(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065380
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240508BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
C08J5/18 CEV
C08L27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174217
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 真一
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】石倉 憲秀
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA24
4F071AA31
4F071AC09
4F071AC10
4F071AC12
4F071AD02
4F071AD06
4F071AE04
4F071AE05
4F071AE10
4F071AE11
4F071AE16
4F071AF19Y
4F071AF28
4F071AF30
4F071AF53
4F071AF58
4F071AH01
4F071AH04
4F071BA09
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC12
4J002BD041
4J002BD051
4J002BD061
4J002BD071
4J002BD081
4J002BD091
4J002BG002
4J002EH096
4J002EH146
4J002EP007
4J002EW046
4J002FA002
4J002FD026
4J002FD060
4J002FD170
4J002FD177
4J002GA01
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、フィルム成形時に打粉することなく、運搬時や保管時の期間や環境に関係なくフィルム同士の粘着を抑制できる塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂と可塑剤とアクリル系微粒子を含有する塩化ビニル系樹脂フィルムであって、前記アクリル系微粒子は、平均粒子径が5μm以上50μm以下であり、縦200mm、横150mm、厚さ0.3mmにカットした前記塩化ビニル系樹脂フィルムを2枚重ねて厚さ3mmのガラス板で挟み、5kgの荷重を加えた状態で60℃のオーブンで24時間加熱した後、当該フィルムを重ねたまま縦30mm、横70mmにカットし、万能試験機を用いて、当該フィルムの端部を1cmめくって各々をつかみ具に固定し、上下方向に引きはがし速度200mm/minで引きはがしたときの剥離強度が、0.50N以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂と可塑剤とアクリル系微粒子を含有する塩化ビニル系樹脂フィルムであって、
前記アクリル系微粒子は、平均粒子径が5μm以上50μm以下であり、
縦200mm、横150mm、厚さ0.3mmにカットした前記塩化ビニル系樹脂フィルムを2枚重ねて厚さ3mmのガラス板で挟み、5kgの荷重を加えた状態で60℃のオーブンで24時間加熱した後、当該フィルムを重ねたまま縦30mm、横70mmにカットし、万能試験機を用いて、当該フィルムの端部を1cmめくって各々をつかみ具に固定し、上下方向に引きはがし速度200mm/minで引きはがしたときの剥離強度が、0.50N以下であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項2】
前記アクリル系微粒子の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上1.0質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
【請求項3】
さらに脂肪酸アミドを、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上2.00質量部以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ビニル系樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム同士の密着性が抑制された塩化ビニル系樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂フィルムは、透明性に優れると共に機械的強度も高く、しかも安価であり、従来から農業用、ブックカバー用、各種ファイル用、定期入れ用、あるいはパスポートや車等の免許書入れ用、その他各種の分野において広く使用されている。
その一方で、塩化ビニル系樹脂フィルムは、柔軟性を付与するために添加されている可塑剤が経時でフィルム表面に移行しやすく、そのため、塩化ビニル系樹脂フィルム同士は粘着しやすい。特に、塩化ビニル系樹脂フィルムを裁断、印刷、溶着等の二次加工する場合において、塩化ビニル系樹脂フィルムを成形時に巻き取られたロールから巻き出す際(解反時)や、枚葉にカットされた塩化ビニル系樹脂フィルムを積層した状態から一枚ずつフィルムを取り出す際など、粘着したフィルム同士を剥がすのに手間がかかっていた。
【0003】
そこで、従来、塩化ビニル系樹脂フィルムの成形に際して、フィルム同士を滑りやすくするために、該樹脂にタルク、シリカ等の無機質充填剤やアクリル系微粒子を配合したり、成形時に打粉をしたり、あるいは成形後のフィルム表面に上記の無機質充填剤やアクリル系微粒子を配合した塗料を塗布して、該フィルムに上記無機質充填剤やアクリル系微粒子による凹凸を付与するなどして、フィルム表面のスリップ性を確保していた。
【0004】
このようにスリップ性を有する塩化ビニル系樹脂フィルムであれば、当該フィルムを二次加工する際の、裁断工程、印刷工程、溶着工程等の各工程におけるフィルムの扱いが容易となり、粘着したフィルム同士を剥がす手間が軽減できる。
しかしながら、運搬時や保管時の期間や環境によってはスリップ性を発揮できず、フィルム同士が粘着してしまう虞があった。例えば、当該フィルムを成形した後は、直ちに次の加工工程に供されることもあるが、別の加工先に運搬されることや倉庫などに保管されたのち加工工程に供される場合、フィルム同士を重ねて、或いはロール状に巻き取った状態のまま、すなわち積層されたフィルムに荷重が加わっている状態のままであると、運搬時や保管時の温度が高いことが相まって、フィルム同士の粘着を誘引されることが想定される。
【0005】
また、フィルム成形時に打粉をしてスリップ性を付与したフィルムであれば、フィルム同士の粘着を抑制しやすいが、その一方で、まんべんなく均一に打粉することは困難であるため、粉の付着が少ない箇所はべたつきが発生し、粉の付着が多い箇所では外観が劣るなどのばらつきが生じてしまうと、その部分を除外して良品を確保しなくてはならなかった。さらに、二次加工時において、例えば溶着加工の際、粉がガイドロールに蓄積し衝撃等で生地に落下(ボタ落ち)することがあり、その除去のための検品に手間がかかっていた。このように、フィルム成形時に打粉をしてスリップ性を付与したフィルムでは、フィルム成形時の歩留まり向上や二次加工時における手間の軽減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フィルム成形時に打粉することなく、運搬時や保管時の期間や環境に関係なくフィルム同士の粘着を抑制できる塩化ビニル系樹脂フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とアクリル系微粒子を含有する塩化ビニル系樹脂フィルムであって、
前記アクリル系微粒子は、平均粒子径が5μm以上50μm以下であり、
縦200mm、横150mm、厚さ0.3mmにカットした前記塩化ビニル系樹脂フィルムを2枚重ねて厚さ3mmのガラス板で挟み、5kgの荷重を加えた状態で60℃のオーブンで24時間加熱した後、当該フィルムを重ねたまま縦30mm、横70mmにカットし、万能試験機を用いて、当該フィルムの端部を1cmめくって各々をつかみ具に固定し、上下方向に引きはがし速度200mm/minで引きはがしたときの剥離強度が、0.50N以下であることを特徴とする。
【0009】
前記アクリル系微粒子の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。
【0010】
さらに脂肪酸アミドを、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上2.00質量部以下含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、成形時に打粉することなく、運搬時や保管時の期間や環境に関係なくフィルム同士の粘着を抑制できる塩化ビニル系樹脂フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とアクリル系微粒子を含有する塩化ビニル系樹脂フィルムである。
【0013】
本発明において、塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルや、塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマーと高級ビニルエーテルとの共重合体等、またはこれらの混合物が挙げられる。塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、マレイン酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、酢酸ビニル等のオレフィンモノマーやビニル系モノマーが挙げられる。
【0014】
本発明において、可塑剤としては、フタル酸ジオクチルエステル(DOP)、フタル酸ジイソノニルエステル(DINP)、フタル酸ブチルベンジルエステル(BBP)、フタル酸ジイソデシルエステル(DIDP)、フタル酸ジウンデシルエステル(DUP)などに代表される一般のフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジオクチルエステル(DOA)、セバチン酸ジオクチルエステル(DOS)、アゼライン酸ジオクチルエステル(DOZ)に代表される一般の脂肪酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチルエステル(TOTM)に代表されるトリメリット酸エステル系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等に代表されるポリエステル系可塑剤などの高分子系可塑剤の他のセバチン酸系可塑剤、塩素化パラフィンなどの一般的な可塑剤、トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート(TXP)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
本発明において、可塑剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して20質量部以上70質量部以下が好ましい。可塑剤の含有量が20質量部未満だと、得られるフィルムに十分な柔軟性が得られ難く、70質量部を超過すると、得られるフィルム表面に可塑剤が移行して表面がべたつきやすくなるため、フィルム同士の粘着を抑制し難くなる。
【0016】
本発明において、アクリル系微粒子としては、アクリル系モノマーの単独重合体、アクリル系モノマー同士の共重合体、アクリル系モノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、アクリルゴム、アクリロニトリル系重合体、更には練り込み時の高い温度に耐えるために架橋させたもの、更に3次元に架橋させた3次元構造のアクリル系重合体等が好ましく使用できる。これらは、単独で使用してもよいし、また2種以上を混合して使用することもできる。これらアクリル系樹脂粒子の形状は、光りの乱反射を少なくするために、球形のものが適している。
【0017】
本発明において、アクリル系微粒子の平均粒子径は5μm以上50μm以下、好ましくは12μm以上30μm以下である。アクリル系微粒子の平均粒子径が5μm未満だと、得られるフィルムのスリップ性が発揮し難く、しかも高温で荷重を加えると、フィルム表面の凹凸が潰され、フィルム同士の粘着を抑制することが困難となる。また、平均粒子径が50μmを超えたものだと凹凸感が増し、得られるフィルムの視認性が劣る傾向となってしまう。
【0018】
本発明において、アクリル系微粒子の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.3質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。アクリル系微粒子の含有量が多過ぎると塩化ビニル系樹脂フィルム本来の透明性を損なう傾向にあり、少な過ぎても得られるフィルムのスリップ性が発揮し難いものとなる。
【0019】
本発明には、必要に応じて、滑剤、帯電防止剤、熱安定剤、充填剤、顔料等の添加剤を添加することができる。
【0020】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;流動パラフィン、ポリエチレンワックス類、塩素化炭化水素類等の炭化水素類;ステアリン酸、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等の脂肪酸及び脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸モノグリセリド等の脂肪酸エステル等の滑剤が使用でき、その中でも脂肪酸アミドが好ましい。
本発明において、脂肪酸アミドの含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上、2.00質量部以下であることが好ましい。
【0021】
本発明で使用することができる熱安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウムなどの金属石鹸、Mg―Zn系やBa―Zn系複合金属石鹸、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイトなどの有機ホスファイト系安定剤、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫マレート、有機錫メルカプチド、有機錫スルホンアミドなどの錫系安定剤などが使用でき、これらの安定剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。また、熱安定剤の含有量としては、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.5~10質量部が好ましく、より好ましくは1~5質量部である。
【0022】
本発明で使用することができる充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、タルク、長石、シリカ、ハイドロタルサイト等が使用できる。
【0023】
本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、公知の方法で製造される。すなわち、塩化ビニル系樹脂に、上記した可塑剤、アクリル系微粒子及び必要に応じて添加される各種添加剤を添加した塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダー法、押出法、インフレーション法等の適宜の手段により、所望厚さのフィルムに成形される。フィルムの厚さについては、0.03mm以上、2.00mm以下程度が好ましい。
【0024】
本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、特定の方法で測定した剥離強度が0.50N以下であり、成形時に打粉することなく、運搬時や保管時の期間や環境に関係なくフィルム同士の粘着を抑制できる。
本願発明の剥離強度は、縦200mm、横150mm、厚さ0.3mmにカットした前記塩化ビニル系樹脂フィルムを2枚重ねて厚さ3mmのガラス板で挟み、5kgの荷重を加えた状態で60℃のオーブンで24時間加熱した後、当該フィルムを重ねたまま縦30mm、横70mmにカットし、例えば万能(引張)試験機(島津製作所社製、商品名「オートグラフ」)を用いて、当該フィルムの端部を1cmめくって各々をつかみ具に固定し、上下方向に引きはがし速度200mm/minで引きはがしたときの強さで測定される。
【0025】
運搬時や保管時の期間や環境に関係なくフィルム同士の粘着を抑制できることに加え、本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、視認性、スリップ性、裁断性、解れ性に優れるものである。
【0026】
〔視認性〕
本発明において、視認性とは、文字が印刷されたコピー紙の表面にフィルムを載せた状態で、1m離れた位置から文字が視認できることであり、以下の通り評価する。
○: コピー紙に印刷された文字を正しく視認できる。
△: コピー紙に印刷された文字がぼやけるが、正しく視認できる。
×: コピー紙に印刷された文字を正しく視認できない。
【0027】
〔スリップ性〕
本発明において、フィルム表面のスリップ性は、JIS K 7125に準拠して測定される静摩擦係数及び動摩擦係数によって評価できる。本発明において、静摩擦係数は1.00以下、動摩擦係数は0.30以下であることが好ましい。
【0028】
〔裁断性〕
本発明において、裁断性に優れるとは、複数枚のフィルムを重ねて束にした状態で任意の大きさに裁断する際に、フィルム同士の粘着によるフィルムの起伏や歪みがなく、裁断後の刃を抜いたあとのフィルム端部が一定に揃っていて、1枚毎の寸法が安定したものが得られることをいう。
ここで、本発明の裁断性は、縦290mm、横210mm、厚さ0.3mmのフィルムを、断裁機(永井機械鋳造株式会社製、商品名「NCW-137HHE1」)を用いて裁断したとき、以下の通り評価する。なお、裁断時の刃の押し圧は1~2トン程度に設定され、重ね厚みが10~15cmになるよう複数のフィルムを束にした状態で裁断する。
〇:裁断時、フィルムの束に対してスムーズに刃が下端まで降り、裁断後の刃を抜いた あとのフィルム束の端部が一定に揃っていて、1枚毎の寸法が安定している。
△:裁断時、フィルムの束に対して刃が下端までに降りる際、フィルムにズレが発生し てしまうが、問題なく裁断できる。
×:裁断時、フィルムの束に対して刃が降りる際、フィルムに起伏、歪み生じ、直線的 に切れず、1枚毎の寸法が安定しない。
【0029】
〔解れ性〕
本発明において、解れ性に優れるとは、前述した裁断後のフィルムの束が、フィルム同士の粘着がなく、1枚ずつ横ズレ可能なことをいう。このように、解れ性に優れることで、例えば、印刷工程や溶着工程等の二次加工時の際に、1枚ずつフィルムを取り出すことが可能であり、加工効率が向上する。
ここで、本発明において、解れ性は、縦290mm、横210mm、厚さ0.3mmのフィルムを、前述した〔裁断性〕の評価と同様にして断裁機(永井機械鋳造株式会社製、商品名「NCW-137HHE1」)を用いて裁断した後、以下の通り評価する。
〇:裁断後、刃をフィルムから外した際に最上部のフィルムが軽い力で滑って横ズレす る。
△:裁断後、刃をフィルムから外した状態では横ズレしないが、フィルムの束全体にひ ねりなどの力を加えると、横ズレするようになる。
×:裁断後、刃を外した後、横ズレせず、フィルムの束にひねりなどの力を加えても固 着した状態で、横ズレしない。但し、めくると1枚ずつに剥がれる。
【実施例0030】
本発明について実施例および比較例を用いて、以下により詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0031】
〔実施例1~4、比較例1〕
表1に示す配合に基づいて各材料を混練りした後、カレンダー成形にて厚さ0.3mm、幅1000mmのフィルムをそれぞれ作製した。得られたフィルムについて、剥離強度、視認性、裁断性、解れ性を評価し、その結果を表1に示す。また、実施例1及び比較例1については、スリップ性を評価し、その結果を表2に示す。なお、表1中の配合は質量部で示す。
【0032】
〔参考例1〕
比較例1のフィルムを成形する際、打粉(でんぷん粉)をした後にロールに巻き取ってフィルム表面に粉を付着させたフィルムを作成した。得られたフィルムについて、粉の付着が少ない箇所や多い箇所を除外した部分において、剥離強度、視認性、スリップ性、裁断性、解れ性を評価し、その結果を表1及び表2に示す。
【0033】
表1で示す材料は、以下の通りである。
塩化ビニル系樹脂:ポリ塩化ビニル(カネカ社製、商品名「S1001」)
可塑剤:DOP(ジェイ・プラス社製、商品名「DOP」)
アクリル系微粒子1:平均粒子径20μm(積水化成品工業社製、商品名「MBX- 20」)
アクリル系微粒子2:平均粒子径12μm(積水化成品工業社製、商品名「MBX- 12」)
アクリル系微粒子3:平均粒子径30μm(積水化成品工業社製、商品名「MBX- 30」)
滑剤:エチレンビスオレイン酸アミド
熱安定剤1:金属石鹸(勝田化学社製、商品名「SBZ-11A」)
熱安定剤2:Ba-Zn系(ADEKA社製、商品名「AC-293」)
帯電防止剤:界面活性剤(大協化成工業社製、商品名「AS-915」)
【0034】
〔剥離強度〕
得られた厚さ0.3mmのフィルムを縦200mm、横150mmにカットし、当該フィルムを2枚重ねて厚さ3mmのガラス板で挟み、5kgの荷重を加えた状態で60℃のオーブンで24時間加熱した後、当該フィルムを重ねたまま縦30mm、横70mmにカットしたものを試験片とし、万能試験機(島津製作所社製、商品名「オートグラフ」)を用いて、当該フィルムの端部を1cmめくって各々をつかみ具に固定し、上下方向に引きはがし速度200mm/minで引きはがしたときの強さを測定した。各フィルムにおいて試験片を5ピース用意し、剥離強度はその平均値とした。
【0035】
〔視認性〕
文字が印刷されたコピー紙の表面に得られたフィルムを載せた状態で、1m離れた位置から文字を目視して、以下の通り評価した。
○: コピー紙に印刷された文字を正しく視認できる。
△: コピー紙に印刷された文字がぼやけるが、正しく視認できる。
×: コピー紙に印刷された文字を正しく視認できない。
【0036】
〔スリップ性〕
実施例1、比較例1及び参考例で得られたフィルムについて、JIS K 7125に準拠して静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。結果を表2に示す。
【0037】
〔裁断性〕
得られた厚さ0.3mmのフィルムを縦290mm、横210mmの大きさに、断裁機(永井機械鋳造株式会社製、商品名「NCW-137HHE1」)を用いて裁断したとき、以下の通り評価した。なお、裁断時の刃の押し圧は1~2トン程度に設定され、重ね厚みが10~15cmになるよう複数のフィルムを束にした状態で裁断した。
〇:裁断時、フィルムの束に対してスムーズに刃が下端まで降り、裁断後の刃を抜いた あとのフィルム端部が一定に揃っていて、1枚毎の寸法が安定している。
△:裁断時、フィルムの束に対して刃が下端までに降りる際、フィルムにズレが発生し てしまうが、問題なく裁断できる。
×:裁断時、フィルムの束に対して刃が降りる際、フィルムに起伏、歪み生じ、直線的 に切れず、1枚毎の寸法が安定しない。
【0038】
〔解れ性〕
得られた厚さ0.3mmのフィルムを縦290mm、横210mmの大きさに、前述した〔裁断性〕の評価と同様にして断裁機(永井機械鋳造株式会社製、商品名「NCW-137HHE1」)を用いて裁断した後、以下の通り評価した。
〇:裁断後、刃をフィルムから外した際に最上部のフィルムが軽い力で滑って横ズレす る。
△:裁断後、刃をフィルムから外した状態では横ズレしないが、フィルムの束全体にひ ねりなどの力を加えると、横ズレするようになる。
×:裁断後、刃を外した後、横ズレせず、フィルムの束にひねりなどの力を加えても固 着した状態で、横ズレしない。但し、めくると1枚ずつに剥がれる。
【0039】
【0040】
【0041】
表1及び表2より、本発明は、特定の方法で測定した剥離強度が0.50N以下であり、フィルム成形時に打粉することなく、運搬時や保管時の期間や環境に関係なくフィルム同士の粘着を抑制できることが示された。また、本発明は、視認性、スリップ性、裁断性、解れ性に優れるものであった。
それにより、本発明の塩化ビニル系樹脂フィルムは、二次加工におけるフィルムの扱いが容易となり、粘着したフィルム同士を剥がす手間が軽減できることから、農業用、ブックカバー用、各種ファイル用、定期入れ用、あるいはパスポートや車等の免許書入れ用、その他各種の分野において広く使用することができる。