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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065447
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】積層吸音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20240508BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240508BHJP
   D04H 1/485 20120101ALI20240508BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20240508BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20240508BHJP
【FI】
G10K11/168
G10K11/16 120
D04H1/485
D04H1/541
D04H1/4374
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174309
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390018153
【氏名又は名称】日本毛織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229863
【氏名又は名称】株式会社エフアンドエイノンウーブンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三木 尚子
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 智一
(72)【発明者】
【氏名】岩城 史典
(72)【発明者】
【氏名】櫛木 和彦
【テーマコード(参考)】
4L047
5D061
【Fターム(参考)】
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047AB08
4L047AB09
4L047BA03
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA05
4L047CA12
4L047CA19
4L047CB03
4L047CB08
5D061BB17
5D061BB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量であり、300Hz~2000Hzの低周波領域~高周波数における吸音性能が高い積層吸音材を提供する。
【解決手段】凹凸を有する不織布層1と、乾式不織布層5a~5dを含む積層吸音材4であって、凹凸を有する不織布層1は、密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て乾式不織布層5a-5dの前に配置されており、乾式不織布層5a~5dは両主面がフラットであり、1層又は複数層存在し、積層吸音材4の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下である。積層吸音材4の300Hzにおける垂直入射吸音率が40%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上であることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む積層吸音材であって、
前記凹凸を有する不織布層は、密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、
前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在し、
前記積層吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下であることを特徴とする積層吸音材。
【請求項2】
前記積層吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が40%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上である請求項1に記載の積層吸音材。
【請求項3】
前記積層吸音材の厚みが30mm以上100mm以下である請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項4】
前記凹凸を有する不織布層は、底部から頂部の平均高さが1mm~10mm、山山間の平均ピッチが1~30mm、平均厚さが0.2~5mmである請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項5】
前記凹凸を有する不織布層の通気抵抗が0~150mTorrである請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項6】
前記凹凸を有する不織布層の単位面積当たりの質量が150~1500g/m2である請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項7】
前記乾式不織布の密度が10~75kg/m3である請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項8】
前記乾式不織布層は、高融点繊維と熱融着繊維を混綿したニードルパンチ不織布層である請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項9】
前記乾式不織布は、ニードルパンチ不織布層に加え、さらに密度が1~20kg/m3のサーマルボンド不織布層が積層されている請求項8に記載の積層吸音材。
【請求項10】
前記積層吸音材は、熱成形が可能である請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項11】
凹凸を有する不織布層は複数枚含み、少なくとも1枚は乾式不織布層の前に配置されており、残りの少なくとも1枚は乾式不織布層の間に配置されている請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【請求項12】
前記積層吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材である請求項1又は2に記載の積層吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層吸音材に関する。さらに詳しくは、低周波領域から高周波領域までの垂直入射吸音率が高い積層吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音材(防音材ともいう)は自動車、鉄道車両、航空機、建造物、音響施設など様々な分野で使用されている。従来から繊維層と多孔質層を積層した吸音材は知られている。例えば特許文献1には通気度が30~220cc/cm2・secの繊維層を入射側に配置し、多孔質層を非入射側に配置して積層した吸音材が提案されている。特許文献2には、多孔質吸音体と2枚以上の不織布が積層された吸音材であって、前記不織布は延伸配列された長繊維不織布を使用することが提案されている。特許文献3には、低密度層と高密度層とを有し、低密度層が連続気泡構造を有するエチレン・プロピレン・ジエンゴム発泡体である積層吸音材が提案されている。特許文献4には、第1層がシリコーンゴムで第2層がグラスウール又はロックウールを積層させた建築用吸音材が提案されている。特許文献5には、硬質繊維層と軟質繊維層を積層した吸音材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6646267号公報
【特許文献2】特開2019-005939公報
【特許文献3】特許第6577720号公報
【特許文献4】特許第4891897号公報
【特許文献5】特開2010-085873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のような従来技術の吸音材は、低周波領域における吸音性能が低いという問題があった。近年、開発と生産量が増加している電気自動車(electric vehicle : EV)は、電気をエネルギー源とし、電動機(モーター)を動力源として走行することから、内燃機関の騒音は発生せず静かに走行する半面、従来その騒音に隠れて気にならなかったタイヤと地面の摩擦音であるロードノイズが顕在化するという問題が起こっている。このロードノイズの周波数は、500Hz以下と言われている。さらに300~2000Hzの低~高周波数領域における吸音性能も高い吸音材も求められている。加えて、軽量である点も求められている。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、軽量であり、300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い積層吸音材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む積層吸音材であって、前記凹凸を有する不織布層は密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在し、前記積層吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下の積層吸音材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層吸音材は、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む積層吸音材であって、前記凹凸を有する不織布層は、密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在し、前記積層吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下の積層吸音材とすることにより、軽量であり、300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い積層吸音材を提供できる。これにより電気自動車などのロードノイズに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは本発明の一実施形態の凹凸を有する不織布層の模式的斜視図、図1B図1AのI-I線の模式的断面図である。
図2図2は本発明の一実施形態の積層吸音材の模式的断面図である。
図3図3は本発明の別の実施形態の積層吸音材の模式的断面図である。
図4図4は本発明のさらに別の実施形態の積層吸音材の模式的断面図である。
図5図5は本発明のさらに別の実施形態の積層吸音材の模式的断面図である。
図6図6は本発明の複合吸音材が自動車に搭載される個所を示す模式的説明図である。
図7図7は比較例の積層吸音材の模式的断面図である。
図8図8は別の比較例の積層吸音材の模式的断面図である。
図9図9はさらに別の比較例の積層吸音材の模式的断面図である。
図10図10は本発明の実施例1~3の垂直入射吸音率グラフである。
図11図11は本発明の実施例5の垂直入射吸音率グラフである。
図12図12は比較例1の垂直入射吸音率グラフである。
図13図13は比較例2~3の垂直入射吸音率グラフである。
図14図14は本発明の実施例6の垂直入射吸音率グラフである。
図15図15は本発明の実施例7の垂直入射吸音率グラフである。
図16図16は比較例4~5の垂直入射吸音率グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む積層吸音材である。凹凸を有する不織布層は、圧縮成形により凹凸が形成されている。圧縮成形されていることから、高密度層になっている。凹凸を有する不織布層の繊維密度は50kg/m3以上500kg/m3以下であり、好ましくは60kg/m3以上450kg/m3以下であり、より好ましくは70kg/m3以上410kg/m3以下である。この範囲内であれば、音と凹凸を有する不織布層が接触した際に、材料表面での音の反射が少なく、且つ、音エネルギーが繊維との摩擦により効果的に減衰する為、低~高周波領域における吸音性能が良好となる。また、本発明の凹凸を有する不織布層は、音の入射方向から見て乾式不織布層の前に配置されている。これにより、凹凸を有する不織布層の両面に空気層が存在する為、凹凸表面での音の反射が少なく、凹凸を有する不織布層から乾式不織布層において、効果的に吸音でき、且つ、凹凸裏面に空気層が存在することで低周波領域の吸音が良好となる。この為、凹凸を有する不織布層による低周波領域の吸音が良好となる効果と、乾式不織布層による高周波領域の吸音が良好となる効果が相俟って、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高い複合吸音材を提供できる。
【0010】
本発明の乾式不織布層は、両主面(表裏面)がフラットであり、1層又は複数層存在する。両主面(表裏面)がフラットであると、複数層積層したときに界面接着するのに便利である。また、1層で厚く作成するのに比べて、薄い均一層を形成できる効果もある。もちろん1層で厚く作成してもよい。
【0011】
積層吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下であり、好ましくは700~2800g/m2であり、より好ましくは800~2600g/m2である。これにより、軽量でかつ低~高周波領域の吸音性が高い吸音材となる。
【0012】
積層吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が40%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上であるのが好ましく、より好ましくは300Hzにおける垂直入射吸音率が42%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ56%以上である。これによりロードノイズばかりでなく、エンジンによる雑音、ブレーキ音などにも対応できる。
【0013】
積層吸音材の厚みは30mm以上100mm以下が好ましく、より好ましくは35mm以上80mm以下であり、さらに好ましくは40mm以上60mm以下である。これにより、低~高周波領域の吸音性能が良好となり、省スペース性に優れた吸音材となる。
【0014】
凹凸を有する不織布層は、底部から頂部の平均高さ1mm~10mm、山山間の平均ピッチ1~30mm、平均厚さ0.2~5mmが好ましい。単位面積当たりの質量(目付)は150~1500g/m2が好ましく、より好ましくは180~1350g/m2であり、さらに好ましくは210~1230g/m2である。凹凸を有する不織布層を構成する平均繊維直径は、0.1~100μmが好ましく、より好ましくは0.7~70μmであり、さらに好ましくは0.8~60μmである。また、凹凸を有する不織布層を構成する繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、アラミドなどが好ましく、これらを混綿してもよい。これにより、300~2000Hzの低~高周波領域における吸音性能が高い複合吸音材となる。
【0015】
凹凸を有する不織布層の通気抵抗が0~150mTorrであるのが好ましく、より好ましくは1~140mTorrであり、さらに好ましくは2~135mTorrである。通気抵抗は、流れ抵抗測定装置(Mecanum社製、装置名SIGMA)を使用し、ASTM C522-03:2016に準拠して測定できる。
【0016】
本発明の積層吸音材は、凹凸を有する不織布層は複数枚含み、少なくとも1枚は乾式不織布層の前に配置されており、残りの少なくとも1枚は乾式不織布層の間に配置してもよい。例えば、凸凹不織布を2枚使用し、音入射側から凸凹不織布層と乾式不織布層を交互に積層する。これにより、高周波数域の吸音性能の低下を防ぐことができ、低周波~高周波数域において吸音性能を維持できる。
【0017】
凹凸不織布層を構成する繊維は、短繊維でも良いし、長繊維でも良い。長繊維から成るスパンボンドやメルトブロー、SMS (スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)などを短繊維から成る不織布と複合して凹凸不織布を作製しても良い。また、凹凸不織布層は、凹凸構造内部に密度差を持たせても良い。凹凸構造内部の密度差は、凹凸不織布製造工程において、凹凸付与装置のローラー間を通過する際、凹凸不織布の山・谷・その中間部で密度差が形成されるようにしてもよい。
【0018】
乾式不織布の密度は、10~75kg/m3であるのが好ましく、より好ましくは13kg/m3以上70kg/m3以下であり、さらに好ましくは16kg/m3以上60kg/m3以下である。この範囲内であれば、低密度層として、音と吸音材が接触した際に、音エネルギーが繊維との摩擦により効果的に減衰する為、低~高周波領域の吸音が良好となる。乾式不織布層は、高融点繊維と熱融着繊維を混綿したニードルパンチ不織布層であるのが好ましい。ニードルパンチ不織布層であると一体性が良く、取り扱い性もよい。高融点繊維は例えばポリエチレンテレフタレート(PET)繊維である。熱融着繊維は例えば芯がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘がPETより融点の低い共重合ポリエステルの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維を使用できる。このように熱融着繊維を含むニードルパンチ不織布層とすることにより、複合吸音材を車に取り付ける際に、熱プレスにより所望の形状に成形できる。熱融着繊維は、全融型、分割型、芯鞘型、サイドバイサイド型を使用できるが、好ましくは芯鞘型である。芯鞘型の芯と鞘の材料は、芯/鞘でPET/PET、PET/PE(ポリエチレン)、PET/PP(ポリプロピレン)、PP/PE、PE/PE、PP/PPなどを使用できるが、好ましくは強度面から同材料が好ましく、より好ましくはPET/PETである。
【0019】
乾式不織布は、ニードルパンチ不織布層に加え、さらに密度が1~20kg/m3のサーマルボンド不織布層を積層させてもよい。これにより吸音性能は維持した上で、軽量化が可能となる。
【0020】
本発明の構成要素である積層吸音材凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層は、ホットメルト、接着剤、もしくは両面テープ等を使用し、積層一体化されても良いし、積層一体化されなくても良い。積層一体化する場合は、ホットメルト、接着剤、もしくは両面テープは接着面全面に塗布、もしくは貼付けてもよいし、点状、線状、格子状に塗布、もしくは貼付けてもよい。不織布の製造工程において、熱融着繊維を混合し、後工程で加熱することで接着してもよい。または、不織布の製造工程において、各層の間に、熱融着シートを挟み込み、後工程で加熱することで、各層を接着してもよい。
【0021】
積層吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材として有用であり、とくに電気自動車(electric vehicle : EV)のロードノイズ用吸音材として有用である。自動車のタイヤ周りの個所、ダッシュボード又は内装面等に組み込むことができる。
本発明の積層吸音材は長尺シートに形成され、ロール状に巻かれた状態で製品化するのが好ましい。長尺シートであると、目的に合わせた大きさ及び形状にカットできる。またロール状であると、運搬、移動、供給に便利である。
【0022】
また、難燃性が必要な場合は、凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層、その他の繊維素材は難燃アクリル、モダクリル、難燃ポリエステル、難燃レーヨン、難燃ウール(ザプロ加工)、難燃ビニロン、芳香族ポリアミド(アラミド)、ノボラック、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール(PBI)等の繊維を使用できる。あるいは非難燃性繊維に難燃剤(液体・粉体)を塗布、噴霧又は含浸などして難燃性にしても良い。
【0023】
次に図面を用いて説明する。以下の図面の説明において、同一符号は同一物を示す。図1Aは本発明の一実施形態の凹凸を有する不織布層1の模式的斜視図、図1B図1AのI-I線の模式的断面図である。凹凸を有する不織布層1は、凸部2と凹部3が形成されており、一例として底部から頂部の平均高さHが3mm、山山間の平均ピッチPが10mm、平均厚さtが2mm、密度は180kg/m3、通気抵抗は26mTorrである。この凹凸を有する不織布層1は、一対の凹凸ローラーによる凹凸付与装置、及び一対の金属彫刻ロール、片面に金属彫刻ロールとペーパーロールとの組み合わせなどのエンボス装置や金属彫刻板による平板プレス装置、凹凸形状を有する円筒型プレス装置などを用いて凹凸賦形加工して得られる。凹凸形状は、代表的な波型、ギヤ型、格子型などの連続、または、半球状、多角状などの凹部を非連続的に、千鳥配置、一定間隔で配置してもよい。凹部、凸部、凹凸部のいずれかの単位面積当たりの個数は10~5000個/100cm2が好ましく、さらに好ましくは50~1500個/100cm2である。
【0024】
図2は本発明の一実施形態の積層吸音材4の模式的断面図である。この積層吸音材4は、凹凸を有する不織布層1と、乾式不織布層5a-5dをこの順番に積層した積層吸音材である。
図3は本発明の別の実施形態の積層吸音材6の模式的断面図である。この積層吸音材6は、凹凸を有する不織布層1と、乾式不織布層5a-5bと、サーマルボンド不織布層7をこの順番に積層した積層吸音材である。
図4は本発明のさらに別の実施形態の積層吸音材8の模式的断面図である。この積層吸音材8は、凹凸を有する不織布層1aと、乾式不織布層5aと、凹凸を有する不織布層1bと、乾式不織布層5b-5dをこの順番に積層した積層吸音材である。
図5は本発明のさらに別の実施形態の積層吸音材9の模式的断面図である。この積層吸音材6は、凹凸を有する不織布層1aと、乾式不織布層5aと、凹凸を有する不織布層1bと、乾式不織布層5bと、サーマルボンド不織布層7をこの順番に積層した積層吸音材である。
【0025】
図6は本発明の複合吸音材が自動車20に搭載される個所を示す模式的説明図である。自動車20の前輪の上部のフェンダーにフェンダーライナー21、後輪の上部のリアホイルにリアホイルハウスライナー22、ダッシュパネル部にはダッシュサイレンサー23、フロアーパネル部にはフロアーサイレンサー24、ボンネット裏部にはフードサイレンサー25、天井部にはルーフライニングインシュレーター26、トランクルーム部にはラゲージマット及びラゲージフロントサイレンサー27が装着される。これらは一例であるが、少なくとも一部に用いてもよいし、全部に用いてもよい。これにより、自動車20の外部からの音を吸音ないしは遮音できる。とくにライナー材は、タイヤと地面の摩擦音であるロードノイズのほか、タイヤの巻き込む砂利、小石、雨水がボディに当たる音を室内に伝わるのを防止できる。これらのライナー材又はサイレンサー材は、本発明の複合吸音材を熱成形して得られる。
【0026】
本発明の吸音材は、自動車の様々な箇所に搭載でき、低周波数域 (ロードノイズ対策) だけでなく、高周波数域にも吸音性能を有するよう設計した。低周波数域の吸音性能が必要とされる部位としては、ダッシュサイレンサーやフロアーサイレンサーにも適用できる。
【実施例0027】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例の測定方法は下記のとおりである。
<垂直入射吸音率>
それぞれのサンプルを採取し、各条件での積層をした後、垂直入射吸音率測定装置「日本音響エンジニアリング社製WinZacMTX」を用いASTM E 1050:2019に準拠し、当該サンプルについて、周波数117~5000Hzの範囲の垂直入射吸音率を測定した。
<通気抵抗>
凹凸を有する不織布層の通気抵抗は、流れ抵抗測定装置(Mecanum社製、装置名SIGMA)を使用し、ASTM C522-03:2016に準拠し、通気孔直径29mm、エアー流量100SCCMで測定した。
<厚み>
厚みゲージを用いて測定した。
<その他>
JIS又は業界の規定する測定方法に従って測定した。
【0028】
(材料の作成)
(1)凹凸を有する不織布層
各実施例に記載した。
(2)乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)
繊度2.2decitex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレート繊維、80質量%と繊度4.4decitex、繊維長51mmの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘が融点ないしは軟化点110℃の共重合ポリエステル)、20質量%を混綿し、得られたウェブをニードルパンチした。更に150℃で10分間熱処理し、密度が32kg/m3,質量が318g/m2、厚さが10mm のニードルパンチ不織布層を得た。
(3)乾式不織布層(サーマルボンド不織布層)
繊度1.0decitex、繊維長51mmの極細ポリエステル(PET)繊維35質量%、繊度7.8decitex、繊維長51mmの中空ポリエステル(PET)繊維35質量%、繊度4.4decitex、繊維長51mmの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘が融点ないしは軟化点110℃の共重合ポリエステル)20質量%、繊度2.2decitex、繊維長51mmの芯鞘複合熱融着ポリエステル繊維(芯がポリエチレンテレフタレート、鞘が融点ないしは軟化点110℃の共重合ポリエステル)10質量%を混綿し、得られたウェブを170℃で2分間熱処理し、厚さが20mm、質量が183g/m2、密度が9kg/m3のサーマルボンド不織布層を得た。
【0029】
(実施例1)
凹凸不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度1.3decitex、繊維長38mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度186kg/m3、通気抵抗33mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
図2に示すように、音の入射方向から凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)4層を配置した。
【0030】
(実施例2)
凹凸不織布は、アクリル繊維 (繊度3.3decitex、繊維長76mm) を開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度180kg/m3、通気抵抗26mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
上記以外は、実施例1と同様に実施した。
【0031】
(実施例3)
凹凸不織布は、ポリプロピレン繊度7.8decitex、繊維長64mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチ後、凹凸ローラー間を通過させ、図1A-Bに示す平均高さH=3mm、山山間の平均ピッチP=10mm、平均厚さt=2mm、密度184kg/m3、通気抵抗15mTorrの凹凸を有する不織布層を使用した。
上記以外は、実施例1と同様に実施した。
【0032】
以上の条件と結果を表1にまとめて示す。また、図10に実施例1~3の垂直入射吸音率グラフを示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1及び図10から明らかなとおり、実施例1~3はいずれも本発明の範囲であったので、軽量であり、300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い積層吸音材とすることができた。
【0035】
(実施例4)
凹凸不織布は実施例2と同様の凸凹不織布を使用した。
図3に示すように、音の入射方向から凹凸を有する不織布層1、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5a~5bの2層、乾式不織布層(サーマルボンド不織布層)7を配置し、積層吸音材6とした。
【0036】
(比較例1)
図7に示すように、音の入射方向から乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5a~5dの4層を配置し、積層吸音材10とした。
【0037】
(比較例2)
凹凸を有する不織布層の代わりに平坦な不織布を使用した。平坦な不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度3.3decitex、繊維長64mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチし、平均厚さt=2mm、密度120kg/m3、通気抵抗3mTorrの不織布層とした。
図8に示すように、音の入射方向から平坦な不織布層11と、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5a~5dの4層を配置し、積層吸音材12とした。
【0038】
以上の条件と結果を表2にまとめて示す。また、図11に実施例4の、図12に比較例1の、図13に比較例2のそれぞれ垂直入射吸音率グラフを示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2及び図11~13から明らかなとおり、実施例4は本発明の範囲であったので、軽量であり、300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い積層吸音材とすることができた。これに対して比較例1は凹凸不織布を使用していないため、比較例2は凹凸不織布の代わりに平坦品を使用したため、いずれも300~500Hzを含む低周波数における吸音性能が好ましくなかった。
【0041】
(実施例5)
凹凸不織布は実施例2と同様の凸凹不織布を使用した。
図4に示すように、音の入射方向から凹凸を有する不織布層1a、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5a、凹凸を有する不織布層1b、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5b~5cの3層を配置し、積層吸音材8とした。
【0042】
(実施例6)
凹凸不織布は実施例2と同様の凸凹不織布を使用した。
図5に示すように、音の入射方向から凹凸を有する不織布層1a、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5a、凹凸を有する不織布層1b、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5b、乾式不織布層(サーマルボンド不織布層)7を配置し、積層吸音材9とした。
【0043】
(比較例3)
平坦な不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度3.3decitex、繊維長51mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチし、平均厚さt=2mm、密度601kg/m3、通気抵抗117mTorrの不織布層を使用した。
図9に示すように、音の入射方向から平坦な不織布層11a、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5a、平坦な不織布層11b、乾式不織布層(ニードルパンチ不織布層)5b~5dの3層を配置し、積層吸音材13とした。
【0044】
(比較例4)
平坦な不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊度1.3decitex、繊維長38mmを開繊し、得られたウェブを、ニードルパンチし、平均厚さt=2mm、密度283kg/m3、通気抵抗34mTorrの不織布層を使用した。
上記以外は、比較例3と同様に実施した。
【0045】
以上の条件と結果を表3にまとめて示す。また、図14に実施例5、図15に実施例6、図16に比較例3~4の垂直入射吸音率グラフを示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3及び図14~16から明らかなとおり、実施例5及び6は本発明の範囲であったので、軽量であり、300~2000Hzの低~高周波数における吸音性能が高い積層吸音材とすることができた。とくに、高周波数域の吸音性能の低下を防ぐことができ、低周波~高周波数域において吸音性能を維持できることが確認できた。
これに対して比較例3及び4は凹凸不織布を使用していないため、いずれも1000Hzを含む高周波数における吸音性能が好ましくなかった。
【0048】
本発明の好ましい態様は次のとおりである。
[1]凹凸を有する不織布層と、乾式不織布層を含む積層吸音材であって、前記凹凸を有する不織布層は、密度が50kg/m3以上500kg/m3以下であり、音の入射方向から見て前記乾式不織布層の前に配置されており、前記乾式不織布層は両主面がフラットであり、1層又は複数層存在し、前記積層吸音材の単位面積当たりの質量が2800g/m2以下であることを特徴とする積層吸音材。
[2]前記積層吸音材の300Hzにおける垂直入射吸音率が40%以上、500Hz、1000Hz及び2000Hzにおける垂直入射吸音率がそれぞれ55%以上である1に記載の積層吸音材。
[3]前記積層吸音材の厚みが30mm以上100mm以下である1又は2に記載の積層吸音材。
[4]前記凹凸を有する不織布層は、底部から頂部の平均高さが1mm~10mm、山山間の平均ピッチが1~30mm、平均厚さが0.2~5mmである1~3のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[5]前記凹凸を有する不織布層の通気抵抗が0~150mTorrである1~4のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[6]前記凹凸を有する不織布層の単位面積当たりの質量が150~1500g/m2である1~5のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[7]前記乾式不織布の密度が10~75kg/m3である1~6のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[8]前記乾式不織布層は、高融点繊維と熱融着繊維を混綿したニードルパンチ不織布層である1~7のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[9]前記乾式不織布は、ニードルパンチ不織布層に加え、さらに密度が1~20kg/m3のサーマルボンド不織布層が積層されている8に記載の積層吸音材。
[10]前記積層吸音材を構成する各層は積層一体化されている1~9のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[11]前記積層吸音材は、熱成形が可能である1~10のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[12]凹凸を有する不織布層は複数枚含み、少なくとも1枚は乾式不織布層の前に配置されており、残りの少なくとも1枚は乾式不織布層の間に配置されている1~11のいずれか1項に記載の積層吸音材。
[13]前記積層吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材である1~12のいずれか1項に記載の積層吸音材。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の積層吸音材は、自動車のロードノイズ用吸音材として有用であり、自動車のタイヤ周りの個所、ダッシュボード又は内装面等に組み込むことができる。具体的にはフェンダーライナー、リアホイルハウスライナー、ダッシュサイレンサー、フロアーサイレンサー、フードサイレンサー、ルーフライニングインシュレーター、ラゲージマット、ラゲージフロントサイレンサーなどがある。また、静音化が求められるエアコン等の空調 機器、冷凍機、ヒートポンプ等、ダクト等の風路を形成する部分、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、掃除機等の電気製品、プリンター、コピー機、FAX等のOA機器、壁材芯材、床材、吸音ボード、調音ボード等の建築用資材にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1a,1b 凹凸を有する不織布層
2 凸部
3 凹部
4,6,8,9,10,12,13 積層吸音材
5a-5d 乾式不織布層
7 サーマルボンド不織布層
11 平坦な不織布層
20 自動車
21 フェンダーライナー
22 リアホイルハウスライナー
23 ダッシュサイレンサー
24 フロアーサイレンサー
25 フードサイレンサー
26 ルーフライニングインシュレーター
27 ラゲージマット及びラゲージフロントサイレンサー
図1
図2
図3
図4
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