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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065458
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ポンプユニット
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/06 20060101AFI20240508BHJP
   F04B 43/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F04B43/06 A
F04B43/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174320
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】593145179
【氏名又は名称】株式会社ワイ・テイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】浅見 清志
【テーマコード(参考)】
3H077
【Fターム(参考)】
3H077AA01
3H077CC02
3H077CC09
3H077DD14
3H077EE04
3H077FF06
3H077FF14
3H077FF22
3H077FF45
(57)【要約】
【課題】制御の複雑化を抑制しつつダイアフラムポンプの上流側において脈動を低減することができるポンプユニットを提供する。
【解決手段】平滑化装置20は、ダイアフラムポンプ10の上流側に配置され、流体通過空間S1の容積を大きくする向きにダイアフラム体74を付勢する。これにより、一対のポンプ部2A,2Bの両方に対し独立した制御が必要なく、制御の複雑化を抑制することができる。また、付勢手段30が、ダイアフラムポンプ10の高吸引力期間に付勢力を蓄積し、低吸引力期間に流体通過空間S1の容積を大きくさせることで、平滑化装置20の上流側において脈動を低減することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のポンプ部及びセンターロッドを有し、前記センターロッドが往復移動することで前記一対のポンプ部によって交互に流体を吸入及び吐出するダイアフラムポンプと、
前記ダイアフラムポンプの上流側に配置される平滑化装置と、を備え、
前記ダイアフラムポンプでは、前記センターロッドの往復により、上流側において流体の吸引力が周期的に変化し、
前記平滑化装置は、流体が通過する流体通過空間と、前記流体通過空間とその外側の空間とを区画するダイアフラム体と、前記流体通過空間の容積を大きくする向きに前記ダイアフラム体を付勢する付勢手段と、を有し、
前記付勢手段は、前記ダイアフラムポンプの高吸引力期間に付勢力を蓄積し、低吸引力期間に前記流体通過空間の容積を大きくさせることを特徴とするポンプユニット。
【請求項2】
前記付勢手段は、一端部が前記ダイアフラム体に接続されて前記流体通過空間とは反対側に向かって延びるロッドと、前記ロッドの他端部に接続される第2のダイアフラム体と、前記第2のダイアフラム体に対して前記流体通過空間側に形成される高圧室と、前記第2のダイアフラム体に対して前記流体通過空間とは反対側に形成されるとともに前記高圧室よりも低圧な低圧室と、を有することを特徴とする請求項1に記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記低圧室が大気に開放され、前記高圧室が、大気圧よりも高圧な流体を送り込む流体供給源に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のポンプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイアフラム体によって区画された一対の作動流体室及び一対の送流体室と、往復移動するセンターロッドと、を備えて流体を吸引及び吐出するダイアフラムポンプが知られている。このようなダイアフラムポンプでは、送流体室の膨張と収縮とが切り換わる時点において死点となり吐出力が著しく低下し、その他の期間においては所定の吐出力が得られることから、吐出力が周期的に変化していわゆる脈動が生じる。そこで、脈動を抑制することを目的としたダイアフラムポンプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたダイアフラムポンプでは、2つのポンプ室に対し、独立した2つの機械的駆動手段を設けることにより、一方のポンプ室において死点に到達する前に他方のポンプ室によって吐出力を生じさせることにより、脈動の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-20499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたように独立した2つの機械的駆動手段を設けると、制御が複雑化してしまうという不都合があった。そこで、ダイアフラムポンプの下流側に、空気室を有するウォーターハンマー等の圧力吸収装置を設けることで、脈動を抑制する構成が考えられる。即ち、圧力吸収装置は、ダイアフラムポンプの吐出力が大きい際には空気室を収縮させ、吐出力が小さい際には空気室を膨張させることにより、吐出量を平滑化し、脈動の低減を図るものである。
【0005】
上記のような脈動は、ダイアフラムポンプの下流側(吐出側)だけでなく、上流側(吸引側)においても生じ得る。上流側に上記のような圧力吸収装置を設けた場合、空気室の収縮及び膨張による平滑化作用が得られにくく、脈動を低減することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、制御の複雑化を抑制しつつダイアフラムポンプの上流側において脈動を低減することができるポンプユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポンプユニットは、一対のポンプ部及びセンターロッドを有し、前記センターロッドが往復移動することで前記一対のポンプ部によって交互に流体を吸入及び吐出するダイアフラムポンプと、前記ダイアフラムポンプの上流側に配置される平滑化装置と、を備え、前記ダイアフラムポンプでは、前記センターロッドの往復により、上流側において流体の吸引力が周期的に変化し、前記平滑化装置は、流体が通過する流体通過空間と、前記流体通過空間とその外側の空間とを区画するダイアフラム体と、前記流体通過空間の容積を大きくする向きに前記ダイアフラム体を付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段は、前記ダイアフラムポンプの高吸引力期間に付勢力を蓄積し、低吸引力期間に前記流体通過空間の容積を大きくさせることを特徴とする。
【0008】
以上のような本発明によれば、平滑化装置を用いることで、一対のポンプ部の両方に対し独立した制御が必要なく、制御の複雑化を抑制することができる。また、付勢手段が、ダイアフラムポンプの高吸引力期間に付勢力を蓄積し、低吸引力期間に流体通過空間の容積を大きくさせることで、平滑化装置の上流側から流体を吸引させることができ、ダイアフラムポンプの上流側(即ち平滑化装置の下流側)において吸引力が低下した際でも、平滑化装置による流体の吸引量の低下を抑制し、平滑化装置の上流側において脈動を低減することができる。
【0009】
尚、流体通過空間と、ダイアフラム体によって流体通過空間と区画される空間と、の間に圧力差が存在する場合、この圧力差に基づく力がダイアフラム体に作用するが、付勢手段の付勢力は、当該圧力差とは独立したものである。これにより、適宜な大きさの付勢力をダイアフラム体に付与することができる。
【0010】
この際、本発明のポンプユニットでは、前記付勢手段は、一端部が前記ダイアフラム体に接続されて前記流体通過空間とは反対側に向かって延びるロッドと、前記ロッドの他端部に接続される第2のダイアフラム体と、前記第2のダイアフラム体に対して前記流体通過空間側に形成される高圧室と、前記第2のダイアフラム体に対して前記流体通過空間とは反対側に形成されるとともに前記高圧室よりも低圧な低圧室と、を有することが好ましい。このような構成によれば、高圧室と低圧室との圧力差によって、ロッドを流体通過空間とは反対側に付勢することができる。即ち、圧力差を適宜に設定することにより、所望の付勢力を得ることができる。
【0011】
また、本発明のポンプユニットでは、前記低圧室が大気に開放され、前記高圧室が、大気圧よりも高圧な流体を送り込む流体供給源に接続されていることが好ましい。このような構成によれば、高圧室側の圧力のみを管理すればよく、平滑化装置を簡素化することができる。また、これらの圧力差を一定に保ちやすくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポンプユニットによれば、付勢手段が流体通過空間の容積を大きくする向きにダイアフラム体を付勢することで、制御の複雑化を抑制しつつダイアフラムポンプの上流側において脈動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一例である実施形態にかかるポンプユニットの概略を示すシステム図である。
図2】前記ポンプユニットのダイアフラムポンプを示す断面図である。
図3】前記ポンプユニットの平滑化装置示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のポンプユニット100は、図1に模式的に示すように、ダイアフラムポンプ10と、平滑化装置20と、を有する。ポンプユニット100によって吸入及び吐出される流体を「対象流体」と呼ぶ。ポンプユニット100は、対象流体を収容した収容部200から、対象流体を供給する供給先300に対象流体を送り込むものである。対象流体が通過する経路において、収容部200側(図1における左側)を上流側とし、供給部300側(図1における右側)を下流側とする。
【0015】
ポンプユニット100は、さらに、下流側ダンパ400と、6つのバルブ501~506と、を備える。即ち、ポンプユニット100は、上流側から順に、バルブ501と、平滑化装置20と、バルブ502と、ダイアフラムポンプ10と、バルブ503と、下流側ダンパ400と、バルブ504と、を備え、ダイアフラムポンプ10の下流側及び下流側ダンパ400の下流において流路が分岐するとともにドレン用バルブ505,506が設けられている。尚、複数のバルブ501~506の配置及び数は上記に限定されず、適宜な位置にバルブが設けられていればよい。
【0016】
下流側ダンパ400は、空気室を有するウォーターハンマー等の圧力吸収装置である。即ち、ダイアフラムポンプ10の吐出力が高いと空気室が圧縮され、吐出力が低いと空気室が膨張することにより、ダイアフラムポンプ10の下流側において脈動を低減するものである。尚、下流側ダンパ400は省略されていてもよい。
【0017】
ダイアフラムポンプ10は、図2に示すポンプ本体1と、切換装置と、を備え、例えば空気等の気体を作動流体として用い、液体等の対象流体を吸入及び吐出するものである。本実施形態では、ポンプ本体1の上下方向をZ1方向とし、後述するセンターロッド3の軸線方向(延在方向)をX1方向とし、X1方向及びZ1方向の両方に略直交する方向をY1方向とし、Z1方向における上下およびX1方向における左右は、図1を基準とする。尚、ポンプ本体1は、Z1方向が鉛直方向に沿うように設置されてもよいし、多少の傾きを有して設置されてもよい。
【0018】
ポンプ本体1は、一対のポンプ部2A,2Bと、センターロッド3と、ケーシング4と、接続手段5A,5Bと、検出装置6と、を備える。一対のポンプ部2A,2Bは、互いに対称に形成され、センターロッド3に接続されたダイアフラム体21と、入口側逆止弁22と、出口側逆止弁23と、を備える。ダイアフラム体21は、ディスク24,25によってセンターロッド3の両端部に接続(固定)される。
【0019】
ケーシング4は、筐体41と、筐体41の内側に配置されてセンターロッド3が貫通する本体部42と、を有する。ダイアフラム体21は、筐体41と本体部42との間の空間を、送流体室(ポンプ室)A1と作動流体室A2とに区画する。即ち、筐体41とダイアフラム体21との間に送流体室A1が形成され、本体部42とダイアフラム体21との間に作動流体室A2が形成される。尚、本実施形態ではダイアフラム体21の外側に送流体室A1が形成されているが、ダイアフラム体21の内側に送流体室を形成してもよい。
【0020】
接続手段5A,5Bは、X1方向に沿って延びる筒状に形成され、一端に開口部を有しており、これらの開口部が入口側開口10A及び出口側開口10Bとなる。接続手段5Aは、流体の入口側に設けられ、筐体41に接続されることにより、一対の送流体室A1同士を接続する。接続手段5Bは、流体の出口側に設けられ、筐体41に接続されることにより、一対の送流体室A1同士を接続する。筐体41と接続手段5Aとの間には、入口側逆止弁22が設けられ、筐体41と接続手段5Bとの間には、出口側逆止弁23が設けられる。
【0021】
X1方向を軸方向として延在するセンターロッド3がX1方向に移動することによりダイアフラム体21が変形し、一方のポンプ部2Aにおいて送流体室A1が膨張する(作動流体室A2が収縮する) と、他方のポンプ部2Bにおいて送流体室A1が収縮する(作動流体室A2が膨張する)。また、一方のポンプ部2Aにおいて送流体室A1が収縮すると、他方のポンプ部2Bにおいて送流体室A1が膨張する。
【0022】
送流体室A1が膨張して減圧されると、入口側逆止弁22が弁開して入口側開口10Aから送流体室A1に対象流体が導入される。一方、送流体室A1が収縮して昇圧されると、出口側逆止弁23が弁開して送流体室A1内の対象流体が出口側開口10Bから外部に排出される。
【0023】
検出装置6は、ダイアフラム体21に対してX1方向の中央側(内側)に配置された検出子61を有し、検出子61が、ダイアフラム体21に接続されたディスク25に当接することで移動可能となっている。
【0024】
他方のポンプ部2Bの作動流体室A2に作動流体が供給されている際、一方のポンプ部2Aにおいて作動流体室A2が収縮していくことにより、ダイアフラム体21が検出子61に対して接近していき、検出子61が押圧される。これにより、切換装置が作動して供給先が切り換えられ、即ち、他方のポンプ部2Bの作動流体室A2には作動流体が供給されなくなり、一方のポンプ部2Aの作動流体室A2に作動流体が供給されるようになり、一方のポンプ部2Aの作動流体室A2が膨張していく。尚、切換装置は従来のダイアフラムポンプと同様の構成を有するものが用いられればよく、ここでは説明を省略する。上記を繰り返すことにより、一対のポンプ部2A,2Bにおいて作動流体室A2が互い違いに膨張及び収縮を繰り返す。これにより、入口側開口10Aから導入された対象流体が出口側開口10Bから排出され、対象流体が外部に供給される。
【0025】
ダイアフラムポンプ10が吸引及び吐出する流体の流量は、一方のポンプ室2Aが吸引及び吐出する流量と、他方のポンプ室2Bが吸引及び吐出する流量と、の合計となる。上記のように一方のポンプ室2Aと他方のポンプ室2Bとが交互に膨張及び収縮することから、合計の流量は略一定となる。しかしながら、検出子61が押圧されて作動流体の供給先が切り換えられる際(即ち作動流体室A2の収縮と膨張とが切り換わる際)には所望の流量が得られなくなることがある。検出子61は所定の時間間隔で押圧されることから、上記のような流量変化が周期的に生じ得る。
【0026】
このように、ダイアフラムポンプ10では、センターロッド3の往復によって、上流側において吸引力が周期的に変化するとともに、下流側において吐出力が周期的に変化する。尚、ポンプユニット100の各部の寸法が決まれば、吸引圧力は吸引力に依存する。以下の説明では吸引力に着目する。
【0027】
平滑化装置20は、図3に示すように、筒状の第1部品7と、ブロック状の第2部品8及び第3部品9と、を備える。第1部品7と第2部品8と第3部品9とは、それぞれの間にシール部品が設けられつつ積層されており、以下ではこの積層方向をZ2方向とし、第1部品7の筒の延在方向をX2方向とし、X2方向及びZ2方向の両方に略直交する方向をY2方向とし、Z2方向における上下およびX2方向における左右は、図3を基準とする。尚、平滑化装置20は、Z2方向が鉛直方向に沿うように設置されてもよいし、多少の傾きを有して設置されてもよい。
【0028】
第1部品7は、入口側(上流側)の開口部71と出口側(下流側)の開口部72とを有し、対象流体がX2方向に沿って通過する流体通過空間S1を形成する。第1部品7の側面部には開口部73が形成されており、この開口部73は、第1のダイアフラム体74が設けられることで閉塞されている。出口側の開口部72は、ダイアフラムポンプ10の入口側開口10Aに対して直接的又は間接的(即ち他の部品や配管等を介して)に接続される。
【0029】
第2部品8は、第1部品7の上側に積層され、開口部73と重なる位置に形成された第1凹部81と、Z2方向において第1凹部81とは反対側に形成された第2凹部82と、第1凹部81に連通するとともに第2部品8の外部に開口した第1連通路83と、第2凹部82に連通するとともに第2部品8の外部に開口した第2連通路84と、Z2方向に沿って延びる貫通孔85と、を有する。
【0030】
第2凹部82は第1凹部81と対称な形状及び配置となっている。また、第2凹部82は、第2のダイアフラム体86が設けられることで閉塞されている。第1連通路83及び第2連通路84は、X2方向に沿って延びることで第2部品8の側面において開口している。第2連通路84のうち開口端部には、接続部841が設けられており、流体を供給するための管部材が接続可能となっている。貫通孔85は、第1凹部81と第2凹部82とを接続するように延びており、その内周面には、後述するロッド11が摺接するシール部材が設けられていることが好ましい。
【0031】
第3部品9は、第2部品8の上側に積層され、第1凹部81と重なる位置に形成された凹部91と、凹部91に連通するとともに第2部品8の外部に開口した連通路92と、を有する。連通路92は、Z2方向に沿って延びることで第3部品9の上面において開口している。
【0032】
このような平滑化装置20では、第1部品7の内側に流体通過空間S1が形成され、第1凹部81の内側に対向空間S2が形成される。このとき、第1のダイアフラム体74は、流体通過空間S1と、その外側の空間である対向空間S2と、を区画する。また、第2凹部82の内側に高圧室S3が形成され、凹部91の内側に低圧室S4が形成され、第2のダイアフラム体86が、高圧空間S3と低圧室S4とを区画する。
【0033】
第1のダイアフラム体74と第2のダイアフラム体86とは、ロッド11によって接続されている。ロッド11は、一端部(下端部)111が第1のダイアフラム体74に接続され、上側(流体通過空間S1とは反対側)に向かってZ2方向に沿って延び、他端部(上端部)112が第2のダイアフラム体86に接続される。ロッド11は、円柱状等の棒状に形成され、貫通孔85に挿通されており、第1凹部81と第2凹部82とが連通しないようになっている。ロッド11とダイアフラム体74,86とは、例えばダイアフラム体74,86を挟み込むディスク等によって接続されればよい。
【0034】
流体通過空間S1の内圧は、ダイアフラムポンプ10の吸引力によって変化する。第1連通路83は外部空間(大気)に開放されており、対向空間S2の内圧は大気圧と略等しくなっている。第2連通路84の接続部841に接続された管部材が、大気圧よりも高圧な流体(例えば圧縮空気)を送り込む流体供給源に接続されることにより、高圧室S3には圧縮空気が送り込まれ、その内圧が例えば1.5~2気圧程度に維持されるようになっている。連通路92は外部空間(大気)に開放されており、低圧室S4の内圧は大気圧と略等しくなっている。即ち、低圧室S4は高圧室S3よりも低圧となっている。
【0035】
高圧室S3と低圧室S4との圧力差によって、第2のダイアフラム体86には上側(流体通過空間S1とは反対側)に向かう力が作用する。この力は、ロッド11を介して第1のダイアフラム体74に伝達される。従って、ロッド11と、第2のダイアフラム体86と、高圧室S3と、低圧室S4と、によって、流体通過空間S1の容積を大きくする向きに第1のダイアフラム体74を付勢する付勢手段30が構成され、平滑化装置20が付勢手段30を有する。尚、付勢手段30は、他の部品等を含んでいてもよい。
【0036】
ここで、ダイアフラムポンプ10の動作時における平滑化装置20の詳細な動作について説明する。上記のようにダイアフラムポンプ10の吸引力は周期的に変化する。検出子61の押圧後に所定時間が経過してから次に検出子61が押圧するまでの期間は、安定した吸引力が得られ、この期間を高吸引力期間とする。また、検出子61の押圧後から所定時間経過するまでの期間において、高吸引力期間よりも吸引力が低くなり、この期間を低吸引力期間とする。
【0037】
図3には、高吸引力期間におけるロッド11及びダイアフラム体74,86の位置を示し、この位置を基準位置とする。第2のダイアフラム体86には、高圧室S3と低圧室S4との圧力差によって上向き力が作用しており、この力は一定である。一方、第1のダイアフラム体74に作用する力は、流体通過空間S1と対向空間S2との圧力差に基づいており、流体通過空間S1の圧力は変化する。
【0038】
高吸引力期間では、流体通過空間S1の圧力は比較的低くなり、即ち第1のダイアフラム体74を介してロッド11を下側に移動させるような力が作用する。即ち、ロッド11は、高圧室S3と低圧室S4との圧力差に逆らう向きに移動しようとし、付勢手段30は付勢力を蓄積する。これに対し、低吸引力期間では、流体通過空間S1の圧力は比較的高くなり、ロッド11及びダイアフラム体74,86は、付勢手段30が蓄積した付勢力によって、基準位置から上側に向かって移動する。これにより、流体通過空間S1の容積が大きくなり、平滑化装置20は入口側(上流側)の開口部71から流体を吸引する。
【0039】
低吸引力期間から高吸引力期間になると、付勢手段30が再び付勢力を蓄積する。このとき、流体通過空間S1の容積が小さくなることから、容積の減少分だけ、平滑化装置20の吸引量は少なくなる。高吸引力期間と低吸引力期間とが繰り返されることで、平滑化装置20は上記の動作を繰り返す。
【0040】
即ち、低吸引力期間においては、ダイアフラムポンプ10による流体の吸引量に対し、平滑化装置20による流体の吸引量が多くなり、高吸引力期間においては、ダイアフラムポンプ10による流体の吸引量に対し、平滑化装置20による流体の吸引量が少なくなる。平滑化装置20の上流側では、高吸引力期間と低吸引力期間との吸引量の差が、ダイアフラムポンプ10の上流側における高吸引力期間との低吸引力期間との吸引量の差よりも小さくなる。
【0041】
以上の本実施形態によれば、平滑化装置20を用いることで、一対のポンプ部2A,2Bの両方に対し独立した制御が必要なく、制御の複雑化を抑制することができる。また、付勢手段30が、ダイアフラムポンプ10の高吸引力期間に付勢力を蓄積し、低吸引力期間に流体通過空間S1の容積を大きくさせることで、平滑化装置20の上流側において脈動を低減することができる。
【0042】
また、付勢手段30がロッド11と第2のダイアフラム体86と高圧室S3と低圧室S4とを有することで、高圧室S3と低圧室S4との圧力差によってロッド11を流体通過空間S1とは反対側に付勢することができ、圧力差を適宜に設定することにより、所望の付勢力を得ることができる。
【0043】
また、低圧室S4が大気に開放され、高圧室S3が大気圧よりも高圧な流体を送り込む流体供給源に接続されていることで、高圧室側の圧力のみを管理すればよく、平滑化装置20を簡素化することができる。また、これらの圧力差を一定に保ちやすくすることができる。
【0044】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、低圧室S4が大気に開放され、高圧室S3が大気圧よりも高圧な流体を送り込む流体供給源に接続されているものとしたが、低圧室と高圧室との圧力差を生じさせるための構成はこれに限定されない。例えば、低圧室や高圧室を所定の圧力に設定した上で閉鎖してもよい。また、高圧室及び低圧室は、相対的な圧力差が生じていればよく、両者ともに大気圧よりも高圧であってもよいし低圧であってもよく、例えば高圧室を大気に開放するとともに低圧室を吸引してもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、付勢手段30が高圧室S3と低圧室S4とを有するものとしたが、付勢手段は、圧力差以外によって付勢力を生じさせてもよい。例えば、ばね等の弾性部材を用いてダイアフラム体を付勢してもよいし、重力を利用してダイアフラム体を付勢してもよい。このとき、付勢手段は、流体通過空間とその外側の空間との圧力差以外に、ダイアフラム体を付勢する付勢力を生じ指せればよい。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
100…ポンプユニット、10…ダイアフラムポンプ、1…ポンプ本体、2A,2B…ポンプ室、3…センターロッド、20…平滑化装置、30…付勢手段、74…第1のダイアフラム体、86…第2のダイアフラム体、11…ロッド、S1…流体通過空間、S2…対向空間(外側の空間)、S3…高圧室、S4…低圧室

図1
図2
図3