(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065495
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/021 20120101AFI20240508BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240508BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16H57/021
H02K7/116
F16H1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174388
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正士
(72)【発明者】
【氏名】渋澤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】内村 浩之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 護
(72)【発明者】
【氏名】石黒 巧麻
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄平
【テーマコード(参考)】
3J009
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J009EA19
3J009EB22
3J009EB24
3J009EC06
3J009FA04
3J063AA02
3J063AB03
3J063AC01
3J063BA04
3J063BB44
3J063CD43
5H607BB01
5H607DD19
5H607EE31
5H607JJ01
(57)【要約】
【課題】大径部が金属製のものに比べて、重量を低減させることができ且つ錆の発生を抑制することができるモータ装置を得る。
【解決手段】減速機構付モータ10は、樹脂製のハウジング42と、ハウジング42に固定された支持部62と、を備える。支持部62は、金属製の軸部64と、軸部64を覆う樹脂製の被覆部72と、を備えると共にウォームホイール44を回転自在に支持する。軸部64は、ハウジング42の内側に位置する内側軸部66と、ハウジング42の外側に位置する外側軸部68と、を有する。被覆部72は、外側軸部68の全体を覆う外側被覆部76と、内側軸部66の軸方向の少なくとも一部を覆い且つハウジング42に埋設された内側被覆部74と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のハウジングと、
前記ハウジングに固定された支持部と、を備え、
前記支持部は、金属製の軸部と、前記軸部を覆う樹脂製の被覆部と、を備えると共に駆動対象物を回転自在に支持し、
前記軸部は、
前記ハウジングの内側に位置する内側軸部と、
前記ハウジングの外側に位置する外側軸部と、を有し、
前記被覆部は、
前記外側軸部の全体を覆う外側被覆部と、
前記内側軸部の軸方向の少なくとも一部を覆い且つ前記ハウジングに埋設された内側被覆部と、を有する、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記内側被覆部から前記軸方向と交差する交差方向に張り出された張出部が設けられている、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項3】
前記張出部は、前記ハウジングの外側から前記軸方向に見た場合、前記ハウジングに覆われている、
ことを特徴とする請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ装置において、
前記張出部には、前記交差方向に開口した切欠部が形成されている、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項5】
前記切欠部は、前記軸部まで切り欠かれている、
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のモータ装置において、
前記ハウジングは、
前記支持部が固定された固定部と、
前記固定部から前記軸方向に沿って直立した縦壁部と、を備え、
前記縦壁部は、前記被覆部を囲むと共に前記被覆部と接触している、
ことを特徴とするモータ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ装置において、
前記縦壁部と前記被覆部との隙間を塞ぐシール部材が設けられている、
ことを特徴とするモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されたギヤードモータでは、金属部材である支持軸の基端側部分がホイール支持部に固定されている。支持軸の基端側部分には、小径部が設けられている。支持軸の先端側部分には、小径部よりも外径が大きい大径部が設けられている。また、ホイール支持部には、小径部を被覆する筒状の被覆部が形成されている。大径部と被覆部との境界部分には、境界面部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のギヤードモータでは、駆動対象物を支持する大径部が金属製のため、モータ装置の重量を低減させにくかった。また、大径部が大気中に露出されているため、錆の発生を抑制するには大径部にメッキ処理を施す必要があるが、大径部にメッキ処理を施しても、境界面部から侵入する水分によって小径部に錆が発生する虞があった。
【0005】
本発明の目的は、大径部が金属製のものに比べて、重量を低減させることができ且つ錆の発生を抑制することができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態のモータ装置は、樹脂製のハウジングと、前記ハウジングに固定された支持部と、を備えている。前記支持部は、金属製の軸部と、前記軸部を覆う樹脂製の被覆部と、を備えると共に駆動対象物を回転自在に支持している。前記軸部は、前記ハウジングの内側に位置する内側軸部と、前記ハウジングの外側に位置する外側軸部と、を有している。前記被覆部は、前記外側軸部の全体を覆う外側被覆部と、前記内側軸部の軸方向の少なくとも一部を覆い且つ前記ハウジングに埋設された内側被覆部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態のモータ装置によれば、大径部が金属製のものに比べて、重量を低減させることができ且つ錆の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る減速機構付モータの平面図である。
【
図2】減速機構付モータのハウジングを示す斜視図である。
【
図3】ハウジング及びウォームホイールの断面図(
図1の3-3線に沿う断面図)である。
【
図4】
図3のハウジングの固定部及び支持部を拡大した断面図である。
【
図6】
図4の支持部が金型で成形された状態を示す断面図である。
【
図7】成形後の支持部が下金型に装着された状態を示す断面図である。
【
図8】
図2のハウジングが金型で成形された状態を示す断面図である。
【
図9】支持部の張出部が力に対して抵抗する状態を示す説明図である。
【
図10】支持部の張出部が力に対して抵抗する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図10までを参照して説明する。なお、
図1から
図10までにおいて、同一又は同様の構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図10までにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合、「第1」、「第2」等の用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
以後の説明において、「軸方向」とは、後述する軸部64(
図3)の中心軸である第2軸線C2(
図3)が延びている方向を意味する。また、「交差方向」とは、軸部64の軸方向と交差する方向を意味する。なお、交差方向は、円柱状の軸部64の径方向を含む。また、軸方向のうち、後述するハウジング42(
図1)から軸部64の一部が突出した側を「上側」とし、「上側」とは反対側を「下側」とする。各図において、軸方向は矢印Zで示されている。矢印Zの先端側が上側に相当し、基端側が下側に相当する。
【0011】
図1に示される減速機構付モータ10は、モータ装置の一例である。減速機構付モータ10は、自動車等の車両に搭載される不図示のパワーウィンドウ装置に用いられる。より特定的には、減速機構付モータ10は、ウィンドウガラスを昇降させる不図示のウィンドウレギュレータの駆動源として用いられる。減速機構付モータ10は、不図示のドア内に形成された空間部に設置される。このため、減速機構付モータ10の形状は、扁平形状となっている。減速機構付モータ10は、モータ部20と、ギヤ部40と、を備えている。モータ部20及びギヤ部40は、締結ねじ14により締結されることで一体化されている。
【0012】
〔モータ部〕
モータ部20は、有底筒状に形成されたヨーク22を備えている。ヨーク22の内側には、複数のマグネット23が固定されている。それぞれのマグネット23の内側には、アーマチュア24が回転自在に設けられている。アーマチュア24には、不図示のコイルが巻き付けられている。アーマチュア24の回転中心の位置には、アーマチュア軸26が設けられている。アーマチュア軸26の中心軸を表す直線を第1軸線C1とする。なお、アーマチュア24は、複数の軸受28により回転自在に支持されている。
【0013】
アーマチュア24の軸方向の一端側には、整流子32が固定されている。そして、整流子32を形成する不図示のセグメントには、既述のコイルが電気的に接続されている。整流子32の外周部には、不図示のブラシが接触している。当該ブラシに駆動電流が供給された場合、アーマチュア24に電磁力が発生することで、アーマチュア軸26が所定の回転方向に所定の回転速度で回転される。アーマチュア軸26の軸方向の一端部には、ウォーム軸34が一体に設けられている。つまり、アーマチュア軸26及びウォーム軸34は、第1軸線C1上に位置している。
【0014】
〔ギヤ部〕
ギヤ部40は、一例として、ハウジング42と、後述するウォームホイール44を回転自在に支持する支持部62と、後述するOリング84(
図2)と、ハウジング42に取り付けられるカバー部材48と、を備える。カバー部材48には、ウォームホイール44と摺接する摺接部材49が一体に形成されている。ハウジング42及び支持部62は、後述する2つのインサート成形工程が行われることで出来上がる。ハウジング42の内部には、ウォーム軸34と、ウォームホイール44とが回転自在に収容されている。ウォーム軸34は、アーマチュア軸26と一体に設けられている。ウォーム軸34の外周部分の一部には、ウォーム34Aが設けられている。
【0015】
ウォームホイール44は、モータ部20によって駆動される駆動対象物の一例である。ウォームホイール44の中心軸を表す直線を第2軸線C2とする。ウォーム軸34とウォームホイール44とが並ぶ方向から見た場合、第1軸線C1と第2軸線C2とは、ほぼ直交している。
【0016】
図3に示されるように、ウォームホイール44は、孔部44Aと、拡幅部44Bと、歯部44Cと、セレーション出力部44Dと、を有する。孔部44Aは、ウォームホイール44を軸方向に貫通している。孔部44Aの形状は円形である。孔部44Aの中心は、第2軸線C2上に位置する。孔部44Aには、後述する支持部62が挿通されている。これにより、ウォームホイール44は、支持部62によって回転自在に支持されている。
【0017】
拡幅部44Bは、第2軸線C2上において孔部44Aと軸方向に並び、且つ孔部44Aの孔径よりも大きい径を有する孔部である。歯部44Cは、ウォームホイール44における軸方向の中央よりも下側で且つウォームホイール44の外周部分に形成されている。歯部44Cは、ウォーム34A(
図1)に噛み合わされている。セレーション出力部44Dは、軸方向において、孔部44Aに対する上側に位置している。セレーション出力部44Dは、減速機構付モータ10の出力部として機能する。具体的には、セレーション出力部44Dは、不図示のウィンドウレギュレータの被駆動部に、動力伝達可能に噛み合わされている。
【0018】
図1に示されるように、ウォーム34A及びウォームホイール44は、ウォーム減速機(減速機構)を構成している。ウォーム34A及びウォームホイール44は、アーマチュア軸26及びウォーム軸34の回転速度を減速して高トルク化し、且つ高トルク化された回転力をセレーション出力部44Dから出力する。
【0019】
<ハウジング>
図2に示されるように、ハウジング42は、本体部46と、収容部52と、コネクタ接続部61と、を備えている。ハウジング42は、樹脂製の部材であり、一例として、プラスチック製の部材である。ハウジング42は、後述する第2インサート成形工程が行われることで出来上がる。
【0020】
(コネクタ接続部)
コネクタ接続部61には、不図示のコネクタが収容されている。当該コネクタは、不図示のブラシホルダに電気的に接続されている。当該コネクタには、車両側から給電が行われる。
【0021】
(本体部)
本体部46は、ウォーム軸34(
図1)を回転自在に収容する。本体部46には、3つの固定脚47が設けられている。固定脚47には不図示の固定ボルトが挿通されている。これにより、ハウジング42(減速機構付モータ10)は、車両のドア内に設けられた不図示の取付ステーに固定されている。
【0022】
(収容部)
収容部52(ハウジング42)は、底壁部53と、周壁部54と、固定部55と、筒部59と、を備えている。収容部52は、ウォームホイール44(
図1)を回転自在に収容している。
【0023】
底壁部53は、円盤状に形成された部位である。底壁部53には、軸方向から見た場合、環状の摺接部53Aが設けられている。摺接部53Aは、底壁部53から軸方向の上側に突出された部位であり、ウォームホイール44の下部を摺動自在に支持している。周壁部54は、底壁部53の外周部分から軸方向に沿って起立された円筒状の壁部である。
【0024】
図3に示されるように、固定部55は、底壁部53の中央部分から軸方向の上側に起立された円柱状の部位である。固定部55の上端には、軸方向から見た場合、円環状の上面55Aが形成されている。さらに、固定部55には、軸方向の上側に開口する有底の穴部56が形成されている。
【0025】
穴部56は、後述する軸部64の下軸部66Aが固定された下穴部57と、下穴部57に対して軸方向の上側に位置する上穴部58と、を有する。上穴部58は、大径部58Aと、大径部58Aに比べて半径が小さい小径部58Bと、を有する。大径部58Aは、上穴部58の軸方向の下部を構成する。大径部58Aの軸方向の上端には、天面58Cが形成されている。天面58Cは、大径部58Aと小径部58Bとの段差部分として形成されている。大径部58Aの軸方向の下端には、底面58Dが形成されている。小径部58Bは、上穴部58の軸方向の上部を構成する。上穴部58には、後述する被覆部72の軸方向の下部及び張出部78(
図4)が固定されている。このように、支持部62は、固定部55(ハウジング42)に固定されている。
【0026】
図4に示されるように、筒部59は、固定部55の上面55Aから軸方向に沿って直立している。筒部59は、縦壁部の一例であり円筒状に形成されている。筒部59は、内周面59Aと、外周面59Bと、上面59Cと、を有する。筒部59の軸方向の高さは、固定部55の軸方向の高さよりも低い。筒部59の中心軸は、第2軸線C2上に位置している。筒部59は、軸方向の上側から見た場合、後述する被覆部72を囲んでいる。さらに、内周面59Aは、被覆部72と接触している。
【0027】
<支持部>
図3に示されるように、支持部62は、金属製の軸部64と、軸部64を覆う樹脂製の被覆部72と、を備えている。支持部62の中心軸の位置は、軸部64の中心軸の位置と揃えられている。また、支持部62の中心軸は、第2軸線C2上に位置している。支持部62は、ウォームホイール44を回転自在に支持している。
【0028】
(軸部)
図4に示されるように、軸部64は、一例として、円柱状の丸鋼棒からなる。軸部64は、外周面64Aを有する。外周面64Aは、後述する外周面66C及び外周面68Aを含む。具体的には、軸部64は、ハウジング42の内側に位置する内側軸部66と、ハウジング42の外側に位置する外側軸部68と、を有する。内側軸部66と外側軸部68とは、一例として、同じ金属材料から成り、一体に成形されている。
【0029】
「ハウジング42の外側」とは、ハウジング42の表面に対する外側を意味しており、ハウジング42は含まない。「ハウジング42の内側」とは、ハウジング42の表面及びハウジング42の内部を含む。本実施形態では、軸方向の位置に基づいて、ハウジング42の内側と外側を区分する。ハウジング42は、穴部56を有している。そして、穴部56には、支持部62の一部が埋設されている。ここで、穴部56の開口の周縁部における表面59C(
図4)の位置をハウジング42の表面の位置とみなして、ハウジング42の内側と外側を区分する。つまり、穴部56の内側の空間は、「ハウジング42の内側」に含まれている。以下、ハウジング42の内側と外側の区分について、仮想面M1(
図4)を用いて説明する。
【0030】
図4では、仮想面M1が二点鎖線で示されている。仮想面M1は、内側軸部66と外側軸部68とを軸方向の上下に区分する仮想の境界面である。内側軸部66と外側軸部68とは、軸部64を構成する部位が、ハウジング42に対する内側の位置又は外側の位置に応じて2つに区分されたものである。軸方向における仮想面M1の位置は、上面59Cの位置と揃えられている。なお、内側軸部66と外側軸部68とをそれぞれ別部材で構成すると共に接合することで、軸部64を成形してもよい。外側軸部68は、外周面68Aと、軸方向の上端に位置する上端面68Bと、を有する。
【0031】
内側軸部66は、下軸部66Aと、上軸部66Bと、を有する。下軸部66Aと上軸部66Bとは、同じ材料から成り、一体に形成されている。
図4では、仮想面M2が二点鎖線で示されている。仮想面M2は、下軸部66Aと上軸部66Bとを軸方向の上下に区分する仮想の境界面である。つまり、下軸部66Aと上軸部66Bとは、内側軸部66を構成する部位が軸方向の上下の位置に応じて2つに区分されたものである。なお、下軸部66Aと上軸部66Bとをそれぞれ別部材で構成すると共に接合することで、内側軸部66を成形してもよい。軸方向における仮想面M2の位置は、後述する下面81Aの位置と揃えられている。
【0032】
下軸部66Aは、固定部55に接触している。換言すると、下軸部66Aは、固定部55に直接、固定されている。上軸部66Bの外周面66Cは、後述する被覆部72に覆われている。そして、被覆部72は、固定部55に固定されている。つまり、上軸部66Bは、被覆部72を介して固定部55に間接的に固定されている。
【0033】
(被覆部)
図4に示されるように、被覆部72は、ハウジング42の内側に位置する内側被覆部74と、ハウジング42よりも外側に位置する外側被覆部76と、内側被覆部74に設けられた張出部78と、を有する。内側被覆部74及び張出部78と、外側被覆部76とは、仮想面M2によって区分されている。被覆部72は、軸方向の上端部に上壁72Aを有する有底の円筒状に形成されている。換言すると、被覆部72は、軸方向の下側に向けて開口する穴部73を有している。
【0034】
本実施形態において、内側被覆部74と外側被覆部76と張出部78とは、同じ材料から成り一体に成形されている。内側被覆部74及び張出部78と、外側被覆部76とは、被覆部72を構成する部位がハウジング42に対する内側の位置又は外側の位置に応じて2つに区分されたものであり、それぞれ視認可能な境界を有するものではない。なお、内側被覆部74と、外側被覆部76及び張出部78と、をそれぞれ別部材で構成すると共に接合することで、被覆部72を成形してもよい。また、内側被覆部74と張出部78とをそれぞれ別部材で構成すると共に接合することで、張出部78を成形してもよい。
【0035】
内側被覆部74の内径の大きさと外側被覆部76の内径の大きさとは、ほぼ等しい。内側被覆部74の外径の大きさと外側被覆部76の外径の大きさとは、ほぼ等しい。
【0036】
外側被覆部76は、外周面68A及び上端面68Bを覆っている。つまり、外側被覆部76は、外側軸部68の全体を覆っている。また、外側被覆部76は、外周面76Aを有する。
【0037】
内側被覆部74は、内側軸部66の軸方向の少なくとも一部を覆う部位の一例である。内側被覆部74は、内側軸部66の軸方向の上部を覆っている。さらに、内側被覆部74は、ハウジング42に埋設されている。内側被覆部74は、上軸部66Bの外周面66Cを覆っている。なお、内側被覆部74が、内側軸部66の全体を覆ってもよい。
【0038】
張出部78は、内側被覆部74から交差方向に張り出された部位である。具体的には、張出部78は、内側被覆部74から軸部64の径方向(交差方向の一例)の外側に張り出されている。さらに、張出部78は、ハウジング42の外側から軸方向に見た場合、ハウジング42に覆われている。換言すると、張出部78は、ハウジング42に埋設されると共に、上面55A及び上面59Cに対する下側に位置している。なお、
図4では、仮想面Kが二点鎖線で示されている。仮想面Kは、内側被覆部74と張出部78とを交差方向の内側と外側とに区分する仮想の境界面である。
【0039】
図5に示されるように、張出部78は、軸方向に所定の厚さを有する円板状に形成されている。張出部78は、外周面78Aを有する。張出部78には、軸部64の径方向に開口した切欠部79が形成されている。切欠部79は、軸部64の周方向に間隔をあけて対向する対向面79A及び対向面79Bを有する。また、切欠部79は、一例として、軸部64の周方向に等間隔に4つ形成されている。さらに、4つの切欠部79は、それぞれ外周面78Aから外周面64Aまで切り欠かれている。換言すると、4つの切欠部79は、軸方向から見た場合、軸部64から放射状に延びている。張出部78は、4つの切欠部79によって、4つの円弧部81に分割されている。円弧部81の軸方向の下端には、下面81Aが形成されている。
【0040】
<Oリング>
図4に示されるように、Oリング84は、シール部材の一例であり、ゴム製の部材である。Oリング84は、貫通孔84Aを有する。貫通孔84Aには、支持部62が挿通されている。Oリング84は、上面59Cと被覆部72とに接触している。具体的には、Oリング84は、上面59Cと外周面76Aとに接触することで、筒部59と被覆部72との隙間Sを軸方向の上側から塞いでいる。また、Oリング84は、ウォームホイール44の一部と接触することで、軸方向の上側から加圧されている。
【0041】
<製造方法>
次に、ハウジング42の製造工程について説明する。なお、減速機構付モータ10については、ハウジング42の完成後、ハウジング42に対して、Oリング84、ウォームホイール44、カバー部材48(
図3)等の各部材と、モータ部20(
図1)とが取り付けられることで出来上がる。
【0042】
(支持部の成形工程)
図6に示されるように、支持部62は、射出成形装置150によって成形される。射出成形装置150は、一例として、下金型152と、上金型154と、ディスペンサ158とを備えている。下金型152及び上金型154には、支持部62を成形するための複数の凹凸が形成されている。上金型154には、不図示の溶融樹脂が流通する供給通路156が設けられている。供給通路156における入口側には、ディスペンサ158が設けられている。ディスペンサ158は、不図示の溶融樹脂を供給通路156へ所定の圧力で供給する。ここで、下金型152に軸部64の下軸部66Aが固定された後、下金型152と上金型154とが突き合わされた状態で、ディスペンサ158から溶融樹脂が射出される。そして、下金型152及び上金型154が冷却された後、上金型154が離れることで、支持部62が出来上がる。支持部62が成形される工程を第1インサート成形工程とする。
【0043】
(ハウジングの成形工程)
図7には、支持部62及び射出成形装置160が示されている。射出成形装置160は、一例として、下金型162と、上金型164と、ディスペンサ168とを備えている。下金型162及び上金型164には、ハウジング42(
図2)を成形するための複数の凹凸が形成されている。上金型164には、不図示の溶融樹脂が流通する供給通路166が設けられている。供給通路166における入口側には、ディスペンサ168が設けられている。ディスペンサ168は、溶融樹脂を供給通路156へ所定の圧力で供給する。ここで、下軸部66Aが上側に位置するように、被覆部72が下金型162に固定された後、下金型162と上金型164とが突き合わされた状態で、ディスペンサ168から溶融樹脂が射出される。
【0044】
図8に示されるように、下金型162及び上金型164が不図示の冷却部によって冷却された後、上金型164が離れることで、ハウジング42が出来上がる。ハウジング42が成形される工程を第2インサート成形工程とする。なお、支持部62を構成する樹脂と、ハウジング42を構成する樹脂とは、同じ樹脂、異なる樹脂のいずれであってもよい。
【0045】
〔本実施形態の作用〕
図3及び
図4に示されるように、減速機構付モータ10によれば、支持部62が金属製の軸部64と樹脂製の被覆部72とを備えているので、支持部62全体が金属製のものに比べて、減速機構付モータ10の重量を低減することができる。さらに、外側軸部68の全体が外側被覆部76で覆われていることで、外側軸部68が大気と接触することが抑制される。加えて、内側軸部66の少なくとも一部(上軸部66B)が内側被覆部74によって覆われることで、上軸部66Bが大気と接触することが抑制される。このように、被覆部72が、ハウジング42の外側と内側の両方で軸部64を覆っていることにより、大気中の水分と軸部64との接触が抑制されるので、金属製の軸部64が大気中に露出されるものと比べて、軸部64の錆の発生を抑制することができる。なお、軸部64が大気と接触することが抑制されることから、軸部64をメッキする工程が不要となる。
【0046】
減速機構付モータ10によれば、張出部78が内側被覆部74から交差方向に張り出されている。このため、ハウジング42の外側から隙間Sを通って軸部64に到達するまでの経路の長さが、張出部78が無い構成に比べて、張出部78の表面に沿った経路の分だけ長くなる。これにより、水分を含む大気が、ハウジング42の外側から軸部64へ到達することを抑制できる。つまり、軸部64の錆の発生を抑制することができる。なお、張出部78は樹脂製であるため、金属加工の工程は不要である。
【0047】
図9に示されるように、減速機構付モータ10では、ウォームホイール44(
図1)がモータ部20によって回転された場合、ウォームホイール44を支持する支持部62に対して力が作用する可能性がある。具体的には、ウォームホイール44の回転に伴って、張出部78(支持部62)に対して軸方向の上側に向かう引抜力F1が作用する可能性がある。ここで、ハウジング42の一部が張出部78よりも軸方向の外側(上側)に位置していることで、張出部78と天面58Cとが接触している。換言すると、軸方向の上側から見た場合、ハウジング42の一部が張出部78を覆っている。これにより、張出部78は、天面58Cから反力F2を受ける。つまり、張出部78とハウジング42の一部との接触により引抜力F1に抵抗するので、支持部62がハウジング42から引き抜かれることを抑制できる。
【0048】
図10に示されるように、減速機構付モータ10によれば、ウォームホイール44(
図1)が回転された場合、支持部62に対してウォームホイール44の回転方向の力F3が作用する可能性がある。ここで、張出部78(内側被覆部74)がハウジング42に埋設されていることで、切欠部79の内側にはハウジング42の一部が充填されている。このため、ハウジング42から張出部78に対して反力F4が作用する。反力F4は、力F3に抵抗する。このように、ウォームホイール44の回転方向に沿った内側被覆部74の移動が、ハウジング42の一部との接触によって制限されるので、支持部62が、ハウジング42に対して第2軸線C2の周りに相対的に回転することを抑制することができる。
【0049】
図6及び
図10に示されるように、減速機構付モータ10によれば、支持部62の形成時に、切欠部79が軸部64まで切り欠かれていないものと比べて、軸部64の露出されている範囲が広くなっている。これにより、支持部62の形成において軸部64を下金型152に固定する場合、軸部64の保持可能な範囲を広く確保できるので、軸部64が下金型152に対して傾くことを抑制することができる。
【0050】
図4に示されるように、減速機構付モータ10によれば、筒部59を有していないものと比べて、ハウジング42の外側から固定部55の内側に位置する軸部64までの経路の長さが、筒部59と被覆部72との隙間Sの軸方向の長さに相当する分だけ長くなる。これにより、水分を含む大気が、固定部55の内側に位置する軸部64へ到達することを抑制することができる。つまり、軸部64の錆の発生を抑制することができる。
【0051】
減速機構付モータ10によれば、Oリング84が筒部59と被覆部72との隙間Sを塞ぐことで、水分を含む大気が、筒部59と被覆部72との隙間Sから軸部64に向かうことが制限される。これにより、軸部64における錆の発生を抑制することができる。また、Oリング84がウォームホイール44の一部によって上側から加圧されることで、Oリング84と筒部59及び被覆部72との密着性を高めることができる。さらに、拡幅部44B(
図3)の内側に筒部59が入り込んでいることで、ウォームホイール44と、筒部59と、被覆部72とでほぼ密閉された空間が形成されている。ここで、Oリング84の位置が軸方向にずれることがあっても、当該密閉空間が形成されていることで、隙間S(
図4)への大気の侵入を抑制することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態によれば、上述のように軸部64のメッキ工程が不要となることで、製造エネルギーの省力化を図ることができ、且つ製品毎に支持部62の大きさがばらつくことを抑制して不良品の発生を抑えることができる。これにより、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)及び目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することが可能となる。
【0053】
<変形例>
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。以下、変形例について説明する。
【0054】
モータ装置は、減速機構付モータ10に限定されず、減速機構を有していないものであってもよい。駆動対象物は、ウォームホイール44に限定されず、例えば、支持部62に巻き掛けられたベルトであってもよい。縦壁部は、筒部59のように円筒状のものに限らない。例えば、被覆部72のうち縦壁部と対向する部分の外形が多角形状の場合、縦壁部が多角形状の部位として形成されればよい。シール部材は、Oリング84に限定されない。例えば、上面59Cと被覆部72とに跨るように樹脂を塗布し、当該樹脂を硬化させることでシール部材を形成してもよい。
【0055】
減速機構付モータ10において、張出部78が設けられていなくてもよい。また、内側被覆部74がハウジング42に埋設されている構成であれば、張出部78の上面が上面55Aにおいて露出されてもよい。張出部78には、切欠部79が形成されていなくてもよい。切欠部79は、軸部64まで切り欠かれていなくてもよい。減速機構付モータ10において、筒部59が設けられていなくてもよい。また、Oリング84が設けられていなくてもよい。
【0056】
支持部62は、例えば、第1インサート成形工程後に下軸部66Aに樹脂が塗布されることにより、被覆部72が軸部64の全体を覆うものとして成形されてもよい。そして、軸部62の全体が被覆部72で覆われたものの軸方向の一部を型に固定して、第2インサート成形工程を行ってもよい。
【0057】
なお、本実施形態では、一例として、軸部64の軸方向が鉛直方向に沿っている場合について、上側、下側を区別したが、軸部64の軸方向が水平方向に沿っている場合には、右側、左側、あるいは、前側、後側として区別してもよい。さらに、軸部64の軸方向が、鉛直方向及び水平方向の両方と交差する方向に沿っていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:速機構付モータ,14:締結ねじ,20:モータ部,22:ヨーク,
23:マグネット,24:アーマチュア,26:アーマチュア軸,28:軸受,
32:整流子,34:ウォーム軸,34A:ウォーム,40:ギヤ部,
42:ハウジング,44:ウォームホイール,44A:孔部,44B:拡幅部,
44C:歯部,44D:セレーション出力部,46:本体部,47:固定脚,
48:カバー部材,49:摺接部材,52:収容部,53:底壁部,53A:摺接部,
54:周壁部,55:固定部,55A:上面,56:穴部,57:下穴部,
58:上穴部,58A:大径部,58B:小径部,58C:天面,58D:底面,
59:筒部,59A:内周面,59B:外周面,59C:上面,61:コネクタ接続部,
62:支持部,64:軸部,64A:外周面,66:内側軸部,66A:下軸部,
66B:上軸部,66C:外周面,68:外側軸部,68A:外周面,68B:上端面,
72:被覆部,72A:上壁,73:穴部,74:内側被覆部,76:外側被覆部,
76A:外周面,78:張出部,78A:外周面,79:切欠部,79A:対向面,
79B:対向面,81:円弧部,81A:下面,84:Oリング,84A:貫通孔,
150:射出成形装置,152:下金型,154:上金型,156:供給通路,
158:ディスペンサ,160:射出成形装置,162:下金型,164:上金型,
166:供給通路,168:ディスペンサ,C1:第1軸線,C2:第2軸線,
F1:引抜力,F2:反力,F3:力,F4:反力,K:仮想面,M1:仮想面,
M2:仮想面,S:隙間