IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチユ三菱フォークリフト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-荷役システムおよび制御方法 図1
  • 特開-荷役システムおよび制御方法 図2
  • 特開-荷役システムおよび制御方法 図3
  • 特開-荷役システムおよび制御方法 図4
  • 特開-荷役システムおよび制御方法 図5
  • 特開-荷役システムおよび制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006551
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】荷役システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240110BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240110BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B60K1/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107553
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
(72)【発明者】
【氏名】荒金 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠也
【テーマコード(参考)】
3D235
3F333
【Fターム(参考)】
3D235AA18
3D235BB01
3D235BB19
3D235BB24
3D235CC15
3D235HH08
3D235HH16
3D235HH61
3D235HH63
3F333AA02
3F333AB13
3F333CA09
3F333DB05
3F333FA36
(57)【要約】
【課題】有人フォークリフト及び無人フォークリフトで使用されるバッテリーにおいて、高い安全基準を満たすと共に、バッテリーのコストを削減すること。
【解決手段】荷役システムは、常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー3の使用に関する使用データDと、バッテリー3を交換する時期を判断するための使用度スコアSとの間の関係に基づく教師データ46を収集する収集部40と、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部41と、現時点の使用データDを取得する取得部45と、取得部45から取得される現時点の使用データDを入力することで、使用度スコアSを学習モデルから取得する予測部42と、バッテリー3が有人フォークリフト1から無人フォークリフト2に交換されて使用されるよう、さらに、バッテリー3が無人フォークリフト2から破棄されるように案内する制御部43と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温領域及び冷温領域を有する施設内を走行すると共に、バッテリーが搭載された有人フォークリフト及び無人フォークリフトを備えた荷役システムであって、
前記常温領域及び前記冷温領域における前記バッテリーの使用に関する使用データと、前記バッテリーを交換する時期を判断するための使用度スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集部と、
前記収集部に収集された前記教師データから機械学習を行い、前記機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部と、
現時点の前記使用データを取得する取得部と、
前記学習モデル生成部で生成された前記学習モデルに、前記取得部から取得される前記現時点の前記使用データを入力することで、前記使用度スコアを前記学習モデルから取得する予測部と、
前記予測部によって取得される前記使用度スコアが、予め設定された第1使用度レベル以上になると、前記バッテリーが前記有人フォークリフトから前記無人フォークリフトに交換されて使用されるように案内し、さらに、予め設定された第2使用度レベル以上になると、前記バッテリーが前記無人フォークリフトから破棄されるように案内する制御部と、を備える
ことを特徴とする荷役システム。
【請求項2】
前記使用データは、
駆動輪を駆動するための走行モータの使用時間と、
リフトシリンダ、ティルトシリンダ及びリーチシリンダを駆動するための油圧モータの使用時間と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の荷役システム。
【請求項3】
前記使用データは、前記常温領域と前記冷温領域との間の温度差を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の荷役システム。
【請求項4】
前記使用度スコアは、前記使用データにおける重み付け係数により加重平均された数値パラメータに基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の荷役システム。
【請求項5】
前記リフトシリンダを駆動する間における前記油圧モータの使用時間に関する重み付け係数は、その他の前記使用データの重み付け係数に比べて大きく設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の荷役システム。
【請求項6】
前記冷温領域における前記油圧モータの使用時間に関する重み付け係数は、前記常温領域における前記使用データの重み付け係数に比べて大きく設定されている
ことを特徴とする請求項4に記載の荷役システム。
【請求項7】
前記荷役システムは、前記バッテリーを交換する時期を表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記バッテリーが前記有人フォークリフトから前記無人フォークリフトに交換されて使用されるように案内する第1案内と、前記バッテリーが前記無人フォークリフトから破棄されるように案内する第2案内と、を表示する制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の荷役システム。
【請求項8】
常温領域及び冷温領域を有する施設内を走行すると共に、バッテリーが搭載された有人フォークリフト及び無人フォークリフトを備えた荷役システムの制御方法であって、
前記常温領域及び前記冷温領域における前記バッテリーの使用に関する使用データと、前記バッテリーを交換する時期を判断するための使用度スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集ステップと、
前記収集ステップで収集された前記教師データから機械学習を行い、前記機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成ステップと、
現時点の前記使用データを取得する取得ステップと、
前記学習モデル生成ステップで生成された前記学習モデルに、前記取得ステップから取得される前記現時点の前記使用データを入力することで、前記使用度スコアを前記学習モデルから取得する予測ステップと、
前記予測ステップによって取得される前記使用度スコアが、予め設定された第1使用度レベル以上になると、前記バッテリーが前記有人フォークリフトから前記無人フォークリフトに交換されて使用されるように案内し、さらに、予め設定された第2使用度レベル以上になると、前記バッテリーが前記無人フォークリフトから破棄されるように案内する制御ステップと、を備える
ことを特徴とする荷役システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有人フォークリフト及び無人フォークリフトが同一施設内で荷役作業を行う荷役システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォークリフトを用いて、工場や倉庫などの施設内に設置された棚の収納部に対して荷物を出し入れする荷役作業が行われる。フォークリフトに関しては、オペレータが搭乗して運転する有人フォークリフトと、オペレータが搭乗せずに自動で運転する無人フォークリフトとがある。
【0003】
無人フォークリフトは、単純で容易な荷役作業を行う一方、有人フォークリフトは、複雑で難しい荷役作業を行うことができる。そのため、同一施設内に、複数の有人フォークリフト及び複数の無人フォークリフトが荷役作業を行う(特許文献1等参照)。
【0004】
フォークリフトはバッテリーが搭載されており、バッテリーに充電された電力によって、走行モータやリフトモータ等が駆動される。バッテリーは、長期間使用されると、疲労や劣化等によって、新たなバッテリーと交換される。一方、バッテリーは高額であることから、コスト削減のため、バッテリーをできるだけ長く使用したいという要望がある。しかし、オペレータが搭乗する有人フォークリフトでは、特に安全性が最優先されるため、高い安全基準を満たしたバッテリーを使用しなければならない。
【0005】
ところで、荷役システムには、常温の倉庫等からなる常温領域と、冷温の倉庫等からなる冷温領域とを有する施設があり、施設内で、フォークリフトが常温領域と冷温領域との間を往来して各領域で荷役する場合がある。
【0006】
その場合、冷温領域での運転は、チェーンや回転軸が凍結することがあり、これらを駆動するために、各モータに対するバッテリーに加わる負荷が大きくなる。また、常温領域と冷温領域との温度差が大きいと、運転席の冷暖房機の出力変化が大きくなり、出力変化に対応するために、冷暖房機に対するバッテリーに加わる負荷が大きくなる。
【0007】
そのため、バッテリーの疲労及び劣化の度合を測るときに、常温領域及び冷温領域での使用時間、常温領域と冷温領域との温度差に基づいて、バッテリーに加わる負荷を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-144967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、常温領域及び冷温領域を有する施設内で有人フォークリフト及び無人フォークリフトが荷役作業を行う場合、高い安全基準を満たすと共に、バッテリーのコストを削減できる荷役システムおよび制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る荷役システムは、常温領域及び冷温領域を有する施設内を走行すると共に、バッテリーが搭載された有人フォークリフト及び無人フォークリフトを備えている。そして、荷役システムは、常温領域及び冷温領域におけるバッテリーの使用に関する使用データと、バッテリーを交換する時期を判断するための使用度スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集部を備えている。荷役システムは、収集部に収集された教師データから機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成部と、現時点の使用データを取得する取得部と、学習モデル生成部で生成された学習モデルに、取得部から取得される現時点の使用データを入力することで、使用度スコアを学習モデルから取得する予測部と、を備えている。さらに、荷役システムは、予測部によって取得される使用度スコアが、予め設定された第1使用度レベル以上になると、バッテリーが有人フォークリフトから無人フォークリフトに交換されて使用されるように案内し、さらに、予め設定された第2使用度レベル以上になると、バッテリーが無人フォークリフトから破棄されるように案内する制御部を備えている。
【0011】
使用データは、駆動輪を駆動するための走行モータの使用時間と、リフトシリンダ、ティルトシリンダ及びリーチシリンダを駆動するための油圧モータの使用時間と、を含むことが望ましい。
【0012】
好ましくは、使用データは、常温領域と冷温領域との間の温度差を含んでいる。
【0013】
そして、使用度スコアは、使用データにおける重み付け係数により加重平均された数値パラメータに基づいて設定されてもよい。
【0014】
また、好ましくは、リフトシリンダを駆動する間における油圧モータの使用時間に関する重み付け係数は、その他の使用データの重み付け係数に比べて大きく設定されている。
【0015】
冷温領域における油圧モータの使用時間に関する重み付け係数は、常温領域における使用データの重み付け係数に比べて大きく設定されていることが望ましい。
【0016】
好ましくは、荷役システムは、バッテリーを交換する時期を表示する表示部を備えている。そして、制御部は、バッテリーが有人フォークリフトから無人フォークリフトに交換されて使用されるように案内する第1案内と、バッテリーが無人フォークリフトから破棄されるように案内する第2案内と、を表示する制御を行う。
【0017】
本発明に係る荷役システムの制御方法は、常温領域及び冷温領域を有する施設内を走行すると共に、バッテリーが搭載された有人フォークリフト及び無人フォークリフトを備えている。そして、制御方法は、常温領域及び冷温領域におけるバッテリーの使用に関する使用データと、バッテリーを交換する時期を判断するための使用度スコアとの間の関係に基づく教師データを収集する収集ステップを備えている。制御方法は、収集ステップで収集された教師データから機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する学習モデル生成ステップと、現時点の使用データを取得する取得ステップと、学習モデル生成ステップで生成された学習モデルに、取得ステップから取得される現時点の使用データを入力することで、使用度スコアを学習モデルから取得する予測ステップと、を備えている。さらに、制御方法は、予測ステップによって取得される使用度スコアが、予め設定された第1使用度レベル以上になると、バッテリーが有人フォークリフトから無人フォークリフトに交換されて使用されるように案内し、さらに、予め設定された第2使用度レベル以上になると、バッテリーが無人フォークリフトから破棄されるように案内する制御ステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る荷役システムおよび制御方法は、上記構成を備えることによって、常温領域及び冷温領域を有する施設内で有人フォークリフト及び無人フォークリフトが荷役作業を行う場合、高い安全基準を満たすと共に、バッテリーのコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】荷役システムを示す平面図。
図2】フォークリフトの構成を説明するための図。
図3】荷役システムの一部を説明するためのブロック図。
図4】入力データ及び出力データを説明するための説明図。
図5】(A)は表示部に表示された第1案内画面、(B)は表示部に表示された第2案内画面を示す図。
図6】荷役システムの制御方法を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明に係る荷役システム及び制御方法について説明する。
【0021】
図1の通り、荷役システムは、工場や倉庫などの同一施設内に、常温領域100及び冷温領域101を有している。施設内には、有人フォークリフト1、無人フォークリフト2、棚10、充電装置5、管理装置6が配置されている。有人フォークリフト1及び無人フォークリフト2は、施設内に設置された棚10の収納部に対して荷物を出し入れする荷役作業を行う。
【0022】
常温領域100は、温度が特に調整されておらず、冷やしたり熱したりしない一定の温度となっており、常温で保存できる荷物が棚10に収納される。また、冷温領域101は、保管される荷物の特性に応じて、例えば、10℃~-50℃の冷蔵及び冷凍温度に保たれており、冷温で保存しなければならない荷物が棚10に収納される。
【0023】
有人フォークリフト1は、オペレータOが搭乗して運転する。無人フォークリフト2は、オペレータが搭乗せずに自動で運転する。無人フォークリフト2は、予め記憶された荷役作業のスケジュールに従って、荷物を搬送及び積み降ろしするように構成される。また、有人フォークリフト1は、オペレータOの操作に従って、荷物を搬送及び積み降ろしするように構成される。
【0024】
無人フォークリフト2は、単純で容易な荷役作業を行う一方、有人フォークリフト1は、複雑で難しい荷役作業を行うことができる。そのため、同一施設内で、複数の有人フォークリフト1及び複数の無人フォークリフト2が荷役作業を行う。そして、有人フォークリフト1及び無人フォークリフト2は、常温領域100及び冷温領域101を往来して、各領域100,101内で荷役作業を行うようになっている。
【0025】
有人フォークリフト1及び無人フォークリフト2は、バッテリー式フォークリフトで構成されており、充電式バッテリー3が、有人フォークリフト1及び無人フォークリフト2に搭載される。
【0026】
充電装置5は、フォークリフト1,2に搭載されたバッテリー3に対して、電力を供給するケーブル50を備える。
管理装置6は、CPU(中央処理装置)、入出力インターフェース、ROM、RAM等で構成されており、情報を処理するためのプログラムが記憶される。
【0027】
図2の通り、フォークリフト1,2は、車体を走行するための駆動輪73と、マストを昇降するためのリフトシリンダ70と、マストをティルトするためのティルトシリンダ71と、マストを前後するためのリーチシリンダ72とを備えている。
【0028】
そして、フォークリフト1,2は、駆動輪73を駆動するための走行モータ83と、リフトシリンダ70、ティルトシリンダ71及びリーチシリンダ72を駆動するための油圧モータ80とを備えている。
【0029】
また、フォークリフト1,2は、充電式バッテリー3を搭載しており、バッテリー3は、RFID32を備える。
【0030】
RFID32は、それぞれのバッテリー3におけるバッテリー番号等を識別するための情報が記憶される。バッテリー番号は、各バッテリーを識別するための識別番号が付される。この情報は、設定されると変更されない。
【0031】
また、RFID32は、常温領域100と冷温領域101との温度差の情報が記憶される。温度差は、例えば、各領域100,101に設けられた温度センサ(不図示)によって測定されてもよい。
【0032】
RFID32は、さらに、それぞれのバッテリー3における車種タイプ、バッテリー使用時間、モータ使用時間、充電回数、温度差等の情報が記憶される。
車種タイプは、バッテリー3が搭載される車種であり、有人フォークリフト1、無人フォークリフト2がある。
【0033】
バッテリー使用時間は、各バッテリー3において現時点まで使用された使用時間である。
モータ使用時間は、各バッテリー3において、駆動輪73を駆動するための走行モータ83と、リフトシリンダ70、ティルトシリンダ71及びリーチシリンダ72を駆動するための油圧モータ80とが現時点まで使用された使用時間である。
【0034】
さらに、バッテリー使用時間及びモータ使用時間は、常温領域100及び冷温領域101ごとに使用された使用時間の情報が記憶される。各フォークリフト1,2は、例えば、温度センサ34を備えており、温度センサ34で検知された温度に基づいて、常温領域100及び冷温領域101ごとに、バッテリー使用時間及びモータ使用時間の情報が記憶される。
【0035】
充電回数は、現時点までに充電された回数である。
これら情報は、状況が更新される度に変更される。
【0036】
フォークリフト1,2は、使用データ測定装置33を備えている。使用データ測定装置33は、バッテリー3、RFID32、走行モータ83、油圧モータ80に接続され、各バッテリー3におけるバッテリー使用時間、モータ使用時間、充電回数及び温度差をそれぞれ測定及び記憶するように構成されている。
【0037】
使用データ測定装置33は、モータ使用時間のうち、走行モータ83の使用時間、油圧モータ80の使用時間をそれぞれ測定及び記憶するように構成されており、さらに、油圧モータ80の使用時間のうち、リフトシリンダ70が駆動する間の油圧モータ80の使用時間、ティルトシリンダ71が駆動する間の油圧モータ80の使用時間、リーチシリンダ72が駆動する間の油圧モータ80の使用時間をそれぞれ測定及び記憶するように構成されている。
【0038】
さらに、使用データ測定装置33は、温度センサ34で検知された温度に基づいて、常温領域100及び冷温領域101ごとに、バッテリー使用時間及びモータ使用時間の情報を測定及び記憶するようになっている。
【0039】
管理装置6の算出集計部61(図1)は、使用データ測定装置33に無線又は有線で接続される。そして、算出集計部61は、使用データ測定装置33によって測定及び記憶された各バッテリー3における常温領域100及び冷温領域101のバッテリー使用時間、モータ使用時間、充電回数及び温度差の情報を取得する。
【0040】
図3の通り、管理装置6は、教師データ46を収集する収集部40を備える。教師データ46は、バッテリー3の使用に関する使用データDを含む。
【0041】
常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー3の使用に関する使用データDは、例えば、上記した(1)車種タイプ、(2)常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー使用時間、(3)常温領域100及び冷温領域101における走行モータ使用時間、(4)常温領域100及び冷温領域101におけるリフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(5)常温領域100及び冷温領域101におけるリーチシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(6)常温領域100及び冷温領域101におけるティルトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(7)充電回数、(8)常温領域100及び冷温領域101の温度差である。
【0042】
管理装置6は、収集部40に収集された教師データ46(上記(1)~(8))から機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成及び記憶する学習モデル生成部41を備える。本実施の形態の学習モデル生成部41は、教師あり学習を実施する。教師あり学習では、教師データ46、すなわち、入力データIDと出力データODとの組を大量に学習モデル生成部41に入力する。
【0043】
入力データIDは、(1)車種タイプ、(2)常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー使用時間、(3)常温領域100及び冷温領域101における走行モータ使用時間、(4)常温領域100及び冷温領域101におけるリフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(5)常温領域100及び冷温領域101におけるリーチシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(6)常温領域100及び冷温領域101におけるティルトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(7)充電回数、(8)常温領域100及び冷温領域101の温度差を含む。出力データODは、使用度スコアSである。バッテリー3の使用度によって交換する時期を判断するための使用度スコアSとして、入力データIDを評価し、0から10までの数値パラメータが設定される。
【0044】
例えば、使用度スコアSが高い、すなわち、バッテリー3の使用度合が高くて交換する時期が近い場合として、(1)車種タイプが有人フォークリフトである場合、(2)~(6)冷温領域101における使用時間が長い場合、(7)充電回数が多い場合、(8)温度差が大きい場合に、バッテリー3の使用度合(劣化、疲労)が進んでいるので、バッテリー3を交換する時期が近い。
【0045】
一方、使用度スコアSが低い、すなわち、バッテリー3の使用度合が低くて交換する時期が遠い場合として、(1)車種タイプが無人フォークリフトである場合、(2)~(6)常温領域100における使用時間が短い場合、(7)充電回数が少ない場合、(8)温度差が小さい場合に、バッテリー3の使用度合(劣化、疲労)が進んでいないので、バッテリー3を交換する時期が遠い。
【0046】
なお、冷温領域101でのフォークリフト1,2の運転は、チェーンや回転軸が凍結することがあり、これらを駆動するために、各モータに対するバッテリー3に加わる負荷が大きくなる。また、常温領域100と冷温領域101との温度差が大きいと、有人フォークリフト1の運転席の冷暖房機の出力変化が大きくなったり、バッテリー3の腐食が激しくなったりすることから、バッテリー3に加わる負荷が大きくなる。
【0047】
使用度スコアSは、(1)車種タイプ、(2)常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー使用時間、(3)常温領域100及び冷温領域101における走行モータ使用時間、(4)常温領域100及び冷温領域101におけるリフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(5)常温領域100及び冷温領域101におけるリーチシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(6)常温領域100及び冷温領域101におけるティルトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(7)充電回数、(8)温度差の使用データDのいずれかの数値パラメータで設定されてもよいし、重み付け係数により加重平均された数値パラメータで設定されてもよい。
【0048】
ここで、フォークリフト1,2が昇降する荷物が重量物であることから、リフトシリンダを駆動する間の油圧モータに加わる負荷が、その他のシリンダを駆動する間の負荷に比べて大きいので、(3)~(6)各モータ使用時間において、(4)リフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間がバッテリー3の使用度に大きく影響すると考えられて、(4)リフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間に関する重み付け係数が、その他のモータ使用時間に関する重み付け係数に比べて大きく設定されてもよい。
【0049】
また、冷温領域101で各フォークリフト1,2が運転されるとき、チェーンやスプロケット等が凍結して、これらを駆動するために、各モータに対するバッテリー3に加わる負荷が大きくなるので、(3)~(6)各モータ使用時間において、冷温領域101における各モータ使用時間がバッテリー3の使用度に大きく影響すると考えられる。そのため、冷温領域101におけるモータ使用時間に関する重み付け係数が、常温領域100におけるモータ使用時間に関する重み付け係数に比べて大きく設定されてもよい。
【0050】
なお、実際に、車種タイプ、バッテリー使用時間、モータ使用時間、充電回数、温度差等によって、バッテリーの使用度合を判断することが多い。そのため、(1)車種タイプ、(2)常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー使用時間、(3)常温領域100及び冷温領域101における走行モータ使用時間、(4)常温領域100及び冷温領域101におけるリフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(5)常温領域100及び冷温領域101におけるリーチシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(6)常温領域100及び冷温領域101におけるティルトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(7)充電回数、(8)常温領域100及び冷温領域101の温度差と、バッテリー3を交換する時期との間に相関関係等の一定の関係が存在することは推認できる。
【0051】
学習モデル生成部41は、一般的なニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いる。学習モデル生成部41は、相関関係を有する入力データIDと出力データODを教師データ46として機械学習を行うことにより、入力から出力を推定するモデル(学習モデル)、すなわち、入力データID(上記(1)~(8))を入力すると、使用度スコアSを出力するモデルを生成する。
【0052】
荷役システムは、現時点の入力データIDを取得する取得部45を備える。本実施形態では、取得部45は、RFID32、使用データ測定装置33、算出集計部61を含む。上記の通り、入力データIDは、(1)車種タイプ、(2)常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー使用時間、(3)常温領域100及び冷温領域101における走行モータ使用時間、(4)常温領域100及び冷温領域101におけるリフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(5)常温領域100及び冷温領域101におけるリーチシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(6)常温領域100及び冷温領域101におけるティルトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(7)充電回数、(8)温度差である。入力データIDのうち(1)車種タイプは、一度取得されると、搭載されるフォークリフト1,2が変更されるまで再取得されない。一方、入力データIDのうち(2)~(6)使用時間、(7)充電回数、(8)常温領域100及び冷温領域101の温度差は、ケーブル50がバッテリー3に接続される度に、または、所定時間ごとに取得される。
【0053】
管理装置6は、学習モデル生成部41で生成された学習モデルを、取得部45から取得される現時点の入力データIDに適用することで、バッテリー3を交換する時期か否かを予測する予測部42を備える。
【0054】
図4の通り、ケーブル50がバッテリー3に接続されるごとに、または、所定時間ごとに、予測部42に現時点の入力データIDが入力されたときに、(2)常温領域100及び冷温領域101におけるバッテリー使用時間、(3)常温領域100及び冷温領域101における走行モータ使用時間、(4)常温領域100及び冷温領域101におけるリフトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(5)常温領域100及び冷温領域101におけるリーチシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(6)常温領域100及び冷温領域101におけるティルトシリンダが駆動する間の油圧モータ使用時間、(7)充電回数、(8)温度差を解析して使用度スコアSが取得される。なお、上記の通り、入力データIDのうち(1)車種タイプは、一度取得されると、搭載されるフォークリフト1,2が変更されるまで再取得されない。
【0055】
バッテリー3を交換する時期を判断するために、第1使用度レベルL1(安全性上位の下限)と第2使用度レベルL2(安全性中位の下限)とが、管理装置6に設定及び記憶される。第1使用度レベルL1以上(例えば、使用度スコアS「5」>L1)と判定されるバッテリー3は、有人フォークリフト1に搭載されると、オペレータに対する安全性が損なわれるおそれがある時期と判断される。また、第2使用度レベルL2以上(例えば、使用度スコアS「10」>L2)と判定されるバッテリー3は、無人フォークリフト2に搭載されると、無人フォークリフト2が破損するおそれがある時期と判断される。
【0056】
取得された使用度スコアSが、第1使用度レベルL1以上という条件を満たすと、そのバッテリー3は有人フォークリフト1から無人フォークリフト2に交換されるべき時期であると予測される。取得された使用度スコアSが、第2使用度レベルL2以上という条件を満たすと、そのバッテリー3は無人フォークリフト2でも使用されずに破棄されるべき時期であると予測される。
【0057】
管理装置6は、表示部60を備える(図1)。取得された使用度スコアSが、第1使用度レベルL1以上という条件を満たすと、管理装置6は、制御部43によって、表示部60に第1案内画面を表示する。第1案内画面は、例えば、「バッテリーを有人フォークリフトから無人フォークリフトに交換してください。このバッテリーは、有人フォークリフトには使用しないでください。」等の案内が表示されて、バッテリー3を有人フォークリフト1から無人フォークリフト2に交換するよう案内する。
【0058】
取得された使用度スコアSが、第2使用度レベルL2以上という条件を満たすと、荷役システムは、制御部43によって、表示部60に第2案内画面を表示する。第2案内画面は、例えば、「バッテリーを無人フォークリフトから破棄してください。このバッテリーは、有人フォークリフト及び無人フォークリフトに使用しないでください。」等の案内が表示されて、バッテリー3を無人フォークリフト1から破棄するよう案内する。
【0059】
表示部60に表示された案内画面に従って、オペレータがバッテリー3を交換及び破棄することができる。それによって、有人フォークリフト1に搭乗するオペレータOに対する安全性を最大に確保すると共に、バッテリー3をできるだけ長く使用することができ、コストを大幅に削減できる。
【0060】
図6の通り、上記の荷役システムは、以下の制御方法を実行する。なお、重複説明を避けるため、既に説明した部分は省略する。
【0061】
収集部40によって、教師データ46を収集する(収集ステップ:S1)。そして、学習モデル生成部41によって、収集ステップS1で収集部40に収集された教師データ46から機械学習を行い、機械学習により学習モデルを生成および記憶する(学習モデル生成ステップ:S2)。取得部45によって、現時点の入力データIDを取得する(取得ステップ:S3)。
【0062】
予測部42によって、学習モデル生成ステップS2で生成された学習モデルを、取得ステップS3で取得される現時点の入力データIDに適用することで、交換時期(使用度スコアS)を予測する(予測ステップ:S4)。制御部43によって、予測ステップS4によって予測された出力データODに基づいて、表示部60に案内画面を表示する制御を行う(制御ステップ:S5)。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の構成はこれらの実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、リフトシリンダ、リーチシリンダ及びティルトシリンダは1つの油圧モータ80によって駆動されるように構成されているが、リフトシリンダはリフト用油圧モータによって、リーチシリンダはリーチ用油圧モータによって、ティルトシリンダはティルト用油圧モータによってそれぞれ駆動するように構成されていてもよい。その場合、使用データ測定装置33は、リフト用油圧モータ、リーチ用油圧モータ、ティルト用油圧モータに接続され、リフトシリンダ70が駆動する間のリフト用油圧モータの使用時間、リーチシリンダ72が駆動する間のリーチ用油圧モータの使用時間、ティルトシリンダ71が駆動する間のティルト用油圧モータの使用時間をそれぞれ測定及び記憶するように構成されていてもよい。
【0064】
本発明の効果を説明する。
常温領域100及び冷温領域101を有する施設内においてフォークリフト1,2が走行及び荷役する場合に、バッテリー3は、有人フォークリフト1でまず使用されて、第1使用度レベルL1(安全性上位の下限)に達すると、有人フォークリフト1から無人フォークリフト2に交換されて使用される。無人フォークリフト2は、走行操作及び荷役操作が自動制御のため急加速及び急停止がなく、また、安全性を考慮して走行速度及び荷役速度が低速であることから、有人フォークリフト1と比較してバッテリー3の劣化を抑える制御が行われる。これによって、オペレータOに対する安全性を最大に確保しつつ、バッテリー3の劣化を抑えてバッテリー3をより長く使用することができる。また、バッテリー3は、第2使用度レベルL2(安全性中位の下限)に達すると破棄されて使用されなくなるので、さらに安全性を高めることができる。よって、有人フォークリフト1に搭乗するオペレータOに対する安全性を最大に確保すると共に、バッテリー3をできるだけ長く使用することができ、コストを大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0065】
1 有人フォークリフト
2 無人フォークリフト
3 バッテリー
32 RFID
33 使用データ測定装置
5 充電装置
6 管理装置
60 表示部
61 算出集計部
40 収集部
41 学習モデル生成部
42 予測部
43 制御部
45 取得部
46 教師データ
100 常温領域
101 冷温領域
S 使用度スコア
D 使用データ
L1 第1使用度レベル
L2 第2使用度レベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6