IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像検査装置 図1
  • 特開-画像検査装置 図2
  • 特開-画像検査装置 図3A
  • 特開-画像検査装置 図3B
  • 特開-画像検査装置 図4
  • 特開-画像検査装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065376
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像検査装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240508BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240508BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240508BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240508BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/00 002A
B41J29/393 105
B41J29/38 301
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174213
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 直輝
【テーマコード(参考)】
2C061
2G051
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR03
2C061HV01
2C061HV32
2C061HV46
2C061KK13
2C061KK14
2C061KK26
2C061KK28
2C061KK35
2G051AA34
2G051AB11
2G051CA04
2G051EC01
5C062AA05
5C062AB05
5C062AB41
5C062AB42
5C062AB43
5C062AB44
5C062AC02
5C062AC22
5C062AC56
5C062AC61
5C062AC64
5C062AC72
5C062AF15
5C072AA01
5C072BA20
5C072DA25
5C072EA07
5C072EA08
5C072FB25
5C072NA01
5C072NA04
5C072QA14
5C072RA18
5C072UA13
5C072UA17
5C072UA18
5C072WA02
5C072XA01
5C072XA04
(57)【要約】
【課題】検査結果が悪化した原因の装置を特定して、原因を解消する際の作業の軽減化を図る。
【解決手段】印刷部において画像が形成された被検査物Mを搬送する搬送部11,12と、搬送部11,12で搬送される被検査物Mの画像OB11,OB13を撮像する撮像部131,141と、撮像部131,141で撮像された画像OB11,OB13の撮影データと、印刷部における画像OB11,OB13の形成時に使用された画像データPD11とを比較検査する画像検査部15と、画像検査部15が不良と判定した不良画素E11~E15,E21の数に基づいて印刷部か搬送部11,12どちらに不良の原因があるかを特定し、不良の原因の特定は、不良画素数が検査閾値以上であった場合は搬送部11,12、検査閾値未満であった場合は印刷部であるとし、特定した原因に応じた、不良を解消する復旧動作の制御を行う制御部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部において画像が形成された被検査物を搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送される前記被検査物の前記画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記画像の撮影データと、前記印刷部における前記画像の形成時に使用された画像データとを比較検査する画像検査部と、
前記画像検査部が不良と判定した不良画素数に基づいて印刷部か搬送部どちらに不良の原因があるかを特定し、前記不良の原因の特定は、不良画素数が検査閾値以上であった場合は搬送部、前記検査閾値未満であった場合は印刷部であるとし、特定した原因に応じた、不良を解消する復旧動作の制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート上の被検査物に形成された画像を、検査部のカメラ等で撮影して検査する装置において、搬送ベルトによって搬送される被検査物を、画像を撮影する被写界深度内に配置するための構成が知られている。例えば、特許文献1の画像検査装置では、搬送ベルトの裏側に配置されるプラテンの四隅にそれぞれ連結した吊線を、検査部を搭載した支持部の滑車で巻き取って、支持部の四隅の支持脚部の先端にプラテンを押し付ける構成を提案している。
【0003】
特許文献1の画像検査装置では、各支持脚部の先端面で規定される仮想平面と一致するようにプラテンを位置決めし固定すると、搬送ベルト上の被検査物と検査部との距離が一定の値となる。被検査物と検査部とが一定の距離となることで、例えば、被写界深度が低いCIS(Contact Image Sensor、以下同じ。)を検査部のデバイスに用いた場合でも、被検査物に形成された画像の検査を所期の精度で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-32634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラテンの位置決めに関係する構造部分において、部品の経年劣化、動作不良等が発生すると、位置決めしたプラテンの位置が仮想平面からずれて、検査部のカメラの被写界深度からずれた位置に被検査物が配置されてしまう可能性がある。被検査物の位置が被写界深度からずれると、カメラによる被検査物の撮影画像が焦点ずれでぼやけ、撮影画像を用いた画像検査において、良好な検査結果が得られなくなる。検査結果が悪化した場合は、検査結果が悪化した原因を特定して、原因を解消する対策を講じる必要がある。
【0006】
画像検査装置における検査結果が悪化する原因は、画像検査装置で起こるとは限らない。検査結果が悪化した原因を解消する復旧作業を行う場合は、原因となった装置を特定する必要がある。復旧作業の作業員が原因となった装置の特定作業も行うとなると、作業員の負担が大きくなり、復旧作業が終わるまでにかかる時間が長くなる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、検査結果が悪化した原因の装置を特定して、原因を解消する際の作業の軽減化を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様による画像検査装置は、
印刷部において画像が形成された被検査物を搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送される前記被検査物の前記画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記画像の撮影データと、前記印刷部における前記画像の形成時に使用された画像データとを比較検査する画像検査部と、
前記画像検査部が不良と判定した不良画素数に基づいて印刷部か搬送部どちらに不良の原因があるかを特定し、前記不良の原因の特定は、不良画素数が検査閾値以上であった場合は搬送部、前記検査閾値未満であった場合は印刷部であるとし、特定した原因に応じた、不良を解消する復旧動作の制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検査結果が悪化した原因の装置を特定して、原因を解消する際の作業の軽減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る画像検査装置の概略構成の一例を示す構成図である。
図2図2は、図1の画像検査装置のマイクロコントローラによって実行される処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、印刷装置における画像の印刷時に汚れが生じた媒体の比較検査を説明する図である。
図3B図3Bは、図1の画像検査装置においてプラテンの位置ずれが生じた場合の媒体の比較検査を説明する図である。
図4図4は、図1の画像検査装置が出力する比較検査の種類と検査結果に応じて指示する復旧動作の内容とを示す図である。
図5図5は、図1の画像検査装置がアラートを発行する際の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1に示す実施形態の画像検査装置10は、不図示の印刷装置(印刷部)において被検査物である媒体Mに印刷(形成)された画像を検査する。媒体Mは、例えば、枚葉用紙(カット紙)とすることができる。印刷装置は、媒体Mの片面又は両面に画像を印刷することができる。
【0014】
画像検査装置10は、第1搬送部11と、第2搬送部12と、第1検査部13と、第2検査部14と、コントローラ15とを備える。画像検査装置10は、給紙口16及び排紙口17をさらに有している。給紙口16,17は、例えば、画像検査装置10の左右の側部に振り分けて配置することができる。媒体Mは、画像検査装置10の内部の搬送経路Rを、給紙口16から排紙口17に向けて水平に搬送される。
【0015】
第1搬送部11及び第2搬送部12は、不図示の印刷装置において画像が印刷された媒体Mを搬送する搬送部を構成する。
【0016】
第1搬送部11は、画像検査装置10内に設けられ、搬送経路Rの給紙口16寄りの部分の下側に配置されている。第2搬送部12は、画像検査装置10内に設けられ、搬送経路Rの排紙口17寄りの部分の上側に配置されている。第1搬送部11は、搬送ベルト111、プラテン112及び昇降部113を有している。第2搬送部12は、搬送ベルト121、プラテン122及び昇降部123を有している。
【0017】
搬送ベルト111は、一対の搬送ローラ114,114及び一対のガイドローラ115,115に掛け渡された無端のベルトで構成することができる。プラテン112は、搬送ベルト111の一対の搬送ローラ114,114間の部分の裏側に、搬送経路Rと並行に配置されている。
【0018】
搬送ベルト121は、一対の搬送ローラ124,124及び一対のガイドローラ125,125に掛け渡された無端のベルトで構成することができる。プラテン122は、搬送ベルト121の一対の搬送ローラ124,124間の部分の裏側に、搬送経路Rと並行に配置されている。
【0019】
搬送ベルト111は、例えば、給紙口16から給紙された媒体Mを、搬送ローラ114間の部分に吸着して、搬送経路Rの途中まで搬送することができる。搬送ベルト121は、例えば、搬送経路Rの途中まで搬送されて搬送ベルト111から離脱した媒体Mを、搬送ローラ124間の部分に吸着して、搬送経路Rの途中から排紙口17まで搬送することができる。
【0020】
昇降部113は、プラテン112を昇降させて、搬送ベルト111の搬送ローラ114,114間の部分を上下に移動させることができる。昇降部123は、プラテン122を昇降させて、搬送ベルト121の搬送ローラ124,124間の部分を上下に移動させることができる。昇降部113,123の構成については後述する。
【0021】
第1検査部13は、搬送経路Rの給紙口16寄りの部分の上側に配置されている。第1検査部13は、搬送ベルト111の搬送ローラ114,114間の部分と対向している。第1検査部13は、ラインカメラ131及びエリアカメラ132を有している。
【0022】
第2検査部14は、搬送経路Rの排紙口17寄りの部分の下側に配置されている。第2検査部14は、搬送ベルト121の搬送ローラ124,124間の部分と対向している。第2検査部14は、ラインカメラ141及びエリアカメラ142を有している。
【0023】
ラインカメラ131,141は、例えば、CISによって構成することができる。CISは、ライン状のセンサアレイを有するイメージセンサである。ラインカメラ131,141は、センサアレイの長手方向を媒体Mの幅方向に向けて配置されている。媒体Mの幅方向は、搬送ベルト111,121に吸着された媒体Mの搬送方向Xと直交する。ラインカメラ131,141は、媒体Mの画像の幅方向における全幅以上の長さを有している。
【0024】
ラインカメラ131は、搬送ベルト111による媒体Mの搬送中に、媒体Mの上面に印刷された画像を搬送方向Xの全長に亘って走査して、上面の画像の全体を読み取ることができる。ラインカメラ141は、搬送ベルト121による媒体Mの搬送中に、媒体Mの下面に印刷された画像を媒体Mの搬送方向Xの全長に亘って走査して、下面の画像の全体を読み取ることができる。ラインカメラ131,141が読み取った画像データは、画像の検査に用いることができる。
【0025】
エリアカメラ132,142は、例えば、マトリクス状のアレイを有するイメージセンサで構成することができる。エリアカメラ132は、搬送ベルト111による搬送中の媒体Mの上面から、例えば、上面の所定の部分に印刷された文字、コード等を読み取ることができる。エリアカメラ142は、搬送ベルト121による搬送中の媒体Mの下面から、例えば、下面の所定の部分に形成された文字、コード等を読み取ることができる。エリアカメラ132,142がそれぞれ読み取った文字、コード等の画像データは、例えば、媒体Mの上面の画像と下面の画像とが整合しているか否かの検査に用いることができる。
【0026】
本実施形態では、ラインカメラ131,141が、搬送部で搬送される被検査物の画像を撮像する撮像部を構成する。ラインカメラ131,141が読み取った画像データは、撮像部で撮像された画像の撮影データに該当する。
【0027】
昇降部113,123は、例えば、先行技術文献に挙げた特許文献1の、プラテンの四隅の吊線を巻き取って位置決めする構造を利用して構成している。特許文献1の構造を利用した昇降部113,123では、例えば、プラテン112,122の四隅の吊線を、第1検査部13の支持部及び第2検査部14の支持部(いずれも図示せず)の滑車でそれぞれ巻き取る。吊線の巻き取りにより、支持部の四隅の支持脚部にプラテン112,122を押し付けると、各支持脚部の先端面で規定される仮想平面にプラテン112,122を位置決めすることができる。
【0028】
プラテン112,122を仮想平面に位置決めすると、搬送ベルト111,121による搬送中の媒体Mが、ラインカメラ131,141及びエリアカメラ132,142の被写界深度内に配置される。
【0029】
コントローラ15は、例えば、汎用のマイクロコントローラを有している。マイクロコントローラは、CPU(Central Processing Unit )及びメモリを備える。メモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。マイクロコントローラは、メモリに記憶させたプログラムをCPUが実行することで、複数の情報処理回路を仮想的に構築することができる。
【0030】
本実施形態では、マイクロコントローラに構築される複数の情報処理回路をソフトウェアによって実現する例を示す。もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。専用のハードウェアは、各情報処理回路の機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC;Application Specific Integrated Circuit )、従来型の回路部品のような装置を含む。
【0031】
コントローラ15のマイクロコントローラは、仮想的に構築する複数の情報処理回路により、画像検査部及び制御部を構成することができる。
【0032】
画像検査部は、撮像部を構成するラインカメラ131,141が媒体Mの上面及び下面からそれぞれ読み取った画像のデータと、印刷装置における媒体Mの上面及び下面に対する画像の印刷時に使用された印刷データとを比較検査する。画像検査部は、媒体Mの上面及び下面の印刷データを印刷装置から取得することができる。印刷データは、印刷部における画像の形成時に使用された画像データに該当する。
【0033】
画像検査部は、媒体Mの上面及び下面のそれぞれについて、ラインカメラ131,141が読み取った画像のデータの画素値と印刷データの画素値とを、画像中の同じ位置に対応する画素同士で比較する。画像検査部は、例えば、同一面の同一画素において、画像のデータの画素値と印刷データの画素値との比較結果が不良である画素を検出する。比較結果が不良であるとは、例えば、画像のデータの画素値と印刷データの画素値とが、所定の閾値以上異なることを言うものとすることができる。
【0034】
例えば、不図示の印刷装置における画像の印刷の際に媒体Mに汚れが生じると、その汚れは、比較結果が不良である不良画素数が増加する原因となる。
【0035】
印刷時の媒体Mの汚れは、例えば、インクジェット方式の印刷装置において、インク液滴のサテライトが媒体Mのインク液滴の着弾位置からずれた位置に着弾すること、媒体Mがインクジェットヘッドに接触することが原因で発生する。印刷時の媒体Mの汚れは、インクジェットヘッドの吐出面に付着した残存インクが媒体Mに落下、付着することが原因で発生する場合もある。印刷時の媒体Mの汚れは、例えば、印刷装置におけるクリーニング動作によって解消を図ることができる。クリーニング動作は、例えば、インクジェットヘッドを対象に含むことができる。クリーニング動作の対象は、インクジェットヘッド以外を含んでいてもよい。
【0036】
印刷装置で媒体Mに印刷した画像の一部に欠けが生じると、その欠けも、比較結果が不良である不良画素数が増加する原因となる。画像の欠けは、例えば、画像の印刷の際に媒体Mに付着していた紙粉等が、印刷後の媒体Mから脱落することで発生する。
【0037】
本実施形態の画像検査装置10では、昇降部113,123を構成する構造部分に、部品の経年劣化、動作不良等が発生すると、吊線の巻き取りによって位置決めされたプラテン112,122の位置が、仮想平面の位置からずれる場合がある。位置決めされたプラテン112,122の位置が仮想平面からずれると、搬送ベルト111,121による搬送中の媒体Mが、ラインカメラ131,141及びエリアカメラ132,142の被写界深度内に配置されなくなる可能性がある。
【0038】
特に、搬送経路Rの上側に配置される第1検査部13の昇降部113は、吊線により吊り下げたプラテン112を重力に逆らって不図示の支持部に当接させる仕組みを採用しているので、経年劣化、動作不良による位置ずれが生じやすい。
【0039】
搬送中の媒体Mがラインカメラ131,141の被写界深度内に配置されないと、ラインカメラ131,141が読み取った媒体Mの画像が、焦点ずれによってぼやける。ラインカメラ131,141が読み取った媒体Mの画像がぼやけると、ラインカメラ131,141が読み取った画像のデータの画素値と印刷データの画素値とが、画像の同じ位置に対応する画素同士で一致しにくくなる。ラインカメラ131,141が読み取った媒体Mの画像のぼやけは、比較結果が不良である不良画素数が増加する原因となる。
【0040】
不良画素数が増加した場合、不良画素における画素値の比較結果が不良となった原因は、上述したように、印刷装置側にある場合もあれば、画像検査装置10側にある場合もある。不良画素における比較結果が不良となった原因を解消する復旧作業は、原因が発生した装置を特定して行う必要がある。
【0041】
制御部は、比較結果が不良であると判定した不良画素数に基づいて、不図示の印刷装置と画像検査装置10の搬送部(第1搬送部11及び第2搬送部12)とのどちらに、比較結果が不良となった原因があるかを特定する。制御部は、不良画素数が検査閾値以上であった場合は、搬送部に不良の原因があると特定し、不良画素数が検査閾値未満であった場合は、印刷装置に不良の原因があると特定する。制御部は、特定した原因に応じた、不良を解消する復旧動作の制御を行う。復旧動作の制御の内容は後述する。
【0042】
次に、不図示の印刷装置と画像検査装置10とが連携して行う画像検査及び復旧動作制御に関する処理の手順の一例を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、不図示の印刷装置は、メンテナンスモードの設定を確認する(ステップS101)。メンテナンスモードの設定が無効である場合は、画像検査及び復旧動作制御に関する一連の処理を終了する。メンテナンスモードの設定が有効である場合は、印刷装置は、比較検査による画像検査に用いる比較用画像の印刷データを登録する(ステップS103)。
【0044】
次に、コントローラ15は、比較用画像を用いた画像検査結果の連続NG(不良)回数が、閾値未満か閾値以上(超過)かを確認する(ステップS105)。画像検査結果の連続NG(不良)回数が閾値以上(超過)ならば、不良の再現率が高いので、検査結果がNG(不良)となった原因が、不確定要因によるものではなく、ハード的な不具合によるものであると考えることができる。
【0045】
ハード的な不具合とは、例えば、先に説明した、印刷装置の印刷時に発生する媒体Mの汚れ、画像の欠け、あるいは、画像検査装置10のラインカメラ131,141が読み取った媒体Mの画像のぼやけが発生する原因となる不具合である。
【0046】
画像検査結果の連続NG(不良)回数が閾値未満の場合は、画像検査及び復旧動作制御に関する一連の処理を終了する。閾値以上(超過)の場合は、比較用画像の印刷データを用いて、媒体Mに撮像用データの画像を印刷する(ステップS107)。画像の印刷は、片面印刷(媒体Mの上面のみ)で行ってもよく、両面印刷(媒体Mの上面及び下面)で行ってもよい。
【0047】
続いて、画像検査装置10のコントローラ15が、画像検査部において、撮像用データの画像を印刷した媒体Mについて、比較検査によって、比較用データと撮像用データとを比較(検査)する(ステップS109)。比較検査は、ラインカメラ131,141が媒体Mから読み取った画像のデータと、印刷装置(印刷部)における媒体Mに対する画像の印刷(形成)時に使用された印刷データとを、画像中の同じ位置に対応する画素同士で比較することで行うことができる。比較検査では、画像のデータの画素値と印刷データの画素値とが不一致である画素数(不良画素数)をカウントする。
【0048】
なお、媒体Mが片面印刷である場合は、比較検査を媒体Mの上面について行う。媒体Mが両面印刷である場合は、比較検査を媒体Mの上面及び下面の両方について行う。
【0049】
図3Aは、印刷装置における画像の印刷時に汚れが生じた媒体Mの比較検査を説明する図である。図3Aの一番左に示す媒体Mには、「A」の画像OB11(印刷部において被検査物に形成された画像)の印刷時に、サテライトによるドットD11~D15が付着している。画像OB11が媒体Mの上面に印刷されている場合、画像検査装置10のラインカメラ131は、画像OB11と一緒にドットD11~D15を媒体Mの上面から読み取る。
【0050】
一方、図3Aの中央に示す、印刷装置が画像OB11の印刷に用いた印刷データPD11は、画像OB11に対応する画素のイメージデータPI11のみを有しており、ドットD11~D15に対応する画素のイメージデータは有していない。
【0051】
画像検査装置10のラインカメラ131が媒体Mの上面から読み取った画像のデータと印刷データPD11の比較検査は、ラインカメラ131が読み取った画像のデータと印刷データPD11との比較によって行う。ラインカメラ131が読み取った画像のデータと印刷データPD11とを重ねた、図3Aの一番右に示す検査用データCD11のように、ドットD11~15に対応する画素部分には、画素値が一致しない不良箇所E11~E15が発生する。不良箇所E11~E15は、画像検査部が不良と判定した不良画素に該当する。
【0052】
図3Bは、画像検査装置10においてプラテン112の位置ずれが生じた場合の媒体Mの比較検査を説明する図である。画像検査装置10のラインカメラ131が撮影する媒体Mの上面は、プラテン112の位置ずれによってラインカメラ131の被写界深度からはずれる。図3Bの一番左に示すように、媒体Mの上面に「A」の画像OB13(印刷部において被検査物に形成された画像)が印刷されている場合、ラインカメラ131が媒体Mの上面から読み取る画像OB11は、焦点ずれによりぼやける。図3Bの中央に示すように、ラインカメラ131による媒体Mの上面の撮影画像のデータSD11上では、ぼやけた「A」の画像SI11が、元の画像OB11よりも大きい輪郭となる。
【0053】
画像検査装置10のラインカメラ131が媒体Mの上面から読み取った画像のデータと印刷データPD11の比較検査では、図3Bの一番右に示す検査用データCD21のように、画像OB13の輪郭に沿って、画素値が一致しない不良箇所E21が発生する。不良箇所E21は、画像検査部が不良と判定した不良画素に該当する。
【0054】
以上から、媒体Mの汚れが原因で比較検査の結果がNG(不良)となる場合、不良箇所E11~E15は、ドットD11~D15の数に応じた比較的少ない画素数となる。媒体Mの画像OB11に生じた欠けが原因で比較検査の結果がNG(不良)となる場合も、欠けが生じた画素に応じた数しか不良箇所が発生しないので、不良箇所は比較的少ない画素数となる。
【0055】
なお、例えば、不良箇所が画像OB11の中と外のどちらの画素であるかを、媒体Mの汚れと画像OB11の欠けとのどちらが原因かを見分ける目安にすることができる。つまり、比較検査は、媒体Mの汚れの比較検査と画像OB11の欠けの比較検査とに分けて行うこともできる。
【0056】
一方、媒体Mがラインカメラ131,141の被写界深度の外に配置されたことが原因で、比較検査の結果がNG(不良)となる場合、不良箇所E21は、画像OB11の輪郭の長さに応じた比較的多い画素数となる。
【0057】
比較検査の結果がNG(不良)となった不良箇所の画素数は、比較検査の結果がNG(不良)となった原因が印刷装置にあるか否か、あるいは、画像検査装置10にあるか否か、を判定する際の目安にすることができる。
【0058】
例えば、不良箇所の画素数が5以下である場合は、比較検査の結果がNG(不良)となった原因が印刷装置にあると判定することとしてもよい。また、不良箇所の画素数が50に達した場合は、比較検査の結果がNG(不良)となった原因が画像検査装置10にあると判定することとしてもよい。
【0059】
画像検査装置10のコントローラ15は、画像検査部において、検査NG検出数(不良画素数)が最大値であるか否かを確認する(ステップS111)。検査NG検出数の最大値は、システム的に決められた数(=検査閾値)であり、画像のビットマップの画素値が同一画素において一致するか否かの検査において、不一致の画素数をカウントする際の上限数である。検査NG検出数の最大値は、例えば、上述した50とすることができる。検査NG検出数の最大値は、検査閾値に該当する。
【0060】
検査NG検出数(不良画素数)が最大値でない場合は(ステップS111でNO)、画像検査装置10に原因がないものとして、画像検査装置10のコントローラ15は、印刷装置に対し、復旧動作としてのクリーニング動作を指示する(ステップS113)。
【0061】
媒体Mの汚れの比較検査と画像OB11の欠けの比較検査とを分けて行う場合、コントローラ15は、クリーニング動作の指示の内容を区別してもよい。例えば、媒体Mの汚れの比較検査の結果でクリーニング動作を指示する場合は、図4に示すように、媒体Mへのインクのぼた落ち、媒体Mのインクジェットヘッドへの接触による汚れを抑制する内容のクリーニング動作を指示することができる。画像OB11の欠けの比較検査の結果でクリーニング動作を指示する場合は、媒体Mへの紙粉の付着等による印刷抜けを抑制する内容のクリーニング動作を指示することができる。
【0062】
画像検査装置10からのクリーニング動作の指示を受け取った印刷装置では、媒体Mの汚れ、あるいは、媒体Mに印刷した画像の印刷欠けにそれぞれ対応したクリーニングを、復旧動作(リカバリーアクション)として行うことができる。復旧動作は、例えば、メンテナンスモードの設定が有効とされた印刷装置において、画像検査装置10からの指示に基づいた制御の下に、自動で行わせることができる。
【0063】
コントローラ15は、クリーニング動作の指示後にステップS109にリターンし、比較検査を再び行う。再び行った比較検査でも検査結果がNG(不良)となる状態が続く場合は、画像検査装置10のコントローラ15は、印刷装置における不良が解消しないと推測し、印刷装置にエラーが起こったとのアラートを発行する(ステップS115)。アラートの発行後、画像検査及び復旧動作制御に関する一連の処理を終了する。
【0064】
ステップS111において、検査NG検出数(不良画素数)が最大値である場合(YES)は、コントローラ15は、画像検査装置10に原因があるものとして、検査結果がNG(不良)となったのが第1プラテン側か否かを確認する(ステップS117)。
【0065】
第1プラテン側とは、第1搬送部11のプラテン112(第1プラテン)に対応する第1検査部13側であることを意味する。第1プラテン側ならば、媒体Mの上面において、検査結果がNG(不良)になったことになる。第1プラテン側でないとは、第2プラテン側であることを意味する。第2プラテン側とは、第2搬送部12のプラテン122(第2プラテン)に対応する第2検査部14側であることを意味する。第2プラテン側ならば、媒体Mの下面において、検査結果がNG(不良)になったことになる。
【0066】
検査結果がNG(不良)となったのが第1プラテン側である場合は(ステップS117でYES)、コントローラ15は、復旧動作として、第1プラテン側のベルトプラテンの再動作を指示する(ステップS119)。第1プラテン側のベルトプラテンとは、第1搬送部11のプラテン112である。第1プラテン側のベルトプラテンの再動作とは、プラテン112を位置決めし直す動作である。ベルトプラテンの再動作により、プラテン112が仮想位置に戻り、搬送ベルト111による搬送中の媒体Mがラインカメラ131の被写界深度内に再び配置されて、ラインカメラ131内での媒体Mの画像の焦点ずれが解消されることを図る。
【0067】
コントローラ15は、第1プラテン側のベルトプラテンの再動作の指示後にステップS109にリターンし、比較検査を再び行う。再び行った比較検査でも検査結果がNG(不良)となる状態が続く場合は、画像検査装置10のコントローラ15は、第1プラテン側における不良が解消しないと推測する。そして、コントローラ15は、第1搬送部11のプラテン112にエラーが起こったとのアラートを発行する(ステップS121)。アラートの発行後、画像検査及び復旧動作制御に関する一連の処理を終了する。
【0068】
検査結果がNG(不良)となったのが第1プラテン側でない場合は(ステップS117でNO)、コントローラ15は、復旧動作として、第2プラテン側のベルトプラテンの再動作を指示する(ステップS123)。第2プラテン側のベルトプラテンとは、第2搬送部12のプラテン122である。第2プラテン側のベルトプラテンの再動作とは、プラテン122を位置決めし直す動作である。ベルトプラテンの再動作により、プラテン122が仮想位置に戻り、搬送ベルト121による搬送中の媒体Mがラインカメラ141の被写界深度内に再び配置されて、ラインカメラ141内での媒体Mの画像の焦点ずれが解消されることを図る。
【0069】
コントローラ15は、第2プラテン側のベルトプラテンの再動作の指示後にステップS109にリターンし、比較検査を再び行う。再び行った比較検査でも検査結果がNG(不良)となる状態が続く場合は、画像検査装置10のコントローラ15は、第2プラテン側における不良が解消しないと推測する。そして、コントローラ15は、第2搬送部12のプラテン122にエラーが起こったとのアラートを発行する(ステップS125)。アラートの発行後、画像検査及び復旧動作制御に関する一連の処理を終了する。
【0070】
図5は、画像検査装置10のコントローラ15がアラートを発行する際の手順の一例を示すフローチャートである。図5では、図2のステップS109~ステップS125で行う手順を整理して示している。
【0071】
上述したように、画像検査装置10で画像検査部が行う比較検査の結果がNG(不良)場合、コントローラ15は、不良を解消する復旧動作を制御するリカバリアクションを行う。図2のステップS113、ステップS119及びステップS123でコントローラ15が行う指示は、1回目のリカバリアクションに該当する。
【0072】
図5に示すように、コントローラ15は、画像検査部が行う比較検査(ステップS201)の結果がNG(不良)である場合(ステップS203でYES)、不良を解消する復旧動作を制御する1回目のリカバリアクションを行う(ステップS205)。比較検査の結果がNG(不良)でない場合(ステップS203でNO)は、ステップS205をスキップする。
【0073】
次に、コントローラ15は、画像検査部が再び行う比較検査(ステップS207)の結果がNG(不良)である場合(ステップS209でYES)、2回目のリカバリアクションを行う(ステップS211)。図4のステップS115、ステップS121及びステップS125でコントローラ15が行うアラートの発行は、2回目のリカバリアクションに該当する。再び行う比較検査の結果がNG(不良)でない場合(ステップS209でNO)は、一連の処理を終了する。
【0074】
以上に説明した本実施形態の画像検査装置10では、比較検査の結果がNG(不良)となった原因の装置を特定して、原因を解消する際の作業の軽減化を図ることができる。
【0075】
なお、印刷装置で媒体Mに片面印刷のみを行う場合、画像検査装置10の第2検査部14は不要であり、第2搬送部12も、第1搬送部11を搬送経路Rの全長に亘るものとする代わりに省略することができる。
【0076】
本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0077】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0078】
即ち、一つの態様の発明として、
印刷部において画像が形成された被検査物を搬送する搬送部と、
前記搬送部で搬送される前記被検査物の前記画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記画像の撮影データと、前記印刷部における前記画像の形成時に使用された画像データとを比較検査する画像検査部と、
前記画像検査部が不良と判定した不良画素数に基づいて印刷部か搬送部どちらに不良の原因があるかを特定し、前記不良の原因の特定は、不良画素数が検査閾値以上であった場合は搬送部、前記検査閾値未満であった場合は印刷部であるとし、特定した原因に応じた、不良を解消する復旧動作の制御を行う制御部と、
を備える画像検査装置が開示される。
【0079】
そして、上記態様による発明によれば、検査結果が悪化した原因の装置を特定して、原因を解消する際の作業の軽減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 画像検査装置
11 第1搬送部(搬送部)
12 第2搬送部(搬送部)
15 コントローラ(画像検査部、制御部)
131,141 ラインカメラ(撮像部)
E11~E15,E21 不良箇所(不良画素)
M 媒体(被検査物)
OB11,OB13 画像(印刷部において被検査物に形成された画像)
PD11 印刷データ(印刷部における画像の形成時に使用された画像データ)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5