(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065502
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】医用情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20240508BHJP
【FI】
G16H10/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174402
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 展樹
(72)【発明者】
【氏名】岩村 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】高澤 純一
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 智
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA23
(57)【要約】
【課題】紙カルテを用いた医療情報交換を容易にすること。
【解決手段】 実施形態に係る医用情報管理システムは、取得部と、生成部と、出力部と、を備える。取得部は、特定の患者に関する薬の処方に関する情報と診断結果に関するカルテ情報とを含む診療情報を取得する。生成部は、前記診療情報を有する2次元コードを生成する。出力部は、前記2次元コードが表示された紙カルテを出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の患者に関する薬の処方に関する情報と診断結果に関するカルテ情報とを含む診療情報を取得する取得部と、
前記診療情報を有する2次元コードを生成する生成部と、
前記2次元コードが表示された紙カルテを出力する出力部と、
を備える、医用情報管理システム。
【請求項2】
前記紙カルテに表示された前記2次元コードを読み取ることにより、前記診療情報を取得する読み取り部をさらに備える、
請求項1に記載の医用情報管理システム。
【請求項3】
前記生成部は、医療情報交換の標準規格に規定された書式と項目に準拠した前記2次元コードを生成する、
請求項1に記載の医用情報管理システム。
【請求項4】
前記標準規格は、「HL7 FHIR」である、
請求項3に記載の医用情報管理システム。
【請求項5】
前記生成部は、前記診療情報の情報量に応じた数の前記2次元コードを生成する、
請求項1に記載の医用情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院等の医用施設において、大規模災害等の緊急事態に対応できるような体制や計画の整備が必要となっている。例えば、災害発生時の対策として、電子カルテが使用できない状況でも、紙カルテを利用して診療機能を維持する方法がある。この方法では、災害時に紙カルテを他の医用施設に持参すると、当該他の医用施設では、紙カルテに記載された情報を電子的に取り込む。例えば、他の医用施設では、OCR(Optical Character Recognition:光学的文字認識)技術を利用し、紙カルテをスキャンして得られた画像等を文字識別することで、紙カルテに記載された情報を電子的に取り込む。しかしながら、一般に、紙カルテの書式や使用する項目名が医用施設ごとに異なるため、紙カルテに記載された情報を正確に取り込むことが難しい。すなわち、複数の医用施設の間では、紙カルテを用いた医療情報交換(Health Information Exchange:HIE)が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、紙カルテを用いた医療情報交換を容易にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報管理システムは、取得部と、生成部と、出力部と、を備える。取得部は、特定の患者に関する薬の処方に関する情報と診断結果に関するカルテ情報とを含む診療情報を取得する。生成部は、前記診療情報を有する2次元コードを生成する。出力部は、前記2次元コードが表示された紙カルテを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用情報管理システムによる紙カルテ出力処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用情報管理システムにより出力される紙カルテの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る医用情報管理システムにより出力される紙カルテの他の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る医用情報管理システムによる紙カルテ読み取り処理の処理手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、医用情報管理システムの実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、医用情報管理システム100の構成を示す図である。医用情報管理システム100は、インターネットや、電子カルテシステム等の院内ネットワークが使用できない緊急時に、患者の医用情報を管理するシステムである。緊急時とは、例えば、大規模災害時である。医用情報管理システム100は、例えば、病院等の医用施設において院内ネットワークに対して独立して設けられ、オフラインで運用することができる。医用情報管理システム100は、ネットワークを介して、病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や電子カルテシステムと接続されていてもよい。
【0009】
医用情報管理システム100は、メモリ11、通信インタフェース12、ディスプレイ13、入力インタフェース14、及び処理回路15を備えている。また、医用情報管理システム100は、プリンタ、スキャナ等の外部機器に有線又は無線で接続されている。なお、以下、医用情報管理システム100は、単一の装置にて複数の機能を実行するものとして説明するが、複数の機能を別々の装置が実行することにしても構わない。例えば、医用情報管理システム100が実行する各機能は、異なるコンソール装置又はワークステーション装置に分散して搭載されても構わない。
【0010】
メモリ11は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路等の記憶装置である。また、メモリ11は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。なお、メモリ11は、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ11の保存領域は、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
【0011】
メモリ11は、処理回路15によって実行されるプログラム、処理回路15の処理に用いられる各種データ等を記憶する。プログラムとしては、例えば、予めネットワーク又は非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からコンピュータにインストールされ、処理回路15の各機能を当該コンピュータに実現させるプログラムが用いられる。なお、本明細書において扱う各種データは、典型的にはデジタルデータである。メモリ11は、記憶部の一例である。
【0012】
メモリ11には、災害発生時などの緊急時に診察した患者に関する情報(以下、患者情報と呼ぶ)や、緊急時に行われた診察に関する情報(以下、診察情報と呼ぶ)や、診察結果に関する情報(以下、診療情報と呼ぶ)等の医用情報が記録されている。メモリ11に記憶される情報は、例えば、入力インタフェース14を介して入力される。
【0013】
患者情報は、例えば、患者の名前、性別、年齢、国籍、既往歴等を含む。診察情報は、診察に関する情報であり、例えば、診察日、医師の名前、診察を行う診療科等を含む。診療情報は、診察結果に関する情報であり、例えば、検査に関する情報(以下、検査情報と呼ぶ)、医師の所見、薬の処方に関する情報(以下、処方情報と呼ぶ)、診断結果(確定診断)に関する情報(以下、診断結果情報と呼ぶ)等を含む。診断結果情報は、カルテ情報の一例である。検査情報は、例えば、検査内容、検査日時、検査で得られた医用画像、検査結果等を含む。
【0014】
通信インタフェース12は、プリンタ、スキャナ等の外部機器との通信を伝送制御するネットワークインタフェースである。通信インタフェース12は、設けられなくてもよい。以下の説明では、プリンタ、スキャナ等の外部機器と、処理回路15との間の通信に通信インタフェース12が介在する旨の記載を省略する。
【0015】
ディスプレイ13は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ13は、処理回路15によって生成された医用情報や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ13は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ13は、表示部の一例である。
【0016】
入力インタフェース14は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路15に出力する。例えば、入力インタフェース14は、医用情報の入力、各種コマンド信号の入力等を操作者から受け付ける。入力インタフェース14は、処理回路15の各種処理等を行うためのマウスやキーボード、トラックボール、スイッチボタン、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インタフェース14は、処理回路15に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。なお、本明細書において、入力インタフェースは、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路15へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。入力インタフェース14は、入力部の一例である。
【0017】
プリンタは、例えば、紙に文字や画像を印刷可能な一般的な印刷機器である。プリンタは、処理回路15に制御され、種々の情報を紙に印刷して出力する。また、プリンタは、紙カルテ用に生成されたレイアウトを紙に印刷することにより、紙カルテを作成する。
【0018】
スキャナは、例えば、2次元コードを読み取り可能な一般的なスキャン装置である。スキャナは、紙や文書に表示された文字や画像や2次元コードを読み取ることができる。読み取った情報は、例えば、メモリ11に記憶され、管理される。
【0019】
処理回路15は、医用情報管理システム100全体の動作を制御する。処理回路15は、メモリ11内のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能151、生成機能152、出力機能153及び読み取り機能154を実行するプロセッサである。
【0020】
なお、
図1においては、単一の処理回路15にて取得機能151、生成機能152、出力機能153及び読み取り機能154が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、取得機能151、生成機能152、出力機能153及び読み取り機能154は、それぞれ個別のハードウェア回路として実装してもよい。処理回路15が実行する各機能についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0021】
また、医用情報管理システム100は単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明するが、複数の機能を別々の装置が実行することにしても構わない。例えば、処理回路15の機能は、異なる装置に分散して搭載されても構わない。
【0022】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、ASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリ11に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリ11にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを論理回路として直接組み込むよう構成しても構わない。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記「プロセッサ」の説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0023】
処理回路15は、取得機能151により、緊急時に診察した患者(以下、対象患者と呼ぶ)に関する診療情報を取得する。この際、処理回路15は、例えば、入力インタフェース14を介して指定された患者に関する診療情報をメモリ11から検索し、検索した診療情報を取得する。取得する診療情報は、例えば、処方情報と診断結果情報とを含む。この際、処方情報と診断結果情報に加えて、メモリ11に記憶された情報のうち、対象患者に関する全ての情報を取得してもよく、後述の処理で必要な情報のみを取得してもよい。また、入力インタフェース14により対象患者に関する情報が直接入力されてもよく、メモリ11の外部から対象患者に関する情報を取得してもよい。取得機能151を実現する処理回路15は、取得部の一例である。
【0024】
処理回路15は、生成機能152により、診療情報を有する2次元コードを生成する。2次元コードは、数字や文字を機械が読み取れる形で表現したものである。2次元コードに含む情報には、例えば、対象患者の処方情報と診断結果情報が含まれる。2次元コードとしては、QRコード(登録商標)が用いられる。数字や文字情報を格納可能なコードであれば、他の形式の2次元コードを用いてもよい。生成機能152を実現する処理回路15は、生成部の一例である。
【0025】
また、処理回路15は、医療情報交換(HIE)の標準規格に規定された書式と項目に準拠したコードを生成する。医療情報交換の標準規格は、異なる医用施設間で患者の情報を交換する際の、データのフォーマットや、データの書式や、交換する医用情報の項目や、項目の名称を既定したものである。データの書式は、例えば、タグの書式を含む。標準規格は、例えば、「HL7 FHIR」である。HL7は、Health Level Sevenの略語である。FHIRは、Fast Healthcare Interoperability Resourcesの略語である。医療情報交換の標準規格としては、「HL7 FHIR」以外の規格を用いてもよいが、今後の普及度を考慮すると、「HL7 FHIR」を用いることが好ましい。HIE中の「医療情報」は、本実施形態中の「医用情報」に対応する。
【0026】
例えば、標準規格に規定された項目のうち、対象患者の処方情報と診断結果情報に含まれる項目が2次元コードに埋め込まれる。また、標準規格で規定された全ての項目を2次元コードに埋め込んでもよく、標準規格で規定された項目の中の任意の項目が予め設定されていてもよく、標準規格で規定された項目の中の任意の項目が使用時にユーザにより選択されてもよい。また、メモリ11に記憶されている対象患者に関する情報のうち、標準規格で規定された項目以外の情報を2次元コードに埋め込んでもよい。
【0027】
処理回路15は、出力機能153により、2次元コードが表示された紙カルテを出力する。この際、処理回路15は、生成機能152により生成された2次元コードが添付された対象患者の紙カルテのレイアウトを生成し、プリンタに生成したレイアウトを印刷させる。これにより、2次元コードを含む紙カルテが印刷される。出力機能153を実現する処理回路15は、出力部の一例である。
【0028】
処理回路15は、読み取り機能154により、紙カルテに表示された2次元コードを読み取ることにより、紙カルテから診療情報を取得する。この際、処理回路15は、紙カルテに添付された2次元コードをスキャナにスキャンさせ、読み取った2次元コードに埋め込まれた情報を取得し取り込む。取得した情報は、例えば、メモリ11に記憶され、管理される。読み取り機能154を実現する処理回路15は、読み取り部の一例である。
【0029】
次に、医用情報管理システム100により実行される紙カルテ出力処理の動作について説明する。紙カルテ出力処理とは、医療情報交換に用いる紙カルテを作成する処理である。紙カルテ出力処理は、例えば、災害時にインターネットや院内ネットワークが使用できず、ネットワークを介した病院間や院内の医療情報交換ができない場合に利用される。
図2は、紙カルテ出力処理の手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、災害発生時にインターネットや院内ネットワークが使用できなくなり、紙カルテを使用して他の医用施設や診療科に患者の情報を提供する場合を例に説明する。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0030】
(紙カルテ出力処理)
(ステップS101)
処理回路15は、取得機能151により、対象患者に関する情報をメモリ11から取得する。例えば、対象患者に関する情報には、患者の氏名、患者IDの他に、災害時の診療により生成された情報が含まれる。
【0031】
(ステップS102)
処理回路15は、生成機能152により、ステップS101の処理で取得した情報を用いて、2次元バーコードを生成する。この際、処理回路15は、ステップS101の処理で取得した情報のうち、「HL7 FHIR」で規定された項目を2次元バーコードに出力する。例えば、処理回路15は、検査結果、確定診断結果、医師の所見、処方情報等を2次元バーコードに出力する。また、処理回路15は、「HL7 FHIR」で規定された書式や項目の名称を用いて、2次元バーコードを生成する。
【0032】
(ステップS103)
処理回路15は、出力機能153により、ステップS102で生成した2次元バーコードが添付された紙カルテのレイアウトを生成し、作成したレイアウトを紙に印刷させる指示をプリンタに送信する。そして、プリンタにより、2次元バーコードが印刷された紙カルテが印刷される。
【0033】
図3は、ステップS103の処理で作成した紙カルテ200の一例を示す図である。
図3の一例では、紙カルテ200には、患者の氏名と紙カルテの作成日時が記載されている。紙カルテの作成日時は、例えば、紙カルテを出力した日時である。また、紙カルテ200には、2次元バーコード210が表示されている。
【0034】
図4は、紙カルテ200の
図3とは異なる一例を示す図である。
図4の一例では、紙カルテ200には、2次元バーコード210に加えて、情報表示部220が設けられている。情報表示部220には、例えば、従来の紙カルテに記載されていた情報が自動で記載される。また、情報表示部220には、2次元バーコード210に埋め込まれる情報のうち、すぐに確認したい情報が記載されてもよい。また、情報表示部220には、例えば、患者への問診内容が記載され、手書きで回答できるようになっていてもよい。
【0035】
次に、医用情報管理システム100により実行される紙カルテ読み取り処理の動作について説明する。紙カルテ読み取り処理とは、他の医用施設や他の診療科で得られた診療情報を、紙カルテ200に表示された2次元バーコード210を用いて取得する処理である。紙カルテ読み取り処理は、例えば、災害時にインターネットや院内ネットワークが使用できなくなり、ネットワークを利用した病院間や院内の医療情報交換ができなくなった場合に利用される。
図5は、紙カルテ読み取り処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0036】
(紙カルテ読み取り処理)
(ステップS201)
処理回路15は、読み取り機能154により、他の医用施設や他の診療科で作成された紙カルテ200に表示された2次元バーコード210をスキャンする指示をスキャナに送信する。そして、スキャナにより、紙カルテ200に印刷された2次元バーコード210の読み取りが行われる。
【0037】
(ステップS202)
処理回路15は、読み取り機能154により、ステップS201の処理で読み取った2次元バーコード210に埋め込まれた情報を取得し、取得した情報をメモリ11内に取り込む。処理回路15は、「HL7 FHIR」で規定された書式や項目名に基づいて2次元バーコード210を読み取ることにより、例えば、患者の検査結果、確定診断結果、医師の所見、処方情報等を取得する。
【0038】
以下、本実施形態に係る医用情報管理システム100の効果について説明する。
【0039】
本実施形態に係る医用情報管理システム100は、特定の患者に関する薬の処方に関する処方情報と診断結果に関する診断結果情報とを含む診療情報を取得し、診療情報を有する2次元コードを生成し、2次元コードが表示された紙カルテを出力することができる。診断結果に関する診断結果情報は、カルテ情報の一例である。また、医用情報管理システム100は、紙カルテに表示された2次元コードを読み取ることにより、患者の診療情報を取得することができる。
【0040】
上記構成により、本実施形態に係る医用情報管理システム100によれば、災害時などの緊急時に、インターネットや院内ネットワークが使えない場合でも、薬の処方に関する情報や診断結果に関する情報を2次元バーコード等の2次元コードとして紙カルテに出力することができる。患者は、2次元バーコードが表示された紙カルテを他の病院に持参する。他の病院では、紙カルテの2次元バーコードを読み取ることで、ネットワークが使用できない場合でも、他の医用施設で得られた診療情報を容易に取得することができる。これにより、災害時等の緊急時において、紙カルテを用いた医療情報交換が容易になる。
【0041】
また、本実施形態に係る医用情報管理システム100は、医療情報交換の標準規格に規定された書式と項目に準拠した2次元コードを生成することができる。標準規格としては、例えば、医療情報交換の標準規格である「HL7 FHIR」を用いることができる。
【0042】
「HL7 FHIR」等の標準規格に沿った書式と項目で生成された2次元コードを用いることで、施設間で交換される情報を標準化することができる。これにより、災害時のようにオフラインで医療情報交換を行う場合でも、医用施設間の情報交換が容易になる。また、標準規格に沿った2次元コードを用いることにより、医用施設ごとに使用する用語が異なることに起因する表記揺れが防止され、各医用施設において読み取った情報を簡単に管理することができる。
【0043】
なお、出力したい情報が多く、1つの2次元コードでは足りない場合には、複数の2次元コードを紙カルテに出力してもよい。例えば、一般的な2次元バーコードに出力できる文字数は2000字から3000字程度であるため、それ以上の情報を出力したい場合は、必要な数の2次元バーコードを出力すればよい。この場合、処理回路15は、生成機能152により、診療情報の情報量に応じた数の2次元コードを生成する。
【0044】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、紙カルテを用いた医療情報交換を容易にすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
100…医用情報管理システム
11…メモリ
12…通信インタフェース
13…ディスプレイ
14…入力インタフェース
15…処理回路
151…取得機能
152…生成機能
153…出力機能
154…読み取り機能
200…紙カルテ
210…2次元バーコード
220…情報表示部