(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065412
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20240508BHJP
B32B 15/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174260
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】曽根 大希
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 純一
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AK02A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DG01B
4F100EH46
4F100EJ52
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JG01B
4F100JG04B
4F100JN01B
4F100YY00B
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC09
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】金属ナノワイヤを含みながらも、着色の少ない透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の透明導電性フィルムは、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備える透明導電性フィルムであって、該透明導電層が金属ナノワイヤを含み、該透明導電性フィルムの全光線透過率が、60%以上であり、該透明導電性フィルムの表面抵抗値は、10Ω/□~200Ω/□であり、該透明導電性フィルムの、波長550nmにおける吸光度に対する波長360nmにおける吸光度の比(Abs(360nm)/Abs(550nm))が、0.5~2.0である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備える透明導電性フィルムであって、
該透明導電層が金属ナノワイヤを含み、
該透明導電性フィルムの全光線透過率が、60%以上であり、
該透明導電性フィルムの表面抵抗値が、10Ω/□~200Ω/□であり、
該透明導電性フィルムの、波長550nmにおける吸光度に対する波長360nmにおける吸光度の比(Abs(360nm)/Abs(550nm))が、0.5~2.0である、
透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属ナノワイヤの太さの標準偏差が、3nm以上である、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤの太さの変動係数が、0.13~0.4である、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記金属ナノワイヤが、金属化合物および有機酸を含有する溶媒に大気中で超音波を照射することによって得られた繊維状の有機金属塩の還元物である、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサーを有する画像表示装置において、タッチセンサーの電極として、透明樹脂フィルム上にITO(インジウム・スズ複合酸化物)などの金属酸化物層を形成して得られる透明導電性フィルムが多用されている。しかし、この金属酸化物層を備える透明導電性フィルムは、屈曲により導電性が失われやすく、フレキシブルディスプレイなどの屈曲性が必要とされる用途には使用しがたいという問題がある。
【0003】
一方、屈曲性の高い透明導電性フィルムとして、金属ナノワイヤを含む透明導電性フィルムが知られている。金属ナノワイヤは、径がナノメートルサイズであるワイヤ状導電性物質である。金属ナノワイヤで構成された透明導電性フィルムにおいては、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤで良好な電気伝導経路が形成され、また、網の目の隙間に開口部を形成して、高い光透過率が実現される。しかしながら、金属ナノワイヤを含む透明導電性フィルムにおいては、プラズモン吸収による着色が問題となる。それを解決する手法として特許文献3では、ナノ粒子を添加することで色相を制御しているが、金属ナノワイヤ以外の粒子を添加しているため、抵抗が高くなったり、ヘイズが上がるといった問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-505358号公報
【特許文献2】特許第6199034号
【特許文献3】特表2017-539047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、金属ナノワイヤを含みながらも、着色の少ない透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の透明導電性フィルムは、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された透明導電層とを備える透明導電性フィルムであって、該透明導電層が金属ナノワイヤを含み、該透明導電性フィルムの全光線透過率が、60%以上であり、該透明導電性フィルムの表面抵抗値は、10Ω/□~200Ω/□であり、該透明導電性フィルムの、波長550nmにおける吸光度に対する波長360nmにおける吸光度の比(Abs(360nm)/Abs(550nm))が、0.5~2.0である。
[2]上記[1]の透明導電性フィルムにおいて、金属ナノワイヤの太さの標準偏差は、3nm以上であってもよい。
[3]上記[1]または[2]の透明導電性フィルムにおいて、金属ナノワイヤの太さの変動係数は、0.13~0.4であってもよい。
[4]上記[1]から[3]のいずれかの透明導電性フィルムにおいて、上記金属ナノワイヤは、金属化合物および有機酸を含有する溶媒に大気中で超音波を照射することによって得られた繊維状の有機金属塩の還元物であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属ナノワイヤを含みながらも、着色の少ない透明導電性フィルムを提供することができる。また、本発明の透明導電性フィルムは、導電性に優れる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.透明導電性フィルム
図1は、本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。透明導電性フィルム100は、基材10と、基材10の少なくとも片側に配置された透明導電層20とを備える。透明導電層は、金属ナノワイヤを含む。
【0010】
上記透明導電性フィルムの全光線透過率は、60%以上である。上記透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。透明導電性フィルムの全光線透過率は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、98%(好ましく99%)である。
【0011】
上記透明導電性フィルムの表面抵抗値は、10Ω/□~200Ω/□である。本発明によれば、色味の影響少なく金属ナノワイヤを含有させることができるため、導電性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは20Ω/□~150Ω/□であり、より好ましくは20Ω/□~100Ω/□である。表面抵抗値は、三菱ケミカルアナリテック社の「抵抗率自動測定システム MCP-S620型・MCP-S521型」により測定することができる。
【0012】
上記透明導電性フィルムは、波長550nmにおける吸光度に対する波長360nmにおける吸光度の比(Abs(360nm)/Abs(550nm))が、0.5~2.0である。このような範囲であれば、黄色着色が少ない透明導電性フィルムとすることができる。このような透明導電性フィルムを用いれば、視認性に優れるタッチセンサー、タッチパネルを得ることができる。
【0013】
本発明によれば、金属ナノワイヤにより透明導電層を形成し、表面抵抗値、全光線透過率、および、(Abs(360nm)/Abs(550nm))を上記のとおり特定することにより、導電性と透光性とがともに優れ、高屈曲性を有する透明導電性フィルムを得ることができる。また、金属ナノワイヤ由来の着色(プラズモン吸収起因の着色)が少なく、視認性向上に寄与し得る透明導電性フィルムを得ることができる。このような透明導電性フィルムは、例えば、光吸収のスペクトルがブロードとなるよう調整することにより得ることができる。1つの実施形態においては、光吸収の分布(結果的に、透明導電性フィルムの着色)は、金属ナノワイヤの太さの均一性により制御される。透明導電性フィルムの着色が、金属ナノワイヤの太さの均一性により制御されることを見いだしたことは、本発明の大きな成果のひとつである。
【0014】
上記透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは0.1%~5%である。
【0015】
B.基材
上記基材を構成する材料は、任意の適切な材料が用いられ得る。例えば、上記樹脂は、任意の適切な樹脂から構成される。基材の平滑性および透明導電層形成用組成物に対する濡れ性に優れ、また、ロールによる連続生産により生産性を大幅に向上させ得るからである。
【0016】
1つの実施形態においては、上記基材は、熱可塑性樹脂から構成される。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;セルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂またはアクリル系樹脂である。これらの樹脂は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れる。上記熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、光学フィルム、例えば、低位相差基材、高位相差基材、位相差板、輝度向上フィルム等を基材として用いることも可能である。
【0017】
上記基材の厚みは、好ましくは20μm~200μmであり、より好ましくは30μm~150μmである。
【0018】
上記基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0019】
上記基材を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80℃~190℃であり、より好ましくは100℃~170℃であり、さらに好ましくは135℃より高く170℃以下であり、特に好ましくは140℃より高く170℃以下である。
【0020】
C.透明導電層
上記のとおり、透明導電層は、金属ナノワイヤを含む。金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された透明導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、少量の金属ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。さらに、金属ナノワイヤが網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成して、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0021】
上記金属ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは5~100,000であり、より好ましくは10~100,000であり、特に好ましくは20~10,000であり、最も好ましくは20~1,000である。このようにアスペクト比の大きい金属ナノワイヤを用いれば、金属ナノワイヤが良好に交差して、少量の金属ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。本明細書において、金属ナノワイヤの長さとは、電子顕微鏡(例えば、倍率:5000倍)により観察される金属ナノワイヤの長軸長さ(長手方向最長部の長さ)である。また、金属ナノワイヤの太さとは、電子顕微鏡(例えば、倍率:50000倍)により観察される金属ナノワイヤの短軸長さ(長手方向最長部に直交する方向における最短部の長さ)である。
【0022】
上記金属ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは400nm未満であり、特に好ましくは30nm~350nmであり、最も好ましくは40nm~300nmである。このような範囲であれば、光透過率の高い透明導電層を形成することができる。
【0023】
上記金属ナノワイヤの太さの数平均値は、好ましくは40nm~150nmであり、より好ましくは50nm~100nmである。なお、金属ナノワイヤの太さの数平均値、ならびに後述の標準偏差および変動係数は、電子顕微鏡(例えば、倍率:50000倍)で透明導電層を観察し、無作為に選択した5つのエリア(3.0μm×2.0μm)それぞれの中で、無作為に選択した5本の金属ナノワイヤの太さを測定し、5エリア×5本の計25点の測定値より求められる。
【0024】
上記金属ナノワイヤの太さの標準偏差は、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは7nm以上である。
【0025】
本発明においては、金属ナノワイヤの太さについて、所定範囲で不均一な分布とすることにより(例えば、金属ナノワイヤの太さの標準偏差を上記範囲とすることにより)、吸収スペクトルをブロードにすることができ、その結果、黄色着色(プラズモン吸収起因の着色)を抑えて色味の少ない透明導電性フィルムを得ることができる。
【0026】
上記金属ナノワイヤの太さの標準偏差は、好ましくは25nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは15nm以下である。このような範囲であれば、透光性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0027】
上記金属ナノワイヤの太さの変動係数は、好ましくは0.13~0.4であり、より好ましくは0.14~0.3であり、さらに好ましくは0.15~0.25である。このような範囲であれば、着色が少なく、かつ、透光性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0028】
上記金属ナノワイヤの長さは、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは10μm~500μmであり、特に好ましくは10μm~100μmである。このような範囲であれば、導電性の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0029】
上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。なかでも好ましくは、導電性の観点から、銀、銅または金であり、より好ましくは銀である。
【0030】
上記金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、溶媒中で硝酸銀を還元する方法、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる。溶媒中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元することによりにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia, Y.etal., Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745、Xia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955-960に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。例えば、異なる製造条件で製造した金属ナノワイヤを混合使用することにより、金属ナノワイヤの太さの不均一性を調整することができる。また、金属ナノワイヤの太さの不均一性を制御する手段として、例えば、下記超音波方式の製造方法において有機酸の組成(酢酸とプロピオン酸の混合比率)により、錯体の安定性を調整するという手段が挙げられる。
【0031】
別の実施形態においては、金属化合物及び有機酸を含有する溶媒に大気中で超音波を照射することによって得られた繊維状の有機金属塩を還元することにより、金属ナノワイヤが得られる(超音波方式)。このような方法を用いれば、太さの不均一性が好ましく調整された金属ナノワイヤを得ることができる。
【0032】
上記金属化合物を構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、白金、ニッケル、アルミニウム、スズ等が挙げられる。中でも好ましくは、銀である。上記金属化合物としては、例えば、上記金属の金属酸化物、無機金属塩、有機金属塩等が挙げられる。上記無機金属塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、塩化物、水酸化物、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、過硫酸塩、過硝酸塩、次亜硝酸塩等が挙げられる。上記有機金属塩としては、例えば、酢酸金属塩、プロピオン酸金属塩、酪酸金属塩、吉草酸金属塩、ヘキサン酸金属塩等のカルボン酸金属塩、スルホン酸金属塩等が挙げられる。
【0033】
上記有機酸としては、例えば、カルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸等が挙げられる。なかでも好ましくはカルボン酸である。
【0034】
上記溶媒は、水性溶媒であってもよく、有機溶媒であってもよい。水性溶媒としては、例えば、水が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール)等が挙げられる。
【0035】
上記有機金属塩の還元方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、プラズマ還元、光還元、レーザー照射還元、固気還元等が挙げられる。固気還元においては、繊維状の有機金属塩と気体状の還元剤とを接触させて有機金属塩を固気還元する。1つの実施形態においては、上記透明導電層は、繊維状の有機金属塩および溶媒を含有する塗工液(前駆体インク)を基材に塗工(塗布・乾燥)した後、塗工層中の有機金属塩を還元して、形成することができる。
【0036】
上記超音波方式による金属ナノワイヤの製造方法は、例えば、国際公開第2015/030045号に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0037】
上記透明導電層は、バインダー樹脂を含んでいてもよい。例えば、バインダー樹脂を含有させた透明導電層形成用組成物を用いることにより、バインダー樹脂を含む透明導電層が形成され得る。上記バインダー樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。該樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース;シリコン系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリアセテート;ポリノルボルネン;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
1つの実施形態においては、上記バインダー樹脂として、硬化性樹脂が用いられる。硬化性樹脂としては、例えば、多官能アクリル系樹脂が挙げられる。該硬化性樹脂は多官能モノマーを含むモノマー組成物から得られ得る。多官能モノマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。多官能モノマーは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記透明導電層の目付けは、好ましくは0.001g/m2~0.09g/m2であり、より好ましくは0.005g/m2~0.05g/m2である。
【0040】
上記透明導電層がバインダー樹脂を含む場合、上記透明導電層における金属ナノワイヤの含有割合は、透明導電層を構成するバインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~50重量部であり、より好ましくは0.1重量部~30重量部である。このような範囲であれば、導電性および透明性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0041】
D.透明導電性フィルムの製造方法
上記透明導電性フィルムは、例えば、上記基材上に、透明導電層形成用組成物を塗工して形成され得る。
【0042】
1つの実施形態においては、透明導電層形成用組成物は、バインダー樹脂および金属ナノワイヤを含む。バインダー樹脂を含む透明導電層形成用組成物は、任意の適切な溶媒を含んでいてもよい。
【0043】
別の実施形態においては、透明導電層形成用組成物は、上記繊維状の有機金属塩および溶媒を含む前駆体インクである。この実施形態においては、いわゆる超音波方式により金属ナノワイヤが得られる。また、この実施形態においては、透明導電層形成用組成物(前駆体インク)を塗布した後に、繊維状の有機金属塩を還元することにより、透明導電層が形成される。この実施形態における透明導電層の形成方法は、例えば、国際公開第2015/030045号に記載されている。当該公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0044】
透明導電層形成用組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、金属ナノワイヤの腐食を防止する腐食防止材、金属ナノワイヤの凝集を防止する界面活性剤等が挙げられる。また、透明導電層形成用組成物は、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、増粘剤、無機粒子、界面活性剤、および分散剤等の添加剤を含み得る。
【0045】
上記透明導電層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には80℃~150℃であり、乾燥時間は代表的には1分~20分である。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。なお、厚みは、エポキシ樹脂にて包埋処理後ウルトラマイクロトームで切削することで断面を形成し、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡「S-4800」を使用して測定した。
【0047】
(1)吸光度
紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製、商品名「UV-3150」)を用いて、波長550nmにおける吸光度(Abs(550nm))、および、波長360nm(Abs(360nm))における吸光度を測定し、(Abs(360nm)/Abs(550nm))を算出した。
(2)表面抵抗値
透明導電性フィルムの表面抵抗値を、ナプソン株式会社製の非接触表面抵抗計 商品名「EC-80」を用いて、渦電流法により測定した。測定温度は23℃とした。
(3)ヘイズ
株式会社村上色彩研究所製の商品名「HR-100」を用いて測定した。測定温度は23℃とした。繰り返し回数3回の平均値を、測定値とした。
(4)全光線透過率
株式会社村上色彩研究所製の商品名「HR-100」を用いて測定した。測定温度は23℃とした。
(5)金属ナノワイヤの太さ
FE-SEM(日立ハイテク社製、商品名「SU8200」)を用いて、透明導電性フィルム表面を観察し、金属ナノワイヤの太さを測定した。無作為に選択した5つのエリア(3.0μm×2.0μm)それぞれの中で、無作為に選択した5本の金属ナノワイヤの太さを測定し、5エリア×5本の測定値より、金属ナノワイヤの太さの最大値、最小値、平均値、標準偏差を求めた。
【0048】
[実施例1]
三角フラスコに入れたエタノール(純度99.5%、和光純薬社製)100mLを、ファンクションジェネレーター(エヌエフ回路設計ブロック社製、商品名「WF1973」)につないだ超音波振動子(シャープ社製、商品名「UI-304R」)でRF周波数44.34kHz,出力100Wで10分間の脱気を行い、酸化銀(I)0(和光純薬社製)0.5g、酢酸(和光純薬社製)129μL、プロピオン酸167μLを加えたのち、40℃の水中でRF周波数96.87kHz、出力100Wの超音波を2時間当てて前駆体インクを得た。
得られた前駆体インクを基材(シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム)上にワイヤーバー#40で塗工し、80℃のオーブン(エスペック社製、商品名「SPH-201」)で1分間乾燥させたのち、その前駆体フィルムと薬包紙を入れたシャーレを170℃に加熱したホットプレート(アズワン社製、商品名「HHP-411」)上にのせ、ヒドラジン一水和物(和光純薬社製)を薬包紙に1滴滴下してふたを閉めて1分間ヒドラジン蒸気に暴露させて還元して透明導電性フィルム(基材/透明導電層(厚み:1.0μm))を作製した。
得られた透明導電性フィルムを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2]
前駆体インクを塗工する際のワイヤーバー#40を、ワイヤーバー#38に変更し、厚み0.95μmの透明導電層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。得られた透明導電性フィルムを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例3]
前駆体インクを塗工する際のワイヤーバー#40を、ワイヤーバー#34に変更し、厚み0.85μmの透明導電層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。得られた透明導電性フィルムを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
前駆体インクを塗工する際のワイヤーバー#40を、ワイヤーバー#32に変更し、厚み0.80μmの透明導電層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。得られた透明導電性フィルムを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1](銀ナノワイヤの合成および銀ナノワイヤ分散液の調製)
攪拌装置を備えた反応容器中、160℃下で、無水エチレングリコール5ml、PtCl2の無水エチレングリコール溶液(濃度:1.5×10-4mol/L)0.5mlを加えた。4分経過後、得られた溶液に、AgNO3の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.12mol/l)2.5mlと、ポリビニルピロリドン(MW:55000)の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.36mol/l)5mlとを同時に、6分かけて滴下した。この滴下後、160℃に加熱し1時間以上かけて、AgNO3が完全に還元されるまで反応を行い、銀ナノワイヤを生成した。次いで、上記のようにして得られた銀ナノワイヤを含む反応混合物に、該反応混合物の体積が5倍になるまでアセトンを加えた後、該反応混合物を遠心分離して(2000rpm、20分)、銀ナノワイヤを得た。
純水中に、該銀ナノワイヤ(濃度:0.2重量%)、およびペンタエチレングリコールドデシルエーテル(濃度:0.1重量%)を分散させ、銀ナノワイヤ分散液Iを調製した。
(透明導電性フィルムの製造)
シクロオレフィン系樹脂フィルムを基材として用いた。この基材に銀ナノワイヤ分散液Iを塗布・乾燥した。次に、オーバーコート層の形成材料として、DIC(株)製、商品名「ユニディックELS-888」80重量部と、DIC(株)製、商品名「ユニディックRS28-605」20重量とを配合して樹脂組成物Aを調整した。この樹脂組成物Aを導電層に塗布し、紫外線を露光量230mJ/cm2で照射し、ポリマーマトリックスを形成し、透明導電性フィルムを得た。
得られた透明導電性フィルムを上記評価に供した。結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
表1に示す実施例1~4の透明導電性フィルムは、(Abs(360nm)/Abs(550nm))が小さく、着色が少ない点で有利である。このような透明導電性フィルムは、金属ナノワイヤの太さの均一性を調整して得ることができる。