(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065501
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ファーストクリップマクラギ緊締装置
(51)【国際特許分類】
E01B 29/06 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E01B29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174400
(22)【出願日】2022-10-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年11月12日に大鉄工業株式会社のホームページにて本願発明の実施品である「ファーストクリップまくらぎ緊締装置」をカタログ(PDF)により公表。 (2)令和3年11月12日に大鉄工業株式会社のホームページにて本願発明の実施品である「ファーストクリップまくらぎ緊締装置」を動画(映像)により公表。 (3)令和3年11月24日(水)~26日(金)に幕張メッセで開催された「第7回鉄道技術展2021」にて本願発明の実施品である「ファーストクリップまくらぎ緊締装置」をカタログ(PDF)と共に発表。 (4)令和4年2月7日(月)に山陽新幹線の姫路基地線の兵庫県姫路市四郷町付近にて本願発明の実施品である「ファーストクリップまくらぎ緊締装置」の試験施工を行い公表。
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390041379
【氏名又は名称】株式会社山崎歯車製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】北村 希
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士
(72)【発明者】
【氏名】山崎 清水
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057BA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マクラギを吊り上げてクリップによってマクラギにレールを緊締する際に、マクラギの緊諦作業の手間や時間を削減する。
【解決手段】マクラギ3にレール2を固定するクリップを緊締するクリップ締結機構部19がそれぞれ設けられた左右の脚部11,12と、左右の脚部11,12の上端部間を連結するように設けられた吊下げ梁13と、吊下げ梁13上を移動するトロリ15と、トロリ15に吊り下げられチェーン16bのマクラギ把持部18によりマクラギ3を掴んでマクラギ3を上昇させる電動チェーンブロック16とを備え、マクラギ把持部18の上部には、鉛直方向に突出したガイド用突出部18c,18cが設けられている一方、左右の脚部11,12の間には、ガイド用突出部18cの上昇を案内してマクラギ3の吊上げを案内するマクラギ上昇ガイド部17を設けている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に左右のレール上をそれぞれ走行する車輪が設けられる共に、マクラギのショルダーにクリップを押し込んでマクラギにレールを緊締するクリップ締結機構部が設けられた左右の脚部と、
前記左右の脚部の上部同士を連結するように設けられた吊下げ梁と、
前記吊下げ梁に設けられ、巻上げ部材下端に設けたマクラギ把持部によりマクラギを掴んで前記巻上げ部材を巻き上げてマクラギを吊上げる吊上げ機とを備え、
前記マクラギ把持部の上部には、鉛直方向に突出したガイド用突出部が設けられている一方、
前記左右の脚部の間には、前記ガイド用突出部の上昇を案内してマクラギの吊上げを案内するマクラギ上昇ガイド部が設けられていることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【請求項2】
請求項1記載のファーストクリップマクラギ緊締装置において、
前記マクラギ把持部は、
前記巻上げ部材が長手方向の中間点に連結された天秤式マクラギ吊上げバーと、
その天秤式マクラギ吊上げバーの両端部にそれぞれマクラギキャッチ部とを備え、
前記ガイド用突出部は、前記天秤式マクラギ吊上げバーの長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、鉛直方向に向かってレールの長手方向の横幅が一定のマクラギ上昇被ガイド部と、
前記マクラギ上昇被ガイド部の上端部に連続して設けられ、上方に向かうに従ってレールの長手方向の幅が前記マクラギ上昇被ガイド部の幅から徐々に小さくなるガイド用突出部誘導部とが設けられており、
前記マクラギ上昇ガイド部には、レールの長手方向に前記マクラギ上昇被ガイド部の横幅と同じ間隔だけ空けたガイド空間部が設けられていることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【請求項3】
請求項2記載のファーストクリップマクラギ緊締装置において、
マクラギの上側面の中央部には、長方形状に凹んだ凹部が設けられており、
前記マクラギキャッチ部には、
前記天秤式マクラギ吊上げバーの下方に前記天秤式マクラギ吊上げバーの長手方向と平行で、かつ、前記凹部の長さと同じ長さで設けられ、前記クロスリンク式挟持部がマクラギを挟持する際、マクラギ上側面の前記凹部に嵌ってマクラギにおける吊り位置を決める吊り位置決め平行部材が設けられていることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【請求項4】
請求項3記載のファーストクリップマクラギ緊締装置において、
前記吊り位置決め平行部材の中央には、前記天秤式マクラギ吊上げバーの長手方向と直交する方向で、かつ、前記凹部の幅と同じ長さで、前記クロスリンク式挟持部がマクラギを挟持する際、マクラギ上側面の前記凹部に嵌ってマクラギにおける吊り位置を決める吊り位置決め直交部材が設けられていることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【請求項5】
請求項3記載のファーストクリップマクラギ緊締装置において、
前記マクラギキャッチ部は、
前記天秤式マクラギ吊上げバーの下側に設けられ、先端にツメ部を有し、回転軸部を中心に回転可能に連結されてマクラギを挟持する一対のクロスリンク式挟持部と、
前記吊り位置決め平行部材と前記天秤式マクラギ吊上げバーとの間に設けられ、前記クロスリンク式挟持部先端が広がるように常時、引張力を加える引張バネとを有していることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一の請求項に記載のファーストクリップマクラギ緊締装置において、
前記マクラギ上昇ガイド部は、前記吊下げ梁の鉛直方向の下方であって、前記レールの長手方向と直交する軌間方向に延び、かつ、前記マクラギ上昇被ガイド部の横幅と同じ間隔だけ空けた2本のガイド棒を有し、そのガイド棒間によって前記ガイド空間部を構成し、
前記吊下げ梁には、さらに、当該吊下げ梁の長手方向に移動可能に設けられ、前記吊上げ機を前記吊下げ梁の長手方向に移動させるトロリが設けられていることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【請求項7】
請求項6記載のファーストクリップマクラギ緊締装置において、
前記左右の脚部の内、少なくとも一方の脚部には、前記吊下げ梁の高さを調整する梁傾斜調整機構部が設けられていることを特徴とするファーストクリップマクラギ緊締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレールを支えるマクラギを吊り上げて、マクラギのショルダーにクリップを押し込んでマクラギにレールを緊締するファーストクリップマクラギ緊締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレールはマクラギの上に敷設されているが、マクラギは長年の使用によって経年変化をするため、一定期間毎に新しいものと交換している。例えば、レール上を走行可能な車輪が下端部に設けられた左右の脚部の上端部に吊下げ梁を設け、その吊下げ梁にチェーンブロック等の吊上げ機を設け、その吊上げ機によって昇降するチェーンによってマクラギを吊り上げてレールに緊諦する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の従来装置では、吊上げ機によって昇降する1本のチェーン下端に長尺の天秤式マクラギ吊りバー(特許文献1では「支持杆」)を設け、その天秤式マクラギ吊りバーの両端部に設けたフックによってマクラギを吊り上げ、マクラギとレールとを緊締するため、マクラギが回転したり揺れる場合があり、レールに対するマクラギの位置調整作業が必要であり、マクラギの交換作業に手間と時間がかかるという問題があった。
【0005】
特に、鉄道軌道においては、ボルト緊締タイプのマクラギからクリップ緊締タイプのマクラギへの置き換えが順次進められており、マクラギ緊諦作業を行い易い直線区間では、大型機械の導入により工事を進められている一方、分岐器周辺や左右のレールに高低差(カント)が付いたカーブ区間等では、大型機械を使用できず、作業者による緊諦作業となっており、限られた人員、時間でより多くのマクラギ交換を進めるためには、作業負担軽減、省人化を図り、マクラギ緊諦作業の効率向上が必須となっていた。
【0006】
そこで、本発明はこのような種々の問題点に着目してなされたもので、マクラギを吊り上げてクリップによってマクラギにレールを緊締する際に、マクラギの緊諦作業の手間や時間を削減することができるファーストクリップマクラギ緊締装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置は、下端部に左右のレール上をそれぞれ走行する車輪が設けられる共に、マクラギのショルダーにクリップを押し込んでマクラギにレールを緊締するクリップ締結機構部が設けられた左右の脚部と、前記左右の脚部の上部同士を連結するように設けられた吊下げ梁と、前記吊下げ梁に設けられ、巻上げ部材下端に設けたマクラギ把持部によりマクラギを掴んで前記巻上げ部材を巻き上げてマクラギを吊上げる吊上げ機とを備え、前記マクラギ把持部の上部には、鉛直方向に突出したガイド用突出部が設けられている一方、前記左右の脚部の間には、前記ガイド用突出部の上昇を案内してマクラギの吊上げを案内するマクラギ上昇ガイド部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、前記マクラギ把持部は、前記巻上げ部材が長手方向の中間点に連結された天秤式マクラギ吊上げバーと、その天秤式マクラギ吊上げバーの両端部にそれぞれマクラギキャッチ部とを備え、前記ガイド用突出部は、前記天秤式マクラギ吊上げバーの長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、鉛直方向に向かってレールの長手方向の横幅が一定のマクラギ上昇被ガイド部と、前記マクラギ上昇被ガイド部の上端部に連続して設けられ、上方に向かうに従ってレールの長手方向の幅が前記マクラギ上昇被ガイド部の幅から徐々に小さくなるガイド用突出部誘導部とが設けられており、前記マクラギ上昇ガイド部には、レールの長手方向に前記マクラギ上昇被ガイド部の横幅と同じ間隔だけ空けたガイド空間部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、マクラギの上側面の中央部には、長方形状に凹んだ凹部が設けられており、前記マクラギキャッチ部には、前記天秤式マクラギ吊上げバーの下方に前記天秤式マクラギ吊上げバーの長手方向と平行で、かつ、前記凹部の長さと同じ長さで設けられ、前記クロスリンク式挟持部がマクラギを挟持する際、マクラギ上側面の前記凹部に嵌ってマクラギにおける吊り位置を決める吊り位置決め平行部材が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、前記吊り位置決め平行部材の中央には、前記天秤式マクラギ吊上げバーの長手方向と直交する方向で、かつ、前記凹部の幅と同じ長さで、前記クロスリンク式挟持部がマクラギを挟持する際、マクラギ上側面の前記凹部に嵌ってマクラギにおける吊り位置を決める吊り位置決め直交部材が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、前記マクラギキャッチ部は、前記天秤式マクラギ吊上げバーの下側に設けられ、先端にツメ部を有し、回転軸部を中心に回転可能に連結されてマクラギを挟持する一対のクロスリンク式挟持部と、前記吊り位置決め平行部材と前記天秤式マクラギ吊上げバーとの間に設けられ、前記クロスリンク式挟持部先端が広がるように常時、引張力を加える引張バネとを有していることも特徴とする。
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、前記マクラギ上昇ガイド部は、前記吊下げ梁の鉛直方向の下方であって、前記レールの長手方向と直交する軌間方向に延び、かつ、前記マクラギ上昇被ガイド部の横幅と同じ間隔だけ空けた2本のガイド棒を有し、そのガイド棒間によって前記ガイド空間部を構成し、前記吊下げ梁には、さらに、当該吊下げ梁の長手方向に移動可能に設けられ、前記吊上げ機を前記吊下げ梁の長手方向に移動させるトロリが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、前記左右の脚部の内、少なくとも一方の脚部には、前記吊下げ梁の高さを調整する梁傾斜調整機構部が設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置では、マクラギ把持部の上部には鉛直方向に突出したガイド用突出部を設ける一方、左右の脚部にはそれぞれマクラギのショルダーにクリップを押し込んでマクラギにレールを緊締するクリップ締結機構部を設けると共に、左右の脚部間にガイド用突出部の上昇を案内してマクラギの吊上げを案内するマクラギ上昇ガイド部を設けている。
そのため、マクラギを吊り上げる際、マクラギの回転等を防止し、レールに対し直角にマクラギを維持してマクラギ締結位置へマクラギを誘導し、クリップ締結機構部によってマクラギにレールを緊締することができるので、マクラギの緊諦作業の手間や時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置の斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置の正面図である。
【
図3】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置の左側面図、右側面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置の平面図である。
【
図6】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置におけるマクラギキャッチ部によってマクラギを挟持する直前の状態を示す要部平面図、要部正面図である。
【
図8】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置におけるマクラギキャッチ部によってマクラギを挟持し吊上げた状態を示す要部平面図、要部正面図である。
【
図10】本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置によりレールのカーブ区間等において吊下げ梁の中心でマクラギを吊り上げた状態を示す正面図である。
【
図11】本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置によりレールのカーブ区間等においてトロリで電動チェーブロックを移動させて吊下げ梁の中心からズレた位置でマクラギを吊り上げた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、下記に説明する実施形態は、あくまで、本発明の一例であり、本発明は、下記に説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜改変可能である。
【0011】
<実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1の構成>
本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1は、
図1~
図2に示すように左右の脚部11,12と、吊下げ梁13と、アウトリガー部14と、トロリ15と、電動チェーンブロック16と、マクラギ上昇ガイド部17と、マクラギ把持部18と、クリップ締結機構部19,19と、油圧ポンプ20a等を備え、発電機20bを搭載し、マクラギ3を吊り上げながらマクラギ3のショルダー31にクリップ32を押し込んでマクラ3にレール2を緊締するように構成されている。
【0012】
(脚部11)
図2において左側の脚部11は、梁傾斜調整機構部11fが設けられた脚部であって、下端部にレール2上を走行する前輪11a1が前輪支持部11a2に回転可能に設けられた前側脚部11aと、下端部にレール2上を走行する後輪11b1が後輪支持部11b2に回転可能に設けられた後側脚部11bと、前側脚部11aの下方内側面と後側脚部11bの下方内側面とを水平に連結するように両端部が溶接された下側連結バー11cと、下側連結バー11cよりも高い位置で前側脚部11a内側面と後側脚部11b内側面とを水平に連結する中間連結バー11dと、前側脚部11aの上端部と後側脚部11bの上端部とが溶接等によって接合された上側連結バー11eとを有し、側面視、長方形状に形成されており、中間連結バー11dと上側連結バー11eとの間に梁傾斜調整機構部11fが設けられている。
【0013】
梁傾斜調整機構部11fは、中間連結バー11dと上側連結バー11eとの間に回転可能に設けられた全ネジ棒11f1と、全ネジ棒11f1を回転させるハンドル11f2と、全ネジ棒11f1の雄ネジ部に螺合して雌ネジ部が螺合して全ネジ棒11f1の回転によって昇降する昇降体11f3と、昇降体11f3に設けられ、吊下げ梁13の左端部下側面を回動可能に支持する吊下げ梁左端部回動支持部11f4等で構成され、ハンドル11f2の回転によって吊下げ梁13の左端部を昇降させるように構成されている。
【0014】
また、下側連結バー11c下方には、マクラギ3にレール2を緊締するためのクリップ締結機構部19が設けられている。
【0015】
(脚部12)
図2において右側の脚部12は、梁傾斜調整機構部11fが設けられていない側の脚部であって、下端部にレール2上を走行する前輪12a1が前輪支持部12a2に回転可能に設けられた前側脚部12aと、下端部にレール2上を走行する後輪12b1が後輪支持部12b2に回転可能に設けられた後側脚部12bと、前側脚部12aの下方内側面と後側脚部12bの下方内側面とを水平に連結するように両端部が溶接された下側連結バー12cと、前側脚部12aの上端部と後側脚部12bの上端部とが溶接等によって接合された上側連結バー12dとを有し、側面視、長方形状に形成されており、上側連結バー12dの上側面に設けられ吊下げ梁13の右端部を回動可能に支持する吊下げ梁右端部回動支持部12eが設けられている。
【0016】
尚、下側連結バー12c下方にも、左側の脚部11と同様にマクラギ3にレール2を緊締するためのクリップ締結機構部19が設けられている。
【0017】
(吊下げ梁13)
吊下げ梁13は、左端部は左側の脚部11に設けられた梁傾斜調整機構部11fの吊下げ梁左端部回動支持部11f4に回動可能に支持される一方、右端部は右側の脚部12の吊下げ梁右端部回動支持部12eに回動可能に支持され,梁傾斜調整機構部11fのハンドル11f2の回転によって昇降体11f3が昇降して傾斜するように構成されている。
【0018】
また、吊下げ梁13には、後述するようにトロリ15が設けられ、吊下げ梁13の長手方向の移動(走行)できるように構成されているものの、通常、トロリ15は吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)に位置させ、電動チェーンブロック16が吊下げ梁13の長手方向の中間点にてマクラギ3の吊上げを行うため、吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)や、その中間点から一定間隔で刻んだメモリが刻印されている。
【0019】
(アウトリガー部14)
アウトリガー部14は、左右の脚部11,12それぞれの後側脚部11b,12bの下端部に連結されレール2の長手方向に延び、アウトリガー用車輪14a1,14a1が設けられたアウトリガー用レール平行フレーム14a,14aと、アウトリガー用レール平行フレーム14a,14a間に所定間隔を空けて設けられたアウトリガー用レール垂直フレーム14b,14bとで構成されており、アウトリガー用レール垂直フレーム14b,14bには荷台プレート(図示せず。)等を介して油圧ポンプ20aと発電機20b等が搭載されている。
【0020】
(トロリ15)
トロリ15は、ハンドル15bの回転によって回転する車輪15aが設けられている共に、電動チェーンブロック16の後述する上部フック16aが掛止される掛止部15cが設けられており、吊下げ梁13の長手方向で前後動させて電動チェーンブロック16の位置を変更できるように構成している。
【0021】
(電動チェーンブロック16)
電動チェーンブロック16は、上側にトロリ15の掛止部15cに掛止される上部フック16aが設けられており、発電機20bが発電した電源電流を駆動電流とし、作業員が操作するリモコン(図示せず。)等からの指令に基づき内蔵モータ(図示せず。)を回転させてチェーン16bを昇降させる電動式の昇降機構部で、チェーン16b下端部の荷吊りフック16cでマクラギ把持部18を介しマクラギ3を吊り上げる周知のものである。尚、本発明では、昇降機構部は、電動チェーンブロック16に限らず手動式チェーンブロックでも勿論良い。
【0022】
(マクラギ上昇ガイド部17)
マクラギ上昇ガイド部17は、後述する天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向の両端部の上部に突出して設けたガイド用突出部18c,18cをガイドしてマクラギ上昇時の回転を防止する部材で、脚部11の下側連結バー12cと脚部12の下側連結バー12cとの間に設けられたマクラギ上昇ガイド梁17aと、マクラギ上昇ガイド梁17aの下側面に吊下げ梁13の長手方向に所定の間隔を空けて設けた一対のガイド棒吊り部17b,17bと、ガイド棒吊り部17b,17b間に後述するマクラギ上昇被ガイド部18c1の横幅と同じ間隔だけ空け、マクラギ上昇被ガイド部18c1をガイドするガイド空間部17c1(
図1や
図5等参照。)を形成する一対のガイド棒17c,17cとで構成されている。
【0023】
(マクラギ把持部18)
マクラギ把持部18は、電動チェーンブロック16のチェーン16bによって吊下げられ、マクラギ3を把持する機構で、天秤式マクラギ吊上げバー18aと、マクラギキャッチ部18bと、ガイド用突出部18c等を備える。
【0024】
天秤式マクラギ吊上げバー18aは、マクラギ3よりも短尺で構成されており、上部には電動チェーンブロック16のチェーン16b下端部の荷吊りフック16cが掛止する丸環18a1が設けられ、長手方向の両端部の下側にはそれぞれマクラギキャッチ部18bが設けられている一方、長手方向の両端部の上側にはそれぞれガイド用突出部18cが設けられている。
【0025】
また、天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向の両端部には、それぞれ、引張バネ18b5の上端部が掛止される引張バネ掛止部18a2が設けられている。
【0026】
マクラギキャッチ部18bは、それぞれ、先端にツメ部18b11が設けられ、回転軸部18b2を中心に回転可能に連結され、マクラギ3を挟持する一対のクロスリンク式挟持部18b1,18b1と、クロスリンク式挟持部18b1,18b1の回転軸部18b2の下方で天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向に設けられ、クロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギを挟持した際、マクラギ3の上面に接触ないしは近接してマクラギ3における吊り位置を決める吊り位置決め平行パイプ18b3と、吊り位置決め平行パイプ18b3の中央から直交する方向に延びる吊り位置決めマクラギ直交パイプ18b4と、吊り位置決め平行パイプ18b3と天秤式マクラギ吊上げバー18a両端部の掛止部18a2との間に設けられ、マクラギ3を吊り上げてのレール2,2への緊締完了後等にクロスリンク式挟持部18b1,18b1を下降させてクロスリンク式挟持部18b1,18b1からマクラギ3の荷重を開放させた際、クロスリンク式挟持部18b1,18b1先端が広がるように引張力を常時、加える引張バネ18b5等で構成されている。
【0027】
尚、天秤式マクラギ吊上げバー18a両端部それぞれのクロスリンク式挟持部18b1,18b1は、挟持部連結バー18b12によって連結されている。
【0028】
ガイド用突出部18cは、天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向の両端部の上部に突出して設けられ、マクラギ上昇ガイド部18の一対のガイド棒17c,17cによりガイドされてマクラギ3の吊上げを案内する部材で、マクラギ上昇被ガイド部18c1と、ガイド用突出部誘導部18c2とで構成されている。
【0029】
マクラギ上昇被ガイド部18c1は、天秤式マクラギ吊上げバー17aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、鉛直方向に向かってレールの長手方向の横幅が一対のガイド棒17c,17c間の間隔、つまりガイド空間部17c1の間隔とほぼ同じか僅かに小さく一定で、ガイド用突出部18cの上昇を案内してマクラギ3の吊上げを案内する部分である。
【0030】
ガイド用突出部誘導部18c2は、マクラギ上昇被ガイド部18c1の上端部に連続して設けられ、上方に向かうに従ってレール2の長手方向の幅がマクラギ上昇被ガイド部18c1の幅から徐々に小さくなり、一対のガイド棒17c,17c間への挿入を誘導する部分である。
【0031】
(クリップ締結機構部19)
クリップ締結機構部19は、左右の脚部11,12それぞれの下端部に設けられ、マクラギ3にレール2を緊締する機構部で、油圧ポンプ20aからの油圧でピストン19aを伸縮させるシリンダ19bと、レール2の内側でピストン19a先端部に連結された内側クリップ押し部19cと、レール2の外側でシリンダ19b後端部に連結された外側クリップ押し部19dと、シリンダ19bを支持すると共に内側クリップ押し部19cおよび外側クリップ押し部19dの中心部を回動可能に支持する締結機構部本体19e等を備え、発電機20bで発電された電力を基に油圧ポンプ20aから送られる油圧によってクリップ32をマクラギ3のショルダー31に押し込んでレール2を緊締するように構成されている。
【0032】
(油圧ポンプ20aおよび発電機20b)
油圧ポンプ20aも発電機20bが発電した電流を駆動電流として駆動して左右のクリップ締結機構部19,19等に油圧を送る周知の機械、発電機20bは、軽油やガソリン等の化石燃料で発電して電動チェーンブロック16や油圧ポンプ20a等に駆動電流を供給する周知の機械である。
【0033】
(マクラギ3)
実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1によってレール2を固定するマクラギ3は、PC(プレストレスト・コンクリート)マクラギと呼ばれる高張力のPC鋼材を用いて、コンクリートに予め圧縮力を与えたコンクリート製のマクラギであって、軌間だけ空けてレール2,2を固定するレール緊結(固定)部には、レール2の底部の幅だけ離間したショルダー31,31それぞれにクリップ32を押し込んでレール2底部を緊結(固定)するいわゆるファーストクリップレール緊結(固定)部を採用している。尚、このマクラギ3の長手方向の中央部には、凹部3aが設けられている。
【0034】
<実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1の動作>
次に、以上のように構成された実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1の動作について説明する。
【0035】
(交換すべきマクラギ3の位置まで移動)
本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1の場合、左右両側の脚部11,12には、それぞれ、前輪11a1,12a1と後輪11b1,12b1が設けられているため、作業員は左右両側の脚部11,12を押してレール2,2上を走行して、交換すべきマクラギ3の位置まで移動する。
【0036】
(直線区間でのマクラギ3の吊上げ)
交換すべきマクラギ3の位置に到達すると、作業員は、リモコン(図示せず。)等を操作して発電機20bからの駆動電流に基づいて電動チェーンブロック16を駆動してチェーン16bを下降させ、チェーン16b下端部の荷吊りフック16cに掛止されたマクラギ把持部18でマクラギ3を把持する。
【0037】
この時、レール2の直線区間でのマクラギ3の吊上げである場合、トロリ15は吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)に位置して、電動チェーンブロック16が吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)にてマクラギ3の吊上げを行う。
【0038】
具体的には、吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)に位置する電動チェーンブロック16からチェーン16bを降下させて、チェーン16b下端部に掛止されたマクラギ把持部18をマクラギ3に近付け、
図7に示すようにマクラギ把持部18のマクラギキャッチ部18bの吊り位置決め平行パイプ18b3および吊り位置決めマクラギ直交パイプ18b4の下側面を、マクラギ3の上側面に当接させる。
【0039】
すると、マクラギ把持部18のマクラギキャッチ部18bの吊り位置決め平行パイプ18b3および吊り位置決めマクラギ直交パイプ18b4の下側面がマクラギ3の上側面に当接し、さらに電動チェーンブロック16の駆動や作業員が足や手等で位置決め平行パイプ18b3および吊り位置決めマクラギ直交パイプ18b4を下方へ押すことによりマクラギキャッチ部18bを押し下げると、天秤式マクラギ吊上げバー18aと吊り位置決め平行パイプ18b3との間の間隔が狭まり一対のクロスリンク式挟持部18b1,18b1先端の端にツメ部18b11,18b11の間隔が広がり、マクラギ3の下側面の両側までまわる。
【0040】
そして、作業員は、リモコン(図示せず。)等を操作して電動チェーンブロック16を逆方向に駆動してチェーン16bを上昇させて、チェーン16b下端部の荷吊りフック16cに掛止されたマクラギ把持部18を上昇させると、
図8および
図9に示すように吊り位置決め平行パイプ18b3や天秤式マクラギ吊上げバー18aの重量によって吊り位置決め平行パイプ18b3と天秤式マクラギ吊上げバー18aとの間の間隔が広がり、クロスリンク式挟持部18b1,18b1先端のツメ部18b11,18b11の間隔が狭まってツメ部18b11,18b11がマクラギ3の下側面の両側にまわり、マクラギ3を挟持することができる。
【0041】
ここで、マクラギ把持部18をマクラギ3上面に降ろし、マクラギ3上面からマクラギ把持部18が浮かないようマクラギ把持部18の吊り位置決め平行パイプ18b3と天秤式マクラギ吊上げバー18a等を作業員が足や手等で押えた状態でマクラギ把持部18を吊上げると、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3を把持する。そして、更にマクラギ把持部18を吊り上げると、マクラギ3の自重でクロスリンク式挟持部18b1,18b1先端が窄まりマクラギ3の把持力が強くなってマクラギ3を確実に把持することができる。
【0042】
そして、作業員がさらにリモコン(図示せず。)等を操作して電動チェーンブロック16を駆動してチェーン16bを上昇させると、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3を挟持しながら上昇する。
【0043】
すると、マクラギ把持部18の天秤式マクラギ吊上げバー18a両端部の上側にそれぞれに設けられたガイド用突出部18c,18cがマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間のガイド空間部17c1(
図1や
図5等参照。)に挿入されて、マクラギ3を吊り上げている天秤式マクラギ吊上げバー18aが回転しないようにガイドする。
【0044】
その際、ガイド用突出部18c上部のガイド用突出部誘導部18c2は、マクラギ上昇被ガイド部18c1の上端部に連続して設けられ、上方に向かうに従ってレール2の長手方向の幅がマクラギ上昇被ガイド部18c1の幅から徐々に小さくなり、マクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間の間隔よりも狭くなっているため、ガイド用突出部18cをマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間に容易に挿入することが可能となり、マクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0045】
そして、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3を挟持しながらさらに上昇してガイド用突出部18c上部のガイド用突出部誘導部18c2がマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間を上がってガイド用突出部誘導部18c2に連続するマクラギ上昇被ガイド部18c1がマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間にガイドされると、マクラギ上昇被ガイド部18c1の幅はマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間の間隔とほぼ同じが僅かに大きい程度なので、マクラギ3を吊り上げている天秤式マクラギ吊上げバー18aが回転せずにマクラギ3がレール2と直交した状態で上昇をガイドすることができるので、この点でもマクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0046】
(カーブ区間等、内側および外側のレール2,2に高低差がある箇所でのマクラギ3の吊上げ)
ところで、レール2のカーブ区間等では、走行する車両の遠心力を考慮して外側のレール2を内側のレール2よりもやや高くしてレール2の頭部上面に高低差を設けるカント処理が行われている。
【0047】
そのため、このような内側および外側のレール2,2に高低差を設けるカント処理が行われたカーブ区間において直線区間でのマクラギ3の吊上げの場合と同様に、吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)にトロリ15を停止させて電動チェーンブロック16によってマクラギ3の吊上げを行うと、内側および外側のレール2,2に高低差があるため、
図10に示すようにその上を走行している左右の脚部11,12も鉛直方向に対し傾斜するのに対し、電動チェーンブロック16が垂れ下がるチェーン16bは鉛直方向を向くため、マクラギ3の内側および外側のショルダー31,31それぞれの中心と、内側および外側のレール2,2の中心とがずれてしまい、多人数の作業員等によってマクラギ3やチェーン16bに直接触れて押して内側および外側のショルダー31,31の間にレール2を位置させる移動作業が必要となり、作業負担が非常に大きい。
【0048】
そこで、本実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1では、カーブ区間等、内側および外側のレール2,2に高低差がある箇所でマクラギ3を吊上げる場合、作業員はハンドル11f2を回転させて梁傾斜調整機構部11fにより吊下げ梁13が水平になるように調整すると共に、トロリ15のハンドル15bを回転して、
図11に示すように吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)から高さの高いレール2の方、つまりカーブ区間であれば外側のレール2の方にトロリ15を移動させ、電動チェーンブロック16を外側のレール2の方に移動させ、電動チェーンブロック16のチェーン16bによって吊られたマクラギ3もレール2の方に移動させる。尚、
図11では、左側のレール2よりも右側のレール2の方が高いため、左側の脚部11側を梁傾斜調整機構部11fによって高くして吊下げ梁13が水平になるように調整すると共に、吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)から左右の脚部11,12と平行に下ろした中心線(CL)も鉛直にならず、吊下げ梁13の長手方向の中間点(中央)からマクラギ3を吊るとマクラギ3は
図10に示すように左側のレール2の方へズレるため、トロリ15によって電動チェーンブロック16を右側のレール2の方へズラしてマクラギ3の中間点(中央)が左右の脚部11,12の間の中間点(中央)に位置するようにしている。
【0049】
そして、作業員はチェーン16bによって吊られたマクラギ3の内側および外側のショルダー31,31それぞれの中心と、内側および外側のレール2,2の中心と一致するまで作業員がトロリ15のハンドル15bを回転し、マクラギ3のショルダー31,31の間にレール2の底部が嵌るようにすると、作業員はさらにリモコン(図示せず。)等を操作して電動チェーンブロック16を駆動してチェーン16bを上昇させ、
図11に示すように内側および外側のショルダー31,31の間にレール2の底部を嵌めることができる
【0050】
そのため、カーブ区間等、内側および外側のレール2,2に高低差がある箇所におけるマクラギ3の吊上げの場合であっても、多人数の作業員等によってマクラギ3やチェーン16bに直接触れて押してショルダー31,31の間にレール2の底部を移動させる作業が不要となるので、作業負担を軽減することができ、作業人員を省略可することができる。
【0051】
(クリップの緊締)
そして、直線区間およびカーブ区間の両場合とも、マクラギ3を吊り上げてその上面がレール2の底部に当接すると、作業員がさらにリモコン(図示せず。)等を操作して油圧ポンプ20aを操作してクリップ締結機構部19へ油圧を送り、クリップ締結機構部19はその油圧によってシリンダ19bからピストン19aを伸長させ、外側クリップ押し部19dと内側クリップ押し部19cとによりレール2の両側で同時にクリップ32をショルダー31に押し込むとによりレール2をマクラギ3に緊締する。
【0052】
その結果、クリップ締結機構部19は左右の脚部11,12それぞれの下端部に設けられており、クリップ締結機構部19は左右のレール2,2それぞれにおいてクリップ32を同時に緊締することにより、クリップ32を4ケ所同時に緊締することができるので、マクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0053】
尚、リモコン(図示せず。)等の操作によっては、左右のレール2,2それぞれにおいてクリップ32を4ケ所同時に緊締せずに、左右一方のレール2毎にクリップ32を緊締するようにしても勿論良い。
【0054】
(マクラギ3の開放)
マクラギ3を吊り上げてのレール2,2への緊締が完了すると、作業員はリモコン(図示せず。)等を操作して電動チェーンブロック16を駆動してチェーン16bを下降させると、マクラギ3はレール2に締結されているので、マクラギ把持部18にマクラギ3の荷重がかからなくなる。
【0055】
すると、引張バネ18b5の引張力によってマクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1先端が広がり、クロスリンク式挟持部18b1,18b1は自動的にマクラギ3を開放するので、この点でもマクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0056】
(次のマクラギ3へ移動とマクラギ3との緊締)
レール2の両側におけるマクラギ3へのクリップ32の緊締が完了し、緊締が完了したマクラギ3を開放すると、作業員はそれぞれ左右両側の脚部11,12を押す等してファーストクリップマクラギ緊締装置1を次の交換すべきマクラギ3の位置まで移動させて、以上の処理を繰り返す。
【0057】
<本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1のまとめ>
以上説明したように本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1は、左右の脚部11,12と、左右の脚部11,12の上端部間を連結するように設けた吊下げ梁13と、その吊下げ梁13に設け、マクラギ3を把持するマクラギ把持部18等が設けられた電動チェーンブロック16とを備え、左右の脚部11,12には、それぞれ、天秤式マクラギ吊上げバー18aの両端部の上下方向の昇降をガイドするマクラギ上昇ガイド部17を設けている。
【0058】
そのため、天秤式マクラギ吊上げバー18aを介してマクラギ3を吊り上げる際、天秤式マクラギ吊上げバー18aがマクラギ上昇ガイド部17を介しガイドされ、マクラギ3の回転を抑制することができるので、マクラギ3の緊諦作業の手間や時間を削減することができ、マクラギ交換時における吊上げ作業の簡略化および省人化を実現することができる。
【0059】
また、本発明に係る実施形態のファーストクリップマクラギ緊締装置1では、ガイド用突出部18cは、天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向の両端部にそれぞれ設けられ、鉛直方向に向かってレールの長手方向の横幅が一定のマクラギ上昇被ガイド部18c1と、マクラギ上昇被ガイド部18c1の上端部に連続して設けられ、上方に向かうに従ってレール2の長手方向の幅がマクラギ上昇被ガイド部18c1の幅から徐々に小さくなるガイド用突出部誘導部18c2とを設け、マクラギ上昇ガイド部17には、レール2の長手方向にマクラギ上昇被ガイド部18c1の横幅と同じ間隔だけ空けたガイド空間部17c1を設けている。
【0060】
そのため、ガイド用突出部18cが上昇してマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間でガイドされる際、ガイド棒17c,17c間の間隔よりも先端が細いガイド用突出部18c上部のガイド用突出部誘導部18c2がガイド棒17c,17c間に挿入され、その後、ガイド用突出部誘導部18c2に連続するマクラギ上昇被ガイド部18c1が一対のガイド棒17c,17c間でガイドされて上昇するため、ガイド用突出部18cを容易にマクラギ上昇ガイド部17の一対のガイド棒17c,17c間に誘導することが可能となり、この点でもマクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0061】
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置1では、マクラギ3の上側面の中央には、長方形状に凹んだ凹部3aが設けられており、マクラギ把持部18には、天秤式マクラギ吊上げバー18aの下方に天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向と平行で、かつ、凹部3aの長さと同じ長さで、クロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3を挟持する際、マクラギ3上側面の凹部3aに嵌ってマクラギ3における吊り位置、特にマクラギ3の長手方向の吊り位置を決める吊り位置決め平行パイプ18b3を設けている。
【0062】
そのため、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1によってマクラギ3を挟持する際、吊り位置決め平行パイプ18b3がマクラギ3上側面中央の凹部3aに嵌まるように、必要あればトロリ15を移動等させてマクラギ把持部18側をマクラギ3に対し誘導することにより、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3の長手方向中央で容易にマクラギ3をキャッチすることが可能となるので、マクラギ3を確実にバランス良く吊上げることが可能となり、この点でもマクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0063】
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置1では、吊り位置決め平行パイプ18b3の中央には、天秤式マクラギ吊上げバー18aの長手方向と直交する方向で、かつ、マクラギ3の凹部3aの幅と同じ長さで、クロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3を挟持する際、マクラギ3上側面の凹部3aに嵌ってマクラギにおける吊り位置、特にマクラギ3の短手方向の吊り位置を決める吊り位置決め直交部材18b4を設けている。
【0064】
そのため、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1によってマクラギ3を挟持する際、さらに吊り位置決め直交パイプ18b4がマクラギ3の凹部3aの中心でその両端が突出しないように位置させることにより、マクラギ把持部18のクロスリンク式挟持部18b1,18b1がマクラギ3の短手方向中央で容易にマクラギ3をキャッチすることが可能となるので、マクラギ3をさらに確実にバランス良く吊上げることが可能となり、マクラギ交換の作業効率を向上させることができる。
【0065】
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置1では、マクラギ上昇ガイド部17は、吊下げ梁13の鉛直方向の下方であって、レール2の長手方向と直交する軌間方向に延び、かつ、マクラギ上昇被ガイド部18c1の横幅と同じ間隔だけ空けた2本のガイド棒17c,17cを有し、そのガイド棒17c,17c間によってガイド空間部17c1を構成し、吊下げ梁13には、さらに、吊下げ梁13の長手方向に移動可能に設けられ、吊上げ機である電動チェーンブロック16を吊下げ梁13の長手方向に移動させるトロリ15を設けている。
【0066】
そのため、カーブ区間等、内側および外側のレール2,2に高低差がある箇所におけるマクラギ3の吊上げの際に、左右の脚部11,12が鉛直方向に対し傾斜するのに対し、電動チェーンブロック16が垂れ下がるチェーン16bは鉛直方向を向くため、マクラギ3のショルダー31,31それぞれの中心とレール2,2の中心とがずれた場合、作業員はトロリ15のハンドル15bを回転して移動させ、マクラギ3の長手方向の中心が左右のレール2,2の軌間中心を通るようにマクラギ3のショルダー31,31の間にレール2の底部が嵌るようにマクラギ3を移動させ、さらにリモコン(図示せず。)等を操作して電動チェーンブロック16を駆動してチェーン16bを上昇させバランス良くマクラギ3を吊上げてレール2間の中央に降ろしてショルダー31,31の間にレール2の底部を嵌めることにより、人数の作業員等によってマクラギ3やチェーン16bに直接触れて押してショルダー31,31の間にレール2の底部を移動させる作業が不要となり、直線(平坦)区間と同等に、マクラギ3を吊り上げることができるので、この点でも作業負担を軽減することができ、作業人員を省略可することができる。
【0067】
また、本発明に係るファーストクリップマクラギ緊締装置1では、左右の脚部11,12の内、左側の脚部11には、ハンドル11f2の回転によって吊下げ梁13の高さを調整する梁傾斜調整機構部11fを設けている11f1を設けている。
【0068】
そのため、カーブ区間等、内側および外側のレール2,2に高低差がある箇所においてマクラギ3を吊上げの際に、トロリ15によって電動チェーンブロック16の位置を変更できるだけでなく、傾斜している吊下げ梁13を水平状態に修正することができるので、さらに直線(平坦)区間と同等にマクラギ3を吊り上げることが可能となり、この点でも作業負担を軽減することができ、作業人員を省略可することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ファーストクリップマクラギ緊締装置
11 左側の脚部
11a 前側脚部
11a1 前輪
11a2 前輪支持部
11b 後側脚部
11b1 後輪
11b2 後輪支持部
11c 下側連結バー
11d 中間連結バー
11e 上側連結バー
11f 梁傾斜調整機構部
11f1 全ネジ棒
11f2 ハンドル
11f3 昇降体
11f4 吊下げ梁左端部回動支持部
12 右側の脚部
12a 前側脚部
12a1 前輪
12a2 前輪支持部
12b 後側脚部
12b1 後輪
12b2 後輪支持部
12c 下側連結バー
12d 上側連結バー
12e 吊下げ梁右端部回動支持部
13 吊下げ梁
14 アウトリガー部
14a アウトリガー用レール平行フレーム
14a1 アウトリガー用車輪
14b アウトリガー用レール垂直フレーム
15 トロリ
15a 車輪
15b ハンドル
15c 掛止部
16 電動チェーンブロック
16a 上部フック
16b チェーン(巻上げ部材)
16c 荷吊りフック
17 マクラギ上昇ガイド部
17a マクラギ上昇ガイド梁
17b ガイド棒吊り部
17c ガイド棒
17c1 ガイド空間部
18 マクラギ把持部
18a 天秤式マクラギ吊上げバー
18a1 丸環
18a2 引張バネ掛止部
18b マクラギキャッチ部
18b1 クロスリンク式挟持部
18b11 ツメ部
18b12 挟持部連結バー
18b2 回転軸部
18b3 吊り位置決め平行パイプ(吊り位置決め平行部材)
18b4 吊り位置決めマクラギ直交パイプ(吊り位置決め直交部材)
18b5 引張バネ
18c ガイド用突出部
18c1 マクラギ上昇被ガイド部
18c2 ガイド用突出部誘導部
19 クリップ締結機構部
19a ピストン
19b シリンダ
19c 内側クリップ押し部
19d 外側クリップ押し部
19e 締結機構部本体
20a 油圧ポンプ
20b 発電機
2 レール
3 マクラギ
3a 凹部
31 ショルダー
32 クリップ