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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065446
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】複合吸音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20240508BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240508BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20240508BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20240508BHJP
   D04H 1/485 20120101ALI20240508BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240508BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B5/02
B32B27/02
B32B7/02
D04H1/485
G10K11/16 120
B60R13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174308
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390018153
【氏名又は名称】日本毛織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229863
【氏名又は名称】株式会社エフアンドエイノンウーブンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三木 尚子
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 智一
(72)【発明者】
【氏名】岩城 史典
(72)【発明者】
【氏名】櫛木 和彦
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
4L047
5D061
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BA03
3D023BB01
3D023BB21
3D023BD01
3D023BD02
3D023BD04
3D023BD11
3D023BD13
3D023BD17
3D023BD21
3D023BD25
3D023BD29
3D023BE05
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK42
4F100AK42C
4F100AK48
4F100AK48A
4F100BA03
4F100BA07
4F100DD01
4F100DD01B
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG15
4F100DG15B
4F100DG15C
4F100EC09
4F100EC09C
4F100EJ40
4F100EJ42
4F100GB07
4F100GB31
4F100JA04
4F100JA13
4F100JA13C
4F100JD02
4F100JD02B
4F100JH01
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB09
4L047BA03
4L047BA09
4L047BA24
4L047BB09
4L047CA06
4L047CA12
4L047CA19
4L047CB08
4L047CC14
5D061AA06
5D061AA23
5D061BB18
5D061BB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い複合吸音材を提供する。
【解決手段】複合吸音材8は、合成樹脂フィルム層4と、凹凸を有する不織布層1と、乾式不織布層7a-7dを含み、凹凸を有する不織布層1は、繊維密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て乾式不織布層7a-7dの前に配置されており、乾式不織布層7a-7dは両主面がフラットであり、1層又は複数層存在する。これにより、複合吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が47%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上である複合吸音材となり、電気自動車などのロードノイズに対応できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム層と、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む複合吸音材であって、
前記凹凸を有する不織布層は、繊維密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、
前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在することを特徴とする複合吸音材。
【請求項2】
前記複合吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が47%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項3】
前記複合吸音材の厚みが30mm以上100mm以下である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項4】
前記凹凸を有する不織布層は、底部から頂部の平均高さが1mm~10mm、山山間の平均ピッチが1~30mm、平均厚さが0.2~5mmである請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項5】
前記凹凸を有する不織布層の通気抵抗が0~150mTorrである請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項6】
前記凹凸を有する不織布層の単位面積当たりの質量が150~1500g/m2である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項7】
前記合成樹脂フィルム層は、音の入射方向から見て凹凸を有する不織布層の前、後ろ、及び乾式不織布層の間からなる群から選ばれる少なくとも一つの位置に配置されている請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項8】
前記合成樹脂フィルム層は、両表面層が内層に比較して低融点の樹脂層であり、内層が表面層に比較して高融点の樹脂層で構成された多層ホットメルトフィルムである請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項9】
前記合成樹脂フィルム層の厚さは、1~100μmである請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項10】
前記乾式不織布の密度が10~75kg/m3である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項11】
前記乾式不織布層は、高融点繊維と熱融着繊維を混綿したニードルパンチ不織布層である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項12】
前記乾式不織布は、ニードルパンチ不織布層に加え、さらに密度が1~20kg/m3のサーマルボンド不織布層が積層されている請求項10に記載の複合吸音材。
【請求項13】
前記複合吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項14】
前記複合吸音材は、熱成形が可能である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項15】
凹凸を有する不織布層は複数枚含み、少なくとも1枚は乾式不織布層の前に配置されており、残りの少なくとも1枚は乾式不織布層の間に配置されている請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項16】
前記複合吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材である請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合吸音材に関する。さらに詳しくは、低周波領域から高周波領域までの垂直入射吸音率が高い複合吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音材(防音材ともいう)は自動車、鉄道車両、航空機、建造物、音響施設など様々な分野で使用されている。従来から繊維層と多孔質層を積層した吸音材は知られている。例えば特許文献1には通気度が30~220cc/cm2・secの繊維層を入射側に配置し、多孔質層を非入射側に配置して積層した吸音材が提案されている。特許文献2には、多孔質吸音体と2枚以上の不織布が積層された吸音材であって、前記不織布は延伸配列された長繊維不織布を使用することが提案されている。特許文献3には、低密度層と高密度層とを有し、低密度層が連続気泡構造を有するエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体である積層吸音材が提案されている。特許文献4には、第1層がシリコーンゴムで第2層がグラスウール又はロックウールを積層させた建築用吸音材が提案されている。特許文献5には、硬質繊維層と軟質繊維層を積層した吸音材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6646267号公報
【特許文献2】特開2019-005939公報
【特許文献3】特許第6577720号公報
【特許文献4】特許第4891897号公報
【特許文献5】特開2010-085873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のような従来技術の複合吸音材は、低周波領域における吸音性能が低いという問題があった。近年、開発と生産量が増加している電気自動車(electric vehicle : EV)は、電気をエネルギー源とし、電動機(モーター)を動力源として走行することから、内燃機関の騒音は発生せず静かに走行する半面、従来その騒音に隠れて気にならなかったタイヤと地面の摩擦音であるロードノイズが顕在化するという問題が起こっている。このロードノイズの周波数は、500Hz以下と言われている。さらに300~2000Hzの低~高周波数領域における吸音性能も高い吸音材も求められている。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い複合吸音材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、合成樹脂フィルム層と、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む複合吸音材であって、前記凹凸を有する不織布層は、繊維密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在する複合吸音材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合吸音材は、合成樹脂フィルム層と、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含み、前記凹凸を有する不織布層は、繊維密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在することにより、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高い複合吸音材を提供できる。これにより電気自動車などのロードノイズに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは本発明の一実施形態の凹凸を有する不織布層の模式的斜視図、図1B図1AのI-I線の模式的断面図である。
図2図2は本発明の一実施形態の合成樹脂フィルム層の模式的断面図である。
図3図3は本発明の一実施形態の複合吸音材の模式的断面図である。
図4図4は本発明の別の実施形態の複合吸音材の模式的断面図である。
図5図5は本発明のさらに別の実施形態の複合吸音材の模式的断面図である。
図6図6は本発明のさらに別の実施形態の複合吸音材の模式的断面図である。
図7図7は本発明のさらに別の実施形態の複合吸音材の模式的断面図である。
図8図8は比較例1の複合吸音材の模式的断面図である。
図9図9は比較例2の複合吸音材の模式的断面図である。
図10図10は比較例3の複合吸音材の模式的断面図である。
図11図11は比較例4の複合吸音材の模式的断面図である。
図12図12は本発明の複合吸音材が自動車に搭載される個所を示す模式的説明図である。
図13図13は本発明の実施例1~3の垂直入射吸音率グラフである。
図14図14は本発明の実施例4~5の垂直入射吸音率グラフである。
図15図15は比較例1~2の垂直入射吸音率グラフである。
図16図16は比較例4~5の垂直入射吸音率グラフである。
図17図17は本発明の実施例7の複合吸音材の模式的断面図である。
図18図18は本発明の実施例8及び9の複合吸音材の模式的断面図である。
図19図19は本発明の実施例11の複合吸音材の模式的断面図である。
図20図20は本発明の実施例6~9の垂直入射吸音率グラフである。
図21図21は本発明の実施例10~12の垂直入射吸音率グラフである。
図22図22は本発明の実施例13の複合吸音材の模式的断面図である。
図23図23は本発明の実施例14の複合吸音材の模式的断面図である。
図24図24は比較例5の複合吸音材の模式的断面図である。
図25図25は本発明の実施例13の垂直入射吸音率グラフである。
図26図26は本発明の実施例14の垂直入射吸音率グラフである。
図27図27は比較例5の垂直入射吸音率グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、合成樹脂フィルム層と、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む複合吸音材である。凹凸を有する不織布層は、圧縮成形により凹凸が形成されている。圧縮成形されていることから、高密度層になっている。凹凸を有する不織布層の繊維密度は50kg/m3以上500kg/m3以下であり、好ましくは60kg/m3以上450kg/m3以下であり、より好ましくは70kg/m3以上410kg/m3以下である。この範囲内であれば、音と凹凸を有する不織布層が接触した際に、材料表面での音の反射が少なく、且つ、音エネルギーが繊維との摩擦により効果的に減衰する為、低~高周波領域における吸音性能が良好となる。また、本発明の凹凸を有する不織布層は、音の入射方向から見て乾式不織布層の前に配置されている。これにより、凹凸表面での音の反射が少なく、凹凸を有する不織布層から乾式不織布層において、効果的に吸音できる。この為、凹凸を有する不織布層による低周波領域の吸音が良好となる効果と、乾式不織布層による高周波領域の吸音が良好となる効果が相俟って、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高い複合吸音材を提供できる。
【0010】
本発明の乾式不織布層は、両主面(表裏面)がフラットであり、1層又は複数層存在する。両主面(表裏面)がフラットであると、複数層積層したときに界面接着するのに便利である。また、1層で厚く作成するのに比べて、薄い均一層を形成できる効果もある。もちろん1層で厚く作成してもよい。
【0011】
複合吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が47%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上であるのが好ましい。より好ましくは、300Hzにおける垂直入射吸音率は50%以上であり、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率はそれぞれ56%以上である。これによりロードノイズばかりでなく、エンジンによる雑音、ブレーキ音などにも対応できる。
【0012】
複合吸音材の厚みは30mm以上100mm以下が好ましく、より好ましくは35mm以上80mm以下であり、さらに好ましくは40mm以上60mm以下である。これにより、低~高周波領域の吸音性能が良好となり、省スペース性に優れた吸音材となる。
【0013】
凹凸を有する不織布層は、底部から頂部の平均高さ1mm~10mm、山山間の平均ピッチ1~30mm、平均厚さ0.2~5mmが好ましい。単位面積当たりの質量(目付)は150~1500g/m2が好ましく、より好ましくは180~1350g/m2であり、さらに好ましくは210~1230g/m2である。凹凸を有する不織布層を構成する平均繊維直径は、0.1 ~100μmが好ましく、より好ましくは0.7~70μmであり、さらに好ましくは0.8~60μmである。また、凹凸を有する不織布層を構成する繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、アラミドなどが好ましく、これらを混綿してもよい。これにより、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高い複合吸音材となる。また、凹凸を有する不織布層の通気抵抗が0~150mTorrであるのが好ましく、より好ましくは1~140mTorrであり、さらに好ましくは2~135mTorrである。通気抵抗は、流れ抵抗測定装置(Mecanum社製、装置名SIGMA)を使用し、ASTM C522-03:2016に準拠して測定できる。
【0014】
本発明の複合吸音材は、凹凸を有する不織布層は複数枚含み、少なくとも1枚は乾式不織布層の前に配置されており、残りの少なくとも1枚は乾式不織布層の間に配置してもよい。例えば、凸凹不織布を2枚使用し、音入射側から凸凹不織布層と乾式不織布層を交互に積層する。これにより、高周波数域の吸音性能の低下を防ぐことができ、低周波~高周波数域において吸音性能を維持できる。
凹凸不織布層を構成する繊維は、短繊維でも良いし、長繊維でも良い。長繊維から成るスパンボンドやメルトブロー、SMS (スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)などを短繊維から成る不織布と複合して凹凸不織布を作製しても良い。また、凹凸不織布層は、凹凸構造内部に密度差を持たせても良い。凹凸構造内部の密度差は、凹凸不織布製造工程において、凹凸付与装置のローラー間を通過する際、凹凸不織布の山・谷・その中間部で密度差が形成されるようにしてもよい。
【0015】
合成樹脂フィルム層は、音の入射方向から見て凹凸を有する不織布層の前、後ろ、及び乾式不織布層の間からなる群から選ばれる少なくとも一つの位置に配置するのが好ましく、より好ましくは凹凸を有する不織布層の前に配置する。これにより、低~高周波領域の吸音性能が良好となり、省スペース性に優れた吸音材となる。とくに凹凸を有する不織布層の前に合成樹脂フィルム層を配置し、凹凸を有する不織布層の後に乾式不織布層を配置すると、凹凸を有する不織布層の両面に空気層が存在する為、凹凸表面での音の反射が少なく、凹凸を有する不織布層から乾式不織布層において、効果的に吸音でき、且つ、凹凸裏面に空気層が存在することで低周波領域の吸音が良好となる。また、合成樹脂フィルム層と凹凸を有する不織布層が接することで、合成樹脂フィルム層の膜振動による、音エネルギーの減衰効率が向上する。且つ、フィルムの振動が、凹凸を有する不織布層と乾式不織布層に伝わることで、それら繊維の振動が増大し、音エネルギーの減衰効率が向上する為、低~高周波領域における吸音性能が良好となる。
【0016】
合成樹脂フィルム層は、両表面層が内層に比較して低融点の樹脂層であり、内層が表面層に比較して高融点の樹脂層で構成された多層ホットメルトフィルムであるのが好ましい。一例として、両表面層がポリエチレン層、内層がナイロン層、ポリプロピレン層、又はポリエステル層などの多層ホットメルトフィルムがある。この多層ホットメルトフィルムはホットメルト接着が可能であり、積層一体化する際に有用である。合成樹脂フィルム層の厚さは、1~100μmが好ましい。
【0017】
乾式不織布の密度は10~75kg/m3であるのが好ましく、より好ましくは13kg/m3以上70kg/m3以下であり、さらに好ましくは16kg/m3以上60kg/m3以下である。この範囲内であれば、低密度層として、音と吸音材が接触した際に、音エネルギーが繊維との摩擦により効果的に減衰する為、低~高周波領域の吸音が良好となる。乾式不織布層は、高融点繊維と熱融着繊維を混綿したニードルパンチ不織布層であるのが好ましい。ニードルパンチ不織布層であると一体性が良く、取り扱い性もよい。高融点繊維は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維である。熱融着繊維は、例えば芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘がPETより融点の低い共重合ポリエステルの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維を使用できる。このように熱融着繊維を含むニードルパンチ不織布層とすることにより、複合吸音材を車に取り付ける際に、熱プレスにより所望の形状に成形できる。熱融着繊維は、全融型、分割型、芯鞘型、サイドバイサイド型を使用できるが、好ましくは芯鞘型である。芯鞘型の芯と鞘の材料は、芯/鞘でPET/PET、PET/PE(ポリエチレン)、PET/PP(ポリプロピレン)、PP/PE、PE/PE、PP/PPなどを使用できるが、好ましくは強度面から同材料が好ましく、より好ましくはPET/PETである。
【0018】
乾式不織布は、ニードルパンチ不織布層に加え、さらに密度が1~20kg/m3のサーマルボンド不織布層を積層させてもよい。これにより吸音性能は維持した上で、軽量化が可能となる。
【0019】
本発明の複合吸音材の単位面積当たりの質量は2800g/m2以下が好ましく、より好ましくは700~2800g/m2であり、さらに好ましくは800~2600g/m2である。これにより、適度な質量でかつ低~高周波領域の吸音性が高い吸音材なる。
【0020】
合成樹脂フィルム層と、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層はホットメルト、接着剤、もしくは両面テープ等を使用し、積層一体化されても良いし、積層一体化されなくても良い。各層の接着方法としては、ホットメルト、接着剤、もしくは両面テープは接着面全面に塗布、もしくは貼付けてもよいし、点状、線状、格子状に塗布、もしくは貼付けてもよい。不織布の製造工程において、熱融着繊維を混合し、後工程で加熱することで接着してもよい。または、不織布の製造工程において、各層の間に、熱融着シートを挟み込み、後工程で加熱することで、各層を接着してもよい。好ましい例として、フィルム層と凹凸層、及びフィルム層と乾式不織布層の接着方法は、別の接着材料を使用するのではなく、フィルム層 (多層ホットメルトフィルム層) による、ホットメルト接着である。
【0021】
複合吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材として有用であり、とくに電気自動車(electric vehicle : EV)のロードノイズ用吸音材として有用である。自動車のタイヤ周りの個所、ダッシュボード又は内装面等に組み込むことができる。
本発明の複合吸音材は長尺シートに形成され、ロール状に巻かれた状態で製品化するのが好ましい。長尺シートであると、目的に合わせた大きさ及び形状にカットできる。またロール状であると、運搬、移動、供給に便利である。
また、難燃性が必要な場合は、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層、その他の繊維素材は難燃アクリル、モダクリル、難燃ポリエステル、難燃レーヨン、難燃ウール(ザプロ加工)、難燃ビニロン、芳香族ポリアミド(アラミド)、ノボラック、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール(PBI)等の繊維を使用できる。あるいは非難燃性繊維に難燃剤(液体・粉体)を塗布、噴霧又は含浸などして難燃性にしても良い。
【0022】
次に図面を用いて説明する。以下の図面の説明において、同一符号は同一物を示す。図1Aは本発明の一実施形態の凹凸を有する不織布層1の模式的斜視図、図1B図1AのI-I線の模式的断面図である。凹凸を有する不織布層1は、凸部2と凹部3が形成されており、一例として底部から頂部の平均高さHが3mm、山山間の平均ピッチPが10mm、平均厚さtが2mm、密度は180kg/m3、通気抵抗は26mTorrである。この凹凸を有する不織布層1は、一対の凹凸ローラーによる凹凸付与装置、及び一対の金属彫刻ロール、片面に金属彫刻ロールとペーパーロールとの組み合わせなどのエンボス装置や金属彫刻板による平板プレス装置、凹凸形状を有する円筒型プレス装置などを用いて凹凸賦形加工して得られる。凹凸形状は、代表的な波型、ギヤ型、格子型などの連続、または、半球状、多角状などの凹部を非連続的に、千鳥配置、一定間隔で配置してもよい。凹部、凸部、凹凸部のいずれかの単位面積当たりの個数は10~5000個/100cm2が好ましく、さらに好ましくは50~1500個/100cm2である。
【0023】
図2は本発明の一実施形態の合成樹脂フィルム層4の模式的断面図である。この合成樹脂フィルム層4は、両表面層5a,5aがポリエチレン(PE)層、内層5bがナイロン(Ny)層の多層ホットメルトフィルムである。ナイロンはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン10、ナイロン12、あるいはこれらの任意のナイロンのブレンド品などの様々なナイロンを使用できる。
【0024】
図3は本発明の一実施形態の複合吸音材8の模式的断面図である。この複合吸音材8は、合成樹脂フィルム層4と、凹凸を有する不織布層1と、乾式不織布層7a-7dをこの順番に積層した複合吸音材である。
図4は本発明の別の実施形態の複合吸音材9の模式的断面図である。この複合吸音材9は、合成樹脂フィルム層4aと、凹凸を有する不織布層1と、乾式不織布層7aと、合成樹脂フィルム層4bと、乾式不織布層7b-7dをこの順番に積層した複合吸音材である。
図5は本発明のさらに別の実施形態の複合吸音材10の模式的断面図である。この複合吸音材10は、合成樹脂フィルム層4aと、凹凸を有する不織布層1と、合成樹脂フィルム層4bと、乾式不織布層7a-7dをこの順番に積層した複合吸音材である。
図6は本発明のさらに別の実施形態の複合吸音材11の模式的断面図である。この複合吸音材11は、合成樹脂フィルム層4aと、凹凸を有する不織布層1と、合成樹脂フィルム層4bと、乾式不織布層7aと、合成樹脂フィルム層4cと、乾式不織布層7bと、サーマルボンド不織布層12をこの順番に積層した複合吸音材である。
図7は本発明のさらに別の実施形態の複合吸音材29の模式的断面図である。この複合吸音材29は、合成樹脂フィルム層4aと、凹凸を有する不織布層1と、合成樹脂フィルム層4bと、乾式不織布層7aと、合成樹脂フィルム層4cと、乾式不織布層7b-7dをこの順番に積層した複合吸音材である。
【0025】
図12は本発明の複合吸音材が自動車20に搭載される個所を示す模式的説明図である。自動車20の前輪の上部のフェンダーにフェンダーライナー21、後輪の上部のリアホイルにリアホイルハウスライナー22、ダッシュパネル部にはダッシュサイレンサー23、フロアーパネル部にはフロアーサイレンサー24、ボンネット裏部にはフードサイレンサー25、天井部にはルーフライニングインシュレーター26、トランクルーム部にはラゲージマット及びラゲージフロントサイレンサー27が装着される。これらは一例であるが、少なくとも一部に用いてもよいし、全部に用いてもよい。これにより、自動車20の外部からの音を吸音ないしは遮音できる。とくにライナー材は、タイヤと地面の摩擦音であるロードノイズのほか、タイヤの巻き込む砂利、小石、雨水がボディに当たる音を室内に伝わるのを防止できる。これらのライナー材又はサイレンサー材は、本発明の複合吸音材を熱成形して得られる。
【0026】
本発明の吸音材は、自動車の様々な箇所に搭載でき、低周波数域 (ロードノイズ対策) だけでなく、高周波数域にも吸音性能を有するよう設計した。低周波数域の吸音性能が必要とされる部位としては、ダッシュサイレンサーやフロアーサイレンサーにも適用できる。
【実施例0027】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例の測定方法は下記のとおりである。
<垂直入射吸音率>
それぞれのサンプルを採取し、各条件での積層をした後、垂直入射吸音率測定装置「日本音響エンジニアリング社製WinZacMTX」を用いASTM E 1050:2019に準拠し、当該サンプルについて、周波数117~5000Hzの範囲の垂直入射吸音率を測定した。
<通気抵抗>
凹凸を有する不織布層の通気抵抗は、流れ抵抗測定装置(Mecanum社製、装置名SIGMA)を使用し、ASTM C522-03:2016に準拠し、通気孔直径29mm、エアー流量100SCCMで測定した。
<厚み>
厚みゲージを用いて測定した。
<その他>
JIS又は業界の規定する測定方法に従って測定した。
【0028】
(材料の作成)
(1)合成樹脂フィルム層
図2に示す合成樹脂フィルム層を使用した。この合成樹脂フィルム層4は、両表面層5a,5bがポリエチレン(PE)層、内層6がナイロン(Ny)層の多層ホットメルトフィルムである。各層の厚さは、PE12μm/Ny10μm/PE12μm、PE14μm/Ny10μm/PE14μmである。
(2)凹凸を有する不織布層
各実施例に記載した。
(3)乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)
繊度2.2decitex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート繊維、80質量%と繊度4.4decitex、繊維長51mmの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘が融点ないしは軟化点110℃の共重合ポリエステル)、20質量%を混綿し、得られたウェブをニードルパンチした。更に150℃で10分間熱処理し、密度が32kg/m3,質量が318g/m2、厚さが10mm のニードルパンチ不織布層を得た。
(4)乾式不織布層(サーマルボンド不織布層)
繊度1.0decitex、繊維長51mmの極細ポリエステル(PET)繊維35質量%、繊度7.8decitex、繊維長51mmの中空ポリエステル(PET)繊維35質量%、繊度4.4decitex、繊維長51mmの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘が融点ないしは軟化点110℃の共重合ポリエステル)20質量%、繊度2.2decitex、繊維長51mmの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘が融点ないしは軟化点110℃の共重合ポリエステル)10質量%を混綿し、得られたウェブを170℃で2分間熱処理し、厚さが20mm、質量が183g/m2、密度が9kg/m3のサーマルボンド不織布層を得た。
【0029】
(実施例1)
凹凸不織布は、アクリル繊維(繊度3.3decitex、繊維長76mm)を開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度180kg/m3、通気抵抗26mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
図4に示すように、前記材料の作成の説明で記載した合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)2枚と、凹凸を有する不織布層1層と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布)4層を配置した。
【0030】
(実施例2)
凹凸不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度3.3decitex、繊維長64mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度80kg/m3、通気抵抗3mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
図4に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を2枚用い、1枚目は音の入射方向の先端部に配置し、2枚目は乾式不織布層(ニードルパンチ不織布)の第1層と2層の間に配置した。
【0031】
(実施例3)
凹凸不織布は実施例1と同様の凹凸不織布を使用した。
図5に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を2枚用い、1枚目は音の入射方向の先端部に配置し、2枚目は凹凸を有する不織布層の後に配置した。
【0032】
(実施例4)
凹凸不織布は実施例2と同様の凹凸不織布を使用した。
図6に示すように、合成樹脂フィルム層(PE14μm/Ny10μm/PE14μm、質量37g/m2)を3枚用い、1枚目は音の入射方向の先端部に配置し、2枚目は凹凸を有する不織布層の後に配置し、3枚目は乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)の第1層と2層の間に配置し、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)の第2層の後には乾式不織布層(サーマルボンド不織布層)を配置した。
【0033】
(実施例5)
合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)をとした以外は実施例4と同様に実施した。
【0034】
(比較例1)
図8は比較例1の複合吸音材13の模式的断面図である。この複合吸音材13は、合成樹脂フィルム層4aと、乾式不織布層7a-7bと、合成樹脂フィルム層4bと、乾式不織布層7c-7dをこの順番に積層した複合吸音材である。凹凸を有する不織布層を使用していない点が比較例である。
図8に示すように、音の入射方向から合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)2層と合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)2層を配置した。
【0035】
(比較例2)
図9は比較例2の複合吸音材14の模式的断面図である。この複合吸音材14は、合成樹脂フィルム層4aと、乾式不織布層7aと、合成樹脂フィルム層4bと、乾式不織布層7bと、合成樹脂フィルム層4cと、乾式不織布層7c-7dをこの順番に積層した複合吸音材である。凹凸を有する不織布層を使用していない点が比較例である。
図9に示すように、音の入射方向から合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)を1層ずつ各3層配置し、その後に乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)1層を配置した。
【0036】
(比較例3)
図10に示すように、凹凸不織布の代わりに平坦な不織布層6を使用した。平坦な不織布は、アクリル繊維(繊度3.3decitex、繊維長76mm)を開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチし、平均厚さt=2mm、密度262kg/m3、通気抵抗18mTorrであった。図10の15は複合吸音材である。
音の入射方向から合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、平坦な不織布層と、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)4層を配置した。
【0037】
(比較例4)
図11に示すように、凹凸不織布の代わりに平坦な不織布層6を使用した。平坦な不織布層は、比較例4と同様の平坦な不織布を使用した。
音の入射方向から合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、平坦な不織布層と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)と、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm)と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)3層を配置した。図11の16は複合吸音材である。
【0038】
以上の条件と結果を表1~2にまとめて示す。また、図13に実施例1~3、図14に実施例4~5、図15に比較例1~3、図16に比較例4~5の垂直入射吸音率グラフを示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
表1~2及び図13~16の垂直入射吸音率グラフから明らかなとおり、実施例1~5の複合吸音材は、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高いことが確認できた。
これに対して比較例1~2は凹凸不織布層がないため、高周波領域における吸音性能が低かった。また、比較例3及び4は凹凸不織布層の代わりに平坦な不織布層6を使用したため、低周波領域における吸音性能が低かった。
【0042】
(実施例6)
凹凸不織布は実施例1と同様の凹凸不織布を使用した。
図3に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を1枚用い、音の入射方向の先端部に配置した。
【0043】
(実施例7)
凹凸不織布は、ポリプロピレン繊維(繊度7.8decitex、繊維長64mm)を開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度184kg/m3、通気抵抗15mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
図17に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を1枚用い、凹凸を有する不織布層の後ろに配置した。
【0044】
(実施例8)
凹凸不織布は実施例1と同様の凹凸不織布を使用した。
図18に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を1枚用い、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)の第1層と2層の間に配置した。
【0045】
(実施例9)
凹凸不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度1.3decitex、繊維長38mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度186kg/m3、通気抵抗33mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
上記以外は、実施例8と同様に実施した。
【0046】
(実施例10)
凹凸不織布は実施例2と同様の凹凸不織布を使用した以外は、実施例3と同様に実施した。
【0047】
(実施例11)
凹凸不織布は実施例1と同様の凹凸不織布を使用した。
図19に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を2枚用い、1枚目は凹凸を有する不織布層の後に配置し、2枚目は乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)の第1層と2層の間に配置した。
【0048】
(実施例12)
凹凸不織布は実施例1と同様の凹凸不織布を使用した。
図7に示すように、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)を3枚用い、1枚目は音の入射方向の先端部に配置し、2枚目は凹凸を有する不織布層の後に配置し、3枚目は乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)の第1層と2層の間に配置した。
【0049】
以上の条件と結果を表3~4にまとめて示す。また、図20~21に垂直入射吸音率グラフを示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表3~4及び図20~21の垂直入射吸音率グラフから明らかなとおり、実施例6~12の複合吸音材は、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高いことが確認できた。
【0053】
(実施例13)
凹凸不織布は実施例2と同様の凸凹不織布を使用した。
図22に示すように、音の入射方向から凹凸を有する不織布層1a、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)4、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)7a、凹凸を有する不織布層1b、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)7b-7dからなる3層を配置し、複合吸音材30とした。
【0054】
(実施例14)
凹凸不織布は実施例2と同様の凸凹不織布を使用した。
図23に示すように、音の入射方向から凹凸を有する不織布層1a、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)4、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)7a、凹凸を有する不織布層1b、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)7b、乾式不織布層(サーマルボンド不織布層)12を配置し、複合吸音材31とした。
【0055】
(比較例5)
平坦な不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度1.3decitex、繊維長38mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチし、平均厚さt=2mm、密度283kg/m3、通気抵抗34mTorrの不織布層を使用した。
図24に示すように、音の入射方向から平坦な不織布層6a、合成樹脂フィルム層(PE12μm/Ny10μm/PE12μm、質量33g/m2)4、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)7a、平坦な不織布層6b、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)7b-7dからなる3層を配置し、複合吸音材32とした。
【0056】
以上の条件と結果を表5にまとめて示す。また、図25~27に垂直入射吸音率グラフを示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表5及び図25~26の垂直入射吸音率グラフから明らかなとおり、実施例13~14の複合吸音材は、凹凸不織布層を2枚使用したことにより、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高いことが確認できた。
これに対して比較例5は凹凸不織布層の代わりに平坦な不織布を2枚使用したが、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能は低かった。
【0059】
本発明の好ましい態様は次のとおりである。
[1]合成樹脂フィルム層と、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む複合吸音材であって、前記凹凸を有する不織布層は、密度が50kg/m3以上500kg/m3であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在する複合吸音材。
[2]前記複合吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が47%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上である1に記載の複合吸音材。
[3]前記複合吸音材の厚みが30mm以上100mm以下である1又は2に記載の複合吸音材。
[4]前記凹凸を有する不織布層は、底部から頂部の平均高さが1mm~10mm、山山間の平均ピッチが1~30mm、平均厚さが0.2~5mmである1~3のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[5]前記凹凸を有する不織布層の通気抵抗が0~150mTorrである1~4のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[6]前記凹凸を有する不織布層の単位面積当たりの質量が150~1500g/m2である1~5のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[7]前記合成樹脂フィルム層は、音の入射方向から見て凹凸を有する不織布層の前、後ろ、及び乾式不織布層の間からなる群から選ばれる少なくとも一つの位置に配置されている1~6のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[8]前記合成樹脂フィルム層は、両表面層が内層に比較して低融点の樹脂層であり、内層が表面層に比較して高融点の樹脂層で構成された多層ホットメルトフィルムである1~7のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[9]前記合成樹脂フィルム層の厚さは、1~100μmである1~8のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[10]前記乾式不織布の密度が10~75kg/m3である1~9のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[11]前記乾式不織布層は、高融点繊維と熱融着繊維を混綿したニードルパンチ不織布層である1~10のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[12]前記乾式不織布は、ニードルパンチ不織布層に加え、さらに密度が1~20kg/m3のサーマルボンド不織布層が積層されている11に記載の複合吸音材。
[13]前記複合吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下である1~12のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[14]前記複合吸音材は、熱成形が可能である1~13のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[15]凹凸を有する不織布層は複数枚含み、少なくとも1枚は乾式不織布層の前に配置されており、残りの少なくとも1枚は乾式不織布層の間に配置されている1~14のいずれか1項に記載の複合吸音材。
[16]前記複合吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材である1~15のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の複合吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材として有用であり、自動車のタイヤ周りの個所、ダッシュボード又は内装面等に組み込むことができる。具体的にはフェンダーライナー、リアホイルハウスライナー、ダッシュサイレンサー、フロアーサイレンサー、フードサイレンサー、ルーフライニングインシュレーター、ラゲージマット、ラゲージフロントサイレンサーなどがある。また、静音化が求められるエアコン等の空調 機器、冷凍機、ヒートポンプ等、ダクト等の風路を形成する部分、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、掃除機等の電気製品、プリンター、コピー機、FAX等のOA機器、壁材芯材、床材、吸音ボード、調音ボード等の建築用資材にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1,1a,1b 凹凸を有する不織布層
2 凸部
3 凹部
4,4a-4c 合成樹脂フィルム層
5a 表面層
5b 内層
6,6a,6b 平坦な不織布層
7,7a-7d 乾式不織布層
8-11,13-19,29-32 複合吸音材
12 サーマルボンド不織布層
20 自動車
21 フェンダーライナー
22 リアホイルハウスライナー
23 ダッシュサイレンサー
24 フロアーサイレンサー
25 フードサイレンサー
26 ルーフライニングインシュレーター
27 ラゲージマット及びラゲージフロントサイレンサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27