(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065430
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】船外機および船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 20/32 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B63H20/32 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174281
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩之
(57)【要約】
【課題】船外機の軽量化、小型化、構成の簡素化を実現する。
【解決手段】船外機は、エンジンと、ファンと、トップカウルアセンブリとを備える。ファンは、エンジンの周囲の空気を吸って吐出口から吐出する。トップカウルアセンブリは、エンジンとファンとを収容するトップカウルと、トップカウルの少なくとも一部を外側から覆うカバー部材とを有する。トップカウルアセンブリには、排気流路を介して吐出口と連通する排気口が形成されている。排気流路の少なくとも一部は、トップカウルの表面とカバー部材の表面とにより区画されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機であって、
エンジンと、
前記エンジンの周囲の空気を吸って吐出口から吐出するファンと、
前記エンジンと前記ファンとを収容するトップカウルと、前記トップカウルの少なくとも一部を外側から覆うカバー部材と、を有し、排気流路を介して前記吐出口と連通する排気口が形成されたトップカウルアセンブリと、
を備え、
前記排気流路の少なくとも一部は、前記トップカウルの表面と前記カバー部材の表面とにより区画されている、船外機。
【請求項2】
請求項1に記載の船外機であって、
前記排気口は、前記トップカウルアセンブリにおける最前部に配置されている、船外機。
【請求項3】
請求項1に記載の船外機であって、
前記排気流路は、前記吐出口から前記排気口に向かって下り勾配である、船外機。
【請求項4】
請求項1に記載の船外機であって、
前記排気口の幅は、前記排気口の高さより大きい、船外機。
【請求項5】
請求項1に記載の船外機であって、
前記ファンは、
複数の羽根を有し、上下方向に延伸する軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体を取り囲み、前記吐出口まで延伸する吐出流路を形成する吐出流路形成体と、
を含み、
前記吐出流路は水平方向に延伸している、船外機。
【請求項6】
請求項1に記載の船外機であって、
前記排気口に、ルーバーが設けられている、船外機。
【請求項7】
請求項6に記載の船外機であって、
前記ルーバーの前面の色は、前記ルーバーの他の箇所の色と異なる、船外機。
【請求項8】
請求項1に記載の船外機であって、
前記排気口は、前記トップカウルと前記カバー部材との間に形成されている、船外機。
【請求項9】
請求項1に記載の船外機であって、
前記排気流路は、上下方向視で前記ファンと重ならない位置に形成されている、船外機。
【請求項10】
請求項1に記載の船外機であって、
前記トップカウルアセンブリには、
前記エンジンへの吸気を取り込むための吸気口と、
前記排気流路から前記トップカウルアセンブリの内部における前記吸気口に面する空間への空気の流れを阻害する気流阻害部と、
が形成されている、船外機。
【請求項11】
請求項1に記載の船外機であって、
前記吐出口は、前記船外機の左右方向において偏心した位置に配置されており、
前記排気口は、前記船外機の左右方向における中心に配置されている、船外機。
【請求項12】
請求項1に記載の船外機であって、
前記ファンは、前記エンジンによって駆動される、船外機。
【請求項13】
船体と、
前記船体の後部に取り付けられた請求項1に記載の船外機と、
を備える、船舶。
【請求項14】
船外機であって、
エンジンと、
前記エンジンの周囲の空気を吸って吐出口から吐出するファンと、
前記エンジンと前記ファンとを収容するトップカウルと、前記トップカウルの少なくとも一部を外側から覆うカバー部材と、を有し、排気流路を介して前記吐出口と連通する排気口が形成されたトップカウルアセンブリと、
を備え、
前記排気口は、前記トップカウルアセンブリにおける最前部に配置されている、船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船外機および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、船体と、船体の後部に取り付けられた船外機とを備える。船外機は、船舶を推進させる推力を生み出す装置である。
【0003】
船外機は、エンジンと、エンジンを収容するカウルとを有する。また、船外機のカウル内には、エンジン付近の排熱のために、エンジンの周囲の空気を吸って吐出口から吐出するファンが設けられる。ファンの吐出口から吐出された空気は、カウルに形成された排気口から外部に排出される。
【0004】
従来、ファンの吐出口からカウルに形成された排気口までの排気流路を形成するために、専用の部品を設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の構成では、排熱用の排気流路の形成のために専用の部品が設けられているため、船外機の軽量化や小型化、構成の簡素化の点で、向上の余地がある。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される船外機は、エンジンと、ファンと、トップカウルアセンブリとを備える。ファンは、前記エンジンの周囲の空気を吸って吐出口から吐出する。トップカウルアセンブリは、前記エンジンと前記ファンとを収容するトップカウルと、前記トップカウルの少なくとも一部を外側から覆うカバー部材とを有する。トップカウルアセンブリには、排気流路を介して前記吐出口と連通する排気口が形成されている。排気流路の少なくとも一部は、前記トップカウルの表面と前記カバー部材の表面とにより区画されている。
【0010】
本船外機では、エンジン付近の排熱のためのファンの吐出口とトップカウルアセンブリに形成された排気口とを連通する排気流路の少なくとも一部が、トップカウルの表面とカバー部材の表面とにより区画されている。そのため、本船外機によれば、排気流路の形成のための専用部品を設けることなく、トップカウルとカバー部材との間の空間を排気流路として利用して排気を行うことができ、船外機の軽量化、小型化、構成の簡素化を実現することができる。
【0011】
(2)本明細書に開示される他の船外機は、エンジンと、ファンと、トップカウルアセンブリとを備える。ファンは、前記エンジンの周囲の空気を吸って吐出口から吐出する。トップカウルアセンブリは、前記エンジンと前記ファンとを収容するトップカウルと、前記トップカウルの少なくとも一部を外側から覆うカバー部材とを有する。トップカウルアセンブリには、排気流路を介して前記吐出口と連通する排気口が形成されている。排気口は、前記トップカウルアセンブリにおける最前部に配置されている。
【0012】
本船外機では、排気口を船体に最も近い位置、すなわち、船体の存在によって波や飛沫がかかりにくい位置に配置することができ、排気口からトップカウルアセンブリの内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、船外機、船外機と船体とを備える船舶等の形態で実現することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に開示される船外機によれば、排気流路の形成のための専用部品を設けることなく、トップカウルとカバー部材との間の空間を排気流路として利用して排気を行うことができ、船外機の軽量化、小型化、構成の簡素化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図
【
図5】トップカウルアセンブリ30を取り外した状態の船外機100の上側部分の外観構成を示す説明図
【
図7】船外機100の上側部分の断面(左右方向に直交する断面)の構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
(船舶10の構成)
図1は、本実施形態の船舶10の構成を概略的に示す斜視図である。
図1および後述する他の図面には、船舶10の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。より具体的には、各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向および上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。
【0017】
船舶10は、船体200と、船外機100とを備える。本実施形態では、船舶10は、1つの船外機100を有するが、船舶10が複数の船外機100を有していてもよい。
【0018】
(船体200の構成)
船体200は、船舶10において乗員が搭乗する部分である。船体200は、居住空間204を有する船体本体部202と、居住空間204に設置された操縦席240と、操縦席240付近に設置された操縦装置250とを有する。操縦装置250は、操船のための装置であり、例えば、ステアリングホイール252と、シフト・スロットルレバー254と、ジョイスティック255と、モニタ256と、入力装置258とを有する。また、船体200は、居住空間204の後端を区画する仕切壁220と、船体200の後端に位置するトランサム210とを有する。前後方向において、トランサム210と仕切壁220との間には空間206が存在している。
【0019】
(船外機100の構成)
図2は、船外機100の構成を概略的に示す側面図である。以下では、特に断りがない限り、基準姿勢の船外機100について説明する。基準姿勢は、後述するクランクシャフト124の回転軸線Acが上下方向に延伸し、かつ、プロペラシャフト111の回転軸線Apが前後方向に延伸する姿勢である。前後方向、左右方向および上下方向のそれぞれは、基準姿勢の船外機100に基づいて定められる。
【0020】
船外機100は、船舶10を推進させる推力を発生する装置である。船外機100は、船体200の後部のトランサム210に取り付けられている。船外機100は、船外機本体110と、懸架装置150とを有する。
【0021】
(船外機本体110の構成)
船外機本体110は、エンジン120と、プロペラシャフト111と、プロペラ112と、伝達機構130と、フライホイール式マグネット発電機127と、ファン70と、カウル114と、ケーシング116とを備える。
【0022】
図3は、カウル114の外観構成を示す説明図である。カウル114は、船外機本体110の上部に配置された収容体である。カウル114は、カウル114の下部を構成するボトムカウル20と、カウル114の上部を構成するトップカウルアセンブリ30とを有する。トップカウルアセンブリ30は、ボトムカウル20に対して、取り外し可能に取り付けられている。
【0023】
トップカウルアセンブリ30は、トップカウル40と、トップカバー部材50と、リアカバー部材60とを有する。
図4は、トップカウル40の外観構成を示す説明図である。トップカウル40は、エンジン120を収容する収容体である。トップカバー部材50は、トップカウル40の上部を外側から覆うパネル状の部材であり、トップカウル40の上部に取り付けられている。リアカバー部材60は、トップカウル40の後部を外側から覆うパネル状の部材であり、トップカウル40の後部に取り付けられている。トップカバー部材50は、特許請求の範囲におけるカバー部材の一例である。
【0024】
ケーシング116は、カウル114の下方に位置し、船外機本体110の下部に配置された収容体である。
【0025】
エンジン120は、動力を発生する原動機であり、トップカウル40内に収容されている。エンジン120は、例えば内燃機関により構成されている。エンジン120は、図示しないピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト124を有する。クランクシャフト124は、その回転軸線Acが上下方向に延伸する姿勢で配置されている。また、エンジン120は、吸気系部品126(例えば、サイレンサー、スロットルボディ等)を有する。
【0026】
フライホイール式マグネット発電機127は、エンジン120の補機としての交流発電機であり、トップカウル40内におけるエンジン120の上方に収容されている。フライホイール式マグネット発電機127は、フライホイールロータ128と、ステータ129とを有する。フライホイールロータ128は、クランクシャフト124の上端部に連結されており、クランクシャフト124の回転に伴い回転する。
【0027】
ファン70は、エンジン120付近の排熱のために、エンジン120の周囲の空気を吸って後述する吐出口74から吐出する送風機である。ファン70は、トップカウル40内におけるフライホイール式マグネット発電機127の上方に(すなわち、エンジン120の上方に)収容されている。ファン70の構成については、後に詳述する。
【0028】
プロペラシャフト111は、棒状の部材であり、船外機本体110における比較的下方の位置に、前後方向に延伸する姿勢で配置されている。プロペラシャフト111の前端部は、ケーシング116内に収容されており、プロペラシャフト111の後端部は、ケーシング116から後方に突出している。
【0029】
プロペラ112は、複数枚の羽を有する回転体であり、プロペラシャフト111の後端部に取り付けられている。回転軸線Apまわりのプロペラシャフト111の回転に伴い、プロペラ112も回転する。プロペラ112は、回転することによって推力を発生する。
【0030】
伝達機構130は、エンジン120の回転をプロペラシャフト111に伝達する機構である。伝達機構130の少なくとも一部は、ケーシング116内に収容されている。伝達機構130は、ドライブシャフト132と、シフト機構134とを有する。
【0031】
ドライブシャフト132は、棒状の部材であり、エンジン120のクランクシャフト124の下方に、上下方向に延伸する姿勢で配置されている。ドライブシャフト132の上端部は、クランクシャフト124に連結されている。ドライブシャフト132は、エンジン120の回転(クランクシャフト124の回転)に伴い回転する。
【0032】
シフト機構134は、ドライブシャフト132の下端部に連結されると共に、プロペラシャフト111の前端部に連結されている。シフト機構134は、例えば、複数のギヤと、ギヤの噛み合いを切り換えるクラッチとを含み、エンジン120の回転に伴うドライブシャフト132の回転を、回転方向を切り替え可能にプロペラシャフト111に伝達する。シフト機構134がドライブシャフト132の回転を正転方向の回転としてプロペラシャフト111に伝達すると、プロペラシャフト111と共に正転方向に回転するプロペラ112が前進方向の推力を発生する。反対に、シフト機構134がドライブシャフト132の回転を逆転方向の回転としてプロペラシャフト111に伝達すると、プロペラシャフト111と共に逆転方向に回転するプロペラ112が後進方向の推力を発生する。
【0033】
(懸架装置150の構成)
懸架装置150は、船外機本体110を船体200に懸架する装置である。懸架装置150は、左右一対のクランプブラケット152と、チルト軸160と、スイベルブラケット156と、ステアリング軸158とを含む。
【0034】
左右一対のクランプブラケット152は、船体200の後方に、互いに左右方向に離隔した状態で配置されており、例えばボルトによって船体200のトランサム210に固定されている。各クランプブラケット152は、左右方向に延伸する貫通孔が形成された筒状の支持部152aを有する。
【0035】
チルト軸160は、棒状の部材であり、クランプブラケット152の支持部152aの貫通孔内に回転可能に支持されている。チルト軸160の中心線であるチルト軸線Atは、船外機100のチルト動作における水平方向(左右方向)の軸線を構成する。
【0036】
スイベルブラケット156は、一対のクランプブラケット152に挟まれるように配置されており、チルト軸線Atまわりに回転可能に、チルト軸160を介してクランプブラケット152の支持部152aに支持されている。スイベルブラケット156は、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを含むチルト装置(不図示)により、クランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転駆動される。
【0037】
ステアリング軸158は、棒状の部材であり、上下方向に延伸する姿勢で、ステアリング軸158の中心線であるステアリング軸線Asまわりに回転可能にスイベルブラケット156に支持されている。ステアリング軸158は、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを含むステアリング装置(不図示)により、スイベルブラケット156に対してステアリング軸線Asまわりに回転駆動される。
【0038】
船外機本体110は、ステアリング軸158に固定されている。そのため、ステアリング軸158がスイベルブラケット156に対してステアリング軸線Asまわりに回転すると、ステアリング軸158に固定された船外機本体110もステアリング軸線Asまわりに回転する。これにより、船体200の向きを基準としたプロペラ112が発生する推力の向きが変更され、船舶10の操舵が実現される。
【0039】
また、スイベルブラケット156がクランプブラケット152に対してチルト軸線Atまわりに回転すると、スイベルブラケット156に支持されたステアリング軸158およびステアリング軸158に固定された船外機本体110もチルト軸線Atまわりに回転する。これにより、船体200に対して船外機本体110を上下方向に回転させるチルト動作が実現される。船外機100のチルト動作により、プロペラ112が水中に位置するチルトダウン状態(船外機100が基準姿勢にある状態)からプロペラ112が水面より上側に位置するチルトアップ状態までの範囲で、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を変更することができる。なお、船外機本体110のチルト軸線Atまわりの角度を調整して船舶10の走行時の姿勢を調整するトリム動作も実行することができる。
【0040】
(ファン70およびその周辺の構成)
次に、船外機100におけるファン70およびその周辺の構成について説明する。
図5は、トップカウルアセンブリ30を取り外した状態の船外機100の上側部分の外観構成を示す説明図であり、
図6は、
図5の一部を拡大して示す説明図であり、
図7は、船外機100の上側部分の断面(左右方向に直交する断面)の構成を示す説明図である。なお、
図6では、ファン70の内部構成を示すために、後述するシュラウドカバー72の一部の図示を省略している。
【0041】
上述したように、ファン70は、エンジン120付近の排熱のために、エンジン120の周囲の空気を吸って吐出口74から吐出する送風機である。ファン70は、回転体71と、シュラウド73と、シュラウドカバー72とを有する。
【0042】
回転体71は、略円筒状の部材であり、上下方向に延伸する軸Afを中心に回転可能に設置されている。回転体71は、軸Afの周りに略均等に配置された複数の羽根78を有する。回転体71は、フライホイール式マグネット発電機127(
図2)のフライホイールロータ128に連結されており、フライホイールロータ128の回転に伴い回転する。上述したように、フライホイールロータ128はエンジン120のクランクシャフト124の回転に伴い回転するため、回転体71を含むファン70は、エンジン120によって駆動されると言える。
【0043】
シュラウド73は、エンジン120の上方に配置されており、シュラウドカバー72は、シュラウド73の上方に配置されてシュラウド73と連結されている。シュラウド73およびシュラウドカバー72は、回転体71を取り囲むような筐体を構成する。なお、シュラウド73には上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔にフライホイールロータ128が嵌合している。シュラウド73およびシュラウドカバー72により、ファン70の内部に、回転体71の周囲から吐出口74まで延伸する吐出流路76が形成される。より詳細には、シュラウド73は、主として吐出流路76の下面を構成し、シュラウドカバー72は、主として吐出流路76の側面および上面を構成する。
図7に示すように、吐出流路76は、水平方向に延伸している。本明細書において、水平方向とは、厳密な水平方向に限定されず、水平方向からの傾きが15度以内の方向を含む。吐出流路76を水平方向に延伸させることにより、例えば、吐出流路76の圧損を低減して排気効率を向上させることができる。シュラウド73およびシュラウドカバー72は、特許請求の範囲における吐出流路形成体の一例である。
【0044】
ファン70の回転体71が回転すると、フライホイールロータ128に形成された貫通孔を介してエンジン120の周囲の空気がファン70の内部に吸い込まれ、吸い込まれた空気は回転体71の回転によって回転体71の周囲の吐出流路76に向けて押し出され、吐出流路76を介して吐出口74から吐出される。これにより、エンジン120付近の排熱が実現される。
【0045】
図4および
図7に示すように、ファン70の吐出流路76の終端である吐出口74は、トップカウル40の上面に配置されている。トップカウル40にはトップカウル40を外側から覆うトップカバー部材50が取り付けられているため、吐出口74は外部に露出していない(
図3参照)。吐出口74とトップカウル40の上面との間には、シール79が配置されている。吐出口74には、異物侵入防止等のために、ルーバー75が設けられている。
【0046】
図3、
図4および
図7に示すように、トップカウルアセンブリ30には、ファン70の吐出口74から吐出された空気を船外機100の外部に排出するための排気口(排熱口)32が形成されている。なお、ここで言う「排気」は、エンジン120付近の排熱のための排気を意味し、エンジン120からの排ガスを排出するための排気とは異なる。排気口32は、トップカウルアセンブリ30における最前部に配置されている。本明細書において、トップカウルアセンブリ30における最前部とは、トップカウルアセンブリ30を前後方向に沿って仮想的に5等分したうちの最も前方の部分を意味する。
【0047】
また、トップカウルアセンブリ30の内部には、トップカウル40の表面(上面)とトップカバー部材50の表面(下面)とにより区画され、排気口32に連通する空間が存在している。この空間は、ファン70の吐出口74と排気口32とを連通する排気流路36として機能する。すなわち、ファン70の吐出口74から吐出された空気は、排気流路36を介して排気口32に至り、排気口32から船外機100の外部に排出される。
図4に示すように、排気口32から外部に排出された空気は、走行風Wによる負圧によって吸い出され、左右それぞれの後方に向かう排気流れEを形成する。
【0048】
また、
図3および
図4に示すように、トップカウルアセンブリ30には、エンジン120への吸気を取り込むための吸気口34が形成されている。本実施形態では、左右2つの吸気口34が、トップカウルアセンブリ30における前後方向の中央部から後部にかけて配置されている。吸気口34は、トップカウルアセンブリ30を構成するトップカウル40とトップカバー部材50との間に形成されている。また、トップカウル40の上面には貫通孔42が形成されており、
図4および
図7に吸気の流れIとして示すように、吸気口34から導入された空気は、貫通孔42を介してトップカウル40の内部に進入し、エンジン120の吸気系部品126により吸気される。また、吸気口34から導入された空気の一部は、上述したように、エンジン120付近の排熱のために、ファン70によって吸引され、吐出口74および排気口32を介して外部に排出される。
【0049】
なお、
図7に示すように、排気流路36は、ファン70の吐出口74から排気口32に向かって下り勾配となっている。そのため、排気口32を介して排気流路36に水が浸入した場合であっても、排気流路36の下り勾配によって速やかに排水することができ、排気流路36より奥まで水が侵入することを抑制することができる。なお、排気流路36の勾配は、水平方向を0度としたとき、例えば5度以上、60度以下であることが好ましく、10度以上、55度以下であることがより好ましく、15度以上、50度以下であることがさらに好ましい。
【0050】
また、
図4に示すように、吐出口74は、船外機100の左右方向において偏心した位置(左側に寄った位置)に配置されている一方、排気口32は、船外機100の左右方向における中心に配置されている。そのため、吐出口74と排気口32とを連通する排気流路36は、左右方向において偏心した位置から中心の位置に向けて斜め方向に延伸している。これにより、例えば、排気口32を介して排気流路36に水が浸入した場合であっても、排気流路36から吐出口74を介してファン70の内部まで水が侵入することを抑制することができる。また、
図4および
図7に示すように、排気流路36は、上下方向視でファン70と重ならない位置に形成されている。これにより、例えば、排気流路36の経路の複雑化を抑制することによって圧損を低減することができ、排気効率を向上させることができる。
【0051】
また、排気口32の幅は、排気口32の高さより大きい。このように排気口32が横長であることにより、例えば、排気口32からトップカウルアセンブリ30の内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。また、排気口32が横長であることにより、排気口32からの排気を船外機100の側方に多く流すことができ、排気口32からの排気が他の開口部(例えば吸気口34)からトップカウルアセンブリ30の内部に還流することを抑制することができる。排気口32の高さに対する幅の比は、例えば1.5以上、5.0以下であることが好ましく、2.0以上、4.5以下であることがより好ましく、2.5以上、4.0以下であることがさらに好ましい。
【0052】
また、排気口32は、トップカウルアセンブリ30を構成するトップカウル40とトップカバー部材50との間に形成されている。これにより、例えば、トップカウル40やトップカバー部材50に排気口を開口することなく、トップカウル40とトップカバー部材50との間の空間を排気口32として利用することができる。
【0053】
また、
図3および
図4に示すように、排気口32にはルーバー33が設けられている。これにより、例えば、排気口32への異物の侵入(例えば、係留ロープの引っ掛かり)を抑制することができる。また、ルーバー33の前面の色は、ルーバー33の他の箇所の色と異なっている。これにより、例えば、排気口32の存在を視認しやすくすることができ、排気口32への異物の侵入を効果的に抑制することができる。例えば、ルーバー33の前面を白色とし、ルーバー33の他の箇所を黒色としてもよい。
【0054】
図8は、
図7のX1部を拡大して示す説明図である。
図4、
図7および
図8に示すように、トップカウル40の上面には、連続的な凸部44が形成されており、トップカバー部材50の下面におけるトップカウル40の凸部44のすぐ後方の位置には、連続的な凸部54が形成されている。これらの凸部44および凸部54がいわゆるラビリンス構造として機能することにより、排気流路36からトップカウルアセンブリ30の内部における吸気口34に面する空間39への空気の流れEx(
図7参照)が阻害される。その結果、エンジン120への吸気温度の上昇を抑制することができる。なお、このような空気の流れExをより確実に阻害するために、トップカバー部材50とトップカウル40との間にシール52を設けてもよい。凸部44、凸部54およびシール52の少なくとも1つは、特許請求の範囲における気流阻害部の一例である。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の船外機100では、エンジン120付近の排熱のためのファン70の吐出口74とトップカウルアセンブリに形成された排気口32とを連通する排気流路36が、トップカウル40の表面とトップカバー部材50の表面とにより区画されている。そのため、本実施形態の船外機100によれば、排熱用の排気流路の形成のための専用部品を設けることなく、トップカウル40とトップカバー部材50との間の空間を排気流路36として利用して排気を行うことができ、船外機100の軽量化、小型化、構成の簡素化を実現することができる。
【0056】
また、本実施形態の船外機100では、排気口32がトップカウルアセンブリ30における最前部に配置されている。そのため、本実施形態の船外機100によれば、排気口32を船体200に最も近い位置、すなわち、船体200の存在によって波や飛沫がかかりにくい位置に配置することができ、排気口32からトップカウルアセンブリ30の内部に水が浸入することを効果的に抑制することができる。
【0057】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
上記実施形態の船舶10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、排気口32がトップカウルアセンブリ30における最前部以外の部分に配置されていてもよい。また、上記実施形態では、排気口32はトップカウル40とトップカバー部材50との間に形成されているが、排気口32がトップカウルアセンブリ30における他の箇所に形成されていてもよい。また、上記実施形態において、排気口32の幅が排気口32の高さより小さくてもよいし、排気口32の幅が排気口32の高さと等しくてもよい。
【0059】
上記実施形態では、排気口32のルーバー33の前面の色はルーバー33の他の箇所の色と異なっているが、両者が同色であってもよい。また、ルーバー33が省略されてもよい。
【0060】
上記実施形態では、排気流路36はファン70の吐出口74から排気口32に向かって下り勾配であるが、排気流路36が水平方向に延伸していてもよいし、上り勾配であってもよい。また、上記実施形態では、排気流路36は上下方向視でファン70と重ならない位置に形成されているが、排気流路36が他の位置に形成されていてもよい。また、上記実施形態では、排気流路36はトップカウル40の表面とトップカバー部材50の表面とにより区画されているが、排気流路36が他の部材により区画されていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、ファン70の吐出流路76は水平方向に延伸しているが、吐出流路76が水平方向以外の方向に延伸していてもよい。
【0062】
上記実施形態では、ファン70の吐出口74は船外機100の左右方向において偏心した位置に配置されており、排気口32は船外機100の左右方向における中心に配置されているが、吐出口74および/または排気口32の位置は任意に変更可能である。
【0063】
上記実施形態では、排気流路36からトップカウルアセンブリ30の内部における吸気口34に面する空間39への空気の流れを阻害する気流阻害部として、凸部44、凸部54およびシール52が設けられているが、気流阻害部として他の構成が採用されてもよい。
【0064】
上記実施形態では、ファン70はエンジン120により駆動されるが、ファン70が他の構成(例えば電気モータ)により駆動されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10:船舶 20:ボトムカウル 30:トップカウルアセンブリ 32:排気口 33:ルーバー 34:吸気口 36:排気流路 39:空間 40:トップカウル 42:貫通孔 44:凸部 50:トップカバー部材 52:シール 54:凸部 60:リアカバー部材 70:ファン 71:回転体 72:シュラウドカバー 73:シュラウド 74:吐出口 75:ルーバー 76:吐出流路 78:羽根 79:シール 100:船外機 110:船外機本体 111:プロペラシャフト 112:プロペラ 114:カウル 116:ケーシング 120:エンジン 124:クランクシャフト 126:吸気系部品 127:フライホイール式マグネット発電機 128:フライホイールロータ 129:ステータ 130:伝達機構 132:ドライブシャフト 134:シフト機構 150:懸架装置 152:クランプブラケット 152a:支持部 156:スイベルブラケット 158:ステアリング軸 160:チルト軸 200:船体 202:船体本体部 204:居住空間 206:空間 210:トランサム 220:仕切壁 240:操縦席 250:操縦装置 252:ステアリングホイール 254:シフト・スロットルレバー 255:ジョイスティック 256:モニタ 258:入力装置