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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065525
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240508BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240508BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240508BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F27/00 160
H01F27/29 G
H01F27/28 K
H01F27/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174439
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085143
【弁理士】
【氏名又は名称】小柴 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋人
(72)【発明者】
【氏名】林井 研
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良太
(72)【発明者】
【氏名】中本 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 香織
【テーマコード(参考)】
5E043
5E070
【Fターム(参考)】
5E043BA01
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA03
5E070CA13
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で巻回されるワイヤの位置ずれを生じにくくした、コイル部品を提供する。
【解決手段】第1ワイヤ3は、第1層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される。第2ワイヤ4は、第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層を構成する状態で第1端部から第2端部に向かって巻回され、次いで、第2端部側の端部から第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれ、次いで、第2層を構成する第2ワイヤ4の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌まり込みながら第3層を構成する状態で巻回され、次いで、第1層の外周側の第2層の位置まで導かれ、次いで、第1層の第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第2層を構成する状態で第1端部から第2端部に向かって巻回される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層の外周側の層を第2層、第2層の外周側の層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤは、第1層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される部分を含み、
前記第2ワイヤは、
(1)前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第1部分と、
(2)前記第1部分に連なり、前記第1部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、
(3)前記第2部分に連なり、第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分と、
(4)前記第3部分から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分と、
(5)前記第4部分に連なり、第1層の前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第5部分と、
を含み、
前記第3部分では、前記第2ワイヤはNターン(Nは2以上の自然数)巻回され、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域が存在し、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ領域が存在している、
コイル部品。
【請求項2】
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層の外周側の層を第2層、第2層の外周側の層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤは、第1層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される部分を含み、
前記第2ワイヤは、
(1)前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第1部分と、
(2)前記第1部分に連なり、前記第1部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、
(3)前記第2部分に連なり、第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分と、
(4)前記第3部分から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分と、
(5)前記第4部分に連なり、前記第1部分から前記第2ワイヤの1ターン分を隔てた状態で、第1層の前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第5部分と、
を含み、
前記第3部分では、前記第2ワイヤはNターン(Nは2以上の自然数)巻回され、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域が存在し、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で(N-1.5)ターンずれる、-(N-1.5)ターンずれ領域が存在している、
コイル部品。
【請求項3】
前記コアは、前記巻芯部の前記第1端部および前記第2端部からそれぞれ張り出す第1鍔部および第2鍔部を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部は、実装基板側に向く下面と、前記下面とは逆方向に向く天面と、を有し、
前記下面には、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの各々の端部が接続される端子電極が設けられ、
前記第2ワイヤの前記第2部分および前記第4部分は、前記巻芯部における、前記下面および前記天面が向く方向以外の方向に向く面に沿って位置される、
請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2ワイヤは、前記第1部分および前記第5部分の少なくとも一方の端部において、前記第1ワイヤが構成する第1層に並んで前記巻芯部の周面に接する段落ち部分を有する、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第2ワイヤについて、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、前記第4部分および前記第5部分からなる組が前記巻芯部の軸線方向に沿って複数組配置されている、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2ワイヤの複数の前記第2部分および前記第4部分は、前記巻芯部の周方向における互いに同じ位置に配置される、請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第2ワイヤは、複数の前記第3部分のうちの少なくとも2つの第3部分において、前記巻芯部のまわりで互いに異なるターン数をもって巻回されている、請求項5に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル部品に関するもので、特に、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で2本のワイヤを巻回した構造を有する巻線型のコイル部品におけるワイヤの巻回態様についての改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件において、巻芯部のまわりに巻回される第1ワイヤおよび第2ワイヤについて、第n番目のターンを「ターンTn」と表現する。また、第1ワイヤと第2ワイヤとのずれ量に関して、たとえば、第1ワイヤのターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤのターンTnが嵌り込む場合には、ずれ量を「0.5ターン」とする。同様に、第1ワイヤのターンTnと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤのターンTn+2ターンが嵌り込む場合、ずれ量を「1.5ターン」とし、第1ワイヤのターンTnと第n+1ターンとの間の凹部に、第2ワイヤのターンTn+3ターンが嵌り込む場合、ずれ量を「2.5ターン」とする。また、第1ワイヤと第2ワイヤとの間でのずれ方向に関して、第2ワイヤのターンがこれと同一番目の第1ワイヤのターンより巻回方向の終端側にある場合には、ずれ量を表わす数字の前に「+」を付し、逆の場合には、「-」を付す。
【0003】
なお、ワイヤのターンを数えるとき、巻芯部の第1端部側から数えるか、逆に第2端部側から数えるか、は問わない。ターン数を数える方向を逆にしたとしても、本質的には同じ構成であると言える。
【0004】
また、本件において、巻芯部のまわりに巻回されるワイヤが形成する複数層のうち、巻芯部の周面に最も近い層、すなわち巻芯部の周面に少なくとも一部が接する層を第1層、第1層の外周側の層を第2層、第2層の外周側の層を第3層とそれぞれ表現する。なお、巻芯部の周面に最も近い層である第1層が巻芯部の周面に少なくとも一部が接するとしたのは、ワイヤが全長にわたって巻芯部の周面に接することなく、たとえば断面角形の巻芯部の稜線部分にのみワイヤが接し、他の部分は巻芯部の周面から若干浮いていることが通常であるためである。
【0005】
この発明が向けられるコイル部品の代表例として、コモンモードチョークコイルがある。
【0006】
この発明にとって興味あるコモンモードチョークコイルが、たとえば、特許第6327397号公報(特許文献1)に記載されている。図11(A)は、特許文献1に記載されたコモンモードチョークコイルとなるコイル部品50に備える2本のワイヤ51および52の巻回状態の特徴的構成を模式的に示す断面図である。図11(A)は、特許文献1における図2図7または図8に相当する。図11(B)は、後述する課題を説明するためのものである。
【0007】
図11(A)および(B)において、第1ワイヤ51を示す断面には網掛けが施され、第1ワイヤ51と第2ワイヤ52との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ51および第2ワイヤ52は、巻芯部53の第1端部54から逆の第2端部55に向かって、巻芯部53のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回される。第1ワイヤ51は、巻芯部53の周面に接する第1層を構成する状態で巻回され、第2ワイヤ52は、その大部分が第1ワイヤ51の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込ませながら第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回される。
【0008】
前述したように、第1層の外側の第2層を構成する状態で巻回されるのが、第2ワイヤ52の大部分としたのは、第2ワイヤ52の一部のターン、たとえばターンTnおよびターンTn+1については、巻芯部53の周面に接するように巻回しているからである。
【0009】
また、図11(A)および(B)において、第1ワイヤ51の複数のターンの各々と第2ワイヤ52の複数のターンの各々とが線分で結ばれている。このように、線分で結ばれたターン同士は、第1端部54から数えて同じ番目のターンであることを示している。
【0010】
特許文献1に記載のコイル部品50は、コモンモードチョークコイルにおけるモード変換特性を低減することを目的として開発されたもので、図11(A)に示した実施形態は、以下のような特徴を有している。
【0011】
すなわち、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52の各々の第1端部54側から数えたターン数n(nは自然数)で表現したとき、コイル部品50は、
(1)第1ワイヤ51のターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤ52のターンnが嵌り込むことによって、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域57と、
(2)第1ワイヤ51のターンTnとターンTn+1との間の凹部に、第2ワイヤ52のターンTn+2が嵌り込むことによって、上記+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって第1ワイヤ51と第2ワイヤ52との間で1.5ターンずれる、-1.5ずれ領域58と、
(3)上記+0.5ずれ領域57から上記-1.5ずれ領域58へと移行する遷移領域59と、
を有している。
【0012】
そして、上記0.5ずれ領域57に位置する第2ワイヤ52のターン数の和は、上記1.5ずれ領域58に位置する第2ワイヤ52のターン数の和の2倍以上かつ5倍以下である。
【0013】
このような構成によって、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52間で発生する容量を、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52全体でバランスさせることができ、第1ワイヤ51および第2ワイヤ52間で生じる浮遊容量の影響を低減できる。したがって、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第6327397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図11(A)に示す巻回状態において、第2ワイヤ52に注目すると、-1.5ずれ領域58の始端にあるターンTn+2については、その第1端部54側にいずれのワイヤもが接しておらず、遷移領域59の終端にあるターンTn+1についても、その第1端部54側にワイヤが接していないので、ターンTn+2は、図11(A)において矢印60で示す方向にずれやすい。その結果、図11(B)に示すように、ターンTn+2が、ターンTn+1を乗り越えて、ターンTnとターンTn+1との間に落ち込むことがある。図11(B)では図示していないが、ターンTnとターンTn+1との間隔がより広い場合には、ターンTn+2が巻芯部53の周面に接する状態となることもある。
【0016】
上述したようなターンTn+2の段落ちは、コイル部品50の完成品においても生じ得るが、第2ワイヤ52を第1端部54から第2端部55に向かって巻回する工程において生じると、後続するターンTn+3,…が順次位置ずれを起こす。その結果、ずれ領域58は、-1.5ずれ領域ではなくなり、たとえば-2.5ずれ領域となってしまう。第1ワイヤ51と第2ワイヤ52との間で発生する容量のバランスが崩れ、モード変換特性が悪化することがある。
【0017】
同種の位置ずれの問題は、コモンモードチョークコイルに限らず、たとえば、同じく第1ワイヤおよび第2ワイヤを備える巻線型チップトランスにおいても遭遇し得る。
【0018】
そこで、この発明の目的は、巻芯部のまわりに複数層を形成する状態で巻回されるワイヤの位置ずれを生じにくくした、コイル部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、を備える、コイル部品に向けられる。
【0020】
以下において、巻芯部のまわりに巻回されるワイヤが形成する複数層のうち、巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層の外周側の層を第2層、第2層の外周側の層を第3層とそれぞれ表現する。
【0021】
第1ワイヤは、第1層を構成する状態で第1端部から第2端部に向かって巻回される部分を含む。
【0022】
第2ワイヤは、
(1)第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部から第2端部に向かって巻回される第1部分と、
(2)第1部分に連なり、第1部分の第2端部側の端部から第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、
(3)第2部分に連なり、第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分と、
(4)第3部分から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分と、
(5)第4部分に連なり、第1層の第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部から第2端部に向かって巻回される第5部分と、
を含む。
【0023】
第3部分では、第2ワイヤはNターン(Nは2以上の自然数)巻回される。
【0024】
そして、第1部分と第5部分との境界の第1端部側および第2端部側のいずれか一方には、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域が存在し、第1部分と第5部分との境界の第1端部側および第2端部側のいずれか他方には、上記+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって第1ワイヤと第2ワイヤとの間で(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ領域と、が存在している。
【0025】
この発明において、上記(5)第5部分は、第4部分に連なり、第1部分から第2ワイヤの1ターン分を隔てた状態で、第1層の第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部から第2端部に向かって巻回される構成とされてもよい。この場合、第1部分と第5部分との境界の第1端部側および第2端部側のいずれかには、+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって第1ワイヤと第2ワイヤとの間で(N-1.5)ターンずれる、-(N-1.5)ターンずれ領域が存在している。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、第2ワイヤにおいて、第1部分に連なり、第1部分の第2端部側の端部から第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、第2部分に連なり、第2層を構成する第2ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌まり込みながら第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分と、を含むので、第2ワイヤの位置ずれを生じにくくすることができる。
【0027】
また、第2ワイヤにおける第1部分と第5部分との境界の第1端部側および第2端部側のいずれか一方には、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域が存在し、第1部分と第5部分との境界の第1端部側および第2端部側のいずれか他方には、+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって第1ワイヤと第2ワイヤとの間で(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ領域、または(N-1.5)ターンずれる、-(N-1.5)ターンずれ領域、が存在しているので、第1ワイヤと第2ワイヤとの間で生じる浮遊容量の影響を低減できる。したがって、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明の第1の実施形態によるコイル部品1の、実装基板側に向けられる面を示している。
図2図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態を模式的に示すもので、(A)は第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を示す、(B)の線A-Aに沿う断面図であり、(B)は第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の周面の展開図である。
図3図2(B)の破線で囲んだ部分IIIを拡大して第2ワイヤ4の巻回状態を正面から示す図である。
図4】この発明の第2の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図5】この発明の第3の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図6】この発明の第4の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図7】この発明の第5の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図8】この発明の第6の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図9】この発明の第7の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図10】この発明の第8の実施形態によるコイル部品における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を模式的に示す断面図である。
図11】特許文献1に記載されたコイル部品50に備える2本のワイヤ51および52の巻回状態を模式的に示す断面図であり、(A)は2本のワイヤ51および52の巻回状態の特徴的構成を示し、(B)は、この発明が解決しようとする課題を説明するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、この発明の第1の実施形態によるコイル部品1における、実装基板(図示しない。)側に向けられる面が示されている。コイル部品1は、コモンモードチョークコイルとなるものである。
【0030】
コイル部品1は、ドラム状のコア2と、それぞれインダクタを構成する第1ワイヤ3および第2ワイヤ4と、を備えている。コア2は、非導電性材料、より具体的には、Ni-Zn系などのフェライト、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。
【0031】
コア2は、巻芯部5ならびに巻芯部5の軸線方向6における互いに逆の第1端部7および第2端部8からそれぞれ張り出して設けられた第1鍔部9および第2鍔部10を備える。巻芯部5の、軸線方向6に直交する断面は四角形状である。なお、断面四角形状の巻芯部5の稜線部分は面取りされてもよく、あるいは、巻芯部5の断面形状は、六角形状などの多角形状、円状、もしくは楕円状、またはこれらを適宜組み合わせた形状であってもよい。
【0032】
第1鍔部9および第2鍔部10は、四角柱形状である。第1鍔部9は、実装基板側に向く下面11と、下面11とは逆方向に向く天面13(図2参照)と、巻芯部5の第1端部7を位置させる内側端面15と、内側端面15の反対側であって外側を向く外側端面17と、下面11および天面13間ならびに内側端面15および外側端面17間を結ぶ第1側面19および第2側面20と、を有する。同様に、第2鍔部10は、実装基板側に向く下面12と、下面12とは逆方向に向く天面14と、巻芯部5の第2端部8を位置させる内側端面16と、内側端面16の反対側であって外側を向く外側端面18と、下面12および天面14間ならびに内側端面16および外側端面18間を結ぶ第1側面21および第2側面22と、を有する。第1鍔部9および第2鍔部10の稜線部分は面取りされてもよい。
【0033】
コイル部品は4個以上の端子電極を備える。この実施形態では、コイル部品1は4個の端子電極23~26を備える。第1鍔部9の下面11には、第1端子電極23および第3端子電極25が設けられ、第2鍔部10の下面12には、第2端子電極24および第4端子電極26が設けられる。図示しないが、第1端子電極23および第3端子電極25は、第1鍔部7の外側端面17の一部にまで延び、第2端子電極24および第4端子電極26は、第2鍔部8の外側端面18の一部にまで延びている。
【0034】
端子電極23~26は、たとえば、銀を導電成分として含む導電性ペーストを下面11および12に焼付け、外側端面17および18にまで延びる部分については銀を蒸着し、その後、これら下地の導体膜に、銅、ニッケルおよび錫の順でめっきを施すことによって形成される。なお、端子電極23~26は、導電性金属板からなる金属端子をたとえばエポキシ系接着剤を用いてコア2に貼付けることによって設けられてもよい。
【0035】
第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、巻芯部5のまわりで螺旋状に巻回される。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態の詳細については後述する。第1ワイヤ3および第2ワイヤ4は、たとえば、銅、銀または金などの良導電性金属からなる線状の中心導体を備え、中心導体はポリウレタンまたはポリアミドイミドなどの樹脂からなる電気絶縁性被膜によって覆われる。線状の中心導体の径は特に限定されるものではない。また、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4のターン数についても特に限定されるものではない。好ましくは、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の径は、20~100μmとされる。
【0036】
第1ワイヤ3の各端部は、第1端子電極23および第2端子電極24に接続され、第2ワイヤ4の各端部は、第3端子電極25および第4端子電極26に接続される。これらの接続には、たとえば、熱圧着が適用される。
【0037】
コイル部品1は、天板27をさらに備える。天板27は、コア2の材料と同種のフェライト、フェライト以外の非導電性の磁性材料、またはフェライト粉もしくは金属磁性粉を含有する樹脂などから構成される。天板27は、コア2の第1鍔部9および第2鍔部10間に渡された状態で、第1鍔部9の天面13および第2鍔部10の天面14に接着剤を介して接合される。接着剤としては、好ましくは、熱硬化性のあるエポキシ樹脂、または熱硬化性のエポキシ樹脂に粒径0.1~10μmの金属磁性粉またはフェライト粉を加えた複合磁性樹脂が用いられる。接着剤には、熱衝撃耐性向上のため、シリカフィラーまたは無機磁性粉などの無機フィラーが添加されてもよい。接着剤の付与方法には、コア2の鍔部9および10の天面13および14側を接着剤にディップする方法、天板27におけるコア2側の面に接着剤をディスペンスまたは印刷する方法、などがある。
【0038】
なお、天板27に代えて、樹脂によるコーティングが施されてもよい。また、天板27およびコーティングは、それらいずれもがなくてもよい。
【0039】
コイル部品1は、たとえば、以下のようにして製造される。
【0040】
コア2を製造するため、たとえばフェライトの粉末を金型でプレス成形し、得られた成形体を焼成し、焼成後にバレル研磨することによってバリを取る。
【0041】
次いで、得られたコア2に端子電極23~26を設けるため、下地の導体膜を形成し、その後、バレルめっきを施す。
【0042】
次いで、ワイヤ3および4をノズルから吐出し、コア2の巻芯部5に巻回する。ワイヤ3および4は、通常、別々に巻回される。すなわち、第1ワイヤ3をまず巻回し、ヒーターチップによって、その端部を第1端子電極23および第2端子電極24に熱圧着する。次いで、第2ワイヤ4を巻回し、ヒーターチップによって、その端部を第3端子電極25および第4端子電極26に熱圧着する。端子電極23~26に接続されたワイヤ3および4の余分はカット刃により切断除去される。なお、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4を同時に巻回してもよい。
【0043】
その後、天板27を接着剤によってコア2に接着する。このようにして、コイル部品1が完成される。コイル部品1の寸法は、特に限定されるものではないが、たとえば、軸線方向6の寸法が3.2mm、幅方向(図1において上下方向)の寸法が2.5mm、高さ方向(図1の紙面に直交する方向)の寸法が2.5mmとされる。
【0044】
図2および図3を主として参照して、図1に示したコイル部品1における第1ワイヤ3および第2ワイヤ4の巻回状態について説明する。図2(A)は、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の一部を断面で示している。図2(B)は、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4が巻回されている巻芯部5の周面を展開して示している。図3は、図2(B)の破線で囲んだ部分IIIを拡大して第2ワイヤ4の巻回状態を正面から示している。
【0045】
図2(A)において、第1ワイヤ3を示す断面には網掛けが施され、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との区別が明確になるようにしている。第1ワイヤ3は、巻芯部5の周面に接する第1層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって螺旋状に巻回されている。第2ワイヤ4は、第1ワイヤ3と実質的に同じターン数をもって、大部分が第1層の外周側の第2層を構成する状態で螺旋状に巻回されている。
【0046】
図2(A)において、第1ワイヤ3の複数のターンの各々と第2ワイヤ4の複数のターンの各々とが線分で結ばれている。このように、線分で結ばれたターン同士は、第1端部7から数えて同じ番目のターンであることを示している。第1ワイヤ3の各ターンの下に数字が記入されている。これらの数字は、第1ワイヤ3の各ターンが何番目のターンであるかを示すものである。したがって、第1ワイヤ3の各ターンと線分で結ばれた第2ワイヤ4の各ターンについても、上述の数字と同じ番目のターンであるということになる。図2(A)に示す巻回状態では、第1ワイヤ3および第2ワイヤ4はともに、ターンT1~T21を有している。
【0047】
以上の図2(A)についての作図方法の説明は、後述する図4ないし図10についても当てはまる。
【0048】
前述したように、第1鍔部9および第2鍔部10は、四角柱形状であり、それぞれ、下面11および12、天面13および14、第1側面19および21、ならびに第2側面20および22からなる周面を有している。他方、巻芯部5は、軸線方向6に直交する断面が四角形状であり、その周面には4つの面が形成される。したがって、巻芯部5の周面の4つの面についても、鍔部9および10の下面、天面、第1側面および第2側面の各々と同じ方向に向く面の名称を、同様に「下面」、「天面」、「第1側面」および「第2側面」とする。
【0049】
巻芯部5は、図2(B)に示すように、周面において、下面29、天面30、第1側面31および第2側面32を有する。なお、図2(A)は、巻芯部5における天面30上でのワイヤ3および4の断面を示したものである。
【0050】
図2(B)において、第1ワイヤ3は太い点線で示され、第2ワイヤ4は太い実線で示されている。実際には、第1層の第1ワイヤ3はほとんど第2ワイヤ4によって隠されるが、図2(B)の展開図では、太い点線は第1ワイヤ3の中心軸線の位置を示し、太い実線は第2ワイヤ4の中心軸線の位置を示している。そのため、第1層の第1ワイヤ3と第2層の第2ワイヤ4とが隣り合って図示されている。図2(A)からわかるように、第2ワイヤ4の一部は第3層を構成する位置にあるが、第3層の第2ワイヤ4とこれに隣接する第2層の第2ワイヤ4とについても隣り合って図示され、第3層の第2ワイヤ4のターンの真下にある第1層の第1ワイヤ3のターンは図示が省略されている。
【0051】
前述したように、第1ワイヤ3は、巻芯部5の周面に接する第1層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって螺旋状に巻回されている。
【0052】
他方、第2ワイヤ4は、
(1)第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第1部分(ターンT1~T9)と、
(2)第1部分に連なり、第1部分の第2端部8側の端部から第1端部7側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分34(ターンT9→T10)(図3の網掛け部分)と、
(3)第2部分34に連なり、第2層を構成する第2ワイヤ4の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌まり込みながら第2層の外周側の第3層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第3部分(ターンT10~T11)と、
(4)第3部分に連なり、第3部分の第2端部8側の端部から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分35(ターンT11→T12)と、
(5)第4部分35に連なり、第1部分と隣り合う状態で第1層の第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第5部分(ターンT12~T17)と、
を含む。
【0053】
上記第3部分では、第2ワイヤ4はNターン(Nは2以上の自然数)、具体的にはターンT10とターンT11との2ターン巻回されている。
【0054】
以上の構成によれば、第2ワイヤ4において、第1部分に連なり、第1部分の第2端部8側の端部から第1端部7側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、第2部分に連なり、第2層を構成する第2ワイヤ4の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌まり込みながら第2層の外周側の第3層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第3部分と、を含み、かつ第5部分が第1部分と隣り合う状態であるので、第2ワイヤ4の位置ずれを生じにくくすることができる。したがって、第2ワイヤ4は、第5部分において、適正な巻回位置を可能にしかつ適正な巻回位置を維持することができる。
【0055】
また、第1部分と第5部分との境界の第1端部7側および第2端部8側のいずれか一方、この実施形態では、第1端部7側には、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域37が存在している。他方、第1部分と第5部分との境界の第1端部7側および第2端部8側のいずれか他方、この実施形態では、第2端部8側には、+0.5ずれ領域37におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ領域、具体的には、-1.5ターンずれ領域38が存在している。
【0056】
したがって、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減でき、たとえばコモンモードチョークコイルにあっては、モード変換特性を低減することができる。
【0057】
また、第3部分では、第2ワイヤ4が第3層を構成するように巻回されるので、巻芯部5の周面におけるワイヤ巻回のためのスペースを節約することができる。
【0058】
また、第1部分と第5部分との間に、図11に示した遷移領域59のような比較的広い遷移領域を設ける必要はない。したがって、巻芯部5の限られた軸線方向6の寸法を効率的に利用することができる。
【0059】
この実施形態では、さらに、
(6)第5部分に連なり、第1層の第1ワイヤ3のターンT16~T18を越えた後、第1層の第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第6部分(ターンT18~20)と、
(7)第6部分に連なり、第1層の第1ワイヤ3の最終ターンの第2端部8側に隣接しながら巻芯部5の周面に接するように巻回される段落ち部分36と、
を有している。
【0060】
上記第6部分では、再び+0.5ずれ領域39が形成される。この+0.5ずれ領域39も、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で生じる浮遊容量の影響を低減することに貢献する。
【0061】
また、段落ち部分36は、第2ワイヤ4の巻回状態の安定化に寄与し、第2ワイヤ4の位置ずれを生じにくくするように作用する。
【0062】
また、この実施形態では、図2によく示されているように、第2ワイヤ4の第2部分34は、巻芯部5の下面29および天面30以外の面、具体的には、第1側面31に沿って位置される。このような第2部分34の配置によれば、以下のような利点が奏される。
【0063】
第2ワイヤ4の第2部分34が位置する箇所では、前述した(2)第1部分の第2端部8側の端部から第1端部7側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分34(ターンT9→T10)および(4)第3部分の第2端部8側の端部から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分35(ターンT11→T12)が存在するので、巻芯部5の周面に直交する方向に4本のワイヤがほぼ並ぶ箇所がもたらされ、巻芯部5の周面に直交する方向での膨らみ具合が最大となる。
【0064】
このように膨らみ具合が最大となる部分が、仮に巻芯部5の下面29に沿って位置されると、第2ワイヤ4が実装基板に接触したり、極めて接近したりし、電気的不都合を招くことがあり得る。また、膨らみ具合が最大となる部分が、仮に巻芯部5の天面30に沿って位置されると、第2ワイヤ4が天板27に接触したり、天板27によって押し潰されたりすることがあり得る。
【0065】
これらに対して、膨らみ具合が最大となる部分が巻芯部5の下面29および天面30以外の面、具体的には、第1側面31または第2側面32に沿って位置されると、上述した不都合を招かないようにすることができる。なお、膨らみ具合が最大となる部分が位置される面を、巻芯部5の下面29および天面30以外の面としたのは、巻芯部の断面が四角形状以外のたとえば六角形状などの多角形状、円状、もしくは楕円状である場合もあり得るので、その場合には、「側面」を特定できない可能性があるためである。
【0066】
以下、図4ないし図10を参照して、この発明の第2ないし第8の実施形態について説明する。図4ないし図10において、図2(A)に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0067】
図4に示す第2の実施形態では、(2)第1部分の第2端部8側の端部から第1端部7側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分(ターンT9→T10)について、戻し量が、図2に示した第1の実施形態の場合よりも、第2ワイヤ4の1ターン分多くされている。また、(3)第2層の外周側の第3層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第3部分での第2ワイヤ4のターン数が、図2に示した第1の実施形態の場合よりも、1ターン多くされている。そして、(5)第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第5部分(ターンT13~T17)では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で-2.5ターンずれる、-2.5ずれ領域40が形成される。
【0068】
図5に示す第3の実施形態では、(2)第1部分の第2端部8側の端部から第1端部7側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分(ターンT9→T10)について、戻し量が、図2に示した第1の実施形態の場合よりも、第2ワイヤ4の2ターン分多くされている。また、(3)第2層の外周側の第3層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第3部分での第2ワイヤ4のターン数が、図2に示した第1の実施形態の場合よりも、2ターン多くされている。そして、(5)第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第5部分(ターンT14~T17)では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で-3.5ターンずれる、-3.5ずれ領域41が形成される。
【0069】
図4および図5に示す実施形態は、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で発生する容量のバランスのさらなる調整のために採用され得る。
【0070】
図6に示す第4の実施形態では、図2に示した第1の実施形態と比較して、第2ワイヤ4の始端のターンT1を段落ち部分42としたことを特徴としている。段落ち部分42は、第2ワイヤ4の第1端部7側での巻回状態の安定化に寄与し、第2ワイヤ4の位置ずれを生じにくくするように作用する。
【0071】
図7に示す第5の実施形態では、第2ワイヤ4について、前述した(1)第1部分、(2)第2部分、(3)第3部分、(4)第4部分および(5)第5部分からなる組が巻芯部5の軸線方向6に沿って複数組配置されていることを特徴としている。図7において図示された領域では、(1)第1部分、(2)第2部分、(3)第3部分、(4)第4部分および(5)第5部分からなる組が巻芯部5の軸線方向6に沿って2組配置されている。
【0072】
また、図7に示す実施形態では、第2ワイヤ4の複数の(2)第2部分および(4)第4部分は、図2から類推できるように、巻芯部5の周方向における互いに同じ位置、たとえば巻芯部5の第1側面31(図2参照)に沿う位置に配置されている。このような構成が採用されることにより、ワイヤ3および4の巻回状態の乱れを生じにくくすることができる。
【0073】
図8に示す第6の実施形態では、図7に示す第5の実施形態の場合と同様、第2ワイヤ4について、(1)第1部分、(2)第2部分、(3)第3部分、(4)第4部分および(5)第5部分からなる組が巻芯部5の軸線方向6に沿って複数組配置されているが、第3層を構成する複数の第3部分において、第2ワイヤ4は、複数の第3部分のうちの少なくとも2つの第3部分において、巻芯部5のまわりで互いに異なるターン数をもって巻回されていることを特徴としている。
【0074】
すなわち、図8において左側の第3部分では、第2ワイヤ4は2ターン巻回され、右側の第3部分では、第2ワイヤ4は3ターン巻回されている。その結果、左側の(5)第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第5部分(ターンT8~T9)では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で-1.5ターンずれる、-1.5ずれ領域38が形成され、右側の(5)第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第5部分(ターンT19~T20)では、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で-2.5ターンずれる、-2.5ずれ領域40が形成される。
【0075】
図7および図8に示す実施形態は、第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で発生する容量のバランスのさらなる調整のために採用され得る。
【0076】
図9に示す第7の実施形態では、(5)第4部分(ターンT10~T12)に連なり、第1層の第1ワイヤ3の隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で第1端部7から第2端部8に向かって巻回される第5部分(ターンT13~T17)が、第1部分(ターンT1~T9)から第2ワイヤ4の1ターン分を隔てた状態で巻回されていることを特徴としている。そのため、(1)第1部分(ターンT1~T9)と(5)第5部分(ターンT13~T17)との境界の第2端部8側には、+0.5ずれ領域37におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって第1ワイヤ3と第2ワイヤ4との間で(N-1.5)ターンずれる、-(N-1.5)ターンずれ領域、具体的には、1.5ターンずれる、-1.5ずれ領域38が存在している。
【0077】
図10に示す第8の実施形態では、(3)第2部分34に連なり、第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分(ターンT10~T11)において、第1ないし第6の実施形態の場合とは逆に、第2ワイヤ4が第2端部8から第1端部7に向かって巻回されていることを特徴としている。この構成は、第1ないし第7の実施形態においても適用することができる。
【0078】
以上、この発明を、コモンモードチョークコイルを構成するコイル部品に係る実施形態に関連して説明したが、この発明は、その他、たとえば巻線型チップトランスにも適用することができる。また、図示した各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
【0079】
この発明には、以下のような実施態様がある。
【0080】
<1>
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層の外周側の層を第2層、第2層の外周側の層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤは、第1層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される部分を含み、
前記第2ワイヤは、
(1)前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第1部分と、
(2)前記第1部分に連なり、前記第1部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、
(3)前記第2部分に連なり、第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分と、
(4)前記第3部分から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分と、
(5)前記第4部分に連なり、第1層の前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第5部分と、
を含み、
前記第3部分では、前記第2ワイヤはNターン(Nは2以上の自然数)巻回され、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域が存在し、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で(N-0.5)ターンずれる、-(N-0.5)ターンずれ領域が存在している、
コイル部品。
【0081】
<2>
軸線方向における互いに逆の第1端部および第2端部を有する巻芯部を含むコアと、
前記巻芯部のまわりで互いに実質的に同じターン数をもって螺旋状に巻回された第1ワイヤおよび第2ワイヤと、
を備え、
前記巻芯部のまわりに巻回される前記ワイヤが形成する複数層のうち、前記巻芯部の周面に最も近い層を第1層、第1層の外周側の層を第2層、第2層の外周側の層を第3層とそれぞれ表現したとき、
前記第1ワイヤは、第1層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される部分を含み、
前記第2ワイヤは、
(1)前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第1部分と、
(2)前記第1部分に連なり、前記第1部分の前記第2端部側の端部から前記第1端部側に戻されて第2層の外周側まで導かれる第2部分と、
(3)前記第2部分に連なり、第2層の外周側の第3層を構成する状態で巻回される第3部分と、
(4)前記第3部分から第1層の外周側の第2層の位置まで導かれる第4部分と、
(5)前記第4部分に連なり、前記第1部分から前記第2ワイヤの1ターン分を隔てた状態で、第1層の前記第1ワイヤの隣り合うターン間に形成される凹部に嵌り込みながら第1層の外周側の第2層を構成する状態で前記第1端部から前記第2端部に向かって巻回される第5部分と、
を含み、
前記第3部分では、前記第2ワイヤはNターン(Nは2以上の自然数)巻回され、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか一方には、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で0.5ターンずれる、+0.5ずれ領域が存在し、
前記第1部分と前記第5部分との境界の前記第1端部側および前記第2端部側のいずれか他方には、前記+0.5ずれ領域におけるずれ方向とは逆のずれ方向をもって前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間で(N-1.5)ターンずれる、-(N-1.5)ターンずれ領域が存在している、
コイル部品。
【0082】
<3>
前記コアは、前記巻芯部の前記第1端部および前記第2端部からそれぞれ張り出す第1鍔部および第2鍔部を備え、
前記第1鍔部および前記第2鍔部は、実装基板側に向く下面と、前記下面とは逆方向に向く天面と、を有し、
前記下面には、前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの各々の端部が接続される端子電極が設けられ、
前記第2ワイヤの前記第2部分および前記第4部分は、前記巻芯部における、前記下面および前記天面が向く方向以外の方向に向く面に沿って位置される、
<1>または<2>に記載のコイル部品。
【0083】
<4>
前記第2ワイヤは、前記第1部分および前記第5部分の少なくとも一方の端部において、前記第1ワイヤが構成する第1層に並んで前記巻芯部の周面に接する段落ち部分を有する、<1>ないし<3>のいずれかに記載のコイル部品。
【0084】
<5>
前記第2ワイヤについて、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、前記第4部分および前記第5部分からなる組が前記巻芯部の軸線方向に沿って複数組配置されている、<1>ないし<4>のいずれかに記載のコイル部品。
【0085】
<6>
前記第2ワイヤの複数の前記第2部分および前記第4部分は、前記巻芯部の周方向における互いに同じ位置に配置される、<5>に記載のコイル部品。
【0086】
<7>
前記第2ワイヤは、複数の前記第3部分のうちの少なくとも2つの第3部分において、前記巻芯部のまわりで互いに異なるターン数をもって巻回されている、<5>または<6>に記載のコイル部品。
【符号の説明】
【0087】
1 コイル部品
2 コア
3 第1ワイヤ
4 第2ワイヤ
5 巻芯部
6 軸線方向
7 第1端部
8 第2端部
9 第1鍔部
10 第2鍔部
11,12 鍔部の下面
13,14 鍔部の天面
19,21 鍔部の第1側面
20,22 鍔部の第2側面
23~26 端子電極
27 天板
29 巻芯部の下面
30 巻芯部の天面
31 巻芯部の第1側面
32 巻芯部の第2側面
34 第2部分
35 第4部分
36,42 段落ち部分
37,39 +0.5ずれ領域
38 -1.5ずれ領域
40 -2.5ずれ領域
41 -3.5ずれ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11