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  • 特開-クランプ回路の制御回路 図1
  • 特開-クランプ回路の制御回路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006544
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】クランプ回路の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20240110BHJP
【FI】
H02M1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107545
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】麻植 実
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM03
(57)【要約】
【課題】クランプ回路を構成する部品が破損することを防止する。
【解決手段】電源から負荷への電流の供給を制御する主スイッチ素子に並列接続され、当該主スイッチ素子のターンオフ時に生じるサージ電圧を吸収するためのクランプ回路であって、抵抗素子と副スイッチ素子とが直列接続された直列回路部が、複数互いに並列接続され、前記複数の副スイッチ素子の各々のスイッチング周期のデューティ比が徐々に小さくなり、かつ少なくとも前記サージ電圧の吸収初期において、前記複数の副スイッチ素子のオン期間が重なるようにそれらのスイッチングタイミングがずれているクランプ回路。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷への電流の供給を制御する主スイッチ素子と、前記主スイッチ素子のターンオフ時に生じるサージ電圧を吸収するために、前記主スイッチ素子に並列接続され、抵抗素子と副スイッチ素子とが直列接続された直列回路部で構成されるクランプ回路とを制御するクランプ回路の制御回路であって、
前記主スイッチ素子のターンオフの開始後に、前記主スイッチ素子におけるゲート電圧を徐々に低下させるとともに、前記副スイッチ素子がオンである時間の割合を示す通流率を制御するクランプ回路の制御回路。
【請求項2】
前記主スイッチ素子のターンオフの開始後に時間の経過に応じて、前記通流率を減少させて制御する、請求項1記載のクランプ回路の制御回路。
【請求項3】
前記主スイッチ素子に流れ込む電流の大きさに応じて、前記ゲート電圧が低下する速度を切り替える、請求項1記載のクランプ回路の制御回路。
【請求項4】
前記主スイッチ素子に接続され、前記ゲート電圧が低下する速度を調整する調整抵抗素子をさらに備える、請求項1記載のクランプ回路の制御回路。
【請求項5】
前記直列回路部は複数互いに並列接続されている、請求項1記載のクランプ回路の制御回路。
【請求項6】
前記副スイッチ素子は半導体スイッチである、請求項1乃至5の何れか一項に記載のクランプ回路の制御回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ回路を制御する制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC-DCコンバータ等の電源装置等では、スイッチ素子のスイッチング時または短絡事故時に生じるサージ電圧からスイッチ素子自身や他の回路素子を保護するためにクランプ回路が設けられている。
【0003】
従来のクランプ回路として、例えば特許文献1に示すように、抵抗素子と副スイッチ素子とが直列接続された直列回路部を、主回路に設けられた主スイッチ素子に複数並列に設けた回路が提案されている。この種のクランプ回路および主スイッチ素子を制御するために制御回路が設けられている。この制御回路は、主回路を流れる電流と予め設定された閾値とを比較し、その比較結果に基づいて、各副スイッチ素子のオンおよびオフを制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-141632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述の制御回路は、サージ電圧が発生すると、主スイッチ素子を一度に開放するとともに、クランプ回路の各副スイッチ素子を制御する。主スイッチ素子が一度に開放されると、主回路側には電流が流れなくなるので、サージ電圧によって生じるサージ電流は、全てクランプ回路側へと流れる。ここで、クランプ回路に流れるサージ電流が、クランプ回路の抵抗素子または副スイッチ素子などの部品の定格容量を超過すると、クランプ回路の部品が破損する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、サージ電圧が発生した場合にクランプ回路を構成する部品が破損することを防止することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るクランプ回路の制御回路は、電源から負荷への電流の供給を制御する主スイッチ素子と、前記主スイッチ素子のターンオフ時に生じるサージ電圧を吸収するために、前記主スイッチ素子に並列接続され、抵抗素子と副スイッチ素子とが直列接続された直列回路部で構成されるクランプ回路とを制御するクランプ回路の制御回路であって、前記主スイッチ素子のターンオフの開始後に、前記主スイッチ素子におけるゲート電圧を徐々に低下させるとともに、前記副スイッチ素子がオンである時間の割合を示す通流率を制御することを特徴とする。
【0008】
このようなクランプ回路の制御回路であれば、ゲート電圧が徐々に低下するように制御されるとともに、クランプ回路の通流率が制御されることで、クランプ回路だけでなく主スイッチ素子にもサージ電流が流れることとなる。つまり、クランプ回路だけでなく、主スイッチ素子でも限流動作を行うこととなる。その結果、クランプ回路に流れる電流を小さくすることができ、クランプ回路を構成する部品が破損することを防止できる。また、クランプ回路に流れる電流が小さくなるので、クランプ回路におけるサージ電圧の吸収能力を増強するとともに、クランプ回路を構成する部品の負荷を軽減して、クランプ回路の小型化が可能となる。
【0009】
前記クランプ回路の制御回路は、前記主スイッチ素子のターンオフの開始以降、前記通流率を徐々に減少させて制御することが好ましい。
この構成であれば、主スイッチ素子のターンオフ開始以降、通流率が徐々に低下するので、サージ電流を徐々にクランプ回路側へと転流させることができる。
【0010】
前記クランプ回路の制御回路は、前記主スイッチ素子に流れ込む電流の大きさに応じて、前記ゲート電圧が低下する速度を切り替えることが好ましい。
この構成であれば、制御回路が主スイッチ素子に流れ込む電流の大きさに応じて、ゲート電圧の低下速度を切り替えるので、クランプ回路に流れる電流の割合を制御することができる。
【0011】
前記クランプ回路の制御回路は、前記主スイッチ素子に接続され、前記ゲート電圧が低下する速度を調整する調整抵抗素子をさらに備えることが挙げられる。
このような調整抵抗素子を備えていれば、主スイッチ素子に流れる電流を小さくすることができるので、主スイッチ素子の負荷を低減することができる。
【0012】
前記直列回路部は、複数互いに並列接続されていることが望ましい。
このような構成であれば、直列回路部が複数かつ並列に接続されているので、クランプ回路は、サージ電圧をより吸収することができる。
【0013】
前記副スイッチ素子は、半導体スイッチであることが望ましい。
このような副スイッチ素子であれば、機械式スイッチに比べて、副スイッチ素子のスイッチング速度を高速にすることができるので、制御回路は、クランプ回路の通流率を高速で制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、サージ電圧が発生した場合にクランプ回路を構成する部品が破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のクランプ回路の制御回路の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態のクランプ回路の制御回路のサージ電圧吸収動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るクランプ回路の制御回路の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態のクランプ回路100の制御回路300は、クランプ回路100を制御するだけでなく、当該クランプ回路100の保護対象である主スイッチ素子200を制御する機能を有する。
【0018】
クランプ回路100は、図1に示すように、電力変換回路等の主回路に設けられた主スイッチ素子200に並列接続されて、例えば主スイッチ素子200のターンオフ時等に生じるサージ電圧VceMから主スイッチ素子200や周辺の回路素子を保護するものである。本実施形態の主スイッチ素子200は、例えばMOSFET等の半導体スイッチである。なお、図示しない主回路には、コイル及び抵抗素子が直列接続されており、主スイッチ素子200のターンオフ前には、主回路のコイル及び抵抗素子にはそれぞれ電流が流れている。
【0019】
具体的にクランプ回路100は、主スイッチ素子200に並列接続され、抵抗素子11と副スイッチ素子12とが互いに直列接続された直列回路部1を備えている。ここで、抵抗素子11は、サージ電流Iのエネルギーを消費するためのものである。副スイッチ素子12は、抵抗素子11に流れる電流のオンまたはオフを切り替えるものである。本実施形態の副スイッチ素子12は、例えばMOSFET等の半導体スイッチである。
【0020】
また、クランプ回路100は、直列回路部1を複数備えており、各直列回路部1の抵抗素子11は、抵抗値が互いに等しくものであっても良いし、互いに異なるものであっても良い。ここでは、クランプ回路100は、構成が同一である第1直列回路部1Aと第2直列回路部1Bとを備えている。
【0021】
制御回路300は、主スイッチ素子200に流れる電流Iと、主スイッチ素子200の電圧を検出して、主スイッチ素子200の駆動回路400および各副スイッチ素子12A、12Bに制御信号を送信し、クランプ回路100および主スイッチ素子200を制御する。具体的な構成は後述する。
【0022】
ここで、主スイッチ素子200の駆動回路400は、制御回路300からの制御信号を受信し、主スイッチ素子200の開放動作を行う。具体的に駆動回路400は、サージ電圧VceMが生じた際に、制御回路300からターンオフ制御信号を受信して、主スイッチ素子200を開放するよう動作させる。
【0023】
本実施形態の制御回路300は、図2に示すように、主スイッチ素子200のターンオフ動作開始後に、主スイッチ素子200におけるゲート電圧VgeMを徐々に低下させるとともに、各副スイッチ素子12A、12Bがオンである時間の割合を示す通流率を制御するものである。
【0024】
具体的に制御回路300は、サージ電圧VceMが検出された場合に、主スイッチ素子200を開放するためのターンオフ制御信号を駆動回路400に送信し、副スイッチ素子12A、12Bを開放するための副スイッチ制御信号を各副スイッチ素子12A、12Bに送信する。
【0025】
ターンオフ制御信号は、主スイッチ素子200をターンオフ動作開始後に、主スイッチ素子200におけるゲート電圧VgeMを徐々に低下させるものである。ここで、ゲート電圧VgeMを徐々に低下させる割合(低下率)は、予め設定されたものである。このターンオフ制御信号を受信した駆動回路400は、主スイッチ素子200におけるゲート電圧VgeMが徐々に低下するように、予め設定されたゲート電圧VgeMの低下率に基づいて制御する。なお、ゲート電圧VgeMが0となれば、主スイッチ素子200の開度が100%となり、主スイッチ素子200のターンオフ動作が終了する。
【0026】
また、制御回路300は、クランプ回路100に流れ込むサージ電流Iに応じて、副スイッチ制御信号を副スイッチ素子12A、12Bに送信して、クランプ回路100の通流率を制御する。副スイッチ制御信号は、サージ電圧VceMが検出されると、サージ電圧VceMが主スイッチ素子200の定格電圧Vを超えないように、複数の副スイッチ素子12A、12Bをオンオフ制御させるものである。
【0027】
本実施形態の制御回路300は、クランプ回路100の通流率が徐々に減少するように複数の副スイッチ素子12A、12Bをオンオフ制御する。具体的には、図2に示すように、複数の副スイッチ素子12A、12Bの各々の通流率は、サージ電圧VceMの吸収初期において例えば50%以上になるように制御している。これにより、サージ電圧VceMの吸収初期において、各副スイッチ素子12A、12Bのオン期間が重なるようにしている。そして各副スイッチ素子12A、12Bは、時間が経過するにつれて、各々の通流率が同一の変化率で小さくなり、最終的に各副スイッチ素子12A、12Bのオン期間が重ならなくなるようにしている。各々の通流率は、クランプ回路100全体の最大電圧をVとしたとき、クランプ回路100全体の等価抵抗がV/Iとなるように制御される。そして、クランプ回路100に流れるサージ電流Iが0になると、制御回路300は、クランプ回路100の通流率制御を終了する。
【0028】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態によれば、ゲート電圧VgeMが徐々に低下するように制御されるとともに、クランプ回路100の通流率が制御されることで、クランプ回路100だけでなく主スイッチ素子200にもサージ電流Iが流れることとなる。つまり、主スイッチ素子200の能動領域を活用して主スイッチ素子200でも限流動作を行う。その結果、クランプ回路100に流れる電流を小さくすることができ、クランプ回路100を構成する部品が破損することを防止できる。また、クランプ回路100に流れる電流が小さくなるので、クランプ回路100におけるサージ電圧VceMの吸収能力を増強するとともに、クランプ回路100を構成する部品の負荷を軽減して、クランプ回路100の小型化をすることができる。
【0029】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0030】
前記実施形態のクランプ回路100は、互いに並列接続された2つの直列回路部1A、1Bを備えるものであったが、これに限らない。他の実施形態のクランプ回路100は、互いに並列接続された3つ以上の直列回路部1を備えるものであってもよい。
【0031】
前記実施形態において、制御回路300が主スイッチ素子200の開度を制御することによって主スイッチ素子200に電流を流す構成としていたが、主スイッチ素子200に電流を流す構成はこれに限られない。例えば、主スイッチ素子200に接続され、ゲート電圧VgeMが低下する速度を調整する調整抵抗素子をさらに備えてもよい。具体的には、調整抵抗素子は、主スイッチ素子200に並列に接続され、サージ電圧VceMが発生した際に、主スイッチ素子200に流れる電流を小さくすることができる。この結果、主スイッチ素子200への負荷を低減させることができる。
【0032】
本実施形態における主スイッチ素子200の制御は、主スイッチ素子200におけるゲート電圧VgeMを徐々に低下させるものであったが、主スイッチ素子200の制御はこれに限られない。例えば、主スイッチ素子200の制御は、ターンオフ制御信号が送信されると、制御回路300は、主スイッチ素子200に流れる電流Iと予め設定された閾値とを比較し、その比較に基づいて、主スイッチ素子200の開度を制御する駆動信号を駆動回路400へと送信するものが挙げられる。この主スイッチ素子200の制御では、主スイッチ素子200に流れ込む電流Iが予め設定された閾値よりも大きい場合、制御回路300は、ゲート電圧VgeMの低下速度を予め設定された低下速度よりも小さくなるように制御する。一方、主スイッチ素子200に流れ込む電流Iが予め設定された閾値よりも小さい場合、制御回路300は、ゲート電圧VgeMの低下速度を予め設定された低下速度よりも大きくなるように制御する。
【0033】
本実施形態における通流率の制御は、クランプ回路100の通流率が徐々に減少するように複数の副スイッチ素子12A、12Bをオンオフ制御するものであったが、これに限られない。例えば、検出されたサージ電流Iと予め設定されたサージ電流Iとを比較して通流率を制御するものであってもよい。具体的には、検出されたサージ電流Iが予め設定されたサージ電流Iよりも大きい場合、制御回路300は、予め設定された通流率よりも小さい通流率に制御して、クランプ回路100に流れ込む電流を小さくすることができる。一方、サージ電流Iが予め定められた閾値よりも小さい場合、制御回路300は、予め設定された通流率よりも大きい通流率に制御して、クランプ回路100に流れ込む電流を大きくすることができる。
【0034】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100・・・クランプ回路
1 ・・・直列回路部
11 ・・・抵抗素子
12 ・・・副スイッチ素子
200・・・主スイッチ素子
300・・・制御回路
400・・・駆動回路

図1
図2