IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フクハラの特許一覧

特開2024-6549圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造
<>
  • 特開-圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造 図1
  • 特開-圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006549
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/00 20060101AFI20240110BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240110BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20240110BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16T1/00 F
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
B01D53/14 100
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107551
(22)【出願日】2022-07-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA45
4D002EA01
4D002EA03
4D002FA01
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB01
4D020CA05
4D020CD03
(57)【要約】
【課題】圧縮空気圧回路において各装置から排出されるドレン及び圧縮排気に含有されるCO2を確実に分離・除去することが可能なドレン排出構造を提供する。
【解決手段】圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造であって、圧縮空気回路に配設される一乃至複数の装置に備えられたドレントラップと、ドレントラップから排出されたドレン及び圧縮排気に含有される油分を分離・除去可能なオイル吸着材を備える油分分離部と、油分分離部の後段に備えられCO2を分離・除去可能なCO2分離材を備えるCO2分離部と、から構成され、CO2分離部は、中空筒本体と、底体と、蓋体と、から成る手段を採用する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造であって、
圧縮空気回路に配設される一乃至複数の装置に備えられたドレントラップと、該ドレントラップから排出されたドレン及び圧縮排気に含有される油分を分離・除去可能なオイル吸着材を備える油分分離部と、油分分離部の後段に備えられCO2を分離・除去可能なCO2分離材を備えるCO2分離部と、から構成され、
CO2分離部は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成り該中空部にCO2分離材が充填された中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成ることを特徴とする圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造。
【請求項2】
前記油分分離部が、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成り該中空部にオイル吸着材が充填された筐体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記筐体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記筐体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成ることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造。
【請求項3】
前記油分分離部が、前記CO2分離部の中空筒本体下端部に備えられることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造。
【請求項4】
前記CO2分離部における中空筒本体の中空部には、CO2分離材として、アミン物質から成るアミン類CO2吸収材と、ゼオライトから成るゼオライト吸着材とが、交互に積層された状態で充填されて成ることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造。
【請求項5】
前記CO2分離部が、ユニオン継手を介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造。
【請求項6】
前記ドレントラップには、ドレン排出用のドレン分岐管が接続され、該ドレン分岐管の先端はドレン主管に接続されて成り、ドレントラップから排出されるドレンが該ドレン分岐管を介して該ドレン主管に合流して排出されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドレンに含まれるCO2を分離・吸着する技術に関し、詳しくは、圧縮空気圧回路にて発生するドレンについてCO2を分離・除去した状態で排出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気圧回路において、コンプレッサにより圧縮された圧縮空気中には水蒸気が大量に含有されており、圧縮空気圧回路内に配設されている各装置にて冷却されたり、内壁に衝突したりすることでドレンとなり、各装置に設けられた排出口からドレントラップを介し圧縮空気と共に排出される。該ドレンが貯留する各装置内は、圧縮空気によって圧力も高くなっているため、ヘンリーの法則に従い、圧力に比例するようにCO2をはじめとする多くの気体がドレン内に溶け込んでいる。そのため、各装置からドレンを外部に排出する際には、ドレンにかかっていた圧力が排出と同時に低下するため、ドレンに溶け込んでいたCO2も圧力低下に伴い大気中に放出されてしまう、といった問題があった。
そこで、ドレン及びドレン排出と共に排気される圧縮空気(以下、圧縮排気という。)に含有されたCO2を分離・除去することで、大気中へのCO2放出を削減する技術が求められていた。
【0003】
上記問題を解決すべく、特許第6686591号公報(特許文献1)や特許第6887099号公報(特許文献2)に記載の技術提案がなされている。すなわち、特許文献1では、ボイラ装置から排出されるドレン内のph値を計測し、その計測値によって二酸化炭素の中和もしくは酸素濃度の低下を行う技術が記載されている。また、特許文献2では、CO2吸収剤と気体を混合して噴霧するノズルが備えられた容器内へCO2含有ガスを流入させ、CO2を吸収する技術が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案では、ドレンのph値によって二酸化炭素の中和量が決定されるものであって、ドレンに含有された二酸化炭素の完全な除去を目的とした技術ではなく、上記問題の解決とはならない。さらに、特許文献2に記載の技術提案においても、ノズルからの噴霧のみでCO2含有ガス全体にCO2吸収剤を噴霧することは困難であり、吸収剤に触れなかったCO2はそのまま放出されることになると共に、吸収対象は気体のみであるため液体であるドレン内のCO2を回収することは想定外であり、やはり上記問題を解決するものではない。
【0005】
本出願人は、圧縮空気圧回路にて発生するドレンにCO2が溶け込みやすく、しかもドレン排出の際に圧力低下に伴い溶け込んだCO2が大気中に放散されてしまうという問題点に着目し、ドレン及び圧縮排気からCO2を分離・除去することができないものかとの着想のもと、圧縮空気圧回路において各装置に設けられるドレントラップの後段にCO2分離部を備えることで、該各装置から排出されたドレン及び圧縮排気に含有されたCO2を分離・除去が可能なドレン排出構造を開発し、本発明にかかる「圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6686591号公報
【特許文献2】特許第6887099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、圧縮空気圧回路において各装置から排出されるドレン及び圧縮排気に含有されるCO2を、確実に分離・除去することが可能なドレン排出構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造であって、圧縮空気回路に配設される一乃至複数の装置に備えられたドレントラップと、該ドレントラップから排出されたドレン及び圧縮排気に含有される油分を分離・除去可能なオイル吸着材を備える油分分離部と、油分分離部の後段に備えられCO2を分離・除去可能なCO2分離材を備えるCO2分離部と、から構成され、CO2分離部は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成り該中空部にCO2分離材が充填された中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成る手段を採る。
【0009】
また、本発明は、前記油分分離部が、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成り該中空部にオイル吸着材が充填された筐体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記筐体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記筐体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成る手段を採る。
【0010】
さらに、本発明は、前記油分分離部が、前記CO2分離部における中空筒本体下端部に備えられる手段を採る。
【0011】
またさらに、本発明は、前記CO2分離部における中空筒本体の中空部には、アミン物質から成るアミン類CO2吸収材と、ゼオライトから成るゼオライト吸着材が交互に積層された状態で充填されて成る手段を採る。
【0012】
さらにまた、本発明は、前記CO2分離部が、ユニオン継手を介して接続されている手段を採る。
【0013】
そしてまた、本発明は、前記ドレントラップには、ドレン排出用のドレン分岐管が接続され、該ドレン分岐管の先端はドレン主管に接続されて成り、ドレントラップから排出されるドレンが該ドレン分岐管を介して該ドレン主管に合流して排出される手段を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造によれば、圧縮空気回路に配設されるドレントラップと、オイル吸着材を備える油分分離部と、CO2分離部にて構成されるため、圧縮空気圧回路から排出されるドレン及びドレンと共に排出される圧縮排気から、油分とCO2が除去された地球環境に配慮した清浄なドレン及び圧縮排気の排出が可能となる、といった優れた効果を奏するものである。
【0015】
また、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造によれば、油分分離部が筒状体であり中空部にオイル吸着材が充填されていることで、圧縮空気圧回路から排出されるドレン及び圧縮排気に含有された油分を、予め油分分離部にて分離・除去を行ってから後段のCO2分離部へ送気可能となるため、CO2分離部内への油分侵入を防ぐことが可能である、といった優れた効果を奏するものである。
【0016】
さらに、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造によれば、油分分離部がCO2分離部の中空筒本体下端部に備えられることにより、油分を含んだドレン及び圧縮排気が、直接CO2分離部へ流入することを防ぐと共に、油分分離部として新たな装置を配設せずに油分を除去可能なため、圧縮空気圧回路全体の省スペース化に資する、といった優れた効果を奏するものである。
【0017】
またさらに、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造によれば、CO2分離部における中空筒本体の中空部に、アミン物質から成るアミン類CO2吸収材と、ゼオライトから成るゼオライト吸着材が交互に積層された状態で充填されることにより、CO2分離部中空部に備えた一層目で分離できなかったCO2が、次層もしくは次々層にて分離させることが可能となり、CO2が分離された清浄なドレン及び圧縮排気の生成に資する、といった優れた効果を奏する。
【0018】
さらにまた、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造によれば、CO2分離部がユニオン継手を介して接続されていることにより、CO2分離部の取り外し・交換作業がスムーズに実行可能となる、といった優れた効果を奏するものである。
【0019】
そしてまた、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造によれば、ドレントラップにドレン排出用のドレン分岐管及びドレン主管が接続され、ドレントラップから排出されるドレンが該ドレン分岐管を介して該ドレン主管に合流して排出されることで、圧縮空気圧回路における各装置に夫々備えられたドレントラップから排出されるドレン及び圧縮排気を、ドレン分岐管を介したドレン主管にて一に纏めることが可能となり、合流したドレン及び圧縮排気が油分分離部とCO2分離部を経由して外部に排出することが可能となる、といった優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造の実施形態を示す模式図である。
図2】本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造の他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造は、ドレントラップにより排出されるドレン及び圧縮排気中のCO2をCO2分離部によって分離・除去することを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0022】
なお、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【0023】
まず、図1及び図2に従って、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造1を説明する。
図1は、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造1の実施形態を示す模式図である。図2は、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造1の他の実施形態を示す模式図である。
CO2分離部10は、圧縮空気圧回路2からドレントラップ30を介して排出されるドレン及び圧縮排気からCO2を分離・除去するための装置であって、主に、中空筒本体11と、底体13と、蓋体15と、から構成されている。
【0024】
中空筒本体11は、CO2分離材が充填された中空部を有し、底体13と蓋体15にて閉塞されて成り、流入口14から流入したドレン及び圧縮排気からCO2を分離・除去するためのものである。
中空筒本体11は、中空部を有し、上方及び下方が夫々開口した筒状体から構成されている。中空筒本体11の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。中空筒本体11の下方及び上方の開口端には、夫々底体13及び蓋体15が装着される。また、中空筒本体11の中空部にはCO2分離材が充填され、底体13に備えられた流入口14から流入するドレン及び圧縮排気が中空部内を通過する際に、CO2の分離・除去を行い、蓋体15に備えられた排出口16から外部へ排出することとなる。
【0025】
中空筒本体11の中空部に充填されるCO2分離材は、ドレン及び圧縮排気の通過によりCO2の吸収・吸着が行われる素材であれば特に限定はしないが、図1に図示したようにアミン類を使用したアミン類CO2吸収材17と、ゼオライトを使用したゼオライト吸着材18を交互に積層して充填させる態様が好適である。この態様を採ることにより、底体13に備わった流入口14から侵入したドレン及び圧縮排気が中空筒本体11内を上昇し、アミン類CO2吸収材17を通過する際は、化学吸収法によりCO2が吸収される。また、アミン類CO2吸収材17の層にて吸収されなかったCO2も、次の層に充填されたゼオライト吸着材18を通過することによりゼオライトにCO2が吸着されることとなる。さらに、次層、次々層と層を重ねることによりドレン及び圧縮排気中のCO2は分離されることになり、蓋体15に備わった排出口16から排出されるドレン及び圧縮排気中に含有されるCO2の削減に資することとなる。
【0026】
アミン類CO2吸収材17として使用されるアミン化合物は、脂肪族第一、第二及び第三アミン、並びにポリアミン、ポリイミン、環式アミン、アミジン化合物、ヒンダードアミン、アミノーシロキサン化合物、アミノ酸等が使用されるが、特に限定はしない。
また、ゼオライト吸着材18として使用されるゼオライトは、CO2を選択的に吸着させる多孔体を有する鉱物である。ゼオライト吸着材18の形状は特に限定はなく、例えば、丸粒状やペレット状、破砕状といった形状にすることで接触可能な表面積を広くし、CO2の吸着を効果的に行うといった態様が考え得る。
流入口14から流入し排出口16へ向けて上昇したドレン及び圧縮排気は、中空部下部に充填されたアミン類CO2吸収材17を通過しCO2が吸収される。その後、該アミン類CO2吸収材17の上段に充填されたゼオライト吸着材18の表面と接触しつつ通過することで、圧縮空気内に残留していたCO2が吸着される。そして、中空部に充填されたCO2分離材の層数だけ同様の動作を繰り返すこととなり、CO2分離部10に流入したドレン及び圧縮排気は、CO2が除去された清浄なドレン及び圧縮排気となって排出口16から外部へ排出されることとなる。
【0027】
底体13は、中空筒本体11の下方を閉塞すると共に、ドレン及び圧縮排気を中空筒本体11へ流入可能な流入口14を備えたものである。
底体13は、中空筒本体11における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に流入口14を備えた構成となっている。底体13の中空筒本体11の下方開口端への締結手段については、特に限定はないが、例えば螺合等の締結手段により装着されることとなる。また、底体13から流入するドレン及び圧縮排気が中空筒本体11へ侵入するまでの流路形成方法は特に限定はなく、例えば、図1に図示したように、底体13底部略中央箇所に備えた流入口14から流入したドレン及び圧縮排気を、中空筒本体11の外周方向へ分散するよう流路形成部を設けることで複数の流路が形成でき、中空筒本体11の中空部に充填されるCO2分離材への負担を分散させることも可能となる。
【0028】
蓋体15は、中空筒本体11の上方を閉塞すると共に、中空部に充填されたCO2分離材によってCO2が分離・除去されたドレン及び圧縮排気を後段へ送出可能な排出口16を備えたものである。
蓋体15は、中空筒本体11における上方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排出口16を備えた構成となっている。蓋体15の中空筒本体11の上方開口端への締結手段については、底体13同様、特に限定はないが、例えば螺合等の締結手段により装着されることとなる。中空筒本体11によってCO2が分離・除去されたドレン及び圧縮排気は、蓋体15に備えられた排出口16から外部へ清浄なドレン及び圧縮排気として排出されることとなる。
【0029】
また、流入口14とドレン主管32との接続箇所近傍及び、排出口16とドレン主管32との接続箇所近傍には、ユニオン継手47が夫々設けられ、CO2分離部10本体の異常によるCO2分離機能の低下やCO2分離材の交換等によりCO2分離部10自体を取り外し可能とする態様が好適である。この態様を採ることにより、異常発生時においてもCO2分離部10本体を代替品と交換するだけで復旧させることが可能であると共に、CO2を吸着・吸収したCO2分離材の回収時にも、CO2分離部10本体をそのままCO2回収が可能な作業場へ移送し直接CO2分離材を取り出すことも可能となり、作業時間の短縮に資することとなる。
【0030】
さらに、排出口16近傍には、CO2濃度計46が備えられる態様も好適である。CO2濃度計46の測定方式は、一般的にNDIR(非分散型赤外線)方式が用いられるが、特に限定はしない。CO2濃度計46を排出口16近傍に備えることにより、最終的に排出されるドレン及び圧縮排気中に含有されるCO2量が計測できるため、CO2の総削減量やCO2分離部10に異常が発生していないかを計測データにより確認することが可能となる。
【0031】
圧縮空気圧回路2は、エアコンプレッサ41と、エアタンク43やエアドライヤ44、エアフィルタ45などの各装置にて構成され、エアコンプレッサ41にて生成された圧縮空気圧からドレンや塵埃といった異物を分離・除去し、後段の利用機器へ送気するものである。
圧縮空気圧回路2に配設されるエアコンプレッサ41及び各装置との接続部にはエア配管が接続されており、エアコンプレッサ41にて生成された圧縮空気は、圧縮空気圧回路2に配設された各装置と、夫々に接続されたエア配管内を通り、圧縮空気圧回路2の後段に接続された配管によって圧縮空気を利用する利用機器へ送気されることとなる。
【0032】
エアコンプレッサ41とは、圧縮空気圧回路2の最前段に備えられ、大気を圧縮し圧力を上げた圧縮空気を生成し、後段へ送気するためのものである。
エアコンプレッサ41が生成する圧縮空気には、大気中に存する水蒸気等の水分であるドレン(以下、単にドレンという。)、オイルミストや塵埃等の異物(以下、単に異物という。)が含有されるため、該異物を除去可能な各装置を後段に設けた後、圧縮空気の利用機器へ送気させることとなる。
また、エアコンプレッサ41には、構成部品の潤滑用として潤滑油を使用することで焼付や給油式コンプレッサと、油分の混入経路をなくし、圧縮空気の生成時に油分が混入しないように設計されたオイルフリー式エアコンプレッサ42があるが、特に指定はなく、圧縮空気の利用機器や利用目的等によって決定される。
【0033】
圧縮空気圧回路2は、エアコンプレッサ41の後段に、エアタンク43、エアドライヤ44、エアフィルタ45といった各装置を一乃至複数備え成り、該エアコンプレッサ41にて生成された圧縮空気から異物を分離・除去し、後段の利用機器へ送気することとなる。
エアコンプレッサ41と各装置の接続部及び各装置間には、夫々エア配管が接続されている。
圧縮空気圧回路2に配設される各装置の種類や配列数、配列順は、圧縮空気圧回路2後段に接続される利用機器や、その利用方法等によって異なることとなる。例えば、ゴルフ用エアガンによってゴルフシューズやズボンの汚れを落とす、といった目的であるならば、図1に図示したように、エアコンプレッサ41の後段にエアタンク43、エアドライヤ44、エアフィルタ45を夫々配列する。エアタンク43は、エアコンプレッサ41から吐出された空気圧力の脈動を平準化すると共に、一時的に多量の圧縮空気が消費される場合の急激な圧力降下を防止する目的で備えられる。そして、エアドライヤ44にて圧縮空気内の水分分離・除去及び圧縮空気の温度を低下させた後に、エアフィルタ45を通過させて塵埃を除去し、後段に接続された利用機器へ送気する。該利用機器であるエアガンからは、圧縮空気内の異物及びドレンが取り除かれ、清浄且つ低温な圧縮空気が排出される態様となる。
また、圧縮空気圧回路2として配設される各装置には、該装置下部に貯留したドレンを外部へ排出するドレントラップ30が備えられる。
【0034】
ドレントラップ30は、圧縮空気圧回路2に配設される各装置の所定箇所に備えられると共に、該各装置にて除去されたドレンを機械的に排出するものである。また、排出するドレンを後段へ送出可能なドレン分岐管31と接続される。
ドレントラップ30は、圧縮空気がエア配管を通過する際の温度変化や各装置の内壁への衝突等によって発生したドレンを、機械的に外部へ排出する機構であり、ドレン分岐管31及びドレン主管32を介して油分分離部20と接続される。ドレントラップ30には、その排出方法により電磁式やフロート式などが存在するが、特に限定するものではなく従来公知のものを使用すれば足りる。また、ドレントラップ30による排出動作の際、ドレンの近傍に滞留している圧縮空気もドレンと併せて排出されるため、圧力を伴った圧縮排気となってドレン分岐管31へ流出することとなる。
【0035】
ドレン分岐管31は、基端部がドレントラップ30と接続され、機械的に排出されるドレン及び圧縮排気を後段へ送出可能な配管である。各装置に備えられたドレントラップ30に夫々接続されたドレン分岐管31は、先端部分を一の配管であるドレン主管32へ接続することで合流し、油分分離部20へ流入することとなる。また、ドレン分岐管31の基端部所定箇所には、逆流防止弁が備わっている態様が好適である。この態様を採ることにより、排出されたドレン及び圧縮排気がドレントラップ30及び圧縮空気圧回路2の各装置へ逆流することを防止する。
【0036】
ドレン主管32は、ドレン分岐管31を一の流路に合流させる配管であり、ドレントラップ30から排出されたドレン及び圧縮排気を、油分分離部20及びCO2分離部10を経由させた後、外部へ送出するものである。また、図示していないが、油分分離部20の流入口24及びCO2分離部10の流入口14近傍にバルブを設けることにより、油分分離部20及びCO2分離部10の充填物の交換や、不具合等が発生した場合においても、設けられたバルブを閉めることにより、ドレン及び圧縮排気の送出を一時的に停止させることが可能となる。
【0037】
油分分離部20は、ドレントラップ30から排出されるドレン及び圧縮排気から油分を分離・除去し、後段のCO2分離部10へ流出させるための装置であって、筐体21と、底体23と、蓋体25と、から構成されるものである。
油分分離部20にて油分を分離・除去することにより、後段に接続されるCO2分離部10に充填されたCO2分離材への油分付着を防ぎ、CO2分離材によるCO2吸収・吸着性能の向上・長寿命化に資する、といった優れた効果が期待できる。
【0038】
筐体21は、オイル吸着材27が充填された中空部を有し、底体23と蓋体25にて閉塞されて成り、流入口24から流入したドレン及び圧縮排気から油分を分離・除去するためのものである。
筐体21は、上方及び下方が夫々開口した中空部を有する筒状体から構成されている。筐体21の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。筐体21の下方及び上方の開口端には、夫々底体23及び蓋体25が装着される。また、筐体21の中空部にはオイル吸着材27が充填され、底体23に備えられた流入口24から流入するドレン及び圧縮排気が中空部内を通過する際に、油分の分離・除去を行い、蓋体25に備えられた排出口26から後段に備えられたCO2分離部10へ送出することとなる。
【0039】
筐体21の中空部に充填されるオイル吸着材27は、ドレン及び圧縮排気の通過により油分の吸収・吸着が行われる素材であれば特に限定はしない。例えば、活性炭やマイクロポーラス、コットン、ポリエチレン、ポリプロピレン繊維等が考え得る。また、充填方法や形状等にも特に限定はないが、複数の油分吸収・吸着が可能な素材を微細な粒状にし、交互に積層させるといった態様が考え得る。この態様を採ることにより、油分分離部20へ流入したドレン及び圧縮排気の油分が十分に除去されてから、後段に備えられたCO2分離部10へ送気させることが可能になる、といった優れた効果が期待できる
【0040】
また、図2に図示したように、オイルフリー式エアコンプレッサ42を使用した圧縮空気圧回路2であった場合は、油分分離部20の構造を簡略化し、中空筒本体11に充填されたCO2分離材の最下面にオイル吸着材27を備える態様が好ましい。この態様を採ることにより、配設スペースの省スペース化に資すると共に、ドレン主管32を介して送出されるドレン及び圧縮排気がCO2分離部10へ流入しても、オイル吸着材27を経由してからCO2分離材を通過することとなり、たとえ、ドレン及び圧縮排気中に油分が混入していた場合でも、まずオイル吸着材27にて油分を分離・除去されるため、CO2分離材へのオイル付着を防止することが可能となる。
【0041】
(実施例1)
以上の構成から成る圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造1について、図1に基づきその主な動作及び作用を説明する。
まず、エアコンプレッサ41にて生成される圧縮空気は、後段に配設されたエアタンク43やエアドライヤ44、エアフィルタ45といった各装置を夫々通過することで異物が除去され、清浄な圧縮空気として利用機器へ送気される。その際、エアタンク43及びエアドライヤ44並びにエアフィルタ45の各装置下部に貯留したドレンは、各装置の所定箇所に備えられたドレントラップ30による機械的な排出動作により、ドレン分岐管31へ送出される。このとき、ドレン近傍に滞留していた圧縮空気も、ドレントラップ30の排出動作によって、ドレンと共に圧縮排気として、ドレン分岐管31へと流入する。そして、夫々のドレン分岐管31内を流れるドレン及び圧縮排気は、ドレン主管32にて合流し、油分分離部20の流入口24を介して底体23を経由し、筐体21へ流入することとなる。
【0042】
筐体21へ流入したドレン及び圧縮排気は、筐体21内に充填されたオイル吸着材27と接触しつつ上昇することで油分が分離された状態となり、蓋体25へ流入した後、該蓋体25に備えられた排出口26を介してドレン主管32を経由し、後段に配設されたCO2分離部10の流入口14へと送出される。
CO2分離部10の流入口14から流入したドレン及び圧縮排気は、底体13から中空筒本体11へ侵入し、該中空筒本体11内に充填されたアミン類CO2吸収材17及びゼオライト吸着材18に接触しつつ上昇することでCO2が分離・除去された後に蓋体15へ流入し、該蓋体15に備えられた排出口16からドレン主管32を介して外部へ排出されることとなる。
【0043】
(実施例2)
本発明の他の実施形態における実施例について、図2を用いて説明する。また、上記実施例1と同様の部分は省略する。図2は、本発明の他の実施形態を示す概略図であり、圧縮空気圧回路2から排出されるドレン及び圧縮排気の油分とCO2の分離・除去を行うものである。
【0044】
実施例1において、ドレントラップ30から排出されるドレン及び圧縮排気を、油分分離部20を経由した後にCO2分離部10を通過させる例を説明したが、さらなる改善も可能である。
すなわち、圧縮空気圧回路2におけるエアコンプレッサ41について、圧縮空気生成時に油分が混入しない構造であるオイルフリー式エアコンプレッサ42に置き換えることにより、利用機器へ送気される圧縮空気並びにドレン及び圧縮排気における油分の含有量を抑えることが可能となる。かかる態様を採ることで、ドレン及び圧縮排気から分離・除去すべき油分が少量となるため、図1に図示したように、独立した装置として油分分離部20を配設するよりも、図2に図示したように、CO2分離部10自体に油分分離部20の機能を備えさせて一の装置として配設することで、油分分離部20の機能を有しつつ省スペース化を図ることが可能となる。
【0045】
図2に図示した通り、本実施例には単なるエアコンプレッサ41の代わりにオイルフリー式エアコンプレッサ42が備えられ、油分分離部20を一の装置としてではなく、CO2分離部10における中空筒本体11の最下面に油分分離部20を設け、圧縮空気圧回路2から排出されるドレン及び圧縮排気の油分とCO2を分離・除去を行うこととなる。
【0046】
CO2分離部10の最下面に油分分離部20を設けることにより、流入口14から流入したドレン及び圧縮排気は、初めに油分分離部20として備えられるオイル吸着材27を通過することとなり、ドレン及び圧縮排気中に含有された油分を分離・除去した後に、アミン類CO2吸収材17及びゼオライト吸着材18が充填された中空筒本体11を上昇することとなる。
【0047】
上記構成を採用した圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造1の流れを説明する。
圧縮空気圧回路2から排出されたドレン及び圧縮排気は、ドレントラップ30、ドレン分岐管31、ドレン主管32を介してCO2分離部10の流入口14から底体13へ流入する。該底体13から中空筒本体11へ侵入したドレン及び圧縮排気は、まず油分分離部20であるオイル吸着材27を通過することで油分が分離・除去され、その後、アミン類CO2吸収材17及びゼオライト吸着材18が積層された流路を上昇することで、CO2が分離・除去された清浄なドレン及び圧縮排気となり、蓋体15に備えられた排出口16からドレン主管32を介して外部へ排出されることとなる。
【0048】
以上、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造の基本的態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、中空筒本体11の下部に、防水性を有し複数の通気孔を設けたパンチングメタルを設置し、流入口14から流入したドレン及び圧縮排気が中空筒本体11内へ侵入する際の流路を、さらに分散させた状態で上昇させる、といった態様も考え得る。
【0049】
以上のように、本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造は、圧縮空気圧回路から排出されるドレン及び圧縮排気に含有される油分及びCO2を分離・除去する油分分離部とCO2分離部をドレン主管に設けることで、ドレンに多く含有されたCO2を外部へ排出される以前に除去することが可能となって、大気へと放出される温室効果ガスの削減に資することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明にかかる圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造は、圧縮空気を使用するあらゆる分野において、CO2を含有しないドレンの排出に資する発明であり、さらに、CO2分離部において分離したCO2を回収し、ドライアイスや産業用ガスとして再利用することも可能である。したがって、本発明にかかる「圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0051】
1 圧縮空気圧回路におけるドレン排出構造
2 圧縮空気圧回路
10 CO2分離部
11 中空筒本体
13 底体
14 流入口
15 蓋体
16 排出口
17 アミン類CO2吸収材
18 ゼオライト吸着材
20 油分分離部
21 筐体
23 底体
24 流入口
25 蓋体
26 排出口
27 オイル吸着材
30 ドレントラップ
31 ドレン分岐管
32 ドレン主管
41 エアコンプレッサ
42 オイルフリー式エアコンプレッサ
43 エアタンク
44 エアドライヤ
45 エアフィルタ
46 CO2濃度計
47 ユニオン継手

図1
図2