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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065452
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】車両の運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240508BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240508BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/16 A
B60W30/09
B60W40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174314
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉越 千尋
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠秀
(72)【発明者】
【氏名】吉松 祐香
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA08
3D241BA15
3D241BA33
3D241BA49
3D241BA60
3D241BB31
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE01
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC02Z
3D241DC18Z
3D241DC20Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC37Z
3D241DC39Z
3D241DC50Z
3D241DC57Z
3D241DC59B
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】自車両が対向車両の走行を阻害することを抑制できる、車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供する。
【解決手段】自車両Vの前方に交差点Cが存在する場合に、交差点Cに信号機が設置されているか否かを判定し、交差点Cに信号機が設置されていると判定した場合は、信号機の灯火状態を検出し、交差点Cに信号機が設置されていないと判定した場合は、交差点Cにおいて、自車両Vが走行する第1道路と、第1道路と交差する第2道路とのいずれが優先道路であるかを判定し、灯火状態又は優先道路の判定結果に基づき、第2道路を含む所定範囲を検出範囲Z1に設定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを用いて、検出範囲に存在する障害物を検出し、前記障害物の検出結果を用いて自車両の走行を自律制御する、車両の運転支援方法において、
前記プロセッサは、
前記自車両の前方に交差点が存在する場合は、前記交差点に信号機が設置されているか否かを判定し、
前記交差点に前記信号機が設置されていると判定した場合は、前記信号機の灯火状態を取得し、
前記交差点に前記信号機が設置されていないと判定した場合は、前記交差点において、前記自車両が走行する第1道路と、前記第1道路と交差する第2道路とのいずれが優先道路であるかを判定し、
前記灯火状態又は前記優先道路の判定結果に基づき、前記第2道路を含む所定範囲を前記検出範囲に設定する、車両の運転支援方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記交差点、前記第1道路及び前記第2道路のうち少なくとも一か所に設置された検出装置から、前記検出範囲に存在する前記障害物の前記検出結果を取得する、請求項1に記載の車両の運転支援方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記交差点に前記信号機が設置されていると判定した場合は、前記灯火状態に基づいて前記第2道路の前記検出範囲を設定する、請求項1に記載の車両の運転支援方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記信号機の灯火色ごとに前記第2道路の前記検出範囲を予め設定し、
前記灯火色に応じて前記第2道路の前記検出範囲を切り替える、請求項3に記載の車両の運転支援方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記信号機が前記自車両に対して停止の灯火色を表示した場合は、前記第2道路の前記検出範囲を、前記信号機が前記自車両に対して前記停止の灯火色を表示していない場合より前記交差点から離れる方向に広がった範囲とする、請求項3に記載の車両の運転支援方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記交差点に前記信号機が設置されていないと判定した場合は、前記判定結果に基づいて前記第2道路の前記検出範囲を設定する、請求項1に記載の車両の運転支援方法。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第2道路が前記優先道路であると判定した場合は、前記第2道路の前記検出範囲を、前記第1道路が前記優先道路であると判定した場合より前記交差点から離れる方向に広がった範囲とする、請求項6に記載の車両の運転支援方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1道路と前記第2道路のどちらも前記優先道路でないと判定した場合は、前記第2道路の前記検出範囲を、前記第1道路が前記優先道路であると判定したときより前記交差点から離れる方向に広がった範囲とし、前記第2道路が前記優先道路であると判定したときより前記交差点に近づく方向に狭まった範囲とする、請求項6に記載の車両の運転支援方法。
【請求項9】
検出範囲に存在する障害物を検出する認識部と、
前記障害物の検出結果を用いて自車両の走行を自律制御する制御部と、
前記自車両の前方に交差点が存在する場合は、前記交差点に信号機が設置されているか否かを判定する設置判定部と、
前記設置判定部が、前記交差点に前記信号機が設置されていると判定した場合は、前記信号機の灯火状態を取得する取得部と、
前記設置判定部が、前記交差点に前記信号機が設置されていないと判定した場合は、前記交差点において、前記自車両が走行する第1道路と、前記第1道路と交差する第2道路とのいずれが優先道路であるかを判定する優先判定部と、
前記灯火状態又は前記優先判定部の判定結果に基づき、前記第2道路を含む所定範囲を前記検出範囲に設定する設定部と、を備える、車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援方法及び運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体の位置情報、障害物の情報及び地図情報に基づき、運転支援のために検出が必要な必要検出範囲を算出し、道路に沿って設置された複数のインフラセンサの中から必要検出範囲を検出できるインフラセンサを選定し、選定されたインフラセンサに対し、インフラセンサが検出した情報の送信を指示する運転支援装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-201544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、車線に沿った検出範囲を設定するため、他車両が交差点を右折又は左折して対向車線に進入する場合に、当該他車両を検出するタイミングは、他車両が当該対向車線に進入した後になる。そのため、自車両が、前方に存在する障害物を回避するために対向車線に進入した後に、交差点から当該対向車線に進入する他車両を検出し、自車両が当該他車両を回避できず、その走行を阻害することがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自車両が対向車両の走行を阻害することを抑制できる、車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の前方に交差点が存在する場合に、交差点に信号機が設置されているか否かを判定し、交差点に信号機が設置されていると判定した場合は、信号機の灯火状態を検出し、交差点に信号機が設置されていないと判定した場合は、交差点において、自車両が走行する第1道路と、第1道路と交差する第2道路とのいずれが優先道路であるかを判定し、灯火状態又は優先道路の判定結果に基づき、第2道路を含む所定範囲を検出範囲に設定することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両が対向車両の走行を阻害することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る運転支援装置を含む運転支援システムのブロック図である。
図2図1に示す運転支援システムにて運転支援を実行する走行シーンの一例を示す平面図である。
図3図2に示す走行シーンにおいて、交差点に設置された定点カメラの位置とその検出可能範囲の一例を示す平面図である。
図4図2に示す走行シーンにおいて、信号機が自車両に対して停止の灯火色を表示している場合に設定される検出範囲の一例を示す平面図である。
図5図2に示す走行シーンにおいて、信号機が自車両に対して停止の灯火色を表示していない場合に設定される検出範囲の一例を示す平面図である。
図6】信号機が設置されていない交差点において、図1に示す運転支援装置が設定する検出範囲の一例を示す平面図である。
図7】信号機が設置されていない交差点において、図1に示す運転支援装置が設定する検出範囲の他の例を示す平面図である。
図8A図2に示す走行シーンにおいて実行される運転支援の一例を示す平面図である(その1)。
図8B図2に示す走行シーンにおいて実行される運転支援の一例を示す平面図である(その2)。
図8C図2に示す走行シーンにおいて実行される運転支援の一例を示す平面図である(その3)。
図9A図1の運転支援システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートである(その1)。
図9B図1の運転支援システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートである(その2)。
図10】ステップS9のサブルーチンの一例を示すフローチャートである。
図11図2に示す走行シーンにおける、本発明の比較例に係る運転支援の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
[運転支援システムの構成]
図1は、本発明に係る運転支援システム10を示すブロック図である。運転支援システム10は車載システムであり、自律走行制御により、車両の乗員により設定された目的地まで車両を走行させる。自律走行制御とは、後述する運転支援装置を用いて車両の走行動作を自律的に制御することをいい、走行動作には、加速、減速、発進、停車、転舵など、あらゆる走行動作が含まれる。自律的に走行動作を制御するとは、運転支援装置が、車両の装置を用いて走行動作の制御を行うことをいう。運転支援装置は、予め定められた範囲内でこれらの走行動作を制御し、運転支援装置により制御されない走行動作については、ドライバーによる手動の操作が行われる。
【0011】
図1に示すように、運転支援システム10は、撮像装置11、測距装置12、自車状態検出装置13、地図情報14、自車位置検出装置15、ナビゲーション装置16、車両制御装置17、表示装置18、及び運転支援装置19を備える。また、運転支援システム10は通信装置3を備える。運転支援システム10を構成する装置は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、互いに情報を授受できる。
【0012】
撮像装置11は、画像により車両の周囲の対象物を認識する装置であり、例えば、CCDなどの撮像素子を備えるカメラである。測距装置12は、車両と対象物との相対距離および相対速度を演算するための装置であり、例えば、ミリ波レーダー、LiDAR(light detection and ranging)ユニットなどである。撮像装置11及び測距装置12にて検出する対象物は、車線境界線、中央線、標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、信号機、横断歩道などである。また、対象物には、他車両、自動二輪車、自転車、歩行者など、車両の走行に影響を与え得る障害物も含まれる。撮像装置11及び測距装置12の検出結果は、運転支援装置19にて統合することができ(いわゆるセンサフュージョン)、これにより、検出した対象物の不足する情報を補完できる。自車状態検出装置13は、車両の走行状態を検出するための装置であり、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサなどが挙げられる。なお、撮像装置11、測距装置12及び自車状態検出装置13の検出結果は、必要に応じて、運転支援装置19により所定の時間間隔で取得される。
【0013】
地図情報14は、道路情報、施設情報及びそれらの属性情報を含む。道路情報及び道路の属性情報には、道路の幅、道路の曲率半径、路肩の構造物、道路交通法規、道路の合流地点と分岐地点などの情報が含まれている。地図情報14は、レーンごとの移動軌跡を把握できる高精細地図情報である。地図情報14は、運転支援装置19などに設けられた記録媒体に読み込み可能な状態で記憶されている。運転支援装置19は、必要に応じて地図情報14を取得する。自車位置検出装置15は、車両の現在位置を検出する測位システムであり、例えば、GPS(Global Positioning System)用の衛星から受信した電波などから車両の現在位置を算出する。ナビゲーション装置16は、地図情報14を参照して、車両の現在位置から目的地までの走行経路を算出する装置である。
【0014】
車両制御装置17は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の走行を律する車載機器を電子的に制御する。車両制御装置17は、車両の走行速度を制御する車速制御装置171と、車両の操舵操作を制御する操舵制御装置172を備える。車速制御装置171及び操舵制御装置172は、運転支援装置19から入力された制御信号に応じて、これらの駆動装置及び操舵装置の動作を自律的に制御する。表示装置18は、車両の乗員に必要な情報を提供するための装置であり、例えば、インストルメントパネルに設けられた液晶ディスプレイである。
【0015】
運転支援装置19は、運転支援システム10を構成する装置を制御して協働させることで車両の走行を制御し、目的地まで車両を走行させる装置である。運転支援装置19は、例えばコンピュータであり、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)と、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とを備える。CPUは、ROMに格納されたプログラムを実行し、運転支援装置19が有する機能を実現するための動作回路である。
【0016】
通信装置3は、運転支援装置19が運転支援システム10の外部の機器との間で情報を授受するための装置であり、通信機能を備える。通信装置3は、運転支援システム10の外部の機器と直接通信してもよく、ネットワークを介して通信してもよい。路側機4は、ITS(Intelligent Transport Systems)スポットとも言い、通信装置3と双方向通信を行うための通信設備である。路側機4は、通信装置3と接続し、運転支援装置19の要求に応じて道路交通状況などの情報を提供する。路側機4は道路脇(例えば、交差点の信号機の信号柱)に設置されている。路側機4は、必要に応じて検出装置5から検出結果を取得する。運転支援装置19は、必要に応じて、通信装置3を介して路側機4から当該検出結果を取得する。検出装置5は、道路に存在する対象物を検出するための、運転支援システム10の外部の装置であり、例えば、交差点、道路などに設置された定点カメラである。また、検出装置5は、他車両の検出装置であってもよく、撮像装置を備えた無人航空機であってもよい。運転支援装置19は、通信装置3を介して検出装置5と直接接続し、通信してもよい。検出装置5は、サーバ(図示しない)に検出結果を出力してもよい。
【0017】
[運転支援装置の機能]
運転支援装置19は、自律走行制御により、設定された目的地まで車両を走行させる運転支援機能を有する。運転支援装置19は、運転支援機能として、走行経路を生成する経路生成機能と、自車両の周囲の走行環境を認識する環境認識機能と、走行軌跡を生成し、走行軌跡に沿って自車両を走行させる走行制御機能とを有する。これに加えて、本実施形態の運転支援装置19は、交差点に信号機が設置されているか否かを判定する設置判定機能と、信号機の灯火状態を取得する取得機能と、交差点において、自車両が走行する道路と、自車両が走行する道路と交差する道路とのいずれが優先道路であるかを判定する優先判定機能と、障害物の検出範囲に設定する範囲設定機能と、を有する。
【0018】
運転支援装置19のROMに格納されたプログラムはこれらの機能を実現するためのプログラムを備え、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することで、これらの機能が実現される。図1には、各機能を実現する機能ブロックとして、認識部21、制御部22、設置判定部23、取得部24、優先判定部25及び設定部26を便宜的に抽出して示す。以下、図1に示す各機能ブロックが有する機能について説明する。
【0019】
支援部20は運転支援機能を有する。図2は、運転支援装置19が支援部20の機能により自車両の走行を自律制御する走行シーンの一例を示す平面図である。図2に示す走行シーンでは、片側1車線の道路が、図面の上下方向と左右方向にそれぞれ延在し、2つの道路が交差する部分に交差点Cが存在する。本実施形態では、車両は左側通行で走行するものとする。図2に示す走行シーンでは、交差点Cに信号機が設置され、信号機は自車両Vに対して停止の灯火色(つまり赤色)を表示しているものとする。車線L1~L8を走行する車両は交差点Cを直進、右折又は左折できるものとする。自車両Vは、車線L1の位置P1を走行しており、目的地Xに向かって交差点Cを直進して通過するものとする。他車両W1は車線L4の位置Q1を走行し、他車両W2は車線L5の位置Q2を走行し、他車両W3は車線L8の位置Q3を走行しており、他車両W1は交差点Cを直進して車線L2に進入し、他車両W2は交差点Cを左折して車線L2に進入し、他車両W3は交差点Cを右折して車線L2に進入するものとする。さらに、駐車車両Vzが車線L1の位置Pzに駐車しており、駐車車両Vzは位置Pzから移動しないものとする。
【0020】
図2に示す交差点Cでは、図面右下の角の位置に建築物Yが存在する。図2に示す走行シーンでは、自車両Vの検出装置(具体的には撮像装置11及び測距装置12)を用いて障害物を検出する場合に、自車両Vと当該障害物との間に建築物Yが存在するときは、建築物Yに遮られて当該障害物を検出できないものとする。位置P1を走行する自車両Vについては、図2に示す範囲A1が建築物Yによって検出を遮られる部分であり、撮像装置11及び測距装置12の検出範囲の死角となる。そのため、範囲A1の位置Q2を走行する他車両W2は、位置P1を走行する自車両Vの撮像装置11及び測距装置12では検出できない。さらに、自車両Vの検出装置を用いて障害物を検出する場合に、自車両Vと当該障害物との間に駐車車両Vzが存在するときは、駐車車両Vzに遮られて当該障害物を検出できないものとする。位置P1を走行する自車両Vについては、図2に示す範囲A2が駐車車両Vzによって検出を遮られる部分であり、撮像装置11及び測距装置12の検出範囲の死角となる。そのため、範囲A2の位置Q3を走行する他車両W3は、位置P1を走行する自車両Vの撮像装置11及び測距装置12では検出できない。
【0021】
これに加え、図2に示す交差点Cには、検出装置5に相当する定点カメラB1~B3が設置されているものとする。定点カメラB1~B3の位置を図3に示す。図3に示すとおり、定点カメラB1は交差点Cの図面左下の角の位置に設置され、定点カメラB2,B3は交差点Cの図面右上の角の位置に設置されている。定点カメラB1~B3は、それぞれ、図3に示す検出可能範囲R1~R3に存在する障害物を検出する。すなわち、図3に示す走行シーンでは、定点カメラB1により他車両W2が検出され、定点カメラB2により他車両W3が検出され、定点カメラB3により他車両W1が検出される。
【0022】
本発明の比較例に係る運転支援として、自車両Vの撮像装置11及び測距装置12の検出結果のみを用いた運転支援を図11に示す。図11は、撮像装置11及び測距装置12の検出結果のみを用いた運転支援の一例に示す平面図である。図11に示す走行シーンは、図2に示す走行シーンと同様である。この場合、位置P1を走行する自車両Vからは、車線L4の位置Q1を走行する他車両W1のみが検出され、交差点Cの信号機が他車両W1に対して停止の灯火色を表示している。そのため、他車両W1は車線L2に進入せず、他に車線L2進入する他車両は存在しないと判定される。当該判定結果を受け、駐車車両Vzを回避するため、車線L2の位置Pxまで走行する走行軌跡Txが生成され、走行軌跡Txに沿って自車両Vを走行させる運転支援が実行される。
【0023】
自車両Vが走行軌跡Txに沿って走行する間に、他車両W2は、交差点Cを左折し、走行軌跡Uxに沿って車線L2の位置Qxまで走行するとする。この場合、自車両Vから他車両W2が認識されるタイミングは、他車両W2の位置が、図2に示す範囲A1に含まれなくなった後、つまり、他車両W2が交差点Cを左折した後となる。他車両W2が車線L2に進入した時点で、自車両Vが位置Pxを走行しているとすると、自車両Vは他車両W2を回避できず、車線L2に進入した他車両W2の走行を阻害してしまう。このような事態の発生を抑制するため、本実施形態の運転支援装置19は、図1に示す各機能ブロックの有する機能を用いて自律走行制御を実行する。
【0024】
認識部21は環境認識機能を有する。運転支援装置19は、認識部21の機能により、撮像装置11及び測距装置12を用いて車両の周囲の走行環境を認識する。走行環境には、対象物の種類及び位置、障害物が存在する場合はその種類及び位置、路面状況などの道路状況などの情報が含まれる。運転支援装置19は、撮像装置11及び測距装置12の検出結果に対し、パターンマッチングなどの適宜の処理を行い、走行環境を認識する。
【0025】
運転支援装置19は、自車位置検出装置15から自車両Vの現在位置を取得し、自車両Vの前方において、自車両Vの現在位置から所定距離の範囲内に交差点Cが存在するか否かを判定する。当該所定距離は、例えば、自車両Vの撮像装置11を用いて交差点Cに存在する障害物を検出できる範囲内で適宜の距離を設定できる。運転支援装置19は、自車両Vの現在位置と、地図情報14から取得した交差点Cの位置とを比較し、自車両Vの前方において、所定距離の範囲内に交差点Cが存在するか否かを判定する。
【0026】
さらに、運転支援装置19は、自車両Vの現在位置から所定距離の範囲内に交差点Cが存在すると判定した場合は、認識した走行環境に基づき、自車両Vの前方において、自車両Vと交差点Cとの間に障害物が存在するか否かを判定する。運転支援装置19は、自車両Vの現在位置から所定距離の範囲内に交差点Cが存在しないと判定した場合と、自車両Vと交差点Cとの間に障害物が存在しないと判定した場合は、設定された走行経路に沿って自車両Vを走行させる、通常の自律走行制御を継続する。これに対し、自車両Vの現在位置から所定距離の範囲内に交差点Cが存在し、自車両Vと交差点Cとの間に障害物が存在すると判定した場合は、障害物を回避できるか否かの判定に遷移する。図2に示す走行シーンでは、自車両Vの前方に交差点Cが存在し、自車両Vと交差点Cとの間に駐車車両Vzが駐車している。この場合、自車両Vの位置P1と交差点Cとの間の距離が所定距離以下であれば、駐車車両Vzを回避できるか否かの判定に遷移する。
【0027】
制御部22は、走行制御機能を有する。運転支援装置19は、制御部22の機能により、走行経路に沿って車両を走行させる走行軌跡を生成し、生成した走行軌跡に車両が追従するように、車両制御装置17を介して車両の走行動作を自律制御する。
【0028】
運転支援装置19は、走行制御機能により走行軌跡を生成する場合に、自車両Vの前方に障害物が存在するときは、当該障害物を回避する必要があるか否かを判定する。例えば、障害物の手前の位置が目的地に設定されている場合は、当該障害物を回避する必要がないため、障害物の回避が不要と判定する。この場合、障害物を回避する走行動作は行わない。これに対し、当該障害物を回避する必要があると判定した場合は、自車両Vの車体の全長及び全幅並びに障害物の大きさなどを考慮して、対向車線に進入せずに障害物を回避できるか否かを判定する。例えば、障害物が路肩側を走行する自転車であり、自車両Vが小型車である場合は、運転支援装置19は、対向車線に進入せずに障害物を回避できると判定する。そして、障害物を回避する走行軌跡を生成し、当該走行軌跡に沿って自車両Vを走行させる。これに対し、障害物が路肩側を駐車した大型トラックであり、自車両Vが大型車である場合は、運転支援装置19は、対向車線に進入せずに障害物を回避することができないと判定する。
【0029】
運転支援装置19は、障害物を回避するために対向車線を走行する必要があると判定した場合は、自車両Vが対向車線に進入できるか否かを判定する。例えば、自車両Vが走行する道路に中央分離帯が設置されており、自車両Vが対向車線に進入できない場合は、自律走行制御による障害物の回避ができないため、表示装置18を介してドライバーに手動運転による障害物の回避が必要であることを通知し、自律走行制御を中止する。これに対し、運転支援装置19が、自車両Vが対向車線に進入できると判定した場合は、交差点Cにおける障害物の検出範囲の設定に遷移する。なお、手動運転とは、運転支援装置19が走行動作の自律制御を行わず、ドライバーの操作により車両の走行動作が制御されることを言う。
【0030】
図2に示す走行シーンでは、自車両Vと駐車車両Vzの全幅の和は、車線L1の幅方向の長さよりも長いため、運転支援装置19は、駐車車両Vzを回避するために車線L2を走行する必要があると判定する。また、道路D1では障害物を回避するために対向車線に進入できるため、運転支援装置19は、自車両Vが対向車線である車線L2に進入できると判定する。そして、交差点Cにおける障害物の検出範囲の設定に遷移する。
【0031】
設置判定部23は、設置判定機能を有する。運転支援装置19は、認識部21の環境認識機能により、自車両Vの前方において、所定距離の範囲内に交差点Cが存在すると判定した場合は、設置判定部23の設置判定機能により、交差点Cに信号機が設置されているか否かを判定する。なお、交差点Cに信号機が設置されているとは、交差点Cの交通が信号機の表示により整理されることを意味する。
【0032】
運転支援装置19は、例えば、地図情報14から交差点Cの道路情報を取得し、取得した道路情報に基づいて交差点Cに信号機が設置されているか否かを判定する。これに代え、又はこれに加え、運転支援装置19は、撮像装置11から取得した画像データに対してパターンマッチングの処理を行い、交差点Cに信号機が設置されているか否かを判定してもよい。これに代え、又はこれに加え、運転支援装置19は、交差点Cに設置された路側機4から、交差点Cに信号機が設置されているか否かの情報を取得し、当該情報に基づいて交差点Cに信号機が設置されているか否かを判定してもよい。図2に示す走行シーンでは、例えば、地図情報14から取得した道路情報に基づいて交差点Cに信号機が設置されていると判定する。
【0033】
取得部24は、取得機能を有する。運転支援装置19は、設置判定部23の機能により、交差点Cに信号機が設置されていると判定した場合は、取得部24の機能により信号機の灯火状態を取得する。信号機の灯火状態とは、例えば信号機の灯火色である。信号機の灯火色としては、車両が交差点Cの手前で停車しなければならないことを表示する赤色の灯火色と、停車できない場合を除き、車両が交差点Cに進入できないことを表示する黄色の灯火色と、車両が交差点Cに進入できることを表示する青色の灯火色が挙げられる。
【0034】
運転支援装置19は、撮像装置11から取得した画像データから信号機の表示の色情報を取得し、取得した色情報から信号機の灯火色を検出する。これに代え、又はこれに加え、運転支援装置19は、通信装置3を介して路側機4に接続し、路側機4から交差点Cの信号機の灯火状態を取得してもよい。これに代え、又はこれに加え、運転支援装置19は、通信装置3を介して、交差点Cの信号機の灯火状態の情報を有するサーバ(図示しない)に接続し、当該サーバから信号機の灯火状態の情報を取得してもよい。図2に示す走行シーンでは、例えば、撮像装置11から取得した画像データから信号機の表示の色情報を取得し、取得した色情報から、信号機の灯火状態が、自車両Vに対して停止の灯火色を表示している状態であるとの情報を取得する。
【0035】
優先判定部25は、優先判定機能を有する。運転支援装置19は、設置判定部23の機能により、交差点Cに信号機が設置されていないと判定した場合は、優先判定部25の機能により、交差点Cにおいて、自車両Vが走行する第1道路と、第1道路と交差する第2道路のいずれが優先道路であるかを判定する。
【0036】
優先道路とは、交差点Cにおいて車両同士の進行方向が交錯した場合に、その道路を走行する車両が優先的に交差点Cを通過できる道路のことを言う。すなわち、交差点Cにおいて、第1道路を走行する車両の進行方向と、第2道路を走行する車両の進行方向とが交錯した場合に、第1道路が優先道路であるときは、第1道路を走行する車両が優先的に交差点Cを通過できる。この場合、第2道路を走行する車両は、第1道路を走行する車両が第2道路を走行する車両の前方を通過するまで停車しなければならない。
【0037】
運転支援装置19は、自車位置検出装置15から取得した自車両Vの現在位置と、地図情報14から取得した、自車両Vの周囲の道路情報とを比較し、自車両Vの現在位置が含まれる道路を第1道路と認識し、自車両Vの前方に存在する交差点Cで第1道路と交差する道路を第2道路と認識する。図2に示す走行シーンでは、自車両Vの位置P1が道路D1上であるため、図面の上下方向に延在する道路D1が、自車両Vが走行する第1道路とであり、交差点Cで道路D1と交差する道路D2が第2道路であると認識される。
【0038】
交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかの情報は、地図情報14に道路情報として予め登録されている。運転支援装置19は、第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定する場合に、第1道路と認識した道路の道路情報と、第2道路と認識した道路の道路情報を地図情報14から取得する。そして、取得した道路情報から、交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定する。
【0039】
交差点Cにおける優先道路は、交差点Cに設置された道路標識などにより表示される場合がある。また、交差点Cにおける優先道路を表示するため、交差点Cに、第1道路又は第2道路の中央線及び/又は車両通行帯が設けられる場合がある。これらの場合、運転支援装置19は、撮像装置11から取得した画像データから、交差点Cに設置された道路標識と、交差点Cに設けられた中央線と、交差点Cに設けられた車両通行帯とのうち少なくとも一つを検出する。そして、当該検出結果から、交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定する。例えば、交差点Cに、第2道路に沿った中央線が設けられていることを検出した場合は、運転支援装置19は、交差点Cにおいて第2道路が優先道路であると判定する。また、運転支援装置19は、第1道路の幅員と第2道路の幅員とを算出し、幅員の広い方の道路を優先道路と判定してもよい。
【0040】
なお、地図情報14に、第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかの情報が登録されておらず、道路標識や幅員から第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定できない場合は、運転支援装置19は、交差点Cにおける優先道路の判定ができないとする判定結果を出力する。
【0041】
設定部26は、範囲設定機能を有する。運転支援装置19は、取得部24の機能により交差点Cの信号機の灯火状態を取得した場合は、設定部26の機能により当該灯火状態に基づいて検出範囲を設定する。また、運転支援装置19は、優先判定部25の機能により交差点Cにおける優先道路を判定した場合は、設定部26の機能により当該判定結果に基づいて検出範囲を設定する。運転支援装置19は、自車両Vが交差点Cを通過する場合は、その範囲に存在する障害物を回避すれば自車両Vが障害物に接触せずに交差点Cを通過できる範囲を、検出範囲に設定する。例えば、自車両Vの現在位置から交差点Cまでと、交差点Cと、交差点Cを通過した後に進入する道路とを検出範囲に設定する。
【0042】
また、運転支援装置19は、自車両Vが走行経路に沿って走行した場合に、進行方向が自車両Vの進行方向と交錯するおそれのある他車両を検出できる範囲を、検出範囲に設定してもよい。特に、本実施形態では、第2道路を含む範囲を検出範囲に設定する。交差点Cを右折又は左折して第1道路に進入する他車両を、他車両が交差点Cに進入する前に検出するためである。例えば、図2に示す走行シーンにおいて、運転支援装置19は、道路D2を含む範囲を検出範囲に設定する。第2道路の範囲は、交差点Cに接近する他車両が検出できる範囲内で適宜の範囲を設定できる。また、運転支援装置19は、自車両Vが備える検出装置を用いて障害物を検出できない範囲(つまり、撮像装置11及び測距装置12の死角)を含む範囲を検出範囲に設定してもよい。例えば、図2に示す走行シーンにおいて、運転支援装置19は、範囲A1,A2を含む範囲を検出範囲に設定する。
【0043】
第1道路及び第2道路に設定される検出範囲の長さ及び幅は、運転支援装置19が適切に障害物を検出できる範囲内で適宜の値を設定できる。例えば、運転支援装置19は、交差点Cの手前に設定された追い越し禁止区間又は車線変更禁止区間(具体的には、交差点Cの30m手前の位置から交差点Cまでの範囲)を検出範囲に設定する。これに代え、又はこれに加え、運転支援装置19は、交差点Cから、他車両が交差点Cの手前で方向指示器の点滅を開始する位置までの範囲(具体的には、交差点Cの30~40m手前の位置から交差点Cまでの範囲)を検出範囲に設定してもよい。つまり、運転支援装置19は、他車両が交差点Cを直進して通過するのか、又は他車両が交差点Cで右折もしくは左折するのかを、他車両が交差点Cに進入する前に認識できる範囲を検出範囲に設定してもよい。なお、検出範囲の長さとは道路の進行方向に沿った長さのことを言う。
【0044】
運転支援装置19は、交差点Cに信号機が設置されていると判定した場合は、当該信号機の灯火状態に基づいて第1道路及び第2道路の検出範囲を設定する。図4は、図2に示す走行シーンにおいて設定される検出範囲の一例を示す平面図である。図4に示す検出範囲Z1は、自車両Vの位置P1から交差点Cまでの範囲と、交差点Cの範囲とを含む。また、検出範囲Z1は、道路D2の、交差点Cから例えば30~40mの範囲が含まれる。他車両W2,W3の検出には、図3に示す定点カメラB1~B3のような運転支援システム10の外部の検出装置5を用いる。これに対し、図4に示す走行シーンでは、車線L3,L4の部分には検出範囲Z1が設定されていない。これは、図4に示す走行シーンでは、交差点Cに設置された信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示しているため、同じ道路D1を走行する他車両W1は交差点Cに進入しないからである。
【0045】
これに対し、図2に示す走行シーンにおいて、信号機が自車両に対して停止の灯火色を表示していない場合(例えば、青色の灯火色を表示している場合)に設定される検出範囲の一例を図5に示す。図5に示す検出範囲Z2は、図4に示す検出範囲Z1と同様に、自車両Vの位置P1から交差点Cまでの範囲と、交差点Cの範囲とを含む。また、図5に示す検出範囲Z2は、車線L3,L4の範囲を含む。これは、図5に示す走行シーンでは、交差点Cに設置された信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示していないため、同じ道路D1を走行する他車両W1が交差点Cに進入するからである。さらに、検出範囲Z1は、道路D2の、交差点Cから例えば5~20mの範囲が含まれる。信号機の表示が切り替わった後に交差点Cに進入する他車両W2,W3を予め認識するためである。設定された検出範囲Z2のうち、道路D2の部分に存在する障害物の検出には、図3に示す定点カメラB1~B3を用いる。
【0046】
なお、灯火状態が黄色の場合は、自車両Vが交差点Cの手前に停車できないと判定したときは、信号機が自車両Vに対して停車を指示していないものとして検出範囲を設定し、自車両Vが交差点Cの手前に停車できると判定した場合は、信号機が自車両Vに対して停車を指示しているものとして検出範囲を設定する。
【0047】
図4に示す検出範囲Z1と、図5に示す検出範囲Z2とを比較すると、検出範囲Z2における第2道路の範囲より、検出範囲Z1における第2道路の範囲の方が広い範囲となっている。このように、第2道路である道路D2を走行する他車両W2,W3が交差点Cに進入できる走行シーン(つまり、図4に示す走行シーン)では、道路D2を走行する他車両W2,W3が交差点Cに進入できない走行シーン(つまり、図5に示す走行シーン)よりも交差点Cから離れる方向に広がった範囲を検出範囲に設定することが好ましい。交差点Cに進入する他車両W2,W3をより確実に検出するためである。そこで、本実施形態では、交差点Cの信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示した場合は、第2道路の検出範囲を、当該信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示していない場合より交差点Cから離れる方向に広がった範囲とする。すなわち、交差点Cの信号機の灯火状態により、自車両Vが交差点Cに進入できない場合は、第2道路の検出範囲を、自車両Vが交差点Cに進入できる場合より交差点Cから離れる方向に広がった範囲とする。
【0048】
また、運転支援装置19は、信号機の灯火色ごとに第2道路の検出範囲を予め設定し、灯火色に応じて第2道路の検出範囲を切り替えるてもよい。例えば、運転支援装置19は、赤色の灯火色に対して図4に示す検出範囲Z1を予め設定し、青色の灯火色に対して図5に示す検出範囲Z2を予め設定し、取得部24の取得機能により取得した信号機の灯火状態に応じて、検出範囲Z1と検出範囲Z2とを切り替える。
【0049】
一方、運転支援装置19は、交差点Cに信号機が設置されていないと判定した場合は、優先道路の判定結果に基づいて第1道路及び第2道路の検出範囲を設定する。図6は、交差点Cに信号機が設置されていないと判定された場合に設定される検出範囲の一例を示す平面図である。図6に示す走行シーンは、図2に示す走行シーンにおいて交差点Cに信号機が設置されておらず、交差点Cにおいて道路D2が優先道路である走行シーンである。交差点Cには道路D2の中央線が設けられ、道路D2が優先道路であることが表示されている。これに対し、道路D1には中央線が設けられていない。道路D1は、対面通行が可能な車線L9,L10を有する。
【0050】
図6に示す検出範囲Z3は、自車両Vの位置P1から交差点Cまでの範囲と、交差点Cの範囲とを含む。また、検出範囲Z3は、道路D2の、交差点Cから例えば30~40mの範囲が含まれる。これは、第2道路である道路D2が優先道路であり、道路D2を走行する他車両の走行が自車両Vの走行より優先されるため、自車両Vの検出装置の死角に存在する他車両W2,W3を認識し、その走行を阻害しないようにするためである。また、図6に示す走行シーンでは、車線L10の部分に検出範囲Z3を設定する。図6に示す走行シーンでは、道路D2が優先道路であっても、車線L10を走行する他車両W1が交差点Cに進入することができるからである。
【0051】
これに対し、図6に示す走行シーンにおいて、道路D2に代えて道路D1が優先道路となった走行シーンにおいて設定される検出範囲の一例を図7に示す。図7に示す走行シーンでは、交差点Cには道路D1の中央線が設けられ、道路D1が優先道路であることが表示されている。これに対し、道路D2には中央線が設けられていない。道路D2は、対面通行が可能な車線L11,L12を有する。
【0052】
図7に示す検出範囲Z4は、図6に示す検出範囲Z3と同様に、自車両Vの位置P1から交差点Cまでの範囲と、交差点Cの範囲とを含む。また、図7に示す検出範囲Z4は、道路D1の車線L3,L4の範囲を含む。これは、図7に示す走行シーンでは、道路D1が優先道路であるため、道路D1の位置Q1を走行する他車両W1が交差点Cに進入するからである。さらに、検出範囲Z4は、道路D2の、交差点Cから例えば5~20mの範囲が含まれる。これは、図5に示す走行シーンのように交差点Cの交通が信号機で整理されている場合と異なり、図7に示す走行シーンでは、道路D1が優先道路であっても、車線L11,L12を走行する他車両W2,W3が交差点Cに進入できるからである。
【0053】
ここで、図6に示す検出範囲Z3と、図7に示す検出範囲Z4とを比較すると、検出範囲Z4における第2道路の範囲より、検出範囲Z3における第2道路の範囲の方が広い範囲となっている。このように、第2道路である道路D2を走行する他車両W2,W3が交差点Cに進入しやすい走行シーン(つまり、図6に示す走行シーン)では、道路D2を走行する他車両W2,W3が交差点Cに進入しにくい走行シーン(つまり、図7に示す走行シーン)よりも交差点Cから離れる方向に広がった範囲を検出範囲に設定することが好ましい。交差点Cに進入する他車両W2,W3をより確実に検出するためである。そこで、本実施形態の運転支援装置19では、第2道路が優先道路であると判定した場合は、第2道路の検出範囲を、第1道路が優先道路であると判定した場合より交差点Cから離れる方向に広がった範囲とする。
【0054】
また、運転支援装置19が第1道路と第2道路のどちらも優先道路でないと判定した場合(つまり、交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路か判定できない場合)は、第1道路の検出範囲を、第1道路が優先道路であると判定したときより交差点Cに近づく方向に狭まった範囲とし、第2道路が優先道路であると判定したときより交差点Cから離れる方向に広がった範囲とする。また、第2道路の検出範囲は、第1道路が優先道路であると判定したときより交差点Cから離れる方向に広がった範囲とし、第2道路が優先道路であると判定したときより交差点Cに近づく方向に狭まった範囲とする。
【0055】
運転支援装置19は、設定部26の範囲設定機能により検出範囲が設定されると、認識部21の環境認識機能により、検出範囲に存在する障害物を検出する。この際、運転支援装置19は、検出範囲において、自車両Vの撮像装置11及び測距装置12により障害物を検出できない範囲があるか否かを判定する。例えば、検出範囲の一部に撮像装置11及び測距装置12の死角が存在しても、検出結果に基づいて死角に存在する障害物の情報を補完できる場合は、障害物を検出できない範囲がないと判定する。これに対し、撮像装置11及び測距装置12の検出結果を用いても、検出範囲の死角に存在する障害物の情報が補完できない場合は、障害物を検出できない範囲があると判定する。例えば、図4に示す走行シーンでは、範囲A1に存在する他車両W2と、範囲A2に存在する他車両W3が自車両Vの撮像装置11及び測距装置12で検出できず、それ以外の部分の検出結果から他車両W2,W3の情報を補完することができない。そのため、運転支援装置19は、設定された検出範囲Z1において、自車両Vの撮像装置11及び測距装置12により障害物を検出できない範囲があると判定する。
【0056】
運転支援装置19は、設定された検出範囲において、自車両Vの撮像装置11及び測距装置12により障害物を検出できない範囲があると判定した場合は、交差点C、第1道路及び第2道路のうち少なくとも一か所に設置された検出装置5から、検出範囲に存在する障害物の検出結果を取得する。図4に示す走行シーンでは、運転支援装置19は、図3に示す定点カメラB1~B3の検出結果を用いて、検出範囲Z1のうち、自車両Vの撮像装置11及び測距装置12では検出できない範囲に存在する障害物を検出する。そして、運転支援装置19は、障害物の検出結果を用いて、制御部22の走行制御機能により自車両Vの走行を自律制御する。
【0057】
例として、図4に示す走行シーンにおいて実行される自律走行制御を図8A~8Cを用いて説明する。まず、図8Aに示す走行シーンでは、運転支援装置19は、自車両Vの撮像装置11及び測距装置12の検出結果から、自車両Vの前方の位置Pzに駐車している駐車車両Vzと、位置Q1を走行する他車両W1を認識する。また、定点カメラB1,B2から取得した画像データから、撮像装置11及び測距装置12の死角である範囲A1の位置Q2を走行する他車両W2と、範囲A2の位置Q3を走行する他車両W3とを認識する。また、運転支援装置19は、路側機4から交差点Cに設置された信号機の灯火状態を取得し、信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示していることを認識する。
【0058】
運転支援装置19は、これらの情報に基づき、自車両Vが駐車車両Vzを回避するために進入する車線L2に、他車両W2,W3が進入するか否かを判定する。図8Aに示す走行シーンでは、道路D2を走行する他車両に対して、車両が交差点Cに進入できることを表示する青色の灯火色が表示されているので、他車両W2,W3が車線L2に進入すると判定する。この場合、運転支援装置19は、位置P1から位置P2まで走行する走行軌跡T1を生成し、走行軌跡T1に沿って走行させ、駐車車両Vzの手前の位置P2に自車両Vを停車させる。自車両Vが位置P2に停車している間、他車両W2は、走行軌跡U1に沿って交差点Cを左折し、車線L2の位置Q4まで走行する。また、他車両W3は、走行軌跡U2に沿って交差点Cを右折し、位置Q5まで走行する。
【0059】
他車両W2が、位置P2に停車している自車両Vの横を通過した後、他車両W3は、図8Bに示すとおり、走行軌跡U3に沿って位置Q5から位置Q6まで走行する。その後、運転支援装置19は、他車両W2,W3が対向車線である車線L2を通過したか否かを判定する。撮像装置11及び測距装置12の検出結果から、他車両W2,W3が通過したことが確認された場合は、運転支援装置19は、図8Cに示す走行軌跡T2を生成し、走行軌跡T2に沿って車線L2の位置P3まで走行する。さらに、交差点Cの手前の位置P4まで走行して停車するための走行軌跡T3を生成し、走行軌跡T3に沿って走行する。
【0060】
[システムにおける処理]
図9A~9B及び図10を参照して、運転支援装置19が情報を処理する際の手順を説明する。図9A~9Bは、本実施形態の運転支援システム10において実行される、情報の処理を示すフローチャートの一例である。以下に説明する処理は、運転支援装置19のプロセッサ(CPU)により所定の時間間隔で実行される。なお、図9A~9Bに示すフローチャートは、自車両Vがレーンキープ制御で走行する走行シーンを前提とする。
【0061】
まず、図9AのステップS1にて、環境認識機能により、所定距離の範囲内に交差点Cが存在するか否かを判定する。所定距離の範囲内に交差点Cが存在しないと判定した場合は、ステップS3に進み、所定距離の範囲内に交差点Cが存在すると判定した場合は、ステップS2に進む。ステップS2にて、交差点Cの手前に障害物が存在するか否かを判定する。交差点Cの手前に障害物が存在しないと判定した場合は、ステップS3に進み、設定された走行経路に沿った走行を継続する。その後、図9BのステップS21に進む。これに対し、交差点Cの手前に障害物が存在すると判定した場合は、ステップS4に進む。
【0062】
ステップS4にて、走行制御機能により、対向車線に進入せずに障害物を回避できるか否かを判定する。対向車線に進入せずに障害物を回避できると判定した場合は、ステップS5に進み、障害物を回避する走行軌跡を生成し、続くステップS6にて、生成された走行軌跡に沿って走行する。その後、図9BのステップS21に進む。これに対し、対向車線に進入せずに障害物を回避できないと判定した場合は、ステップS7に進み、自車両Vが対向車線に進入できるか否かを判定する。自車両Vが対向車線に進入できないと判定した場合は、ステップS8に進み、表示装置18を用いて、自車両Vのドライバーに対して手動運転による障害物の回避が必要であることを通知し、ルーチンの実行を終了する。これに対し、自車両Vが対向車線に進入できると判定した場合は、ステップS9に進み、検出範囲を設定する。
【0063】
ステップS9にて検出範囲を設定した後、図9BのステップS10に進み、環境認識機能により、検出範囲に存在する障害物を自車両Vの検出装置で検出する。続くステップS11にて、検出範囲において障害物を検出できない範囲あるか否かを判定する。検出範囲において障害物を検出できない範囲がないと判定した場合は、ステップS14に進む。これに対し、検出範囲において障害物を検出できない範囲があると判定した場合は、ステップS12に進む。ステップS12にて、道路に設置された検出装置5の中から、自車両Vの検出装置で検出できない範囲に存在する障害物を検出できるものを選択し、続くステップS13にて、選択された検出装置から障害物の検出結果を取得する。
【0064】
ステップS14にて、走行制御機能により、自車両Vが進入する対向車線に他車両が進入するか否かを判定する。自車両Vが進入する対向車線に他車両が進入しないと判定した場合は、ステップS15に進み、障害物を回避する走行軌跡を生成し、続くステップS16にて、生成された走行軌跡に沿って自車両Vを走行させ、ステップS21に進む。これに対し、自車両Vが進入する対向車線に他車両が進入すると判定した場合は、ステップS17に進み、障害物を回避する走行軌跡を生成する。
【0065】
ステップS18にて、障害物の手前の位置に自車両Vを停車させ、続くステップS19にて、他車両が対向車線を通過したか否かを判定する。他車両が対向車線を通過していないと判定した場合は、ステップS18に進む。これに対し、他車両が対向車線を通過したと判定した場合は、ステップS20に進み、停車位置から発車して走行軌跡に沿って自車両Vを走行させる。そして、ステップS21に進み、自車両Vが目的地Xに到着したか否かを判定する。自車両Vが目的地Xに到着したと判定した場合は、自律走行制御を中止し、表示装置18を介してドライバーの手動操作による運転を促す。これに対し、自車両Vが目的地Xに到着していないと判定した場合は、図8AのステップS1に進む。
【0066】
次に、図10を用いて、図9AのステップS9のサブルーチンについて説明する。図10のステップS31にて、設置判定機能により、交差点Cに信号機が設置されているか否かを判定する。交差点Cに信号機が設置されていると判定した場合は、ステップS32に進み、取得機能により信号機の灯火状態を取得し、続くステップS33にて、範囲設定機能により信号機が停止の灯火色を表示しているか否かを判定する。信号機が停止の灯火色を表示していると判定した場合は、ステップS34に進み、第2道路の検出範囲を交差点Cから離れる方向に広げ、続くステップS35にて、第1道路の検出範囲を交差点Cに近づく方向に狭める。これに対し、信号機が停止の灯火色を表示していないと判定した場合は、ステップS36に進み、第2道路の検出範囲を交差点Cに近づく方向に狭め、続くステップS37にて、第1道路の検出範囲を交差点Cから離れる方向に広げる。
【0067】
一方、ステップS31にて、交差点Cに信号機が設置されていないと判定した場合は、ステップS38に進み、優先判定機能により、交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定できるか否かを判定する。交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定できると判定した場合は、ステップS39に進み、第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定する。続くステップS40にて、優先道路が第2道路であるか否かを判定し、優先道路が第2道路であると判定した場合は、ステップS34に進み、優先道路が第2道路でないと判定した場合は、ステップS36に進む。
【0068】
これに対し、交差点Cにおいて第1道路と第2道路のいずれが優先道路であるかを判定できないと判定した場合は、ステップS41に進み、範囲設定機能により、第2道路の検出範囲を、第1道路が優先道路であると判定したときより交差点から離れる方向に広げ、第2道路が優先道路であると判定したときより交差点に近づく方向に狭める。続くステップS42にて、第1道路の検出範囲を、第1道路が優先道路であると判定したときより交差点に近づく方向に狭め、第2道路が優先道路であると判定したときより交差点から離れる方向に広げる。そして、ステップS43にて、範囲設定機能により、第1道路の検出範囲と第2道路の検出範囲とを重ね合わせ、続くステップS44にて、設定された検出範囲を出力する。その後、図8BのステップS10に進む。なお、本実施形態の運転支援は、自車両Vの前方に道路の合流地点又は分岐地点が存在する場合にも用いることができる。
【0069】
[本発明の実施態様]
以上のとおり、本実施形態によれば、自車両Vの前方の交差点Cにおける信号機の灯火状態又は優先道路の判定結果に基づき、自車両Vが走行する第1道路と交差する第2道路を含む所定範囲を、障害物の検出範囲に設定する、車両の運転支援方法が提供される。これにより、自車両Vが対向車両の走行を阻害することを抑制できる。
【0070】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、交差点C、第1道路及び第2道路のうち少なくとも一か所に設置された検出装置5から、検出範囲に存在する障害物の検出結果を取得する。これにより、自車両Vの検出装置により検出できない障害物を検出できる。
【0071】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、交差点Cに信号機が設置されていると判定した場合は、灯火状態に基づいて第2道路の検出範囲を設定する。これにより、検出範囲の設定に必要な処理の増加を抑制できる。
【0072】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、信号機の灯火色ごとに第2道路の検出範囲を予め設定し、灯火色に応じて第2道路の検出範囲を切り替える。これにより、交差点Cを右折又は左折して対向車線に進入する他車両の走行状態を容易に判定できる。
【0073】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示した場合は、第2道路の検出範囲を、信号機が自車両Vに対して停止の灯火色を表示していない場合より交差点Cから離れる方向に広がった範囲とする。これにより、交差点Cを右折又は左折して対向車線に進入する他車両を、より広範囲に渡って検出できる。
【0074】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、交差点Cに信号機が設置されていないと判定した場合は、優先道路の判定結果に基づいて第2道路の前記検出範囲を設定する。これにより、検出範囲の設定に必要な処理の増加を抑制できる。
【0075】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、第2道路が優先道路であると判定した場合は、第2道路の検出範囲を、第1道路が優先道路であると判定した場合より交差点Cから離れる方向に広がった範囲とする。これにより、交差点Cを右折又は左折して対向車線に進入する他車両を、より広範囲に渡って検出できる。
【0076】
本実施形態の車両の運転支援方法によれば、第1道路と第2道路のどちらも優先道路でないと判定した場合は、第2道路の検出範囲を、第1道路が優先道路であると判定したときより交差点Cから離れる方向に広がった範囲とし、第2道路が優先道路であると判定したときより交差点Cに近づく方向に狭まった範囲とする。これにより、運転支援装置19の処理の増加を抑制しつつ、走行シーンに適した他車両の検出を行える。
【0077】
本実施形態によれば、自車両Vの前方の交差点Cにおける信号機の灯火状態又は優先判定部25の判定結果に基づき、自車両Vが走行する第1道路と交差する第2道路を含む所定範囲を、障害物の検出範囲に設定する設定部26を備える、車両の運転支援装置19が提供される。これにより、自車両Vが対向車両の走行を阻害することを抑制できる。
【符号の説明】
【0078】
19…運転支援装置、21…認識部、22…制御部、23…設置判定部、24…取得部、25…優先判定部、26…設定部、5…検出装置、C…交差点、V…自車両、Z1~Z4…検出範囲
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図8B
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