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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065506
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】苗植付け装置および苗の植付け方法
(51)【国際特許分類】
   A01C 5/02 20060101AFI20240508BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A01C5/02 C
A01C11/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174407
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】510298403
【氏名又は名称】有限会社サット・システムズ
(71)【出願人】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 行孝
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 宣誠
(72)【発明者】
【氏名】王 碩玉
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA01
2B060AC01
2B060AD01
2B060AE01
2B060BA01
2B060BA09
2B060BB04
2B060CA04
2B060CC02
2B060DA01
2B060DA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、より簡便に苗を機械的に植付けることが可能な装置、及び苗の植付け方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る苗植付け装置は、内空で苗を落下させる通路部と、前記通路部の上側に配置されており苗を一時的に保持する苗保持部と、前記通路部の下側に配置されており前記通路部の内空に連通している内空を有し内径の拡縮が可能な拡縮部と、前記苗保持部および前記拡縮部に接続されており、且つ特定の条件を満たす制御部とを有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内空で苗を落下させる通路部と、
前記通路部の上側に配置されており苗を一時的に保持する苗保持部と、
前記通路部の下側に配置されており前記通路部の内空に連通している内空を有し内径の拡縮が可能な拡縮部と、
前記苗保持部および前記拡縮部に接続されている制御部と、を有しており、
前記制御部は、下記(1)~(3)の条件を満たすものである苗植付け装置。
(1)前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる機能を有する。
(2)前記拡縮部を拡径状態から縮径状態に変化させる機能を有する。
(3)前記(1)において、前記拡縮部が前記縮径状態ではなく、且つ前記拡径状態でもない中間的な状態(以下、「中間状態」と称する)において苗の保持を解除させるように前記苗保持部を制御する機能を有する。
【請求項2】
前記制御部が下記(4)~(6)の条件を更に満たすものである請求項1に記載の苗植付け装置。
(4)前記中間状態に属する特定第1中間状態において、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を停止させる機能を有する。
(5)前記(4)の後で、苗の保持を解除させるように前記苗保持部を制御する機能を有する。
(6)前記(5)の後で、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を再開させる機能を有する。
【請求項3】
前記制御部が下記(7)~(9)の条件を更に満たすものである請求項1に記載の苗植付け装置。
(7)前記中間状態に属する特定第2中間状態において、苗の保持を解除させるように前記苗保持部を制御する機能を有する。
(8)前記(7)の後であって苗が前記拡縮部に到達する前に、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を停止させる機能を有する。
(9)前記(8)の後であって苗が前記拡縮部に到達した後に、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を再開させる機能を有する。
【請求項4】
前記制御部が、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を前記中間状態で停止しない機能を更に備える請求項1に記載の苗植付け装置。
【請求項5】
前記拡縮部の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させる機能を更に有する請求項1~4のいずれか一項に記載の苗植付け装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記拡縮部の下方にある土表面の高低位置の情報を取得可能であり、当該情報に基づき前記拡縮部の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させる機能を有する請求項5に記載の苗植付け装置。
【請求項7】
前記拡縮部は基端部側と先端部側を有する開閉部材を複数有しており、開閉部材の先端部同士の離間動作と接近動作によって前記拡縮部の拡縮が行われる請求項1に記載の苗植付け装置。
【請求項8】
内空で苗を落下させる通路部と、
前記通路部の上側に配置されており苗を一時的に保持する苗保持部と、
前記通路部の下側に配置されており前記通路部の内空に連通している内空を有し内径の拡縮が可能な拡縮部と、
前記苗保持部および前記拡縮部に接続されている制御部とを有する苗植付け装置を用い、
前記拡縮部を地面に突き刺し、全閉状態から中間状態まで拡径することにより穴を形成する工程、
前記中間状態において、前記苗保持部から前記苗を開放し、前記通路部および前記拡縮部を通じて前記苗を前記穴へ移送する工程、
前記拡縮部を前記中間状態から全開状態まで拡径し、前記穴を拡げる工程、および、
前記拡縮部を前記全開状態のまま地面から引き抜く工程を含む苗の植付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を機械的に植付けることが可能な装置、及び苗の植付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業就業人口は年々減少し、高齢化も進んでいることから、重労働を肩代わりし、生産性の向上に重要な役割を担う農業機械の開発が求められている。しかし、現在市販されている野菜や花卉などの苗の定植の機械化は、米生産用の定植機械に対して遅れている。その理由としては、野菜や花卉などには様々な種類があること、たとえ同じ野菜などであっても多種多様な種類があること、地域などによって栽培形態が異なる場合があること、繊細な作業が多岐にわたること、その一方で、野菜や花卉などの栽培は米作に比べて小規模であったり、使用頻度を考慮すれば小型で安価な機械が求められること等が挙げられる。
【0003】
例えば一般的に、畑の畝などに苗を植付けるための穴を開ける作業を補助する機械が開発されている(非特許文献1,2など)。特許文献1には、地面に突刺され、拡開可能とされた爪体を備えている種苗蒔植装置が開示されている。しかし、これら機械は、腰を屈めることなく地面に穴を開けられるものであるが、自動化には程遠く、手作業を補助するためといったものである。
【0004】
特許文献1に記載の機械は、レタスやキャベツ等の土付苗を移植するためのものである。特許文献2には、移植刃を有する玉ねぎ移植機が開示されている。特許文献3には、苗を植付けるための穴を形成する穴形成手段を備える苗植付装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-233212号公報
【特許文献2】特開平7-115811号公報
【特許文献3】特開2002-185442号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社サンエー,“ホーラー(登録商標)”,[online],[令和4年9月20日検索],インターネット<URL:http://www.san-eh.co.jp/holer/holer.html>
【非特許文献2】みのる産業株式会社,“ハンドプランター”,[online],[令和4年9月20日検索],インターネット<URL:https://www.agri-style.com/product_guide/detail.php?id=240>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、苗を植付けるための機械は種々開発されている。これらは、一般的に、苗を植付けるために開閉可能な爪を有する。かかる爪は、閉じた状態で地面に突き刺された後に拡がることにより穴が形成される。機械によっては、その状態で爪内に苗が移送され、爪が引き抜かれることにより穴の側面の土が崩れ、苗を植付けることができるものもある。
しかし、穴を開けた状態で苗を土中へ移送した場合、穴が大きすぎるために穴の中で苗が倒れてしまうおそれがある。また、苗の移送後、側面から崩れる土の量が十分でなく、苗を安定化できないため、手作業で苗の方向を直したり、土を足したり、苗の周りの土を押え固める必要が生じる場合がある。
そこで本発明は、より簡便に苗を機械的に植付けることが可能な装置、及び苗の植付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、苗を植付ける穴を形成するための爪を土に突き刺した後、いったん半開した状態で苗を移送し、次いで爪を全開にしてから引き抜けば、苗の土中への移送時における穴の大きさを必要最小限にできることから苗を安定化することができ、且つ側面から崩れる土の量が増えることから、植付け後の手作業を抑制または軽減できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0009】
[1] 内空で苗を落下させる通路部と、
前記通路部の上側に配置されており苗を一時的に保持する苗保持部と、
前記通路部の下側に配置されており前記通路部の内空に連通している内空を有し内径の拡縮が可能な拡縮部と、
前記苗保持部および前記拡縮部に接続されている制御部と、を有しており、
前記制御部は、下記(1)~(3)の条件を満たすものである苗植付け装置。
(1)前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる機能を有する。
(2)前記拡縮部を拡径状態から縮径状態に変化させる機能を有する。
(3)前記(1)において、前記拡縮部が前記縮径状態ではなく、且つ前記拡径状態でもない中間的な状態(以下、「中間状態」と称する)において苗の保持を解除させるように前記苗保持部を制御する機能を有する。
[2] 前記制御部が下記(4)~(6)の条件を更に満たすものである前記[1]に記載の苗植付け装置。
(4)前記中間状態に属する特定第1中間状態において、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を停止させる機能を有する。
(5)前記(4)の後で、苗の保持を解除させるように前記苗保持部を制御する機能を有する。
(6)前記(5)の後で、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を再開させる機能を有する。
[3] 前記制御部が下記(7)~(9)の条件を更に満たすものである前記[1]または[2]に記載の苗植付け装置。
(7)前記中間状態に属する特定第2中間状態において、苗の保持を解除させるように前記苗保持部を制御する機能を有する。
(8)前記(7)の後であって苗が前記拡縮部に到達する前に、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を停止させる機能を有する。
(9)前記(8)の後であって苗が前記拡縮部に到達した後に、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を再開させる機能を有する。
[4] 前記制御部が、前記拡縮部を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を前記中間状態で停止しない機能を更に備える前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の苗植付け装置。
[5] 前記拡縮部の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させる機能を更に有する前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の苗植付け装置。
[6] 前記制御部は、前記拡縮部の下方にある土表面の高低位置の情報を取得可能であり、当該情報に基づき前記拡縮部の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させる機能を有する前記[5]に記載の苗植付け装置。
[7] 前記拡縮部は基端部側と先端部側を有する開閉部材を複数有しており、開閉部材の先端部同士の離間動作と接近動作によって前記拡縮部の拡縮が行われる前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の苗植付け装置。
【0010】
[8] 内空で苗を落下させる通路部と、
前記通路部の上側に配置されており苗を一時的に保持する苗保持部と、
前記通路部の下側に配置されており前記通路部の内空に連通している内空を有し内径の拡縮が可能な拡縮部と、
前記苗保持部および前記拡縮部に接続されている制御部とを有する苗植付け装置を用い、
前記拡縮部を地面に突き刺し、全閉状態から中間状態まで拡径することにより穴を形成する工程、
前記中間状態において、前記苗保持部から前記苗を開放し、前記通路部および前記拡縮部を通じて前記苗を前記穴へ移送する工程、
前記拡縮部を前記中間状態から全開状態まで拡径し、前記穴を拡げる工程、および、
前記拡縮部を前記全開状態のまま地面から引き抜く工程を含む苗の植付け方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る苗植付け装置によれば、植付け後における苗の方向の修正、土の追加、苗周りの土の押し固めといった手作業を軽減することができる。よって本発明は、苗の植付けの際の負荷を軽減し、生産性を向上できるものとして、産業上非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る苗植付け装置のスタンバイ状態を表す模式図である。
図2図2は、準備段階にある本発明に係る苗植付け装置の模式図である。
図3図3は、全閉状態にある拡縮部の開閉部材の少なくとも先端を地面に突き刺した状態にある本発明に係る苗植付け装置の模式図である。
図4図4は、開閉部材を土中において全閉状態から中間状態に拡径した状態にある本発明に係る苗植付け装置の模式図である。
図5図5は、苗を苗保持部から拡縮部へ輸送する段階にある本発明に係る苗植付け装置の模式図である。
図6図6は、開閉部材を土中において中間状態から全開状態に拡径した状態にある本発明に係る苗植付け装置の模式図である。
図7図7は、開閉部材が全開状態にある拡縮部を地面から引き抜いた状態にある本発明に係る苗植付け装置の模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、本発明の実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る苗植付け装置は、少なくとも、通路部、苗保持部、拡縮部、及び制御部を備える。
【0014】
通路部1は、その内空中、苗保持部3から拡縮部4へ苗を自然落下させるためのものである。通路部1の材質は特に制限されず、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリプロピレン等の樹脂や、ステンレス等の金属を用いることができる。
【0015】
通路部1の大きさや形状は、植付ける苗2などに応じて適宜調整すればよい。例えば通路部1の形状は、落下中における苗2の損傷を抑制するために、円筒または略円筒であることが好ましい。通路部1の大きさは、苗2が側面との摩擦により詰まったり、落下中に反転しない程度で調整すればよい。
【0016】
苗保持部3は、通路部1の上側に配置されており、苗2を通路部1へ供給する前に一時的に保持するためのものである。
【0017】
苗保持部3の構成は、苗2を傷付けることなく一時的に保持できれば特に制限されない。例えば、図1~4に示す通り、挟持片により苗2を側面から保持するものであってもよい。この場合、挟持片は、保持時に苗2を落下させず且つ傷付けないようにセンサー機能を有していてもよい。また、挟持片の少なくとも苗2に接触する部分は、軟質ポリウレタンフォーム等、軟質の多孔質樹脂体で被覆されていてもよい。苗2は、土付のものであってもよい。
【0018】
その他、苗保持部3は、複数の土付苗2を保持する苗箱であってもよい。この場合、電磁石やソレノイドなどの駆動体により進退自在な突棒などで、土付苗2を苗箱から通路部へ押し出してもよい。
【0019】
拡縮部4は、通路部1の下側に配置されており、通路部1の内空に連通している内空を有し、この内径が拡縮することにより、地面に苗2を植付けるための穴を形成したり、形成された穴へ苗2を移送するためのものである。
【0020】
拡縮部4としては、例えば、基端部側と先端部側を有する開閉部材4aを複数有しており、開閉部材4aの先端部同士の離間動作と接近動作によって拡縮部4の拡縮が行われるものが挙げられる。開閉部材4aの数は、例えば、一対、即ち2とすることができる。開閉部材4aは、例えば、それぞれ先端に向かって先細り、先端は地面に穴を開けられる程度に尖っており、一対を合わせた状態で円錐形を形成するようになっている。開閉部材4aを開閉するための開閉機構4bとしては、例えば、通常はバネ等により開閉部材4aは全開状態であるのに対して、開閉機構4bにより各開閉部材4aを外側から抑えて閉状態にできるものや、通常はバネ等により開閉部材4aは全閉状態であるのに対して、バネ等に抗して電磁石やワイヤ等により開閉部材4aを開状態にできるものが挙げられる。
【0021】
本発明の拡縮部4は、開閉部材4aを全開状態(即ち、拡縮部4の拡径状態)および全閉状態(即ち、拡縮部4の縮径状態)にできる他、全開状態と全閉状態の間の中間状態に広げられることを特徴とする。かかる中間状態は、拡縮部4による苗2の保持を解除できるが、全開状態ではない状態をいう。中間状態とは、具体的には、開閉部材4aの全閉状態における開閉度を0%、全開状態における開閉度を100%とした場合、開閉度が30%以上、70%以下である状態をいうものとする。当該開閉度としては、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、また、65%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0022】
制御部5は、苗保持部3および拡縮部4に接続されており、これらを制御するものである。なお、制御部5は、図1~7に示しているように苗植付け装置に取り付けられているマイクロコンピュータであってもよいし、苗植付け装置の外部に存在しており苗植付け装置と無線接続されているコンピュータであってもよい。具体的には、制御部5は、苗保持部3における苗の保持と解放を制御し、拡縮部4の開閉部材4aの開閉を制御する。
【0023】
制御部5は、下記(1)~(3)の機能を有する。
(1)拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる機能
制御部5は、拡縮部4の開閉機構4bを制御し、拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる。具体的には、開閉部材4aが全閉状態の拡縮部4を、地面に刺さった状態で中間状態まで拡径することにより地面に穴を形成し、また苗2を穴に移送する。また、土中で拡縮部4を中間状態から全開状態まで拡径することにより、穴を更に広げ、拡縮部4が地面から引き抜かれた際に土が側面から崩れ易くする。
【0024】
(2)拡縮部4を拡径状態から縮径状態に変化させる機能
前記(1)の通り、拡縮部4が地面から引き抜かれた際には、開閉部材4aは全開状態にある。よって、制御部5は、地面に次の穴を形成するために、また、穴を形成するまで苗2を保持するために、拡縮部4を拡径状態から縮径状態に変化させる機能を有する。
【0025】
(3)中間状態において苗2の保持を解除させるように苗保持部3を制御する機能
制御部5は、前記(1)において、特に中間状態において苗2の保持を解除させるように苗保持部を制御する。即ち、中間状態にある拡縮部4の一対の開閉部材4aの間隔は、全開状態よりも狭いので、中間状態にある拡縮部4へ苗2を移送できるように苗保持部3を制御することにより、拡縮部4内における苗2の傾きを抑制することができる。よって、中間状態の拡縮部4における一対の開閉部材4aの間隔は、植付ける苗2の大きさや育ち度合などに応じて調整することが好ましい。
【0026】
制御部5は、下記(4)~(6)の機能を更に有することが好ましい(図8参照)。
(4)中間状態に属する特定第1中間状態において、拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を停止させる機能
(5)前記(4)の後で、苗2の保持を解除させるように苗保持部3を制御する機能
(6)前記(5)の後で、拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を再開させる機能
【0027】
即ち、拡縮部4の一対の開閉部材4aの間隔が、苗2の大きさ等に応じて事前に定めた所定値となった段階で動作を停止させ、その後、苗保持部3から拡縮部4へ苗を移送することにより、傾きを抑制しつつ苗2を拡縮部4内で安定化することがより確実に可能になる。即ち、特定第1中間状態は、苗を植付部材から土に形成された穴へ移送することが可能であり且つ苗を植付部材により支持している状態である。次いで、拡縮部4を中間状態から更に拡径することにより、穴を拡げる。
【0028】
制御部5は、前記(4)~(6)の代わりに下記(7)~(9)の機能を更に有することが好ましい(図9参照)。
(7)中間状態に属する特定第2中間状態において、苗2の保持を解除させるように苗保持部3を制御する機能
(8)前記(7)の後であって苗2が拡縮部4に到達する前に、拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を停止させる機能
(9)前記(8)の後であって苗2が拡縮部4に到達した後に、拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を再開させる機能
【0029】
即ち、苗保持部3が苗2の保持を解除する際には、拡縮部4はまだ全閉状態から特定第2中間状態に至る途中であり、拡縮部4が特定第2中間状態に至る際または至る直前に、苗2が拡縮部4に到達するよう、制御部5により苗保持部3が苗の保持を解除するタイミングを調整する。その結果、拡縮部4が全閉状態から特定第2中間状態に至る時間と、苗2が苗保持部3から拡縮部4へ移送される時間が重複するため、全体的な苗の植付け効率をより一層改善することが可能になる。なお、特定第2中間状態は、特定第1中間状態と同様に、苗を植付部材から土に形成された穴へ移送することが可能であり且つ苗を植付部材により支持している状態である。
【0030】
制御部5は、前記(4)~(9)の代わりに下記(10)~(11)の機能を更に有することが好ましい(図9参照)。
(10)拡縮部4を縮径状態から拡径状態に変化させる動作を中間状態で停止しない機能
(11)中間状態に属する特定第3中間状態において、苗2の保持を解除させるように苗保持部3を制御する機能
【0031】
即ち、拡縮部4は、縮径状態から拡径状態に至る過程において特定第3中間状態で停止しないが、特定第3中間状態において苗保持部3から苗2を開放するよう、制御部5は拡縮部4と苗保持部3を制御する。その結果、苗2をより一層効率的に植付けることが可能になる。なお、特定第3中間状態は、特定第1中間状態と同様に、苗を植付部材から土に形成された穴へ移送することが可能であり且つ苗を植付部材により支持している状態である。
【0032】
本発明に係る苗植付け装置は、拡縮部4の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させる機能を更に有することが好ましい。拡縮部4の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させたまま拡径することにより、苗2を植付けるための穴を地面に形成することが可能になる。拡縮部4の地面への侵入深さは、植付ける苗2の大きさや成長度合いなどに応じて適宜調整すればよい。
【0033】
拡縮部4の少なくとも一部を土表面よりも下方に侵入させるためには、苗植付け装置は、少なくとも苗保持部3、通路部1および拡縮部4を上下に移動させる機構を有することが好ましい。以下、苗保持部3、通路部1および拡縮部4を含むユニットを、苗移植ユニットという場合がある。
【0034】
前記制御部5は、拡縮部4の下方にある土表面の高低位置の情報を取得可能であり、当該情報に基づき拡縮部4の少なくとも一部を土表面より所定の深さに侵入させることが好ましい。
【0035】
本発明に係る苗植付け装置は、苗移植ユニット、及び苗移植ユニットを上下に移動させる機構の他、苗の植付けの補助や自動化などのためのその他の部材を有していてもよい。例えば、デプスセンサや駆動輪が挙げられる。デプスセンサは、前述した通り拡縮部4とその下方の土表面との距離を測定し、その情報を制御部5に送ることができる。また、デプスセンサにより取得した地面の画像から畝の形状や高さを認識し、畝の中心位置と苗植付け装置の中心位置とが一致するように駆動輪を駆動させて、苗植付け装置を進行させたり、その位置を修正したりできる。
【0036】
本発明に係る苗の植付け方法は、前記拡縮部4を地面に突き刺し、全閉状態から中間状態まで拡径することにより穴を形成する工程;前記中間状態において、前記苗保持部3から前記苗2を開放し、前記通路部1および前記拡縮部4を通じて前記苗2を前記穴へ移送する工程;前記拡縮部4を前記中間状態から全開状態まで拡径し、前記穴を拡げる工程;および、前記拡縮部4を前記全開状態のまま地面から引き抜く工程を含む(図10参照)。以下、図面を参照しつつ、本発明方法を工程毎に説明するが、本発明は前記または以下の具体例に限定されるものではない。
【0037】
(1)穴形成工程
本工程では、苗植付け装置の拡縮部4を地面に突き刺し、全閉状態から中間状態まで拡径することにより穴を形成する。
【0038】
本発明に係る苗の植付け方法では、プロセスの最後に全開状態の拡縮部を地面から引き抜く。よって、本発明方法の開始前における本発明に係る苗植付け装置のスタンバイ状態(図1)においては、拡縮部4の開閉部材4aは全開状態にある。
【0039】
次いで、苗植付け装置の準備段階(図2)においては、拡縮部4を地面6に突き刺すために、開閉機構4bにより開閉部材4aを全閉状態にする。
【0040】
次に、苗移植ユニットの位置を下げて、全閉状態にある拡縮部4の開閉部材4aの少なくとも先端を地面に突き刺す(図3)。この際、拡縮部4の地面中の深さは、苗の大きさや育ち度合などに応じて事前に定められており、制御部5により制御されている。更に、開閉機構4bにより開閉部材4aを土中において全閉状態から中間状態に拡径する(図4)。これにより、苗を植付けるための穴が地面6に形成される。
【0041】
(2)苗の移送工程
本工程では、拡縮部4の中間状態において、苗保持部3から苗2を開放し、通路部1および拡縮部4を通じて苗2を穴へ移送する(図5)。この際、中間状態にある拡縮部4の開閉部材4a間の間隔は、苗の大きさや育ち度合などに応じて事前に定められているため、苗2は拡縮部4の内空や穴の中における傾きが抑制されている。
【0042】
(3)拡縮部の全開工程
本工程では、拡縮部4の開閉部材4aを開閉機構4bにより中間状態から全開状態まで拡径し、穴を拡げる(図6)。この際にも、苗の傾きは、拡縮部4の内空側面により抑制されている。
【0043】
(4)引き抜き工程
本工程では、拡縮部4を全開状態のまま地面6から引き抜く(図7)。その結果、従来方法に比べてより多くの土が穴側面から崩れ、植付けた苗が安定化するため、苗の植付け後における土の追加や押し固めといった追加作業を軽減することが可能になる。
【符号の説明】
【0044】
1: 内空で苗を落下させる通路部
2: 植付ける苗
3: 苗を一時的に保持する苗保持部
4: 内径の拡縮が可能な拡縮部
4a: 拡縮部の開閉部材
4b: 拡縮部の開閉機構
5: 少なくとも苗保持部と拡縮部を制御するための制御部
6: 苗を植付けるべき地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10