(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065485
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】水性インキ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/18 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
C09D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174369
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 綾
(72)【発明者】
【氏名】内野 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】大山 朝子
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD03
4J039AD09
4J039AD11
4J039BE12
4J039CA06
4J039EA48
4J039GA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筆記した文字や図柄の発色が良く、乾燥させた塗膜上に再筆記してもカスレが発生しない水性インキ組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも着色樹脂粒子、水溶性アクリル系樹脂、水からなる水性インキ組成物であって、前記着色樹脂粒子の含有量が20重量%以上35重量%以下であり、顔料容積濃度{(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積)/(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積+水溶性アクリル系樹脂容積)}×100(%)が86%以上99%以下である水性インキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色樹脂粒子、水溶性アクリル系樹脂、水からなる水性インキ組成物であって、前記着色樹脂粒子の含有量が20重量%以上35重量%以下であり、顔料容積濃度{(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積)/(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積+水溶性アクリル系樹脂容積)}×100(%)が86%以上99%以下である水性インキ組成物。
【請求項2】
沸点180℃以上の水溶性有機溶剤を含む請求項1に記載の水性インキ組成物。
【請求項3】
前記水溶性アクリル系樹脂の重量平均分子量が4000以上、200000以下である請求項1または請求項2に記載の水性インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記した文字や図柄の発色が良く、乾燥させた塗膜上に再筆記してもカスレが発生しない水性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着色樹脂粒子は簡便に多様な発色を持たせることができ、また、異なる着色剤で着色した着色樹脂粒子であっても樹脂組成が同じだとインキ中で単一物質とみなせるため混色や色変更のリスクが小さい等の利点から、水性インキの着色剤として好適に使用されている。高発色な筆跡を担保するために多量の着色樹脂粒子を添加したインキでは、乾燥後の筆跡や面塗り塗膜の上(乾燥させた塗膜上)に再筆記すると、チップ内に乾燥塗膜のカスが巻き込まれ、重度な筆記カスレが生じてしまうという問題があった。
例えば、特許文献1では、実施例1で、着色樹脂粒子を20重量%使用し、水溶性アクリル系樹脂を添加していないインキが開示されている。また、特許文献2では、実施例3および4で着色樹脂粒子を約30重量%添加し、水溶性アクリル系樹脂を使用しないインキが開示されている。このような、着色樹脂粒子の添加量が多く、水溶性アクリル系樹脂が添加されていないインキでは、インキ乾燥時の着色樹脂粒子同士の固着が強く、膜厚も厚くなることから、乾燥塗膜へ再筆記する際にチップ内に巻き込まれた乾燥塗膜のカスがチップ内に詰まり、筆記カスレが発生する。
一方、特許文献3では、実施例3で着色樹脂粒子を21重量%使用し、結合剤(紙面への定着剤)として、水溶性アクリル系樹脂を5重量%使用した水性インキが開示されている。しかしながら、水溶性アクリル系樹脂添加量が多く、顔料容積濃度が低いため、乾燥塗膜中の水溶性アクリル系樹脂の固着が強くなってしまい、乾燥塗膜へ再筆記する際にチップ内に巻き込まれた乾燥塗膜のカスがチップに詰まり、筆記カスレが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-132749号公報
【特許文献2】特開2000-219839号公報
【特許文献3】特開2001-180177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、筆記した文字や図柄の発色が良く、乾燥させた塗膜上に再筆記してもカスレが発生しない水性インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも着色樹脂粒子、水溶性アクリル系樹脂、水からなる水性インキ組成物であって、前記着色樹脂粒子の含有量が20重量%以上35重量%以下であり、顔料容積濃度{(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積)/(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積+水溶性アクリル系樹脂容積)}×100(%)が86%以上99%以下である水性インキ組成物を第一の要旨とし、沸点180℃以上の水溶性有機溶剤を含むことを第二の要旨とし、前記水溶性アクリル系樹脂の重量平均分子量が4000以上、200000以下であることを第三の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0006】
着色樹脂粒子を使用したインキで筆跡の発色、特に暗色紙での発色を良好にするためには、着色樹脂粒子添加量を20重量%以上にする必要がある。着色樹脂粒子添加量を20重量%以上としたインキにおいて、乾燥させた塗膜上に再筆記してもカスレが発生しないためには、水溶性アクリル系樹脂の添加が必要となる。
水溶性アクリル系樹脂は、アルカリ中和によって水中に溶解しており、高発色を目的とした着色樹脂粒子を20重量%以上含むインキに水溶性アクリル系樹脂を添加すると、インキ中の着色樹脂粒子などの粒子に吸着し粒子間に存在する。
このインキの乾燥塗膜においても、着色樹脂粒子間にアクリル樹脂が存在するものとなる。乾燥塗膜上に再筆記した際に、乾燥塗膜のカスがチップ内に混入した場合でも、チップ内のインキ中に存在するアルカリ水溶液により、水溶性アクリル樹脂は直ちに再溶解し、乾燥塗膜のカスが解れ、カスレを発生することはない。一方、水溶性アクリル樹脂を含まない塗膜は、着色樹脂粒子同士が固まり、乾燥塗膜のカスがチップ内に混入した場合、インキ中の水分では直ちに解れず、カスレが発生する。
着色樹脂粒子と水溶性アクリル樹脂とより少なくともなる塗膜の顔料容積濃度{(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積)/(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積+水溶性アクリル系樹脂容積)}×100(%)は86%以上99%以下であることが必要である。顔料容積濃度が86%未満になると、アクリル系樹脂層が厚くなり再溶解に時間がかかってしまうため、筆記カスレが発生する。99%より大きくなると水溶性アクリル系樹脂が不足し、乾燥塗膜中に着色樹脂粒子同士が固着したほぐれにくい部分ができてしまうため、筆記カスレが発生する。
さらに、沸点180℃以上の蒸発し難い水溶性有機溶剤を添加すると、これが見掛けの乾燥塗膜中に長時間含んだ状態が維持される。沸点180℃以上の水溶性有機溶剤を含有する塗膜は本来の塗膜強度が発現できておらず、衝撃に対して崩れやすい。このため水溶性アクリル樹脂が十分に再溶解されていない状態でも、チップ内に混入した乾燥塗膜のカスは筆記時の衝撃でより速く崩れる。
また、水溶性アクリル系樹脂の重量平均分子量が4000以上だと着色樹脂粒子間に密に存在し、着色樹脂粒子同士の固着を防ぐため好ましい。200000以下だと、乾燥塗膜中で着色樹脂粒子間に皮膜として存在する水溶性アクリル系樹脂が再溶解しやすいため好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
着色樹脂粒子の具体例としては、SW-111(平均粒径1.0μm以下)、SW-112(平均粒径1.0μm以下)、SW-113(平均粒径1.0μm以下)、SW-114(平均粒径1.0μm以下)、SW-115(平均粒径1.0μm以下)、SW-116(平均粒径1.0μm以下)、SW-107(平均粒径1.0μm以下)、SW-117(平均粒径1.0μm以下)、SW-127(平均粒径1.0μm以下)、SW-137(平均粒径1.0μm以下)、SW-147(平均粒径1.0μm以下)、SW-128(平均粒径1.0μm以下)(以上、シンロイヒ株式会社)、ルミコールNKW-2101E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2102E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2103E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2104E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2105E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2106E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2107E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2117E(平均粒径0.4μm)、NKW-2127E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2137E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2147E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2167E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2108E(平均粒径0.4μm)、同NKW-2109E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2102E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2103E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2104E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2105E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2117E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2147E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2167E(平均粒径0.4μm)、同NKW-C2108E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6002E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6013E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6004E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6005E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6007E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6047E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6077E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6008E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6038E(平均粒径0.1μm)、同NKW-6202E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6203E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6253E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6204E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6205E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6207E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6277E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6208E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6258E(平均粒径0.4μm)、同NKW-6200E(平均粒径0.4μm)、同NKW-3202E(平均粒径0.1μm)、同NKW-3203E(平均粒径0.1μm)、同NKW-3204E(平均粒径0.1μm)、同NKW-3205E(平均粒径0.1μm)、同NKW-3207E(平均粒径0.1μm)、同NKW-3277E(平均粒径0.1μm)、NKW-3208E(平均粒径0.1μm)(以上、日本蛍光化学(株))等が挙げられる。また非着色樹脂粒子を染料で着色し使用することもできる。これらの着色樹脂粒子は、単独、あるいは2種以上混合して使用しても良い。着色樹脂粒子の使用量は、インキ組成物全量に対し20重量%以上35重量%以下であることが必要である。着色樹脂粒子の使用量が20重量%未満では発色が十分ではなく、35重量%を超えるとペン先でのつまりや吐出不良を起こし、筆記カスレが発生する。市販されている樹脂粒子分散液を用いる場合は、樹脂粒子分散液中の固形分量を用いて、樹脂粒子の使用量を計算することができる。また、着色樹脂粒子の平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下であると、着色樹脂粒子としては高い光散乱能を有していることから、この範囲外の粒径と比べ高い隠蔽力を示す。そのため、平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下の着色樹脂粒子をインキ中に20重量%以上35重量%以下含むことで酸化チタンや中空粒子を使用しなくても、暗色紙でも高い視認性を得ることができるので好ましい。本明細書における平均粒径は、株式会社島津製作所製ナノ粒子径分布測定装置、SALD-7100(レーザー回折法)にて測定した体積分布基準による平均粒径(体積平均径)である。
【0008】
水溶性アクリル系樹脂は、乾燥塗膜に再筆記した際に乾燥塗膜のカスがチップ内に混入した時にも筆記カスレを起こさないために使用するものである。水溶性アクリル系樹脂は着色樹脂粒子に吸着し、乾燥時に着色樹脂粒子間に水溶性アクリル系樹脂が存在する。着色樹脂粒子と水溶性アクリル系樹脂から少なくともなる乾燥塗膜のカスは、チップ内でインキ中に存在するアルカリ水溶液により直ちに再溶解し解れる。
水溶性アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを、アクリル系モノマーや非アクリル系モノマーと重合して作製することができる。使用できるモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-デシル、メタクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0009】
前記モノマーを重合する際に重合開始剤が使用される。その具体例は、アゾビスイソブチルニトリル、ジターシャリーブチルパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルイソブチレート、ターシャリーブチルパー-2-エチルへキサノエート、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0010】
市販の水溶性アクリル系樹脂を使用してもよい。水溶液のものとして、ジョンクリル52J(重量平均分子量1700、固形分量60.0%)、同PDX-6157(重量平均分子量6000、固形分量34.0%)、同57J(重量平均分子量4900、固形分量37.0%)、同60J(重量平均分子量8500、固形分量34.0)、同61J(重量平均分子量12000、固形分量30.5%)、同62J(重量平均分子量8500、固形分量34.0%)、同63J(重量平均分子量12500、固形分量30.0)、同70J(重量平均分子量16500、固形分量30.0%)、同PDX-6180(重量平均分子量14000、固形分量27.0%)、同HPD-196(重量平均分子量9200、固形分量36.0%)、同HPD-71(重量平均分子量17250、固形分量28.0%)、同HPD-96J(重量平均分子量16500、固形分量34.0%)、同PDX-6137A(重量平均分子量1600、固形分量28.0%)、同501J(重量平均分子量12000、固形分量29.5%)、同354J(重量平均分子量8500、固形分量33.5%)、同6610(重量平均分子量8500、固形分量33.5%)、同JDX-6500(重量平均分子量10000、固形分量29.5%)、同PDX-6102B(重量平均分子量60000、固形分量24.5%)等が挙げられる。固体のものとして、ジョンクリル67(重量平均分子量12500)、同678(重量平均分子量8500)、同586(重量平均分子量4600)、同587(重量平均分子量17000)、同680(重量平均分子量4900)、同682(重量平均分子量1700)、同683(重量平均分子量8000)、同690(重量平均分子量16500)、同693(重量平均分子量6000)、同819(重量平均分子量14500)、同HPD-671(重量平均分子量17250)、同JDX-C3000A(重量平均分子量10000)、同JDX-C3080(重量平均分子量10000)(以上、BASF(独国)製)等が挙げられる。固体のものは、アンモニア水や水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ成分で、水溶性アクリル系樹脂のカルボキシル基を中和し、水溶化して使用する。これらの水溶性アクリル系樹脂は1種または2種以上混合して使用することができる。水溶性アクリル系樹脂の使用量は顔料容積濃度が86%以上99%以下となるように添加することが好ましい。顔料容積濃度が86%未満になると、アクリル系樹脂層が厚くなり再溶解に時間がかかってしまうため、筆記カスレが発生する。99%より大きくなると水溶性アクリル系樹脂が不足し、乾燥塗膜中に着色樹脂粒子同士が固着したほぐれにくい部分ができてしまうため、筆記カスレが発生する。アクリル樹脂の再溶解速度を考えると、顔料容積濃度は88%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましい。また、着色樹脂粒子同士の固着を十分に防ぐことを考えると、顔料容積濃度は98.5%以下がより好ましく、97.5%以下がさらに好ましい。また、水溶性アクリル系樹脂の重量平均分子量が4000以上だと着色樹脂粒子間に密に存在し、着色樹脂粒子同士の固着を防ぐため好ましい。200000以下だと、乾燥塗膜中で着色樹脂粒子間に皮膜として存在する水溶性アクリル系樹脂が再溶解しやすいため好ましい。
顔料容積濃度{(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積)/(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積+水溶性アクリル系樹脂容積)}×100(%)の計算で使用するそれぞれの材料の容積は、材料の比重と、インキ中の重量%より算出できる。市販されている水溶性アクリル系樹脂水溶液を用いる場合は、水溶性アクリル系樹脂水溶液中の固形分量を用いて、水溶性アクリル系樹脂の使用量を計算することができる。水溶性アクリル系樹脂水溶液の固形分量については、樹脂水溶液中の揮発成分を揮発させた後に残った不揮発分の量を固形分量とした。
【0011】
見掛け上乾燥した塗膜であっても、塗膜中に溶剤を含んだ状態を長時間維持し、本来の塗膜強度よりも弱く、衝撃に対して崩れやすくすることを目的として、沸点180℃以上の水溶性有機溶剤を添加することが好ましい。たとえば、エチレングリコール(沸点198℃)、ジエチレングリコール(同244℃)、ジプロピレングリコール(同232℃)、1,3-プロパンジオール(同213℃)、1,2-ブチレングリコール(同190℃)、1,3-ブチレングリコール(同207℃)、1,4-ブチレングリコール(同235℃)、1,5-ペンタンジオール(同238℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(同194℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(同202℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(同216℃)、2-ピロリドン(同245℃)、N-メチル-2-ピロリドン(同202℃)、トリエチレングリコール(同287℃)、テトラエチレングリコール(同327℃)、グリセリン(同290℃)、トリエタノールアミン(同360℃)等があり、更に、明確な沸点を持たないものとして、ポリエチレングリコール等がある。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上混合して用いても良く、その使用量はインキ組成物全量に対し2重量%以上、20重量%以下が好ましい。また、これらの溶剤と併用して、沸点180℃以下の水溶性有機溶剤を用いてもよい。なお、本明細書におけるすべての温度表記(℃)は1気圧(101325Pa)における摂氏温度である。
【0012】
色沈みを抑えて発色をよりよくするため、平均粒径1μm以上5μm以下の非着色樹脂粒子を使用することもできる。平均粒径が1μm以上5μm以下の非着色樹脂粒子は紙繊維の溝を埋め、着色樹脂粒子が紙の中へ浸透して視認性が低下するのを抑える効果がある。平均粒径が1μm以上5μm以下の非着色樹脂粒子の具体例としては、エポスターMV1002(平均粒径2μm、アクリル系架橋物)、同MV1004(平均粒径4μm、アクリル系架橋物)、同MV2003(平均粒径3μm、アクリル-スチレン系架橋物)、同MS(平均粒径2μm、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド)、同M-30(平均粒径3μm、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物)、同S-12(平均粒径1.2μm、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物)(以上、(株)日本触媒製)、テクポリマーSBX-4(平均粒径4μm、架橋ポリスチレン)、MB-4(平均粒径4μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)、同SSX-101(平均粒径1.5μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)、同SSX-102(平均粒径2.5μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)、同SSX-103(平均粒径3μm、架橋ポリメタクリル酸メチル)(以上、積水化成品工業(株)製)、MX-150(平均粒径1.5μm)、MX180TA(平均粒径3μm)、MX-500(平均粒径5μm)(以上、綜研化学(株)製)等が挙げられる。これらは1種、または2種以上混合して使用可能である。非着色樹脂粒子の平均粒径が1μm未満の場合は、非着色樹脂粒子による着色樹脂粒子の浸透をより抑える効果が小さく、また5μmよりも大きい大粒径の非着色樹脂粒子が筆跡中にあると、非着色樹脂粒子は屈折率が低いため下地を透過する窓の役目をし、隠蔽力が小さくなり暗色紙での視認性が低下する。平均粒径1μm以上5μm以下の非着色樹脂粒子の使用量はインキ組成物全量に対し1重量%以上7重量%以下が好ましい。
【0013】
暗色紙に筆記した際、筆跡が乾燥する前でも何色を筆記したのか視認しやすくなるようにするために、酸化チタンを添加してもよい。具体例としては、TITONE SR-1、同R-650、同R-62N、同R-42、同R-7E、同R-21、同R-25、同R-32、同R-5N、同R-45M、同TCR-10(以上、堺化学工業(株)製)、クロノスKR-310、同KR-380、同480(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR-900、同R-902、同R-960、同R-931(以上、デュポン・ジャパン・リミテッド製)、TITANIX JR-301、同JR-805、同JR-806、同JR-603、同JR-800、同JR-403、同JR-701、同JRNC、同JR-605(以上、テイカ(株)製)、TIPAQUE R-820、同R-830、同R-550、同R-780、同R-780-2(以上、石原産業(株)製)、酸化チタンの分散体であるFUJI SP WHITE1193(顔料50.0重量%)、同1131(顔料32.5重量%、(酸化チタン:体質顔料=4:3))、同1142(顔料29.5重量%、(酸化チタン:体質顔料=4:3))、同1154(顔料55.0重量%)、同1184W(顔料30.0重量%、(酸化チタン:体質顔料=15:2))、同1197(顔料42.0重量%、(酸化チタン:体質顔料=9:1))(以上、冨士色素(株)製)等が挙げられる。これらの酸化チタンは、単独、あるいは2種以上混合して使用しても良い。酸化チタンの使用量は、着色樹脂粒子/酸化チタン比率が、10:1~30:1であると、分散安定性と暗色紙での筆跡乾燥前の色視認の両立ができ好ましい。
【0014】
本発明の効果を損なわない範囲で着色樹脂粒子の他に、公知の着色剤を適宜量用いることができる。
【0015】
更にペン先乾燥防止の目的で糖アルコールを使用することもできる。具体例として、PO-10(1糖0~3%、2糖1~5%、3糖1~5%、4糖以上90~95%)、PO-20(1糖2~5%、2糖9~14%、3糖11~16%、4糖以上67~76%、70%水溶液)、PO-30(1糖3~6%、2糖13~19%、3糖14~19%、4糖以上58~66%、70%水溶液)、SOシロップ(1糖3~10%、2糖35~50%、3糖20~30%、4糖以上15~30%、70%水溶液)、PO-40(1糖1~6%、2糖45~55%、3糖15~25%、4糖以上23~30%、70%水溶液)、PO-60(1糖2~7%、2糖62~67%、3糖14~20%、4糖以上10~18%、70%水溶液)、アマミール(1糖46~49%、2糖30~40%、3糖5~13%、4糖以上4~10%、70%水溶液)、PO-300(1糖17~25%、2糖25~33%、3糖33~39%、4糖以上10~19%、70%水溶液)、PO-500(1糖34~45%、2糖26~32%、3糖14~20%、4糖以上11~18%、70%水溶液)、アマルティシロップ(1糖1~4%、2糖75~80%、3糖10~17%、4糖以上6~12%、75%水溶液)、アマルティMR(1糖0~3%、2糖88~98%、3糖2~9%、4糖以上0~4%)、レシス(2糖98%以上)、ソルビットT-70(1糖71~100%、2糖5~10%、3糖0~5%、4糖以上0~5%、70%水溶液)、ミルヘン(ラクチトール)、マリンクリスタル(D-マンニトール)、キシリット(キシリトール)、エリスリトール(以上、三菱商事ライフサイエンス(株)製)等が挙げられる。これらは1種、かたは2種以上混合して使用することもできる。糖アルコールの使用量はインキ組成物全量に対し0.5重量%以上5重量%以下が好ましい。また4糖以上の比率の高い方が、ペン先乾燥防止効果がより高く、その比率はインキ組成物全量に対し0.5重量%以上が好ましい。
【0016】
インキ粘度を調整するために、高分子多糖類を使用することができる。具体例としては、プルラン、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム、ラムザンガム、デンプン、カチオンデンプン、デキストリン、デンプングリコール酸ナトリウム等及びそれらの誘導体、アラビアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びその誘導体、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、ゼラチン、ガゼイン、ガゼインナトリウム、グルコマンナン、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ラノリン誘導体、キトサン誘導体等が挙げられる。これら高分子多糖類は、単独、あるいは2種以上混合して使用しても良い。これら高分子多糖類のうち、特にキサンタンガムが好ましく使用できる。キサンタンガム水溶液はせん断減粘性が高く、着色樹脂粒子や酸化チタンの沈降防止と良好な筆記性の両立ができる。キサンタンガムの具体例としては、ケルザン、ケルザンS、ケルザンF、ケルザンAR、ケルザンM、ケルザンD(以上、三晶(株)製)、コージン、コージンF、コージンT、コージンK(以上、(株)興人製)、ノクコート(日清製油(株)製)、イナゲルV-7、イナゲルV-7T(以上、伊那食品工業(株)製)等が挙げられる。高分子多糖類の使用量は、インキ組成物全量に対し0.1重量%以上1.0重量%以下が好ましい。
【0017】
インキ製造時の気泡の発生を抑えるために、各種消泡剤を使用することもできる。BYK-01、BYK-012、BYK-014、BYK-015、BYK-017、BYK-018、BYK019、BYK-021、BYK-022、BYK-023、BYK-024、BYK-025、BYK-028、BYK-038、BYK-039、BYK-044、BYK-093、BYK-094、BYK-1610、BYK-1615、BYK-1640、BYK-1650、BYK-1710、BYK-1711、BYK-1730、BYK-1740、BYK-1770、BYK-1780、BYK-1785、BYK-1798(以上、ビックケミージャパン(株)製)、KM-73、KM-73A、M-73E、KM-7751、KM-70、KM-71、KM-75、KM-7750D、KM-85、KM72、KM-72F、KM-72S、KM-72FS、KM-72GS、KM-89、KM-90、KM-98、KM-7752、KS-530、KS-531、KS-537、KS-538、KS-540、X-50-1176、KF-96、KF-96ADF、KF6701、KS-7708、X-50-1100、X-50-1244、KS-66、KS-69、KS-602A、FA-600(以上、信越化学工業(株)製)、AQ-501、AQ-530S、AQ-7533、AQ-7552SE(以上、楠本化成(株)製)等が挙げられる。これらは1種または2種以上混合して使用することができる。消泡剤の使用量はインキ組成物全量に対し0.1重量%以上1.0重量%が好ましい。
【0018】
表面張力調整剤として、アセチレングリコール系界面活性剤を添加してもよい。アセチレングリコール系界面活性剤を添加すると、表面張力が下がり光沢紙やマスキングテープ等インキを吸収しにくい被筆記面に筆記した場合でも、はじかず筆記できる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、サーフィノール104E、同420、同440、同SE、同SE-F、同604、同607、同2502、同DF110D(以上、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。これらは1種、または2種以上混合しても使用することができる。界面活性剤の使用量はインキ組成物全量に対し0.1重量%以上3.0重量%以下が好ましい。尚、これらの界面活性剤が固体の場合、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール系溶剤に溶解し使用してもよい。
【0019】
さらに、本発明の水性インキ組成物には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で潤滑剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤等を適宜含有することができる。
潤滑剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル等が挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化リチウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパンジオール等の塩基性物質や、従来公知の酸性物質等が挙げられる。
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシル
アンモニウムナイトライト、サポニン類等、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノー
ル、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンゾイソチアゾリン、ベンズイミダゾ
ール系化合物等が挙げられる。
【0020】
本発明の水性インキ組成物を製造するに際しては、従来知られている種々の方法が採用できる。例えば、高剪断力を有するヘンシェルミキサー、プロペラ撹拌機、ホモジナイザー、ターボミキサー、高圧ホモジナイザー等の撹拌機で混合撹拌することにより容易に得られる。
【0021】
本発明の水性インキ組成物は、インキ収容管にチップをセットした容器に充填して使用する。インキ収容管は、金属製や合成樹脂製のものが使用可能である。透明・半透明の合成樹脂製であればインキ残量を明示できる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアリレート、エチレン-ビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂等があり、価格と視認性の面からポリプロピレンが良好に使用できる。また、染料や顔料や偏光性を有した着色材等を練り込んだインキ収容管を使用することも可能である。その内径としては1.5mmから20.0mmのものが使用可能である。インキの乾燥防止や逆流防止の目的でインキ後端にインキ逆流防止体を充填してもよい。インキ逆流防止体としては高粘度不揮発性液体や不揮発性液体をゲル化したものやスポンジ状のもの等各種公知のものが使用でき、フロートを併用しても良い。
【0022】
ボールペンチップの構造は、従来一般的な構造が使用可能であり、例えば、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを一部突出した状態で回転自在に抱持してなるボールペンチップや、金属材料をドリル等による切削加工により貫通孔を形成したボールホルダーにボールを一部突出した状態で回転自在に抱持させたボールペンチップがある。また、非筆記時にインキのにじみ出しを防止する目的で前記ボールの後方にスプリングを配置してボールをボールホルダー内面に押し当てる構造をとる事もできる。前記ボールの材質としては、超硬合金、ステンレス鋼、セラミック、樹脂、ゴム等が使用できる。特に十分な耐食性を持たせつつ、筆記中の回転を安定させて十分なインキ吐出を得る為には超硬合金や、炭化ケイ素・窒化ケイ素といったセラミック素材のボールが好ましい。
そして、本発明のインキを十分吐出させ、且つ、乾燥塗膜へ再筆記した際にボールペンのチップ内に巻き込まれた乾燥塗膜のカスをボールの動きによってほぐして効率的に再溶解させる為にはボールとボールホルダーとの隙間を十分に確保する必要がある。前記隙間の大きさを示す寸法としてボールが軸方向に移動する範囲であるボール前後移動量があり、その量は25μm以上180μm以下に設定するのが好ましい。ボール前後移動量を25μm以上にすると筆記時のボールの移動によって乾燥塗膜へ再筆記した際にチップ内に巻き込まれた乾燥塗膜のカスがほぐされやすく、乾燥塗膜の再溶解、着色樹脂粒子が再分散を促進することができる。しかし、ボール前後移動量を180μm以上にすると、乾燥塗膜へ再筆記した際にチップ内に巻き込まれる乾燥塗膜のカスの量が多くなり過ぎて再溶解に時間がかかり、カスレが発生しやすくなる。尚、上記のボール前後移動量を設定できればボール径は限定されるものでないが、ボールが外れてしまう不具合や加工のし易さを考慮すると、ボール径は0.5mm以上1.2mm以下とする事が好ましい。特に好ましい例としては、ボール径を1.0mmとしてボール前後移動量を70μm以上150μm以下としたものや、ボール径を0.8mmとしてボール前後移動量を60μm以上100μm以下としたボールペンチップが本発明のインキを使用する上で好適である。また、インキの10m毎の吐出量は0.04g以上0.15g以下とすると、黒上質紙等の暗色紙に筆記した際の視認性が良くなるため好ましい。
【0023】
本発明のボールペンの形態としてはキャップ式、出没式のいずれの形態であってもよく特に限定されるものではない。出没式ボールペンにした場合は単一のボールペンリフィルを軸筒内に収容し、軸筒の先端孔からチップを出没可能に構成したものでも良いし、軸筒内に複数のボールペンリフィルを収容してなる複合タイプの出没式筆記具であってもよい。また、インキ収容管内に圧縮空気を封入する等でインキに圧力を掛け、筆記する際のインキの吐出を支援するボールペンであってもよい。
【0024】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0025】
(水性インキ組成物の作製)
下記表2~9に示す組成を有する実施例1~68及び比較例1~6の水性インキ組成物を作製した。表2~9に記載の各成分の量の単位は重量部である。
表2~9に示す各組成物の材料としては、具体的には下記のものを使用した。
【0026】
<着色樹脂粒子>
着色樹脂粒子1:ルミコールNKW-6038E(平均粒径0.1μm、固形分量34.0%、スチレン・アクリロニトリル共重合体、日本蛍光化学(株)製)
着色樹脂粒子2:ルミコールNKW-6208E(平均粒径0.4μm、固形分量50%、スチレン・アクリロニトリル共重合体、日本蛍光化学(株)製)
着色樹脂粒子3:ルミコールNKW-2109E(平均粒径0.4μm、固形分量51%、スチレン・アクリロニトリル共重合体、日本蛍光化学(株)製)
着色樹脂粒子4:
MX-80H3wT(平均粒径0.8μm、架橋アクリル単分散粒子、綜研化学(株)製) 50.0重量部
プロピレングリコール 16.0重量部
ラウリル硫酸トリエタノールアミン 2.0重量部
C.I.Basic Blue 7 1.0重量部
イオン交換水 30.0重量部
上記各成分を混合し80℃で6時間攪拌し、着色樹脂粒子4の分散体を得た。
着色樹脂粒子5:
上記各成分のうちMX-80H3wTをFS-101(平均粒径0.08μm、アクリル樹脂微粒子、日本ペイント・インダストリアルコーティングス(株))に換えた他は着色樹脂粒子4と同様になし、着色樹脂粒子5を得た。
着色樹脂粒子6:
上記各成分のうちMX-80H3wTをエポスターS12(平均粒径1.2μm、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、(株)日本触媒製)に換えた他は着色樹脂粒子4と同様になし、着色樹脂粒子6を得た。
【0027】
<界面活性剤>
界面活性剤1:サーフィノール420(アセチレングリコール、日信化学工業(株)製)
界面活性剤2:NIKKOL SO-10V(オレイン酸ソルビタン、日光ケミカルズ(株)製)
【0028】
<水>
イオン交換水
【0029】
<水溶性アクリル系樹脂>
水溶性アクリル系樹脂1~3の作製
【0030】
【表1】
攪拌機、窒素ガス導入口、温度計、還流コンデンサーを設備した500mlの反応容器に表1の水溶性アクリル系樹脂1~3に示した物質を仕込み、窒素ガス気流中、80℃にて7時間攪拌しながら重合せしめ、透明で粘ちょう性を有するポリマー成分を得、これらを乾燥させ、水溶性アクリル系樹脂1~3を得た。表1の各成分と合計の欄の数字の単位は、g(グラム)である。なお、合成したアクリル系樹脂の重量平均分子量は、展開溶媒にテトラヒドロフラン溶液を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレンを標準物質として換算した。測定用のカラムはShodex OHpakSB-804HQ(昭和電工(株)製)を用いた。
水溶性アクリル系樹脂水溶液1:
水溶性アクリル系樹脂1 20重量部
25%アンモニア水 10重量部
イソプロピルアルコール 3重量部
イオン交換水 67重量部
上記各成分をプロペラ攪拌機にて、25℃で5時間攪拌し、重量平均分子量18000
0のアクリル系樹脂水溶液1を得た。
水溶性アクリル系樹脂水溶液2:
アクリル系樹脂水溶液1のアクリル系樹脂1の代わりにアクリル系樹脂2を入れ、同様になして重量平均分子量120000アクリル系樹脂水溶液2を得た。
水溶性アクリル系樹脂水溶液3:
アクリル系樹脂水溶液1のアクリル系樹脂1の代わりにアクリル系樹脂3を入れ、同様になして重量平均分子215000アクリル系樹脂水溶液3を得た。
水溶性アクリル系樹脂水溶液4:ジョンクリル52J(重量平均分子量1700、固形分量60.0%、BASF(独国)製)
水溶性アクリル系樹脂水溶液5:ジョンクリルPDX-6157(重量平均分子量6000、固形分量34.0%、BASF(独国)製)
水溶性アクリル系樹脂水溶液6:ジョンクリルPDX-6102B(重量平均分子量60000、固形分量24.5%、BASF(独国)製)
<アクリル系樹脂エマルジョン>
アクリル系樹脂エマルジョン1:ジョンクリルPDX-7696(重量平均分子量100000-200000、固形分量40.0%、BASF(独国)製)
【0031】
<非着色樹脂粒子>
非着色樹脂粒子1:エポスターS12(平均粒径1.2μm、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、(株)日本触媒製)
非着色樹脂粒子2:エポスターMV1002(平均粒径2.0μm、(株)日本触媒製)
非着色樹脂粒子3:エポスターMV1004(平均粒径4.0μm、(株)日本触媒製)
非着色樹脂粒子4:エポスターS6(平均粒径0.4μm、(株)日本触媒製)
非着色樹脂粒子5:エポスターMV1006(平均粒径6.0μm、(株)日本触媒製)
【0032】
<酸化チタン>
酸化チタン1:FUJI SP WHITE1193(酸化チタン50重量%、冨士色素(株)製)
【0033】
<水溶性有機溶剤>
水溶性有機溶剤1:エチレングリコール(沸点198℃)
水溶性有機溶剤2:グリセリン(沸点290℃)
水溶性有機溶剤3:ポリエチレングリコール 200(沸点データなし)
水溶性有機溶剤4:プロピレングリコール(沸点188℃)
水溶性有機溶剤5:ブチルセロソルブ(沸点171℃)
【0034】
<糖アルコール>
糖アルコール1:PO-10(1糖0~3%、2糖1~5%、3糖1~5%、4糖以上90~95%、三菱商事ライフサイエンス(株)製)
糖アルコール2:PO-20(1糖2~5%、2糖9~14%、3糖11~16%、4糖以上67~76%、70%水溶液、三菱商事ライフサイエンス(株)製)
【0035】
<高分子多糖類>
高分子多糖類1:ケルザンAR(キサンタンガム、三晶(株)製)
【0036】
<消泡剤>
消泡剤1:BYK-094(ビックケミージャパン(株)製)
消泡剤2:AQ-501(楠本化成(株)製)
【0037】
<防腐剤>
防腐剤1:プロクセルGXL(S)(ロンザジャパン(株)製)
防腐剤2:サンアイバックソジウムオマジン(三愛石油(株)製)
【0038】
<潤滑剤>
潤滑剤1:サルコシネートOHV(日光ケミカルズ(株)製)
潤滑剤2:フォスファノール RS-710(東邦化学工業製(株)製)にNaOHを加えてpH8.3に調整した、20重量%フォスファノール RS-710水溶液
【0039】
<pH調整剤>
pH調整剤1:トリエタノールアミン
【0040】
各実施例及び比較例のインキ組成物は、以下のようにして作製した。実施例及び比較例の各成分をプロペラ型攪拌機で3時間攪拌することにより各実施例、比較例の水性インキ組成物を得た。
【0041】
デュアルメタリックK110(ぺんてる(株))に使用しているインキ収容体にボールペンチップホルダーを介して、第1のボールペンチップ(ボール径1.0mm、ボール前後移動量90μm)、または、第2のボールペンチップ(ボール径0.8mm、ボール前後移動量70μm)を接続し、このインキ収容体に実施例1~68及び比較例1~6で得た水性インキ組成物を0.8g程度充填し、インキ界面にインキ逆流防止体を層状に配置した後、ペン先が外側を向くように遠心脱泡を施して、試験用ボールペンを作製した。評価用の試験サンプルボールペンに用いた、実施例1~68及び比較例1~6のインキ組成物と、第1または第2のボールペンチップの組み合わせについては、表2~9に記載した(表2~9のボール径の欄に第1のボールペンチップを使用した場合は1.0mm、第2のボールペンチップを使用した場合は0.8mmと表記)。
【0042】
以上説明した試験用ボールペンを用いて、以下に説明する乾燥塗膜への再筆記試験、及び、暗色紙視認性試験を行った。
【0043】
乾燥塗膜への再筆記試験
実施例及び比較例で得た水性インキ組成物を上質紙(北越コーポレーション(株)製「キンマリSW」、紙厚(JIS P 8118)95±3μm、F面(フェルト サイド(表面))にセレクトローラー(松尾産業(株)製)OSP-100を用いて塗膜を作り、25℃65%環境下で24時間乾燥させた。実施例及び比較例で得た水性インキ組成物を充填した試験用ボールペンで乾燥塗膜上に手書きで最大直径が1cm程度である10重の渦を筆記した後、別の上質紙に直径1.5cm程度の螺旋状の丸書きを4丸5段(合計20丸)筆記し、カスレずに筆記できるまでの丸数を数えた。試験した結果を表2~9に示す。試験結果の数値の単位は[丸]であり、20丸すべてカスレた場合は筆記不能と記載した。)
【0044】
暗色紙視認性試験
実施例及び比較例で得た水性インキ組成物を充填した試験用ボールペンを用いて、筆記角度70°、筆記速度7cm/秒、筆記荷重100gで10cmの直線を黒上質紙(色上質紙、黒、4/6T、厚口、北越コーポレーション(株)製)に筆記し、筆跡の視認性を4段階で目視評価した。
評価基準:
× 視認できない
△ よく見ると視認できる
〇 視認できる
◎ 鮮明に視認できる
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
実施例1~68の水性インキ組成物は、着色樹脂粒子の含有量が20重量%以上35重量%以下であり、顔料容積濃度{(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積)/(着色樹脂粒子容積+着色樹脂粒子以外の粒子容積+水溶性アクリル系樹脂容積)}×100(%)が86%以上99%以下である水性インキ組成物なので、乾燥させた塗膜上に再筆記しても20丸以内に通常筆跡に復元する。また実施例1~12、14~68の水性インキ組成物は、沸点180℃以上の水溶性有機溶剤を含むか、且つ/または、重量平均分子量が4000以上、200000以下の水溶性アクリル系樹脂を含むので、少ないカスレ丸数で筆跡が復元する。特に実施例1~12、14~20、22、24~27、29~30、32、34~51、53~68の水性インキ組成物は、沸点180℃以上の水溶性有機溶剤を含み、且つ、重量平均分子量が4000以上、200000以下の水溶性アクリル系樹脂を含むため、乾燥させた塗膜上に再筆記後、すぐに通常通りの筆記ができる。
【0054】
これに対して比較例3~6のインキ組成物は適切な顔料容積濃度範囲ではないため、乾燥させた塗膜への再筆記後に重度なカスレが発生してしまった。比較例2のインキ組成物は着色樹脂粒子の添加量が多いため、適切な顔料容積濃度範囲となるように水溶性アクリル系樹脂を添加しても、ペン先でのつまりや吐出不良が発生し、乾燥させた塗膜への再筆記後も筆記できなかった。比較例1の水性インキ組成物は着色樹脂粒子の添加量が適切な範囲ではないので、再筆記性自体は問題ないが、インキの隠蔽力が低く、黒上質紙では下地の黒が透けてしまい十分な発色が得られない。