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特開2024-65397レーヨンスパンレース用処理剤、レーヨンスパンレース用処理剤含有組成物、レーヨンスパンレース用第1処理剤、レーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物、スパンレース不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065397
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】レーヨンスパンレース用処理剤、レーヨンスパンレース用処理剤含有組成物、レーヨンスパンレース用第1処理剤、レーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物、スパンレース不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/224 20060101AFI20240508BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20240508BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/17
D06M15/53
D06M13/148
D06M13/188
D06M101:06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174245
(22)【出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】夏目 享治
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB04
4L033AC09
4L033BA12
4L033BA14
4L033BA16
4L033BA21
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できるレーヨンスパンレース用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明のレーヨンスパンレース用処理剤は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物であるエーテルモノエステル誘導体(A)、及び炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物であるエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物。
【請求項2】
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項3】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項4】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項5】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に下記の脂肪酸類(D)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項6】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、及び下記の脂肪酸類(D)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、及び前記脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項7】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に多価アルコール(E)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項8】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、及び前記多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項9】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に下記の潤滑剤(F)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項10】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び下記の潤滑剤(F)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、前記多価アルコール(E)、及び前記潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び前記潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項11】
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤と、
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤と、がセットで構成される請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のレーヨンスパンレース用処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有し、
前記レーヨンスパンレース用処理剤、及び前記溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記レーヨンスパンレース用処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、及び前記溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項13】
前記溶媒(S)が、水である請求項12に記載のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物。
【請求項14】
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、又は
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、並びに下記の溶媒(S)を含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物と併用され、
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用第1処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項15】
請求項14に記載のレーヨンスパンレース用第1処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項16】
下記の工程1~3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項1~11のいずれか一項に記載のレーヨンスパンレース用処理剤をレーヨンに付着させる工程。
工程2:工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できるレーヨンスパンレース用処理剤、レーヨンスパンレース用処理剤含有組成物、レーヨンスパンレース用第1処理剤、レーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物、スパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂が知られている。なかでも、パルプ、コットンリンター等を原料とした再生繊維であるレーヨンは、生分解性に優れ、吸湿性及び吸水性に優れる観点から注目されている。レーヨンを用いてスパンレース不織布を製造する際には、カード通過性等の各種特性を付与するために、原料繊維の表面に、界面活性剤等を含有するレーヨンスパンレース用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1,2に開示のレーヨンスパンレース用処理剤が知られている。特許文献1は、脂肪酸に対しアルキレンオキシドを付加させた構造の脂肪酸誘導体と、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つと、多価アルコールを含有する短繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、脂肪酸に対しエチレンオキシドを付加させたものであるポリオキシアルキレン誘導体、並びに所定の脂肪酸及び/又は油脂である機能付与剤を含有して成るスパンレース用繊維処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6533020号公報
【特許文献2】特許第6132966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のレーヨンスパンレース用処理剤では、レーヨンスパンレース処理剤が付着した繊維をスパンレース工程に通した際に、スパンレース工程で使用する水の脱落起泡が生じやすいという問題があった。特に、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高いと、スパンレース工程における水の脱落起泡が悪化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、レーヨンスパンレース用処理剤において、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を併用する構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のレーヨンスパンレース用処理剤は、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有することを特徴とする。
【0008】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0009】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物。
【0010】
態様2は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有する。
【0011】
態様3は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更にアニオン界面活性剤(C)を含有する。
態様4は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有する。
【0012】
態様5は、態様1又は3に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に下記の脂肪酸類(D)を含有する。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【0013】
態様6は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、及び下記の脂肪酸類(D)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、及び前記脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する。
【0014】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
態様7は、態様1,3,又は5に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に多価アルコール(E)を含有する。
【0015】
態様8は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、及び前記多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する。
【0016】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
態様9は、態様1,3,5,又は7に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に下記の潤滑剤(F)を含有する。
【0017】
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
態様10は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び下記の潤滑剤(F)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、前記多価アルコール(E)、及び前記潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び前記潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する。
【0018】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0019】
態様11は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤と、がセットで構成される。
【0020】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0021】
態様12のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物は、態様1~11のいずれか一態様に記載のレーヨンスパンレース用処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有し、前記レーヨンスパンレース用処理剤、及び前記溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記レーヨンスパンレース用処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、及び前記溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有する。
【0022】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様13は、態様12に記載のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、水である。
【0023】
態様14のレーヨンスパンレース用第1処理剤は、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、又はアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、並びに下記の溶媒(S)を含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物と併用され、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有することを特徴とする。
【0024】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0025】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物。
【0026】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0027】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様15のレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物は、態様14に記載のレーヨンスパンレース用第1処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とする。
【0028】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様16のスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1~3を経ることを特徴とする。
【0029】
工程1:態様1~11のいずれか一態様に記載のレーヨンスパンレース用処理剤をレーヨンに付着させる工程。
工程2:工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
【0030】
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下、本発明のレーヨンスパンレース用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及び所定のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有する。
【0033】
(ノニオン界面活性剤(X))
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤(X)は、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及び所定のエーテルジエステル誘導体(B)を必須成分として含む。後述するエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)とを併用することにより、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【0034】
(エーテルモノエステル誘導体(A))
本実施形態に供されるエーテルモノエステル誘導体(A)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物である。エーテルモノエステル誘導体(A)は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドが重合したポリオキシアルキレン鎖の一方の端部に脂肪酸がエステル結合したモノエステル構造を有している。
【0035】
エーテルモノエステル誘導体(A)の原料となる脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0036】
脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の一価の直鎖アルキル基を有する脂肪酸、(2)イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の一価の分岐鎖構造を有する脂肪酸、(3)ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の一価の直鎖アルケニル基を有する脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(5)ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の天然由来の脂肪酸等が挙げられる。
【0037】
エーテルモノエステル誘導体(A)の原料となる炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上30モル以下、好ましくは5モル以上25モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0038】
エーテルモノエステル誘導体(A)の具体例としては、例えばステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを20モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを13モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた化合物、パルミチン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ヤシ脂肪酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後プロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物等が挙げられる。
【0039】
これらのエーテルモノエステル誘導体(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(エーテルジエステル誘導体(B))
本実施形態に供されるエーテルジエステル誘導体(B)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物である。エーテルジエステル誘導体(B)は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドが重合したポリオキシアルキレン鎖の両方の端部にそれぞれ脂肪酸がエステル結合したジエステル構造を有している。エーテルジエステル誘導体(B)を構成する2つの脂肪酸は、同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
エーテルジエステル誘導体(B)の原料となる脂肪酸としては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄の説明と同様である。
エーテルジエステル誘導体(B)の原料となる炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドとしては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄における説明と同様である。
【0041】
エーテルジエステル誘導体(B)の具体例としては、例えばオレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを23モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを9モル付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを10モルを付加させ、さらにステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させ、さらにステアリン酸1モルを付加させた化合物等が挙げられる。
【0042】
これらのエーテルジエステル誘導体(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、かかるエーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0043】
処理剤中において、エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、かかるエーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0044】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及びエーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0045】
(その他のノニオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤は、ノニオン界面活性剤(X)として、上述したエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)以外のその他のノニオン界面活性剤を配合してもよい。
【0046】
その他のノニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシアルキレンソルビタントリステアラート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタナート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤、(5)ポリオキシエチレンとジメチルフタラートとラウリルアルコールの共重合物等のエーテル・エステル化合物等が挙げられる。
【0047】
これらのノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(アニオン界面活性剤(C))
本実施形態の処理剤は、更にアニオン界面活性剤(C)を配合してもよい。処理剤がアニオン界面活性剤(C)を含有することにより、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性を向上できる。
【0048】
アニオン界面活性剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤(C)の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数13~15)塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数11~14)、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。
【0049】
アニオン界面活性剤(C)を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0050】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の四級ホスホニウムが挙げられる。
【0051】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0052】
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、アニオン界面活性剤(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。アニオン界面活性剤(C)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。かかるアニオン界面活性剤(C)の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。アニオン界面活性剤(C)の含有割合が30質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0053】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、及びアニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及びアニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0054】
(脂肪酸類(D))
本実施形態の処理剤は、更に脂肪酸類(D)が配合されてもよい。処理剤が脂肪酸類(D)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【0055】
本実施形態の処理剤に供される脂肪酸類(D)としては、炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つが適用される。
脂肪酸の具体例としては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄において挙げた具体例を適用できる。
【0056】
油脂としては、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。植物油の具体例としては、例えばヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、パーム油、トール油等が挙げられる。動物油の具体例としては、例えば卵黄油、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。
【0057】
これらの脂肪酸類(D)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸類(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。脂肪酸類(D)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。かかる脂肪酸類(D)の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。脂肪酸類(D)の含有割合が15質量%以下の場合、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0058】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0059】
(多価アルコール(E))
本実施形態の処理剤は、更に多価アルコール(E)が配合されてもよい。処理剤が多価アルコール(E)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0060】
多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0061】
これらの多価アルコール(E)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、多価アルコール(E)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。かかる多価アルコール(E)の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。多価アルコール(E)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0062】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0063】
(潤滑剤(F))
本実施形態の処理剤は、更に潤滑剤(F)が配合されてもよい。処理剤が潤滑剤(F)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0064】
本実施形態の処理剤に供される潤滑剤(F)は、炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つが適用される。
炭化水素化合物の具体例としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば鉱物油、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの炭化水素化合物は、市販品を適宜採用することができる。
【0065】
エステルとしては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0066】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0067】
エステル油の具体例としては、例えば(1)ステアリルステアラート、オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(3)ソルビタンモノステアラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物、(4)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(5)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(6)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(7)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0068】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
【0069】
処理剤中において、潤滑剤(F)の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる潤滑剤(F)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。潤滑剤(F)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0070】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0071】
(保存形態)
処理剤は、上述した成分(A)~(E)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性を向上させる観点から、以下に示されるような2剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0072】
2剤型の処理剤は、エーテルモノエステル誘導体(A)、及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。第1処理剤は、更に任意選択で脂肪酸類(D)、及び任意選択で潤滑剤(F)を含有してもよい。
【0073】
2剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、該第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。2剤型処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0074】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒(S)と混合することによりレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)が調製され、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0075】
溶媒(S)は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、乳化安定性、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0076】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0077】
(レーヨン)
本実施形態の処理剤が適用されるレーヨンは、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維であってもよく、一般にステープルと呼ばれる短繊維であってもよい。短繊維であることが好ましい。本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。
【0078】
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、上述したエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有するように構成した。したがって、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。また、処理剤の希釈液の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0079】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有する第1処理剤と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有する第2処理剤と、を含むセットとして構成されてもよい。かかる構成により、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
本実施形態の第1処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有する。第1処理剤は、さらに任意選択で脂肪酸類(D)及び/又は潤滑剤(F)を含有してもよい。第1処理剤は、使用時にアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有する第2処理剤、又は該第2処理剤と溶媒(S)とを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)と併用される。
【0082】
エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、潤滑剤(F)、及び溶媒(S)は、それぞれ第1実施形態において説明した成分と同一である。
【0083】
(溶媒)
本実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒(S)と混合することによりレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)が調製され、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0084】
溶媒(S)は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を0.01質量部以上で含有することが好ましい。
【0085】
第2実施形態の第1処理剤の効果について説明する。第2実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、使用時にアニオン界面活性剤(C)又は多価アルコール(E)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明のスパンレース不織布の製造方法(以下、「不織布の製造方法」という)を具体化した第3実施形態を説明する。
【0087】
本実施形態の不織布の製造方法では、処理剤をレーヨンに付着させる工程(工程1)、工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程(工程2)、工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程(工程3)が行われる。
【0088】
工程1は、処理剤が1剤型の処理剤の場合、溶媒と、第1実施形態の処理剤とを含む希釈液が調製される。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。
【0089】
処理剤が2剤型の処理剤の場合、溶媒と、第2実施形態の第1処理剤と、第2処理剤とを含む処理剤の希釈液が調製される。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=95/5~5/95であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0090】
希釈液の製造に用いられる溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から処理剤の濃度として0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0091】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、各剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。
【0092】
処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、シャワー法、ローラー法、滴下・流下法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程等が挙げられる。処理剤の付着量は、レーヨンに対し、溶媒を含まない固形分が0.1~1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。処理剤が付与された繊維は、適宜の条件で乾燥処理が行われる。
【0093】
工程2におけるウェブを製造する工程は、上記処理剤が付着したレーヨンにカーディングを行うカード工程に供し、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0094】
工程3におけるスパンレース不織布を得る工程は、ウェブを製造する工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0095】
第3実施形態の不織布の製造方法の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の不織布の製造方法では、水流交絡で使用した水の脱落起泡の悪化を低減できるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行うことができる。したがって、水流交絡を好適に行うことができ、スパンレース不織布の地合を向上できる。
【0096】
(3-2)また、処理剤が付与された繊維を適宜の条件で乾燥処理する際、高温条件、例えば100℃以上を採用できる。かかる構成により、乾燥処理を短時間に終了でき、スパンレース不織布の製造効率を向上できる。
【0097】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は特に限定されず、第3実施形態の不織布の製造方法欄に記載の調製方法以外を採用してもよい。
【0098】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において50質量%以下が好ましい。
【実施例0099】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0100】
試験区分1(1剤型処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、ノニオン界面活性剤(X)であるエーテルモノエステル誘導体(A)としてステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(A-1)23部(%)、エーテルジエステル誘導体(B)としてオレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(B-1)27部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム(C-1)10部(%)、脂肪酸類(D)として牛脂(D-1)2部(%)、多価アルコール(E)としてエチレングリコール(E-1)36部(%)、潤滑剤(F)としてステアリルステアラート(F-1)2部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0101】
(実施例2~32、比較例1~11)
実施例2~32、比較例1~11の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にしてノニオン界面活性剤(X)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0102】
ノニオン界面活性剤(X)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、脂肪酸類(D)の種類と含有量、多価アルコール(E)の種類と含有量、及び潤滑剤(F)の種類と含有量を、表1の「ノニオン界面活性剤(X)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄、「脂肪酸類(D)」欄、「多価アルコール(E)」欄、「潤滑剤(F)」欄にそれぞれ示す。なお、その他ノニオン界面活性剤(G)の含有量は、処理剤中におけるエーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)の含有量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
表1に記載するノニオン界面活性剤(X)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、潤滑剤(F)の詳細は以下のとおりである。
【0105】
<ノニオン界面活性剤(X)>
(エーテルモノエステル誘導体(A))
A-1:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-2:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-3:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-4:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを13モル付加させた化合物
A-5:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-6:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-7:パルミチン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-8:ラウリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-9:ヤシ脂肪酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-10:オレイン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-11:オレイン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-12:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-13:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物
A-14:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた化合物
A-15:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後プロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-16:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
rA-17:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを40モル付加させた化合物
rA-18:セロチン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
rA-17及びrA-18は、エーテルモノエステル誘導体(A)に類似する化合物を示す。
【0106】
(エーテルジエステル誘導体(B))
B-1:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物
B-2:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを23モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-3:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-4:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-5:ラウリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物
B-6:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-7:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-8:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モル付加させた化合物
B-9:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モル付加させた化合物
B-10:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを10モル付加させ、さらにステアリン酸1モル付加させた化合物
B-11:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させ、さらにステアリン酸1モル付加させた化合物
rB-12:セロチン酸1モルに対してエチレンオキサイド9モル付加させた後、セロチン酸1モル付加させた化合物
rB-13:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを40モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
rB-12及びrB-13は、エーテルジエステル誘導体(B)に類似する化合物を示す。
【0107】
(その他のノニオン界面活性剤(G))
G-1:ポリオキシエチレン(n=5:エチレンオキサイドの付加モル数を示す(以下、同じ))ステアリルエーテル
G-2:ポリオキシエチレン(n=9)ラウリルエーテル
G-3:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアラート
G-4:ポリオキシエチレン(n=18)ソルビタンモノステアラート
G-5:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアラート
<アニオン界面活性剤(C)>
C-1:ラウリルリン酸エステルカリウム
C-2:ジオクチルスルホスクシナートナトリウム
C-3:牛脂硫酸エステルナトリウム
C-4:オレイン酸ナトリウム
C-5:オレイン酸カリウム
C-6:ステアリン酸カリウム
C-7:ラウリン酸カリウム
C-8:オクチル酸カリウム
C-9:ラウリルスルホン酸ナトリウム
C-10:テトラデカンスルホナートナトリウム
<脂肪酸類(D)>
D-1:牛脂
D-2:ステアリン酸
D-3:オレイン酸
D-4:パルミチン酸
D-5:ラウリン酸
D-6:ヤシ脂肪酸
D-7:ベヘン酸
D-8:ひまし油
D-9:ひまし硬化油
D-10:パーム油
D-11:パーム硬化油
D-12:トール油
D-13:ヤシ油
<多価アルコール(E)>
E-1:エチレングリコール
E-2:ジエチレングリコール
E-3:プロピレングリコール
E-4:グリセリン
E-5:ポリエチレングリコール(質量平均分子量200)
E-6:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)
E-7:ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)
E-8:ポリエチレングリコール(質量平均分子量2000)
E-9:ポリプロピレングリコール(質量平均分子量400)
<潤滑剤(F)>
F-1:ステアリルステアラート
F-2:鉱物油(動粘度(40℃):90mm/s)
F-3:鉱物油(動粘度(40℃):15mm/s)
F-4:ジメチルシリコーン(動粘度(25℃):10mm/s)
F-5:ソルビタンモノステアラート
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで求めた。
【0108】
試験区分2(レーヨン繊維への処理剤の付着)
試験区分1において調製された各処理剤をイオン交換水で希釈して、0.15%処理剤の希釈液を調製した。この処理剤の希釈液を繊度1.3×10-4g/mで繊維長38mmのレーヨン繊維に付着量が0.15%となるようにスプレー給油で付着させた。その後、80℃の熱風乾燥機で2時間、又は120℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、25℃×40%RHの雰囲気下で一夜調湿して、処理剤が付着されたレーヨン繊維を得た。
【0109】
試験区分3(脱落起泡性試験)
試験区分2で処理剤が付着されたレーヨン繊維15gを150gのイオン交換水に浸し、2時間浸漬する。浸漬した繊維を取り出し、ハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10mLを25mL共栓付メスシリンダーに入れて蓋をし、10秒間に30回(振幅30cm)のペースで強振した。5分間静置した後の水面から泡上面までの高さを測定し、以下の基準で脱落起泡性を評価した。結果を表2の「脱落起泡性試験」欄に示す。
【0110】
・脱落起泡性試験の評価基準
◎◎(優れる):水面から泡上面までの高さが1mm未満
◎(良好):水面から泡上面までの高さが1mm以上1.5mm未満
○(可):水面から泡上面までの高さが1.5mm以上4mm未満
×(不良):水面から泡上面までの高さが4mm以上
試験区分4(乳化安定性)
試験区分1において調製された各処理剤5質量部にイオン交換水95質量部を加え、50℃で撹拌し、処理剤を5質量部有する処理剤の希釈液を調製した。調製した処理剤の希釈液を100mLニンジン型沈殿瓶に100mL入れた。20℃の環境下に静置し、24時間後の沈殿量を確認し、以下の基準で乳化安定性を評価した。結果を表2の「乳化安定性」欄に示す。
【0111】
・乳化安定性の評価基準
◎◎(優れる):沈殿量が0.1mL未満
◎(良好):沈殿量が0.1mL以上0.5mL未満
○(可):沈殿量が0.5mL以上1mL未満
×(不良):沈殿量が1mL以上
試験区分5(カード性)
試験区分1において調製された各処理剤が付着されたレーヨン繊維20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、ミニチュアカード機に供した。下記式(1)を用いて投入量に対する排出量の割合をカード紡出率(%)として算出し、下記の評価基準でカード性を評価した。結果を表2の「カード性」欄に示す。
【0112】
【数1】
・カード性の評価基準
◎◎(優れる):カード紡出率が90%以上
◎(良好):カード紡出率が85%以上90%未満
○(可):カード紡出率が80%以上85%未満
×(不良):カード紡出率が80%未満
試験区分6(2剤型処理剤の第1処理剤含有組成物の調製)
(第1処理剤含有組成物(I-1))
表3に示されるように、ノニオン界面活性剤(X)であるエーテルモノエステル誘導体(A)としてステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(A-1)20部(%)、エーテルジエステル誘導体(B)としてオレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(B-1)23部(%)、脂肪酸類(D)として牛脂(D-1)2部(%)、潤滑剤(F)としてステアリルステアラート(F-1)2部(%)、溶媒(S)として水53部(%)を含む第1処理剤含有組成物(I-1)を調製した。
【0113】
(第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-28))
第1処理剤含有組成物(I-1)と同様にしてノニオン界面活性剤(X)、脂肪酸類(D)、潤滑剤(F)、及び溶媒(S)を表3に示した割合で含むように調製した。
【0114】
ノニオン界面活性剤(X)の種類と含有量、脂肪酸類(D)の種類と含有量、潤滑剤(F)の種類と含有量、溶媒(S)の種類と含有量を、表3の「ノニオン界面活性剤(X)」欄、「脂肪酸類(D)」欄、「潤滑剤(F)」欄、「溶媒(S)」欄にそれぞれ示す。
【0115】
【表3】
試験区分7(2剤型処理剤の第2処理剤含有組成物の調製)
(第2処理剤含有組成物(II-1))
表4に示されるように、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム(C-1)9部(%)、多価アルコール(E)としてエチレングリコール(E-1)31部(%)、溶媒(S)として水60部(%)を含む第2処理剤含有組成物(II-1)を調製した。
【0116】
(第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-28))
第2処理剤含有組成物(II-1)と同様にして、アニオン界面活性剤(C)、多価アルコール(E)、及び溶媒(S)を表4に示した割合で含むように調製した。
【0117】
アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、多価アルコール(E)の種類と含有量を、溶媒(S)の種類と含有量を、表4の「アニオン界面活性剤(C)」欄、「多価アルコール(E)」欄、「溶媒(S)」欄にそれぞれ示す。
【0118】
【表4】
試験区分8(製剤安定性の評価)
第1処理剤含有組成物、第2処理剤含有組成物を50℃の環境下に静置し、24時間後の外観を確認した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表3,4の「製剤安定性」欄に示す。
【0119】
・製剤安定性の評価基準(第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物)
◎(可):分離なしの場合
×(不可):分離ありの場合
試験区分9(第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物から処理剤含有組成物の調製)
(実施例33)
表5に示されるように、第1処理剤含有組成物(I-1)50%(部)、及び第2処理剤含有組成物(II-1)50%(部)を混合して実施例33の処理剤含有組成物を調製した。
【0120】
(実施例34~60)
実施例33と同様にして、表5に示される第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物を混合して各例の処理剤含有組成物を調製した。
【0121】
第1処理剤含有組成物の種類と質量比、第2処理剤含有組成物の種類と質量比を、表5の「第1処理剤含有組成物」欄、「第2処理剤含有組成物」欄にそれぞれ示す。
【0122】
【表5】
試験区分10(2剤型の処理剤含有組成物の評価)
得られた各例の処理剤含有組成物を用いて、実施例1と同様の方法にて、脱落起泡性試験、乳化安定性、カード性について評価した。結果を表5の「脱落起泡性試験」欄、「乳化安定性」欄、「カード性」欄にそれぞれ示す。
【0123】
各表の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。また、処理剤の希釈液の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)
【請求項2】
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項3】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項4】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項5】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に下記の脂肪酸類(D)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項6】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、及び下記の脂肪酸類(D)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、及び前記脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項7】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に多価アルコール(E)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項8】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、及び前記多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項9】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に下記の潤滑剤(F)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項10】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び下記の潤滑剤(F)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、前記多価アルコール(E)、及び前記潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び前記潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項11】
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤と、
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤と、がセットで構成される請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のレーヨンスパンレース用処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有し、
前記レーヨンスパンレース用処理剤、及び前記溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記レーヨンスパンレース用処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、及び前記溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項13】
前記溶媒(S)が、水である請求項12に記載のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物。
【請求項14】
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、又は
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、並びに下記の溶媒(S)を含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物と併用され、
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用第1処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項15】
請求項14に記載のレーヨンスパンレース用第1処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項16】
下記の工程1~3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項1~11のいずれか一項に記載のレーヨンスパンレース用処理剤をレーヨンに付着させる工程。
工程2:工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できるレーヨンスパンレース用処理剤、レーヨンスパンレース用処理剤含有組成物、レーヨンスパンレース用第1処理剤、レーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物、スパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂が知られている。なかでも、パルプ、コットンリンター等を原料とした再生繊維であるレーヨンは、生分解性に優れ、吸湿性及び吸水性に優れる観点から注目されている。レーヨンを用いてスパンレース不織布を製造する際には、カード通過性等の各種特性を付与するために、原料繊維の表面に、界面活性剤等を含有するレーヨンスパンレース用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1,2に開示のレーヨンスパンレース用処理剤が知られている。特許文献1は、脂肪酸に対しアルキレンオキシドを付加させた構造の脂肪酸誘導体と、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つと、多価アルコールを含有する短繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、脂肪酸に対しエチレンオキシドを付加させたものであるポリオキシアルキレン誘導体、並びに所定の脂肪酸及び/又は油脂である機能付与剤を含有して成るスパンレース用繊維処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6533020号公報
【特許文献2】特許第6132966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のレーヨンスパンレース用処理剤では、レーヨンスパンレース処理剤が付着した繊維をスパンレース工程に通した際に、スパンレース工程で使用する水の脱落起泡が生じやすいという問題があった。特に、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高いと、スパンレース工程における水の脱落起泡が悪化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、レーヨンスパンレース用処理剤において、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を併用する構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のレーヨンスパンレース用処理剤は、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有することを特徴とする。
【0008】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0009】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)
【0010】
態様2は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有する。
【0011】
態様3は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更にアニオン界面活性剤(C)を含有する。
態様4は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有する。
【0012】
態様5は、態様1又は3に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に下記の脂肪酸類(D)を含有する。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【0013】
態様6は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、及び下記の脂肪酸類(D)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、及び前記脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する。
【0014】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
態様7は、態様1,3,又は5に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に多価アルコール(E)を含有する。
【0015】
態様8は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、及び前記多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する。
【0016】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
態様9は、態様1,3,5,又は7に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に下記の潤滑剤(F)を含有する。
【0017】
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
態様10は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、下記の脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び下記の潤滑剤(F)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、前記多価アルコール(E)、及び前記潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び前記潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する。
【0018】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0019】
態様11は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤と、がセットで構成される。
【0020】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0021】
態様12のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物は、態様1~11のいずれか一態様に記載のレーヨンスパンレース用処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有し、前記レーヨンスパンレース用処理剤、及び前記溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記レーヨンスパンレース用処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、及び前記溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有する。
【0022】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様13は、態様12に記載のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、水である。
【0023】
態様14のレーヨンスパンレース用第1処理剤は、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、又はアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、並びに下記の溶媒(S)を含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物と併用され、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、更に任意選択で下記の脂肪酸類(D)、及び任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有することを特徴とする。
【0024】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0025】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)
【0026】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0027】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様15のレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物は、態様14に記載のレーヨンスパンレース用第1処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とする。
【0028】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様16のスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1~3を経ることを特徴とする。
【0029】
工程1:態様1~11のいずれか一態様に記載のレーヨンスパンレース用処理剤をレーヨンに付着させる工程。
工程2:工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
【0030】
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
以下、本発明のレーヨンスパンレース用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及び所定のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有する。
【0033】
(ノニオン界面活性剤(X))
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤(X)は、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及び所定のエーテルジエステル誘導体(B)を必須成分として含む。後述するエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)とを併用することにより、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【0034】
(エーテルモノエステル誘導体(A))
本実施形態に供されるエーテルモノエステル誘導体(A)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物である。エーテルモノエステル誘導体(A)は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドが重合したポリオキシアルキレン鎖の一方の端部に脂肪酸がエステル結合したモノエステル構造を有している。
【0035】
エーテルモノエステル誘導体(A)の原料となる脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0036】
脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の一価の直鎖アルキル基を有する脂肪酸、(2)イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の一価の分岐鎖構造を有する脂肪酸、(3)ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の一価の直鎖アルケニル基を有する脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(5)ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の天然由来の脂肪酸等が挙げられる。
【0037】
エーテルモノエステル誘導体(A)の原料となる炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上30モル以下、好ましくは5モル以上25モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0038】
エーテルモノエステル誘導体(A)の具体例としては、例えばステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを20モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを13モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた化合物、パルミチン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ヤシ脂肪酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後プロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物等が挙げられる。
【0039】
これらのエーテルモノエステル誘導体(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(エーテルジエステル誘導体(B))
本実施形態に供されるエーテルジエステル誘導体(B)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物である。エーテルジエステル誘導体(B)は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドが重合したポリオキシアルキレン鎖の両方の端部にそれぞれ脂肪酸がエステル結合したジエステル構造を有している。エーテルジエステル誘導体(B)を構成する2つの脂肪酸は、同一であっても異なっていてもよい。本発明のエーテルジエステル誘導体(B)において、ポリエチレングリコールジラウレートは除かれる。
【0040】
エーテルジエステル誘導体(B)の原料となる脂肪酸としては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄の説明と同様である。
エーテルジエステル誘導体(B)の原料となる炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドとしては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄における説明と同様である。
【0041】
エーテルジエステル誘導体(B)の具体例としては、例えばオレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを23モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを9モル付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを10モルを付加させ、さらにステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させ、さらにステアリン酸1モルを付加させた化合物等が挙げられる。
【0042】
これらのエーテルジエステル誘導体(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、かかるエーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0043】
処理剤中において、エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、かかるエーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0044】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及びエーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0045】
(その他のノニオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤は、ノニオン界面活性剤(X)として、上述したエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)以外のその他のノニオン界面活性剤を配合してもよい。
【0046】
その他のノニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシアルキレンソルビタントリステアラート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタナート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤、(5)ポリオキシエチレンとジメチルフタラートとラウリルアルコールの共重合物等のエーテル・エステル化合物等が挙げられる。
【0047】
これらのノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(アニオン界面活性剤(C))
本実施形態の処理剤は、更にアニオン界面活性剤(C)を配合してもよい。処理剤がアニオン界面活性剤(C)を含有することにより、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性を向上できる。
【0048】
アニオン界面活性剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤(C)の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数13~15)塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数11~14)、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。
【0049】
アニオン界面活性剤(C)を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0050】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の四級ホスホニウムが挙げられる。
【0051】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0052】
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、アニオン界面活性剤(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。アニオン界面活性剤(C)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。かかるアニオン界面活性剤(C)の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。アニオン界面活性剤(C)の含有割合が30質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0053】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、及びアニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及びアニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0054】
(脂肪酸類(D))
本実施形態の処理剤は、更に脂肪酸類(D)が配合されてもよい。処理剤が脂肪酸類(D)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【0055】
本実施形態の処理剤に供される脂肪酸類(D)としては、炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つが適用される。
脂肪酸の具体例としては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄において挙げた具体例を適用できる。
【0056】
油脂としては、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。植物油の具体例としては、例えばヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、パーム油、トール油等が挙げられる。動物油の具体例としては、例えば卵黄油、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。
【0057】
これらの脂肪酸類(D)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸類(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。脂肪酸類(D)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。かかる脂肪酸類(D)の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。脂肪酸類(D)の含有割合が15質量%以下の場合、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0058】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0059】
(多価アルコール(E))
本実施形態の処理剤は、更に多価アルコール(E)が配合されてもよい。処理剤が多価アルコール(E)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0060】
多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0061】
これらの多価アルコール(E)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、多価アルコール(E)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。かかる多価アルコール(E)の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。多価アルコール(E)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0062】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0063】
(潤滑剤(F))
本実施形態の処理剤は、更に潤滑剤(F)が配合されてもよい。処理剤が潤滑剤(F)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0064】
本実施形態の処理剤に供される潤滑剤(F)は、炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つが適用される。
炭化水素化合物の具体例としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば鉱物油、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの炭化水素化合物は、市販品を適宜採用することができる。
【0065】
エステルとしては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0066】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0067】
エステル油の具体例としては、例えば(1)ステアリルステアラート、オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(3)ソルビタンモノステアラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物、(4)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(5)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(6)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(7)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0068】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
【0069】
処理剤中において、潤滑剤(F)の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる潤滑剤(F)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。潤滑剤(F)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0070】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0071】
(保存形態)
処理剤は、上述した成分(A)~(E)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性を向上させる観点から、以下に示されるような2剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0072】
2剤型の処理剤は、エーテルモノエステル誘導体(A)、及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。第1処理剤は、更に任意選択で脂肪酸類(D)、及び任意選択で潤滑剤(F)を含有してもよい。
【0073】
2剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、該第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。2剤型処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0074】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒(S)と混合することによりレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)が調製され、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0075】
溶媒(S)は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、乳化安定性、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0076】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0077】
(レーヨン)
本実施形態の処理剤が適用されるレーヨンは、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維であってもよく、一般にステープルと呼ばれる短繊維であってもよい。短繊維であることが好ましい。本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。
【0078】
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、上述したエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有するように構成した。したがって、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。また、処理剤の希釈液の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0079】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有する第1処理剤と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有する第2処理剤と、を含むセットとして構成されてもよい。かかる構成により、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
本実施形態の第1処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有する。第1処理剤は、さらに任意選択で脂肪酸類(D)及び/又は潤滑剤(F)を含有してもよい。第1処理剤は、使用時にアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有する第2処理剤、又は該第2処理剤と溶媒(S)とを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)と併用される。
【0082】
エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、潤滑剤(F)、及び溶媒(S)は、それぞれ第1実施形態において説明した成分と同一である。
【0083】
(溶媒)
本実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒(S)と混合することによりレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)が調製され、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0084】
溶媒(S)は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を0.01質量部以上で含有することが好ましい。
【0085】
第2実施形態の第1処理剤の効果について説明する。第2実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、使用時にアニオン界面活性剤(C)又は多価アルコール(E)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明のスパンレース不織布の製造方法(以下、「不織布の製造方法」という)を具体化した第3実施形態を説明する。
【0087】
本実施形態の不織布の製造方法では、処理剤をレーヨンに付着させる工程(工程1)、工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程(工程2)、工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程(工程3)が行われる。
【0088】
工程1は、処理剤が1剤型の処理剤の場合、溶媒と、第1実施形態の処理剤とを含む希釈液が調製される。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。
【0089】
処理剤が2剤型の処理剤の場合、溶媒と、第2実施形態の第1処理剤と、第2処理剤とを含む処理剤の希釈液が調製される。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=95/5~5/95であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0090】
希釈液の製造に用いられる溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から処理剤の濃度として0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0091】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、各剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。
【0092】
処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、シャワー法、ローラー法、滴下・流下法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程等が挙げられる。処理剤の付着量は、レーヨンに対し、溶媒を含まない固形分が0.1~1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。処理剤が付与された繊維は、適宜の条件で乾燥処理が行われる。
【0093】
工程2におけるウェブを製造する工程は、上記処理剤が付着したレーヨンにカーディングを行うカード工程に供し、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0094】
工程3におけるスパンレース不織布を得る工程は、ウェブを製造する工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0095】
第3実施形態の不織布の製造方法の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の不織布の製造方法では、水流交絡で使用した水の脱落起泡の悪化を低減できるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行うことができる。したがって、水流交絡を好適に行うことができ、スパンレース不織布の地合を向上できる。
【0096】
(3-2)また、処理剤が付与された繊維を適宜の条件で乾燥処理する際、高温条件、例えば100℃以上を採用できる。かかる構成により、乾燥処理を短時間に終了でき、スパンレース不織布の製造効率を向上できる。
【0097】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は特に限定されず、第3実施形態の不織布の製造方法欄に記載の調製方法以外を採用してもよい。
【0098】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において50質量%以下が好ましい。
【実施例0099】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0100】
試験区分1(1剤型処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、ノニオン界面活性剤(X)であるエーテルモノエステル誘導体(A)としてステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(A-1)23部(%)、エーテルジエステル誘導体(B)としてオレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(B-1)27部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム(C-1)10部(%)、脂肪酸類(D)として牛脂(D-1)2部(%)、多価アルコール(E)としてエチレングリコール(E-1)36部(%)、潤滑剤(F)としてステアリルステアラート(F-1)2部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0101】
(実施例2~5,7~32、参考例6、比較例1~11)
実施例2~5,7~32、参考例6、比較例1~11の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にしてノニオン界面活性剤(X)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0102】
ノニオン界面活性剤(X)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、脂肪酸類(D)の種類と含有量、多価アルコール(E)の種類と含有量、及び潤滑剤(F)の種類と含有量を、表1の「ノニオン界面活性剤(X)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄、「脂肪酸類(D)」欄、「多価アルコール(E)」欄、「潤滑剤(F)」欄にそれぞれ示す。なお、その他ノニオン界面活性剤(G)の含有量は、処理剤中におけるエーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)の含有量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
表1に記載するノニオン界面活性剤(X)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、潤滑剤(F)の詳細は以下のとおりである。
【0105】
<ノニオン界面活性剤(X)>
(エーテルモノエステル誘導体(A))
A-1:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-2:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-3:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-4:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを13モル付加させた化合物
A-5:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-6:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-7:パルミチン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-8:ラウリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-9:ヤシ脂肪酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-10:オレイン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-11:オレイン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-12:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-13:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物
A-14:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた化合物
A-15:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後プロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-16:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
rA-17:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを40モル付加させた化合物
rA-18:セロチン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
rA-17及びrA-18は、エーテルモノエステル誘導体(A)に類似する化合物を示す。
【0106】
(エーテルジエステル誘導体(B))
B-1:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物
B-2:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを23モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-3:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-4:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-5:ラウリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物
B-6:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-7:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-8:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モル付加させた化合物
B-9:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モル付加させた化合物
B-10:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを10モル付加させ、さらにステアリン酸1モル付加させた化合物
B-11:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させ、さらにステアリン酸1モル付加させた化合物
rB-12:セロチン酸1モルに対してエチレンオキサイド9モル付加させた後、セロチン酸1モル付加させた化合物
rB-13:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを40モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
rB-12及びrB-13は、エーテルジエステル誘導体(B)に類似する化合物を示す。
【0107】
(その他のノニオン界面活性剤(G))
G-1:ポリオキシエチレン(n=5:エチレンオキサイドの付加モル数を示す(以下、同じ))ステアリルエーテル
G-2:ポリオキシエチレン(n=9)ラウリルエーテル
G-3:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアラート
G-4:ポリオキシエチレン(n=18)ソルビタンモノステアラート
G-5:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアラート
<アニオン界面活性剤(C)>
C-1:ラウリルリン酸エステルカリウム
C-2:ジオクチルスルホスクシナートナトリウム
C-3:牛脂硫酸エステルナトリウム
C-4:オレイン酸ナトリウム
C-5:オレイン酸カリウム
C-6:ステアリン酸カリウム
C-7:ラウリン酸カリウム
C-8:オクチル酸カリウム
C-9:ラウリルスルホン酸ナトリウム
C-10:テトラデカンスルホナートナトリウム
<脂肪酸類(D)>
D-1:牛脂
D-2:ステアリン酸
D-3:オレイン酸
D-4:パルミチン酸
D-5:ラウリン酸
D-6:ヤシ脂肪酸
D-7:ベヘン酸
D-8:ひまし油
D-9:ひまし硬化油
D-10:パーム油
D-11:パーム硬化油
D-12:トール油
D-13:ヤシ油
<多価アルコール(E)>
E-1:エチレングリコール
E-2:ジエチレングリコール
E-3:プロピレングリコール
E-4:グリセリン
E-5:ポリエチレングリコール(質量平均分子量200)
E-6:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)
E-7:ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)
E-8:ポリエチレングリコール(質量平均分子量2000)
E-9:ポリプロピレングリコール(質量平均分子量400)
<潤滑剤(F)>
F-1:ステアリルステアラート
F-2:鉱物油(動粘度(40℃):90mm/s)
F-3:鉱物油(動粘度(40℃):15mm/s)
F-4:ジメチルシリコーン(動粘度(25℃):10mm/s)
F-5:ソルビタンモノステアラート
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで求めた。
【0108】
試験区分2(レーヨン繊維への処理剤の付着)
試験区分1において調製された各処理剤をイオン交換水で希釈して、0.15%処理剤の希釈液を調製した。この処理剤の希釈液を繊度1.3×10-4g/mで繊維長38mmのレーヨン繊維に付着量が0.15%となるようにスプレー給油で付着させた。その後、80℃の熱風乾燥機で2時間、又は120℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、25℃×40%RHの雰囲気下で一夜調湿して、処理剤が付着されたレーヨン繊維を得た。
【0109】
試験区分3(脱落起泡性試験)
試験区分2で処理剤が付着されたレーヨン繊維15gを150gのイオン交換水に浸し、2時間浸漬する。浸漬した繊維を取り出し、ハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10mLを25mL共栓付メスシリンダーに入れて蓋をし、10秒間に30回(振幅30cm)のペースで強振した。5分間静置した後の水面から泡上面までの高さを測定し、以下の基準で脱落起泡性を評価した。結果を表2の「脱落起泡性試験」欄に示す。
【0110】
・脱落起泡性試験の評価基準
◎◎(優れる):水面から泡上面までの高さが1mm未満
◎(良好):水面から泡上面までの高さが1mm以上1.5mm未満
○(可):水面から泡上面までの高さが1.5mm以上4mm未満
×(不良):水面から泡上面までの高さが4mm以上
試験区分4(乳化安定性)
試験区分1において調製された各処理剤5質量部にイオン交換水95質量部を加え、50℃で撹拌し、処理剤を5質量部有する処理剤の希釈液を調製した。調製した処理剤の希釈液を100mLニンジン型沈殿瓶に100mL入れた。20℃の環境下に静置し、24時間後の沈殿量を確認し、以下の基準で乳化安定性を評価した。結果を表2の「乳化安定性」欄に示す。
【0111】
・乳化安定性の評価基準
◎◎(優れる):沈殿量が0.1mL未満
◎(良好):沈殿量が0.1mL以上0.5mL未満
○(可):沈殿量が0.5mL以上1mL未満
×(不良):沈殿量が1mL以上
試験区分5(カード性)
試験区分1において調製された各処理剤が付着されたレーヨン繊維20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、ミニチュアカード機に供した。下記式(1)を用いて投入量に対する排出量の割合をカード紡出率(%)として算出し、下記の評価基準でカード性を評価した。結果を表2の「カード性」欄に示す。
【0112】
【数1】
・カード性の評価基準
◎◎(優れる):カード紡出率が90%以上
◎(良好):カード紡出率が85%以上90%未満
○(可):カード紡出率が80%以上85%未満
×(不良):カード紡出率が80%未満
試験区分6(2剤型処理剤の第1処理剤含有組成物の調製)
(第1処理剤含有組成物(I-1))
表3に示されるように、ノニオン界面活性剤(X)であるエーテルモノエステル誘導体(A)としてステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(A-1)20部(%)、エーテルジエステル誘導体(B)としてオレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(B-1)23部(%)、脂肪酸類(D)として牛脂(D-1)2部(%)、潤滑剤(F)としてステアリルステアラート(F-1)2部(%)、溶媒(S)として水53部(%)を含む第1処理剤含有組成物(I-1)を調製した。
【0113】
(第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-28))
第1処理剤含有組成物(I-1)と同様にしてノニオン界面活性剤(X)、脂肪酸類(D)、潤滑剤(F)、及び溶媒(S)を表3に示した割合で含むように調製した。
【0114】
ノニオン界面活性剤(X)の種類と含有量、脂肪酸類(D)の種類と含有量、潤滑剤(F)の種類と含有量、溶媒(S)の種類と含有量を、表3の「ノニオン界面活性剤(X)」欄、「脂肪酸類(D)」欄、「潤滑剤(F)」欄、「溶媒(S)」欄にそれぞれ示す。
【0115】
【表3】
試験区分7(2剤型処理剤の第2処理剤含有組成物の調製)
(第2処理剤含有組成物(II-1))
表4に示されるように、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム(C-1)9部(%)、多価アルコール(E)としてエチレングリコール(E-1)31部(%)、溶媒(S)として水60部(%)を含む第2処理剤含有組成物(II-1)を調製した。
【0116】
(第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-28))
第2処理剤含有組成物(II-1)と同様にして、アニオン界面活性剤(C)、多価アルコール(E)、及び溶媒(S)を表4に示した割合で含むように調製した。
【0117】
アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、多価アルコール(E)の種類と含有量を、溶媒(S)の種類と含有量を、表4の「アニオン界面活性剤(C)」欄、「多価アルコール(E)」欄、「溶媒(S)」欄にそれぞれ示す。
【0118】
【表4】
試験区分8(製剤安定性の評価)
第1処理剤含有組成物、第2処理剤含有組成物を50℃の環境下に静置し、24時間後の外観を確認した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表3,4の「製剤安定性」欄に示す。
【0119】
・製剤安定性の評価基準(第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物)
◎(可):分離なしの場合
×(不可):分離ありの場合
試験区分9(第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物から処理剤含有組成物の調製)
(実施例33)
表5に示されるように、第1処理剤含有組成物(I-1)50%(部)、及び第2処理剤含有組成物(II-1)50%(部)を混合して実施例33の処理剤含有組成物を調製した。
【0120】
(実施例34~37,39~60、参考例38
実施例33と同様にして、表5に示される第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物を混合して各例の処理剤含有組成物を調製した。
【0121】
第1処理剤含有組成物の種類と質量比、第2処理剤含有組成物の種類と質量比を、表5の「第1処理剤含有組成物」欄、「第2処理剤含有組成物」欄にそれぞれ示す。
【0122】
【表5】
試験区分10(2剤型の処理剤含有組成物の評価)
得られた各例の処理剤含有組成物を用いて、実施例1と同様の方法にて、脱落起泡性試験、乳化安定性、カード性について評価した。結果を表5の「脱落起泡性試験」欄、「乳化安定性」欄、「カード性」欄にそれぞれ示す。
【0123】
各表の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。また、処理剤の希釈液の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)、並びに下記の脂肪酸類(D)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)、並びに多価アルコール(E)(エステルを除く)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)。
【請求項3】
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項4】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項5】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
【請求項6】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、及び前記脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤
【請求項7】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、及び前記多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤
【請求項8】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更に下記の潤滑剤(F)を含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項9】
前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、多価アルコール(E)(エステルを除く)、及び下記の潤滑剤(F)を含有し、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、前記多価アルコール(E)、及び前記潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、
前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び前記潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤
滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項10】
前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記脂肪酸類(D)を含有し、更に任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤と、
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤と、がセットで構成される請求項1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤
滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のレーヨンスパンレース用処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有し、
前記レーヨンスパンレース用処理剤、及び前記溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記レーヨンスパンレース用処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、及び前記溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項12】
前記溶媒(S)が、水である請求項11に記載のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物。
【請求項13】
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、又は
アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、並びに下記の溶媒(S)を含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物と併用され、
下記のエーテルモノエステル誘導体(A)下記のエーテルジエステル誘導体(B)、及び下記の脂肪酸類(D)を含有し、更に任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用第1処理剤。
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)。
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項14】
請求項13に記載のレーヨンスパンレース用第1処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とするレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項15】
下記の工程1~3を経ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項1~10のいずれか一項に記載のレーヨンスパンレース用処理剤をレーヨンに付着させる工程。
工程2:工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できるレーヨンスパンレース用処理剤、レーヨンスパンレース用処理剤含有組成物、レーヨンスパンレース用第1処理剤、レーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物、スパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂が知られている。なかでも、パルプ、コットンリンター等を原料とした再生繊維であるレーヨンは、生分解性に優れ、吸湿性及び吸水性に優れる観点から注目されている。レーヨンを用いてスパンレース不織布を製造する際には、カード通過性等の各種特性を付与するために、原料繊維の表面に、界面活性剤等を含有するレーヨンスパンレース用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1,2に開示のレーヨンスパンレース用処理剤が知られている。特許文献1は、脂肪酸に対しアルキレンオキシドを付加させた構造の脂肪酸誘導体と、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つと、多価アルコールを含有する短繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、脂肪酸に対しエチレンオキシドを付加させたものであるポリオキシアルキレン誘導体、並びに所定の脂肪酸及び/又は油脂である機能付与剤を含有して成るスパンレース用繊維処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6533020号公報
【特許文献2】特許第6132966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のレーヨンスパンレース用処理剤では、レーヨンスパンレース処理剤が付着した繊維をスパンレース工程に通した際に、スパンレース工程で使用する水の脱落起泡が生じやすいという問題があった。特に、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高いと、スパンレース工程における水の脱落起泡が悪化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、レーヨンスパンレース用処理剤において、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を併用する構成が好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1のレーヨンスパンレース用処理剤は、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)、並びに下記の脂肪酸類(D)を含有することを特徴とする。
【0008】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0009】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)。
【0010】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
態様2のレーヨンスパンレース用処理剤は、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)及び下記のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)、並びに多価アルコール(E)(エステルを除く)を含有することを特徴とする。
【0011】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0012】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)。
【0013】
態様は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及び前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有する。
【0014】
態様は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更にアニオン界面活性剤(C)を含有する。
態様は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有する。
【0015】
態様6は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、及び前記脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有する。
【0016】
態様は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、及び多価アルコール(E)(エステルを除く)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、及び前記多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する。
【0017】
は、態様1,2,又は4に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、更に下記の潤滑剤(F)を含有する。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0018】
態様は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記レーヨンスパンレース用処理剤が、更にアニオン界面活性剤(C)、多価アルコール(E)(エステルを除く)、及び下記の潤滑剤(F)を含有し、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、前記アニオン界面活性剤(C)、前記脂肪酸類(D)、前記多価アルコール(E)、及び前記潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、前記エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、前記アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、前記脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、前記多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び前記潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有する。
【0019】
滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
態様10は、態様1に記載のレーヨンスパンレース用処理剤において、前記エーテルモノエステル誘導体(A)、前記エーテルジエステル誘導体(B)、及び前記脂肪酸類(D)を含有し、更に任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤と、がセットで構成される。
【0020】
滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
態様11のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物は、態様1~10のいずれか一態様に記載のレーヨンスパンレース用処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有し、前記レーヨンスパンレース用処理剤、及び前記溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記レーヨンスパンレース用処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、及び前記溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有する。
【0021】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様12は、態様11に記載のレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、水である。
【0022】
態様13のレーヨンスパンレース用第1処理剤は、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、又はアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)(エステルを除く)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤、並びに下記の溶媒(S)を含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物と併用され、下記のエーテルモノエステル誘導体(A)下記のエーテルジエステル誘導体(B)、及び下記の脂肪酸類(D)を含有し、更に任意選択で下記の潤滑剤(F)を含有することを特徴とする。
【0023】
エーテルモノエステル誘導体(A):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物。
【0024】
エーテルジエステル誘導体(B):炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物(ポリエチレングリコールジラウレートを除く)。
【0025】
脂肪酸類(D):炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つ。
潤滑剤(F):炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つ。
【0026】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様14のレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物は、態様13に記載のレーヨンスパンレース用第1処理剤、及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とする。
【0027】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
態様15のスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1~3を経ることを特徴とする。
【0028】
工程1:態様1~10のいずれか一態様に記載のレーヨンスパンレース用処理剤をレーヨンに付着させる工程。
工程2:工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程。
【0029】
工程3:工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
以下、本発明のレーヨンスパンレース用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及び所定のエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有する。また、処理剤は、後述する所定の脂肪酸類(D)又は多価アルコール(E)(エステルを除く(以下、同じ))を含有する。
【0032】
(ノニオン界面活性剤(X))
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤(X)は、所定のエーテルモノエステル誘導体(A)及び所定のエーテルジエステル誘導体(B)を必須成分として含む。後述するエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)とを併用することにより、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【0033】
(エーテルモノエステル誘導体(A))
本実施形態に供されるエーテルモノエステル誘導体(A)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物である。エーテルモノエステル誘導体(A)は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドが重合したポリオキシアルキレン鎖の一方の端部に脂肪酸がエステル結合したモノエステル構造を有している。
【0034】
エーテルモノエステル誘導体(A)の原料となる脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0035】
脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の一価の直鎖アルキル基を有する脂肪酸、(2)イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の一価の分岐鎖構造を有する脂肪酸、(3)ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の一価の直鎖アルケニル基を有する脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(5)ヒマシ油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等の天然由来の脂肪酸等が挙げられる。
【0036】
エーテルモノエステル誘導体(A)の原料となる炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上30モル以下、好ましくは5モル以上25モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0037】
エーテルモノエステル誘導体(A)の具体例としては、例えばステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを20モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを13モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、オレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた化合物、パルミチン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ヤシ脂肪酸1モルに対してアルキレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後プロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物等が挙げられる。
【0038】
これらのエーテルモノエステル誘導体(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(エーテルジエステル誘導体(B))
本実施形態に供されるエーテルジエステル誘導体(B)は、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モル当たり、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上30モル以下付加させた化合物と、炭素数12以上24以下の脂肪酸1モルとをエステル化させた化合物である。エーテルジエステル誘導体(B)は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドが重合したポリオキシアルキレン鎖の両方の端部にそれぞれ脂肪酸がエステル結合したジエステル構造を有している。エーテルジエステル誘導体(B)を構成する2つの脂肪酸は、同一であっても異なっていてもよい。本発明のエーテルジエステル誘導体(B)において、ポリエチレングリコールジラウレートは除かれる。
【0039】
エーテルジエステル誘導体(B)の原料となる脂肪酸としては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄の説明と同様である。
エーテルジエステル誘導体(B)の原料となる炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドとしては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄における説明と同様である。
【0040】
エーテルジエステル誘導体(B)の具体例としては、例えばオレイン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを23モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ラウリン酸1モルに対してアルキレンオキサイドを9モル付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを10モルを付加させ、さらにステアリン酸1モルを付加させた化合物、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させ、さらにステアリン酸1モルを付加させた化合物等が挙げられる。
【0041】
これらのエーテルジエステル誘導体(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、かかるエーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。エーテルモノエステル誘導体(A)の含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0042】
処理剤中において、エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合が5質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、かかるエーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。エーテルジエステル誘導体(B)の含有割合が95質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0043】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上90質量部以下、及びエーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0044】
(その他のノニオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤は、ノニオン界面活性剤(X)として、上述したエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)以外のその他のノニオン界面活性剤を配合してもよい。
【0045】
その他のノニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシアルキレンソルビタントリステアラート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタナート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤、(5)ポリオキシエチレンとジメチルフタラートとラウリルアルコールの共重合物等のエーテル・エステル化合物等が挙げられる。
【0046】
これらのノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(アニオン界面活性剤(C))
本実施形態の処理剤は、更にアニオン界面活性剤(C)を配合してもよい。処理剤がアニオン界面活性剤(C)を含有することにより、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性を向上できる。
【0047】
アニオン界面活性剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤(C)の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数13~15)塩、二級アルカンスルホン酸塩(炭素数11~14)、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキサン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。
【0048】
アニオン界面活性剤(C)を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0049】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の四級ホスホニウムが挙げられる。
【0050】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0051】
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、アニオン界面活性剤(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。アニオン界面活性剤(C)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。かかるアニオン界面活性剤(C)の含有割合の上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。アニオン界面活性剤(C)の含有割合が30質量%以下の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0052】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、及びアニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、及びアニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0053】
(脂肪酸類(D))
本実施形態の処理剤は、更に脂肪酸類(D)が配合されてもよい。処理剤が脂肪酸類(D)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。
【0054】
本実施形態の処理剤に供される脂肪酸類(D)としては、炭素数12以上24以下の脂肪酸、及び油脂から選ばれる少なくとも1つが適用される。
脂肪酸の具体例としては、エーテルモノエステル誘導体(A)欄において挙げた具体例を適用できる。
【0055】
油脂としては、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。植物油の具体例としては、例えばヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、パーム油、トール油等が挙げられる。動物油の具体例としては、例えば卵黄油、牛脂、豚脂、魚油等が挙げられる。
【0056】
これらの脂肪酸類(D)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、脂肪酸類(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。脂肪酸類(D)の含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。かかる脂肪酸類(D)の含有割合の上限は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。脂肪酸類(D)の含有割合が15質量%以下の場合、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0057】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び脂肪酸類(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、及び脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。また、処理剤が溶媒で希釈された希釈液の乳化安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0058】
(多価アルコール(E))
本実施形態の処理剤は、更に多価アルコール(E)が配合されてもよい。処理剤が多価アルコール(E)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0059】
多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0060】
これらの多価アルコール(E)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、多価アルコール(E)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。かかる多価アルコール(E)の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。多価アルコール(E)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0061】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、及び多価アルコール(E)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、及び多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下の割合で含有する。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0062】
(潤滑剤(F))
本実施形態の処理剤は、更に潤滑剤(F)が配合されてもよい。処理剤が潤滑剤(F)を含有することにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0063】
本実施形態の処理剤に供される潤滑剤(F)は、炭化水素化合物、エステル(但し、油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも1つが適用される。
炭化水素化合物の具体例としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えば鉱物油、スピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの炭化水素化合物は、市販品を適宜採用することができる。
【0064】
エステルとしては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0065】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0066】
エステル油の具体例としては、例えば(1)ステアリルステアラート、オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(3)ソルビタンモノステアラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との部分エステル化合物、(4)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(5)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(6)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(7)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0067】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
【0068】
処理剤中において、潤滑剤(F)の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる潤滑剤(F)の含有割合の上限は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。潤滑剤(F)の含有割合がかかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0069】
処理剤中において、エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)の含有割合の合計を100質量部とすると、エーテルモノエステル誘導体(A)を10質量部以上85質量部以下、エーテルジエステル誘導体(B)を10質量部以上85質量部以下、アニオン界面活性剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下、脂肪酸類(D)を0.1質量部以上10質量部以下、多価アルコール(E)を0.1質量部以上70質量部以下、及び潤滑剤(F)を1質量部以上20質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0070】
(保存形態)
処理剤は、上述した成分(A)~(E)を含む1剤型として構成されてもよいし、製剤安定性を向上させる観点から、以下に示されるような2剤型の処理剤として構成されてもよい。
【0071】
2剤型の処理剤は、エーテルモノエステル誘導体(A)、及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有するレーヨンスパンレース用第1処理剤(以下、「第1処理剤」という)と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤(以下、「第2処理剤」という)と、を含むセットとして構成される。第1処理剤は、更に任意選択で脂肪酸類(D)、及び任意選択で潤滑剤(F)を含有してもよい。
【0072】
2剤型の処理剤は、保存時又は流通時等において第1処理剤と、該第1処理剤とは別剤として構成される第2処理剤とから構成されている。2剤型処理剤は、使用時に第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物が調製される。
【0073】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒(S)と混合することによりレーヨンスパンレース用処理剤含有組成物(以下、「処理剤含有組成物」という)が調製され、処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0074】
溶媒(S)は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れる観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、乳化安定性、ハンドリング性に優れる観点から水がより好ましい。
【0075】
処理剤含有組成物中において、処理剤及び溶媒(S)の含有割合の合計を100質量部とすると、処理剤を10質量部以上99.99質量部以下、溶媒(S)を0.01質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0076】
(レーヨン)
本実施形態の処理剤が適用されるレーヨンは、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維であってもよく、一般にステープルと呼ばれる短繊維であってもよい。短繊維であることが好ましい。本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。
【0077】
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、上述したエーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含むノニオン界面活性剤(X)を含有するように構成した。したがって、カード工程前に行われる繊維の乾燥工程において乾燥温度が高い場合であっても、レーヨンスパンレース用処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。また、処理剤の希釈液の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。
【0078】
(1-2)上記第1実施形態の処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有する第1処理剤と、アニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有する第2処理剤と、を含むセットとして構成されてもよい。かかる構成により、処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。
【0079】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1処理剤を具体化した第2実施形態を説明する。以下、上記実施形態との相違点を中心に説明する。
【0080】
本実施形態の第1処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有する。第1処理剤は、さらに任意選択で脂肪酸類(D)及び/又は潤滑剤(F)を含有してもよい。第1処理剤は、使用時にアニオン界面活性剤(C)及び多価アルコール(E)から選ばれる少なくとも1つを含有する第2処理剤、又は該第2処理剤と溶媒(S)とを含有するレーヨンスパンレース用第2処理剤含有組成物(以下、「第2処理剤含有組成物」という)と併用される。
【0081】
エーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、潤滑剤(F)、及び溶媒(S)は、それぞれ第1実施形態において説明した成分と同一である。
【0082】
(溶媒)
本実施形態の第1処理剤は、必要により溶媒(S)と混合することによりレーヨンスパンレース用第1処理剤含有組成物(以下、「第1処理剤含有組成物」という)が調製され、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0083】
溶媒(S)は、第1実施形態で例示したものを採用できる。第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤及び溶媒の含有割合の合計を100質量部とすると、第1処理剤を0.01質量部以上で含有することが好ましい。
【0084】
第2実施形態の第1処理剤の効果について説明する。第2実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)第2実施形態の第1処理剤では、エーテルモノエステル誘導体(A)及びエーテルジエステル誘導体(B)を含有し、使用時にアニオン界面活性剤(C)又は多価アルコール(E)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。また、第1処理剤のみを第2処理剤とは別剤として流通させることができる。
【0085】
<第3実施形態>
次に、本発明のスパンレース不織布の製造方法(以下、「不織布の製造方法」という)を具体化した第3実施形態を説明する。
【0086】
本実施形態の不織布の製造方法では、処理剤をレーヨンに付着させる工程(工程1)、工程1により得られたレーヨンをカード工程に供し、ウェブを製造する工程(工程2)、工程2により得られたウェブを水流にて交絡させ、スパンレース不織布を得る工程(工程3)が行われる。
【0087】
工程1は、処理剤が1剤型の処理剤の場合、溶媒と、第1実施形態の処理剤とを含む希釈液が調製される。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1実施形態の処理剤又は処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。
【0088】
処理剤が2剤型の処理剤の場合、溶媒と、第2実施形態の第1処理剤と、第2処理剤とを含む処理剤の希釈液が調製される。希釈液の調製方法は、例えば溶媒に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加する方法が挙げられる。希釈液は、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物、及び第2処理剤又は第2処理剤含有組成物を添加して調製されることが好ましい。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=95/5~5/95であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0089】
希釈液の製造に用いられる溶媒としては、第1実施形態で例示したものが挙げられる。希釈液は、操作性等の観点から処理剤の濃度として0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0090】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、各剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な繊維特性又は繊維製造特性を付与するための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。
【0091】
処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、シャワー法、ローラー法、滴下・流下法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程等が挙げられる。処理剤の付着量は、レーヨンに対し、溶媒を含まない固形分が0.1~1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。処理剤が付与された繊維は、適宜の条件で乾燥処理が行われる。
【0092】
工程2におけるウェブを製造する工程は、上記処理剤が付着したレーヨンにカーディングを行うカード工程に供し、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0093】
工程3におけるスパンレース不織布を得る工程は、ウェブを製造する工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0094】
第3実施形態の不織布の製造方法の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)第3実施形態の不織布の製造方法では、水流交絡で使用した水の脱落起泡の悪化を低減できるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行うことができる。したがって、水流交絡を好適に行うことができ、スパンレース不織布の地合を向上できる。
【0095】
(3-2)また、処理剤が付与された繊維を適宜の条件で乾燥処理する際、高温条件、例えば100℃以上を採用できる。かかる構成により、乾燥処理を短時間に終了でき、スパンレース不織布の製造効率を向上できる。
【0096】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は特に限定されず、第3実施形態の不織布の製造方法欄に記載の調製方法以外を採用してもよい。
【0097】
・上記実施形態の各処理剤、各組成物、又は希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤、各組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。なお、溶媒以外の通常処理剤に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において50質量%以下が好ましい。
【実施例0098】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0099】
試験区分1(1剤型処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、ノニオン界面活性剤(X)であるエーテルモノエステル誘導体(A)としてステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(A-1)23部(%)、エーテルジエステル誘導体(B)としてオレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(B-1)27部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム(C-1)10部(%)、脂肪酸類(D)として牛脂(D-1)2部(%)、多価アルコール(E)としてエチレングリコール(E-1)36部(%)、潤滑剤(F)としてステアリルステアラート(F-1)2部(%)を含む実施例1の処理剤を調製した。
【0100】
(実施例2~5,7~24、参考例6,25~32、比較例1~11)
実施例2~5,7~24、参考例6,25~32、比較例1~11の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にしてノニオン界面活性剤(X)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0101】
ノニオン界面活性剤(X)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、脂肪酸類(D)の種類と含有量、多価アルコール(E)の種類と含有量、及び潤滑剤(F)の種類と含有量を、表1の「ノニオン界面活性剤(X)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄、「脂肪酸類(D)」欄、「多価アルコール(E)」欄、「潤滑剤(F)」欄にそれぞれ示す。なお、その他ノニオン界面活性剤(G)の含有量は、処理剤中におけるエーテルモノエステル誘導体(A)、エーテルジエステル誘導体(B)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、及び潤滑剤(F)の含有量の合計を100部とした場合の配合量(部)を示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
表1に記載するノニオン界面活性剤(X)、アニオン界面活性剤(C)、脂肪酸類(D)、多価アルコール(E)、潤滑剤(F)の詳細は以下のとおりである。
【0104】
<ノニオン界面活性剤(X)>
(エーテルモノエステル誘導体(A))
A-1:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-2:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-3:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-4:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを13モル付加させた化合物
A-5:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-6:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-7:パルミチン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-8:ラウリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-9:ヤシ脂肪酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-10:オレイン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを20モル付加させた化合物
A-11:オレイン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-12:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A-13:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた化合物
A-14:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた化合物
A-15:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後プロピレンオキサイドを10モル付加させた化合物
A-16:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後プロピレンオキサイドを5モル付加させた化合物
rA-17:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを40モル付加させた化合物
rA-18:セロチン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
rA-17及びrA-18は、エーテルモノエステル誘導体(A)に類似する化合物を示す。
【0105】
(エーテルジエステル誘導体(B))
B-1:オレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物
B-2:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを23モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-3:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-4:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-5:ラウリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた後、ラウリン酸1モルを付加させた化合物
B-6:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを9モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-7:ステアリン酸1モルに対してプロピレンオキサイドを5モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
B-8:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド10モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モル付加させた化合物
B-9:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイド10モルとプロピレンオキサイド5モルをランダム付加させた後、ステアリン酸1モル付加させた化合物
B-10:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた後、プロピレンオキサイドを10モル付加させ、さらにステアリン酸1モル付加させた化合物
B-11:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた後、プロピレンオキサイドを5モル付加させ、さらにステアリン酸1モル付加させた化合物
rB-12:セロチン酸1モルに対してエチレンオキサイド9モル付加させた後、セロチン酸1モル付加させた化合物
rB-13:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを40モル付加させた後、ステアリン酸1モルを付加させた化合物
rB-12及びrB-13は、エーテルジエステル誘導体(B)に類似する化合物を示す。
【0106】
(その他のノニオン界面活性剤(G))
G-1:ポリオキシエチレン(n=5:エチレンオキサイドの付加モル数を示す(以下、同じ))ステアリルエーテル
G-2:ポリオキシエチレン(n=9)ラウリルエーテル
G-3:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアラート
G-4:ポリオキシエチレン(n=18)ソルビタンモノステアラート
G-5:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアラート
<アニオン界面活性剤(C)>
C-1:ラウリルリン酸エステルカリウム
C-2:ジオクチルスルホスクシナートナトリウム
C-3:牛脂硫酸エステルナトリウム
C-4:オレイン酸ナトリウム
C-5:オレイン酸カリウム
C-6:ステアリン酸カリウム
C-7:ラウリン酸カリウム
C-8:オクチル酸カリウム
C-9:ラウリルスルホン酸ナトリウム
C-10:テトラデカンスルホナートナトリウム
<脂肪酸類(D)>
D-1:牛脂
D-2:ステアリン酸
D-3:オレイン酸
D-4:パルミチン酸
D-5:ラウリン酸
D-6:ヤシ脂肪酸
D-7:ベヘン酸
D-8:ひまし油
D-9:ひまし硬化油
D-10:パーム油
D-11:パーム硬化油
D-12:トール油
D-13:ヤシ油
<多価アルコール(E)>
E-1:エチレングリコール
E-2:ジエチレングリコール
E-3:プロピレングリコール
E-4:グリセリン
E-5:ポリエチレングリコール(質量平均分子量200)
E-6:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)
E-7:ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)
E-8:ポリエチレングリコール(質量平均分子量2000)
E-9:ポリプロピレングリコール(質量平均分子量400)
<潤滑剤(F)>
F-1:ステアリルステアラート
F-2:鉱物油(動粘度(40℃):90mm/s)
F-3:鉱物油(動粘度(40℃):15mm/s)
F-4:ジメチルシリコーン(動粘度(25℃):10mm/s)
F-5:ソルビタンモノステアラート
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで求めた。
【0107】
試験区分2(レーヨン繊維への処理剤の付着)
試験区分1において調製された各処理剤をイオン交換水で希釈して、0.15%処理剤の希釈液を調製した。この処理剤の希釈液を繊度1.3×10-4g/mで繊維長38mmのレーヨン繊維に付着量が0.15%となるようにスプレー給油で付着させた。その後、80℃の熱風乾燥機で2時間、又は120℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、25℃×40%RHの雰囲気下で一夜調湿して、処理剤が付着されたレーヨン繊維を得た。
【0108】
試験区分3(脱落起泡性試験)
試験区分2で処理剤が付着されたレーヨン繊維15gを150gのイオン交換水に浸し、2時間浸漬する。浸漬した繊維を取り出し、ハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10mLを25mL共栓付メスシリンダーに入れて蓋をし、10秒間に30回(振幅30cm)のペースで強振した。5分間静置した後の水面から泡上面までの高さを測定し、以下の基準で脱落起泡性を評価した。結果を表2の「脱落起泡性試験」欄に示す。
【0109】
・脱落起泡性試験の評価基準
◎◎(優れる):水面から泡上面までの高さが1mm未満
◎(良好):水面から泡上面までの高さが1mm以上1.5mm未満
○(可):水面から泡上面までの高さが1.5mm以上4mm未満
×(不良):水面から泡上面までの高さが4mm以上
試験区分4(乳化安定性)
試験区分1において調製された各処理剤5質量部にイオン交換水95質量部を加え、50℃で撹拌し、処理剤を5質量部有する処理剤の希釈液を調製した。調製した処理剤の希釈液を100mLニンジン型沈殿瓶に100mL入れた。20℃の環境下に静置し、24時間後の沈殿量を確認し、以下の基準で乳化安定性を評価した。結果を表2の「乳化安定性」欄に示す。
【0110】
・乳化安定性の評価基準
◎◎(優れる):沈殿量が0.1mL未満
◎(良好):沈殿量が0.1mL以上0.5mL未満
○(可):沈殿量が0.5mL以上1mL未満
×(不良):沈殿量が1mL以上
試験区分5(カード性)
試験区分1において調製された各処理剤が付着されたレーヨン繊維20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、ミニチュアカード機に供した。下記式(1)を用いて投入量に対する排出量の割合をカード紡出率(%)として算出し、下記の評価基準でカード性を評価した。結果を表2の「カード性」欄に示す。
【0111】
【数1】
・カード性の評価基準
◎◎(優れる):カード紡出率が90%以上
◎(良好):カード紡出率が85%以上90%未満
○(可):カード紡出率が80%以上85%未満
×(不良):カード紡出率が80%未満
試験区分6(2剤型処理剤の第1処理剤含有組成物の調製)
(第1処理剤含有組成物(I-1))
表3に示されるように、ノニオン界面活性剤(X)であるエーテルモノエステル誘導体(A)としてステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物(A-1)20部(%)、エーテルジエステル誘導体(B)としてオレイン酸1モルに対してエチレンオキサイドを14モル付加させた後、オレイン酸1モルを付加させた化合物(B-1)23部(%)、脂肪酸類(D)として牛脂(D-1)2部(%)、潤滑剤(F)としてステアリルステアラート(F-1)2部(%)、溶媒(S)として水53部(%)を含む第1処理剤含有組成物(I-1)を調製した。
【0112】
(第1処理剤含有組成物(I-2)~(I-28))
第1処理剤含有組成物(I-1)と同様にしてノニオン界面活性剤(X)、脂肪酸類(D)、潤滑剤(F)、及び溶媒(S)を表3に示した割合で含むように調製した。
【0113】
ノニオン界面活性剤(X)の種類と含有量、脂肪酸類(D)の種類と含有量、潤滑剤(F)の種類と含有量、溶媒(S)の種類と含有量を、表3の「ノニオン界面活性剤(X)」欄、「脂肪酸類(D)」欄、「潤滑剤(F)」欄、「溶媒(S)」欄にそれぞれ示す。
【0114】
【表3】
試験区分7(2剤型処理剤の第2処理剤含有組成物の調製)
(第2処理剤含有組成物(II-1))
表4に示されるように、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム(C-1)9部(%)、多価アルコール(E)としてエチレングリコール(E-1)31部(%)、溶媒(S)として水60部(%)を含む第2処理剤含有組成物(II-1)を調製した。
【0115】
(第2処理剤含有組成物(II-2)~(II-28))
第2処理剤含有組成物(II-1)と同様にして、アニオン界面活性剤(C)、多価アルコール(E)、及び溶媒(S)を表4に示した割合で含むように調製した。
【0116】
アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、多価アルコール(E)の種類と含有量を、溶媒(S)の種類と含有量を、表4の「アニオン界面活性剤(C)」欄、「多価アルコール(E)」欄、「溶媒(S)」欄にそれぞれ示す。
【0117】
【表4】
試験区分8(製剤安定性の評価)
第1処理剤含有組成物、第2処理剤含有組成物を50℃の環境下に静置し、24時間後の外観を確認した。以下の基準で製剤安定性を評価した。結果を表3,4の「製剤安定性」欄に示す。
【0118】
・製剤安定性の評価基準(第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物)
◎(可):分離なしの場合
×(不可):分離ありの場合
試験区分9(第1処理剤含有組成物及び第2処理剤含有組成物から処理剤含有組成物の調製)
(実施例33)
表5に示されるように、第1処理剤含有組成物(I-1)50%(部)、及び第2処理剤含有組成物(II-1)50%(部)を混合して実施例33の処理剤含有組成物を調製した。
【0119】
(実施例34~37,39~56、参考例38,57~60
実施例33と同様にして、表5に示される第1処理剤含有組成物と第2処理剤含有組成物を混合して各例の処理剤含有組成物を調製した。
【0120】
第1処理剤含有組成物の種類と質量比、第2処理剤含有組成物の種類と質量比を、表5の「第1処理剤含有組成物」欄、「第2処理剤含有組成物」欄にそれぞれ示す。
【0121】
【表5】
試験区分10(2剤型の処理剤含有組成物の評価)
得られた各例の処理剤含有組成物を用いて、実施例1と同様の方法にて、脱落起泡性試験、乳化安定性、カード性について評価した。結果を表5の「脱落起泡性試験」欄、「乳化安定性」欄、「カード性」欄にそれぞれ示す。
【0122】
各表の比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤は、処理剤が付与された繊維を用いたスパンレース工程における水の脱落起泡の悪化を低減できる。また、処理剤の希釈液の乳化安定性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維を用いたカード通過時におけるカード性を向上できる。