも溝幅が狭く、かつ浅い溝であって、その幅は1mm以下の溝である。
【0042】
内側中間陸72は、複数の第2傾斜溝82および複数の第3傾斜溝83を有する。複数の第2傾斜溝82は、内側中間陸72の内側中間主溝61A側の縁部の表面に、周方向に間隔をおいて配置されている。第2傾斜溝82は、略台形状の形状を有し、内側中間主溝61Aに連通している。第2傾斜溝82は、内側中間主溝61Aへの開口端から内側中間陸72の幅方向中央に向かうにつれてタイヤ周方向一方側(図2において下側)に傾斜して延び、内側中間陸72の幅方向中央付近で終端している。第2傾斜溝82のタイヤ周方向一方側(図2で下側)の端縁には、当該端縁に沿って延びる第2サイプ82aが形成されている。第2サイプ82aは、内側中間主溝61Aに連通している。第2サイプ82aは、第2傾斜溝82の延びる方向にほぼ沿って延びており、内側中間陸72の幅方向中央を通過して内側中央主溝60Aに到達せず終端している。
【0043】
第3傾斜溝83は、内側中間陸72の内側中央主溝60A側の縁部に、周方向に間隔をおいて配置されている。第3傾斜溝83は、略台形状の形状を有し、内側中央主溝60Aに連通している。第3傾斜溝83は、内側中央主溝60Aへの開口端から内側中間陸72の幅方向中央に向かうにつれてタイヤ周方向他方側(図2において上側)に傾斜して延び、内側中間陸72の幅方向中央に到達せず終端している。第3傾斜溝83のタイヤ周方向一方側(図2で下側)の端縁には、当該端縁に沿って延びる第3サイプ83aが形成されている。第3サイプ83aは、内側中央主溝60Aに連通している。第3サイプ83aは、第3傾斜溝83の延びる方向にほぼ沿って延びており、内側中間陸72の幅方向中央を通過して内側中間主溝61Aに到達せず終端している。第2サイプ82aおよび第3サイプ83aは、第2傾斜溝82および第3傾斜溝83よりも溝幅が狭く、かつ浅い溝であって、その幅は1mm以下の溝である。
【0044】
複数の第2傾斜溝82と複数の第3傾斜溝83とが、タイヤ周方向に間隔をおいて交互に配置されている。複数の第2傾斜溝82のタイヤ周方向ピッチおよび複数の第3傾斜溝83のタイヤ周方向ピッチは、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。
【0045】
外側中間陸73は、複数の第4傾斜溝84および第5傾斜溝85を有する。複数の第4傾斜溝84は、外側中間陸73の外側中央主溝60B側の縁部に、周方向に間隔をおいて配置されている。第4傾斜溝84は、略台形状の形状を有し、外側中央主溝60Bに連通している。第4傾斜溝84は、外側中央主溝60Bへの開口端から外側中間陸73の幅方向中央に向かうにつれてタイヤ周方向一方側(図2において下側)に傾斜して延び、外側中間陸73の幅方向中央付近で終端している。第4傾斜溝84のタイヤ周方向他方側(図2で上側)の端縁には、当該端縁に沿って延びる第4サイプ84aが形成されている。第4サイプ84aは、外側中央主溝60Bに連通している。第4サイプ84aは、第4傾斜溝84の延びる方向にほぼ沿って延びており、外側中間陸73の幅方向中央を通過して外側中間主溝61Bに到達せず終端している。
【0046】
第5傾斜溝85は、外側中間陸73の外側中間主溝61B側の縁部に、周方向に間隔をおいて配置されている。第5傾斜溝85は、略台形状の形状を有し、外側中間主溝61Bに連通している。第5傾斜溝85は、外側中間主溝61Bへの開口端から外側中間陸73の幅方向中央に向かうにつれてタイヤ周方向他方側(図2において上側)に傾斜して延び、外側中間陸73の幅方向中央に到達せず終端している。第5傾斜溝85のタイヤ周方向一方側(図2で下側)の端縁には、当該端縁に沿って延びる第5サイプ85aが形成されている。第5サイプ85aは、外側中間主溝61Bに連通している。第5サイプ85aは、第5傾斜溝85とほぼ同じ長さを有する。第4サイプ84aおよび第5サイプ85aは、第4傾斜溝84および第5傾斜溝85よりも溝幅が狭く、かつ浅い溝であって、その溝幅は1mm以下の溝である。
【0047】
複数の第4傾斜溝84と複数の第5傾斜溝85とが、タイヤ周方向に間隔をおいて交互に配置されている。複数の第4傾斜溝84のタイヤ周方向ピッチおよび複数の第5傾斜溝85のタイヤ周方向ピッチは、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。
【0048】
内側ショルダー陸74は内側ショルダー25Aの一部であり、外側ショルダー陸75は外側ショルダー25Bの一部である。内側ショルダー陸74の幅と外側ショルダー陸75の幅とは、ほぼ同じである。
【0049】
内側ショルダー陸74は、複数の第1スリット91と、複数の切欠き95と、を有している。外側ショルダー陸75は、複数の第2スリット92を有している。
【0050】
内側ショルダー陸74の複数の第1スリット91は、概ねタイヤ幅方向に沿った横溝であって、溝幅が1mmを超える溝である。複数の第1スリット91は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。第1スリット91は、タイヤ周方向の他方側(図2において上側)に緩やかな凸となるような円弧状の形状を有しており、全体的にはタイヤ幅方向内側に向かうにつれてタイヤ周方向一方側(図2において下側)に緩やかに傾斜している。第1スリット91のタイヤ幅方向内側端は、内側中間主溝61Aには到達せず、終端している。その終端部である第1スリット91のタイヤ幅方向内側の端部は、タイヤ幅方向内側に向かうにつれて円錐状に先細り形状となっている。第1スリット91のタイヤ幅方向内側の端部からは、第1スリット91から延長する態様で第6サイプ91aがタイヤ幅方向内側に延びている。第6サイプ91aは、内側中間主溝61Aに達して連通している。第1スリット91のタイヤ幅方向外側の端部は、内側ショルダー25Aの外表面に開放している。
【0051】
内側ショルダー陸74の複数の切欠き95は、内側ショルダー陸74の内側中間主溝61A側の縁部に、周方向に間隔をおいて配置されている。切欠き95は、三角形状であって、内側中間主溝61Aに連通している。複数の切欠き95は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。切欠き95のタイヤ周方向他方側(図2で上側)の端縁には、当該端縁に沿って延びる第7サイプ95aが形成されている。第7サイプ95aは、内側中間主溝61Aに連通している。第7サイプ95aは、切欠き95からさらにタイヤ周方向外側に向かって第1スリット91に沿うように緩やかに湾曲して延びており、内側ショルダー陸74の幅方向中央を通過し、内側ショルダー25A付近で終端している。第6サイプ91aおよび第7サイプ95aは、第1スリット91および切欠き95よりも浅い溝であって、その溝幅は1mm以下である。
【0052】
複数の第1スリット91と複数の切欠き95とが、タイヤ周方向に間隔をおいて交互に配置されている。複数の第1スリット91のタイヤ周方向ピッチおよび複数の切欠き95のタイヤ周方向ピッチは、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。
【0053】
外側ショルダー陸75の複数の第2スリット92は、概ねタイヤ幅方向に沿った横溝であって、溝幅が1mmを超える溝である。複数の第2スリット92は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。複数の第2スリット92は、タイヤ周方向に等ピッチ、あるいは不等ピッチに配置されている。第2スリット92は、タイヤ周方向の一方側(図2において下側)に緩やかな凸となるような円弧状の形状を有しており、全体的にはタイヤ幅方向内側に向かうにつれてタイヤ周方向他方側(図2において上側)に緩やかに傾斜している。第2スリット92のタイヤ幅方向内側端は、外側中間主溝61Bには到達せず、終端している。第2スリット92は、タイヤ幅方向内側に向かうにつれて幅がしだいに大きくなる形状を有し、外側中間主溝61Bに近接するタイヤ幅方向内側の端部は、タイヤ幅方向内側に向かうにつれて円錐状に先細り形状となっている。第2スリット92のタイヤ幅方向内側の端部からは、第8サイプ92aがタイヤ幅方向内側に延びている。第8サイプ92aは、第2スリット92からタイヤ周方向他方向(図2において上側)に向かって傾斜し、外側中間主溝61Bに達して連通している。第8サイプ92aは第2スリット92よりも浅い溝であって、その溝幅は1mm以下の溝である。第2スリット92のタイヤ幅方向外側の端部は、外側ショルダー25Bの外表面に開放している。
【0054】
実施形態のトレッド30は、図1に示すように、プロファイルラインPLを有する。プロファイルラインPLは、主溝60が存在しないとした場合におけるトレッド面37の連続する輪郭であって、タイヤ幅方向断面において複数の曲率半径の円弧が連続する仮想的な輪郭を示す仮想線である。実施形態のプロファイルラインPLは、タイヤ周方向両側の内側ショルダー陸74から外側ショルダー陸75にわたるトレッド面37に沿った複数の曲率半径の円弧面が滑らかに連続する仮想線であり、後述する突出部100の突出面は含まない。
【0055】
図1に示すように、各陸70のそれぞれは、突出部100を有する。突出部100は、トレッド30のプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側に突出している。突出部100は、タイヤ幅方向断面視においてタイヤ径方向外側に凸に突出し、その表面が所定の曲率半径の円弧面となっている。突出部100は、タイヤ周方向に連続する環状の凸条である。
【0056】
図3は、トレッド30のタイヤ幅方向中央部分を示す拡大断面図であって、中央陸71、内側中間陸72および外側中間陸73のそれぞれの突出部100を示している。図3に示すように、突出部100は、中央陸71の中央突出部110と、内側中間陸72の内側突出部120と、外側中間陸73の外側突出部130と、を含む。
【0057】
図3に示すように、中央陸71の中央突出部110は、タイヤ幅方向断面が円弧状の突出面111を有する。中央突出部110の突出面111は、曲率半径R1の円弧面である。図3では、中央突出部110のプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側に突出する突出高さを、H1で示している。この突出高さH1は、中央突出部110の突出面111の頂点111aと、プロファイルラインPLとの間の、タイヤ径方向に沿った距離である。頂点111aは、突出面111においてプロファイルラインPLから最もタイヤ径方向外側に離れて突出高さH1を形成する最外周部である。
【0058】
中央陸71の表面71Sは、中央突出部110の幅方向一方側(図3において左側)に、連続部として第1連続部71Aを有し、中央突出部110の幅方向他方側(図3において右側)に、連続部として第2連続部71Bを有する。第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、タイヤ周方向に連続する細い環状の面である。すなわち、中央陸71の表面71Sは、中央突出部110の突出面111と、中央突出部110の幅方向両側の第1連続部71Aおよび第2連続部71Bと、を含む。第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、中央突出部110の突出面111に連続している。第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、プロファイルラインPLに沿っている。すなわち、第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、プロファイルラインPL上に位置しており、かつプロファイルラインPLとパラレルに延びている。第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、中央陸71の表面71Sの、中央突出部110以外の部分を形成している。実施形態の第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、プロファイルラインPLに一致して延びているが、第1連続部71Aおよび第2連続部71Bは、プロファイルラインPL上またはプロファイルラインPLよりもタイヤ径方向外側の領域に存在して中央突出部110の突出面111に連続する態様であってもよい。
【0059】
図3に示すように、内側中間陸72の内側突出部120は、タイヤ幅方向断面が円弧状の突出面121を有する。内側突出部120の突出面121の円弧は、中央突出部110の突出面111と同じ曲率半径R1の円弧である。また、内側突出部120のプロファイルラインPLからの突出高さ、すなわち突出面121の頂点121aとプロファイルラインPLとの間の距離は、中央突出部110と同じH1である。頂点121aは、突出面121においてプロファイルラインPLから最もタイヤ径方向外側に離れて突出高さH1を形成する最外周部である。
【0060】
内側中間陸72の表面72Sは、内側突出部120の幅方向一方側(図3において左側)に、連続部として第3連続部72Aを有し、内側突出部120の幅方向他方側(図3において右側)に、連続部として第4連続部72Bを有する。第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、タイヤ周方向に連続する細い環状の面である。すなわち、内側中間陸72の表面72Sは、内側突出部120の突出面121と、内側突出部120の幅方向両側の第3連続部72Aおよび第4連続部72Bと、を含む。第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、内側突出部120の突出面121に連続している。第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、プロファイルラインPLに沿っている。すなわち、第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、プロファイルラインPL上に位置しており、かつプロファイルラインPLとパラレルに延びている。第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、内側中間陸72の表面72Sの、内側突出部120以外の部分を形成している。実施形態の第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、プロファイルラインPLに一致して延びているが、第3連続部72Aおよび第4連続部72Bは、プロファイルラインPL上またはプロファイルラインPLよりもタイヤ径方向外側の領域に存在して内側突出部120の突出面121に連続する態様であってもよい。
【0061】
図3に示すように、外側中間陸73の外側突出部130は、タイヤ幅方向断面が円弧状の突出面131を有する。外側突出部130の突出面131の円弧は、中央突出部110の突出面111および内側突出部120の突出面121と同じ曲率半径R1の円弧である。また、外側突出部130のプロファイルラインPLからの突出高さ、すなわち突出面131の頂点131aとプロファイルラインPLとの間の距離は、中央突出部110および内側突出部120と同じH1である。頂点131aは、突出面131においてプロファイルラインPLから最もタイヤ径方向外側に離れて突出高さH1を形成する最外周部である。
【0062】
外側中間陸73の表面73Sは、外側突出部130の幅方向一方側(図3において左側)に、連続部として第5連続部73Aを有し、外側突出部130の幅方向他方側(図3において右側)に、連続部として第6連続部73Bを有する。第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、タイヤ周方向に連続する細い環状の面である。すなわち、外側中間陸73の表面73Sは、外側突出部130の突出面131と、外側突出部130の幅方向両側の第5連続部73Aおよび第6連続部73Bと、を含む。第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、外側突出部130の突出面131に連続している。第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、プロファイルラインPLに沿っている。すなわち、第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、プロファイルラインPL上に位置しており、かつプロファイルラインPLとパラレルに延びている。第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、外側中間陸73の表面73Sの、外側突出部130以外の部分を形成している。実施形態の第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、プロファイルラインPLに一致して延びているが、第5連続部73Aおよび第6連続部73Bは、プロファイルラインPL上またはプロファイルラインPLよりもタイヤ径方向外側の領域に存在して外側突出部130の突出面131に連続する態様であってもよい。
【0063】
上述したように、中央突出部110の突出面111の曲率半径、内側突出部120の突出面121の曲率半径および外側突出部130の突出面131の曲率半径は、ともに同じR1である。実施形態においてこの曲率半径R1は、例えば151mmである。曲率半径R1は、例えば100mm以上300mm以下であることが好ましいが、この範囲に限定されない。なお、ここでいう曲率半径R1が同じであるということは、±50mmの差を含む数値であると定義する。
【0064】
上述したように、中央突出部110、内側突出部120および外側突出部130のプロファイルラインPLからの突出高さは、ともに同じH1である。実施形態においてこの突出高さH1は、例えば0.3mmである。突出高さH1は、例えば0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましいが、この範囲に限定されない。なお、ここでいう突出高さH1が同じであるということは、±0.04mmの差を含む数値であると定義する。
【0065】
中央陸71の中央突出部110において、プロファイルラインPLからの突出高さH1を形成する頂点111aは、中央陸71の幅方向中央に配置されている。内側中間陸72の内側突出部120において、プロファイルラインPLからの突出高さH1を形成する頂点121aは、内側中間陸72の幅方向中央に配置されている。外側中間陸73の外側突出部130において、プロファイルラインPLからの突出高さH1を形成する頂点131aは、外側中間陸73の幅方向中央に配置されている。
【0066】
図4は、突出部100の配置として、外側中間陸73の外側突出部130を代表として示している。図4に示すように、外側突出部130は外側中間陸73の幅方向中央に配置され、したがって外側突出部130の頂点131aは外側中間陸73の幅方向中央に配置される。これにより、外側突出部130の幅方向両側の第5連続部73Aと第6連続部73BのプロファイルラインPL上における長さは、互いに同じとなる。これは中央陸71および内側中間陸72も同様である。すなわち、中央陸71における中央突出部110の幅方向両側の第1連続部71Aと第2連続部71Bとは、プロファイルラインPL上の長さが互いに同じである。また、内側中間陸72における内側突出部120の幅方向両側の第3連続部72Aと第4連続部72Bとは、プロファイルラインPLの長さが互いに同じである。
【0067】
実施形態においては、3つの陸70のうちの、幅が最小である中央陸71の幅をWminとしたとき、下記式(1)を満たす。
Wmin≧4(2R1・H1-H1)・・・(1)
【0068】
上記実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0069】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ周方向に延びる複数の主溝60と、タイヤ幅方向において主溝60の間に配置される幅が異なる複数の陸70と、を有するトレッド30を備えた空気入りタイヤであって、複数の陸70のそれぞれは、タイヤ幅方向断面視においてトレッド30の仮想的な輪郭を示す仮想線であるプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側に凸の略円弧状に突出する突出部100を有し、複数の陸70のうちの少なくとも1つの陸70は連続部を有し、当該連続部は、プロファイルラインPL上に存在し、かつ突出面に連続しており、突出部のそれぞれは、当該突出部の表面を形成する突出面の曲率半径が同じであり、かつプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側に突出する突出高さH1が同じである。
【0070】
当該連続部は、突出部100のタイヤ幅方向両側に配置されており、中央陸71においては第1連続部71Aおよび第2連続部71Bであり、内側中間陸72においては第3連続部72Aおよび第4連続部72Bであり、外側中間陸73においては第5連続部73Aおよび第6連続部73Bである。実施形態においては、これら連続部がいずれもプロファイルラインPL上に位置して各突出部100の突出面に連続している。このため、幅の異なる陸70に突出部100を形成しても、突出部100の両側のプロファイルラインPLは連続部で保持される。その結果、陸70の表面にはプロファイルラインPLよりもタイヤ径方向内側に存在する部分はない状態となり、プロファイルラインPLが保持される。このため、接地性の低下が抑制される。そして接地性の低下が抑制されることにより、制動性が確保される。なお、連続部は、タイヤ周方向に延びる面であって、プロファイルラインPLに沿った面を有していることが好ましい。また、連続部はプロファイルラインPLに沿うように形成される。連続部の表面と、突出面における連続部との接続部付近の表面とのなす角は、鈍角であることが好ましい。
【0071】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、上記突出部100は、プロファイルラインPLから最もタイヤ径方向外側に離れて突出高さH1を形成する最外周部としての頂点を含み、この頂点が、陸70の幅方向中央に配置されている。
【0072】
当該頂点は、中央陸71においては中央突出部110の頂点111aであり、内側中間陸72においては内側突出部120の頂点121aであり、外側中間陸73においては外側突出部130の頂点131aである。実施形態においては、これら頂点がいずれも各陸70の幅方向中央に配置されていることにより、各陸70の表面が受ける接地圧を均等にすることができる。その結果、制動性を向上させることができる。
【0073】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、プロファイルラインPLからの突出部100の突出高さH1は、0.05mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0074】
これにより、接地性が向上して制動性が確保される。
【0075】
(4)実施形態に係るタイヤ1においては、複数の陸70のうち、幅が最小である陸70の幅をWmin、陸70のそれぞれのプロファイルラインPLからの突出部100の突出高さをH1、陸70のそれぞれの突出部100における突出面の曲率半径をR1としたとき、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Wmin≧4(2R1・H1-H1)・・・(1)
【0076】
これにより、幅が最小である陸70にも、プロファイルラインPL上に連続部を確保しつつ突出部100を設けることができ、プロファイルラインPLの長さを低減することが回避される。このため、接地性の低下が抑制され、制動性が確保される。
【0077】
(5)実施形態に係るタイヤ1においては、連続部は、プロファイルラインPLとパラレルに延びていることが好ましい。
【0078】
これにより、接地性が向上して制動性が確保される。
【0079】
(6)実施形態に係るタイヤ1においては、トレッド30は、複数の主溝60および複数の陸70が形成されるトレッドゴム36を含み、このトレッドゴム36は、20℃における貯蔵弾性率が75MPa以下であることが好ましい。
【0080】
これにより、トレッドゴム36が硬すぎて接地性が低下することが抑制され、接地性が確保される。
【0081】
以下に、図5を参照して、上記実施形態に基づく変形例を説明する。この変形例は上記実施形態の一部を変形させたものであり、それ以外は同一構成である。したがって以下の説明では上記実施形態と同一構成には同一の符号を付してそれらの説明は省略し、主に相違点のみを説明する。
【0082】
図5は、上記実施形態の外側中間陸73を示している。外側中間陸73は、突出面131と、外側中央主溝60Bに面する内側側壁面73Nと、外側中間主溝61Bに面する外側側壁面73Gと、を有する。外側中間陸73には、上記第5連続部73Aと内側側壁面73Nとのなす角部にあたる部分に、その角部を切り欠くような態様で面取り部73aが形成されている。この面取り部73aの表面73S側の端縁73a1はプロファイルラインPL上に存在し、第5連続部73Aに連続している。また、外側中間陸73には、上記第6連続部73Bと外側側壁面73Gとのなす角部にあたる部分に、その角部を切り欠くような態様で面取り部73bが形成されている。この面取り部73bの表面73S側の端縁73b1はプロファイルラインPL上に存在し、第6連続部73Bに連続している。
【0083】
(7)上記変形例は、外側中間陸73が、主溝60に面する内側側壁面73Nおよび外側側壁面73Gを含み、外側中間陸73は、第5連続部73Aと内側側壁面73Nとのなす角部にあたる部分、および第6連続部73Bと外側側壁面73Gとのなす角部にあたる部分のそれぞれに、当該角部を切り欠く態様の面取り部73a、73bを有する。
【0084】
これにより、外側突出部130に面取り部73a、73bを形成しても、プロファイルラインPLが確保されつつ外側突出部130が形成された状態となるため、接地性の低下が抑制され、制動性が確保される。
【0085】
なお、上記のような面取り部を有する構成は、中央陸71および内側中間陸72のいずれにも適用することができる。本実施形態においては、少なくとも最も幅の小さい中央陸71においては、面取り部を有する場合、各連続部71A、71Bが形成されない態様であってもよく、あるいは各連続部71A、71Bが形成される態様であってもよい。
【0086】
本発明は上記実施形態および変形例に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0087】
例えば、突出部100は、その突出面が完全な円弧面ではなく、例えばプロファイルラインPLから最も離れた最外周部が部分的に平坦な面を有する形状であってもよい。また、連続部は、プロファイルラインPL上に一部が存在する状態でもよく、全体がプロファイルラインPLからタイヤ径方向外側にずれていてもよい。さらに連続部はタイヤ径方向外側に凸の円弧状に形成されていてもよい。
【0088】
主溝60が少なくとも3つであって、陸70はこれに対応して少なくとも2つであってもよい。また、中央陸および中間陸の数は任意であるが、上記実施形態のように、少なくとも、タイヤ幅方向中央の中央陸と、この中央陸の幅方向両側の2つの中間陸と、を有する構成が望ましい。また、陸は、上記実施形態のようなタイヤ周方向に連続するリブ状の他に、タイヤ周方向に分割されているブロック等であってもよい。
【0089】
上記実施形態の構成は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用のタイヤとして採用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
30 トレッド
36 トレッドゴム
60 主溝
70 陸
71S、72S、73S 表面
71A 第1連続部(連続部)
71B 第2連続部(連続部)
72A 第3連続部(連続部)
72B 第4連続部(連続部)
73A 第5連続部(連続部)
73B 第6連続部(連続部)
71N 内側側壁面(側壁面)
71G 外側側壁面(側壁面)
72N 内側側壁面(側壁面)
72G 外側側壁面(側壁面)
73N 内側側壁面(側壁面)
73G 外側側壁面(側壁面)
73a 面取り部
73b 面取り部
73a1 面取り部の端縁
73b1 面取り部の端縁
100 突出部
111、121、131 突出面
111a、121a、131a 頂点(最外周部)
H1 突出部の突出高さ
PL プロファイルライン
R1 突出面の曲率半径
図1
図2
図3
図4
図5