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  • 特開-バルブ装置 図1
  • 特開-バルブ装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065482
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 41/12 20060101AFI20240508BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16K41/12
F16J3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174366
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】平松 浩司
【テーマコード(参考)】
3H066
3J045
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA18
3H066BA19
3H066BA38
3H066DA09
3J045CA06
3J045CA10
3J045CA12
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムの位置ズレによるシール性の低下を原因とする外部リークが生じず、また現地メンテナンスが容易なバルブ装置を提供すること
【解決手段】押圧手段9を操作することで、バルブボディ2の内部に形成された弁座23に弁体3を当接離間させて流路の連通遮断を行うバルブ装置1であって、押圧手段9の付勢力を弁体3に伝えるとともに、内部の流体が外部に漏れ出すことを防止するダイヤフラム5を備え、このダイヤフラム5は、複数のダイヤフラムを重ね合わせ、側面の1箇所の接合部50において接合するようにしている。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧手段を操作することで、バルブボディの内部に形成された弁座に弁体を当接離間させて流路の連通遮断を行うバルブ装置であって、
前記押圧手段の付勢力を弁体に伝えるとともに、内部の流体が外部に漏れ出すことを防止するダイヤフラムを備え、
該ダイヤフラムは、複数のダイヤフラムを重ね合わせ、側面の1箇所において接合するようにしたバルブ装置。
【請求項2】
前記複数のダイヤフラムの接合は、積層造形により接合されている請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記弁体を前記弁座から離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記弁座が形成された弁室の開口部に取り付けられたダイヤフラム周縁部を押圧固定する蓋体とを備え、
該蓋体は、内部に前記押圧手段の付勢力を伝達する弁棒を移動可能に配設し、該弁棒の先端に形成されたダイヤフラム押さえが前記複数のダイヤフラムを介して前記弁体を前記弁座に押圧する請求項1又は2に記載のバルブ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を流通する流体が外部に漏れ出すのを防ぐためのシールとして、ダイヤフラムを用いたバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体の流れを制御する開閉弁等のバルブ装置では、バルブボディの内部に流入口と流出口とを繋ぐ流路と、流路の途中に弁座を形成した弁室を備え、弁座に当接離間する弁体を操作することで流体の流れを制御するようにしている。弁座に弁体が着座している際は、流体の流れは阻止され、弁座から弁体が離間することで流体は上流側から下流側に流れることとなる。通常弁体は、アクチュエータからの作動力を受けるステムの先端に設けられている。
【0003】
弁体が弁座から離間し流体が上流側から下流側に流れているとき、バルブボディとステムとの隙間から流体が外部に漏れ出す、いわゆる外部リークを防止するためにシール部材が用いられている。
【0004】
例えば、引用文献1に開示されているダイヤフラムシール弁は、そのシール部材としてダイヤフラムが使用されている。引用文献1のダイヤフラム弁は、弁箱の内部に弁体が配置され、弁体はバネにより上方に弾性力を受けている。弁箱の上方にはフタが取付けられ、フタの内部にはダイヤフラム押さえと昇降操作可能な弁棒が収納されている。ダイヤフラムはフタと弁箱との端面により挟持されており、ダイヤフラム押さえがダイヤフラム上面に当接しダイヤフラム下面が弁体を押し下げ弁座に着座し流体の流れを阻止するように構成されている。このように構成されることで、弁体が弁座から離間しても、ダイヤフラムによって内部の流体は外部に漏れ出すことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭54-006623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載のダイヤフラム弁等、従来のダイヤフラムシール弁では、シール性を向上させる観点から、高温高圧環境下で用いる場合、複数のダイヤフラムを重ねたものを用いている。このように複数のダイヤフラムを用いる場合、個々のダイヤフラムの位置ズレによるシール性の低下を原因とする外部リークが生じることがあり、様々な方向の管路に取り付けられた状態で行われる現地メンテナンス時において施工が難しいとの問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高温高圧環境下で用いることが可能なダイヤフラムシール弁において、外部リークが生じず、現地メンテナンス時における施工が容易なダイヤフラムシール弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るバルブ装置は、
押圧部材を操作することで、バルブボディの内部に形成された弁座に弁体を当接離間させて流路の連通遮断を行うバルブ装置であって、
押圧部材の付勢力を弁体に伝えるとともに、内部の流体が外部に漏れ出すことを防止するダイヤフラムを備え、
このダイヤフラムは、側面の1箇所において接合された複数のダイヤフラムを用いている。
【0009】
このバルブ装置は、複数のダイヤフラムが接合され一体となっていることから、ダイヤフラムの位置ズレによるシール性の低下を原因とする外部リークが生じず、また現地メンテナンスが容易である。
【0010】
また、複数のダイヤフラムの接合は、積層造形により接合することができる。積層造形とは、所謂3Dプリンタを用いた造形方法である。通常、3Dモデルを、例えば、粉末焼結積層の場合、粉末状の樹脂や金属を焼結することで立体形状を作っていくものであるが、これを応用し、重ね合わせたダイヤフラムの側面の一箇所を挟持するように、小さなコ字状部材を積層造形することで複数のダイヤフラムが接合される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外部リークが生じず、また予め必要な枚数のダイヤフラムが接合された状態で搬送することができることから現地メンテナンスが容易なダイヤフラムシール弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るバルブ装置の断面図である。
図2】ダイヤフラムを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のX-X断面図、(c)は(b)のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0014】
まず、本発明の実施の形態に係るバルブ装置1は、押圧手段(本実施形態では回転運動を直進運動に変換する機構を採用しており、押圧手段としてはハンドル9が該当する)を操作することで、バルブボディ2の内部に形成された弁座23に弁体3を当接離間させて第1流路21と第2流路22との連通遮断を行うもので、弁体3は、通常、弁座23から離間する方向に付勢部材としてのバネ4によって、付勢されている。そして、押圧手段9の付勢力を弁体3に伝えるとともに、内部の流体が外部に漏れ出すことを防止するダイヤフラム5を備えている。
【0015】
弁座23が形成された弁室20の開口部にダイヤフラム5は取り付けられ、その周縁部をバルブボディ2の弁室開口縁と蓋体8の押圧端8aとによって挟持固定される。蓋体8は、内部に押圧部材9の付勢力を伝達する弁棒7を移動可能に配設し、この弁棒7の先端に形成されたダイヤフラム押さえ6がダイヤフラム5を介して弁体3を弁座23に押圧する。そして、本発明で使用するダイヤフラムは、複数のダイヤフラムを重ね合わせ、側面の1箇所において接合するようにしている。
【0016】
次に、具体的に図1に開示されたダイヤフラムシール弁1の断面図を用いて説明する。バルブボディ2には上方に開口した弁室20、第1通路21、第2通路22が形成され、弁室20の底面に形成された底面開口により弁室20と第1通路21が、弁室20の側面に形成された側面開口により弁室20と第2通路22が連通している。弁室20には、弁体3が配置されており、弁体3は底面開口の周縁に形成された弁座23と当接離間可能であり、バルブを開放閉止する。弁体3にはバネ受け部が設けられ、バネ受け部と弁室20に配置されたバネ受け部材との間に設けられたバネ4により上方に付勢されている。バルブボディ2には弁室20の開口部を覆うように蓋体8がボルトにより取付けられている。バルブボディ2と蓋体8の間にはダイヤフラム5が配置され、ダイヤフラム5の周縁部がバルブボディ2の端面と蓋体8の端面により挟持固定されることによりシールが形成されている。弁体3の上面はダイヤフラム5の下面と接しており、蓋体8の内部に配置されたダイヤフラム押さえ6の下面とダイヤフラム5の上面が接している。ダイヤフラム押さえ6はハンドル9の回転運動を内部で軸方向の移動に変換して移動弁棒7により移動させられ、ダイヤフラム5を介して弁体3を移動させる。ダイヤフラム押さえ6は弁棒7と一体構造であっても、別体であっても構わない。
【0017】
また、押圧手段は、ボールねじを回転させるハンドル9に限るものではなく、例えば、電動モータにより回転させ、直進運動に変換したり、作動流体で駆動するピストンシリンダからなる往復動機器を利用したりすることができる。
【0018】
次に、ダイヤフラム5について図1及び図2を用いて説明する。ダイヤフラム5は上方凸の皿状であり、弁室20に形成された段部に複数枚挿入されている。段部の内径はダイヤフラム5の径と略同じであり、段部によりダイヤフラム5の位置決めが行われる。図2においてダイヤフラム5はダイヤフラム5A~5Eの5枚重ねられているが、ダイヤフラム5の枚数は圧力、温度等の条件により適切に設定される。ダイヤフラム5は複数枚重ねた状態において側面から接合されることにより一体となっており、ダイヤフラム5をまとめて段部に挿入することができ、個々のダイヤフラム5間で位置ズレが生じない。ダイヤフラム5の接合は3Dプリンタを用いた積層造形で行うことが望ましい。接合方法として他には接着剤による固定や溶接による固定が考えられるが、接着剤を高温で用いるとガスが発生する可能性がある。また溶接により固定を行うとビード部が生じ寸法が変わるため段部への挿入ができなくなることがある。
【産業上の利用可能性】
【0019】
以上説明したように、本発明は外部リークが生じず、現地メンテナンス時における施工が容易なバルブ装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ダイヤフラムシール弁
2 バルブボディ
20 弁室
21 第1通路
22 第2通路
23 弁座
3 弁体
4 バネ(付勢手段)
5 ダイヤフラム
50 接合部
6 ダイヤフラム押さえ
7 弁棒
8 蓋体
9 ハンドル(押圧手段)


図1
図2