(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024065526
(43)【公開日】2024-05-15
(54)【発明の名称】有機第三級ジホスフィンを有機第三級ジホスフィンモノオキサイドに選択的に酸化するための触媒プロセス
(51)【国際特許分類】
C07F 9/53 20060101AFI20240508BHJP
B01J 31/04 20060101ALI20240508BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
C07F9/53
B01J31/04 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174440
(22)【出願日】2022-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 純一
(72)【発明者】
【氏名】宮川 貴吏
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD01B
4G169BD02B
4G169BD04B
4G169BE08B
4G169CB07
4G169CB61
4G169DA02
4H039CA99
4H039CC60
4H050AA02
4H050BA17
4H050BA37
4H050BA48
4H050BA60
4H050BB20
4H050BB41
4H050BC10
4H050BC34
4H050BE60
4H050WA11
4H050WA23
(57)【要約】
【課題】有機第三級ジホスフィンを有機第三級ジホスフィンモノオキサイドに選択的に酸化するための新規な触媒プロセスを開発すること。
【解決手段】一般式(1)で示される有機第三級ジホスフィンを金属触媒、酸化剤、塩基存在下にて水と反応させ選択的に酸化することによる一般式(2)で示される有機第三級ジホスフィンモノオキサイドの製造方法。
【化1】
(一般式(1)(2)中、R
1、R
2、R
3、R
4およびYは、それぞれ明細書に記載された定義と同様である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される有機第三級ジホスフィンを金属触媒、酸化剤、塩基存在下にて水と反応させ、選択的に酸化することによる一般式(2)で示される有機第三級ジホスフィンモノオキサイドの製造方法。
【化1】
(一般式(1)及び一般式(2)におけるR
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基、又は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいシクロアルキル基を表し、Yは置換基を有していてもよいアルキレン基又は置換基を有してもよい二価のアリーレン基を表す。)
【請求項2】
金属触媒がニッケル触媒であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)で示されるR1、R2、R3及びR4が、独立して置換基を有していてもよいアリール基、Yが置換基を有してもよい二価のアリーレン基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
反応溶媒として非プロトン性溶媒を使用することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
酸化剤が芳香族ハロゲン化物又はスルホン酸エステルであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
塩基が1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
反応温度が80℃~160℃であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
金属触媒量が、一般式(1)で表される有機第三級ジホスフィンに対して0.001等量~0.2等量であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機第三級ジホスフィンを有機第三級ジホスフィンモノオキサイドに選択的に酸化するための新規な触媒プロセスに関する。本プロセスは、種々の有機合成反応に有用な配位子である有機三級ジホスフィンモノオキサイドに誘導することができる。
【背景技術】
【0002】
有機第三級ジホスフィンモノオキサイドは、種々のカルボニル化、水素化、ヒドロホルミル化、カップリングなどの反応における遷移金属触媒のリン配位子として有用である(特許文献1,2,3,非特許文献1,2,3)。
有機第三級ジホスフィンを有機第三級ジホスフィンモノオキサイドに選択的に酸化する方法としては、第三級ジホスフィンの選択的モノアルキル化によりモノホスホニウム塩に誘導後、続くモノホスホニウム塩のアルカリ加水分解により得る方法(特許文献4)、第三級ジホスフィンのモノ選択的ボラン保護により、モノボラン錯体を得た後、過酸化水素による酸化反応を経て、有機塩基による脱ボラン反応により得る方法(非特許文献4)、第三級ジホスフィンをパラジウム触媒および1,2-ジブロモエタン存在下、水酸化ナトリウム水溶液と反応せしめることにより得る方法(非特許文献5、6)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許 5,059,059号明細書
【特許文献2】米国特許 4,400,548号明細書
【特許文献3】米国特許 4,670,570号明細書
【特許文献4】米国特許第4,429,161号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chem. Soc. Chem. Comun. 1987,1891
【非特許文献2】Chem. Commun., 2013, 49, 9425-9427
【非特許文献3】Chem. Eur. J. 2011, 17, 11914-11918
【非特許文献4】Chem.Eur.J. 2016, 22,2127 -2133
【非特許文献5】J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 5831-5832
【非特許文献6】J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 2161-2167
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献4及び非特許文献4の方法は多段階の反応であり、中間体の単離や後処理工程が煩雑であるなど、改良の余地があった。また、加水分解工程や、脱保護工程で生成する廃棄物の多さにも課題を残している。
また、特許文献5及び非特許文献5,6の方法は、1工程で目的物を得られ簡略化されたプロセスであるものの、高価なパラジウム触媒を使用しており、また、有機第三級ジホスフィンの種類によっては1等量以上のパラジウム触媒を使用する必要があり、経済性の面において課題を残している。
本発明の目的は、有機第三級ジホスフィンを有機第三級ジホスフィンモノオキサイドに選択的に酸化するための新規な触媒プロセスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、工業的に安価に入手できる金属触媒を用い、地球上に豊富に存在する水を酸素源として、有機第三級ジホスフィンを有機第三級ジホスフィンモノオキサイドに選択的に酸化する新規な触媒プロセスを構築することに成功した。
また、本触媒プロセスにおいて得られる有機第三級ジホスフィンモノオキサイドの選択率は極めて高く、収率良く有機第三級ジホスフィンモノオキサイドを得ることができる。
即ち本発明は、下記一般式(1)で示される有機第三級ジホスフィンを金属触媒、酸化剤、塩基存在下にて水と反応させ、選択的に酸化することによる一般式(2)で示される有機第三級ジホスフィンモノオキサイドの製造方法に関する。
【0007】
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、有機第三級ジホスフィンを金属触媒、酸化剤、塩基存在下にて水と反応させ、選択的に酸化することにより有機第三級ジホスフィンモノオキサイドを高選択率・高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の有機第三級ジホスフィンモノオキサイドの製造法は、一般式(1)で示される有機第三級ジホスフィンを金属触媒、酸化剤、塩基存在下にて水と反応させることで、対応する一般式(2)の有機第三級ジホスフィンモノオキサイドを得るものである。
【0010】
【0011】
一般式(1)及び(2)で表される化合物において、R1、R2、R3及びR4で表される置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基は置換基を有してもよく該置換基としては、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基等が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基等が挙げられる。
【0012】
アルコキシル基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1~6のアルコキシル基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基及びtert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0013】
アリール基としては、例えば炭素数6~14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0014】
複素環基としては脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基とし
ては、例えば炭素数2~14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル-2-オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば炭素数2~15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0015】
R1、R2、R3及びR4で表される置換基を有していてもよい複素環基としては脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられ、脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2~14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の単環、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、ピロリジル-2-オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。芳香族複素環基としては、例えば炭素数2~15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1~3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5~8員、好ましくは5又は6員の単環式、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
【0016】
R1、R2、R3及びR4で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基等が挙げられる。
【0017】
また、R1、R2、R3及びR4で表される置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、5員環又は6員環のシクロアルキル基が挙げられ、環上は前記したアルキル基又はアルコキシル基で、1乃至2以上置換されていてもよい。好ましいシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
Yで表される二価のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ビナフタレンジイル基等が挙げられる。フェニレン基としては、o又はm-フェニレン基が挙げられ、該フェニレン基はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基及びtert-ブチル基等のアルキル基; メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシル基; 水酸基、アミノ基又は置換アミノ基等で置換されていてもよい。ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基としては、1,1’-ビアリール-2,2’-ジイル型の構造を有するものが好ましく、該ビフェニルジイル基及びビナフタレンジイル基は前記したようなアルキル基、アルコキシル基、例えばメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基等で置換されていてもよい。
【0019】
Yで表されるアルキレン基としては、炭素数1~8、好ましくは炭素数2~6のアルキレン基が挙げられる。具体的なアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、及びオクタメチレン基が挙げられ、エチレン基、トリメチレン基及びテトラメチレン基が好ましい。
【0020】
一般式(1) で表される化合物の具体例としては、公知のビスホスフィン類が挙げられ、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ‐パラ‐トリルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-5,5’,6,6’,7,7’,8,8’-オクタヒドロ-1,1'-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ‐3,5-キシリルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、5,5'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール、5,5’-ビス(ジ(3,5-キシリル)ホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール、5,5’-ビス[ジ(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィノ]-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-6,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル、1,2-ビス(2,5-ジメチルホスホラノ)ベンゼン、1,2-ビス(2,5-ジエチルホスホラノ)ベンゼン、1,2-ビス(2,5-ジイソプロピルホスホラノ)ベンゼン、4,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9’-ジメチルキサンテンなどが挙げられる。
また、軸不斉を有する一般式(1)で表される化合物の光学活性化合物も挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法は、一般式(1)で示される第3級有機第三級ジホスフィンを含む溶液を、金属触媒、酸化剤、塩基存在下にて水と反応させることにより行われる。
【0022】
反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限は無いが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、tert-ブタノール等の非求核性のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等のエーテル類及びジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。好ましくは非プロトン性溶媒のN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドが好ましく、より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0023】
これら溶媒は夫々単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いても良い。また、場合
によっては無溶媒で反応させることができる。
金属触媒としては、白金、銀、金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、ニッケル、コバルトおよび鉄、それらの金属塩または錯体が挙げられる。これらは夫々単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いても良い。上記金属のうち、ニッケル塩、ニッケル錯体が特に好ましく、具体的には、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、硫酸アンモニウムニッケル(II)、次亜リン酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ギ酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、シクロヘキサンブチレートニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、ナフテン酸ニッケル(II)、塩化ヘキサアンミンニッケル(II)、ヨウ化ヘキサアンミンニッケル(II)、ニッケルアセチルアセトナート、水酸化ニッケル(II)、ビス(η3-アリル)ニッケル(II)、ビス(η-シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、1,4-ジフェニルホスフィノブタン塩化ニッケル(II)、1,3-ジフェニルホスフィノプロパン塩化ニッケル(II)、1,2-ジフェニルホスフィノエタン塩化ニッケル(II)NiCl2(dppe)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン塩化ニッケル(II)、[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン]トリフェニルホスフィン塩化ニッケル(II)[NiCl2(IPr)(PPh3)] (IPr = 1,3- ビス (2,6- ジイソプロピルフェニル ) イミダゾール -2- イリデン)、塩化アリルニッケルニ量体、[1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ジカルボニルニッケル(0)(Ni(dcype)(CO)2)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ニッケルカルボニル(0)、等が例示される。かかるニッケル化合物は、無水物体でも水和物体でもよい。
【0024】
酸化剤としては、芳香族ハロゲン化物、芳香族スルホン酸エステルが挙げられる
芳香族ハロゲン化物は、芳香環にハロゲン原子が結合した化合物であって、芳香環に結合した水素原子を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に制限はない。芳香族ハロゲン化物における芳香環としては、単環であっても、2以上の芳香環の縮合環であってもよく、また、芳香族炭化水素であることが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、又は、アントラセン環であることがより好ましい。芳香族ハロゲン化物におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素 原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。また、芳香族ハロゲン化物は、芳香環上にハロゲン原子以外の置換基を有していて もよい。前記置換基としては、例えば、炭素数1~12の分岐を有 していてもよいアルキル基等が好ましく挙げられる。また、前記置換基は可能であれば、 さらに置換されていてもよく、また、環構造を有していてもよい。
【0025】
芳香族ハロゲン化物として具体的には、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1-クロロ-2-フルオロ ベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1-ブロモ-2-フルオロベンゼン、1-ブロモ -2-クロロベンゼン、1,2-ジブロモベンゼン、1-ブロモ-2-ヨードベンゼン、 1-フルオロ-2-ヨードベンゼン、1-クロロ-2-ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、2-フルオロトルエン、2-クロロトルエン、2-ブロモトルエン、2-ヨードトルエン、1-ブロモ-2-エチルベンゼン、1,3-ジブロモベンゼン、1,3- ジフルオロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1-クロロ-3-フルオロベンゼン、1-ブロモ-3-フルオロベンゼン、3-ブロモ-1-クロロベンゼン、1-フルオロ-3-ヨードベンゼン、1-クロロ-3-ヨードベンゼン、1-ブロモ-3-ヨードベンゼン、3-フルオロトルエン、3-ブロモトルエン、3-ヨードトルエン、1,4-ジヨードベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,4-フルオロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、1-クロロ-4-ヨードベンゼン、1-クロロ-4-フルオロベンゼン、1-ブロモ-4-フルオロベンゼン、4-ブロモ-1-クロロベンゼン、1-フルオロ-4-ヨードベンゼン、1-クロロ-4-ヨードベンゼン、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン、4-フルオロトルエン、4-クロロトルエン、4-ブロモトルエン、4-ヨードトルエン、1-ブロモ-4-エチルベンゼン、1-ブロモ-4-プロピルベンゼン、1-ブロモ-4-ブチルベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、 1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,3-トリブロモベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1-ブロモ-2,6-ジクロロベンゼン、1-ブロモ-2,3-ジクロロベンゼン、2,2-ジクロロ-3-ヨードベンゼン、2-ブロモ-m-キシレン、3-ブロモ-o-キシレン、2,6-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2 ,5-ジフルオロトルエン、3,4-ジフルオロトルエン、2-クロロ-4-フルオロトルエン、3-クロロ-4-フルオロトルエン、4-クロロ-2-フルオロトルエン、2,6-ジフルオロトルエン、3,4-ジフルオロトルエン、2-クロロ-4-フルオロトルエン、3-クロロ-4-フルオロトルエン、4-クロロ-2-フルオロトルエン、5-クロロ-2-フルオロトルエン、2-クロロ-6-フルオロトルエン、4-ブロモ-3-フルオロトルエン、3-ブロモ-4-フルオロトルエン、2-ブロモ-4-フルオロトルエン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、1-クロロ-2,4-ジフルオロベンゼン、2-クロロ-p-キシレン、4-ヨード-o-キシレン、4-クロロ-o-キシレン、2,5-ジクロロトルエン、3,4-ジクロロトルエン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリブロモベンゼン、4-ブロモ-o-キシレン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、1,3,5-トリブロモベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ヨードベンゼン、1-フルオロナフタレン、1-クロロナフタレン、1-ブロモナフタレン、1-ヨードナフタレン、2-フルオロナフタレン、2-クロロナフタレン、9-クロロアントラセン、8-ブロモアントラセンが例示できる。芳香族ハロゲン化物は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。 好ましくは、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、2-ブロモトルエン、2-ヨードトルエン、3-ブロモトルエン、3-ヨードトルエン、4-ブロモトルエン、4-ヨードトルエン、1,2,3-トリブロモベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ヨードベンゼン、より好ましくはヨードベンゼン、2-ヨードトルエン、3-ヨードトルエン、4-ヨードトルエンが挙げられる。
【0026】
芳香族スルホン酸エステルは、フェニルメタンスルホネート、フェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、フェニルトリフルオロメタンスルホネート、p-トリルメタンスルホネート、p-トリル-4-メチルベンゼンスルホネート、p-トリルトリフルオロメタンスルホネート、о-トリルメタンスルホネート、о-トリル-4-メチルベンゼンスルホネート、о-トリルトリフルオロメタンスルホネート、m-トリルメタンスルホネート、m-トリル-4-メチルベンゼンスルホネート、m-トリルトリフルオロメタンスルホネート、2-メトキシフェニルメタンスルホネート、2-メトキシフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、2-メトキシフェニルトリフルオロメタンスルホネート、2-クロロフェニルメタンスルホネート、2-クロロフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、2-クロロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、2-ブロモフェニルメタンスルホネート、2-ブロモフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、2-ブロモフェニルトリフルオロメタンスルホネート、2-ヨードフェニルメタンスルホネート、2-ヨードフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、2-ヨードフェニルトリフルオロメタンスルホネート、2-ブロモフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、4-アセトキシフェニルメタンスルホネート、4-アセトキシフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、4-アセトキシフェニルトリフルオロメタンスルホネート、4-ニトロフェニルメタンスルホネート、4-ニトロフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、4-ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、3-ニトロフェニルメタンスルホネート、3-ニトロフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、3-ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、2-ナフチルメタンスルホネート、2-ナフチル-4-メチルベンゼンスルホネート、2-ナフチルトリフルオロメタンスルホネート、2-トリメチルシリルフェニルメタンスルホネート、2-トリメチルシリルフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、2-トリメチルシリルフェニルトリフルオロメタンスルホネート、4-ビフェニルメタンスルホネート、4-ビフェニル-4-メチルベンゼンスルホネート、4-ビフェニルトリフルオロメタンスルホネート、カテコールビスメタンスルホネート、カテコールビス-4-メチルベンゼンスルホネート、カテコールビストリフルオロメタンスルホネート、1,4-ナフタレンビスメタンスルホネート、1,4-ナフタレンビスビス-4-メチルベンゼンスルホネート、1,4-ナフタレンビストリフルオロメタンスルホネート、2,7-ナフタレンビスメタンスルホネート、2,7-ナフタレンビスビス-4-メチルベンゼンスルホネート、2,7-ナフタレンビスビストリフルオロメタンスルホネート、1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルビスメタンスルホネート、1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルビス-4-メチルベンゼンスルホネート、1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルビストリフルオロメタンスルホネートが例示できる。芳香族スルホン酸エステルは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。好ましくは、フェニルトリフルオロメタンスルホネート、p-トリルトリフルオロメタンスルホネート、о-トリルトリフルオロメタンスルホネート、m-トリルトリフルオロメタンスルホネート、1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルビストリフルオロメタンスルホネートが挙げられる。
【0027】
塩基としては、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ノニルアミン、トリ-n-デシルアミン、トリ-n-ウンデシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、トリ-n-トリデシルアミン、トリ-n-テトラデシルアミン、トリ-n-ペンタデシルアミン、トリ-n-ヘキサデシルアミン、トリ(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、エチルジ(2-プロピル)アミン、ジオクチルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリシクロヘプチルアミン、トリシクロオクチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、エチルジシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロペンチルアミン、メチルジシクロペンチルアミン、トリフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、プロピルジフェニルアミン、ブチルジフェニルアミン、2-エチルヘキシルジフェニルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジプロピルフェニルアミン、ジブチルフェニルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)フェニラミン、トリベンジルアミン、メチルジベンジルアミン、エチルジベンジルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン(トロパン)、N-メチル-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタン)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)などが挙げられる。好ましくは1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン(トロパン)、N-メチル-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタン)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、より好ましくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が挙げられる。
これら塩基は夫々単独で用いても二種以上適宜組み合わせて用いても良い。
【0028】
金属触媒の使用量は、使用する基質により自ずから異なるが、反応基質の有機第3級ジホスフィンに対し通常0.1~20.0mol%程度、好ましくは1.0~10.0mol%の範囲で行うことができる。
【0029】
酸化剤の使用量は、使用する基質により自ずから異なるが、反応基質の有機第3級ジホスフィンに対し通常0.5~10.0等量、好ましくは1.0~2.0等量の範囲で行うことができる。
【0030】
塩基の使用量は、使用する基質により自ずから異なるが、反応基質の有機第3級ジホスフィンに対し通常1.0~20.0等量、好ましくは3.0~10.0等量の範囲で行うことができる。
【0031】
水の使用量は、使用する基質により自ずから異なるが、反応基質の有機第3級ジホスフィンに対し通常1.0~20.0等量、好ましくは3.0~10.0等量の範囲で行うことができる。また、使用する溶媒、塩基、酸化剤、触媒に含まれる水分も反応に使用することができる。
【0032】
反応温度は、使用する基質および溶媒により自ずから異なるが、通常80℃~200℃ 、好ましくは100℃~160℃の範囲で行うことができる。
【0033】
反応時間は、使用する基質および反応温度により自ずから異なるが、通常30分~48時間、好ましくは1時間~24時間である。
本反応は、窒素又はアルゴン等の不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0034】
反応終了後は、濾過やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等、この分野で通常行われる後処理操作を行い、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等の精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的の一般式(2)の化合物を得ることができる。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。本実施例における測定機器は以下の通りである。
リン31核磁気共鳴分光法(31P NMR):400MR/DD2(共鳴周波数:
161MHz、Agilent社製)
外部標準物質:重水中リン酸(0ppm(singletピーク))
【0036】
[比較例1]
米国特許第5,919,984号(特許文献5)記載の方法に従い、特許文献5において用いられている触媒である酢酸パラジウムを酢酸ニッケル・4水和物に変更して、(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルから(R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチルの製造を試みた。
反応容器に、酢酸ニッケル・4水和物(8.8mg,0.036mmol)を仕込み、窒素置換後、(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(623mg,1.00mmol), ジクロロメタン(3.9mL)、1,2-ジブロモエタン(772mg,4.11mmol)を加えた。窒素気流下、30℃で30分攪拌し、4.5%水酸化ナトリウム水溶液を1.2mL加えた。窒素気流下、30℃で4時間攪拌し、31P NMRにて反応液の分析を行ったが(R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチルは全く生成しておらず、原料の(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルのみが観測された。
【0037】
[実施例1] (R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチルの合成
反応容器に(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル (311mg,0.500mmol)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(337mg,3.00mmol)を仕込み、窒素置換後、水(45.1mg,2.50mmol) と塩化ニッケル(II)・6水和物 (5.9mg, 0.025mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(3.1mL) とヨードベンゼン(102mg,0.500mmol) を加えた。窒素気流下、140℃で6時間攪拌し、冷却後、室温でメタノール(6.2mL) と水(3.1mL) を加え0℃でろ過を行い、水(1.6mL)でろ過物を洗浄した。得られた固体を減圧下乾燥し、217mgの表題化合物を得た (収率68%)。
31P NMR (160 MHz, CDCl3) δ: -15.3 (s, 1P), 27.7 (s, 1P)
【0038】
[実施例2] (S)-2-ジ[(3,5-キシリル)ホスフィニル]-2’-ジ[(3,5-キシリル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチルの合成
反応容器に(S)-(-)-2,2’-ビス[ジ(3,5-キシリル)ホスフィノ]-1,1’-ビナフチル(368mg,0.500mmol)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(337mg,3.00mmol) を仕込み、窒素置換後、水(45.1mg,2.50mmol)と塩化ニッケル(II)・6水和物(5.9mg,0.025mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(3.1mL) とヨードベンゼン(154 mg,0.750mmol)を加えた。窒素気流下、140℃で12時間攪拌し、冷却後、室温で水 (3.1mL)とメタノール(3.1mL)を加え0℃でろ過を行い水 (3.1mL) でろ過物を洗浄した。得られた固体を減圧下乾燥し、329mgの表題化合物を得た(収率88%)。
31P NMR (160 MHz, CDCl3) δ: -15.2 (s, 1P), 30.4 (s, 1P).
【0039】
[実施例3] (R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-5,5’,6,6’,7,7’,8,8’-オクタヒドロ-1,1'-ビナフチルの合成
反応容器に(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-5,5’,6,6’,7,7’,8,8’-オクタヒドロ-1,1'-ビナフチル(315mg,0.500mmol)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(337mg,3.00mmol)を仕込み、窒素置換後、水 (45.1mg, 2.50mmol) と塩化ニッケル(II)・6水和物 (5.9mg, 0.025mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液 (3.1mL) とヨードベンゼン(154 mg,0.750mmol) を加えた。窒素気流下、140℃で12時間攪拌し、冷却後、室温で水(3.1mL) とメタノール(6.2mL)を加え、0℃でろ過を行い、水 (3.1mL) でろ過物を洗浄した。得られた固体を減圧下乾燥し、262mgの表題化合物を得た(収率81%)。
31P NMR (160 MHz, CDCl3) δ: -17.2 (s, 1P), 28.2(s, 1P).
【0040】
[実施例4] (S)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-6,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニルの合成
反応容器に(S)-(-)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-6,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(146mg,0.250mmol)、 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(168mg,1.50mmol) を仕込み、窒素置換後、水(22.5mg,1.25mmol) と塩化ニッケル(II)・6水和物(3.0mg,0.013mmol,5.0mol%)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(1.6mL) とヨードベンゼン(76.5mg, 0.375mmol) を加えた。窒素気流下、140℃で6時間攪拌し、冷却後、室温で水 (4.4mL)とメタノール(3.1mL)を加え0℃でろ過を行い、水(1.6mL) でろ過物を洗浄した。得られた固体を減圧下乾燥し、115mgの表題化合物を得た(収率77%)。
31P NMR (160 MHz, CDCl3) δ: -15.4 (s, 1P), 27.5(s, 1P).
【0041】
[実施例5]
実施例1と同様の操作に従い、用いる溶媒をN,N-ジメチルアセトアミドに変更して(R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチルを製造した。反応時間6時間の時点で31P NMRにて反応液の分析を行った結果、原料の(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルが3.2%、目的物の(R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチルが96.8%であった。
【0042】
[実施例6~9]
実施例1と同様の操作に従い、用いるニッケル触媒を変更して(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(原料)から(R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチル(目的物)を製造した。結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
[実施例10~13]
実施例1と同様の操作に従い、用いる酸化剤を変更して(R)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(原料)から(R)-2-ジフェニルホスフィニル-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチル(目的物)を製造した。結果を表2に示す。
【0045】